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特許7563765カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とするペプチド免疫原ならびに片頭痛の治療及び予防のためのそれらの配合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とするペプチド免疫原ならびに片頭痛の治療及び予防のためのそれらの配合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20241001BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K19/00
A61K39/00 H ZNA
A61K38/16
A61K47/26
A61P25/06
C07K14/47
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021561882
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 US2019069117
(87)【国際公開番号】W WO2020142522
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】62/787,102
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521287968
【氏名又は名称】ユナイテッド ニューロサイエンス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UNITED NEUROSCIENCE LIMITED
【住所又は居所原語表記】9 Exchange Place, International Financial Services Centre, D01 X8H2 Dublin Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チャン イ
【審査官】松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0106137(US,A1)
【文献】国際公開第2007/054809(WO,A2)
【文献】国際公開第2007/076336(WO,A1)
【文献】米国特許第06559282(US,B1)
【文献】Peptides,1999年,Vol.20, No.2,p.275-284
【文献】NATURE REVIEWS NEUROLOGY,2018年04月24日,Vol.14, No.6,p.338-350
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0以上のアミノ酸を有し、以下の式:
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-X
または
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
または
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
式中、Thは、配列番号74~115からなる群から選ばれるアミノ酸配列を有する異種ヘルパーT細胞エピトープであり、
Aは、異種スペーサーであり、
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)は、配列番号4~24からなる群から選ばれるB細胞エピトープペプチドであり、
Xは、アミノ酸のα-COOHまたはα-CONHであり、
mは、1~4であり、及び
nは、0~10である
で表されるCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項2】
a.配列番号4~24からなる群から選ばれるB細胞エピトープ、
b.配列番号74~115及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヘルパーT細胞エピトープ、
c.アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)、及びPro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される任意選択の異種スペーサー、
を含む、CGRPペプチド免疫原構築物であって、
前記B細胞エピトープは、前記ヘルパーT細胞エピトープと、直接または前記異種スペーサーを通じて共有結合で連結されている、前記CGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項3】
前記B細胞エピトープは、配列番号4~13及び15~24からなる群より選択される、請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項4】
前記B細胞エピトープは、配列番号5~7、9~13、15~16、及び18からなる群より選択される、請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項5】
前記B細胞エピトープは、配列番号6、8、9、及び19からなる群より選択される、請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項6】
前記ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号68、71、74~82、87、89~92、95、及び98、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項7】
前記ヘルパーT細胞エピトープが配列番号98又は配列番号92である請求項1~5のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項8】
前記ヘルパーT細胞エピトープは、前記B細胞エピトープのアミノ末端と直接、共有結合で連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項9】
前記ヘルパーT細胞エピトープは、前記異種スペーサーを通じて、前記B細胞エピトープのアミノ末端と共有結合で連結されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項10】
記異種スペーサーは、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)、またはPro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)であり、配列中、Xaaは、任意のアミノ酸である、請求項1~9のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項11】
前記異種スペーサーがε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)又はLys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)である請求項1~9のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項12】
前記CGRPペプチド免疫原構築物が、配列番号116~146からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項13】
前記CGRPペプチド免疫原構築物が、配列番号116~133、135、137、139、及び141からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項14】
前記CGRPペプチド免疫原構築物が、配列番号119~121、123~127、130~131、133、137、及び139からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項15】
前記CGRPペプチド免疫原構築物が、配列番号120、121、122、123、125、127、129、130、131、132、137及び141からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項16】
前記CGRPペプチド免疫原構築物が、配列番号120、123、130、131及び141からなる群から選ばれる請求項1又は2に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物を含む組成物。
【請求項18】
a.請求項1~16のいずれか一項に記載のCGRPペプチド免疫原構築物、ならびに
b.薬学上許容される送達ビヒクル及び/またはアジュバント、
を含む、医薬組成物。
【請求項19】
記CGRPペプチド免疫原構築物は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されることで、安定化された免疫賦活性複合体を形成する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
CGRPに対する抗体生成する請求項18又は19に記載の医薬組成物
【請求項21】
頭痛又は片頭痛予防するか、及び/または治療する請求項18又は19に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年12月31日出願の米国仮出願第62/787,102号の利益を主張するPCT国際出願であり、当該文献は、そのまま全体が本明細書中参照として援用される。
【0002】
本開示は、片頭痛の予防及び治療のための、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とするペプチド免疫原構築物及びその配合物に関する。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は、米国でも3700万人にも上る多くの人々が苦しんでいる一般的な病状である。これは、単なる頭痛ではなく、全身疾患であると考えられている。最近の研究では、片頭痛の症候が始まるより早ければ24時間も前から、脳に変化が生じ始める場合があることが実証されている。片頭痛症候は、罹患している個体によって様々であるが、重篤な拍動性頭痛(これは頭の片側のみである場合が多い)、悪心、嘔吐、光過敏性(羞明性)、音過敏性(音忌避性(phonophobic))、またはこれら症候の組み合わせを含む場合がある。こうした症候は、たとえ頭痛が去った後でも持続する可能性がある。
【0004】
片頭痛には様々なサブタイプが存在し、それらに伴う症候には、脱力感、しびれ感、視覚の変化または喪失、回転性めまい、及び発話困難(患者によっては、脳卒中を起こしているかのように見える場合もある)が含まれる。この慢性症状から生じる能力障害は深刻であり、労働日数が失われたり家庭生活に参加できなくなったりしてしまう。
【0005】
人々が「先手」薬物療法を使用することが可能な場合があり、この薬物療法は、初期に服用された場合、片頭痛過程を抑止することが可能である。多くの患者にとって、予防薬物療法は、片頭痛の頻度及び重篤度の両方を低下させることができる。しかしながら、片頭痛の予防または治療に使用される予防薬物療法の多くは、本来、他の症状、例えば、てんかん発作、抑うつ、高血圧、及び筋痙攣などのために開発されたものである。
【0006】
研究者らは、何十年もの間、片頭痛専用の「標的」予防療法を開発しようと努力してきた。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、抹消神経細胞及び中枢神経細胞の両方で合成される分子である。この分子は、片頭痛を含む様々な疼痛過程に関与するとされてきており、また血管拡張剤として機能する。片頭痛の先手治療は、片頭痛の開始時にCGRPが活性化するのを抑止することに注目を置いている。小分子CGRPアンタゴニスト薬は、ある種の測定に基づいて片頭痛の疼痛が減少することを示したが、こうしたアンタゴニストは、肝臓毒性を含む深刻な副作用を有する可能性がある。
【0007】
CGRP分子を標的とするモノクローナル抗体は、疼痛過程に阻害効果を有し、先手治療として使用可能である。CGRPに対するモノクローナル抗体は、長い半減期を有することができ、このことは、モノクローナル抗体が、毎日服用される典型的な片頭痛薬物療法よりも少ない頻度で投与可能であることを意味する。(例外がボツリヌス毒素であり、これは90日ごとに注射される)。片頭痛用のモノクローナル抗体は、毎月の皮下注射でよく、これまでのところ、片頭痛日数の統計上有意な減少を実証している。複数の異なる製薬企業が、こうした新規抗体をFDA認可に向けて開発している。
【0008】
そうしたモノクローナル抗CGRP抗体またはモノクローナル抗CGRP受容体抗体は、片頭痛の免疫療法において有効であることを証明する可能性があるものの、それらは高価であり、血清及び体液CGRPレベルの十分な抑制ならびにそこから得られる臨床的有益性を維持するためには毎月投与しなければならない。安全かつ忍容性が十分あるワクチン接種アプローチを通じた、CGRP分子を標的とする、費用効率の高い免疫療法は、片頭痛治療にとって、依然として刺激的な新規治療介入であり発展でもある。
【0009】
古典的なペプチド/ハプテン担体タンパク質免疫原調製法には、多数の短所及び欠点が付随する。例えば、こうした調製法は、複雑な化学カップリング手順が関与する可能性があり、そのような手順は、高価な医療グレードのKLHまたはトキソイドタンパク質をヘルパーT細胞担体として使用するが、タンパク質免疫原により誘導された抗体のほとんどは、担体タンパク質に対して指向化された抗体になってしまい標的のB細胞エピトープ(複数可)に対するものにならない、などである。
【0010】
モノクローナル療法及び古典的ペプチド/ハプテン担体タンパク質調製に伴う経済面ならびに実用面の不利益及び限界の観点から、片頭痛に罹患した患者を治療するため、CGRPの機能性部位(複数可)に対して高特異的免疫応答を誘導することができ、患者に容易に投与可能であり、厳格な医薬品適正製造基準(GMP)下で製造することができ、世界規模で利用するための費用効率が高い、有効な免疫治療組成物を開発するという、満たされていない需要が明らかに存在する。
【0011】
上記の背景技術のセクションでなされた記載に関して、追加の支持文献を引用する2本の総説論文を見つけることができ、これらはそのまま全体が、本明細書により参照として援用される。第一の論文には、CGRP及びCGRP受容体について情報更新された総説が含まれている(ウェブサイト:en.wikipedia.org/wiki/Calcitonin_gene-related_peptide)。第二の論文は、片頭痛の頭痛におけるCGRPの役割に関する重要な臨床エビデンスであるCGRPシグナル伝達の生物学を取り上げたものであり、CGRPを標的とする治療の有効性、三叉神経血管系におけるCGRPの役割、及び片頭痛の病態生理学における三叉神経節の中心的役割への新たな洞察が含まれる(Edvinsson, et al, 2018)。
【0012】
参照文献
1. CHANG, J.C.C., et al., "Adjuvant activity of incomplete Freund's adjuvant," Advanced Drug Delivery Reviews, 32(3):173-186 (1998)
2. "Calcitonin gene-related peptide," Wikipedia, The Free Encyclopedia, website address: en.wikipedia.org/wiki/Calcitonin_gene-related_peptide (accessed December 30, 2018).
3. EDVINSSON, L., et al., “CGRP as the target of new migraine therapies - successful translation from bench to clinic”, Nat. Rev. Neurol., 14(6):338-350 (2018)
4. FIELDS, G.B., et al., Chapter 3 in Synthetic Peptides: A User’s Guide, ed. Grant, W.H. Freeman & Co., New York, NY, p.77 (1992).
5. RUSSELL, F.A., et al., “Calcitonin gene-related peptide: physiology and pathophysiology”, Physiol. Rev., 94(4):1099-1142 (2014)
6. TAJTI, J., et al., “Messenger molecules and receptor mRNA in the human trigeminal ganglion”, J. Auton. Nerv. Syst. 28;76(2-3):176-83 (1999)
7. TRAGGIAI, E., et al., “An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells: potent neutralization of SARS coronavirus”, Nature Medicine, 10:871-875 (2004).
8. WATKINS, H.A., et al., “Structure-activity relationships for a-calcitonin gene -related peptide”, Br. J. Pharmacol., 170(7):1308-22 (2013)
【発明の概要】
【0013】
本開示は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の中のB細胞エピトープとして使用可能な部分に関する。本開示は、CGRP由来のB細胞エピトープを含有するペプチド免疫原構築物、ペプチド免疫原構築物を含有する組成物、ペプチド免疫原構築物の作製法及び使用法、ならびにペプチド免疫原構築物により生成される抗体にも関する。
【0014】
本開示の1つの態様は、片頭痛の予防及び/または治療に使用可能な、ペプチド免疫原構築物においてB細胞エピトープとなる異なる種由来のCGRPの一部分、ならびにそれらの配合物に関する。本開示のCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~127及び130~180)は、合計で30以上のアミノ酸を有し、ヒト、マーモセット、またはラット/マウスのCGRP(すなわち、それぞれ配列番号1~3)から得られる約7~約30アミノ酸を有する機能性B細胞エピトープペプチド(表1の配列番号4~13、15~19、及び20~24)を含有する。機能性B細胞エピトープペプチドを、任意選択の異種スペーサーを通じて、病原タンパク質由来の異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープペプチド(例えば、配列番号74~115)と連結させることにより、本開示のペプチド免疫原構築物を形成することが可能である。
【0015】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、約7~約30のアミノ酸を有するCGRP B細胞エピトープペプチドを含有することができる。B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のC末端領域及び中心領域に位置するCGRP受容体結合領域(例えば、表1に示す配列番号5~9及び15~22)から得ることができる。B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のN末端領域及び中心領域に位置する環状C2-C7ループ周囲のCGRP受容体活性化部位から得ることもできる(例えば、表1に示す、配列番号4、10~13、及び23~24)。設計されたCGRP B細胞エピトープペプチドは、CGRPペプチドのN末端またはC末端いずれかで、病原性タンパク質由来の異種Thエピトープ(例えば、表2の配列番号74~115)と連結させることができる。B細胞エピトープ及びThエピトープは、一緒になって、様々な種の全長CGRP(配列番号1~3)と交差反応性である高特異的抗体の生成を刺激するように作用する。
【0016】
