(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】房室三尖弁を置換するための組立品
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61F2/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022030709
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2018545550の分割
【原出願日】2016-11-15
【審査請求日】2022-03-30
(32)【優先日】2015-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519097755
【氏名又は名称】ティー-ハート・エス・ア・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ディビ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0304200(US,A1)
【文献】国際公開第2014/144937(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2014/0194983(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0222142(US,A1)
【文献】特表2015-517854(JP,A)
【文献】特表2008-536592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの心臓の右心の三尖弁口用の組立品であって、
三尖弁バイオプロテーゼ(210)と封止スカート(610)とを担持している内部ステント(200)に接続された外部フレーム(100)
を含み、
前記外部フレーム(100)は、自己三尖弁弁輪のなかに保持されるように構成されており、
前記内部ステント(200)は、前記内部ステントおよび前記外部フレームは、1つ以上の固定ストランドによる接続以外に相互に直接接続されることがないように、前記1つ以上の固定ストランドによって内部ステントの遠位部分を介して前記外部フレームに接続されており、
前記封止スカート(610)は前記外部フレーム(100)と前記内部ステント(200)との間に存在する隙間空間を覆っており、
前記封止スカート(610)は、前記外部フレーム(100)と前記自己三尖弁弁輪の領域内の自己組織の部位との間の接触空間を遮断するように構成されており、
前記外部フレーム(100)は、
周方向に相互に分離し相互に接続されていない複数のサブセクションを備え、
複数のサブセクションのそれぞれ
が、固定ストランドによって内部ステントに接続されている、
組立品。
【請求項2】
前記外部フレーム(100)は、前記組立品を前記自己三尖弁弁輪のなかの適所に保持するように構成されている変形可能領域を有する、請求項1に記載の組立品。
【請求項3】
前記外部フレーム(100)は、前記自己三尖弁弁輪の領域から上流側に、前記自己三尖弁弁輪のなかにおける前記組立品の保持を強化するように構成された形状を有する、請求項1又は2に記載の組立品。
【請求項4】
前記外部フレーム(100)は、前記自己三尖弁弁輪の領域から下流側に、前記自己三尖弁弁輪のなかにおける前記組立品の保持を強化するように構成された形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項5】
前記外部フレーム(100)は4つのサブセクション(101,102,103,104)を含み、前記サブセクションのそれぞれは、ニチノール製のストランドによって前記内部ステントに接続されている、請求項1に記載の組立品。
【請求項6】
前記自己組織に固定するための少なくとも1つの固定要素(501,502)を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項7】
前記封止スカート(610)は、いくつかのサブセクション及び/又はいくつかの材料層を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項8】
