(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】工作機械の運転方法
(51)【国際特許分類】
B24B 47/22 20060101AFI20241001BHJP
B24B 49/02 20060101ALI20241001BHJP
B24B 49/18 20060101ALI20241001BHJP
B24B 5/04 20060101ALI20241001BHJP
B24B 49/08 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B24B47/22
B24B49/02 Z
B24B49/18
B24B5/04
B24B49/08
(21)【出願番号】P 2020195045
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】新藤 良太
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-136903(JP,A)
【文献】特開平07-299746(JP,A)
【文献】特開2007-283433(JP,A)
【文献】特開2018-034297(JP,A)
【文献】特開平5-162002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/00 - 51/00
B24B 13/00 ― 13/06
B24B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの少なくとも上面を検出するとともに、回転砥石の研削面の位置を検出して
前記回転砥石の径を判別し、
前記ワークの上面の高さ及び前記回転砥石の径に応じて
前記ワークに対する回転砥石の加工ルートを決定する
ステップと、
前記加工ルートに従って前記回転砥石により前記ワークを研削加工するステップと、
前記研削加工後に前記回転砥石をドレッシングするステップと、
前記ドレッシング後に前記回転砥石の研削面の位置を再検出して、その回転砥石の径を再判別するステップと、
前記再判別した前記回転砥石の径に基づいて前記加工ルートの補正が必要か否かを判断するステップと、
前記加工ルートの補正が必要と判断した場合に前記加工ルートを補正するステップと、
前記加工ルートの補正が不要と判断した場合又は前記加工ルートを補正した場合に、前記ワークの研削加工を継続するか否か判断するステップと、を有する工作機械の運転方法。
【請求項2】
ワークの加工終了後に、加工条件によるワークの加工誤差を検出して、誤差補正の研削を実行する請求項
1に記載の工作機械の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転砥石を有する工作機械の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の工作機械が、特許文献1に開示されている。この特許文献1の工作機械は、作業者がティーチング作業を行うことなく、自動的に研削作業を開始できるようにすることを目的としている。そのため、特許文献1の工作機械においては、砥石による切込み方向におけるワークの位置を検出する検出手段と、切り込み方向に垂直な送り方向におけるワークの位置を検出する検出手段とを備えている。さらに、砥石の位置を検出する検出手段を備えている。そして、それらの位置情報に基づいて、前記のように、ティーチング作業を行うことなく、作業を開始できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1においては、ティーチング作業の省略を目的としているが、ワークに対する加工開始時を含めて、ワークの表面全体を適切に研削できるようにすることは意図されていない。
【0005】
本発明の目的は、ワークの表面をその形状に関わらず、適切に研削できる工作機械の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するために、本発明の工作機械の運転方法においては、回転砥石の研削面の位置を検出して、その回転砥石の外周面と回転砥石の回転中心との間の距離を判別し、その距離に応じてワークに対する回転砥石の加工ルートを決定することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の工作機械においては、回転砥石によってワークを研削する工作機械において、前記回転砥石の研削面を検出する研削面検出手段と、その研削面検出手段の検出結果に基づいて前記回転砥石の径を判別する第1判別手段と、前記ワークの少なくとも上面を検出するワーク検出手段と、前記判別手段の判別結果及びワーク検出手段の検出結果に基づいてワークに対する回転砥石の加工ルートを決定する決定手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
