(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】目地カバー装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/68 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E04B1/68 100Z
(21)【出願番号】P 2021053197
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健治
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-84704(JP,U)
【文献】登録実用新案第3168022(JP,U)
【文献】米国特許第06912751(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地を介して隣接する建造物の側縁に夫々配設された連結基体と、
前記目地に差し渡され、該目地の幅方向に並設された複数のカバー板を備えた目地カバー体と、
目地の幅方向に伸縮可能に形成され、両端部が両建造物の各連結基体に夫々枢結されると共に、前記目地カバー体の各カバー板が回動可能に連結された複数の伸縮保持体と
を備えてなる目地カバー装置において、
前記伸縮保持体は、
一対の第一リンク片が互いの中央部で交差状に枢結された複数の第一リンク要素部を、目地の幅方向に列ねて、隣合う第一リンク片の端部同士を夫々枢結させることによって、パンタグラフ状に形成され、各第一リンク要素部の一対の第一リンク片が枢結された第一中央枢結部に、前記目地カバー体の各カバー板が夫々枢支される第一伸縮リンク体と、
前記第一リンク片に比して長尺の一対の第二リンク片が互いの中央部で交差状に枢結された複数の第二リンク要素部を、目地の幅方向に列ねて、隣合う第二リンク片の端部同士を夫々枢結させることによって、パンタグラフ状に形成され、前記第一伸縮リンク体よりも目地表側または目地奥側に配設された第二伸縮リンク体と
を備え、
前記第一伸縮リンク体の第一中央枢結部は、所定数個おきに、前記第二伸縮リンク体の各第二リンク要素部を構成する一対の第二リンク片が枢結された第二中央枢結部に、夫々枢支されていることを特徴とする目地カバー装置。
【請求項2】
第一伸縮リンク体は、枢結される各第一リンク片の間に、該第一リンク片の幅寸法よりも外径の大きい円板状の第一介装体が夫々摺動可能に介装されてなると共に、
第二伸縮リンク体は、枢結される各第二リンク片の間に、該第二リンク片の幅寸法よりも外径の大きい円板状の第二介装体が夫々摺動可能に介装されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の目地カバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接する建造物間の目地を覆う目地カバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地震による被害を最小限に留めるために、緩衝機能を備えた免震装置によって下部を支持した建造物が多く建設されている。こうした免震構造の建造物間には、地震による変位を吸収し得る目地が形成されており、かかる目地を覆う目地カバー装置が配設されている。
【0003】
例えば特許文献1には、隣接する建造物の壁相互間の目地を覆う目地カバー装置が提案されている。この構成は、両端が両建造物の側壁に夫々枢支されたパンタグラフ状の伸縮アームが、目地の長手方向に複数配設されると共に、該伸縮アームに設けられた複数の枢支部に、複数のカバー板が夫々回動可能に連結されて、カバー板相互がスライド可能に配設される。かかる構成は、地震時に両建造物が相対変位すると、伸縮アームが伸縮作動して、該伸縮作動に従って各カバー板がスライドすることによって該相対変位に追従できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のカバー板をスライドさせることにより両建造物の相対変位に追従させる前述の構成にあっては、該カバー板の配設数を増加することによって、よりスムーズに該相対変位に追従させることが可能である。そして、カバー板の配設数を増加させる場合には、該配設数の増加に応じて、伸縮アームの枢支部を増加する必要がある。ここで、伸縮アームは、枢支部の増加に伴って、隣合う枢支部の間隔が狭くなることから、該伸縮アームを構成するパンタグラフ状の各要素部が小さくなる傾向にある。しかし、各要素部が小さくなると、カバー板の支持安定性が低減する虞があった。こうしたことから、カバー板の配設数を増やしても、各カバー板の支持安定性を十分に保ち得る伸縮アームを備えた構成が希求されていた。