前記外部フレーム(100)及び/又は前記内部ステント(200)及び/又は固定ストランド(411,412,413,414)及び/又は固定要素(501,502)は感熱材料及び/又は形状記憶材料を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサ及び/又は放射線不透過性マーカーを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項10】
前記組立品の構造を変更するのに好適な及び/又は前記自己三尖弁弁輪に対する前記組立品の一部の位置を調整するのに好適なアクチュエータを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項11】
前記組立品は、下大静脈内に配置するのに好適な内部ステント(701)に接続されており、前記内部ステントは、ニチノール製のストランドによって前記組立品の前記外部フレームに接続されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の組立品。
【請求項12】
前記組立品は、経皮的経路による導入のためにカテーテル(800)内でパッケージされた状態に折り畳まれている、請求項1~11のいずれか一項に記載の組立品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥のある房室心臓弁又は三尖弁を置換するための方法及びシステムに関係する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの心臓は4つの心臓弁を有する。これら弁のうち2つは房室弁と呼ばれる。三尖弁は右心房と右心室の間に位置している。僧帽弁は左心房と左心室の間に位置している。その他の2つの弁は、心室と血管系の間に位置している。大動脈弁は大動脈から左心室を分離し、肺動脈弁は肺動脈から右心室を分離する。
【0003】
一部の医学的状況においては、三尖弁を修復又は置換することが適切な場合がある。これら医学的適応は主に三尖弁の機能的病状によるものであり、その病状は確認しづらく、重篤で、三尖弁弁輪の顕著な拡張に付随し得る。より希には、この病状は、リウマチ性若しくは感染性の弁膜症、又は更には閉塞した若しくは漏洩しているバイオプロテーゼの劣化による。
【0004】
多くのシステムが、特に経皮的経路又は低侵襲経路によって、欠陥のある心臓弁の置換を可能にするとされている。
【0005】
特に、僧帽弁の置換の手技は知られている。対照的に、三尖弁の同所性置換について述べる学術的文献及び強い根拠となる特許文献は非常に少ない。
【0006】
僧帽弁の置換について公開されている技術的教示は、特に生理病理学的理由から(三尖弁弁輪の解剖学的構造は本質的にほんのわずかに線維性であり、その寸法は大きく、楕円形である。右心室の解剖学的構造もまた特殊である)三尖弁の置換の場合に直接転用することはできない。
【0007】
三尖弁は僧帽弁よりもかなり大きい。病理学的状況において、三尖弁弁輪は直径が40mm超に膨張する一方、病理学的僧帽弁輪は約30~35mmである。この差はいくつかの結果、特に機械的結果(例えば、支持、安定性、及びプロテーゼ周囲の漏れに関するもの)をもたらす。
【0008】
しかしながら、一般にこの逆は考えられる。三尖弁に適用可能な手技は強い根拠をもって僧帽弁に適用可能であり得る。
【0009】
特許文献では、両種の房室弁に同等に該当すると主張する文書を報告しているが、実際には、これら技術的教示は、一般に、僧帽弁の場合のみに該当し得る。
【0010】
米国特許出願公開第2014/0172070号明細書及び米国特許第8657872号明細書は、このような文献の例であり、これらに記載されている技術的教示には、三尖弁の置換への適用に関して制限及び/又は欠点及び/又は不足がある。
【0011】
解剖学的には類似してはいるものの、大動脈弁と肺動脈弁は、心臓内におけるその解剖学的状況の点のみを考慮した場合、実際には、異なる処置及び/又は置換方法を必要とする特徴を有する。
【0012】
実際の臨床では、目下、慣例的に大動脈弁のみが経皮弁に置換されている。経皮僧帽弁のバイオプロテーゼモデルは、現在、臨床的評価の過程にある。三尖弁に関しては、弁形成術及び弁輪形成術(自己弁輪の狭窄)は周知であるが、経皮的同所性バイオプロテーゼを伴う臨床的処置は開発途上であり、かなりの初期段階にある。
