(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】複数のガス分配オリフィスプレートを含む有機気相ジェットマイクロプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20241001BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C23C14/24 A
B81B1/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020001122
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・マグロウ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・イー・クイン
(72)【発明者】
【氏名】ロマン・コロトコフ
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0038649(US,A1)
【文献】特開2016-008355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
B81B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して(in series)接続された複数の堆積器を有する線状アレイであって、前記堆積器のそれぞれが、少なくともひとつの送達アパーチャと少なくともひとつの排出アパーチャとを有しており、前記複数の堆積器の第1の堆積器が、少なくとも1つの側面境界で第2の堆積器と面する(border)線状アレイと;
複数のオリフィスアレイであって、前記複数のオリフィスアレイにおける各オリフィスの幅が、流れに対するその断面の短軸で20μm以下であり、送達ガス分配チャネル及び複数の排出分配チャネルを通る流れを調節する複数のオリフィスアレイと、
を含むマイクロノズルアレイを含むデバイスであって、
前記複数のオリフィスアレイが、送達オリフィスのオリフィスアレイと排出オリフィスのオリフィスアレイとを含み、
前記送達オリフィスが、前記堆積器の送達アパーチャに連結された送達チャネルと、送達ガス分配チャネルとの間に存在するオリフィスであって、前記送達チャネルと送達ガス分配チャネルとを流体連通させ、前記送達オリフィスを通る流れを調節し、
前記排出オリフィスが、前記堆積器の排出アパーチャに連結された排出チャネルと、排出分配チャネルとの間に存在するオリフィスであって、前記排出チャネルと排出分配チャネルとを流体連通させ、前記排出オリフィスを通る流れを調節し、
前記送達ガス分配チャネルと前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つが、前記複数の堆積器のそれぞれと別々の(separate)流体連通を有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記送達オリフィスのオリフィスアレイが、第1の方向に配置され、
前記排出オリフィスのオリフィスアレイが、第2の方向に配置され
る請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記堆積器の線状アレイが、
複数の排出アパーチャの間に配置される、1つ以上の送達アパーチャを含む平面表面を有し;
前記複数の排出アパーチャの少なくとも1つと前記1つ以上の送達アパーチャのそれぞれとがスペーサーによって隔てられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記1つ以上の送達アパーチャが、複数のセクションに分割される請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記送達アパーチャ及び前記排出アパーチャの少なくとも1つが、長方形である請求項3に記載のデバイス。
【請求項6】
前記排出チャネルに連結された前記排出アパーチャが、前記送達チャネルと同一線上に配置される請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記排出チャネルが、前記排出アパーチャよりも大きな流れ制限を有するオリフィスアレイを通って前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つに接続する請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスが
蓋と;
前記蓋に隣接する第1の表面及び第2の表面を有する第1のプレートと;
前記第1のプレートに隣接する
第1の表面及び第2の表面を有する第2のプレートと;を含み、
前記第1のプレート及び前記第2のプレートが、それぞれ、第1の表面及び第2の表面に孔、トレンチ、ポケットの少なくともいずれかでパターン化され、
前記蓋は、前記第1のプレートの前記第1の表面上を覆い、貫通孔である送達ビア及び排出ビアを有し、
前記第1のプレートは、
隣接する前記
蓋に覆われた、前記第1の表面上の少なくとも1つのトレンチが送達ガス分配チャネルを形成する、分配層と、
前記第2の表面上の少なくとも1つのポケットが排出オリフィスを形成し、少なくとも1つの孔が送達オリフィスを形成する、オリフィス層と、を有し、
前記分配層及び前記オリフィス層は貫通孔である排出ビアを有し、
前記第2のプレートは、
前記第1のプレートに隣接する前記第1の表面上の少なくとも1つのトレンチが排出分配チャネルを形成し、貫通孔のパターンが送達チャネル及び排出チャネルを形成
し、前記第2の表面に前記送達チャネルに連結された送達アパーチャと、前記排出チャネルに連結された排出アパーチャとを有する前記堆積器を有するデバイス層であり、
前記蓋の前記送達ビアと前記分配層の前記送達ガス分配チャネルとは流体連通しており、前記分配層の
前記送達ガス分配チャネルと
前記デバイス層の
前記送達チャネル
とは前記オリフィス層の
前記送達オリフィスを介して流体連通しており、
前記蓋、前記分配層及び前記オリフィス層の前記排出ビアと、前記デバイス層の前記排出分配チャネルとは流体連通しており、前記デバイス層の
前記排出分配チャネルと
前記排出チャネル
とは、前記オリフィス層の
前記排出オリフィスを介して流体連通している、
請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その開示内容の全体を参照によって援用する、2019年1月18日出願の米国特許出願第62/794,265号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、有機気相ジェットプリンティング(OVJP)のためのマイクロノズルアレイに関する。特に、堆積器(depositor)は、2つ以上のオリフィスプレートを通って、マイクロノズルアレイダイ内で2つ以上のガス分配チャネルと流体連通して配される。
【背景技術】
【0003】
有機材料を利用する光電子デバイスは、いくつもの理由から、次第に望ましいものとなりつつある。そのようなデバイスを作製するために使用される材料の多くは比較的安価であるため、有機光電子デバイスは無機デバイスを上回るコスト優位性の可能性を有する。加えて、柔軟性等の有機材料の固有の特性により、該材料は、フレキシブル基板上での製作等の特定用途によく適したものとなり得る。有機光電子デバイスの例は、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池及び有機光検出器を含む。OLEDについて、有機材料は従来の材料を上回る性能の利点を有し得る。例えば、有機発光層が光を放出する波長は、概して、適切なドーパントで容易に調整され得る。
【0004】
OLEDはデバイス全体に電圧が印加されると光を放出する薄い有機膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明及びバックライティング等の用途において使用するためのますます興味深い技術となりつつある。数種のOLED材料及び構成は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、特許文献1、特許文献2及び特許文献3において記述されている。
【0005】
リン光性発光分子の1つの用途は、フルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイの業界標準は、「飽和(saturated)」色と称される特定の色を放出するように適合された画素を必要とする。特に、これらの標準は、飽和した赤色、緑色及び青色画素を必要とする。若しくは、OLEDは、白色光を照射するように設計することができる。従来の、白色バックライトからの液晶ディスプレイ発光は、吸収フィルターを用いてフィルタリングされ、赤色、緑色、及び青色発光を生成する。同様の技術は、OLEDでも用いられることができる。白色OLEDは、単一のEMLデバイス又は積層体構造のいずれかであることができる。色は、当技術分野において周知のCIE座標を使用して測定することができる。
【0006】
本明細書において使用される場合、用語「有機」は、有機光電子デバイスを製作するために使用され得るポリマー材料及び小分子有機材料を含む。「小分子」は、ポリマーでない任意の有機材料を指し、且つ「小分子」は実際にはかなり大型であってよい。小分子は、幾つかの状況において繰り返し単位を含み得る。例えば、長鎖アルキル基を置換基として使用することは、「小分子」クラスから分子を排除しない。小分子は、例えばポリマー骨格上のペンダント基として、又は該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。小分子は、コア部分上に構築された一連の化学的シェルからなるデンドリマーのコア部分として役立つこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光性又はリン光性小分子発光体であってよい。デンドリマーは「小分子」であってよく、OLEDの分野において現在使用されているデンドリマーはすべて小分子であると考えられている。
【0007】
本明細書において使用される場合、「頂部」は基板から最遠部を意味するのに対し、「底部」は基板の最近部を意味する。第一層が第二層「の上に配置されている」と記述される場合、第一層のほうが基板から遠くに配置されている。第一層が第二層「と接触している」ことが指定されているのでない限り、第一層と第二層との間に他の層があってもよい。例えば、間に種々の有機層があるとしても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記述され得る。
【0008】
本明細書において使用される場合、「溶液プロセス可能な」は、溶液又は懸濁液形態のいずれかの液体媒質に溶解、分散若しくは輸送することができ、且つ/又は該媒質から堆積することができるという意味である。
【0009】
配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合、「光活性」と称され得る。配位子は、該配位子が発光材料の光活性特性に寄与していないと考えられる場合には「補助」と称され得るが、補助配位子は、光活性配位子の特性を変化させることができる。