【0006】
本発明は、両建造物の相対変位にカバー板をスムーズに追従させることができ、かつ各カバー板の支持安定性を向上し得る目地カバー装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、目地を介して隣接する建造物の側縁に夫々配設された連結基体と、前記目地に差し渡され、該目地の幅方向に並設された複数のカバー板を備えた目地カバー体と、目地の幅方向に伸縮可能に形成され、両端部が両建造物の各連結基体に夫々枢結されると共に、前記目地カバー体の各カバー板が回動可能に連結された複数の伸縮保持体とを備えてなる目地カバー装置において、前記伸縮保持体は、一対の第一リンク片が互いの中央部で交差状に枢結された複数の第一リンク要素部を、目地の幅方向に列ねて、隣合う第一リンク片の端部同士を夫々枢結させることによって、パンタグラフ状に形成され、各第一リンク要素部の一対の第一リンク片が枢結された第一中央枢結部に、前記目地カバー体の各カバー板が夫々枢支される第一伸縮リンク体と、前記第一リンク片に比して長尺の一対の第二リンク片が互いの中央部で交差状に枢結された複数の第二リンク要素部を、目地の幅方向に列ねて、隣合う第二リンク片の端部同士を夫々枢結させることによって、パンタグラフ状に形成され、前記第一伸縮リンク体よりも目地表側または目地奥側に配設された第二伸縮リンク体とを備え、前記第一伸縮リンク体の第一中央枢結部は、所定数個おきに、前記第二伸縮リンク体の各第二リンク要素部を構成する一対の第二リンク片が枢結された第二中央枢結部に、夫々枢支されていることを特徴とする目地カバー装置である。
【0008】
かかる構成にあっては、目地カバー体の各カバー板が連結された第一伸縮リンク体の、所定数個おきの第一中央枢結部に、長尺の第二リンク片からなる第二伸縮リンク体の第二中央枢支部を夫々枢支したものであるから、外的な要因により第一伸縮リンク体に生ずる揺れ(ばたつき等)や振動を、第二伸縮リンク体によって抑制することができる。ここで、第二伸縮リンク体は、第一リンク要素部に比して大きい第二リンク要素部により構成されていることから、第一伸縮リンク体に比して前記外的な要因による揺れや振動が抑えられる。これにより、目地カバー体を介して作用する風等(外的な要因)により生ずる第一伸縮リンク体の揺れや振動を、第二伸縮リンク体によって抑制できる。そして、第二伸縮リンク体により揺れや振動が抑制されることによって、地震時に両建造物が相対変位した際に、第一伸縮リンク体が安定して伸縮作動できることから、該第一伸縮リンク体の作動安定性を向上できる。したがって、本発明の構成によれば、目地カバー体の支持安定性を向上することができるため、カバー板の配設数を増加した目地カバー体を設けた構成としても、該目地カバー体を安定して支持できる。
【0009】
前述した本発明の目地カバー装置にあって、第一伸縮リンク体は、枢結される各第一リンク片の間に、該第一リンク片の幅寸法よりも外径の大きい円板状の第一介装体が夫々摺動可能に介装されてなると共に、第二伸縮リンク体は、枢結される各第二リンク片の間に、該第二リンク片の幅寸法よりも外径の大きい円板状の第二介装体が夫々摺動可能に介装されてなるものである構成が提案される。
【0010】
かかる構成にあっては、第一介装体によって、枢結された第一リンク片同士で生ずる揺れ(ばたつき、がたつき等)を抑制できることから、第一伸縮リンク体の全体としての揺れや振動を効果的に抑制することができる。そのため、第一伸縮リンク体による目地カバー体の支持安定性を向上できると共に、該第一伸縮リンク体がスムーズかつ安定して伸縮作動できる。さらに、第二介装体によって、枢結された第二リンク片同士で生ずる揺れ(ばたつき、がたつき等)を抑制できることから、第二伸縮リンク体の全体としての揺れや振動を効果的に抑制でき、第二伸縮リンク体がスムーズかつ安定して伸縮作動できる。これにより、第一伸縮リンク体による目地カバー体の支持安定性を一層向上できると共に、第一伸縮リンク体をスムーズかつ安定して伸縮作動させる作用効果が一層向上する。
【0011】
ここで、第一介装体は、その外径が、第一リンク片の幅寸法から該幅寸法の3倍までの範囲とすることが好適である。これは、幅寸法を大きくすることによる前記揺れ抑制の作用効果と、外径を大きくすることによる材料コストの増加との費用対効果に基づくものである。さらに、外径を大きくすると、伸縮した際に第一介装体同士が接触する虞もあるため、これを抑制するため、外径の上限を設定することが好ましい。同様に、第二介装体は、その外径が、第二リンク片の幅寸法から該幅寸法の3倍までの範囲とすることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の目地カバー装置によれば、前述したように、目地カバー体の支持安定性を向上できることから、両建造物の相対変位に対する追従性を向上させる目的でカバー板を増加した構成としても、目地カバー体を安定して支持することができるため、前記追従性の向上と支持安定性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】目地カバー装置1の施工状態を示す平面図である。