【0013】
本発明は、この後者の開発に含まれる。
【0014】
特に三尖弁の置換に適合した方法及びシステムに対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許出願公開第2014/0172070号明細書
【文献】米国特許第8657872号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、房室三尖弁を置換するためのシステムを開示する。本発明によれば、フレームはステントを含み、ステントはそれ自体、三尖弁バイオプロテーゼを収容している。フレームの直径は、したがって、バイオプロテーゼを担持しているステントの直径よりも大きい。特定の実施形態では、フレームの直径は、ステントの直径よりもわずかに大きく、ステントはそれ自体、バイオプロテーゼの直径に適合されている。
【0017】
本発明は、また、房室三尖弁を置換するための方法を開示する。経路は、一般に、経皮的経カテーテル経路(percutaneous trans-catheter route)である。経皮的アプローチの後、カテーテル内に収容されたシステムは血管経路によって適所に配置される。
【0018】
三尖弁バイオプロテーゼと封止スカートとを担持する内部ステントに接続された外部フレームを含むヒトの心臓の三尖弁口用の組立品が開示され、組立品において、外部フレームは、(患者の心臓内に留置される可能性がある及び/又は患者の心臓内に留置されたとき)その位置を自己三尖弁弁輪内に保持するように適合されており、内部ステントは、1つ以上の固定ストランドによって外部フレームに接続されており、(パッケージされた状態において及び/又は患者の心臓内に留置されたとき)封止スカートは、外部フレームと内部ステントとの間に存在する隙間空間を覆っている。
【0019】
一発展形態において、封止スカートは、外部フレームと、自己組織(即ち、場合によっては、即ち、折り畳まれた又はパッケージされた状態において)の部位との間及び/又は弁輪の領域の自己組織(即ち、患者の心臓内に留置された状況において)の部位との間に存在する(接触)空間を更に覆っている。
【0020】
一実施形態では、封止スカートは、折り目又は折り返しを生じ、自己組織と接触する空間を遮断することと、弁輪から上流側におけるフレームとステントとの間の隙間空間を覆うこととの両方を可能にする。
【0021】
一実施形態では、スカートはこの隙間空間のみを覆っており、他の手段(例えば、シーリングバンド、又はビード、生体適合性接着剤、又は充填材等)を用いてプロテーゼ周囲の漏れを防ぐ。
【0022】
フレームにはプレストレスが施されている、又はその構造によって(半径方向外側に向けられた)半径方向力を作用し、フレームが自己弁輪内の適所に維持されることを可能にする。フレームは、ステントを担持している又はステントを含む又はステントと対応付けられている。ステントはそれ自体、バイオプロテーゼを担持している又はバイオプロテーゼを含む又はバイオプロテーゼと対応付けられている。封止スカートは、(フレームと、限定された選択肢から選択される直径を有するバイオプロテーゼを担持しているステントとの間に存在する「間隙」空間(依然として非ゼロである)を覆うことによって)血流を右心房から右心室にバイオプロテーゼを通じて送ることを可能にする。封止スカートは、また、(弁輪の領域において、自己組織に対し押し付けられた外部フレームと自己組織との間に存在する「接触」空間を覆うこと及び/又は阻止すること及び/又は遮断することによってフレームと自己組織との間におけるプロテーゼ周囲の漏れを最小限にする(又は更には完全に回避する)ことを可能にする。密封スカートによって、血流は「接触」空間の幅の周囲全体にわたり遮断される(又は停止又は阻止又は遮断又は防止される)。
【0023】
一発展形態において、フレームは、自己弁輪に対応する領域内に変形可能領域を有する。
【0024】
一発展形態において、封止スカートによって覆われているフレームは更に、自己弁輪の領域から上流側に、自己弁輪内における組立品の保持を強化する形状を有する。
【0025】