従って、本発明においては、ドレッシングやワーク加工によって回転砥石の径が変化しても、それに応じてワークに対する回転砥石の加工ルートが決定されるため、ワーク表面の加工が適切に実行される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明においては、ワークの表面を適切に加工できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態が実施される平面研削盤を示す正面図。
【
図7】同じく平面研削盤の作用を示すフローチャート。
【
図8】(a)~(d)は第2実施形態における研削状態を示す説明図。
【
図9】(a)~(f)は研削されたワークの推移を示す説明図。
【
図10】第2実施形態の平面研削盤の作用を示すフローチャート。
【
図13】(a),(b),(c)は、それぞれ回転砥石のドレッシング状態を示す一部拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を説明する。
図1に示すように、平面研削盤のフレーム11の上面には、移動台10がX軸方向に移動可能に支持されている。その移動台10にはマグネットチャックよりなるチャックテーブル12が搭載されている。このチャックテーブル12の上面にワーク100が載置される。そして、チャックテーブル12のマグネット29(
図4参照)が通電によって励磁されることにより、チャックテーブル12が磁力を帯び、ワーク100がチャックテーブル12の上面に磁気吸着される。チャックテーブル12には、ワーク100を所定位置で位置決めするための位置決め部材(図示しない)が設けられている。
【0012】
フレーム11の上面にはコラム13がZ軸方向に移動可能に支持されている。コラム13の前面には昇降体14がY軸方向に移動可能に、すなわち昇降可能に支持されている。この昇降体14には、回転砥石15が回転軸25によりその回転軸25の回転中心300を中心として回転可能に支持されている。この回転砥石15の外周の研削面151により、チャックテーブル12上のワーク100の上面が研削される。
【0013】
昇降体14にはタッチプローブ16を有する位置センサ17が下方の計測位置と上方の待機位置とに配置可能に設置されている。移動台10の端部上面には、上端をドレス部としたドレッサ18が搭載されている。移動台10の端部上面には、基準ブロック19が搭載されている。
【0014】
移動台10の端部上面には、非接触タイプの研削面検出ユニット20が搭載されている。この研削面検出ユニット20は、回転砥石15の外周の円筒状の研削面151に対してエアを噴出して、研削面検出手段としての研削面センサ28により背圧を検出する。その背圧の検出によって、研削面151の位置が認識される。
【0015】
図2に示す判別手段及び決定手段としての制御装置21は、制御手段を構成する。制御装置21には、前記チャックテーブル12をX軸方向に往復動させるためのX軸モータ22,コラム13をZ軸方向に往復動させるためのZ軸モータ23,昇降体14をY軸方向に昇降させるためのY軸モータ24が接続されている。制御装置21には、回転砥石15を回転させるための砥石モータ(図示しない)が接続されている。また、制御装置21には前記チャックテーブル12を帯磁させるためのマグネット29のコイルが接続されている。さらに、制御装置21には前記位置センサ17及び研削面センサ28が接続されている。
【0016】
前記制御装置21は、中央処理装置26と記憶部27とを備えている。記憶部27には各種の一時的なデータが記憶されるとともに、本実施形態の平面研削盤を動作させるためのプログラムのデータが記憶されている。中央処理装置26は、前記プログラムによる本実施形態の平面研削盤の各種の動作を制御する。
【0017】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態において加工されるワーク100は、
図1に示す正面から見て上面が円弧凸状に湾曲している。また、
図1及び
図2に示すように、ワーク100は側面形状が四角形である。つまり、ワーク100の上面は円筒面形状である。
【0018】
図6及び
図7に示すフローチャートは、記憶部27に記憶されたプログラムが中央処理装置26の制御のもとに実行されるものである。