ある特定の実施形態において、CGRP B細胞エピトープペプチドを増強するのに使用される異種Thエピトープは、天然の病原体であるEBV BPLF1(配列番号112)、EBV CP(配列番号109)、Clostridium Tetani(配列番号74、77、104、106~108)、コレラ毒素(配列番号81)、及びSchistosoma mansoni(配列番号80)に由来するもの、ならびに麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF1~5)及びB型肝炎表面抗原(HBsAg1~3)由来の理想化人工Thエピトープで、単一配列または組み合わせ配列(例えば配列番号75、82~99)いずれかの形態にあるものである。
【0017】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、設計されたB細胞エピトープペプチド及びThエピトープペプチドの両方を含有しており、それらが一緒になって、CGRP分子のC末端に位置するCGRP受容体結合領域または受容体活性化に関与する環状C2-C7ループを含むCGRP機能性部位に対して指向化された高特異的抗体の生成を刺激するように作用し、片頭痛の素因を有するまたは片頭痛に罹患している患者に治療免疫応答をもたらす。
【0018】
本開示の別の態様は、CGRPペプチド免疫原構築物を含有するペプチド組成物に関する。実施形態によっては、組成物は、1種のペプチド免疫原構築物を含有する。他の実施形態において、ペプチド組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含む。ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物は、患者の遺伝的背景と同様な広範囲をカバーすることを可能にするため、使用可能な異なる病原由来の異種Thエピトープを有し、それにより片頭痛の予防及び/または治療のための免疫化におけるレスポンダー率のパーセンテージを高める。
【0019】
CGRP免疫原構築物における相乗的増強は、本開示のペプチド組成物で観察することができる。CGRPペプチド免疫原構築物を含有するそのようなペプチド免疫原構築物から得られる抗体応答は、そのほとんど(>90%)が、CGRP機能性部位(複数可)または受容体結合領域ペプチド(配列番号4~13及び15~24)に対する所望の交差反応性に集中しており、免疫原性増強に用いた異種Thエピトープに指向化されたものは、仮に伴うとしても多くはなかった。このことは、そのようなペプチド抗原性増強に使用される従来の担体タンパク質(KLH、トキソイドなど)または他の生物学的担体を使用する標準的な方法とは際立って対照的である。
【0020】
本開示は、片頭痛の予防及び/または治療のための医薬組成物及び配合物も対象とする。実施形態によっては、医薬組成物は、全長CGRP(例えば、配列番号1~3)との所望の交差反応性が得られるようにCGRPペプチドの免疫原性をさらに増強するため、安定化された免疫賦活性複合体を含み、安定化された免疫賦活性複合体は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含むペプチド組成物とCpGオリゴマーを混合することにより静電会合を介して形成される。
【0021】
他の実施形態において、片頭痛の予防及び/または治療に使用可能な医薬組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含むペプチド組成物を、アジュバントとしての無機塩(アラムゲル(ALHYDROGEL)もしくはリン酸アルミニウム(ADJU-PHOS)を含む)と接触させて懸濁剤配合物を形成させるか、またはアジュバントとしてのMONTANIDE(商標)ISA 51もしくはMONTANIDE ISA 720と接触させて油中水型エマルションを形成させたものを含む。
【0022】
さらに、本開示は、動物における片頭痛の予防及び/または治療が可能なCGRPペプチド免疫原構築物及びその配合物を低コストで製造及び品質管理するための方法も提供する。
【0023】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化された抗体にも関する。詳細には、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、全長CGRP分子と交差反応する高特異的機能性抗体の生成を刺激することができる。本開示の抗体は、CGRPと高特異的に結合し、免疫原性の増強に用いられる異種Thエピトープに対して指向化された抗体は、仮に伴うとしても多くはなく、このことは、そのようなペプチド免疫原性増強に使用される従来のタンパク質または他の生物学的担体を使用して生成される抗体とは際立って対照的である。したがって、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、自己CGRPに対する免疫寛容を打ち破る能力を有し、他のペプチド免疫原またはタンパク質免疫原と比較して、得られるレスポンダー率が高い。
【0024】
実施形態によっては、ペプチド免疫原構築物が対象に投与された場合、本開示の抗体は、CGRP分子のC末端部分のCGRP受容体結合部位(例えば、配列番号5~9及び15~22)に対して指向化されて、そうした結合部位に特異的に結合する。これらCGRPペプチド免疫原構築物により誘導される高特異的抗体は、CGRPとCGRP受容体の結合の阻害、及びCGRPの環状C2-C7ループ周囲の領域により引き起こされる細胞性cAMPの上昇における下流の活性化事象の阻害をすることができ、これにより有効な片頭痛の予防及び/または治療をもたらすことができる。
【0025】
他の実施形態において、本発明のペプチド免疫原構築物が対象に投与された場合、本開示の抗体は、下流の細胞活性化事象の一因である環状C2-C7ループ周囲のCGRPのN末端もしくは中心領域に対して、またはCGRP受容体結合部位のC末端及び中心領域に対して指向化されている(例えば、配列番号4、10~13、及び23~24)。CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される高特異的抗体は、(1)CGRPとCGRP受容体の結合、及び(2)CGRPの環状C2-C7ループ周囲の領域により引き起こされる下流の活性化事象を阻害することができ、その結果、細胞性cAMP上昇が抑制され、従って、片頭痛に罹患している患者に有効な治療をもたらす。
【0026】
CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される本開示の抗体は、その独特の特徴及び性質に基づいて、片頭痛に罹患している患者を治療する予防的免疫療法アプローチを提供することができる。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含有する組成物を投与された患者において誘導されるCGRPに対するヒトモノクローナル抗体を提供する。ヒト患者の血液から単離されたB細胞由来のヒトモノクローナル抗体を作製する効率的方法は、Traggiai, E., et al, 2004により記載されており、これは、参照により援用される。
【0028】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物、組成物、及び抗体を作製する方法にも関する。本開示の方法によれば、CGRPペプチド免疫原構築物及び当該構築物を含有する組成物が低コストで製造及び品質管理され、これらは片頭痛に罹患している患者の治療法で使用可能である。
【0029】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物及び/またはCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化された抗体を使用して、片頭痛の素因を有する、または片頭痛に罹患している対象を予防及び/または治療するための方法も含む。対象において片頭痛を予防及び/または治療する方法は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含有する組成物を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、本方法で使用される組成物は、片頭痛に罹患している患者に投与するため、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を、静電会合を通じて負に荷電したオリゴヌクレオチド(CpGオリゴマーなど)と形成された安定免疫賦活性複合体の形態で含み、組成物には、さらに、アジュバントを補充することができる。
【0030】
本開示の方法は、対象において片頭痛を予防及び/または治療するためにCGRPペプチド免疫原構築物を投与するための、投薬レジメン、剤形、及び経路も含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、複数種のCGRP配列のアライメントを示し、種として、ヒト(配列番号1)、マーモセット(配列番号2)、マウス(配列番号3)、ラット(配列番号3)、及びその他多くが含まれ、他の種として、ウマ、トリ、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、オポッサム、ヤモリ、カエル、フグ、ヒラメ、キンギョ、サケ、メダカ(Medalea)、ゼブラフィッシュがある。この図の出典は、Watkins, et al, 2013である。
図2図2は、片頭痛治療のための高精度CGRPデザイナーペプチド免疫原構築物及びその配合物の発見から商業化までの経路を示す。
図3図3は、モルモットで行った、CGRP分子のN末端領域、中心領域、及びC末端領域から得られるCGRP B細胞エピトープペプチドを用いたCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~118、124~127、128、129、131、133、135、137、119~122、139、123、130)の免疫原性試験の結果を示す。
図4図3は、モルモットで行った、CGRP分子のN末端領域、中心領域、及びC末端領域から得られるCGRP B細胞エピトープペプチドを用いたCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~118、124~127、128、129、131、133、135、137、119~122、139、123、130)の免疫原性試験の結果を示す。
図5図4は、代表的なCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~118、124~127、128、129、131、133、135、137、119~123、130、139、及び150)について、CGRP活性化細胞培養物中、モルモット免疫血清(6wpi時の採血から収集)から精製した抗体の存在下での中和活性を細胞内cAMP生成IC50で表して示す。
図6図4は、代表的なCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~118、124~127、128、129、131、133、135、137、119~123、130、139、及び150)について、CGRP活性化細胞培養物中、モルモット免疫血清(6wpi時の採血から収集)から精製した抗体の存在下での中和活性を細胞内cAMP生成IC50で表して示す。
図7図5は、Balb/Cマウスで行った、代表的なCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号123、131、141、151)の、ADJUPHOS配合物及びISA51配合物両方の場合での、7wpi時採血、10wpi時採血、及び13wpi時採血のモルモット免疫血清から精製した対応する抗体を用いた、それらの個々の全長ヒトCGRP分子との反応性及び交差反応性に関する、免疫原性試験の結果を示す。
図8図6は、所定のADJUPHOS配合物またはISAエマルション配合物いずれかに配合されたCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号123、131、141)を用いて、0、3、及び6wpi時にワクチン接種されたBalb/Cマウスで測定されたカプサイシン誘導型皮膚血流の阻害効果を、アジュバントのみまたは生理食塩水の対照物と比較した場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の中のB細胞エピトープとして使用可能な部分に関する。本開示は、CGRP由来のB細胞エピトープを含有するペプチド免疫原構築物、ペプチド免疫原構築物を含有する組成物、ペプチド免疫原構築物の作製法及び使用法、ならびにペプチド免疫原構築物により生成される抗体にも関する。
【0033】
本開示の1つの態様は、片頭痛の予防及び/または治療に使用可能な、ペプチド免疫原構築物においてB細胞エピトープとなる異なる種由来のCGRP中の部分、ならびにそれらの配合物に関する。本開示のCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~127及び130~180)は、合計で30以上のアミノ酸を有し、ヒト、マーモセット、またはラット/マウスのCGRP(すなわち、それぞれ配列番号1~3)から得られる約7~約30のアミノ酸を有する機能性B細胞エピトープペプチド(表1の配列番号4~13、15~19、及び20~24)を含有する。機能性B細胞エピトープペプチドを、任意選択の異種スペーサーを通じて、病原タンパク質由来の異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープペプチド(例えば、配列番号74~115)と連結させることにより、本開示のペプチド免疫原構築物を形成することが可能である。
【0034】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、約7~約30のアミノ酸を有するCGRP B細胞エピトープペプチドを含有することができる。B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のC末端領域及び中心領域に位置するCGRP受容体結合領域(例えば、表1に示す配列番号5~9及び15~22)から得ることができる。B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のN末端領域及び中心領域に位置する環状C2-C7ループ周囲のCGRP受容体活性化部位から得ることもできる(例えば、表1に示す、配列番号4、10~13、及び23~24)。設計されたCGRP B細胞エピトープペプチドは、CGRPペプチドのN末端またはC末端いずれかで、病原性タンパク質由来の異種Thエピトープ(例えば、表2の配列番号74~115)と連結させることができる。B細胞エピトープ及びThエピトープは、一緒になって、様々な種の全長CGRP(配列番号1~3)と交差反応性である高特異的抗体の生成を刺激するように作用する。
【0035】
ある特定の実施形態において、CGRP B細胞エピトープペプチドを増強するのに使用される異種Thエピトープは、天然の病原体であるEBV BPLF1(配列番号112)、EBV CP(配列番号109)、Clostridium Tetani(配列番号74、77、104、106~108)、コレラ毒素(配列番号81)、及びSchistosoma mansoni(配列番号80)に由来するもの、ならびに麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF1~5)及びB型肝炎表面抗原(HBsAg1~3)由来の理想化人工Thエピトープで、単一配列または組み合わせ配列(例えば配列番号75、82~99)いずれかの形態にあるものである。
【0036】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、設計されたB細胞エピトープペプチド及びThエピトープペプチドの両方を含有しており、それらが一緒になって、CGRP分子のC末端に位置するCGRP受容体結合領域または受容体活性化に関与する環状C2-C7ループを含むCGRP機能性部位に対して指向化された高特異的抗体の生成を刺激するように作用し、片頭痛の素因を有するまたは片頭痛に罹患している患者に治療免疫応答をもたらす。
【0037】
本開示の別の態様は、CGRPペプチド免疫原構築物を含有するペプチド組成物に関する。実施形態によっては、組成物は、1種のペプチド免疫原構築物を含有する。他の実施形態において、ペプチド組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含む。ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物は、患者の遺伝的背景と同様な広範囲をカバーすることを可能にするため、使用可能な異なる病原由来の異種Thエピトープを有し、それにより片頭痛の予防及び/または治療のための免疫化におけるレスポンダー率のパーセンテージを高める。
【0038】
CGRP免疫原構築物における相乗的増強は、本開示のペプチド組成物で観察することができる。CGRPペプチド免疫原構築物を含有するそのようなペプチド免疫原構築物の投与から得られる抗体応答は、そのほとんど(>90%)が、CGRP機能性部位(複数可)または受容体結合領域ペプチド(配列番号4~13及び15~19、及び20~24)に対する所望の交差反応性に集中しており、免疫原性増強に用いた異種Thエピトープに指向化されたものは、仮に伴うとしても多くはなかった。このことは、そのようなペプチド抗原性増強に使用される従来の担体タンパク質(KLH、トキソイドなど)または他の生物学的担体を使用する標準的な方法とは際立って対照的である。
【0039】
本開示は、片頭痛の予防及び/または治療のための医薬組成物及び配合物も対象とする。実施形態によっては、医薬組成物は、全長CGRP(例えば、配列番号1~3)との所望の交差反応性が得られるようにCGRPペプチドの免疫原性をさらに増強するため、安定化された免疫賦活性複合体を含み、安定化された免疫賦活性複合体は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含むペプチド組成物とCpGオリゴマーを混合することにより静電会合を介して形成される。
【0040】
他の実施形態において、片頭痛の予防及び/または治療に使用可能な医薬組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含むペプチド組成物を、アジュバントとしての無機塩(アラムゲル(ALHYDROGEL)もしくはリン酸アルミニウム(ADJU-PHOS)を含む)と接触させて懸濁剤配合物を形成させるか、またはアジュバントとしてのMONTANIDE(商標)ISA 51もしくはMONTANIDE ISA 720と接触させて油中水型エマルションを形成させたものを含む。
【0041】
さらに、本開示は、動物における片頭痛の予防及び/または治療が可能なCGRPペプチド免疫原構築物及びその配合物を低コストで製造及び品質管理するための方法も提供する。
【0042】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化された抗体にも関する。詳細には、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、全長CGRP分子と交差反応する高特異的機能性抗体の生成を刺激することができる。本開示の抗体は、CGRPと高特異的に結合し、免疫原性の増強に用いられる異種Thエピトープに対して指向化された抗体は、仮に伴うとしても多くはなく、このことは、そのようなペプチド免疫原性増強に使用される従来のタンパク質または他の生物学的担体を使用して生成される抗体とは際立って対照的である。したがって、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、自己CGRPに対する免疫寛容を打ち破る能力を有し、他のペプチド免疫原またはタンパク質免疫原と比較して、得られるレスポンダー率が高い。
【0043】
実施形態によっては、ペプチド免疫原構築物が対象に投与された場合、本開示の抗体は、CGRP分子のC末端部分のCGRP受容体結合部位(例えば、配列番号5~9及び15~22)に対して指向化されて、そうした結合部位に特異的に結合する。これらCGRPペプチド免疫原構築物により誘導される高特異的抗体は、CGRPとCGRP受容体の結合の阻害、及びCGRPの環状C2-C7ループ周囲の領域により引き起こされる細胞性cAMPの上昇における下流の活性化事象の阻害をすることができ、これにより有効な片頭痛の予防及び/または治療をもたらすことができる。