【
図2】目地カバー装置1の施工状態を示す正面図である。
【
図4】目地カバー体21を省略して示す正面図である。
【
図5】伸縮保持体7の、(A)平面図と、(B)正面図である。
【
図8】(A)第一伸縮リンク体31の正面図と、(B)第二伸縮リンク体51の正面図である。
【
図9】第一伸縮リンク体31を構成する第一リンク要素部32の分解斜視図である。
【
図10】第二伸縮リンク体51を構成する第二リンク要素部52の分解斜視図である。
【
図11】建造物81,82が離間方向に相対変位した場合の、目地カバー装置1の作用説明図である。
【
図12】建造物81,82が上下方向に相対変位した場合の、目地カバー装置1の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
本実施例の目地カバー装置1は、いわゆる壁用目地カバー装置であり、
図1,
図2に示すように、目地83を介して隣接する左右の建造物81,82間に配設されて、両建造物81,82の側壁面85,86間の目地83を遮蔽するものである。建造物81,82はそれぞれ、緩衝機能を備えた免震装置(図示せず)によって下部が支持された免震構造の建造物である。目地83は、建造物81と建造物82との間に所定幅で形成され、地震の際に建造物81と建造物82との水平方向の相対的な揺れを吸収し得るようになっている。
【0015】
尚、本実施例では、目地83の幅方向を左右方向として説明する。また、目地83の奥行き方向(以下、表裏方向とも言う)における、目地83の手前側を表側とし、逆側を奥側として説明する。すなわち、本実施例の目地カバー装置1にあって、後述の目地カバー体21側が前記表側であり、伸縮保持体7側が前記奥側である。
【0016】
建造物81,82の、互いに対向する側壁面85,86には、目地カバー装置1を構成する左右の連結基体2,2が夫々配設されている。連結基体2は、上下方向に延在する断面L形の固定枠11と、該固定枠11にヒンジ12を介して表裏方向に回動可能に枢結されるブラケット13と、該ブラケット13に固結された取付金具15とを備えている。ここで、固定枠11は、図示しないアンカーボルトにより側壁面85,86に強固に固定されている。また、ヒンジ12は、上下方向に所定間隔をおいて複数配設されている。
左右のブラケット13,13には、同じ高さ位置に一対の取付金具15,15が対向状に夫々固結されており、一対の取付金具15,15が、上下に間隔をおいて二組配設されている(
図4参照)。ここで、取付金具15は、目地奥行き方向に沿う連結部と、該連結杆の両端に夫々接合された一対の支持板とから構成された平面視略コ字状を成し、両支持板に挿通孔(図示せず)が夫々開口されている(
図6参照)。
【0017】
前記した左右の連結基体2,2には、
図4に示すように、複数の伸縮保持体7が差し渡されている。伸縮保持体7は、その両端部が、前記一対の取付金具15,15に、上下方向に回動可能に夫々枢結されて、左右の連結基体2,2間に差し渡されている。伸縮保持体7は、
図1,
図4~
図6に示すように、目地83の奥行き方向に並設された第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とから構成されており、該第一伸縮リンク体31の奥側に該第二伸縮リンク体51が配設されている。
【0018】
第二伸縮リンク体51は、
図8(B),
図10に示すように、複数の第二リンク片53がパンタグラフ状に枢結されたものであり、二個の第二リンク片53,53を螺子杆41により枢結されたX状の第二リンク要素部52が、複数連結された構成を有する。ここで、第二リンク要素部52は、互いの中央部を交差させた第二リンク片53,53が、該中央部で前記螺子杆41により回動可能に枢結されてなる。そして、第二伸縮リンク体51は、複数(3個)の第二リンク要素部52を左右方向に列ねて、隣合う第二リンク要素部52,52の各第二リンク片53,53の端部同士が螺子杆42により回動可能に夫々枢結されることによって、パンタグラフ状に形成されてなる。さらに、両端の第二リンク要素部52,52には、当該第二リンク要素部52,52を構成する第二リンク片53,53の端部に、一端部同士を螺子杆43により枢結される一対の第二短尺リンク片54,54の他端部が螺子杆42により回動可能に夫々枢結されている。そして、前記一対の第二短尺リンク片54,54の一端部を枢結する前記螺子杆43により、前記取付金具15に回動可能に枢結される。このように第二伸縮リンク体51は、その両端(第二短尺リンク片54,54の一端部)が前記螺子杆43により取付金具15に夫々枢結されることによって、左右の連結基体2,2に回動可能に連結されている。尚、本実施例にあって、各第二リンク要素部52の、前記螺子杆41により枢結される第二リンク片53,53の中央部が、本発明にかかる第二中央枢結部に相当する。