【0010】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第一のエネルギー準位が真空エネルギー準位に近ければ、第二のHOMO又はLUMOエネルギー準位「よりも大きい」又は「よりも高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は、真空準位と比べて負のエネルギーとして測定されるため、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有するIP(あまり負でないIP)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さい絶対値を有する電子親和力(EA)(あまり負でないEA)に相当する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、材料のLUMOエネルギー準位は、同じ材料のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりもそのような図の頂部に近いように思われる。
【0011】
本明細書において使用される場合、当業者には概して理解されるであろう通り、第一の仕事関数がより高い絶対値を有するならば、第一の仕事関数は第二の仕事関数「よりも大きい」又は「よりも高い」。仕事関数は概して真空準位と比べて負数として測定されるため、これは「より高い」仕事関数が更に負であることを意味する。頂部に真空準位がある従来のエネルギー準位図において、「より高い」仕事関数は、真空準位から下向きの方向に遠く離れているものとして例証される。故に、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に準ずる。
【0012】
OLEDについての更なる詳細及び上述した定義は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許文献4において見ることができる。
【発明の概要】
【0013】
一実施形態によれば、有機発光ダイオード/デバイス(OLED)も提供される。 OLEDは、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された有機層を含むことができる。一実施形態によれば、有機発光デバイスは、消費者製品、電子部品モジュール、及び/又は照明パネルから選択される1以上のデバイスに組み込まれる。
【0014】
実施形態によれば、連続して(in series)接続された複数の堆積器を有する線状アレイを含むマイクロノズルアレイを有するデバイスが提供されることができ、前記複数の堆積器の第1の堆積器は、少なくとも1つの側面境界で第2の堆積器と面する(border)ことができる。前記マイクロノズルアレイは、複数のオリフィスアレイを含むことができ、前記複数のオリフィスアレイにおける各オリフィスの幅は、流れに対するその断面の短軸で20μm以下であり、送達ガス分配チャネルを通る流れを調節する。前記マイクロノズルアレイは、複数の排出分配チャネルを含むことができ、前記送達ガス分配チャネルと少なくとも1つの前記複数の排出分配チャネルは、前記複数の堆積器のそれぞれと別々の流体連通を有する。
【0015】
前記複数のオリフィスアレイの第1のオリフィスアレイは、第1の方向に配置され、前記送達ガス分配チャネルを制御することができる。前記複数のオリフィスアレイの第2のオリフィスアレイは、第2の方向に配置され、前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つを制御することができる。
【0016】
堆積器の線状アレイは、前記送達ガス分配チャネルと流体連通し、排出チャネルを介して前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つと流体連通する複数の排出アパーチャ間に配置される、1つ以上の送達アパーチャを含む平面表面を含むことができる。スペーサーは、前記複数の排出アパーチャの少なくとも1つから前記1つ以上の送達アパーチャのそれぞれを分離することができる。前記1つ以上の送達アパーチャは、複数のセクションに分割されることができる。前記送達アパーチャ及び前記排出アパーチャの少なくとも1つは長方形である。前記送達アパーチャ及び前記排出アパーチャの少なくとも1つは、プリンティングの方向に平行な長軸で配列されることができる。前記送達アパーチャの少なくとも1つの送達チャネルは、送達オリフィスを通って前記送達ガス分配チャネルに接続されることができる。前記排出チャネルに連結された前記排出アパーチャは、前記送達チャネルと同一線上に配置されることができる。前記排出チャネルは、前記排出アパーチャよりも大きな流れ制限を有するオリフィスアレイを通って前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つに接続できる。
【0017】
前記デバイスは、複数の列の前記堆積器の線状アレイを含むことができ、各堆積器の第1のエッジ又は第2のエッジは、前記マイクロノズルアレイの第1のエッジ又は第2のエッジによって画定されることができる。
【0018】
前記複数の堆積器を有する線状アレイは、少なくとも前記第1の堆積器と前記第2の堆積器との間に配置された閉じ込め(confinement)ガス分配トレンチを含むことができる。前記複数の堆積器を有する前記線状アレイは、複数の送達アパーチャを含むことができ、前記送達ガス分配チャネルから供給される。前記アレイにおける前記堆積器の各アパーチャのプリント方向における長さは、50μm~5mmであることができる。前記複数の堆積器を有する前記線状アレイの各堆積器は、一方の側にある第1のスペーサーともう一方の側にある第2のスペーサーによって、1つの排出から分離されることができ、前記第1のスペーサーは、前記第2のスペーサーよりも狭い。
【0019】
前記マイクロノズルアレイは、ダイの反対面上のキャリアプレートに固定されたダイの片面に配置されることができる。前記キャリアプレートは、前記ダイ上のそれぞれのビアに接続する前記複数の排出ガス分配チャネルの少なくとも1つから、前記送達ガス分配チャネルからの送達ガス及び排出ガスのための開口(ポート;port)を有することができる。前記キャリアプレートは、ガスケットを用いてマニホールドにシールされることができる。前記キャリアプレートは、マニホールドにボルト締めされることができる。
【0020】
各堆積器は、突起(boss)上に形成されることができ、陥凹領域が突起間に配置されることができる。陥凹領域からの突起の高さは、0μm~200μmであることができる。前記線状アレイの前記複数の堆積器は、ずらされることができる。
【0021】
前記複数のオリフィスアレイの1つは、前記送達ガス分配チャネルのフロア(floor)を形成する送達ガスオリフィスアレイであることができる。前記複数の排出分配チャネルは、前記送達ガス分配チャネルに対して垂直に配置されることができる。前記排出分配チャネルは、前記複数の堆積器を有する前記線状アレイの前記第1の堆積器の少なくとも1つの側での対応(corresponding)に位置される少なくとも1つの排出ビアに流体的に連結されることができる。前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つは、列内の前記線状アレイの隣接する堆積器によって共有されることができる。前記複数のオリフィスアレイの1つは、前記第1の堆積器の排出チャネルと前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つとの間に配置される排出ガスオリフィスアレイであることができ、前記第1の堆積器の排出チャネルから前記少なくとも1つの排出分配チャネルを分離する側壁を亘ってコンダクタンス(conductance)経路を提供する。
【0022】
前記マイクロノズルアレイは、キャリアプレートに隣接する、第1の表面及び第2の表面を有する第1の層を含むことができる。前記マイクロノズルアレイは、基板に隣接する、第1の表面及び第2の表面を有する第2の層を含むことができる。デバイス層は、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されることができ、孔のパターンを含み、前記第1の層及び前記第2の層は、それぞれ、第1の表面及び第2の表面に孔とトレンチでパターン化される。前記第1の層及び前記第2の層の厚みは、前記デバイス層よりも大きいことがある。前記第1の層と前記第2の層の少なくとも1つは、300μm超の厚みを有することができ、前記デバイス層は、100μm以下の厚みを有することができる。
【0023】
前記マイクロノズルアレイは、複数の両面研磨(DSP;double side polished)ウェーハ及びシリコンオンインシュレーターウェーハを含むことができる。シリコンオンインシュレーターウェーハのハンドル層は、300μm~600μmの厚みを有し、シリコンオンインシュレーターウェーハのデバイス層は、10μm~50μmの厚みを有する。
【0024】
前記複数のオリフィスアレイの1つは、送達チャネルを介して前記送達ガス分配チャネルに連結されるアパーチャを含む送達チャネルオリフィスアレイであることができる。前記アパーチャは、チャネル軸に沿って10μmの一定の長さで、3つのグループにクラスター化されることができる。前記アパーチャは、送達ビアからの距離が長くなるにつれて広くなることがあり、前記アパーチャの幅は、110μmから184μmに増加することができる。
【0025】
前記送達ガス分配チャネルは、前記複数の堆積器のそれぞれと別々に流体連通する複数のチャネルを含むことができる。前記複数の堆積器は、5%~75%のフィルファクターで表面に形態(フィーチャー;feature)を形成することができる。前記デバイスは、前記デバイスの面に対する法線ベクトルに平行に配置された固体材料の切れ目のない(unbroken)熱伝導経路であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【0027】
【
図2】
図2は、別の電子輸送層を有さない、反転された有機発光デバイスを示す。
【0028】
【
図3】
図3は、開示された主題の実施形態に係る、OVJP(有機気相ジェットプリンティング)プロセスの簡略化されたプロセスフロー図を示す。
【0029】
【
図4a】
図4aは、開示された主題の実施形態に係る、複数の堆積器の線状アレイを含むDEC(堆積排出閉じ込め)OVJP堆積器及びマイクロノズルアレイの表面図を示す。
【0030】
【
図4b】
図4bは、開示された主題の実施形態に係る、DEC OVJP堆積器の断面を示す。
【0031】
【
図5a】
図5aは、開示された主題の実施形態に係る、OVJPによってプリントされた線の厚みプロファイルの例を示す。
【0032】
【
図5b】
図5bは、開示された主題の実施形態に係る、一定の厚みのサブピクセルサイズの領域をプリントするための堆積器を示す。
【0033】
【
図5c】
図5cは、開示された主題の実施形態に係る、OVJPによってプリントされた線が、一定の厚みのプリント膜にどのように重ねられることができるかを示す。
【0034】
【
図6a】
図6aは、開示された主題の実施形態に係る、OVJPツールにおけるエッジオン(edge-on)マイクロノズルアレイを有するダイの装置を示す。
【0035】
【
図6b】