すなわち、
図6のステップS(以下、単にSという)1において、作業者により、研削に使用される前の未使用状態の回転砥石15の半径の値が入力される。記憶部27には、あらかじめ、ワーク100の上面の研削によって形成される加工面の曲率のデータが記憶されている(
図5参照)。S2においては、入力された回転砥石15の半径の値をもとにして、回転砥石15の研削面151がワーク100の上面を研削する際の加工ルートを相対移動する。この加工ルートは、回転砥石15の半径、すなわち回転砥石15の回転中心300から回転砥石15の外周面である研削面151までの距離と、ワーク100の上面の加工後の曲率によって算出される。
図5に示すR1は、研削面151が加工ルートを辿る際における回転中心300の移動軌跡を示す。制御装置21は、この移動軌跡が得られるように加工ルートR1を設定する。従って、ワーク100の上面を円弧状に研削する場合には、移動軌跡は、研削された加工面と同心円をなす。
【0019】
移動台10及び回転砥石15は、所要の曲率の加工面が出現するように、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ移動されて、回転砥石15の研削面151がワーク100に対して相対移動する。このように、回転砥石15とワーク100との間の相対移動によってワーク100の上面の研削加工が進行するものであるが、以降の説明においては、研削加工においては、移動台10が停止状態で、回転砥石15がX軸方向及びY軸方向に移動するものと仮定して説明する。
【0020】
ワーク100の研削加工に際しては、
図7のS11において、前記加工ルートR1を示す移動軌跡の曲率データが記憶部27から読み出される。S12においては、移動台10などの移動により、位置センサ17のタッチプローブ16がワーク100の上面を移動することにより、ワーク100のX軸方向における端縁の位置が検出される。また、上面の頂部を含む複数位置の高さが検出される。
【0021】
S13においては、
図3に示すように、回転砥石15が研削面検出ユニット20の位置に回転砥石15が位置して、研削面151の位置が再度検出され、この研削面151の検出に基づいて、回転砥石15の半径が演算されて記憶される。S14においては、
図5に示すように、回転砥石15の半径、ワーク100の位置及び高さ、加工面の曲率のデータから回転砥石15の研削面151の加工ルートR1の位置(砥石加工ルート)が設定されて、記憶部27に記憶される。加工ルートR1は回転中心300の移動ルートを示す。
【0022】
そして、S15においては、設定された加工ルートR1に従って回転砥石15の研削面151が移動して、ワーク100の一方の端縁からワーク100の上面に対する研削加工が実行される。S16においては、研削がワーク100の他方の端縁に達したか否かが判断されて、端縁に達して1ストロークの研削加工が終了か否かが判断される。そして、S17においては、位置センサ17のタッチプローブ16がワーク100の研削加工された面上を移動して、ワーク100の上面の頂部を含む複数位置の高さ及び曲率が検出される。
【0023】
S18においては、回転砥石15の研削面151のドレスが実行される。ただし、このS18の処理は、ワーク100の上面の形状によっては省略されることもある。S19においては、前記と同様に、研削面センサ28により研削面151が検出されて、回転砥石15の半径が演算され、その値が記憶される。そして、S20において、加工ルートR1の補正が必要か否かが判断される。この場合、回転砥石15の半径やワーク100の上面の高さが変動しているため、S21において、新たな加工ルートR2(
図5参照)が算出される。
図5においては、理解を容易にするために、加工ルートR1,R2間の差を誇張して描いている。従って、前記変動量に応じて加工ルートが補正される。
【0024】
そして、プログラムは加工継続か否かのS22の判断を経て、S15に戻る。前記S20において、加工ルートR1の補正を行わないと判断された場合は、S22を経て、研削加工が終了する。S22の判断は、S17において検出されたワーク100の上面が目的とする高さ及び形状に達したか否かによって決定される。この決定は、記憶部27にあらかじめ設定されたデータとの比較に従ってもよく、作業者の判断に従ってもよい。
【0025】
従って、本実施形態においては、以下の効果がある。
(1)研削加工やドレッシングによって、回転砥石15の半径が変化した場合、回転砥石15の加工ルートの曲率や位置が補正されるため、ワーク100の上面を所要の形状の研削することが可能になる。