【0019】
前記した第一伸縮リンク体31は、
図8(A),
図9に示すように、前記第二リンク片53に比して短尺の複数の第一リンク片33がパンタグラフ状に枢結されたものである。すなわち、二個の第一リンク片33,33を前記螺子杆41または螺子杆45により枢結されたX状の第一リンク要素部32が、複数連結された構成を有する。ここで、第一リンク要素部32は、互いの中央部を交差させた第一リンク片33,33が、該中央部で前記螺子杆41,45により回動可能に枢結されてなる。そして、第一伸縮リンク体31は、複数(11個)の第一リンク要素部32を左右方向に列ねて、隣合う第一リンク要素部32,32の各第一リンク片33,33の端部同士が螺子杆46により回動可能に夫々枢結されることによって、パンタグラフ状に形成されてなる。さらに、両端の第一リンク要素部32,32には、当該第一リンク要素部32,32を構成する第一リンク片33,33の端部に、一端部同士を前記螺子杆43により枢結される一対の第一短尺リンク片34,34の他端部が螺子杆45により回動可能に夫々枢結されている。そして、前記一対の第一短尺リンク片34,34の一端部を枢結する螺子杆43により、前記取付金具15に回動可能に枢結される。このように第一伸縮リンク体31は、その両端(第一短尺リンク片34,34の一端部)が前記螺子杆43により取付金具15に夫々枢結されることによって、左右の連結基体2,2に回動可能に連結されている。尚、本実施例にあって、各第一リンク要素部32の、前記螺子杆41,45により枢結される第一リンク片33,33の中央部が、本発明にかかる第一中央枢結部に相当する。
【0020】
こうした第一伸縮リンク体31を構成する第一リンク要素部32は、
図7に示すように、二個おきに、前記した第二リンク要素部52の第二リンク片53,53を枢結する前記螺子杆41によって、該第一リンク要素部32を構成する第一リンク片33,33が枢結される。そして、他の第一リンク要素部32は、その第一リンク片33,33が螺子杆45によって枢結される。また、第一伸縮リンク体31の両端に配設される第一短尺リンク片34,34は、一端部同士が、前記した前記した第二伸縮リンク体51の両端に配設された第二短尺リンク片54,54の一端部同士を枢結する螺子杆43によって、前記取付金具15,15に枢結される(
図6参照)。すなわち、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とは、夫々の両端が螺子杆43,43によって取付金具15,15に回動自在に枢結されて、左右の取付金具15,15間に差し渡されている。
【0021】
尚、前記螺子杆41は、第一リンク要素部32の第一リンク片33,33と、第二リンク要素部52の第二リンク片53,53とを枢結するものであることから、他の第一リンク片33,33を枢結する螺子杆45に比して長尺である。同様に、第一伸縮リンク体31の両端と第二伸縮リンク体51の両端とを取付金具15に枢結する前記螺子杆43は、前記螺子杆45に比して長尺である。また、第一リンク片33,33の端部同士を枢結する前記螺子杆46と、第二リンク片53,53の端部同士を枢結する前記螺子杆42とは、比較的短尺であり、前記した螺子杆41,43に比して短い。こうした各螺子杆41~43,45,46は、各リンク片33,34,53,54および取付金具15に夫々開口された挿通孔(図示せず)に挿通されて、図示しないナットが螺合されることにより、各リンク片33,53を回動自在に枢結した状態で保持される。
【0022】
また、第一リンク要素部32には、
図8(A),
図9に示すように、螺子杆41,45により枢結される第一リンク片33,33の中央部の間に、円板状の第一介装体36が介装されている。この第一介装体36は、第一リンク片33の幅寸法に比して大きい外径寸法により形成され、中央部に、前記螺子杆を挿通可能な挿通孔(図示せず)が開口されている。さらに、同じ第一介装体36が、隣合う第一リンク要素部32,32の第一リンク片33,33の端部の間、第一リンク片33の端部と第一短尺リンク片34の端部との間、および第一短尺リンク片34,34の端部の間に、夫々介装されている。このように第一介装体36が介装されることにより、枢結される第一リンク片33,33が該第一介装体36の表裏面に摺動可能に夫々接触し、枢結される第一リンク片33と第一短尺リンク片34とが該第一介装体36の表裏面に摺動可能に夫々接触し、枢結される第一短尺リンク片34,34が該第一介装体36の表裏面に摺動可能に夫々接触する。