図6bは、開示された主題の実施形態に係る、OVJPツールにおける面内(in-plane)マイクロノズルアレイを有するダイの装置を示す。
【0036】
【
図7a】
図7aは、開示された主題の実施形態に係る、面内マイクロノズルアレイ設計を含むダイの頂部(キャリアプレートに隣接)面を示す。
【0037】
【
図7b】
図7bは、開示された主題の実施形態に係る、面内マイクロノズルアレイ設計を含むダイの底部(基板隣接)面を示す。
【0038】
【
図7c】
図7cは、開示された主題の実施形態に係る、断面図における面内マイクロノズルアレイの内部構造を示す。
【0039】
【
図7d】
図7dは、開示された主題の実施形態に係る、断面図における面内マイクロノズルアレイの内部構造を示す。
【0040】
【
図8a】
図8aは、開示された主題の実施形態に係る、面内堆積器及びそれを通るガス流の模式的断面を示す。
【0041】
【
図8b】
図8bは、開示された主題の実施形態に係る、送達ガスオリフィスアレイの面に平行な排出分配チャネルを通って区分された面内堆積器の模式図を示す。
【0042】
【
図9a】
図9aは、開示された主題の実施形態に係る、組立前のマイクロノズルアレイダイの蓋層を示す。
【0043】
【
図9b】
図9bは、開示された主題の実施形態に係る、組立前のマイクロノズルアレイのガス分配層を示す。
【0044】
【
図9c】
図9cは、開示された主題の実施形態に係る、組立前のマイクロノズルアレイダイのオリフィス層を示す。
【0045】
【
図9d】
図9dは、開示された主題の実施形態に係る、オリフィス層微細構造の拡大図を示す。
【0046】
【
図9e】
図9eは、開示された主題の実施形態に係る、組立前のマイクロノズルアレイダイの堆積器層の上部面を示す。
【0047】
【
図9f】
図9fは、開示された主題の実施形態に係る、堆積器層の上部面における微細構造の拡大図を示す。
【0048】
【
図9g】
図9gは、開示された主題の実施形態に係る、組立前のマイクロノズルアレイダイの堆積器層の下部面を示す。
【0049】
【
図9h】
図9hは、開示された主題の実施形態に係る、堆積器層の下部面における微細構造の拡大図を示す。
【0050】
【
図9i】
図9iは、開示された主題の実施形態に係る、結合(bonding)前の配列された蓋層、分配層、オリフィス層、及び堆積器層を拡大図で示す。
【0051】
【
図10a】
図10aは、開示された主題の実施形態に係る、送達ガス分配チャネル及び送達ガスオリフィスプレートを示す。
【0052】
【
図10b】
図10bは、開示された主題の実施形態に係る、送達ガス分配チャネル及び送達ガスオリフィスプレートの等価回路モデルを示す。
【0053】
【
図10c】
図10cは、開示された主題の実施形態に係る、オリフィスを通って共通の送達ガス分配チャネルに接続された一連の堆積器を通るガス流を示す。
【0054】
【
図11a】
図11aは、開示された主題の実施形態に係る、排出オリフィスアレイを通って、堆積器の排出チャネルから排出分配チャネルへの流れの流線を示す。
【0055】
【
図11b】
図11bは、開示された主題の実施形態に係る、堆積器の長さに沿った位置の関数としての排出ガス流速のプロットを示す。
【0056】
【
図12a】
図12aは、開示された主題の実施形態に係る、ダイの部分を通った温度分布の等高線(contour)プロットを示す。
【0057】
【
図12b】
図12bは、開示された主題の実施形態に係る、ダイの部分を通った熱流の線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
概して、OLEDは、アノード及びカソードの間に配置され、それらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードが正孔を注入し、カソードが電子を有機層(複数可)に注入する。注入された正孔及び電子は、逆帯電した電極にそれぞれ移動する。電子及び正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在電子正孔対である「励起子」が形成される。光は、励起子が緩和した際に、光電子放出機構を介して放出される。幾つかの事例において、励起子はエキシマー又はエキサイプレックス上に局在し得る。熱緩和等の無輻射機構が発生する場合もあるが、概して望ましくないとみなされている。
【0059】
初期のOLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,769,292号において開示されている通り、その一重項状態から光を放出する発光分子(「蛍光」)を使用していた。蛍光発光は、概して、10ナノ秒未満の時間枠で発生する。
【0060】
ごく最近では、三重項状態から光を放出する発光材料(「リン光」)を有するOLEDが実証されている。参照によりその全体が組み込まれる、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、395巻、151~154、1998;(「Baldo-I」)及びBaldoら、「Very high-efficiency green organic light emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl.Phys.Lett.、75巻、3号、4~6(1999)(「Baldo-II」)。リン光については、参照により組み込まれる米国特許第7,279,704号5~6段において更に詳細に記述されている。
【0061】
図1は、有機発光デバイス100を示す。図は必ずしも一定の縮尺ではない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子ブロッキング層130、発光層135、正孔ブロッキング層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、カソード160、及びバリア層170を含み得る。カソード160は、第一の導電層162及び第二の導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。これらの種々の層の特性及び機能並びに材料例は、参照により組み込まれるUS7,279,704、6~10段において更に詳細に記述されている。
【0062】
これらの層のそれぞれについて、更なる例が利用可能である。例えば、フレキシブル及び透明基板-アノードの組合せは、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5、844、363号において開示されている。p-ドープされた正孔輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、50:1のモル比でm-MTDATAにF4-TCNQをドープしたものである。発光材料及びホスト材料の例は、参照によりその全体が組み込まれるThompsonらの米国特許第6,303,238号において開示されている。n-ドープされた電子輸送層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2003/0230980号において開示されている通りの、1:1のモル比でBPhenにLiをドープしたものである。参照によりその全体が組み込まれる米国特許第5,703,436号及び同第5,707,745号は、上を覆う透明の、導電性の、スパッタリング蒸着したITO層を持つMg:Ag等の金属の薄層を有する複合カソードを含むカソードの例を開示している。ブロッキング層の理論及び使用は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,097,147号及び米国特許出願公開第2003/0230980号において更に詳細に記述されている。注入層の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において提供されている。保護層についての記述は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004/0174116号において見ることができる。
【0063】
図2は、反転させたOLED200を示す。デバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、及びアノード230を含む。デバイス200は、記述されている層を順に堆積させることによって製作され得る。最も一般的なOLED構成はアノードの上に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下に配置されたカソード215を有するため、デバイス200は「反転させた」OLEDと称されることがある。デバイス100に関して記述されたものと同様の材料を、デバイス200の対応する層において使用してよい。
図2は、幾つかの層が如何にしてデバイス100の構造から省略され得るかの一例を提供するものである。
【0064】
図1及び2において例証されている単純な層構造は、非限定的な例として提供されるものであり、本発明の実施形態は多種多様な他の構造に関連して使用され得ることが理解される。記述されている特定の材料及び構造は、事実上例示的なものであり、他の材料及び構造を使用してよい。機能的なOLEDは、記述されている種々の層を様々な手法で組み合わせることによって実現され得るか、又は層は、設計、性能及びコスト要因に基づき、全面的に省略され得る。具体的には記述されていない他の層も含まれ得る。具体的に記述されているもの以外の材料を使用してよい。本明細書において提供されている例の多くは、単一材料を含むものとして種々の層を記述しているが、ホスト及びドーパントの混合物等の材料の組合せ、又はより一般的には混合物を使用してよいことが理解される。また、層は種々の副層を有してもよい。本明細書における種々の層に与えられている名称は、厳しく限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し、正孔を発光層220に注入し、正孔輸送層又は正孔注入層として記述され得る。一実施形態において、OLEDは、カソード及びアノードの間に配置された「有機層」を有するものとして記述され得る。有機層は単層を含んでいてよく、又は、例えば
図1及び2に関して記述されている通りの異なる有機材料の多層を更に含んでいてよい。
【0065】
参照によりその全体が組み込まれるFriendらの米国特許第5,247,190号において開示されているもののようなポリマー材料で構成されるOLED(PLED)等、具体的には記述されていない構造及び材料を使用してもよい。更なる例として、単一の有機層を有するOLEDが使用され得る。OLEDは、例えば、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第5,707,745号において記述されている通り、積み重ねられてよい。OLED構造は、
図1及び2において例証されている単純な層構造から逸脱してよい。例えば、基板は、参照によりその全体が組み込まれる、Forrestらの米国特許第6,091,195号において記述されている通りのメサ構造及び/又はBulovicらの米国特許第5,834,893号において記述されている通りのくぼみ構造等、アウトカップリングを改良するための角度のついた反射面を含み得る。
【0066】
本明細書中に開示される幾つかの実施形態においては、それぞれ