【0044】
他の実施形態において、本発明のペプチド免疫原構築物が対象に投与された場合、本開示の抗体は、下流の細胞活性化事象の一因である環状C2-C7ループ周囲のCGRPのN末端もしくは中心領域に対して、またはCGRP受容体結合部位のC末端及び中心領域に対して指向化されている(例えば、配列番号4、10~13、及び23~24)。CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される高特異的抗体は、(1)CGRPとCGRP受容体の結合、及び(2)CGRPの環状C2-C7ループ周囲の領域により引き起こされる下流の活性化事象を阻害することができ、その結果、細胞性cAMP上昇が抑制され、従って、片頭痛に罹患している患者に有効な治療をもたらす。
【0045】
CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される本開示の抗体は、その独特の特徴及び性質に基づいて、片頭痛に罹患している患者を治療する予防的免疫療法アプローチを提供することができる。
【0046】
さらなる態様において、本発明は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含有する組成物を投与された患者において誘導されるCGRPに対するヒトモノクローナル抗体を提供する。ヒト患者の血液から単離されたB細胞由来のヒトモノクローナル抗体を作製する効率的方法は、Traggiai, E., et al, 2004により記載されており、これは、参照により援用される。
【0047】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物、組成物、及び抗体を作製する方法にも関する。本開示の方法によれば、CGRPペプチド免疫原構築物及び当該構築物を含有する組成物が低コストで製造及び品質管理され、これらは片頭痛に罹患している患者の治療法で使用可能である。
【0048】
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物及び/またはCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化された抗体を使用して、片頭痛の素因を有する、または片頭痛に罹患している対象を予防及び/または治療するための方法も含む。対象において片頭痛を予防及び/または治療する方法は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含有する組成物を対象に投与することを含む。ある特定の実施形態において、本方法で使用される組成物は、片頭痛に罹患している患者に投与するため、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を、静電会合を通じて負に荷電したオリゴヌクレオチド(CpGオリゴマーなど)と形成された安定免疫賦活性複合体の形態で含み、組成物には、さらに、アジュバントを補充することができる。
【0049】
本開示の方法は、対象において片頭痛を予防及び/または治療するためにCGRPペプチド免疫原構築物を投与するための、投薬レジメン、剤形、及び経路も含む。
【0050】
一般
本明細書中使用されるセクションの見出しは、構成を目的とするものにすぎず、記載対象を限定するものと解釈してはならない。本出願において引用される参考文献または参考文献の一部はすべて、そのまま全体が、あらゆる目的のために本明細書により参照として明確に援用される。
【0051】
特に説明がない限り、本明細書中使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。「a」、「an」、及び「the」という単数の用語は、文脈上特に明確に示されない限り、複数の指示対象を含む。同様に、「または」という言葉は、文脈上特に明確に示されない限り、「及び」を含むことを意図する。したがって、「AまたはBを含む」という語句は、A、もしくはB、またはA及びBを含むことを意味する。さらに当然のことながら、ポリペプチドに対して与えられるすべてのアミノ酸サイズ、及びすべての分子量値または分子質量値はおよそのものであり、説明のために提供されるものである。本開示の方法の実施または試験においては、本明細書記載のものと同様または同等の方法及び材料を使用することができるが、適切な方法及び材料について以に記載する。本明細書中言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はすべて、そのまま全体が参照として援用される。矛盾が生じる場合は、用語の説明を含めて、本明細書が優先されることになる。また、本明細書中開示される材料、方法、及び実施例は、例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0052】
CGRPペプチド免疫原構築物
本開示は、CGRP(配列番号1~3)またはその断片に由来するアミノ酸配列を有するB細胞エピトープペプチドを含有するペプチド免疫原構築物を提供する。CGRPペプチド免疫原構築物は、約7~約30のアミノ酸を有するCGRPBエピトープペプチドを含有することができる。B細胞エピトープペプチドは、(1)CGRP分子のC末端/中心領域に位置するCGRP受容体結合領域(例えば、配列番号5~9及び15~22、表1に示す)、または(2)CGRP分子のN末端/中心領域に位置する環状C2-C7ループ周囲のCGRP受容体活性化部位(例えば配列番号4、10~13、及び23~24、表1に示す)、に由来するものが可能である。B細胞エピトープは、病原タンパク質に由来する異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープ(例えば、配列番号74~115、表2に示す)と、直接または任意選択で異種スペーサーを通じて、共有結合で連結していることができる。これらの構築物は、設計されたB細胞エピトープ及びTh細胞エピトープの両方を含み、それらが一緒になって、様々な種の全長CGRP(配列番号1~3)と交差反応する高特異的抗体の生成を刺激するように作用する。
【0053】
「CGRPペプチド免疫原構築物」または「ペプチド免疫原構築物」という語句は、本明細書中使用される場合、(a)全長CGRP(配列番号1~3)に由来する約7より多い連続アミノ酸残基を有するB細胞エピトープ、(b)異種Thエピトープ、及び(c)任意選択の異種スペーサー、を含む約30より多いアミノ酸を有するペプチドを示す。
【0054】
ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物は、下記の式で表すことができ:
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-X
または
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
または
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
式中、
Thは、異種ヘルパーT細胞エピトープであり、
Aは、異種スペーサーであり、
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)は、受容体結合または受容体活性化いずれかに関与する、CGRP由来の7~30のアミノ酸残基を有するB細胞エピトープペプチドであり、
Xは、アミノ酸のα-COOHまたはα-CONHであり、
mは、1~約4であり、及び
nは、0~約10である。
【0055】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、多くの理論的根拠に基づいて設計及び選択されたものであり、理論的根拠には、以下が含まれる:
i.CGRP B細胞エピトープペプチドは、それ自体は非免疫原性であることで、自己T細胞活性化を回避する。
ii.CGRP B細胞エピトープペプチドは、タンパク質担体または強力なヘルパーT細胞エピトープ(複数可)を使用することによって免疫原性になることが可能である。
iii.CGRP B細胞エピトープペプチドが免疫原性になって宿主に投与されると、ペプチド免疫原構築物は、
a.CGRP B細胞エピトープ(複数可)に対して選択的に指向化されており、タンパク質担体またはヘルパーT細胞エピトープ(複数可)に対しては指向化されていない高力価抗体を誘導し、
b.免疫化された宿主における免疫寛容を打ち破り、CGRP(配列番号1~3)との交差反応性を有する高特異的抗体を生成させ、
c.CGRPとCGRP受容体の結合及びそれに付随する下流事象、例えば、細胞内cAMP産生の上昇を阻害することができる高特異的抗体を生成させ、ならびに
d.カプサイシン誘導型皮膚血流をin vivoで減少させることができる高特異的抗体を生成させる。
【0056】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物及びその配合物は、医薬組成物として有効に機能することで、片頭痛の素因を有する、または片頭痛に罹患している対象の予防及び/または治療を行うことができる。
【0057】
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物の様々な構成要素について、以下でさらに詳細に説明する。
【0058】
a.CGRP由来のB細胞エピトープペプチド
本開示は、複数種のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)タンパク質(例えば、配列番号1~3)に対する特異性を有する高力価抗体を生成させるための新規のペプチド組成物に関する。ペプチド組成物の部位特異性により、CGRPの他領域の無関係部位または担体タンパク質の無関係部位を指向する抗体の生成が最小化され、したがって高い安全係数が得られる。
【0059】
「CGRP」という用語は、本明細書中使用される場合、ペプチドのカルシトニン(CT)ファミリーに属する37アミノ酸ニューロペプチドα-CGRPを示す。ヒトCGRPは、UniProtKB:P06881-1に由来するものであり、配列番号1のアミノ酸配列を有する。マーモセット(Callithrix jacchus)CGRPは、GenBank受入番号AAL35592.1に由来するものであり、配列番号2のアミノ酸配列を有する。ラット(Rattus norvegicus)CGRPは、UniProtKB:P01256に由来するものであり、また、マウス(Mus musculus)CGRPは、UniProtKB:Q99JA0に由来するものであり、ラットCGRP及びマウスCGRPはどちらも、配列番号3のアミノ酸配列を有する。本開示で使用されるCGRPのアミノ酸配列を、表1に示す。
【0060】
ヒトの場合、CGRPは、カルシトニンをコードする遺伝子に由来し、染色体11に位置するカルシトニン/CGRP遺伝子が選択的スプライシングされることで形成される。ヒトの場合、CGRPは、2種のアイソフォームを有する:α-CGRP及びβ-CGRPである。αアイソフォームとβアイソフォームは、3位、22位、及び25位に位置するアミノ酸が異なっている。平滑筋細胞内の分子レベルで、CGRPは、その受容体と、そのC末端領域を介して結合することができ、次いで、そのループ領域を用いることにより受容体を活性化することができる。ジスルフィド架橋を有する環状C2-C7ループは、受容体活性化において基本的役割を有し、細胞内cAMPの上昇と密接に関連する。哺乳類血漿では、CGRPの半減期は約10分である。ヒト三叉神経節では、CGRP反応性ニューロンは、ニューロン全体の最大50%を占める(Tajti, et al., 1999)。
【0061】
CGRPは、中枢神経系及び末梢神経系において広く発現する。CGRPは、主に、血管のすぐ近くにある小径無髄感覚ニューロンに付随している。CGRPは、強力な血管拡張剤であり、CGRPの局所投与は、血流の一過性増加を引き起こす。CGRPは、疼痛伝達、疼痛調節、及び神経原性炎症にも関連するとされてきた。CGRPは、カプサイシンを用いて一過性受容体電位カチオンチャネルV1を活性化することにより、感覚ニューロンから放出させることができる。CGRPが原因となって引き起こされた皮膚血流の変化の検出には、レーザードップラー造影(LDI)が使用されてきた。
【0062】
CGRPは、CGRPノックアウトマウスの応答が減弱することにより実証されるとおり、複数の疼痛モデルにおいて炎症痛とも関連している。疼痛感受におけるこの役割は、感覚ニューロンにおけるCGRPの発現と一致している。
【0063】
本開示の1つの態様は、長期CGRP遮断及び臨床効果を発揮するためにCGRPを標的とする活動的免疫療法を用いて、CGRP片頭痛による頭痛を予防及び/または治療することである。すなわち、本開示は、片頭痛の予防及び治療のための、全長CGRPタンパク質(配列番号1~3)の一部分を標的とするペプチド免疫原構築物及びその配合物に関する。
【0064】
CGRPペプチド免疫原構築物のB細胞エピトープ部分は、配列番号1~3で表される全長CGRPタンパク質の任意の部分に由来する約7~約30のアミノ酸を含有することができる。ある特定の実施形態において、B細胞エピトープペプチドは、設計根拠に基づいてスクリーニング及び選択されたものであり、表1に示すとおりの配列番号4~13及び15~24のアミノ酸配列を含有する。
【0065】
実施形態によっては、B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のC末端/中心領域に位置するCGRP受容体結合領域R11-F37(配列番号9)またはその断片(例えば配列番号5~8及び15~22)に由来する。他の実施形態において、B細胞エピトープペプチドは、環状C2-C7ループの周囲のCGRP受容体活性化領域、例えばA1-N25(配列番号13)またはその断片(例えば配列番号4、10~12、及び23~24)に由来する。
【0066】
本開示のCGRP B細胞エピトープペプチドは、CGRPの免疫学的に機能性な類似体または相同体も含む。CGRP B細胞エピトープペプチドの免疫学的に機能性な類似体または相同体には、元のペプチドと実質的に同じ免疫原性を保持するバリアントが含まれる。免疫学的に機能性な類似体は、あるアミノ酸位置での保存的置換;全体電荷の変化;別の部分との共有結合;またはアミノ酸付加、挿入、もしくは削除;及び/またはそれらの任意の組み合わせを有することができる(例えば、配列番号9のCGRPペプチドと配列番号25のCGRPペプチドの対比)。
【0067】
CGRP由来のこれらB細胞エピトープを含有するペプチド免疫原構築物から生成された抗体は、高特異的であり、様々な種の全長CGRP(例えば、配列番号1~3)と交差反応性である。CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される本開示の抗体は、その独特の特徴及び性質に基づいて、片頭痛を予防及び/または治療する予防的免疫療法アプローチを提供することができる。
【0068】
b.異種ヘルパーT細胞エピトープ(Thエピトープ)
本開示は、CGRP由来のB細胞エピトープと異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープが、直接または任意選択の異種スペーサーを介して共有結合されているものを含むペプチド免疫原構築物を提供する。
【0069】
CGRPペプチド免疫原構築物中の異種Thエピトープは、CGRP断片の免疫原性を増強し、これにより、設計根拠に基づいてスクリーニング及び選択された最適化標的CGRP B細胞エピトープペプチドに対して指向化された特異的高力価抗体の産生が促進される。
【0070】
「異種」という用語は、本明細書中使用される場合、あるアミノ酸配列が、CGRPの野生型配列の一部ではない、またはCGRPの野生型配列と相同ではないアミノ酸配列に由来するものであることを示す。したがって、異種Thエピトープとは、CGRPに天然には見られないアミノ酸配列に由来するThエピトープである(すなわち、Thエピトープは、CGRPに由来するものではない)。ThエピトープがCGRPに対して異種のものであるため、こうした異種ThエピトープがCGRPBエピトープペプチドと共有結合で連結されていても、CGRPの天然のアミノ酸配列は、N末端方向とC末端方向のどちらにも延長されない。
【0071】
本開示の異種Thエピトープとして、CGRP中に天然に見られるアミノ酸配列を有さない任意のThエピトープが可能である。Thエピトープは、複数の種のMHCクラスII分子に非選択的に結合するモチーフも有することができる。ある特定の実施形態において、Thエピトープは、MHCクラスII分子に非選択的に結合するモチーフを複数含むことで、ヘルパーT細胞を最大限に活性化することを可能にし、これにより免疫応答の開始及び調節を引き起こす。Thエピトープは、好ましくは、それ自体は免疫学的に静的であり、すなわち、CGRPペプチド免疫原構築物によって生成される抗体のうちでThエピトープに対して指向化されることになるものは、仮に存在するとしても極めて少なく、したがって、CGRP分子の標的B細胞エピトープペプチドに指向化された非常に集中的な免疫応答を引き起こすことを可能にする。
【0072】
本開示のThエピトープとして、表2に例示されるとおりの外来病原体に由来するアミノ酸配列(配列番号74~115)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、Thエピトープとして、理想化された人工Thエピトープ及び理想化された人工Thエピトープの組み合わせ(例えば、配列番号75及び82~99)が挙げられる。組み合わせ配列(例えば、配列番号85、91、94、及び97)として表される異種Thエピトープペプチドは、その特定のペプチドに対する相同体の可変残基に基づくペプチドフレームワーク内の特定の位置に示されるアミノ酸残基の混合物を含む。組み合わせペプチドの集合物は、合成プロセスの間に、指定の保護アミノ酸の混合物を1つの特定のアミノ酸の代わりに特定の位置に付加することによって1つのプロセスにおいて合成され得る。そのような組み合わせ異種Thエピトープペプチド集合物により、多様な遺伝的背景を有する動物に対するThエピトープ適用範囲を広げることが可能になる。異種Thエピトープペプチドの代表的な組み合わせ配列として、表2に示される配列番号85、91、94、及び97が挙げられる。本発明のThエピトープペプチドは、遺伝的に多様な集団に由来する動物及び患者に対する幅広い反応性及び免疫原性を与える。
【0073】
c.異種スペーサー
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、CGRP B細胞エピトープペプチドと異種ヘルパーT細胞(Th)エピトープを共有結合で連結させる異種スペーサーを、任意選択で含む。
【0074】
上記で検討されるとおり、「異種」という用語は、あるアミノ酸配列が、CGRPの野生型配列の一部ではない、またはCGRPの野生型配列と相同ではないアミノ酸配列に由来するものであることを示す。したがって、異種スペーサーがCGRP B細胞エピトープペプチドと共有結合で連結していても、そのスペーサーはCGRP配列に対して異種であるため、CGRPの天然アミノ酸配列は、N末端方向とC末端方向のどちらにも延長されない。
【0075】
スペーサーとは、2つのアミノ酸及び/またはペプチドを一緒に連結することができる任意の分子または化学構造である。スペーサーは、長さまたは極性が、用途に応じて異なることが可能である。スペーサーの付加は、アミド結合またはカルボキシル結合を通じたものが可能であるが、他の官能基を利用することも可能である。スペーサーは、化合物、天然のアミノ酸、または非天然のアミノ酸を含み得る。
【0076】