この形状は、血流の捕捉を最適化するために凸状又はフレア状とすることができ、これにより三尖弁弁輪内における組立品の保持の安定又は維持に寄与する(適切な捕捉によって、密封スカートの存在による血圧に起因し得る組立品のねじり、即ち、回転/並進の機械的影響が最小限となる)。
【0026】
一発展形態において、フレームは更に、自己弁輪の領域から下流側に、血流の妨害を最小限にする形状を有する。
【0027】
概して、右心室の領域を通るフレームの部分はその寸法が制限されている(以下に記載のオーダーを参照のこと)。いくつかの実施形態では、フレームのこの部分の形状の機能によって、乱流を最小限にすることができる(例えば、特別な形状は、特に、血液の層流をより多くもたらす傾向がある抗力効果を伴う場合がある)。
【0028】
一発展形態において、フレームは複数のサブセクションを含む。
【0029】
一実施形態では、フレームは一体型である、即ち、一体形成されている(例えば、フレームは変形可能材料から3Dで印刷されている)。一実施形態では、フレームは(例えば、相補形の又は対称な)2つのサブセクションを含む。一実施形態では、フレームは、(経済的且つ頑丈な配置構成の)3つの部品を含む。一実施形態では、フレームは、4つのサブセクション(安定性の点で有利な、対称な配置構成)を含む。特定の実施形態では、フレームは、多数のサブセクション又はフレームワイヤを含む。
【0030】
一実施形態では、フレームの異なるサブセクションは互いに一体である。一実施形態では、フレームの異なるサブセクションは互いに少なくとも部分的に独立している。いくつかの実施形態では、フレームの少なくとも1つのサブセクションは、剛性、弾性、可塑性、形状記憶性、感熱性、作動可能性、計装性(instrumented)、構成可能性、及び反跳性(sprung)を含む特性の中から選択される物性を有する。
【0031】
一発展形態において、外部フレームは、1つ以上のストランドによって内部ステントに接続されている。
【0032】
一発展形態において、フレームは、4つのサブセクションを含み、サブセクションのそれぞれは、ニチノール製のストランドによって内部ステントに接続されている。
【0033】
4つのサブセクション及び4つのストランドを有する構成は、組立品を機械的ねじれの影響に対して特に安定させる。他の実施形態は、互いにフレームのセクション間に及び/又はフレームのセクションとステントとの間に1つ以上の「交差」リンクを含む。
【0034】
一発展形態において、組立品は、自己組織に固定するための少なくとも1つの固定要素を更に含む。
【0035】
自己組織に固定するための要素は、特に、自己弁輪の領域の最も近くの、並進及び/又は回転時における組立品の保持を向上させる。
【0036】
一発展形態において、封止スカートの配置構成は、例えば、アクチュエータによって構成可能又は再構成可能又は再配置可能である。
【0037】
例えば、スカートの空間的配置構成は、バイオプロテーゼを有するステントとフレームとの間に存在する空間の変化に適合させることができる。スカートは、ある程度、例えば、遠隔的に作動又は再配置され得る。
【0038】
一発展形態において、フレーム及び/又はステント及び/又は固定ストランド及び/又は固定要素は、感熱材料及び/又は形状記憶材料で作製されている。
【0039】
一発展形態において、組立品は、少なくとも1つのセンサ及び/又はマーカーを更に含む。
【0040】
センサは、特に、位置センサ、動作感知センサ(movement sensor)、圧力センサ、又は化学センサ及び/又は生物学的センサ(バイオマーカー)であり得る。マーカーは、特に、放射線不透過性マーカーであり得る。
【0041】
一発展形態において、組立品は、組立品の構造を変更するのに好適な及び/又は自己弁輪に対して組立品の一部の位置を調整するのに好適なアクチュエータを更に含む。
【0042】
組立品は関節式に接続され得る又は関節式に接続可能であり得る。再配置は、相対的(自己組織に対して)及び/又は絶対的(組立品の構造自体の形状の変更)であり得る。この再構成は手動及び/又は自動であり得る。
【0043】
一発展形態において、組立品は下大静脈内の配置に適したステントに接続されている。このステントは、ニチノール製のストランドによって組立品のフレームに接続されている。