図1及び
図2に示される発光層135及び発光層220等の発光層又は材料は、量子ドットを含むことができる。明示的に、又は当業者の理解に応じて文脈によって反対に示されない限り、本明細書中に開示される「発光層」又は「発光材料」は、量子ドット又は相当の構造を含む有機発光材料及び/又は発光材料を含むことができる。このような発光層は、別の発光材料又は他の発光体によって放出された光を変換する量子ドット材料のみを含むことができる、又は前記別の発光材料又は他の発光体も含むことができる、又は電流の印加から直接光そのものを放出することができる。同様に、色変換層、カラーフィルター、アップコンバージョン層又は構造、又はダウンコンバージョン層又は構造は、量子ドットを含む材料を含むことができるが、そのような層は、本明細書中で開示される「発光層」と見なされないことがある。一般に、「発光層」又は材料は、初期光を発するものであり、デバイス内で初期光を放出することはないが、発光層によって放出される初期光(initial light)に基づいて、異なるスペクトル内容の変更された光を再放出することができるカラーフィルターや他の色変換層等の他の層によって変換されることができる。
【0067】
別段の規定がない限り、種々の実施形態の層のいずれも、任意の適切な方法によって堆積され得る。有機層について、好ましい方法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,013,982号及び同第6,087,196号において記述されているもの等の熱蒸着、インクジェット、参照によりその全体が組み込まれるForrestらの米国特許第6,337,102号において記述されているもの等の有機気相堆積(OVPD)、並びに参照によりその全体が組み込まれる米国特許第7,431,968号において記述されているもの等の有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による堆積を含む。他の適切な堆積法は、スピンコーティング及び他の溶液ベースのプロセスを含む。溶液ベースのプロセスは、好ましくは、窒素又は不活性雰囲気中で行われる。他の層について、好ましい方法は熱蒸着を含む。好ましいパターニング法は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,294,398号及び同第6,468,819号において記述されているもの等のマスク、冷間圧接を経由する堆積、並びにインクジェット及びOVJD等の堆積法の幾つかに関連するパターニングを含む。他の方法を使用してもよい。堆積する材料は、特定の堆積法と適合するように修正され得る。例えば、分枝鎖状又は非分枝鎖状であり、且つ好ましくは少なくとも3個の炭素を含有するアルキル及びアリール基等の置換基は、溶液プロセシングを受ける能力を増強するために、小分子において使用され得る。20個以上の炭素を有する置換基を使用してよく、3~20個の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を持つ材料は、対称構造を有するものよりも良好な溶液プロセス性を有し得、これは、非対称材料のほうが再結晶する傾向が低くなり得るからである。溶液プロセシングを受ける小分子の能力を増強するために、デンドリマー置換基が使用され得る。
【0068】
本発明の実施形態に従って製作されたデバイスは、バリア層を更に含んでいてよい。バリア層の1つの目的は、電極及び有機層を、水分、蒸気及び/又はガス等を含む環境における有害な種への損傷性暴露から保護することである。バリア層は、基板、電極の上、下若しくは隣に、又はエッジを含むデバイスの任意の他の部分の上に堆積し得る。バリア層は、単層又は多層を含んでいてよい。バリア層は、種々の公知の化学気相堆積技術によって形成され得、単相を有する組成物及び多相を有する組成物を含み得る。任意の適切な材料又は材料の組合せをバリア層に使用してよい。バリア層は、無機若しくは有機化合物又は両方を組み込み得る。好ましいバリア層は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,968,146号、PCT特許出願第PCT/US2007/023098号及び同第PCT/US2009/042829号において記述されている通りの、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物を含む。「混合物」とみなされるためには、バリア層を構成する前記のポリマー及び非ポリマー材料は、同じ反応条件下で及び/又は同時に堆積されるべきである。ポリマー材料対非ポリマー材料の重量比は、95:5から5:95の範囲内となり得る。ポリマー材料及び非ポリマー材料は、同じ前駆体材料から作成され得る。一例において、ポリマー材料及び非ポリマー材料の混合物は、ポリマーケイ素及び無機ケイ素から本質的になる。
【0069】
本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、種々の電気製品又は中間部品に組み込まれることができる多種多様な電子部品モジュール(又はユニット)に組み込まれることができる。このような電気製品又は中間部品としては、エンドユーザーの製品製造者によって利用されることができるディスプレイスクリーン、照明デバイス(離散的光源デバイス又は照明パネル等)が挙げられる。このような電子部品モジュールは、駆動エレクトロニクス及び/又は電源を任意に含むことができる。本発明の実施形態にしたがって作製されたデバイスは、組み込まれた1つ以上の電子部品モジュール(又はユニット)を有する多種多様な消費者製品に組み込まれることができる。OLEDの有機層に本開示の化合物を含むOLEDを含む消費者製品が開示される。このような消費者製品は、1つ以上の光源及び/又は1つ以上のある種の表示装置を含む任意の種類の製品を含む。このような消費者製品の幾つかの例としては、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニター、メディカルモニター、テレビ、掲示板、屋内若しくは屋外照明及び/又は信号送信用のライト、ヘッドアップディスプレイ、完全又は部分透明ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンター、電話、携帯電話、タブレット、ファブレット、パーソナルデジタルアシスタント(PDAs)、ウェアラブルデバイス、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダー、ビューファインダー、マイクロディスプレイ(対角で2インチ未満のディスプレイ)、3-Dディスプレイ、バーチャルリアリティ又は拡張現実ディスプレイ、車両、共に並べた多重ディスプレイを含むビデオウォール(video walls)、劇場又はスタジアムのスクリーン、及び看板を含む。パッシブマトリックス及びアクティブマトリックスを含む種々の制御機構を使用して、本発明に従って製作されたデバイスを制御することができる。デバイスの多くは、摂氏18度から摂氏30度、より好ましくは室温(摂氏20~25度)等、ヒトに快適な温度範囲内での使用が意図されているが、この温度範囲外、例えば、摂氏-40度~+80度で用いることもできる。
【0070】
本明細書において記述されている材料及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有し得る。例えば、有機太陽電池及び有機光検出器等の他の光電子デバイスが、該材料及び構造を用い得る。より一般的には、有機トランジスタ等の有機デバイスが、該材料及び構造を用い得る。
【0071】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、可撓性があること、丸めることができること、折り畳むことができること、伸ばすことができること、曲げることができることからなる群から選択される1つ以上の特性を有する。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、透明又は半透明である。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、カーボンナノチューブを含む層を更に含む。
【0072】
幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、遅延蛍光発光体を含む層を更に含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、RGB画素配列又は白色及びカラーフィルター画素配列を含む。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、モバイルデバイス、ハンドヘルドデバイス、又はウェアラブルデバイスである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、10インチ未満の対角線又は50平方インチ未満の面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、少なくとも10インチの対角線又は少なくとも50平方インチの面積を有するディスプレイパネルである。幾つかの実施形態においては、前記OLEDは、照明パネルである。
【0073】
発光領域の幾つかの実施形態では、発光領域はホストを更に含む。
【0074】
幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光ドーパントであることができる。幾つかの実施形態においては、前記化合物は、リン光、蛍光、熱活性化遅延蛍光、即ちTADF(E型遅延蛍光とも言われる)、三重項-三重項消滅、又はこれらの過程の組合せを介して、発光を生成することができる。
【0075】
本明細書中に開示される前記OLEDは、消費者製品、電子部品モジュール、及び照明パネルの1つ以上に組み込まれることができる。前記有機層は、発光層であることができ、幾つかの実施形態においては、前記化合物は、発光ドーパントであることができ、他の実施形態においては、前記化合物は、非発光ドーパントであることができる。
【0076】
前記有機層は、ホストを含むこともできる。幾つかの実施形態においては、2つ以上のホストが好ましい。幾つかの実施形態においては、使用される前記ホストは、a)双極性(bipolar)材料、b)電子輸送材料、c)正孔輸送材料、又はd)電荷輸送の役割がほとんどないワイドバンドギャップ材料であることができる。幾つかの実施形態においては、前記ホストは、金属錯体を含むことができる。前記ホストは、無機化合物とすることができる。
他の材料との組合せ
【0077】
有機発光デバイス中の特定の層に有用として本明細書において記述されている材料は、デバイス中に存在する多種多様な他の材料と組み合わせて使用され得る。例えば、本明細書において開示されている発光性ドーパントは、多種多様なホスト、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極、及び存在し得る他の層と併せて使用され得る。以下で記述又は参照される材料は、本明細書において開示されている化合物と組み合わせて有用となり得る材料の非限定的な例であり、当業者であれば、組み合わせて有用となり得る他の材料を特定するための文献を容易に閲覧することができる。
【0078】