スペーサーは、CGRPペプチド免疫原構築物に構造的特長を付与することができる。構造的には、スペーサーは、Thエピトープを、CGRP断片のB細胞エピトープから物理的に分離する。スペーサーによる物理的な分離は、ThエピトープをB細胞エピトープに連結することによって創出される人工二次構造をどれも破壊することができる。さらに、スペーサーによりエピトープを物理的に分離することで、Th細胞応答及び/またはB細胞応答の間の干渉を排除することができる。そのうえさらに、スペーサーは、ペプチド免疫原構築物の二次構造を創出または修飾するように設計することができる。例えば、スペーサーは、ThエピトープとB細胞エピトープの分離を向上させるための可動性ヒンジとして作用するように設計することができる。可動性ヒンジスペーサーは、提示されるペプチド免疫原と、適切なTh細胞及びB細胞との間の相互作用の効率性を促進してThエピトープ及びB細胞エピトープに対する免疫応答を増強することも可能にすることができる。可動性ヒンジをコードする配列の例は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域に見られ、こうした配列はプロリンを多く含むことが多い。スペーサーとして使用可能な可動性ヒンジで特に有用なものの1つは、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Proという配列(配列番号71)によって提供され、配列中、Xaaは、任意のアミノ酸であり、好ましくは、アスパラギン酸である。
【0077】
スペーサーは、CGRPペプチド免疫原構築物に機能特長も付与することができる。例えば、CGRPペプチド免疫原構築物の全体電荷が変化するようにスペーサーを設計することができ、これにより、ペプチド免疫原構築物の溶解性に影響を与えることができる。さらに、CGRPペプチド免疫原構築物の全体電荷を変化させることで、ペプチド免疫原構築物が他の化合物及び試薬と会合する能力に影響を与えることができる。以下にさらに詳述されるとおり、CGRPペプチド免疫原構築物は、高度に荷電したオリゴヌクレオチド(CpGオリゴマーなど)と静電会合を通じて安定な免疫賦活性複合体を形成することができる。CGRPペプチド免疫原構築物の全体電荷は、こうした安定な免疫賦活性複合体の形成に重要である。
【0078】
スペーサーとして使用可能な化合物として、(2-アミノエトキシ)酢酸(AEA)、5-アミノ吉草酸(AVA)、6-アミノカプロン酸(Ahx)、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸(AEEA、ミニPEG1)、12-アミノ-4,7,10-トリオキサドデカン酸(ミニPEG2)、15-アミノ-4,7,10,13-テトラオキサペンタ-デカン酸(ミニPEG3)、トリオキサトリデカン-コハク酸(Ttds)、12-アミノ-ドデカン酸、Fmoc-5-アミノ-3-オキサペンタン酸(O1Pen)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
天然のアミノ酸として、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが挙げられる。
【0080】
非天然のアミノ酸として、ε-Nリジン、β-アラニン、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、チロキシン、γ-アミノ酪酸、ホモセリン、シトルリン、アミノ安息香酸、6-アミノカプロン酸(Aca;6-アミノヘキサン酸)、ヒドロキシプロリン、メルカプトプロピオン酸(MPA)、3-ニトロ-チロシン、ピログルタミン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
CGRPペプチド免疫原構築物中のスペーサーは、Thエピトープ及びCGRP B細胞エピトープペプチドのN末端またはC末端のいずれかに共有結合で連結させることができる。実施形態によっては、スペーサーは、ThエピトープのC末端及びCGRP B細胞エピトープペプチドのN末端に共有結合で連結される。他の実施形態において、スペーサーは、CGRP B細胞エピトープペプチドのC末端及びThエピトープのN末端に共有結合で連結される。ある特定の実施形態において、複数のスペーサーを使用することができ、この使用は、例えば、CGRPペプチド免疫原構築物中に複数のThエピトープが存在する場合に行われる。複数のスペーサーが使用される場合、各スペーサーは互いに同じであることも、異なることも可能である。さらに、CGRPペプチド免疫原構築物中に複数のThエピトープが存在する場合、これらのThエピトープは、スペーサーで分離することができ、このスペーサーは、ThエピトープをIL-6 B細胞エピトープペプチドから分離するために使用されるスペーサーと同じであることも、異なることも可能である。ThエピトープまたはIL-6 B細胞エピトープペプチドとの関係においてスペーサーの配置に制限は存在しない。
【0082】
ある特定の実施形態において、異種スペーサーは、天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸である。他の実施形態において、スペーサーは、天然のアミノ酸または非天然のアミノ酸を複数含む。特定の実施形態において、スペーサーは、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、またはLys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)である。
【0083】
d.CGRPペプチド免疫原構築物の特定の実施形態
ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物は、下記の式で表すことができ:
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-X
または
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
または
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
式中、
Thは、異種ヘルパーT細胞エピトープであり、
Aは、異種スペーサーであり、
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)は、受容体結合または受容体活性化いずれかに関与する、CGRP由来の7~30のアミノ酸残基を有するB細胞エピトープペプチドであり、
Xは、アミノ酸のα-COOHまたはα-CONHであり、
mは、1~約4であり、
nは、0~約10である。
【0084】
B細胞エピトープペプチドは、配列番号1~3で表される全長CGRPタンパク質の任意の部分に由来する約7~約30のアミノ酸を含有することができる。実施形態によっては、B細胞エピトープは、表1に示す、配列番号4~13及び15~22のいずれかから選択されたアミノ酸配列を有する。ある特定の実施形態において、B細胞エピトープペプチドは、CGRP分子のC末端/中心領域に位置するCGRP受容体結合領域R11-F37(配列番号9)またはその断片(例えば配列番号5~8及び15~22)に由来する。他の実施形態において、B細胞エピトープペプチドは、環状C2-C7ループ周囲のCGRP受容体活性化領域、例えばA1-N25(配列番号13)またはその断片(例えば配列番号4、10~12、及び23~24)に由来する。
【0085】
CGRPペプチド免疫原構築物中の異種Thエピトープは、表2に示す、配列番号74~115のいずれか、及びそれらの組み合わせから選択されるアミノ酸配列を有する。実施形態によっては、CGRPペプチド免疫原構築物は、複数のThエピトープを含有する。
【0086】
任意選択の異種スペーサーは、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、Pro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)のいずれか、及びそれらの任意の組み合わせから選択され、配列中、Xaaは、任意のアミノ酸であるが、好ましくは、アスパラギン酸である。特定の実施形態において、異種スペーサーは、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)またはLys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)である。
【0087】
ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物は、表3に示されるとおりの配列番号116~127及び130~180のいずれかから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0088】
CGRPペプチド免疫原構築物を構成するThエピトープは、CGRP断片との直列配置で単回の固相ペプチド合成において同時に生成される。Thエピトープには、Thエピトープの免疫学的類似体も含まれ得る。免疫学的Th類似体には、免疫増強性類似体、交差反応性類似体、及びこうしたThエピトープのいずれかのセグメントであって、IL-6 B細胞エピトープペプチドに対する免疫応答を増強または刺激する上で十分なものが含まれる。
【0089】
CGRPペプチド免疫原構築物中のThエピトープは、CGRP B細胞エピトープペプチドのN末端またはC末端いずれかに共有結合で連結させることができる。実施形態によっては、Thエピトープは、CGRP B細胞エピトープペプチドのN末端に共有結合で連結される。他の実施形態において、Thエピトープは、CGRP B細胞エピトープペプチドのC末端に共有結合で連結される。ある特定の実施形態において、複数のThエピトープが、CGRP B細胞エピトープペプチドに共有結合で連結される。複数のThエピトープがCGRP B細胞エピトープペプチドに連結される場合、各Thエピトープは、同じアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を有することができる。また、複数のThエピトープがCGRP B細胞エピトープペプチドに連結される場合、これらのThエピトープは任意の順序で配置することができる。例えば、これらのThエピトープは、CGRP B細胞エピトープペプチドのN末端に連続して連結させることも、CGRP B細胞エピトープペプチドのC末端に連続して連結させることも可能であるし、あるいは、あるThエピトープをCGRP B細胞エピトープペプチドのN末端に共有結合で連結させる一方で、別のThエピトープをCGRP B細胞エピトープペプチドのC末端に共有結合で連結させることもできる。CGRP B細胞エピトープペプチドとの関係においてThエピトープの配置に制限は存在しない。
【0090】
実施形態によっては、Thエピトープは、CGRP B細胞エピトープペプチドと直接、共有結合で連結される。他の実施形態において、Thエピトープは、異種スペーサーを通じてCGRP断片に共有結合で連結される。
【0091】
e.バリアント、相同体、及び機能性類似体
好適なCGRP B細胞エピトープペプチドに対する抗体を誘導する及び/または当該抗体と交差反応する、上記の免疫原性ペプチド構築物のバリアント及び類似体も使用可能である。類似体(アレルバリアント、種バリアント、及び誘導バリアントを含む)は、典型的には、1箇所、2箇所、または少数の位置で天然のペプチドと異なり、この差異は、保存的置換によるものであることが多い。類似体は、典型的には、天然のペプチドとの配列同一性が少なくとも80%または少なくとも90%である。類似体によっては、非天然アミノ酸、またはN末端側アミノ酸もしくはC末端側アミノ酸の修飾を、1箇所、2箇所、または少数の位置に含む。
【0092】
機能性類似体であるバリアントは、あるアミノ酸位置での保存的置換、全体電荷の変更、別の部分への共有結合での付加、またはアミノ酸の付加、挿入、もしくは削除、及び/またはそれらの任意の組み合わせを有することができる。
【0093】
保存的置換とは、あるアミノ酸残基が、類似の化学特性を有する別のアミノ酸残基に置換されることである。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれ、極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれ、正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが含まれ、負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。
【0094】
特定の実施形態において、機能性類似体は、元のアミノ酸配列との同一性が少なくとも50%である。別の実施形態において、機能性類似体は、元のアミノ酸配列との同一性が少なくとも80%である。さらに別の実施形態において、機能性類似体は、元のアミノ酸配列との同一性が少なくとも85%である。さらに別の実施形態において、機能性類似体は、元のアミノ酸配列との同一性が少なくとも90%である。
【0095】
Thエピトープペプチドの機能性免疫学的類似体も有効であり、本発明の一部として含まれる。機能性免疫学的Th類似体は、ThエピトープのTh刺激機能を本質的に改変しない、アミノ酸残基の保存的置換、付加、削除、及び挿入を1~約5つ、Thエピトープ中に含むことができる。保存的置換、付加、及び挿入は、IL-6 B細胞エピトープペプチドについて上に記載されるように、天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いて達成することができる。表2において、Thエピトープペプチドの機能性類似体の別のバリエーションが識別される。詳細には、MvF1 Th及びMvF2 Thの配列番号75お及び82は、MvF4及びMvF5の配列番号94及び98の機能性類似体であり、これは、これらの配列のアミノ酸フレームが、N末端及びC末端のそれぞれから2つのアミノ酸が欠失することによって異なるか(配列番号75及び82)、またはN末端及びC末端のそれぞれに2つのアミノ酸が含まれていることによって異なる(配列番号94及び98)という観点によるものである。こうした2つの一連の類似配列の間の差異は、こうした配列中に含まれるThエピトープの機能に影響を与えないと想定される。したがって、機能性免疫学的Th類似体には、麻疹ウイルス融合タンパク質に由来するThエピトープ(MvF1~4 Th)のいくつかのバージョン(配列番号75、82、85、及び94)、ならびに肝炎表面タンパク質に由来するThエピトープ(HBsAg1~3 Th)のいくつかのバージョン(配列番号91、97、及び99)が含まれる。
【0096】
組成物
本開示は、本開示のCGRP免疫原ペプチド構築物を含有する組成物も提供する。
【0097】
a.ペプチド組成物
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含む組成物は、液体または固体/凍結乾燥形態にあることが可能である。液体組成物は、水、緩衝液、溶媒、塩、及び/またはCGRPペプチド免疫原構築物の構造特性もしくは機能特性を変化させない任意の他の許容される試薬を含むことができる。ペプチド組成物は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物のうちの1種または複数を含むことができる。
【0098】
b.医薬組成物
本開示は、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物にも関する。
【0099】
医薬組成物は、薬学上許容される送達系中に担体及び/または他の添加剤を含むことができる。したがって、医薬組成物は、薬学上有効量のCGRPペプチド免疫原構築物と合わせて、薬学上許容される担体、アジュバント、及び/または他の賦形剤、例えば、希釈剤、添加剤、安定化剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤などを一緒に含むことができる。
【0100】
医薬組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物に対する免疫応答を促進、延長、または増強するように作用するが、それ自体はいずれの特定の抗原性作用も有することのないアジュバントを、1種または複数含むことができる。医薬組成物において使用されるアジュバントとして、油、油エマルション、アルミニウム塩、カルシウム塩、免疫賦活性複合体、細菌系物質及びウイルス系物質、ビロソーム、糖質、サイトカイン、ポリマー微粒子を挙げることができる。ある特定の実施形態において、アジュバントは、アラム(リン酸カリウムアルミニウム)、リン酸アルミニウム(例えば、ADJU-PHOS(登録商標))、水酸化アルミニウム(例えば、ALHYDROGEL(登録商標))、リン酸カルシウム、不完全フロイントアジュバント(IFA)、完全フロイントアジュバント、MF59、アジュバント65、Lipovant、ISCOM、リポシン(liposyn)、サポニン、スクアレン、L121、EmulsIL-6n(登録商標)、モノホスホリルリピドA(MPL)、Quil A、QS21、MONTANIDE(登録商標)ISA 35、ISA 50V、ISA 50V2、ISA 51、ISA 206、ISA 720、リポソーム、リン脂質、ペプチドグリカン、リポ多糖(LPS)、ASO1、ASO2、ASO3、ASO4、AF03、親油性リン脂質(リピドA)、ガンマイヌリン、アルガムリン(algammulin)、グルカン、デキストラン、グルコマンナン、ガラクトマンナン、レバン、キシラン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、ならびに他のアジュバント及び乳化剤から選択することができる。
【0101】
実施形態によっては、医薬組成物は、MONTANIDE(商標)ISA 51(油中水型エマルション生成用の、植物油及びオレイン酸マンニドから構成される油アジュバント組成物)、TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート80もしくはポリオキシエチレン(20)ソルビタンオレイン酸モノエステルとしても知られる)、CpGオリゴヌクレオチド、及び/またはそれらの任意の組み合わせを含有する。他の実施形態において、医薬組成物は、アジュバントとしてEmulsIL-6nまたはEmulsIL-6n Dを含む水中油中水型(すなわち、w/o/w型)エマルションである。
【0102】
医薬組成物は、薬学上許容される添加剤または賦形剤も含むことができる。例えば、医薬組成物は、抗酸化剤、結合剤、緩衝剤、増量剤、担体、キレート剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、賦形剤、ゲル化剤、pH緩衝剤、保存剤、可溶化剤、安定化剤などを含有することができる。
【0103】
医薬組成物は、即放型配合物または徐放型配合物として配合することができる。さらに、医薬組成物は、微粒子を用いる免疫原の封入及び同時投与を通じて全身免疫または局所粘膜免疫が誘導されるように配合することができる。そのような送達系は、当業者によって容易に決定することができる。
【0104】
医薬組成物は、注射剤として、液体状の液剤または懸濁剤いずれかとして調製することができる。CGRPペプチド免疫原構築物を含有する液体ビヒクルは、注射前に調製することも可能である。医薬組成物は、任意の適切な使用様式(例えば、皮内、静脈内、腹腔内、筋肉内、鼻腔内、経口、皮下など)による投与も、任意の適切な送達機器での投与も可能である。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、または筋肉内投与向けに配合される。経口用及び鼻腔内用を含めて、他の投与様式に適した医薬組成物も調製することができる。
【0105】
医薬組成物は、適切な単位剤形に配合することもできる。実施形態によっては、医薬組成物は、体重kg当たり約0.1μg~約1mgのCGRPペプチド免疫原構築物を含む。医薬組成物の有効用量は、多種多様な要因に応じて異なり、そのような要因として、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトまたは動物であるかどうか、他の投与薬剤、及び治療が予防的または治療的であるかどうかが挙げられる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳類を含めて、非ヒト哺乳類も治療可能である。医薬組成物は、複数回用量で送達される場合、単位剤形当たり適切な量へと都合よく分割することができる。投与量は、対象の年齢、体重、及び全身の健康状態に依存することになり、こうしたことは、治療分野でよく知られている。
【0106】
実施形態によっては、医薬組成物は、複数のCGRPペプチド免疫原構築物を含む。複数のCGRPペプチド免疫原構築物の混合物を医薬組成物に含めることで、当該構築物の免疫効力を相乗的に増強することが可能となる。複数のCGRPペプチド免疫原構築物を含む医薬組成物は、MHCクラスII適用範囲が広いことで、より大きな遺伝的集団において有効性が向上する可能性があり、したがって、CGRPペプチド免疫原構築物に対する免疫応答が改善する可能性がある。