【0026】
(2)前記のように、ドレッシングによって回転砥石15の半径が変化した場合、その変化に応じて回転砥石15の研削面151の加工ルートを再設定できる。従って、必要なタイミングで、必要な量だけ研削面151をドレッシングできて、加工精度を維持できる。
【0027】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態を第1実施形態と異なる部分について
図8~
図10の図面に従って説明する。
図10に示すフローチャートは、記憶部27に記憶されたプログラムが中央処理装置26の制御のもとに実行されるものである。
【0028】
第2実施形態は、
図8(a)~(d)及び
図9(a)~(f)に示すように、自然状態において湾曲したワーク100に平坦面を形成して、湾曲していないプレート200(
図9(f)参照)を形成するようにしたものである。なお、本実施形態において平坦面とは、湾曲することなく直線状をなすとともに、平滑な面を指す。この平坦面のデータは、あらかじめ記憶部27に記憶されている。また、回転砥石15の研削面151の位置が前記実施形態と同様に検出されて、回転砥石15の半径があらかじめ記憶部27に記憶されている。
【0029】
はじめに、
図8(a)及び
図9(a)に示すように、非帯磁状態のチャックテーブル12上に湾曲されたワーク100を自然状態で載置するとともに、そのワーク100を前記位置決め部材によってチャックテーブル12上の所定位置において位置決めする。この場合、前記
図8(a)及び
図9(a)に示すように、ワーク100の凸状に膨らんだ部分が上向きとなるようにする。しかも、ワーク100がその両端側においてチャックテーブル12上に設置されるようにして、ワーク100がチャックテーブル12上において妄動することなく安定して設置されるようにする。本実施形態においては、
図8(a)及び
図9(a)の膨らんだ上面を第1側面101とし、
図9(a)~(e)に示すように、その裏面を第2側面102とする。
【0030】
そして、位置センサ17を下方の計測位置に移動させる。
この状態において、
図10に示すフローチャートのS31において、
図8(a)に示すように、ワーク100の上側に位置する第1側面101の複数箇所の測定ポイントPに位置センサ17のタッチプローブ16を順次接触させる。そして、各測定ポイントPの位置をチャックテーブル12の上面からの高さ位置として測定させる。そして、その測定ポイントPの位置データは制御装置21の記憶部27に記憶される。
【0031】
次いで、S32において、マグネット29に通電されて、チャックテーブル12が帯磁される。このため、ワーク100が磁力によってチャックテーブル12の上面に吸着される。この吸着状態においては、
図8(b)及び
図9(b)に示すように、ワーク100がチャックテーブル12の上面に対して隙間なく密着されて変形される。このため、ワーク100は湾曲が解消された扁平状になり、この状態が維持される。
【0032】
そして、
図8(b)に示すように、S33において、前記S31と同様に、タッチプローブ16によって、ワーク100の第1側面101の前記測定ポイントPがチャックテーブル12の上面からの高さ位置として順次測定されて、記憶部27に記憶される。
【0033】
次いで、S34において、前記S32において測定された測定ポイントPの位置データと、S33において測定された測定ポイントPの位置データとが比較されて、それらの位置データの差が算出される。そして、S33において測定された扁平状態の高さ位置データの値から前記差の値が減算され、その減算された値がチャックテーブル12の上面からの仮想高さデータとして記憶部27に設定される。例えば、S31において測定された特定測定ポイントPの高さが10ミリメートルで、S33において測定された同じ測定ポイントPの高さが8ミリメートルの場合は、その差2ミリメートルが8ミリメートルから減算される。そして、その減算値である6ミリメートルのデータが特定測定ポイントPの仮想高さデータとして設定される。
【0034】
次のS35において、この各仮想高さデータの値がX軸方向及びY軸方向においてスプライン補間されて、仮想側面111が演算される。この仮想側面111は、
図9(c)に示すワーク100の自然状態における湾曲されたワーク100の第1側面101の形状に対して反転した逆の形状を表す。
【0035】
そして、S36において、
図8(b)及び
図9(b)に示す扁平状態のワーク100の第1側面101において、前記仮想側面111が出現するように回転砥石15によって同第1側面101の研削が実行される。すなわち、