本明細書に開示されている様々な発光層及び非発光層、並びに配列には、様々な材料を使用してよい。適切な材料の例は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2017/0229663号に開示される。
伝導性(導電性)ドーパント:
【0079】
電荷輸送層は、伝導性ドーパントでドープされ、電荷キャリアの密度を大きく変え、それによりその伝導性を変えることとなる。伝導性は、マトリックス材料中の電荷キャリアを生成することで、又はドーパントのタイプに応じて増加され、半導体のフェルミ準位における変化も達成することができる。正孔輸送層は、p型伝導性ドーパントでドープされることができ、n型伝導性ドーパントは、電子輸送層中に用いられる。
HIL/HTL:
【0080】
本発明に使用される正孔注入/輸送材料は、特に限定されず、通常、正孔注入/輸送材料として用いられる化合物であれば、いかなる化合物を使用してもよい。
EBL:
【0081】
電子ブロッキング層(EBL)は、発光層から出る電子及び/又は励起子の数を減らすために使用されることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して、大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接した発光体よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、EBL材料は、EBLインターフェースに最も近接したホストの1つ以上よりも高いLUMO(真空準位により近い)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。1つの態様においては、EBL中に用いられる前記化合物は、下記に記載されるホストの1つとして、同じ分子又は同じ官能基を含む。
ホスト:
【0082】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光材料として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、前記金属錯体をドーパント材料として用いたホスト材料を含むことができる。前記ホスト材料としては特に限定されず、前記ホストの三重項エネルギーがドーパントのものよりも大きければ、任意の金属錯体又は有機化合物が用いられることができる。いずれのホスト材料も、三重項の基準が満たされる限り、任意のドーパントと共に用いられることができる。
HBL:
【0083】
正孔ブロッキング層(HBL)を使用して、発光層から出る正孔及び/又は励起子の数を低減させることができる。デバイス中のそのようなブロッキング層の存在は、ブロッキング層を欠く同様のデバイスと比較して大幅に高い効率及び/又はより長い寿命をもたらし得る。また、ブロッキング層を使用して、OLEDの所望の領域に発光を制限することもできる。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接した発光体よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。幾つかの実施形態においては、HBL材料は、HBLインターフェースに最も近接したホストの1つ以上よりも低いHOMO(真空準位から更に離れて)及び/又は高い三重項エネルギーを有する。
ETL:
【0084】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送することができる材料を含み得る。電子輸送層は、真性である(ドープされていない)か、又はドープされていてよい。ドーピングを使用して、伝導性を増強することができる。ETL材料の例は特に限定されず、電子を輸送するために典型的に使用されるものである限り、任意の金属錯体又は有機化合物を使用してよい。
電荷発生層(CGL)
【0085】
タンデム型、又は積層型のOLED中で、CGLは、性能において重要な役割を果たし、それぞれ、電子及び正孔の注入ためのn-ドープ層及びp-ドープ層からなる。電子及び正孔は、前記CGL及び電極から供給される。前記CGL中の消費された電子及び正孔は、それぞれカソード及びアノードから注入された電子及び正孔によって再び満たされ、その後バイポーラ電流が徐々に安定した状態に達する。典型的なCGL材料は、輸送層で用いられるn型及びp型伝導性ドーパントを含む。
【0086】
有機気相ジェットプリンティング(OVJP)は、OLEDディスプレイのプリントに用いられることができる無溶媒の有機薄膜堆積技術である。OVJPはキャリアガスを利用し、加熱された供給源容器から基板に近接したプリントノズルアセンブリに有機材料を輸送する。
図3に示されるように、OVJPプロセスは、同伴(エントレインメント;entrainment)、混合、噴射、及び凝縮の4つの基本操作に分けられることができる。操作301で、昇華オーブン302などの源で生成された有機蒸気は、不活性ガスの流れに同伴されることができる。操作303で、蒸気及びガスの流れは、加熱されたプレナム(plenum)304内で混合されることができ、他の蒸気源305からの流れと混合されて、所望の組成の膜を作製することができる。操作306では、混合蒸気流は、加熱されたノズル307のアレイによって噴射物に集束(collimate)される。操作308で、有機蒸気は、噴射が衝突する基板309上で凝縮することができる。基板は、有機蒸気の昇華温度よりも低くてもよく、積極的に冷却されてもよい。パターン化された薄膜は、ノズルに対して基板の移動310により生成されることができる。幾つかの実施形態においては、OVJPシステムが定常状態で動作できるように、膜は離散ピクセルではなく連続線としてプリントされることができる。
【0087】
プリントノズルアセンブリの設計及び堆積条件は、プリント線の特性を決定することができる。幾つかのプリントヘッドは、マルチカラーOLEDディスプレイの個々のサブピクセルの発光層を堆積するために、線幅(50μmの程度)でプリントされた線を生成できるが、線がオーバースプレーし、プリンティングを迅速に開始及び停止することができなかった。開示された主題の実施形態においては、排出アパーチャによって囲まれた堆積アパーチャとガス閉じ込め流との組合せを用いるマイクロノズルアレイを用いて、線幅及びオーバースプレーを制限することができる。この配列は、DEC(堆積排出閉じ込め)と呼ばれることができる。
【0088】
DECによるガス閉じ込めは、高真空よりもむしろ、50Torr~300Torrのチャンバ圧力が用いられるので、以前のOVJP配列とは異なることができる。閉じ込めガス流を使用して、所望の堆積領域からの有機材料の拡散と輸送を防ぐことにより、オーバースプレーを排除することができる。
図4aにおける基板の投影から示されるDEC堆積器の設計は、一対の排出アパーチャ403の間に配置された1つ以上の送達アパーチャ402で開口(port)された平面表面401を含むことができる。送達アパーチャを通る流れは、不活性な送達ガスに同伴された有機蒸気を含むことができる。排出アパーチャは、送達流を超える質量流量で堆積器の下の領域からガスを取り出すことができる。排出は、送達流及びその中に同伴された余剰有機蒸気、並びに堆積器の周囲の環境から引き出された閉じ込めガスの残りを除去することができる。送達アパーチャ及び排出アパーチャは、DEスペーサー404(即ち、堆積器排出スペーサー)によって分離されることができる。アパーチャは長方形であることができ、アパーチャの長軸がプリンティング方向405に平行になるように配列されることができる。
【0089】
幾つかの実施形態においては、堆積器は、マイクロノズルアレイ406上に直線状に配列されることができ、各堆積器は、少なくとも1つの側面境界407で別のものと面する。堆積器の頂部408及び底部409のエッジは、マイクロノズルアレイのエッジによって画定されることができる。堆積器の下部面にエッチングされた閉じ込めガス分配トレンチ410は、その流れが各堆積器の側面境界に亘って均等に分配されるように、閉じ込めガスの低インピーダンス(抵抗;impedance)経路を提供する。また、特にこれらのチャネルが省略されている場合、閉じ込めガスが堆積器のエッジから流入することができる。アレイは、堆積器間のクロストークを最小限にすることができ、複数のプリントされた形態が堆積器アレイの幅に亘って可能な限りほぼ同一にする。例えば、エッジ効果を最小限にするために、アレイの両端部に追加の排出アパーチャを配することができる。幾つかの実施形態においては、マイクロノズルアレイ下の流れ場は、周期的な対称性を有することができる。堆積器は、特定のサイズの形態及び形態プロファイルを生成することができる種々の形状を有するアパーチャを有することができる。堆積器が複数の送達アパーチャを含む場合、アパーチャは、共通の送達チャネルから供給されることができる。
【0090】
プリントされた膜の平均厚みtは、t=ηejvτ/ρで表されることができ、jvは、基板への有機蒸気の質量流束であり、τは、基板上の所定の点がアパーチャの下にある期間であり、ρは、凝縮した有機材料の密度である。利用効率ηは、基板上で凝縮する堆積器から発生する有機蒸気の割合である。アパーチャの長さをl、プリントヘッドと基板との間の相対速度をvとすると、τ=l/vであるので、より長い送達アパーチャは、より長い期間、所定のプリント速度で基板表面上の所定の点がアパーチャの下にとどまることを可能にする。この配列は、より早いプリンティングを提供することができる。DEC堆積器のアパーチャは、通常、できるだけ長く作成されることができる。
【0091】
DEC堆積器は、
図4bにおいてプリンティング方向に垂直な断面に示される。DEC堆積器のジオメトリを画定する寸法も、
図4bに示される。送達アパーチャ411の幅はDである。送達アパーチャを通る送達ガスの質量流量は、QDによって求められる。送達と排出との間のDEスペーサーは、幅DE412を有し、排出は、幅E413を有する。堆積器の排出アパーチャを通るガスの質量流量はQEである。堆積器及び基板414は、浮上高さギャップg415によって分離されることができる。プロセスガスの流れパターンは、破線の矢印によって示されることができる。有機蒸気を運ぶ送達ガス416の流れは、QDの質量流量で送達アパーチャを通って入ることができる。この流れは、基板417に衝突して、有機材料の薄膜を堆積させることができる。基板の平面内の堆積されていない有機蒸気の広がりは、QCの速度で堆積器の側面を通って入る閉じ込めガス流418によって抵抗されることができる。送達流及び閉じ込め流は、各排出アパーチャの下で合流し、質量流量QEの排出流419で堆積ゾーンから取り出されることができる。
【0092】
開示された主題の実施形態は、デバイスのアクティブ領域内で均一な膜厚を提供し、プリントされた形態は、メサ(mesa)状の厚みを有することができる。
図5aは、DEC OVJP堆積器で可能なメサ状の堆積プロファイルを示し、種々のプロセス条件下でプリントされた幾つかの線のプロフィロメトリートレース501を示す。縦軸502は、正規化された形態の厚みを示し、横軸503は、線の中心からのずれ(offset;オフセット)を示す。ターゲットのプリンティングゾーンは、OLEDディスプレイにおけるサブピクセル間の境界を画定する誘電体グリッド505の2つの領域間のアクティブ領域504であることができる。幾つかの実施形態においては、ターゲットゾーンは、50μm幅であることができる。線プロファイルは、プロセス条件に応じて、ガウス分布に近いものからメサ型に近いものまで及ぶことができる。幾つかの実施形態においては、メサの平らな頂部は、アクティブ領域と同じ幅であり、プリントされたプロファイルの裾(tail)は、隣接するデバイスのアクティブ領域に、グリッドを超えて延びないことができる。