【0107】
実施形態によっては、医薬組成物は、配列番号120~127及び130~180(表3)から選択されるCGRPペプチド免疫原構築物、ならびにその相同体、類似体、及び/またはそれらの組み合わせを含有する。
【0108】
ある特定の実施形態において、MVF及びHBsAgに由来する異種Thエピトープを組み合わせ形態(配列番号85、91、94、及び97)で含むCGRPペプチド免疫原構築物(配列番号161~163)を、等モル比で混合して配合物に使用することで、多様な遺伝的背景を有する宿主集団を最大限にカバーすることが可能になった。
【0109】
さらに、CGRPペプチド免疫原構築物(例えば、UBITh(登録商標)1と配列番号108)によって誘発される抗体応答は、そのほとんど(>90%)が、CGRPのB細胞エピトープペプチドに対する所望の交差反応性に集中しており、免疫原性増強用に用いた異種Thエピトープに指向化されたものは、仮に伴うとしても多くはなかった(実施例6、表10)。このことは、そのようなCGRPペプチド免疫原性増強に使用される従来のタンパク質(KLHなど)または他の生物学的タンパク質担体とは際立って対照的である。
【0110】
他の実施形態において、ペプチド組成物、例えば、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物を含む組成物を、アジュバントとしての無機塩(アラムゲル(ALHYDROGEL)またはリン酸アルミニウム(ADJUPHOS)を含む)と接触させて懸濁剤配合物を形成させたものを含む医薬組成物を、宿主への投与に使用した。
【0111】
CGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物を使用することで、投与時に宿主に免疫応答を誘導し、抗体を産生させることができる。
【0112】
c.免疫賦活性複合体
本開示は、CGRPペプチド免疫原構築物を、CpGオリゴヌクレオチドとの免疫賦活性複合体の形態で含有する医薬組成物にも関する。そのような免疫賦活性複合体は、具体的には、アジュバントかつペプチド免疫原安定化剤として作用することに適したものである。免疫賦活性複合体は、微粒子の形態をとり、この微粒子は、CGRPペプチド免疫原を免疫系の細胞に効率的に提示して免疫応答を生じさせることができる。免疫賦活性複合体は、非経口投与用の懸濁剤として配合される場合がある。免疫賦活性複合体は、油中水型(w/o型)エマルションの形態で配合されるか、無機塩と組み合わせた懸濁剤として配合されるか、または非経口投与後に宿主の免疫系の細胞にCGRPペプチド免疫原構築物を効率的に送達するためのインサイチュゲル化ポリマーと共に配合される場合もある。
【0113】
CGRPペプチド免疫原構築物を、アニオン性分子、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの組み合わせと、静電会合を介して複合体化させることによって、安定化された免疫賦活性複合体を形成させることができる。安定化された免疫賦活性複合体は、免疫原送達系として医薬組成物に組み込むことができる。
【0114】
ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物は、5.0~8.0のpH範囲で正に荷電するカチオン性部分を有するように設計される。CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分の正味電荷または構築物の混合物のカチオン性部分の正味の電荷は、各リジン(K)、アルギニン(R)、またはヒスチジン(H)については+1の電荷、各アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)については-1の電荷、当該配列内の他のアミノ酸については0の電荷を割り当てることによって計算される。電荷は、CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分内で合計され、正味電荷平均として表される。適切なペプチド免疫原は、正味正電荷の平均が+1であるカチオン性部分を有する。好ましくは、ペプチド免疫原は、+2を超える範囲の正味の正電荷を有する。実施形態によっては、CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分は異種スペーサーである。ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分は、スペーサー配列が(α,ε-N)Lys、(α,ε-N)-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)またはLys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)である場合、+4の電荷を有する。
【0115】
「アニオン性分子」は、本明細書中記載される場合、5.0~8.0のpH範囲で負に荷電する任意の分子を示す。ある特定の実施形態において、アニオン性分子は、オリゴマーまたはポリマーである。オリゴマー上またはポリマー上の正味負電荷は、オリゴマー中の各ホスホジエステル基またはホスホロチオアート基に-1の電荷を割り当てることによって計算される。適切なアニオン性オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド塩基数が8~64であり、CpGモチーフのリピート数の範囲が1~10の一本鎖DNA分子である。好ましくは、CpG免疫賦活性一本鎖DNA分子は、含有ヌクレオチド塩基数が18~48であり、CpGモチーフのリピート数の範囲が3~8のものである。
【0116】
より好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、5’XCGX3’という式で表され、式中、C及びGは、メチル化されておらず、Xは、A(アデニン)、G(グアニン)、及びT(チミン)からなる群から選択され、Xは、C(シトシン)またはT(チミン)である。あるいは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、5’(XCG(X3’という式によって表され、C及びGは、メチル化されておらず、Xは、A、T、またはGからなる群から選択され、Xは、CまたはTである。特定の実施形態において、CpGオリゴヌクレオチドは、CpG1:5’TCg TCg TTT TgT CgT TTT gTC gTT TTg TCg TT 3’(完全にホスホロチオアート化されたもの)(配列番号182)、CpG2:5’リン酸TCg TCg TTT TgT CgT TTT gTC gTT 3’(完全にホスホロチオアート化されたもの)(配列番号183)、またはCpG3 5’TCg TCg TTT TgT CgT TTT gTC gTT 3’(完全にホスホロチオアート化されたもの)(配列番号184)という配列を有する。
【0117】
得られる免疫賦活性複合体は、粒径が典型的には1~50ミクロンの範囲の粒子の形態をしているが、相互作用種の相対的電荷化学量論及び分子量をはじめとする多くの要因の影響を受けるものである。微粒子状の免疫賦活性複合体は、in vivoで特定の免疫応答のアジュバント作用及び上方制御を与えるという利点を有する。さらに、安定化された免疫賦活性複合体は、油中水型エマルション、無機塩懸濁液、及びポリマーゲルを含めて、さまざまなプロセスによる医薬組成物の調製に適する。
【0118】
本開示は、片頭痛の予防及び/または治療のための医薬組成物(配合物を含む)にも関する。実施形態によっては、医薬組成物は、安定化された免疫賦活性複合体を含むことで、CGRPペプチド免疫原構築物の免疫原性をさらに増強すると共に、配列番号1~3のCGRPタンパク質と交差反応し、CGRP受容体結合領域もしくは受容体活性化領域に対して指向化された抗体を誘導しようとするものであり、安定化された免疫賦活性複合体は、CGRPペプチド免疫原構築物(例えば、配列番号120~127及び130~180)の混合物を含有するペプチド組成物とCpGオリゴマーとを混合することで、静電会合を介して形成される(実施例6)。
【0119】
さらに他の実施形態において、医薬組成物は、CGRPペプチド免疫原構築物の混合物(例えば、配列番号120~127及び130~180の任意の組み合わせ)を、CpGオリゴマー(高い安全係数を有するアジュバントとしての無機塩(アラムゲル(ALHYDROGEL)またはリン酸アルミニウム(ADJUPHOS)を含む)と任意選択で混合される)を用いて形成された安定化された免疫賦活性複合体の形態で含むことで、宿主に投与するための懸濁剤配合物を形成する。
【0120】
抗体
本開示は、CGRPペプチド免疫原構築物によって誘導される抗体も提供する。
【0121】
本開示は、製造でのコスト効率が高く、それ自体の設計が最適であり、CGRP分子のCGRP受容体結合領域もしくは受容体活性化領域(配列番号4~13及び15~24)を標的とする高力価抗体を誘導することができ、自己タンパク質であるCGRPに対する免疫寛容を打ち破ることができ、免疫化される宿主でのレスポンダー率が高い、CGRPペプチド免疫原構築物及びその配合物を提供する。CGRPペプチド免疫原構築物によって生成される抗体は、CGRP受容体結合領域もしくは活性化領域に対して高い親和性を有する。
【0122】
実施形態によっては、抗体を誘導するためのCGRPペプチド免疫原構築物は、CGRP分子のCGRP受容体結合領域もしくは受容体活性化領域(配列番号4~13及び15~24)を標的とするCGRPペプチドと、麻疹ウイルス融合(MVF)タンパク質及び他のものなどの病原性タンパク質に由来する異種Thエピトープ(配列番号74~115)を、任意選択のスペーサーを通じて連結させたハイブリッドを含む。CGRPペプチド免疫原構築物のBエピトープペプチド及びThエピトープペプチドは、一緒になって、CGRPタンパク質(配列番号1)のCGRP受容体結合または活性化領域と交差反応する高特異的抗体の生成を刺激するように作用する。
【0123】
ペプチドに対する免疫応答を増強するための伝統的な方法(担体タンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または他の担体タンパク質(ジフテリアトキソイド(DT)タンパク質及び破傷風トキソイド(TT)タンパク質など)との化学的カップリングを行うものなど)では、典型的な結果として、そうした担体タンパク質に対して指向化された抗体が大量に生成してしまう。したがって、そのようなペプチド-担体タンパク質組成物の主な欠点は、当該免疫原によって生成される抗体のほとんど(>90%)が、担体タンパク質(KLH、DT、またはTT)に対して指向化された非機能性抗体であることであり、こうした担体タンパク質は、エピトープ抑制(epitopic suppression)を招く可能性がある。
【0124】
ペプチドに対する免疫応答を増強するための伝統的な方法とは異なり、本開示のCGRPペプチド免疫原構築物(例えば、配列番号116~127及び130~180)によって生成される抗体は、CGRP Bエピトープペプチド(例えば、配列番号4~13及び15~24)と高特異的に結合し、異種Thエピトープ(例えば、配列番号74~115)または任意選択の異種スペーサーに対して指向化された抗体は、仮に伴うとしても極めて少ない。
【0125】
方法
本開示は、CGRPペプチド免疫原構築物、組成物、及び医薬組成物の作製法及び使用法にも関する。
【0126】
a.CGRPペプチド免疫原構築物を製造するための方法
本開示のCGRPペプチド免疫原構築物は、当業者に周知の化学合成法により作製可能である(例えば、Fields, et al, 1992を参照)。CGRPペプチド免疫原構築物は、自動化メリフィールド固相合成手法を使用して合成することができ、この手法は、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizerモデル430Aまたは431において、側鎖保護アミノ酸を使用してt-Boc化学反応またはF-moc化学反応いずれかによってα-NHを保護することによって行われる。Thエピトープの組み合わせライブラリーペプチドを含むCGRPペプチド免疫原構築物の調製は、所与の可変位置の時点でのカップリングに代替アミノ酸の混合物を使用することによって達成可能である。
【0127】
所望のCGRPペプチド免疫原構築物が完全に構築された後、標準的な手順に従って樹脂を処理することで、樹脂からペプチドを切断することができ、アミノ酸側鎖上の官能基を脱保護することができる。遊離のペプチドは、HPLCによって精製し、生化学的に特性決定する、例えば、アミノ酸分析または配列決定によって特性決定することができる。ペプチドの精製法及び特性決定法は、当業者に周知である。
【0128】
この化学プロセスによって生成されるペプチドの品質は、制御及び規定することが可能であり、結果として、CGRPペプチド免疫原構築物、免疫原性、及び収率の再現性を保証することができる。固相ペプチド合成を通じたCGRPペプチド免疫原構築物の製造についての詳細説明は、実施例1に示す。
【0129】
意図する免疫学的活性の保持を可能にする構造可変性範囲は、小分子薬物による特定の薬物活性の保持を可能にする構造可変性範囲、または生物学的に得られる薬物と共に生じる大分子に見られる所望の活性及び望ましくない毒性の保持を可能にする構造可変性範囲と比較してはるかに柔軟なものであることが明らかになっている。
【0130】
したがって、ペプチド類似体は、意図的に設計されるものにしても、意図するペプチドと同様のクロマトグラフィー特性及び免疫学的特性を有する欠損配列副生成物の混合物として合成プロセスのエラーによって不可避的に生じるものにしても、所望のペプチドの精製調製物と同じくらい有効であることが多い。設計される類似体及び意図しない類似体混合物は、製造プロセス及び製品評価プロセスの両方を監視するために識別QC手順が開発されて、こうしたペプチドを用いる最終製品の再現性及び効力が保証される限りにおいては、有効である。
【0131】
CGRPペプチド免疫原構築物は、核酸分子、ベクター、及び/または宿主細胞を含む組換えDNA技術を使用しても作製することもできる。そのため、CGRPペプチド免疫原構築物及びその免疫学的機能性類似体をコードする核酸分子もまた、本開示の一部として本開示によって包含される。同様に、核酸分子を含むベクター(発現ベクターを含む)ならびにそうしたベクターを含む宿主細胞もまた、本開示の一部として本開示によって包含される。
【0132】
さまざまな例示の実施形態は、CGRPペプチド免疫原構築物及びその免疫学的機能性類似体の生成法も包含する。例えば、そうした方法は、CGRPペプチド免疫原構築物及び/またはその免疫学的機能性類似体をコードする核酸分子を含む発現ベクターを含む宿主細胞を、そうしたペプチド及び/または類似体が発現する条件下でインキュベートする工程を含むことができる。さらに長い合成ペプチド免疫原も、周知の組換えDNA技法によって合成可能である。そのような技法は、周知のマニュアルに、詳細なプロトコルと共に提供されている。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するため、アミノ酸配列を逆転写してアミノ酸配列をコードする核酸配列を得るが、この時、好ましくは、遺伝子が発現することになる生物に最適なコドンが用いられる。次に、典型的には、ペプチド及び必要に応じて任意の制御エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することにより合成遺伝子を作製する。合成遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入し、宿主細胞に遺伝子導入する。次いで、選択される発現系及び宿主に適した適切な条件の下で、ペプチドを発現させる。ペプチドを、標準的な方法によって精製し、特性分析する。
【0133】
b.免疫賦活性複合体を製造するための方法
さまざまな例示の実施形態は、CGRPペプチド免疫原構築物及びCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)分子を含む免疫賦活性複合体の生成方法も包含する。安定化された免疫賦活性複合体(ISC)は、CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分及びポリアニオン性CpG ODN分子から得られる。この自己集合系は、電荷の静電気的な中和によって駆動される。CGRPペプチド免疫原構築物のカチオン性部分対アニオン性オリゴマーのモル電荷比の化学量論によって集合の程度が決まる。CGRPペプチド免疫原構築物とCpG ODNとの非共有結合性の静電会合は、完全に再現性のあるプロセスである。ペプチド/CpG ODN免疫賦活性複合集合体は、免疫系の「プロフェッショナル」抗原提示細胞(APC)に対する提示を促進し、それによって複合体の免疫原性をさらに増強する。こうした複合体は、製造中の品質制御のための特性分析が容易なものである。ペプチド/CpG ISCのin vivoでの忍容性は良好である。CpG ODN及びCGRPペプチド免疫原構築物を含むこの新規の微粒子系は、CpG ODNの使用と関連する全般的なB細胞分裂促進性を利用し、さらにはTh-1/Th-2型応答のバランス取りを促進するように設計した。
【0134】
本開示の医薬組成物中のCpG ODNは、反対電荷の静電気的な中和が介するプロセスにおいて免疫原に100%結合し、その結果、ミクロンサイズの微粒子を形成する。この微粒子形態は、CpGアジュバントの従来の使用と比較してCpGの投与量を顕著に減らし、有害な自然免疫応答が生じる可能を下げることが可能であり、抗原提示細胞(APC)を含む代替の免疫原プロセシング経路を促進する。したがって、そのような配合物は概念的に新規のものであり、代替の機構による免疫応答の刺激を促進することによって利益をもたらすことが見込まれる。
【0135】
c.医薬組成物を製造するための方法
さまざまな例示の実施形態は、CGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物も包含する。ある特定の実施形態において、医薬組成物は、油中水型エマルションを用いるものであり、無機塩を含む懸濁液に含まれていることもある。
【0136】
大きな集団が医薬組成物を使用することを目的とする場合、安全性は、別の重要考慮因子となる。多くの臨床試験において油中水型エマルションが使用されているものの、配合物に使用される主要なアジュバントは依然としてアラムであり、これはアラムが安全性を有するが故のことである。したがって、アジュバントとしてアラムまたはその無機塩であるリン酸アルミニウム(ADJUPHOS)が、臨床用途の製剤で使用されることが多い。
【0137】
他のアジュバント及び免疫刺激剤には、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(MPL)または3-DMP、ポリマーアミノ酸またはモノマーアミノ酸(ポリグルタミン酸またはポリリジンなど)が含まれる。そのようなアジュバントは、他の特定の免疫刺激剤と併用されるか、または他の特定の免疫刺激剤を併用せずに使用され得る。こうした他の特定の免疫刺激剤は、ムラミルペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-スレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(nor-MDP)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-2’ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(MTP-PE)、N-アセチルグルコサミニル-N-アセチルムラミル-L-Al-D-イソグル-L-Ala-ジパルミトキシプロピルアミド(DTP-DPP)Theramide(商標))、または他の細菌細胞壁成分などである。水中油型エマルションには、MF59(Van Nest et al.に付与されたWO90/14837を参照のこと。当該文献は、はそのまま全体が本明細書により参照として援用される)(5%のスクアレン、0.5%のTWEEN80、及び0.5%のSpan85(さらに、任意選択で、さまざまな量のMTP-PE)を含み、マイクロフルイダイザーを使用して配合しサブミクロン粒子になったもの)、SAF(10%のスクアレン、0.4%のTWEEN80、5%のpluronicブロックポリマーL121、及びthr-MDPを含み、マイクロフルイダイザーによってサブミクロンエマルションにされるか、またはボルテックスしてより大きな粒子サイズのエマルションを生成させたもの)、ならびにRibi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi ImmunoChem、Hamilton、Mont.)(2% のスクアレンと、0.2%のTWEEN80と、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、及び細胞壁骨格(CWS)からなる群から選択される1つ以上の細菌細胞壁成分(好ましくは、MPL+CWS(Detox(商標)))と、を含む)が含まれる。他のアジュバントには、完全フロイントアジュバント(CFA)、不完全フロイントアジュバント(IFA)、ならびにサイトカイン(インターロイキン(IL-1、IL-2、及びIL-12)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ならびに腫瘍壊死因子(TNF-α)など)が含まれる。