【0023】
同様に、前記した第二リンク要素部52には、
図8(B),
図10に示すように、螺子杆41により枢結される第二リンク片53,53の中央部の間に、円板状の第二介装体56が介装されている。この第二介装体56は、第二リンク片53の幅寸法に比して大きい外径寸法により形成され、中央部に、前記螺子杆を挿通可能な挿通孔(図示せず)が開口されている。さらに、同じ第二介装体56が、隣合う第二リンク要素部52,52の第二リンク片53,53の端部の間、第二リンク片53の端部と第二短尺リンク片54の端部との間、および第二短尺リンク片54,54の端部の間に、夫々介装されている。このように第二介装体56が介装されることにより、枢結される第二リンク片53,53が該第二介装体56の表裏面に摺動可能に夫々接触し、枢結される第二リンク片53と第二短尺リンク片54とが該第二介装体56の表裏面に摺動可能に夫々接触し、枢結される第二短尺リンク片54,54が該第二介装体56の表裏面に摺動可能に夫々接触する。
【0024】
ここで、本実施例にあっては、前記第一リンク片33と第一短尺リンク片34とが、同じ断面形状の鋼製の角パイプにより形成されており、前記第一介装体36が、枢結される各リンク片33,34の対向面の幅寸法に比して大きい外径寸法で形成されている。第一介装体36の外径寸法は、前記第一リンク片33(および第一短尺リンク片34)の対向面の幅の約2倍としている。一方、前記第二リンク片53と第二短尺リンク片54とは、前記第一リンク片33に比して断面サイズの大きい鋼製の角パイプにより形成されており、第二介装体56は、枢結される各リンク片53,54の対向面の幅寸法に比して大きい外径寸法で形成されている。第二介装体56の外径寸法は、前記第二リンク片53(および第二短尺リンク片54)の対向面の幅の約2倍としている。
さらに、第一リンク片33と第二リンク片53との各長さ寸法は、前記のように二個おきの第一リンク要素部32と各第二リンク要素部52とを螺子杆41によって枢結でき、且つ常態(地震の無い状態)で該第二リンク要素部52の上下幅が該第一リンク要素部32の上下幅よりも広くなるように、夫々設定されている。そして、第一短尺リンク片34と第二短尺リンク片54とは、こうして設定される第一リンク片33と第二リンク片53との長さ寸法に応じて、夫々設定される。
【0025】
このように伸縮保持体7は、目地83の奥行き方向に並設された第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とにより構成され、該第一伸縮リンク体31を構成する第一リンク要素部32が、二個おきに、該第二伸縮リンク体51の第二リンク要素部52と螺子杆41によって枢結されると共に、該第一伸縮リンク体31の両端と第二伸縮リンク体51の両端とが螺子杆43,43によって左右の取付金具15,15に枢結されたものである。そのため、両建造物81,82の相対変位によって、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが一体的に伸縮および回動作動する。
ここで、第一伸縮リンク体31は、二個おきの第一リンク要素部32が、螺子杆41によって、該第一リンク要素部32に比して上下方向幅の大きい第二リンク要素部52と枢支されていることから、風等により生じ得る該第一伸縮リンク体31の揺れ(ばたつき)や振動を、該第二リンク要素部52によって抑制できる。さらに、第一伸縮リンク体31を構成する各リンク片33,34の間に、前記第一介装体36を介装していることによっても、該第一伸縮リンク体31に生ずる前記揺れや振動を抑制できる。同様に、第二伸縮リンク体51は、各リンク片53,54の間に前記第二介装体56を介装することによって、該第二伸縮リンク体51に生ずる揺れや振動を抑制できる。こうしたことから、伸縮保持体7の全体としての揺れや振動を、一層抑制できる。これにより、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが円滑に伸縮作動することができることから、地震の際に両建造物81,82が相対変位すると、該相対変位にスムーズに追従できる。
【0026】
また、上下に間隔をおいて配設された二個の前記伸縮保持体7,7には、
図4に示すように、上下方向に延在された複数の支持杆29が差し渡されており、各支持杆29が、各第一リンク要素部32の第一リンク片33,33を枢結する前記螺子杆41,45に、夫々回動可能に連結されている。ここで、本実施例にあっては、第一伸縮リンク体31が11個の第一リンク要素部32により構成されていることから、各第一リンク要素部32に連結された11個の支持杆29が、左右方向に間隔をおいて並設される。