【0093】
図5bに示されるものなどの堆積器を用いて、メサ状の薄膜形態をプリントすることができる。送達アパーチャは、セクション506とセクション507に分割されることができ、各セクションで生成された堆積プロファイルの最も厚い部分は、一方からずらされ(offset)、基板に対して移動する堆積器によって作成された組み合わされたプリントされた形態は、幅が広く、メサ状の頂部を有することができる。完全な形態は、単一パスでプリントされることができるが、1以上のガウシアン厚み分布を有する形態を生成する堆積器では、複数のパスを必要とすることがある。堆積器は、回転対称性であることができ、一方の側の狭いスペーサー508と他方の側の広いスペーサー509によって、各堆積器は、他方側の排出から離れている。この構造は、2017年3月31日出願の米国特許出願第15/475,408号明細書(現在は米国特許公開第2017/0294615号明細書)に開示され、米国特許公開第2015/0376787号明細書に開示される技術を用いて容易に作製されることができ、いずれもその開示内容の全体を参照によって組み込まれる。
【0094】
均一な厚みの被覆膜は、
図5cに示されるように、ノズルを走査して重なり合う線を生成することで近似させることができる。個々のガウシアン堆積プロファイル510(破線として示される)を合わせて、±0.5%以下の厚み変動を有する膜511(実線として示される)を形成することができる。この実施形態においては、個々のプロファイルは、7.7μmの標準偏差を有することができ、中心間が120μm離れていることができる。この方法で、任意の形状の領域を満たすことができる。
【0095】
図6aに示されるように、OVJPマイクロノズルアレイのアパーチャは、シリコン(Si)ダイのエッジに位置されることができる。ダイ内のチャネルが、ダイ602の下部面601でのシンギュレーション(singulation)中に二分されるようにアパーチャが形成されることができる。ダイ602は、送達ガス604のための流路と排出ガス605のための流路を開口された加熱されたクランプ603によって保持されることができる。送達ガス604のための流路は、ダイ602に入ると、90°の回転606を有することができる。送達ガス604は、ダイ602の平面に沿ってエッジまで流れることができる。排出ガスは逆の経路をたどる。
【0096】
エッジオン配列は、所定の範囲の形態サイズ及び堆積器の幾何学的複雑さを有することができる。アパーチャは、長方形であることができ、結合線(bond line)と交差することができる。堆積器の設計は、より一般化されたジオメトリを使用するように変更されることができる。ダイ内のトレンチは、可能な限り真っ直ぐな側壁に対して深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)によって形成されることができ、側壁の傾斜に変化があることがある。側壁の傾斜の変化は、他の要因の中でも、ウェーハ上の形態の位置に依存する。これは、アパーチャの幅とそれによるコンダクタンスが幅の広いマイクロノズルアレイに亘って大きく異なることがあるので、面内(in-plane)設計のスケーラビリティを制限する。
【0097】
幾つかの実施形態においては、アパーチャが研磨されたダイ面と同一平面にある面内マイクロノズルアレイは、エッジオンアレイよりも利点を提供することができる。各アパーチャの形状は、フォトリソグラフィーによりサブミクロンの許容誤差で定義されることができる。これにより、各アパーチャの伝導率(conductivity)に亘って更なる制御を提供することができる。面内設計は、深掘りエッチングを用いることができるが、そのようなエッチングは、形態が比較的浅く、側壁の傾斜の影響を受けないように配列されることができる。任意の形状の面内アパーチャは、フォトリソグラフィーで画定されることができる。エッジオン配列は、シーリングを容易にするために、ダイの反対側に堆積器とビアが位置される面内配列よりも最初は好まれていた。面内マイクロノズルアレイのために開発されたシーリング技術は、その開示内容の全体を参照によって組み込む、米国特許第8,944,309号明細書及び米国特許公開第2019/0232325号明細書に記載される。
【0098】
面内プリントヘッドのレイアウトを
図6bに示す。マイクロノズルアレイは、その頂部面によって金属キャリアプレート608に結合されたダイ607の下部面606に配置されることができる。気密結合は、AuGe共晶などの高融点はんだと適切なダイボンディング技術を用いて、ダイをウェーハにはんだ付けすることで達成されることができる。金属キャリアプレート608は、はんだシールを介してダイ607上のビア610に接続する送達ガス及び排出ガスのための開口609を有することができる。キャリアプレート608上の開口609は、プリントヘッドへの、及びプリントヘッドからの送達ガス流及び排出ガス流を処理する加熱マニホールド612上の開口611に接続することができる。キャリアプレート608は、Cリングなどの高温ガスケット613を使用する圧縮によってマニホールド612にシールされることができる。キャリアプレート608は、マニホールド612にボルト締め614されることができる。キャリアプレート608は、高純度気相プリンティングのためにダイ607の構成要素をより大きな構成要素に橋渡しするアダプタとして機能することができる。
【0099】
開示された主題の実施形態は、面内プリントヘッドの設計において改善することができる。第一に、実施形態は、シールされなければならない陽圧下で送達ガス導管の周囲長を短縮させる。第二に、実施形態は、送達アパーチャの長さに対して、プリントヘッドによる熱負荷下に配された基板の長さを短縮させる。これにより、所定のプリント速度で基板に伝達される熱量を減少させる。開示された主題の実施形態は、マイクロノズルアレイ内の堆積器として機能する少なくとも2つの別々のプロセスガス分配チャネルを通って流れを制御する、少なくとも少なくとも2つのオリフィスアレイを含む有機気相ジェットプリンティングのためのマイクロノズルアレイを提供する。
【0100】
図7a~
図12bに関連して後述するように、開示された主題の実施形態は、複数の堆積器が連続して(in series)接続され、前記複数の堆積器の第1の堆積器は、少なくとも1つの側面境界で第2の堆積器と面することができる線状アレイを含むマイクロノズルアレイを有するデバイスを提供する。前記マイクロノズルアレイは、複数のオリフィスアレイを含むことができ、前記複数のオリフィスアレイにおける各オリフィスの幅は、流れに対するその断面の短軸で20μm以下であり、送達ガス分配チャネルを通る流れを調節する。前記マイクロノズルアレイは、複数の排出分配チャネルを含むことができ、前記送達ガス分配チャネルと少なくとも1つの前記複数の排出分配チャネルは、前記複数の堆積器のそれぞれと別々の流体連通を有する。
【0101】
前記複数のオリフィスアレイの第1のオリフィスアレイは、第1の方向に配置され、前記送達ガス分配チャネルを制御することができる。前記複数のオリフィスアレイの第2のオリフィスアレイは、第2の方向に配置され、前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つを制御することができる。
【0102】
堆積器の線状アレイは、前記送達ガス分配チャネルと流体連通し、排出チャネルを介して前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つと流体連通する複数の排出アパーチャ間に配置される、1つ以上の送達アパーチャを含む平面表面を含むことができる。スペーサーは、前記複数の排出アパーチャの少なくとも1つから前記1つ以上の送達アパーチャのそれぞれを分離することができる。前記1つ以上の送達アパーチャは、複数のセクションに分割されることができる。幾つかの実施形態においては、前記送達アパーチャ及び前記排出アパーチャの少なくとも1つは、長方形であることができる。前記送達アパーチャ及び前記排出アパーチャの少なくとも1つは、プリンティングの方向に平行な長軸で配列されることができる。前記送達アパーチャの少なくとも1つの送達チャネルは、送達オリフィスを通って前記送達ガス分配チャネルに接続されることができる。前記排出チャネルに連結された前記排出アパーチャは、前記送達チャネルと同一線上に配置されることができる。前記排出チャネルは、前記排出アパーチャよりも大きな流れ制限を有するオリフィスアレイを通って前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つに接続できる。
【0103】
前記デバイスは、複数の列の前記堆積器の線状アレイを含むことができ、各堆積器の第1のエッジ又は第2のエッジは、前記マイクロノズルアレイの第1のエッジ又は第2のエッジによって画定されることができる。
【0104】
前記複数の堆積器を有する線状アレイは、少なくとも前記第1の堆積器と前記第2の堆積器との間に配置された閉じ込めガス分配トレンチを含むことができる。前記複数の堆積器を有する前記線状アレイは、前記送達ガス分配チャネルから供給される複数の送達アパーチャを含むことができる。前記アレイにおける前記堆積器の各アパーチャのプリント方向における長さは、50μm~5mmであることができる。前記複数の送達アパーチャを有する前記線状アレイの各堆積器は、一方の側にある第1のスペーサーともう一方の側にある第2のスペーサーによって、1つの排出から分離されることができ、前記第1のスペーサーは、前記第2のスペーサーよりも狭い。
【0105】
幾つかの実施形態においては、前記マイクロノズルアレイは、ダイの反対面上のキャリアプレートに固定されたダイの片面に配置されることができる。前記キャリアプレートは、前記ダイ上のそれぞれのビアに接続する前記複数の排出ガス分配チャネルの少なくとも1つから、前記送達ガス分配チャネルからの送達ガス及び排出ガスのための開口を有することができる。前記キャリアプレートは、ガスケットを用いてマニホールドにシールされることができる。前記キャリアプレートは、マニホールドにボルト締めされることができる。
【0106】
幾つかの実施形態においては、各堆積器は、突起(boss)上に形成されることができ、陥凹領域が突起間に配置されることができる。陥凹領域からの突起の高さは、0μm~200μmであることができる。前記線状アレイの前記複数の堆積器は、ずらされることができる。
【0107】
幾つかの実施形態においては、前記複数のオリフィスアレイの1つは、前記送達ガス分配チャネルのフロアを形成する送達ガスオリフィスアレイであることができる。前記複数の排出分配チャネルは、前記送達ガス分配チャネルに対して垂直に配置される。前記排出分配チャネルは、前記複数の堆積器を有する前記線状アレイの前記第1の堆積器の少なくとも1つの側での対応に位置される少なくとも1つの排出ビアに流体的に連結される。前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つは、列内の前記線状アレイの隣接する堆積器によって共有されることができる。前記複数のオリフィスアレイの1つは、前記第1の堆積器の排出チャネルと前記複数の排出分配チャネルの少なくとも1つとの間に配置される排出ガスオリフィスアレイであることができ、前記第1の堆積器の排出チャネルから前記少なくとも1つの排出分配チャネルを分離する側壁を亘ってコンダクタンス経路を提供する。