【0138】
アジュバントの選択は、アジュバントを含む免疫原性配合物の安定性、投与経路、投薬スケジュール、免疫化される種に対するアジュバントの効力に依存し、ヒトでは、医薬的に許容可能なアジュバントは、関連規制機関によってヒトへの投与の認可を受けているか、または受けることが可能なものである。例えば、アラム、MPL、または不完全フロイントアジュバント(Chang, et al., 1998)、当該文献はそのまま全体が本明細書により参照として援用される)は、単独でもヒトへの投与に適し、任意選択でそれらを組み合わせたものもすべて、ヒトへの投与に適する。
【0139】
組成物は、薬学上許容される無毒な担体または希釈剤を含むことができ、こうした担体または希釈剤は、動物またはヒトへの投与向けの医薬組成物を配合するために一般に使用されるビヒクルとして定義される。希釈剤は、組み合わせるものの生物学的活性に影響を与えないように選択される。そのような希釈剤の例としては、蒸留水、生理学的リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス液がある。また、医薬組成物または配合物は、他の担体、アジュバント、または無毒かつ非治療的な非免疫原性の安定化剤、及び同様のものも含むことができる。
【0140】
医薬組成物は、大型で代謝が緩徐な巨大分子も含むことができ、こうした巨大分子としては、タンパク質、キトサンのような多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びコポリマー(例えば、ラテックス官能化セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、ならびに脂質集合体(例えば、油滴またはリポソーム)などがある。さらに、こうした担体は、免疫刺激剤(すなわち、アジュバント)として機能することができる。
【0141】
本開示の医薬組成物は、さらに、適切な送達ビヒクルを含むことができる。適切な送達ビヒクルとして、ウイルス、細菌、生分解性マイクロスフェア、微粒子、ナノ粒子、リポソーム、コラーゲンミニペレット、及び渦巻型ベシクルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
d.医薬組成物の使用法
本開示は、CGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物の使用法も含む。
【0143】
ある特定の実施形態において、CGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物は、片頭痛の治療に使用可能である。
【0144】
実施形態によっては、本方法は、薬理学的有効量のCGRPペプチド免疫原構築物を含む医薬組成物を、それを必要とする宿主に投与することを含む。ある特定の実施形態において、本方法は、薬理学的有効量のCGRPペプチド免疫原構築物を含む医薬組成物を、温血動物(例えば、ヒト、カニクイザル、マウス)に投与することで、ヒトCGRPタンパク質(配列番号1)または他の種に由来するCGRPタンパク質(例えば、配列番号2及び3)と交差反応する高特異的抗体を誘導することを含む。
【0145】
ある特定の実施形態において、in vivoのカプサイシン誘導型皮膚血流モデルにおいて示されるとおり、CGRPペプチド免疫原構築物を含有する医薬組成物は、片頭痛の治療に使用することができる。
【0146】
e.In vitroの機能アッセイ及びin vivoの概念実証試験
CGRPペプチド免疫原構築物により免疫化した宿主において誘導される抗体は、in vitroの機能アッセイに使用することができる。こうした機能アッセイとして、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
(1)CGRPタンパク質(配列番号1~3)とのin vitroでの結合
(2)CGRPとその受容体との結合のin vitroでの阻害
(3)細胞内cAMP上昇のin vitroでの阻害
(4)マウスにおけるカプサイシン誘導型皮膚血流モデルのin vivoでの阻害。
【0147】
具体的な実施形態
(1)約30以上のアミノ酸を有し、以下の式:
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-X
または
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
または
(Th)-(A)-(CGRP機能性Bエピトープペプチド)-(A)-(Th)-X
式中、
Thは、異種ヘルパーT細胞エピトープであり、
Aは、異種スペーサーであり、
(CGRP機能性Bエピトープペプチド)は、表1に示すとおりのCGRP(配列番号1~3)の中の配列番号4~13、15~24を有するCGRP受容体結合または活性化領域に由来する、7~約30のアミノ酸残基を有するB細胞エピトープペプチドであり、
Xは、アミノ酸のα-COOHまたはα-CONHであり、
mは、1~約4であり、及び
nは、0~約10である、
で表される、CGRPペプチド免疫原構築物。
【0148】
(2)前記CGRP受容体結合領域または活性化領域は、配列番号4~13及び15~24からなる群より選択される、(1)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0149】
(3)前記Thエピトープは、配列番号74~115からなる群より選択される、(1)または(2)のいずれかに記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0150】
(4)前記ペプチド免疫原構築物は、配列番号120~127及び130~180からなる群より選択される、(1)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0151】
(5)以下:
a.配列番号1~3のCGRP配列に由来する約7~約30のアミノ酸残基を含むB細胞エピトープ、
b.配列番号74~115及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるアミノ酸配列を含むヘルパーT細胞エピトープ、ならびに
c.アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)、及びPro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される任意選択の異種スペーサー、
を含むCGRPペプチド免疫原構築物であって、
前記B細胞エピトープは、前記ヘルパーT細胞エピトープと、直接または前記任意選択の異種スペーサーを通じて共有結合で連結されている、
前記CGRPペプチド免疫原構築物。
【0152】
(6)前記B細胞エピトープは、配列番号4~13及び15~24からなる群より選択される、(5)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0153】
(7)前記ヘルパーT細胞エピトープは、配列番号78、77、80~82、85、91、94、97、98~99、106~109、112、及びそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、(5)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0154】
(8)前記任意選択の異種スペーサーは、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)、またはPro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)であり、配列中、Xaaは、任意のアミノ酸である、(5)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0155】
(9)前記ヘルパーT細胞エピトープは、前記B細胞エピトープのアミノ末端と共有結合で連結されている、(5)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0156】
(10)前記ヘルパーT細胞エピトープは、前記任意選択の異種スペーサーを通じて、前記B細胞エピトープのアミノ末端と共有結合で連結されている、(5)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物。
【0157】
(11)(1)に記載のCGRPペプチド免疫原構築物を含む、組成物。
【0158】
(12)以下:
a.(1)に記載のペプチド免疫原構築物、ならびに
b.薬学上許容される送達ビヒクル及び/またはアジュバント、
を含む、医薬組成物。
【0159】
(13)a.前記CGRP機能性Bエピトープペプチドは、配列番号4~13及び15~24からなる群より選択され、
b.前記Thエピトープは、配列番号74~115からなる群より選択され、ならびに
c.前記異種スペーサーは、アミノ酸、Lys-、Gly-、Lys-Lys-Lys-、(α,ε-N)Lys、ε-N-Lys-Lys-Lys-Lys(配列番号72)、Lys-Lys-Lys-ε-N-Lys(配列番号73)、及びPro-Pro-Xaa-Pro-Xaa-Pro(配列番号71)、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群より選択され、かつ
前記CGRPペプチド免疫原構築物は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されることで、安定化された免疫賦活性複合体を形成する、
(12)に記載の医薬組成物。
【0160】
(14)a.前記CGRPペプチド免疫原構築物は、配列番号120~127及び130~180からなる群より選択され、ならびに
前記CGRPペプチド免疫原構築物は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)と混合されることで、安定化された免疫賦活性複合体を形成する、
(12)に記載の医薬組成物。
【0161】
(15)動物においてCGRPに対する抗体を生成させるための方法であって、(12)に記載の医薬組成物を前記動物に投与することを含む、前記方法。
【0162】
(16)配列番号4~13及び15~24の前記CGRP受容体結合領域または活性化領域に特異的に結合する、単離された抗体またはそのエピトープ結合断片。
【0163】
(17)前記CGRPペプチド免疫原構築物に結合した、(16)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合断片。
【0164】
(18)(16)に記載の単離された抗体またはそのエピトープ結合断片を含む、組成物。
【0165】
(19)動物における片頭痛の予防及び/または治療法であって、(12)に記載の医薬組成物を前記動物に投与することを含む、前記方法。
【実施例
【0166】
実施例1
CGRP関連ペプチドの合成及びその配合物の調製
a.CGRP関連ペプチドの合成
CGRPペプチド免疫原構築物を開発する努力の中で行われたCGRP関連ペプチドの合成方法について記載する。これらのペプチドは、血清学的アッセイ、実験室パイロット試験、及びフィールド試験に有用な小スケール量で合成すると共に、医薬組成物の産業的/商業的な生産に有用な大スケール(キログラム)量でも合成した。エピトープマッピング、ならびに有効なCGRP標的指向型治療ワクチンに使用するのに最も適したペプチド免疫原構築物のスクリーニング及び選択を目的として、アミノ酸数約10~70の長さの配列を有するCGRP関連抗原ペプチドの大きなレパートリーを設計した。
【0167】
表1に、ヒト種、マウス種、ラット種、及びマカク種の代表的な全長CGRP(配列番号1~3)、CGRPペプチド断片、ならびにエピトープマッピングのため様々な血清学的アッセイに用いた10マーペプチドを示す(配列番号1~70)。
【0168】
選択したCGRP B細胞エピトープペプチドを、病原タンパク質を元にして慎重に設計したヘルパーT細胞(Th)エピトープペプチドに合成的に連結することによって、当該ペプチドをCGRPペプチド免疫原構築物にした。元にした病原タンパク質には、表2で識別される麻疹ウイルス融合タンパク質(MVF)、B型肝炎表面抗原タンパク質(HBsAg)、ペプチドインフルエンザ、Clostridum tetani、及びエプスタイン・バーウイルス(EBV)が含まれる(配列番号74~115)。Thエピトープペプチドを、単一配列(配列番号74~84、86~90、92~93、95~96、98~115)または組み合わせライブラリー(配列番号85、91、94、及び97)いずれかとして使用して、それらを使用したCGRPペプチド免疫原構築物それぞれの免疫原性を増強した。
【0169】
数百のペプチド構築物から選択した代表的なCGRPペプチド免疫原構築物の識別を表3に示す(配列番号116~180)。抗CGRP抗体を検出及び/または測定するための免疫原性試験または関連血清学的試験に使用したペプチドはすべて、Applied BioSystemsのモデル430Aペプチド合成機、モデル431ペプチド合成機、及び/またはモデル433ペプチド合成機によってF-moc化学反応を使用して小スケールで合成した。N末端をF-mocで保護し、三官能性アミノ酸には側鎖保護基も用いて固相担体上での独立した合成によって各ペプチドを生成させた。合成が完了したペプチドを固相担体から切り離し、90%のトリフルオロ酢酸(TFA)によって側鎖保護基を除去した。マトリックス支援レーザー脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析によって合成ペプチド調製物を評価してアミノ酸内容が正しいことを確かめた。逆相HPLC(RP-HPLC)によっても各合成ペプチドを評価して調製物の合成プロファイル及び濃度を確認した。合成プロセスの厳格な制御(カップリング効率のステップワイズ監視を含む)を行ったものの、アミノ酸の挿入、欠損、置換、及び中途終結を含めて、伸長サイクルの間に意図しない事象が生じたことに起因してペプチド類似体も生成された。したがって、合成した調製物には、典型的には、狙ったペプチドに加えて複数のペプチド類似体も一緒に含まれていた。
【0170】
そのような意図しないペプチド類似体は含まれていたものの、それでもなお、得られた合成ペプチド調製物は、免疫学的診断(抗体捕捉抗原として)及び医薬組成物(ペプチド免疫原として)をはじめとする免疫学的応用における使用に適したものであった。典型的には、そのようなペプチド類似体は、意図的に設計したものにしても、副生成物の混合物として合成プロセスを介して生じたものにしても、製造プロセス及び製品評価プロセスの両方を監視するために識別QC手順が開発されて、こうしたペプチドを用いる最終製品の再現性及び効力が保証される限りにおいては、所望のペプチドの精製調製物と同じくらい有効であることが多い。数百~キログラム量での大スケールのペプチド合成は、カスタマイズされた自動化ペプチド合成機UBI2003または同様のもので、15ミリモル~150ミリモルスケールで実施した。
【0171】
臨床試験用の最終的な医薬組成物に使用した活性成分については、CGRP関連ペプチド免疫原構築物を、緩やかな濃度勾配でグラジエント溶出する分取RP-HPLCによって精製し、MALDI-TOF質量分析、アミノ酸分析、及びRP-HPLCによってその純度及び独自性を特性分析した。
【0172】
b.CGRPペプチド免疫原構築物を含有する組成物の調製
油中水型エマルションを用いた配合物、及び無機塩を含む懸濁液になった配合物を調製した。大きな集団によって使用されるように医薬組成物を設計するには、安全性は、別の重要考慮因子となる。多くの臨床試験では油中水型エマルションが医薬組成物としてヒトに使用されているという事実はあるものの、医薬組成物において使用するための主要なアジュバントは依然としてアラムであり、これはアラムが安全性を有するが故のことである。したがって、臨床適用のための調製物におけるアジュバントとしてアラムまたはその無機塩(ADJUPHOS(リン酸アルミニウム))が使用されることが多い。
【0173】
簡潔に記載すると、以下に記載の試験群のそれぞれに指定される配合物には、概して、すべての型のCGRPデザイナーペプチド免疫原構築物を含めた。200を超えるデザイナーCGRPペプチド免疫原構築物を、個々の相対的な免疫原性について、そうした免疫原のB細胞エピトープペプチドを代表する対応CGRPペプチドを用いてモルモットにおいて慎重に評価した。異なる相同ペプチドに対するエピトープマッピング及び血清学的交差反応性の分析を、配列番号1~70のリストから選択されるペプチドでコートされたプレートを使用するELISAアッセイによって行った。
【0174】
CGRPペプチド免疫原構築物の量を変えながら、規定どおりに、ヒトでの使用が認可された油としてSeppic MONTANIDE(商標)ISA51を用いて油中水型エマルションとして調製するか、または無機塩ADJUPHOS(リン酸アルミニウム)もしくはALHYDROGEL(アラム)と混合した。典型的には、CGRPペプチド免疫原構築物を約20~800μg/mLで水に溶解させることによって組成物を調製し、MONTANIDE(商標)ISA 51と配合して油中水型エマルション(体積で1:1)にするか、または無機塩ADJUPHOSもしくはALHYDROGEL(アラム)と配合した(体積で1:1)。組成物を室温で約30分間保持し、約10~15秒間ボルテックスによって混合してから免疫化に使用した。特定の組成物の2~3回用量を用いて動物を免疫化し、これらの投与は、初回免疫化後経過週数(wpi)が0の時点(プライム)及び3の時点(ブースト)で実施し、2回目のブーストについては任意選択で5wpiまたは6wpiの時点で実施し、実施は、筋肉内経路によるものであった。次いで、免疫化動物から得られた血清を、選択したB細胞エピトープペプチド(複数可)を用いて試験することで、配合物中に存在するさまざまなCGRPペプチド免疫原構築物の免疫原性及びCGRPタンパク質との対応血清の交差反応性について評価した。モルモットでの最初のスクリーニングにおいて強力な免疫原性を有することが明らかになったCGRPペプチド免疫原構築物について、その対応血清の機能特性をin vitroアッセイでさらに試験した。次いで、選択した候補CGRPペプチド免疫原構築物を、免疫化プロトコルに示される特定期間にわたる投薬レジメン用として、油中水型エマルション配合物、無機塩配合物、及びアラム系配合物として調製した。
【0175】
最も有望なCGRPペプチド免疫原構築物についてのみ、さらなる評価を広範に実施し、それから当該構築物を、新薬臨床試験開始届の提出に備えて行うGLP指針に沿う前臨床試験における免疫原性試験、持続期間試験、毒性試験、及び効力試験、ならびに片頭痛に罹患している患者で行うその後の臨床試験のための最終的な配合物に組み込んだ。
【0176】
以下の実施例は、本開示を例示するためのものであり、本開示の限定に使用されるものではない。
【0177】
実施例2
血清学的アッセイ及び試薬
CGRPペプチド免疫原構築物及びその配合物の機能性免疫原性を評価するための血清学的アッセイ及び試薬について、以下に詳述する。
【0178】
a.抗体特異性分析のためのCGRPまたはCGRP BエピトープペプチドベースのELISA試験