【0027】
各支持杆29には、
図1に示すように、上下方向に延在されたカバー板22,23が夫々固結されており、これらカバー板22,23によって、目地83を遮蔽する目地カバー体21が構成される。目地カバー体21は、左右方向の中央に配置される中央カバー板22と、該中央カバー板22の左右両側に夫々配置される複数の側部カバー板23と、左右両側端に夫々配置される端部カバー板24とから構成されている。ここで、中央カバー板22と各側部カバー板23とが、各支持杆29に夫々固結される一方、各端部カバー板24は、前記ブラケット13に固結される。
【0028】
中央カバー板22は、
図2,3に示すように、上下方向に延在する矩形平板状の中央水平板部22aと、該中央水平板部22aの裏面(奥側の面)に固結された断面略コ字状の中央支持杆部22bとから構成されている。中央支持杆部22bは、前記中央水平板部22aの左右方向中央部に、該中央水平板部22aの上下方向に亘って設けられる。そして、中央カバー板22は、中央支持杆部22bの奥壁部が、左右方向の中央に位置する支持杆29に、図示しない螺子杆によって固結される。
【0029】
側部カバー板23は、上下方向に延在する矩形平板状の側部水平板部23aと、該側部水平板部23aの内側縁から奥側へ延出された断面L形の脚縁部23bとから構成されており、一枚の鋼板を折曲加工することにより成形されてなる。側部水平板部23aは、前記中央カバー板22の中央水平板部22aと、上下方向の長さ寸法が同じ矩形平板状に形成されており、脚縁部23bは、側部水平板部23aの上下方向に亘って設けられる。そして、側部カバー板23は、脚縁部23bを内側(中央カバー板22側)にして配置され、該脚縁部23bの奥壁部が、図示しない螺子杆によって前記支持杆29に固結される。ここで、側部カバー板23は、前記中央カバー板22を固結した中央の支持杆29を除く全ての支持杆29に、夫々固結されることから、該中央カバー板22の両側に夫々五個ずつ配設される。
【0030】
端部カバー板24は、前記連結基体2のブラケット13に取り付けられており(
図1参照)、矩形平板状の端部水平板部24aと、該端部水平板部24aの外側縁から奥側へ延出された取付部24bとから構成されており、一枚の鋼板を折曲加工することにより成形される。端部水平板部24aは、前記中央水平板部22aおよび側部水平板部23aと同じ長さ寸法で形成されている。
【0031】
このように目地カバー体21は、一個の中央カバー板22と複数(本実施例にあっては、十個)の側部カバー板23と二個の端部カバー板24とから構成されており、隣合うカバー板22~24の左右方向の側縁部が摺動可能に重なり合っている。ここで、中央カバー板22の外側縁部は、該中央カバー板22と隣合う左右両側の側部カバー板23,23の内側縁部上に夫々重ねられ、各側部カバー板23の外側縁部は、左右の外側で隣合う側部カバー板23の内側縁部上に夫々重ねられ、端部カバー板24の外側で隣合う側部カバー板23の外側縁部は、該端部カバー板24の内側縁部上に重ねられる。これにより、端部カバー板24の端部水平板部24a、各側部カバー板23の側部水平板部23a、および中央カバー板22の中央水平板部22aが階段状に重なっており、中央水平板部22aが最も高い位置にある(
図1参照)。また、中央カバー板22の中央支持杆部22bと、側部カバー板23の脚縁部23bとは、各支持杆29に固結された状態(目地カバー体21を構成した状態)で、前記のように階段状に重なるように、該中央支持杆部22bと各脚縁部23bとの夫々の奥行き方向の寸法が設定されている。すなわち、中央カバー板22の中央支持杆部22bは、奥行き方向の寸法が最も長く、各側部カバー板23の脚縁部23bは、夫々の奥行き方向の寸法が、中央から左右外側に向かって段々と短くなっている。
【0032】
次に、本実施例の目地カバー装置1の作動態様について説明する。
図11に示すように、地震の際に両建造物81,82が離間する方向に相対変位すると、各伸縮保持体7を構成する第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが伸張する。これに伴って、第一伸縮リンク体31の各第一リンク要素部32に支持杆29を介して枢結された各側部カバー板23が、左右両外側に向かって移動して、目地カバー体21が伸張する。ここで、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とは、前述したように円滑に伸縮作動できることから、地震による両建造物81,82の離間方向への相対変位にスムーズに追従できる。このように伸縮保持体7の伸張に連動して中央カバー板22と各側部カバー板23とが摺動することにより、両建造物81,82の離間方向への相対変位に追従して、目地カバー体21がスムーズに伸張できる。