図8(b)及び
図9(b)に示す扁平状態のワーク100の第1側面101に対して、仮想側面111のデータに従って、回転砥石15がX軸,Y軸,Z軸の方向に移動されながら、同第1側面101の研削が実行される。回転砥石15の各行程の移動軌跡は、回転中心300の移動軌跡として記憶部27に記憶される。
【0036】
このようにすれば、
図8(c)及び
図9(c)に示すように、扁平状態のワーク100の第1側面101に仮想側面111を表す形状の面が出現する。従って、この研削によって形成された面は、ワーク100がチャックテーブル12に吸着された状態において、自然状態のワーク100の第1側面101と逆の反転湾曲形状を呈する。
【0037】
従って、S37において、マグネット29に対する通電を遮断し、チャックテーブル12を非帯磁状態にして、ワーク100の吸着を解除すれば、ワーク100が自身の弾性によって自然状態の形状に復元される。この場合、第1側面101が反転した湾曲形状に切削されているため、
図8(d)及び
図9(d)に示すように、自然状態では湾曲形状はなくなり、第1側面101はチャックテーブル12の上面と平行な平坦面形状となる。
【0038】
次いで、S38において、
図9(e)に示すように、ワーク100が手作業で表裏反転され、裏返されて、ワーク100の第2側面102が上になった状態でチャックテーブル12の上面に設置される。そして、ワーク100がチャックテーブル12上において前記位置決め部材によって位置決めされた状態で、S39において、チャックテーブル12が帯磁される。この帯磁により、ワーク100がチャックテーブル12に吸着されて、ワーク100の第2側面102が上向きになった状態で平坦に研削された第1側面101がチャックテーブル12の上面に沿って密接されて、固定される。
【0039】
この状態において、S40において、ワーク100が所要の厚さのプレート200となるように、ワーク100の第2側面102が平坦に切削される。したがって、この状態において、
図9(f)に示すように、全体が均一な厚さのプレート200が形成される。その後、S41において、チャックテーブル12を非帯磁状態にすることにより、プレート200をチャックテーブル12上から取り出すことができる。
【0040】
このようにすれば、湾曲していない平坦な、つまり平滑かつ平板状で、所要厚さのプレート200を得ることができる。
以上の工程においては、回転砥石15の研削時における移動軌跡が記憶部27に記憶される。つまり、回転砥石15の回転中心300の移動軌跡が記憶部27に記憶される。
【0041】
ところで、加工後のプレート200においては、その表面に、意図する平坦面の平面形状に対して誤差が生じることがある。この誤差は、回転砥石15やワーク100の弾性変形、あるいは回転砥石15の径の変化などの加工現象を含む加工条件が原因である。そのため、本実施形態においては、以下の処理が実行される。
【0042】
すなわち、S42において、回転砥石15の研削面のドレッシングが行われる。そして、回転砥石15の研削面151の位置が前記第1実施形態と同様にして検出されて、回転砥石15の半径が演算される。
【0043】
S43において、プレート200の加工された上面の複数箇所がタッチプローブ16により高さ計測される。この場合、チャックテーブル12のマグネット29は消磁されている。また、計測箇所は多いほど好ましい。S44においては、回転砥石15の最後の工程における行程の回転中心300の移動軌跡とドレッシング前の回転砥石15の半径とから研削面151の移動軌跡が算出される。そして、研削面151の移動軌跡とタッチプローブ16によって計測されたプレート200の上面の高さ及び形状とが比較される。そして、S45において、それらの間の誤差が演算される。
【0044】
S46においては、回転砥石15のドレッシング後の半径に基づいて、前記誤差を解消するための研削面151の加工移動ルート,言い換えれば回転中心の移動ルートが演算される。それに従って、S47においては、研削が実行されて、プレート200の上面に正確な平坦面が現出する。
【0045】
従って、本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(3)テーブル12の上面に載置された自然状態において湾曲した板状のワーク100における第1側面101の位置を測定するとともに、ワーク100を前記テーブル12の上面に沿うように吸着によって変形させて、その変形状態で第1側面101の位置が測定される。そして、前後の前記両測定データを比較して、自然状態における測定によって検出された第1側面101の形状とは逆の反転形状の仮想側面111が演算によって設定される。従って、その仮想側面111が出現するように第1側面101を切削すれば、湾曲形状を消滅させた平坦面を得ることができる。