以下の実施例に記載の免疫血清試料を評価するためのELISAアッセイを開発したので、以下に記載した。CGRPまたはCGRP Bエピトープペプチド等(配列番号1~70)を2μg/mL(別段の記載がない限り)で含む10mMのNaHCO緩衝液(pH9.5)(別段の記載がない限り)を100μL用いて、96ウェルプレートのウェルを37℃で1時間、それぞれコートした。
【0179】
CGRPまたはCGRP Bエピトープペプチドでコートしたウェルを、ゼラチン含量3重量%のPBS(250μL)と共に37℃で1時間インキュベートして非特異的なタンパク質結合部位をブロッキングした後、TWEEN(登録商標)20含量0.05体積%のPBSを用いて当該ウェルを3回洗浄し、乾燥させた。正常ヤギ血清含量20体積%、ゼラチン含量1重量%、TWEEN(登録商標)20含量0.05体積%のPBSを用いて、分析対象の血清を(別段の記載がない限り)1:20希釈した。希釈した検体(例えば、血清、血漿)のうちの100マイクロリットル(100μL)を各ウェルに添加し、37℃で60分間反応させた。次に、TWEEN(登録商標)20含量0.05体積%のPBSを用いてウェルを6回洗浄して非結合抗体を除去した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合型の種(例えば、モルモットまたはラット)特異的ヤギポリクローナル抗IgG抗体またはプロテインA/Gを標識型トレーサーとして使用することで、陽性ウェルにおいて形成された抗体/ペプチド抗原複合体と結合させた。正常ヤギ血清含量1体積%、TWEEN(登録商標)20含量0.05体積%のPBS中に、あらかじめ力価測定して決定した最適な希釈率でHRP標識型検出試薬を含めたものを、各ウェルに100マイクロリットル添加し、37℃でさらに30分間インキュベートした。TWEEN(登録商標)20含量0.05体積%のPBSを用いてウェルを6回洗浄して非結合抗体を除去し、クエン酸ナトリウム緩衝液中に3’,3’,5’,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を0.04重量%、過酸化水素を0.12体積%含む基質混合物100μLとウェルをさらに15分間反応させた。この基質混合物を使用して、着色生成物を形成させることによってペルオキシダーゼ標識を検出した。1.0MのHSOを100μL添加することによって反応を停止し、450nmでの吸光度(A450)を決定した。さまざまなペプチドワクチン配合物を投与したワクチン接種動物の抗体力価の決定には、10倍の段階希釈を行って1:100~1:10、000とした血清を試験するか、または4倍の段階希釈を行って1:100~1:4.19×10とした血清を試験した。試験した血清の力価(Log10で表示)は、A450のカットオフ値を0.5としてA450の線形回帰分析によって計算した。
【0180】
b.ThペプチドベースのELISAによるThペプチドに対する抗体反応性の評価
Thペプチドを2μg/mL(別段の記載がない限り)で含めた10mMのNaHCO緩衝液(pH9.5)(別段の記載がない限り)を100μL用いて96ウェルプレートのウェルを37℃で1時間、それぞれコートし、同様のELISA法(上記のように実施した)に供した。さまざまなCGRPペプチドワクチン配合物を投与したワクチン接種動物の抗体力価の決定には、10倍の段階希釈を行って1:100~1:10、000とした血清を試験した。試験した血清の力価(Log10で表される)は、A450のカットオフ値を0.5としてA450の線形回帰分析によって計算した。
【0181】
c.B細胞エピトープクラスター10マーペプチドベースのELISA試験によるエピトープマッピングによって決定した標的CGRP B細胞エピトープペプチドの詳細な特異性分析
CGRPペプチド免疫原構築物で免疫化した宿主から得られた抗CGRP抗体の詳細な特異性分析を、B細胞エピトープクラスター10マーペプチドベースのELISA試験を使用するエピトープマッピングによって実施した。簡潔に記載すると、個々のCGRPまたは関連10マーペプチド(配列番号26~70)をウェル当たり0.5μg/0.1mLで用いて96ウェルプレートのウェルをコートした。その後、上記の抗体ELISA法のステップに従って10マープレートウェル中で100μLの血清試料(PBS中1:100希釈)を2連でインキュベートした。免疫化した宿主から得られた抗CGRP抗体の標的B細胞エピトープ関連の詳細な特異性分析を、対応するCGRPペプチド、または特異性を確認するための無関係な対照ペプチドを用いて実施した。
【0182】
d.免疫原性の評価
実験ワクチン接種プロトコルに従って免疫前血清試料及び免疫血清試料を動物またはヒト対象から収集し、56℃で30分間加熱して血清中補体因子を不活化した。ワクチン配合物の投与後、プロトコルに従って血液試料を取得し、特定の標的部位(複数可)に対するその免疫原性を、対応CGRP B細胞エピトープペプチドベースのELISA試験によって評価した。段階希釈した血清を試験し、希釈率の逆数のLog10として陽性力価を表した。特定のワクチン配合物の免疫原性を、所望のB細胞応答を増強するために用いた「ヘルパーT細胞エピトープ」への抗体反応性を低いもの~無視できる程度のものに維持しながら、標的抗原内の所望のエピトープに対して特異的に指向化された高力価抗体応答を誘発する能力、及びCGRPタンパク質との高い交差反応性について評価する。
【0183】
実施例3
細胞内cAMP生成に関するIN VITROアッセイにおける、CGRPペプチド免疫原構築物によって誘導される抗体及びその配合物の機能特性評価
免疫化ワクチンの免疫血清または精製抗CGRP抗体を、さらに、それらのCGRP誘導型細胞内AMP生成を抑制する能力について試験した。
【0184】
a.抗体精製
全ての抗体精製手順は、抗体精製キット(Thermo fisher、カタログ番号89953)の説明書に従うものであった。in vitroアッセイで使用するため、各群についてそれぞれのIgG精製の濃度を、慎重に較正した。
【0185】
b.細胞の調製及び維持
細胞株L6(ATCC(登録商標)CRL-1458(商標))は、ATCCから購入した。この細胞株用の基礎培地は、ATCC配合ダルベッコ変法イーグル培地(カタログ番号30-2002)である。ウシ胎児血清を、最終濃度10%で加え、完全増殖培地を作製した。雰囲気:空気、95%;二酸化炭素(CO)、5%、温度:37℃。
【0186】
c.IgGあり/なしでのCGRP処理
細胞ベースのcAMP活性化アッセイを使用して、抗CGRP IgGを、さらに、中和活性についてin vitroでスクリーニングした。全ての手順は、384ウェル丸底小体積プレート(Mediomics、LLC、カタログ番号163301)中で行なった。ラットα-CGRP(最終濃度10nM)5マイクロリットルを、抗CGRP IgG(最終濃度1~20μg/ml)の存在下、室温で30分間インキュベートした。次いで、ラットL6平滑筋細胞5000個含有1XKRB-IBMS緩衝液を5マイクロリットル加えた。プレートを、室温で30分間インキュベートした。
【0187】
d.細胞ベースのCGRP中和試験(cAMPレベルの検出)
インキュベーション後、Mediomics Bridge-It cAMPオールインワン蛍光アッセイ(Mediomics、カタログ番号122938/122939)を用い、取扱説明書に従ってcAMP活性化を行なった。cAMPオールインワンアッセイ溶液10mIを各ウェルに加え、ピペットで液を上下させて混合することで、細胞を溶解させ、cAMPアッセイを開始した。蒸発を防ぎ遮光するため、プレートを覆った。プレートを室温で30分間インキュベートしながら、蛍光強度(励起485nm、発光540nm)を蛍光リーダー(SpectraMax i3x Multi-Mode Microplate Reader)で読んだ。データは、パーセンテージで記録する。0%は、L6細胞のみを表し、100%は、CGRP処理したL6細胞を表す。
【0188】
実施例4
安全性試験、免疫原性試験、毒性試験、及び効力試験において使用した動物
a.モルモット:
免疫原性試験は、成熟、ナイーブ、かつ成体の雄性及び雌性のDuncan-Hartleyモルモット(300~350g/BW)で実施した。実験では、1群当たり少なくとも3匹のモルモットを使用した。Duncan-Hartleyモルモット(8~12週齢、Covance Research Laboratories、Denver、PA、USA)が関与するプロトコルは、UBIスポンサーの契約動物施設において、認可されたIACUC申請内容に従って行われた。
【0189】
b.カニクイザル:
免疫原性試験及び反復投与毒性試験は、成体の雄性及び雌性のサル(Macaca fascicularis、約3~4年齢;Joinn Laboratories、Suzhou、China)で実施した。認可されたIACUC申請内容に従ったものであり、UBIスポンサーの契約動物施設において実施した。
【0190】
c.マウス:
雌性Balb/Cマウス(n=6/群)に、40μg/0.1ml/用量の試験ワクチンまたは0.1ml/用量の対照物を筋肉内注射(IM)で投与した。注射部位は1箇所(後肢大腿四頭)であり、0、3、6、9、12wpi時の5回注射してから、カプサイシン誘発を行なった。動物は、UBI Asia Laboratory Animal Facilityにおいて飼育し、一定の温度(22℃)、湿度(72%)、12時間明期/12時間暗期サイクルの下で1週間順応させた。マウスは、固形飼料及び水を自由に摂取できるようにした。すべてのプロトコルにおいてPrinciples of Laboratory Animal Careに従った。血液採取は、プロトコルに示されるように実施した。抗CGRP(マウス)の抗体力価は、ELISAアッセイによって試験した。
【0191】
実施例5
モルモットでCGRPペプチド構築物の免疫原性評価を行うためのワクチン配合物
各実験に使用した医薬組成物及びワクチン配合物について、以下のとおりより詳細に記載する。
【0192】
簡潔に記載すると、各試験群に指定された配合物には、概して、異なる型のスペーサー(例えば、ペプチド構築物の溶解性を高めるためのεLys(εK)またはリジン-リジン-リジン(KKK))を介してCGRP B細胞エピトープペプチドが連結されたセグメントと、非選択的ヘルパーT細胞エピトープ(麻疹ウイルス融合タンパク質及びB型肝炎表面抗原に由来する2つの人工ヘルパーT細胞エピトープセットを含む)と、を含むすべての型のデザイナーCGRPペプチド免疫原構築物が含まれていた。CGRP Bエピトープペプチドは、デザイナーペプチド構築物のN末端またはC末端に連結されている。数百のデザイナーCGRPペプチド免疫原構築物を、それらの相対免疫原性について、対応するCGRP B細胞エピトープペプチドを用いてモルモットで最初に評価した。CGRPペプチド免疫原構築物の量を変えながら、規定どおりに、ヒトでのワクチン使用が認可された油としてSeppic MONTANIDE ISA 51を用いて油中水型エマルションとして調製するか、または無機塩(ADJUPHOS)もしくはALHYDROGEL(アラム)を用いて懸濁液として調製した。ワクチン配合物は、通常は、CGRPペプチド構築物を約20~800μg/mLで水に溶解させ、MONTANIDE ISA 51と配合して油中水型エマルション(体積で1:1)にするか、または無機塩(ADJUPHOS)もしくはALHYDROGEL(アラム)と配合(体積で1:1)することによって調製した。ワクチン配合物を室温で約30分間保持し、約10~15秒間ボルテックスによって混合してから免疫化に使用した。
【0193】
特定のワクチン配合物を2~5回用量用いて何匹かの動物を免疫化した。これらの投与は、初回免疫化後経過週数(wpi)が0の時点(プライム)及び3の時点(ブースト)で、2回目のブーストについては任意選択で5wpiまたは6wpiの時点で、実施し、筋肉内経路によるものであった。次いで、これらの免疫化動物において、それぞれのワクチン配合物に使用された対応するCGRPペプチド免疫原構築物の免疫原性を、対応するCGRP Bエピトープペプチドまたは全長CGRPとの交差反応性について評価した。モルモットで行った最初のスクリーニングにおいて強力な免疫原性を示したCGRPペプチド免疫原構築物については、さらに、免疫化プロトコルにより示される指定期間にわたる投薬レジメン用として、油中水型エマルション配合物、無機塩配合物、及びアラムベース配合物の全てで、マカクにおいて試験した。
【0194】
最も有望なCGRPペプチド免疫原構築物候補のみ、対応するマウスCGRPペプチド免疫原構築物を使用してさらなる評価を広範に実施して、マウスにおいて免疫寛容を打ち破るその能力を評価した。マウスにおいて最良の免疫原性を有したCGRPペプチド免疫原構築物は、内在性CGRPに対して抗CGRP抗体力価を誘発し、特に、マウスモデルにおいてカプサイシン誘導型皮膚血流を抑制する能力について最良の免疫原性を有していた。最適化されたCGRPペプチド免疫原構築物を、新薬臨床試験開始届の提出に備えて行うGLP指針に沿う免疫原性試験、持続期間試験、毒性試験、及び効力証明試験、ならびに自己免疫性関節リウマチ患者における臨床試験のための最終的なワクチン配合物に組み込んだ。
【0195】
実施例6
片頭痛の治療のためのCGRPペプチド免疫原構築物を組み込んだ複数成分ワクチン配合物の設計根拠、スクリーニング、同定、機能特性評価、及び最適化
図1及び図2に提示する科学的知見、ならびに図5(Russel, et al, 2014)及び図2(a)~図2(c)(Edvinsson, et al, 2018)に開示される知見に基づき、CGRPを、設計の標的分子として及び本発明の内容として選択する。図1は、ヒト(配列番号1)、マーモセット(配列番号2)、マウス/ラット(配列番号3)、及び他の多くの種由来のCGRP配列のアライメントを示す。図5(Russel, et al, 2014)は、CGRPが関連する生理学及び病態生理学(patholophysiology)を示す。図2(a)~図2(c)(Edvinsson, et al, 2018)は、なぜCGRPが新規片頭痛治療の標的となり得るかを示す。図2は、高精度デザイナー合成ペプチドに基づくワクチンの、発見から商業化までの経路を示す。各段階の一般概要を、CGRPワクチン配合物の発見から商業化(産業化)までの開発プロセスを特定する流れ図を用いて図2に説明する。これらの段階のそれぞれの詳細な評価及び分析には、喜ばしい驚きもそうでないものも伴ったが、そうした評価及び分析は、無数の実験を招くこととなった。こうした無数の実験こそ、安全かつ有効なCGRPワクチン配合物の商業化を最終的にもたらすと思われる。
【0196】
a.設計履歴
それぞれのペプチド免疫原構築物または免疫療法製品には、その特定の疾患機序及びそこに介入するために必要な標的タンパク質(複数可)に基づく独自の設計着目及び手法が必要である。片頭痛の治療の場合、図1ならびに図5(Russel, et al, 2014)及び図2(a)~図2(c)(Edvinsson, et al, 2018)に概略するとおりの本発明者らが利用し得る科学的知見に基づいて、CGRPを標的分子として選択した。図2に示すとおりの発見から商業化への経路は、典型的には、達成に十年または数十年を要するものである。免疫原構築物を設計するには、介入対象の機能性部位(複数可)と相関するCGRP B細胞エピトープペプチドを同定することが重要である。さまざまなヘルパーT細胞支援物(担体タンパク質または適切なヘルパーT細胞ペプチド)をさまざまな配合物に組み込んでモルモットにおいてパイロット免疫原性試験を連続的に実施し、続いて、誘導抗体精製物または特定のCGRPペプチド免疫原構築物を用いるワクチン配合物の機能特性を、特定のin vitro機能アッセイで、あるいは選択した動物モデルにおけるin vivo概念実証実験で評価した。次に、広範な血清学的検証を行って、非ヒト霊長類において候補CGRP Bエピトープペプチド免疫原構築物をさらに試験することで、免疫原性、及びCGRP Bエピトープペプチド免疫原の設計方向をさらに検証した。次いで、選択したCGRPペプチド免疫原構築物を、異なる混合物として調製することで、組み合わせて使用した場合のペプチド構築物間のそれぞれの相互作用と関連する機能特性の微妙な差異を評価する。追加評価を行って、最終的なペプチド構築物、ペプチド組成物、及びそれらの配合物を、配合物のそれぞれの物理的パラメーターと併せて確立することで、最終的な製品開発プロセスに繋げる。
【0197】
CGRPペプチド免疫原構築物のアミノ酸配列は、多くの理論的根拠に基づいて設計及び選択されたものである。こうした理論的根拠の一部には、以下のとおりのCGRP Bエピトープペプチド配列の採用が含まれる:
(i)自己T細胞活性化を防ぐため、CGRP内の自己ヘルパーT細胞エピトープを欠くものであること。自己T細胞活性化は、脳の炎症を招き、その結果、髄膜炎菌性脳炎になる恐れがある。このことは、アルツハイマー病の治療のためAβ1-42を標的するAN1792ワクチンを用いた臨床試験で以前に報告されている。
(ii)自己分子であることから、それ自体は非免疫原性であること。
(iii)宿主に投与された際、タンパク質担体または強力なヘルパーT細胞エピトープ(複数可)により免疫原性になることが可能であること。
(iv)CGRPペプチド配列(B細胞エピトープ)に対して指向化されており、タンパク質担体またはヘルパーT細胞エピトープ(複数可)に対しては指向化されていない高力価抗体を誘導するものであること。
(v)CGRPとCGRP受容体の相互作用及び細胞活性化による細胞内cAMP上昇の誘導を抑制することができる高力価抗体を誘導するものであること。ならびに
(vi)片頭痛の治療のための概念実証試験の検証として、当該ワクチン配合物が、動物モデル、例えばBALB/Cマウスに投与された場合に、カプサイシンにより誘導される皮膚血流を抑制することができること。
【0198】
b.片頭痛に罹患している患者を治療する潜在力を有する医薬組成物のためのCGRPペプチド免疫原構築物の設計及び検証
医薬組成物に組み込む上で最も強力なペプチド構築物を生成させるために、ヒトCGRP B細胞エピトープペプチド(配列番号4~24)のレパートリー、及びさまざまな病原体に由来する非選択的なヘルパーT細胞エピトープまたは人工的なヘルパーT細胞エピトープ(配列番号74~115)をさらに設計し、例えば、モルモットで最初に免疫原性試験を行うための代表的CGRPペプチド免疫原構築物(配列番号116~180)にした。
【0199】
i)設計に向けた、受容体結合領域または受容体活性化領域に由来するCGRP B細胞エピトープペプチド配列の選択
CGRPの中心/C末端に位置するCGRP受容体結合領域及びCGRPのN末端C2-C7ループ/中心領域の受容体活性化領域を、CGRP Bエピトープの設計に向けて選択し、次いで、これらをさらにペプチド免疫原構築物にして、最初にCGRP BエピトープペプチドコートしたプレートでELISAを行うことにより免疫原性を評価し、続いてin vitroで機能アッセイにより評価するために、モルモットで免疫血清を誘導した。
【0200】
CGRPがCGRP受容体に結合すると、CGRP受容体は、細胞内で活性化シグナルを伝達して、細胞性事象の中でも特に、cAMPレベルの細胞内上昇を招く。特定CGRPペプチド免疫原構築物に対するモルモット免疫血清由来の精製抗体がCGRPの機能特性を中和する能力について、図6に示すとおり及び図3内に表示する表に示すとおり、抗体が存在しない対照と比較した場合のcAMP上昇を50%阻害するIC50で評価する。
【0201】
これらのCGRPペプチド免疫原構築物を、最初に、ISA 51及びCpGを用いて配合した。配合は、モルモットにおける初回免疫化用に400μg/lmLとし、免疫原性試験用に100μg/0.25mLのブースト(3、6、及び9wpi)とした。モルモットで免疫原性を試験するため、様々な(wpi)時の採血によるモルモット免疫血清を用いたELISAアッセイを行い、免疫血清は希釈して、1:100から1:10000までの10倍系列希釈とした。対応するマウス/ラットCGRP Bエピトープペプチド及び全長CGRPペプチドを1ウェル当たり0.5μgペプチドで用いて、ELISAプレートをコートした。試験した血清の力価(Log10で表示)は、図3に示すとおり、A450のカットオフ値を0.5としてA450の線形回帰分析によって計算した。CGRPペプチド免疫原構築物に由来する代表的なBエピトープの詳細な力価については、表4、表5、表6に示すとおりであった。設計した短CGRPペプチドは、内在性Thエピトープが欠けているために非免疫原性であることが多いにも関わらず、外来Thエピトープを付加することで、特定のCGRPペプチド免疫原構築物の免疫原性が増強される可能性がある。様々な構築物の反応性/特異性パターンを、図3と合わせて表4、表5、表6から詳細に分析することで、CGRP分子内の特定残基により付与される免疫原性を評価することができ、それにより最適なペプチド免疫原構築物の設計がさらに促進されると思われる。