【0033】
また、地震の際に両建造物81,82が近接する方向に相対変位した場合(図示せず)には、各伸縮保持体7を構成する第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが収縮し、該第一伸縮リンク体31の収縮に伴って各側部カバー板23が中央カバー板22に向かって移動して、目地カバー体21が収縮する。このように近接方向へ相対変位した際にも、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが円滑に収縮して、当該相対変位にスムーズに追従できる。そして、中央カバー板22と各側部カバー板23とが摺動することにより、前記近接方向への相対変位に追従して、目地カバー体21がスムーズに収縮できる。
【0034】
一方、
図12に示すように、地震の際に両建造物81,82が上下方向に相対変位した場合には、各伸縮保持体7を構成する第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが上下方向へ傾動し且つ該傾動に伴って伸張する。ここで、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とは、夫々円滑に伸縮でき、且つ両建造物81,82に固定された連結基体2,2(一対の取付金具15,15)に回動可能に夫々枢結されていることから、地震による両建造物81,82の上下方向への相対変位にスムーズに追従できる。そして、第一伸縮リンク体31の傾動に伴って、中央カバー板22と各側部カバー板23とが上下方向へ移動して、目地カバー体21が傾動する。このように中央カバー板22と各側部カバー板23とが第一伸縮リンク体31に連動して摺動することによって、両建造物81,82の上下方向への相対変位に追従して、目地カバー体21がスムーズに傾動できる。
【0035】
さらに、地震の際に両建造物81,82が目地83の奥行き方向に相対変位した場合(図示せず)には、取付金具15,15が奥行き方向に傾動し且つ第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とが伸張する。そして、第一伸縮リンク体31の伸張に伴って、目地カバー体21が伸張する。ここで、伸縮保持体7の両端を枢結した取付金具15,15は、両建造物81,82の側壁面85,86に固定された固定枠11,11に、ヒンジ12,12を介して枢結されていることから、両建造物81,82の奥行き方向への相対変位にスムーズに追従できる。
【0036】
前述したように、本実施例の目地カバー装置1は、中央カバー板22と側部カバー板23とから構成される目地カバー体21によって、両建造物81,82の側壁面85,86間の目地83を遮蔽する壁用のものである。かかる目地カバー装置1にあっては、地震の際に両建造物81,82が相対変位すると、該相対変位に追従して伸縮保持体7が伸縮および傾動し、これに伴って中央カバー板22と側部カバー板23とが摺動することよって、目地カバー体21がスムーズに伸縮および傾動できる。ここで、本実施例の目地カバー体21は、中央カバー板22と側部カバー板23との配設数が比較的多い構成であることから、前記した両建造物81,82の相対変位に追従して一層スムーズに伸縮および傾動できる。
【0037】
本実施例の伸縮保持体7は、前記中央カバー板22と側部カバー板23とが夫々枢支された第一伸縮リンク体31の、二個おきの第一リンク要素部32と、第一リンク片33に比して長尺の第二リンク片53により構成された第二伸縮リンク体51の各第二リンク要素部52とが、螺子杆41によって枢結されたものであるから、風などの外的な要因により第一伸縮リンク体31に生ずる揺れ(ばたつき)や振動を、該第二伸縮リンク体51によって抑制できる。特に、本実施例の第二リンク要素部52は、前記長尺の第二リンク片53によって、常態で第一リンク要素部32に比して上下方向に幅広に形成されたものであることから、第二伸縮リンク体51は、第一伸縮リンク体31に比して、前記外的な要因による揺れや振動が抑えられる。そのため、第二伸縮リンク体51によって、前記第一伸縮リンク体31の揺れや振動を一層効果的に抑制することができる。こうしたことから、第一伸縮リンク体31に枢結された前記中央カバー板22と側部カバー板23とを安定して支持できると共に、該第一伸縮リンク体31が円滑かつ安定して伸縮作動できる。