【0046】
(4)第1側面101の測定に際しては、同第1側面101の複数箇所の測定ポイントPを測定し、自然状態及び変形状態の測定データの比較によって仮想測定ポイントの位置データが演算される。そして演算された前記複数箇所の測定ポイントの位置データをスプライン補間することにより、前記仮想側面111が設定される。従って、なだらかに連続する仮想側面111を得ることができる。その結果、仮想側面111が出現するように切削することより平滑な平坦面を得ることができる。
【0047】
(5)仮想側面111に従う形状が出現された第1側面101を基準として、その側面の反対側の第2側面102をワークの非変形状態において切削するため、ワーク100を例えば均一な厚さのプレート200として高精度に加工することができる。
【0048】
(6)第1側面101及び第2側面102の切削を回転砥石15によって行うため、それらの側面101,102を高精度な平坦面に切削できる。
(7)回転砥石15の変形やワーク100の変形、あるいはドレッシング後の回転砥石15の径の変化など、各種の加工現象を含む加工条件によるプレート200の上面の平坦面の誤差を修正するように研削できる。従って、高精度な平坦面を得ることができる。
【0049】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を
図11~
図13(a),(b),(c)の図面に基づいて説明する。本実施形態は、ワーク100が歯車であって、回転砥石15は、そのワーク100を研削するための総型のものである。
【0050】
回転砥石15は、外周の総型形状の研削面151によって、例えば、ワーク100としてのはす歯歯車を研削する。研削面151は、外周の円筒面152と、その両側のほぼインボリュート形状の湾曲面153,154とよりなる。
【0051】
図1及び
図13(b)に示すように、研削面151の形状の計測は回転砥石15に対してX軸方向に離間した位置に配置され、Y軸方向及びZ軸方向にスキャン移動する画像センサ30によって検出される。
【0052】
ドレッサ18は、円筒面をドレスする円筒面ドレッサ181と、湾曲面153,154をドレスする一対の湾曲面ドレッサ182,183とにより構成されている。円筒面ドレッサ181は前記第1,第2実施形態と同様に固定である。湾曲面ドレッサ182,183は、その先端のドレスポイントが湾曲面153,154に対して法線方向を向くように位置調節される。従って、円筒面ドレッサ181は第1,第2実施形態と同様に用いられる。湾曲面ドレッサ182,183の使用においては、回転砥石15が昇降されるとともに、Z軸方向に往復移動されて、研削面151の輪郭形状が現出される。
【0053】
そして、ワーク100の研削やドレッシングが行われるごとに、研削面151の輪郭形状が検出される。このため、回転砥石15の半径と、湾曲面153,154とが認識される。この認識に基づいて、研削面151の加工ルートが演算される。つまり、本実施形態においては、ワーク100がモータ50によりその軸線400を中心にして低速回転される。これと同時に、回転砥石15がワーク100の歯101間をワーク100の軸線400方向に移動される。
【0054】
回転砥石15のドレッシングは、研削面151の湾曲面153,154の形状を、円筒面152の半径の減少に従って調整するように行われる。
(変更例)
本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化してもよい。
【0055】
・前記第1~第3実施形態と異なる形状のワーク100に対して加工を行うこと。例えば、上面が波形や凹面形状のワーク100の上面を研削すること。
・加工工程において、1行程の加工が終了するごとに、ドレッシングを行い、それに応じて回転砥石15の研削面の位置を検出して、回転砥石15の半径の値を書き換えること。
【0056】
・回転砥石15の研削面151の形状を第1~第3実施形態とは異なる形状(例えば、球面形状)にしたり、回転砥石15の側面において研削するようにしたりすること。
【符号の説明】
【0057】
15…回転砥石
17…位置センサ
20…研削面検出ユニット
21…制御装置
27…記憶部
28…研削面センサ
100…ワーク
151…研削面
R1…加工ルート
R2…加工ルート