【0044】
一発展形態において、組立品は、経皮的経路による(例えば、血管経路又は経心臓経路による)導入のために、カテーテル内でパッケージされた状態に折り畳まれている。
【0045】
三尖弁を置換する方法が開示される。上記方法は、組立品をカテーテル内に折り畳まれた状態で配置することと、上記組立品を経皮的経路によって導入及び留置することを含むステップを含む。
【0046】
有利には、(可変直径のフレームと標準サイズ、即ち段階的サイズの、フレーム内に配置されているステントとの間の)隙間空間又は間隙は可変寸法のものである。
【0047】
有利には、ステントは、例えば、ニチノール製の1つ以上のストランドによってフレームに(例えば、心房側で)固定されている。
【0048】
有利には、フレームの形状は、3つのゾーンを含む。このゾーンのうち1つは自己弁輪の領域に配置されており、フレームは三尖弁弁輪の自己心組織を支持し、その半径方向力によって組立品を適所に保持する。
【0049】
有利には、一部の実施形態によれば、バイオプロテーゼを収容している又は担持しているステントは、弁輪に対して非対称に配置される(主に心房内にあり、右心室内にあることはまれである)。
【0050】
有利には、特に、血液循環の流れを阻害しないように、右心室への進入は最小限にされている。
【0051】
有利には、本発明のいくつかの任意の実施形態は、特に血流を妨げない、並進状態に維持するためのシステム(下大静脈の合流部内にステントがある、自己組織に固定するための1つ以上の固定要素がある)を含む。
【0052】
有利には、本発明の種々の実施形態は封止スカートの配置を可能にする。この封止スカートの存在によって、特に、組立品と自己組織との間におけるプロテーゼ周囲の漏れを最小限にする又は防止することを可能にする。封止スカートは、PET(ポリエチレンテレフタレート)製又は血液不透過性の別の材料製とすることができ、弁輪の高さを覆い、心房側のフレームの基部を覆う。
【0053】
有利には、本発明の実施形態は、臨床診療の円滑化を可能にし、多くの実証された又は潜在的な波及効果(スケールメリット、操作の標準化、安全性の向上等)を伴う。現在市販されている弁バイオプロテーゼは、通常、「標準化」されている、即ち、種々の既存の弁の範囲は限定されており、弁の寸法は段階的である(一般に35mm、40mm及び45mm)。(バイオプロテーゼの)カスタマイズは可能であるが、コストが高く、非標準プロテーゼの製造ならではの特定のリスクがある。本発明の実施形態によって、弁自体の寸法を三尖弁弁輪の正確な寸法に合わせる必要をなくすことが可能になる。
【0054】
一方ではフレームの寸法、他方ではステント/バイオプロテーゼの寸法が、フレームとステント/バイオプロテーゼデバイスとの間に存在する隙間空間(間隙)の寸法を画定する。この空間は、構成及び/又は要件に応じて、いずれにしても、ほぼ数ミリメートルのものであり得る。例えば、ステントの直径は自己弁輪におけるフレームの直径よりおよそ20%小さいものであり得る(この構成では、封止スカートが、血流を送ること及びステントとフレームとの間の漏れを排除することにおいて中心的役割を果たす)。別の場合では、封止スカートがフレームとステントとの間の空間を覆っており、ステントの直径を自己弁輪におけるフレームの直径により近づけることができる。
【0055】
本発明の実施形態によるいくつかの調整変数、特に、フレームの直径及びバイオプロテーゼを担持しているステントの直径(直径は自己弁輪において測定される)が存在する。調整変数の1つは、フレーム自体の形状及び/又は寸法である。フレームは、実際には、自己弁輪においてフレームとステント/バイオプロテーゼとの間に存在する隙間空間の更なる調整を特に可能にする幾何学的形状(例えば、弁輪の領域における跳ね返り又はループ又は縁部又は取付点又はアンカー又は起伏)を含み得る。別の調整変数はステントの直径である。別の調整変数はバイオプロテーゼ自体の直径である。
【0056】
有利には、隙間空間を埋めるための封止スカートによる被覆自体を最適化することができる(例えば、張り、折り目又は折り返し、種々のサブセクションを含むスカート等)。ステント/バイオプロテーゼとフレームとの間の封止スカートは、フレームが応力を加えることなく三尖弁弁輪の形態を正確に適用できるようにするために、特に、特定の弾性(又は公差)を維持することができる。