さらに、本実施例では、第一伸縮リンク体31が、各リンク片33,34間に第一介装体36を介装してなるものであるから、前記外的な要因によって第一伸縮リンク体31に生ずる揺れや振動を抑制できる。同様に、第二伸縮リンク体51が、各リンク片53,54間に第二介装体56を介装してなるものであるから、第二介装体56に生ずる前記揺れや振動を抑制できる。こうしたことから、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とは、第一介装体36と第二介装体56とによって夫々円滑に伸縮作動できると共に、前記中央カバー板22と側部カバー板23との支持安定性も向上する。
本実施例の目地カバー装置1は、比較的多数の前記カバー板22,23を配設することによって両建造物81,82の相対変位に対する追従性を向上させた構成であって、第一伸縮リンク体31と第二伸縮リンク体51とのスムーズな伸縮作動により前記カバー板22,23の追従性を一層向上できると共に、該第一伸縮リンク体31による各カバー板22,23の支持安定性を向上できる。
【0038】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、伸縮保持体7の配設数は適宜変更して設定することができ、目地カバー装置1の設置場所、通路の幅、目地カバー体21の重量などに応じて適宜設定することが好適である。
【0039】
また、実施例は、第一伸縮リンク体31の、二個おきの第一リンク要素部32と、第二伸縮リンク体51の各第二リンク要素部52とを、螺子杆41によって枢結した構成であるが、これに限らず、一個おきや三個おきの第一リンク要素部と各第二リンク要素部とを枢支する構成としても良い。
【0040】
また、実施例は、第一伸縮リンク体31の第一介装体36が、第一リンク片33の幅の約2倍の外径からなる円板状としたものであるが、これに限らず、第一介装体の外径は適宜変更して設定することが可能である。第一介装体の外径は、第一リンク片33の幅寸法から該幅の3倍までの範囲とすることが好適である。ここで、第一リンク片33の幅よりも大きい外径とすることによって、第一伸縮リンク体31の揺れや振動を抑制するという前述の作用効果が発揮され得る。一方、外径が大きくなると、材料コストが増加すると共に、伸縮した際に、隣接する第一介装体同士が接触する虞がある。こうしたことから、第一介装体は、その外径が、該第一リンク片の3倍以下とすることが好ましく、さらに、該第一リンク片の2倍以下とすることが好ましい。
同様に、第二介装体56の外径も、第二リンク片53の幅寸法から該幅の3倍までの範囲で適宜変更して設定できる。この範囲とすることによって、前記第一介装体と同様に、第二伸縮リンク体の揺れや振動を抑制すると共に、材料コストの増加と伸縮時における第二介装体同士の接触とを抑制できる。尚、第二介装体の外径は、第二リンク片の幅の2倍以下が好ましい。
【0041】
また、実施例は、第一伸縮リンク体31の目地奥側に第二伸縮リンク体51を配設した構成であるが、これに限らず、第二伸縮リンク体51を、第一伸縮リンク体31の表側に配設した構成としても良い。この場合には、第一伸縮リンク体31の各第一リンク要素部32を枢結する螺子杆45を、第二伸縮リンク体51よりも表側に突出する長尺のものとして、その先端部に前記支持杆が枢結される構成とすることにより、実現可能である。
【0042】
また、実施例は、目地カバー体21を構成する中央カバー板22と各側部カバー板23とを、支持杆29を介して各第一リンク要素部32に枢結する構成としたが、これに限らず、該支持杆29を設けずに、中央カバー板22と各側部カバー板23とが各第一リンク要素部32に直接的に枢結される構成としても良い。
【0043】
また、実施例は、目地カバー体21が中央カバー板22の左右両側に五個の側部カバー板23を夫々配設した構成であるが、これに限らず、各カバー板22,23の配設個数は適宜変更して設定することができる。
【0044】
また、実施例は、壁用の目地カバー装置1について例示したが、これに限らず、天井用の目地カバー装置に、本発明の構成を適用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 目地カバー装置
2 連結基体
7 伸縮保持体
11 固定枠
12 ヒンジ
13 ブラケット
15 取付金具
21 目地カバー体
22 中央カバー板
22a 中央水平板部
22b 中央支持杆部
23 側部カバー板
23a 側部水平板部
23b 脚縁部
24 端部カバー板
24a 端部水平板部
24b 取付部
29 支持杆
31 第一伸縮リンク体
32 第一リンク要素部
33 第一リンク片
34 第一短尺リンク片
36 第一介装体
41~43,45,46 螺子杆
51 第二伸縮リンク体
52 第二リンク要素部
53 第二リンク片
54 第二短尺リンク片
56 第二介装体
81,82 建造物
83 目地
85,86 側壁面