【0108】
幾つかの実施形態においては、前記マイクロノズルアレイは、キャリアプレートに隣接する、第1の表面及び第2の表面を有する第1の層を含むことができる。前記マイクロノズルアレイは、基板に隣接する、第1の表面及び第2の表面を有する第2の層を含むことができる。デバイス層は、前記第1の層と前記第2の層との間に配置されることができ、孔のパターンを含み、前記第1の層及び前記第2の層は、それぞれ、第1の表面及び第2の表面に孔とトレンチでパターン化されることができる。前記第1の層及び前記第2の層の厚みは、前記デバイス層よりも大きいことがある。前記第1の層と前記第2の層の少なくとも1つは、300μm超の厚みを有することができ、前記デバイス層は、100μm以下の厚みを有することができる。
【0109】
前記マイクロノズルアレイは、複数の両面研磨ウェーハ及びシリコンオンインシュレーターウェーハを含むことができる。シリコンオンインシュレーターウェーハのハンドル層は、300μm~600μmの厚みを有し、シリコンオンインシュレーターウェーハのデバイス層は、10μm~50μmの厚みを有する。
【0110】
幾つかの実施形態においては、前記複数のオリフィスアレイの1つは、送達チャネルを介して前記送達ガス分配チャネルに連結されるアパーチャを含む送達チャネルオリフィスアレイであることができる。前記アパーチャは、チャネル軸に沿って10μmの一定の長さで、3つのグループにクラスター化されることができる。前記アパーチャは、送達ビアからの距離が長くなるにつれて広くなることがあり、前記アパーチャの幅は、110μmから184μmに増加することができる。
【0111】
幾つかの実施形態においては、前記送達ガス分配チャネルは、前記複数の堆積器のそれぞれと別々に流体連通する複数のチャネルを含むことができる。前記複数の堆積器は、5%~75%のフィルファクターで表面に形態を形成することができる。前記デバイスは、前記デバイスの面に対する法線ベクトルに平行に配置された固体材料の切れ目のない熱伝導経路であることができる。
【0112】
図7aは、頂部表面701からの開示された主題の実施形態のマイクロノズルアレイを示す。頂部表面701は、加熱マニホールドを通った排出リザーバ及び有機蒸気源と流体連通するキャリアプレートにシールされることができる。頂部表面701は、マイクロノズルアレイの各端部に1つずつ、有機蒸気を同伴した送達ガスを受け入れる、2つの送達ビア702を含むことができる。頂部表面701は、マイクロノズルアレイによって捕捉されたプロセスガス及び余剰有機蒸気を引き出すことができる複数の排出アパーチャ703を含むことができる。送達ビア702は、マイクロノズルアレイの端部に位置され、シールされることができる正圧下での流体界面の外周を最小化することができる。排出アパーチャ703は、フローインピーダンスを最小限にするためにアレイに亘り分散させることができる。後続の図(例えば、
図7b、
図7c、及び
図7d)で用いられる3つの断面の配向は、
図7aにも示されることができる。第1の断面は、堆積器の長さに沿って延び、排出ビア704aを二分し、第2の断面は、第1の断面と平行に延び、排出ビア704b間の平面を二分し、第3の断面は、堆積器705の幅に沿って延びる。
【0113】
図7bは、開示された主題の実施形態に係る、マイクロノズルアレイの基板に対向する側を示す。基板に対向する側は、2つの線状の列で並んで配列された堆積器706のアレイを含むことができる。各堆積器は、突起間に陥凹領域を有する突起に取り付けられ、堆積器間の均一な閉じ込めガス流を促進し、マイクロノズルアレイと基板との間の熱伝達を低減することができる。列は、サブピクセル周期の数分の一だけずらされて、
図5bに示される分割された堆積器のようなほぼ重なり合った線の重ね合わせからメサ状の堆積プロファイルを作成することができる。堆積器突起は、アパーチャを欠いたバンパー突起707のアレイで囲まれることができる。
【0114】
図7cは、開示された主題の実施形態に係る、送達ガス及び排出分配チャネルを含むマイクロノズルアレイの内部構造を示す。
図7cは、堆積器の長さに沿って、排出ビアを二分する構造の断面図を示す。2つの送達ガス分配チャネル708aが、堆積器アレイの両側にある送達ビアの間にのびることができる。送達ガスオリフィスアレイ709は、送達ガス分配チャネルのフロアを形成することができる。送達ガスオリフィスアレイ709は、各堆積器への送達ガス及び有機蒸気の流れを調節しながら、その下の構造体から送達ガス分配チャネルを分離することができる。送達ガスオリフィスアレイ709は、アレイの長さに沿った不均一な堆積を生成させることなく、堆積器の長いアレイを連続して接続させることを可能にすることがある。排出分配チャネル710は、オリフィスアレイの下に配置されることができ、送達ガス分配チャネルに対して垂直にのびることができる。排出分配チャネル710は、その中心に排出ビア711を有することができる。各排出分配チャネル710は、列内の隣接する堆積器で共有されることができる。各堆積器内の排出チャネルは、その隣接する排出分配チャネル710から薄い壁で分離されることができ、両方のチャネルが送達ガスオリフィスアレイに隣接されることができる。オリフィス層の下側にエッチングされた浅いトレンチが壁にまたがり、堆積器における排出チャネルと排出分配チャネルとの間に流路を提供することができる。これらのトレンチのサイズと間隔は、堆積器排出チャネルの長さに沿って排出流を均等に分配するように選択される。このトレンチのアレイは、排出オリフィスアレイ712を形成することができる。送達ガス分配システムなどの追加の形態は、
図7dにおける排出ビア間を通る別の平行断面に沿った分解図で示されることができる。指状突起708bは、送達分配チャネルから分岐し、各堆積器の長さに沿って送達ガスを提供することができる。幾つかの実施形態においては、マイクロノズルアレイは、送達ビア及び排出ビアを有するその頂部に比較的厚い(例えば、>500μm)蓋713と、送達ガス分配チャネルを含むことができる下に配置される分配層714と、送達ガス分配チャネル及びフィンガーのフロアを形成する分配層の下のオリフィス層715と、を含む、4層構造であることができる。送達オリフィス716は、断面図で示され、オリフィス層715の幅を通ってその下の堆積器層までのびている。堆積器層717は、積み重ねの4番目の層であってもよい。
図8bに更に示されるように、断面718(破線で示される)は、堆積器層の上部面を示す。この実施形態は、排出ビアの列の反対側に2つの鏡像の(mirror-image)堆積器を示す。他の実施形態は、単一列の堆積器、2列の線形オフセット堆積器、及び/又は複数列の堆積器を含むことができる。
【0115】
図8aは、開示された主題の実施形態に係る、
図7aに示される堆積器の幅を横切る断面からの堆積器の内部構造を示す。各堆積器801は、送達ガス分配チャネル802及び排出ガス分配チャネル803の下に配置されることができる。堆積器801の送達チャネル804は、1つ以上の送達オリフィス805を通って送達ガス分配チャネル802に接続されることができる。送達アパーチャ806は、送達オリフィス805の下流の送達チャネル804のもう一方の端部に配置されることができ、基板に衝突する送達ガスの噴射を形成することができる。送達アパーチャ806は、送達オリフィス805よりも流れ制限が少ない場合がある。流れ方向としての送達は、
図8aにおける実線矢印で示される。
【0116】
送達チャネル804と同一線上で延びる排出チャネル808につながる排出アパーチャ807を通って堆積器801の下の堆積ゾーンから、排出ガスは引き出される。各排出チャネル808は、オリフィス層の下側にあるエッチングされたポケット809のアレイを通って排出分配チャネルに接続することができる。これらの構造は、排出アパーチャよりも流れ制限が大きく、排出チャネルの長さに沿って排出分配チャネルに排出流を均等に広げる排出オリフィスアレイを形成する。
【0117】
図8bは、送達ガスオリフィスアレイの平面に平行な排出分配チャネルを通って区分された堆積器を示す。堆積器は、プリント方向810に長く、プリンティング速度を最大にすることができる。オリフィスのアレイは、排出ガス分配チャネル803に上昇させると、排出チャネル808に沿って均一に排出を分配することができる。排出チャネル808の部分から排出ビアに最も近い堆積器811の側面に向かって、排出は除去されることができる。排出オリフィスアレイは、堆積器の遠い端部が、排出が減少するのを防ぐことができる。
【0118】
開示された主題の実施形態においては、マイクロノズルアレイは、厚み300μm~600μmの2つの両面研磨(DSP)ウェーハ及び厚み10μm~50μmのデバイス層を有するシリコンオンインシュレーター(SOI)ウェーハから作製されることができる。各ウェーハの厚みは、所望の堆積器の寸法及び/又は実行枠組(performance envelope)によって決定されることができる。製造プロセスの実施形態は、製造の様々な段階におけるマイクロノズルアレイの部分を用いて、
図9に示される。明確にするために個々のダイが示されているが、ダイのウェーハ全体を一度に処理し、後で分離することができる。深掘り反応性エッチング(DRIE)は、各エッチングステップに用いられることができる。
図9aに示されるように、第1のDSPウェーハをエッチングして、トレンチを形成し、蓋901、貫通孔及び送達902及び排出ビア903を形成することができる。
【0119】
図9bに示されるように、SOIウェーハのハンドル層904は、その厚みを通してエッチングされ、分配層を形成することができる。分配層は、送達ガス分配チャネル905及びフィンガー906を含むことができる。排出ビア907は、分配層を通ってのびることができる。
図9cは、エッチングされてオリフィス層を形成するSOIウェーハの一方の側におけるデバイス層908を示す。
図9dに示されるように、オリフィス層のエッチングは、送達オリフィス909がその厚みを通してのびるように入れ子状にする(巣、nested)ことができ、排出オリフィスアレイを形成するポケット910は、デバイス層全体を通してのびない浅いエッチングで形成されることができる。排出ビア911は、オリフィス層を通ることができる。SOIウェーハのハンドル層とデバイス層との間の埋め込み酸化物は、両側の貫通ウェーハエッチングのエッチングストップになることができ、処理後に除去されることができる。
【0120】
図9eに示されるように、第2のDSPウェーハ912は、送達チャネル913の上流部分、排出チャネル914の下流部分、及び排出分配チャネル915を形成することができるトレンチのネットワークでエッチングされることができる。これらの構造は、入れ子状エッチングで形成されることができる。排出分配チャネル915を形成するトレンチの深さは、排出の比較的低い制限流れを可能にするために、それらの幅より大きくてもよい。送達チャネル913及び排出チャネル914になるトレンチは、一方の側の排出アパーチャ及び送達アパーチャに接続するのに十分に深いことができる。この構造の拡大図を
図9fに示す。