【0057】
本発明の他の特徴及び利点は以下の説明及び添付図面の図から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1B】
図1Bは、フレームのサブセクションの相互接続材の一例を示す。
【
図2B】
図2Bは、従来技術による三尖弁バイオプロテーゼを示す。
【
図3A】
図3Aは、バイオプロテーゼを担持しているステントに対するフレームの相対的位置の図である。
【
図3B】
図3Bは、弁輪の領域の高さにおける水平断面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本発明による組立品の一例の平面図を示す。
【
図6A】
図6Aは、ステントとフレームとの間の周囲空間又は隙間空間を示す。
【
図6B】
図6Bは、封止スカートを含む本発明の別の実施形態を示す。
図6Bは、自己弁輪の高さにおける封止スカートの一例の断面図を示す。
【
図6C】
図6Cは、フレームと、バイオプロテーゼを担持しているステントと、封止スカートと、を含む組立品の一実施形態の水平断面図を示す。
【
図7B】
図7Bは、下大静脈内に配置され、ニチノール製の可撓性リンクによって組立品に接続されたステントを含み、放射線不透過性マーカーが右心房内のフレームに固定されている任意の実施形態を示す。
【
図8】
図8は、本発明による組立品を適所に配置する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
三尖弁は僧帽弁に比べて、特に、実際の構造(例えば、幾何学的形状)及び配置される環境の観点において特定の特徴を有する(特徴は以下で詳細に記載する)。
【0060】
幾何学的形状の観点において、僧帽弁と三尖弁はそれら自体非常に異なる。三尖弁房室口は、右心室と関連する右心房との間に連通を設ける。三尖弁房室口は、異なる寸法の3つの弁尖、即ち、前尖、中隔尖及び後尖で形成された房室弁を備える。僧帽弁はその一方で、2つの弁又は弁尖(前尖及び後尖)からなる。三尖弁は4つの心臓弁のうち最大のものであり、その表面積は5~8cm2と様々である(その一方で、僧帽弁の表面積は4~6cm2である)。三尖弁の弁輪は円形というよりも、より楕円形又は卵形の形状を有する。その線維構造は不完全であり、より頑丈な中隔領域に馬蹄の形状で位置している。三尖弁閉鎖不全症の場合、あまり頑丈でない前(及び一部、後)領域が膨張する。その直径は様々であり、およそ30~32mmである。三尖弁は、男性では約120mm、女性では約105mmの周囲長を有する。三尖弁は、3つの要素、即ち、弁のウェブ(valvular web)(3つの弁尖)、三尖弁弁輪、及び弁下部(sub-valvular apparatus)(乳頭筋及び腱索)で形成されている。対照的に、僧帽弁は拡張期には28mm/m2の直径を有する。僧帽弁は円錐形であり、弁輪がおよそ30mm、弁の頂点(弁尖)がおよそ26mmである。その周囲長は女性では90~100mm、男性では100~110mmである。
【0061】
更に幾何学的形状の観点から、僧帽弁と三尖弁の環境は非常に異なる。右心(右心房と右心室からなる)において、右心房は、2つの大静脈からのCO2を含む静脈血の合流地点である。下大静脈は約30ミリメートル(mm)の直径を有する。右心房は左心房より空間が広く、その容量(又は容積)は約160mlである一方、左心房は約140mlの容積を有する。右心房の長さは約4.5センチメートルであり、左心房の長さの長さは3.5センチメートルである。右心室と左心室の構造的態様は対照的である。右心室は5~6ミリメートルの厚みを有する一方、左心室は12~14ミリメートルの厚みを有する。右心室の平均圧は15mmHgである一方、左心室の平均圧は100mmHgである。血圧は、左心室の方が右心室より約5倍高い。
【0062】
拡張期時の右心房と右心室との間の圧力勾配は2mmHg未満である。三尖弁は、低圧で機能する循環系に位置している房室口に対応する。
【0063】