【0202】
ii)自己T細胞活性化を防ぐため、選択されたCGRPBエピトープ内の自己ヘルパーT細胞エピトープを欠落させる
表7に示すとおり、代表的なCGRP B細胞エピトープ、例えば配列番号5、6、及び15のものは、それらをペプチド免疫原構築物のカウンターパートとして使用した強力なワクチン配合物に含めて投与された場合、それら自身は、CGRPに対する抗体を何も誘導しなかった。したがって、それらCGRP B細胞エピトープは、選択されたCGRP B細胞エピトープ内に望ましくない内在性Thエピトープを欠いている。
【0203】
iii)CGRPペプチド免疫原構築物により誘発される集中的な抗体応答は、CGRP B細胞エピトープのみを標的とする
よく知られていることであるが、担体タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ジフテリアトキソイド(DT)タンパク質及び破傷風トキソイド(TT)タンパク質など)は、標的B細胞エピトープペプチドに対して指向化された免疫応答を増強するために使用され、それぞれ、当該B細胞エピトープペプチドと化学結合しているが、こうした担体タンパク質は全て、免疫化宿主において誘導される抗体の、90%超を、当該増強用担体タンパク質に対して指向化させてしまい、標的B細胞エピトープに対して指向化された抗体は10%にも満たない。
【0204】
それ故に、本発明のCGRPペプチド免疫原構築物の特異性を評価することは興味深いことである。CGRPの20番~37番及び22番~37番由来の長さが異なるB細胞エピトープがスペーサー配列を介して異種T細胞エピトープUBITh(登録商標)1(配列番号98)に連結された2種の代表的なCGRPペプチド免疫原構築物(表8の配列番号142及び142)を免疫原性評価用に調製した。UBITh(登録商標)1(B細胞エピトープ免疫増強に使用したヘルパーT細胞ペプチド)をプレートにコートし、モルモット免疫血清を用いることで、免疫増強に使用したUBITh(登録商標)1ペプチドとの交差反応性を試験した。これら構築物の免疫原性が、対応するCGRP B細胞エピトープペプチドに対しては高いものであった(たった1回の注射でもCGRP B細胞エピトープ(複数可)に対して生成された抗体の力価が高い(5を超えるLog10)ことによって示された)こととは対照的に、すべてではないにせよ、免疫血清のほとんどが、UBITh(登録商標)1ペプチドに対しては反応しないことが明らかとなった(表8に示される)。
【0205】
まとめると、慎重に選択したヘルパーT細胞エピトープに標的CGRP B細胞エピトープペプチドを連結して組み込むという単純な免疫原設計を行うことで、対応するCGRP B細胞エピトープペプチドのみを標的とする集中的な免疫応答を生成させることが可能になる。医薬組成物の設計については、それが生成させる免疫応答が特異的になればなるほど、それによって組成物に備わる安全性プロファイルが向上する。したがって、本発明のCGRPペプチド免疫原構築物は、その標的に対して高度に特異的である上に強力なものである。
【0206】
iv)選択したCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化された免疫血清を用いた詳細なエピトープマッピング
表9に示すとおり、抗体結合部位(複数可)を標的Bエピトープ領域中の特定残基に帰属させるための詳細なエピトープマッピングでは、45通りのオーバーラップする10マーペプチド(配列番号26~70)を合成した。これらは、CGRPの全長領域と合わせて、プロセシングされるCGRP分子の前後の前駆配列をカバーするアミノ酸-9番~アミノ酸45番の配列をカバーする。これらの10マーペプチドを、固相免疫吸着物質として96ウェルマイクロタイタープレートのウェル上に個々にコートした。2.0μg/mLの10マーペプチドでコートしたこれらのプレートウェルに対して、プールしたモルモット免疫血清を検体希釈緩衝液での1:100希釈液として添加した後、37℃で1時間インキュベートした。プレートウェルを洗浄緩衝液で洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型rプロテインA/Gを添加し、30分間インキュベートした。PBSで再び洗浄した後、基質をウェルに添加してELISAプレートリーダーによって450nmで吸光度を測定した。その際、2連の試料で分析を行った。CGRPペプチド免疫原によって誘導された免疫血清が、対応するCGRP B細胞エピトープペプチドでコートしたウェルに結合すると、抗体結合シグナルが最大となる。
【0207】
表9に示すとおりの詳細なエピトープマッピングの結果から明らかとなったのは、アミノ酸11番~37番の受容体結合領域ならびにアミノ酸1番~25番、11番~25番、8番~18番、11番~35番、11番~37番、15番~37番、及び18番~37番のC2-C7ループ周囲の受容体活性化領域両方に由来するCGRP B細胞エピトープペプチドを含む、配列番号122、123、127、129、130、132、137、及び139のCGRPペプチド免疫原構築物から得られたモルモット血清プールが、高力価抗体を誘導し、これら高力価抗体は、アミノ酸1番~37番(配列番号1)の10マーペプチドクラスターを主に標的とするものであり、また高い交差反応性を、主に、Bエピトープ1番~25番については1番~37番;Bエピトープ11番~25番については15番~26番;Bエピトープ8番~18番についてはほとんど交差反応せず;Bエピトープ11番~35番については22番~33番及び26番~36番;Bエピトープ11番~37番については23番~33番及び28番~37番;Bエピトープ18番~37番については23番~33番及び28番~37番;Bエピトープ11番~35番については22番~33番及び26番~36番;Bエピトープ15番~37番については、17番~26番、20番~30番、及び28番~37番に由来する様々なパターンのアミノ酸を有するペプチドに対して示すものである。配列番号123及び130のペプチド免疫原構築物の設計には、同じBエピトープが採用され、配列番号123のスペーサーが、配列番号130に比べて、余分なKKKスペーサーを持つことしか違わなかったにも関わらず、KKK残基を持たない分短かいスペーサーを有していた配列番号130の構築物でアミノ酸20番~30番及びアミノ酸26番~36番に対するさらなる反応性が見られたことについては、解明に関心が持たれる。
【0208】
まとめると、設計した合成CGRPペプチド免疫原構築物は、それぞれのC末端に近いCGRP受容体結合領域及びC2-C7ループに近い受容体活性化領域の両方に近接している、CGRP内の異なる10マーペプチドクラスターを標的とするポリクローナル抗体を生成させる強固な免疫応答をモルモットで誘導することで、重要な医学的介入を可能にする。エピトープマッピングは、機能アッセイ評価と合わせて、ワクチン配合物に使用するのに最適なペプチド免疫原構築物の同定を可能にすると思われる。
【0209】
実施例7
CGRPペプチド免疫原構築物により誘導される抗体及びその配合物のEX-VIVO様式での機能特性評価
表4、5、6、7、8、及び9に示すとおり、慎重に選択した候補CGRP免疫原構築物で免疫化したモルモットの免疫血清から精製した抗体が高免疫原性であり、交差反応性を有することが実証された後、次の試験を設計することで、各動物から6wpi時点で収集したこれらの免疫血清から得られる代表的な精製IgGにより、CGRPがその受容体と結合したときにCGRP内のC2-C7ループにより活性化することによるcAMPの細胞内上昇が抑制され得るかどうかを評価した。
【0210】
平滑筋細胞内の分子レベルでは、CGRPは、その受容体と、そのC末端領域を介して結合することができ、次いで、そのループ領域を用いることにより受容体を活性化することができる(参照文献)。ジスルフィド架橋を有する環状C2-C7ループは、受容体活性化において基本的役割を有し、細胞内cAMPの上昇と密接に関連する。様々な抗CGRP IgGを用いて、中和アッセイにおいてそれらの潜在的抗CGRP影響を特性分析した。具体的には、それらの影響を、細胞内cAMPレベルの変化を用いて機能性薬理学実験により評価した。このin vitro機能評価は、本発明のCGRPペプチド免疫原構築物に対して指向化されたモルモット免疫血清の抗CGRP効果を評価する上で特に重要である。アッセイ手順は、実施例4に詳述されている。
【0211】
抗CGRP抗体による、CGRP活性化リン酸化における細胞内cAMP上昇の抑制
各動物の6wpi時点の採血で得られた免疫血清を収集し、抗体を実施例4に記載されるとおりに精製した。21種のCGRPペプチド免疫原構築物を、実施例6で実証されるとおりにそれらの個々の免疫原性についてモルモットで試験した。精製抗体は、ペプチド免疫原構築物に使用されたそれぞれの標的B細胞エピトープペプチドに基づいて、3つのグループに分類された。グループはそれぞれ、N末端領域、中心領域、及びC末端領域由来のB細胞エピトープペプチドで指向化されたものである。データは、CGRP処理したL6細胞内で検出されたcAMPに対するパーセンテージで記録される。ゼロ%は、L6細胞のみであることを表し、100%は、CGRP処理したL6細胞を表す。付随する表と合わせて図4に示すとおり、N末端領域、中心領域、またはC末端領域由来のCGRP Bエピトープペプチドを組み込んだ構築物が示すcAMPレベルのIC50(μg/mL)は、0.60から20超まで存在する。実用性を目的として、10μg/mL未満のIC50を、抗体が介在するcAMP産生抑制に有意義であるとして採用する。有効な機能性免疫原性を示す代表的な構築物を順位付けする(IC50μg/mLの低い順)と、配列番号130>127>150>125>137>123>121>119>124>131>126>133>120>129>135>116~117~118~128~139となり、CGRPの37マー構造中に最大で数個の残基という高精度でCGRPペプチド免疫原構築物の最適設計を記述することができる。
【0212】
まとめると、それぞれの機能特性に関する相対順位で上記に示すとおりのCGRPペプチド免疫原構築物は、引き続きCGRPワクチン配合物に使用して機能性有効性を実証する価値がある。
【0213】
実施例8
CGRPワクチンの概念実証試験としてのBALB/Cマウスによるカプサイシン誘導型皮膚血流モデルにおける予防様式での代表的なマウスCGRPペプチド免疫原構築物の評価
a.試験の理論的根拠
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、末梢神経系及び中枢神経系で広く発現する37のアミノ酸からなるペプチドである。CGRPは、主に、血管のすぐ近くにある小径無髄感覚ニューロンに付随している。CGRPは、強力な血管拡張剤であり、CGRPの局所投与は、血流の一過性増加を引き起こす。CGRPは、疼痛伝達、疼痛調節、及び神経原性炎症にも関連するとされてきた。CGRPは、カプサイシンを用いて一過性受容体電位カチオンチャネルを活性化することにより、感覚ニューロンから放出させることができる。
【0214】
結果として生じる皮膚血流の変化の検出には、レーザードップラー造影(LDI)が使用されてきたが、そのような変化は、主にCGRPが原因となって引き起こされることが示されてきた。CGRPは、複数の疼痛モデルにおいて、CGRPノックアウトマウスの応答が減弱することにより実証されるとおり、炎症痛とも関連している。疼痛感受におけるこの役割は、感覚ニューロンにおけるCGRPの発現と一致している。
【0215】
哺乳類血漿では、CGRPの半減期は、約10分である。ヒト三叉神経節では、CGRP反応性ニューロンは、ニューロン全体の最大50%を占める(Tajti., et al, 1999)。CGRPを標的とすることにより抗CGRPワクチン接種アプローチを用いて片頭痛の頭痛を治療することは、長期間にわたり高い費用効率で長期CGRP阻害する可能性を伴って、予防的様式で片頭痛を治療するという満たされていない医学的需要を満たすことができる。
【0216】
この試験は、片頭痛のための抗CGRPワクチン治療の効力を例示する概念実証試験として、Balb/Cマウスモデルにおいて、実施例7で同定されたヒトCGRPペプチド免疫原構築物カウンターパートの代表的カウンターパートのマウスCGRPペプチド免疫原構築物について、カプサイシン誘導型皮膚血流の低下におけるそれらの能力を試験するように設計されている。
【0217】
b.試験計画
i)代表的な試験物:
この試験で使用するCGRPペプチド免疫原構築物ワクチン配合物は、以下のとおりである:
グループ1:UBITh(登録商標)1-ヒトαCGRP11-37(配列番号123)とISA51及びCpG3
グループ2:UBITh(登録商標)3-ヒトαCGRP11-37(配列番号141)とISA51及びCpG3
グループ3:UBITh(登録商標)3-ラット/マウスαCGRP11-37(配列番号151)とISA51及びCpG3
グループ4:UBITh(登録商標)1-ヒトαCGRP11-37(配列番号123)とADJUPHOS及びCpG3
グループ5:UBITh(登録商標)1-ヒトαCGRP(配列番号131)とISA51及びCpG3
【0218】
これらの試験物を、グループ情報と合わせて表2にまとめた。
【0219】
ii)対照物:
グループ6:ISA51及びCpG3
グループ7:ADJUPHOS及びCpG3
グループ8:生理食塩水
【0220】
iii)グループ分け及び投薬量:
グループ分けは、以下のとおり行われる:
【0221】
iv)個体識別:
試験動物は、ピクリン酸マーカーで識別した。
【0222】
v)グループ識別:
ケージに、識別用の標識を適切に付した。標識には、試験名、IACUC番号、投与経路、観察期間、ケージ番号、個体数/ケージ、種、系統、性別、収容日、収容齢、動物識別番号、管理者、及び副管理者が含まれていた。
【0223】
vi)投与経路及び注射部位:
雌性Balb/Cマウス(n=6/グループ)に、40μg/0.1ml/用量の試験ワクチンまたは0.1ml/用量の対照物を筋肉内注射(IM)で投与した。注射部位は1箇所(後肢大腿四頭)であり、0、3、6、9、12wpi時点の5回注射してから、カプサイシン誘発を行なった。
【0224】
vii)治療スケジュール:
治療過程中、0、3、6、9、及び12wpiの時点で、対照物または試験物を合計で5回注射して投与した。
【0225】
viii)生体試料の採取及び調製:
試験管中、室温で、血液を凝固させ、最短30分から最長60分間精置して、血清と血餅を分離させた。冷却遠心機を用いて1,000×gで10分間遠心することにより、血餅を除去した。血清を直ちに滅菌1.5mLエッペンドルフポリプロピレン試験管に移した。取扱い中、全ての試料は濡れた氷上に維持した。使用しない血清試料は、-80℃で凍結して貯蔵した。
【0226】
ix)レーザードップラー造影(LDI):
実験当日、マウスの後肢を剃毛し、マウスを、LDI装置の下にある加温パッドに乗せた。25mg/kgのZoletilで動物に麻酔をかけ、動物を麻酔下で20分間保定してから、スキャニングした。2回のベースラインスキャンから連続スキャニングを開始し、その後
【0227】
カプサイシン溶液(カプサイシン50mgを、3:2:1比の83.4μLのEtOH、55.6μLのTween20、27.8μLの精製HOに溶解させた溶液)2μLを、2つのOリングのそれぞれに塗布した。Oリングを、動物の腰に置いた。スキャニングを、さらに10分間、2.5分ごとに1回のスキャンで続けた。データは、関心対象の領域について、moorVMS-LDFソフトウェアを用いて分析した。各時点での関心対象の領域から得られたシグナルを平均化するのに、Excelのワークシートを使用した。データは、ベースラインからの変化のパーセントとして報告する。
【0228】
x)抗体価の免疫学的分析:
血清またはCSFの試料を収集し、抗原コーティングに全長ヒトを使用して実施例2に示すとおりに調製したELISAキットにより抗CGRP抗体価を測定した。血清試料は、3倍系列希釈し、開始希釈は1:1000であった。抗体ELISA力価(Log10で表示)は、自動プレートリーダーを用いて、A450nmでの吸光度で決定した。
【0229】
c.試験結果。
i)注射部位の反応:
注射部位のわずかで一時的な腫脹が、免疫化手順の結果として、時々観察された。
【0230】
ii)免疫化マウスから得られた免疫血清の抗体価:
代表的なELISAの結果から、CGRPペプチド免疫原構築物(配列番号132及び141)のマウスカウンターパート(例えば、配列番号151)から得られる2種のペプチド免疫原構築物が、それぞれのBエピトープペプチド(配列番号15及び9)に対する高い免疫原性力価を誘導したことが示されただけでなく、図5に示すとおり、これら2種の免疫血清から得られる抗体が、それらの同種全長ヒトCGRPに対して中程度の交差反応性を有することがわかった。この試験は、2種の代表的なCGRPペプチド免疫原が、ヒトCGRP Bエピトープペプチド及びそのマウスカウンターパートペプチドに対して交差反応性を持つ特異的抗体を誘導することができることを示した。このPOC動物試験では、マウス/ラットCGRP Bエピトープペプチド免疫原構築物カウンターパートに、マウスにおいて選択した構築物(例えば配列番号132、134、136、138、140、141、及び151)の免疫原性をさらに増強するため、UBITh(登録商標)3(UBITh(登録商標)1よりも強力な組み合わせThペプチドライブラリー)をヘルパーT細胞ペプチドとして使用し、及びリンカー(例えば配列番号72)を使用した。
【0231】
iii)LDIの結果:
皮膚血流測定用のカプサイシンモデルは、動物ならびにヒトの両方におけるin vivo薬力学モデルである。これは、非侵襲性であり、技術的に複雑ではなく、しかも迅速で客観的なエンドポイントを与える。このモデルは、繰り返し試験することが可能であり、測定結果は、十分に再現性がある。したがって、このモデルは、CGRP遮断療法の臨床評価に理想的な評価を提供する。全ての他のバイオマーカーモデルと同様に、このモデルも、それ自体の限界がある。カプサイシンモデルは、所望の試験の天然の病態生理学的プロセスのシミュレーションの域を出ない。カプサイシン誘導型皮膚血流に対して、薬物またはワクチンに誘導された抗体の効果は、抗CGRP活性の傾向をもたらすことができ、この傾向は、抹消皮膚血流の阻害にそれらが効力を有することを示す。
【0232】
図6に示すとおり、対照物である生理食塩水または各種アジュバント単独配合物と比較した場合、配列番号123、131、141、及び151のCGRPペプチド免疫原構築物は、ペプチド/CpG複合体を形成しているCpGを含むADJUPHOS配合物及びISA51配合物の両方の状態で、3回のワクチン接種を受けたあとのワクチン接種マウスにおいて抗CGRP抗体の有意な特定力価(Log10で4~6)を誘発した。動物は、カプサイシン誘導型皮膚毛細血管血流がそれぞれ抑制されたことを示した(図6)。測定は、8wpi、12wpi、及び14wpi時点で行われた。そのような阻害の期間は、測定期間中、14週間持続した。免疫原性試験において選択した抗体調製物の力価、またはそれぞれの抗体のcAMP阻害力価を測定するin vitroアッセイ測定におけるそれぞれに対応するIC50には差が見られたものの、3種の代表的なCGRPペプチド免疫原構築物(例えば、配列番号123、131、及び141)及びそれらの配合物は、ワクチン接種マウスにおいて、カプサイシン誘導型皮膚血流の低下に同様な能力を共有していた。このことは、片頭痛の治療にこれらCGRPペプチド免疫原構築物を使用することの有効性を示す。
【0233】
【表1】
【0234】
【表2】
【0235】
【表3】
【0236】
【表4】
【0237】
【表5】
【0238】
【表6】
【0239】
【表7】
【0240】
【表8】
【0241】
【表9】
【0242】
【表10】
【0243】
【表11】
【0244】
【表12】
【0245】
【表13】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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