【0121】
第2のDSPウェーハの下面を
図9gに示す。操作中、この側(即ち、下側)は、基板に面する。表面をエッチングし、隆起した突起間に凹部916を形成し、アレイの下側の周りのガス流を促進することができる。幾つかの突起は、それらに送達アパーチャ及び排出アパーチャがエッチングされた1つ以上の線状アレイ917に配列された堆積器を含むことができる。この側の形態は、単層エッチングにおいて、又は複数の入れ子状のエッジによって生成されることができる。この構造の拡大図を
図9hに示す。各堆積器突起918は、その隆起面に送達アパーチャ919及び排出アパーチャ920を有することができる。送達アパーチャ919は、ウェーハの一方の側にエッチングされた送達チャネルに接続でき、同様に排出アパーチャ920は、ウェーハの一方の側にエッチングされた排出チャネルに接続することができる。他の突起921は中実であることができ、作製及び操作中に構造の部分に機械的支持及び保護を提供することができる。
【0122】
図9iに示されるように、エッチングが完了すると、ウェーハ接着によって構造を組み立てることができる。堆積器層922は、SOIウェーハ923によって形成されたオリフィス及び分配層に、融着などの技術で結合されることができる。この結合により、堆積器層内の送達チャネルと、SOIウェーハ内の送達オリフィス及び送達ガス分配チャネルとを接続することができる。結合は、堆積器層上の排出分配チャネルを覆うことができる。蓋層924は、融着などの技術を用いて分配層に結合されることができる。これは、送達ガス分配チャネルを覆う一方で、蓋表面における送達ビア及び排出ビアを通って堆積器層が対処される(addressed)ことを可能にする。
【0123】
送達ガスオリフィスアレイは、共通のガス分配チャネルに接続された堆積器のアレイへの流れを調節することができる。この構成においては、オリフィスプレートは、通常大きな圧力降下を用いて流れを均等に分割することができるが、送達ガス経路に沿った圧力降下を最小限にし、OVJPプロセスから最良の結果を達成することができる。幾つかの実施形態においては、オリフィスアレイに、伝導率の異なるオリフィスを設けることができる。伝導性が最も低いオリフィスは、送達ガス供給源近くの堆積器に流れを誘導することができ、伝導性がより高いオリフィスは、供給源から更に堆積器に流れを誘導することができ、送達ガス分配チャネル内の圧力はより低い。
【0124】
送達チャネルオリフィスプレート1001は、
図10aに詳細に示される。送達ビアに最も近い堆積器からの距離は、横軸1002においてミリメートル単位で測定される。各送達チャネルを提供するアパーチャ1003は、チャネル軸に沿って10μmの一定の長さで3つのグループにクラスター化される。アパーチャは、20μm厚の膜を通過する。アパーチャは、幅が110μmから184μmに増加するなど、送達ビアからの距離が増加するにつれて広くなることができる。これにより、送達ガス分配チャネルにおける圧力変動にもかかわらず、オリフィスを通る一定の流れを可能にすることがある。抵抗が長さに反比例するので、スリットオリフィスの長さを変えることは、その流れ抵抗を変化させることができる。オリフィス間で厚みと幅を変え、抵抗を変えることもできる。
【0125】
図10bに示されるように、オリフィスプレートは、等価回路としてモデル化されることができる。共通の場所から各堆積器に送達ガスを供給する1つ以上のオリフィスは、ノード1004として表されることができる。ノードには、1からNまでnの番号を付けることができ、nは、ビアへの堆積器ユニットの数であることができ、Nは、ビアによって供給される堆積器の総数であることができる。堆積器アレイが2つのビアによって供給される場合、2Nの堆積器があり得、nは最も近いビアからの堆積器の数であることができる。各ノードnは、V
nの流動ポテンシャル(flow potential)を有することができる。流動ポテンシャルは、圧力又は圧力の指数(power of pressure)を指すことがある。送達ガス分配ラインに沿ったノードnから離れてノードn+1への流れは、q
nであることができ、各オリフィスを通る流れは、jであることができる。送達ラインに沿った流れに対する抵抗は、R
L1005であることができ、ノードnでのオリフィスを通る流れに対する抵抗は、R
On1006であることができる。これらの量は、次の方程式で関連付けられることができる。方程式1は保存方程式であることができ、方程式2及び方程式3は、それぞれ、各ノードnの分配チャネルとオリフィスに沿った流量を提供することができる。前の方程式を解いて、各オリフィスの流れ抵抗間の関係を決定することによって、方程式4を得ることができる。プリントヘッドが、方程式2及び方程式3が有効で線形であるレジーム(regime)で動作される限り、第1のオリフィスR
O1は、所望の流量と圧力降下に適したサイズにすることができるが、後続のオリフィスの抵抗は、アレイサイズ及びノード間の送達ガス分配チャネルの抵抗によって完全に決定されることができる。
図10aに示されているオリフィスの幅は、方程式4を用いて得られることができる。
【化1】
【0126】
100堆積器として機能する送達ガスオリフィスプレートの性能は、COMSOL Multiphysics(登録商標)シミュレーションソフトウェアを用いたCFD(計算流体力学)を用いてシミュレートした。ヘリウム送達ガスは、300Torrの圧力、600Kの温度、600sccmの総質量流量で供給される(suppled)ことができる。シミュレーション結果を
図10cに示すことができる。各堆積器への流れは、横軸1008上の各堆積器の位置に対して、縦軸1007に示されることができる。上記の可変性幅アパーチャを通る流量は、破線1009で示されることができる。それらは、実線1010でプロットした一定幅アパーチャを通る流量と比較されることができる。可変の幅アパーチャを有するオリフィスプレートは、シミュレーションの数値誤差内で、各堆積器への均一な流れを可能にすることがある。しかしながら、110×10μmの均一なサイズのアパーチャを備えたオリフィスプレートは、送達ガスの下流端部で堆積器をなくす(starve)ことができる。
【0127】
好ましい実施形態における排出分配チャネルは、送達ガス分配チャネルよりも短くてもよいが、好ましい実施形態におけるそれと同様の方法で動作する。排出分配チャネルは、オリフィス層の反対側にある送達ガス分配チャネルに垂直にのびることができる。
図11aは、排出分配チャネル及び排出流の流線を示す。厚み約25μmのSi膜1101は、排出分配チャネル1102を排出チャネル1103から分離するトレンチ側壁によって形成されることができる。膜上に延びるオリフィス1104のアレイは、排出分配チャネルと排出チャネルとを接続することができる。これらのオリフィスは、排出チャネルの長さに沿って均等に流れを分散させることができる。それらがない場合、排出ビア1106に最も近い排出チャネルの端部1105から、排出は引き出されることができ、排出1107の遠い部分からの流れは停滞することができる。送達ガス分配チャネルと同様に、アレイ内の個々のオリフィスの幅を変えて、均一な排出流の分配を促進することができる。
図11bにおけるx軸の配置は、排出チャネル1108における黒い点線で示されることができる。
【0128】
堆積器の長さに沿った排出チャネル内の位置の関数としての流れを
図11bに示す。排出チャネルまでの排出ガス流の速度は、縦軸1109にプロットされ、堆積器の長さに沿った位置は、横軸1110にミクロン単位でプロットされる。ゼロの水平座標は、排出ビアに最も近い排出チャネルの端部に対応することができる。
図11bにおけるグラフは、堆積器セクション当たりの12sccmのN
2排出の典型的な操作条件下で、流速において系統的変動がないことを示すことができる。
【0129】
堆積器面が凝縮した有機材料で汚れることがないように、熱伝達用の高伝導性経路がダイに亘って存在することができる。堆積器は、基板の近くにあってもよく、ダイの裏側との熱接触が良好でない場合、それによって冷却されてもよい。このことは、Siは良好な熱伝導体である一方、ガスは劣悪な伝導体であるので、ダイ内で許容できるボイド率に制限が生じることがある。更に、
図9iにおける製造プロセス、特にボンディング操作は、ダイに大きな圧力をかけることがある。内部構造は、これに耐えるのに十分な堅牢性がある場合がある。熱伝導経路及び機械的補強のためにシリコンを有すると、
図9bに示される送達ガス分配チャネルに存在するフィンガー構造をもたらすことができる。フィンガーの代わりの広い分配チャネルは、ダイの前面と背面との間に適切な熱的又は機械的接続を提供しないことがある。
【0130】
ダイを通る熱伝達は、COMSOL Multiphysics(登録商標)を用いてモデル化され、シミュレーション出力は
図12に示される。単一の堆積器及びその周囲のチャネルは、
図8aにおいて断面で示されることができる。
図12aは、温度をケルビンで示す等高線プロットであることができる。頂部境界は、600K 1201であることができ、堆積器の下部面は、595K 1202である。基板1203は、堆積器の50μm下に位置され、293Kの温度を有することができる。この結果は、その下部面が冷たい基板に近接しているにもかかわらず、ダイ内の温度が一定であることができることを示す。シリコンデバイダー(divider)1204に沿って、送達ガス分配チャネルフィンガー1205のそれぞれの側への温度勾配は、緩やかであることができ、これらのデバイダーへの効率的な熱の伝導を示す。効率的な伝導経路を必要とする送達チャネル及び排出チャネルの密な充填のために、より低い堆積器1206において、勾配はより強くなることができる。
【0131】
この構造の頂部から底部への熱の流れの線を
図12bに示すことができる。流束の線は、送達ガス分配チャネルフィンガー及び排出チャネル1207などのガスが充填されたチャネルを回避することができる。それらは、送達ガス分配チャネルフィンガーの側面に位置するデバイダーにおいて適度に(moderately)密であることができるが、排出チャネルと排出分配チャネルとの間のSi壁1208及び排出チャネル1209を囲むSi壁の両方において濃縮することができる。これらの伝導経路は、より狭い場合があるが、ダイの下部先端の温度を維持するために適切な熱伝達を提供することができる。その厚みに沿ってダイのSiを通る熱輸送のための切れ目のない経路がある場合がある。
【0132】
本明細書において記述されている種々の実施形態は、単なる一例としてのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解される。例えば、本明細書において記述されている材料及び構造の多くは、本発明の趣旨から逸脱することなく他の材料及び構造に置き換えることができる。したがって、特許請求されている通りの本発明は、当業者には明らかとなるように、本明細書において記述されている特定の例及び好ましい実施形態からの変形形態を含み得る。なぜ本発明が作用するのかについての種々の理論は限定を意図するものではないことが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【文献】米国特許第5,844,363号明細書
【文献】米国特許第6,303,238号明細書
【文献】米国特許第5,707,745号明細書
【文献】米国特許第7,279,704号明細書