右心室の重量は約70gであり、左心室の重量は約150gである。したがって、右心室の壁は左心室の壁よりも大幅に脆い。バイオプロテーゼ弁システムが右心房と右心室との間に植え込まれる場合、右心室(右心室の充填室(filling chamber))の方の側に比較的小さなアンカー手段を設け、その代わりに、心房側における固定を右心房の方に集中させると有利である(僧帽弁の観点では、アンカーは、概して、左心室の方の側の僧帽弁輪下に配置される)。
【0064】
したがって、僧帽弁と三尖弁との間のこれら解剖学的及び生理学的相違には、(特に、乱流、血流の再循環領域、機械的応力及び力、材料の抵抗及び/又は置換組立品の安定性、外科的置換手順等の観点において)大幅に異なる機械的又は構造的構成を伴う。本実施形態は、弁及び弁の環境のこれら解剖学的相違を考慮し、利用するものである。本実施形態は、血流、抵抗、安定性、アクセス、配置、及び適所での保持の点において特に有利である。
【0065】
提供する図面は例示のためである。例えば、フレームの形状及び隙間空間の大きさは、本発明の理解をより簡単にするために、可読性の理由から誇張されている場合がある。特に、フレームの下部分のフック形状は誇張されている。結局のところ重要なのは形状の機能のみであり、フレームの異なる部分の所期の機能を詳述する部分を参照されたい。
【0066】
図1A(右心房にはADの符号が付されており、右心室にはVDの符号が付されている)は、本発明によるフレームの一例を示す。この例では、フレーム100は、金属合金(例えば、ニッケル-チタン合金又はニチノールなどの感熱若しくは形状記憶合金)から形成された複数の部品を含む。
【0067】
ニチノールは、温度変化によってその物理的状態を変化させる特殊な機能を有し、臨床分野において選択される材料となっている(ニチノールは、凍結又は冷却液に入れて包装されており、その後、37℃の血流中に放出後、その最終形状を維持する)。
【0068】
フレームは、異なる直径の3つの部分を有する略円筒形のものであり、フレーム自体を三尖弁の弁輪内に配置すること、及び三尖弁の弁輪内でその位置を維持することを可能にし、三尖弁を通る血流を阻害することはない。一実施形態では、フレームは、少なくとも4つの要素(101,102,103,104)を含む。フレームは、32mm~45mmの全高を有する(即ち、バイオプロテーゼの寸法に適合されている)。バイオプロテーゼ110はフレーム内に配置されている。
【0069】
フレーム101,102,103及び104の4つの主要部品は、接合部又は可撓性且つ変形可能なヒンジによって、最も狭い弁輪の領域で相互接続されている。一実施形態では、主要部品はニッケル-チタン形状記憶合金製である。主要部品のそれぞれは、概略的に大文字Sの形態である。可撓性且つ変形可能なヒンジは高さが5~7mmであり、弁輪の高さに対応する。
【0070】
図1Bは、一実施形態によるフレーム100のサブセクションの相互接続材の一例を示す。一実施形態では、(単一の)接合ワイヤ110がフレームの種々の主要部品を、例えば、溶接部により接続している。一実施形態では、フレームの主要部品は、複数の接合部又はヒンジによって接続されている(この後者の実施形態は、本発明による構造体をより可撓性にする)。これらヒンジの実施形態は、有利には、全体として考慮されるフレームの直径の適応を、この直径を可変及び/又は設定可能にすることによって可能にする。別の実施形態では、自己弁輪に接触する表面積を広くするために、及び三尖弁を置換する構造体の保持を向上するために、直接接触点の数を特に調整(例えば、増加)することができる。
図1Bに示す例は、12個の接触点を有する。この種の構成によって、有利には、フレームと三尖弁弁輪の自己組織との間におけるプロテーゼ周囲の漏れのリスクを低下することができる。
【0071】
図1Aは、本発明の一実施形態によるフレームが3つの部分又は領域を含むことを示す。血流の方向は矢印199によって示される。
【0072】
自己心臓弁輪131の領域内において、フレーム100は伸張可能及び/又は変形可能である。その半径方向力(例えば、プレストレスが施された又は4つの相互接続された部分の機械的遊びから生じる)によって、フレーム100は三尖弁弁輪の形態(完全には円形ではなく、楕円形であることが多い)に適応する。自己弁輪又はその最も狭い部分におけるフレームは、40~42ミリメートルである。この直径は、大きな拡張の場合、45mm又は更に50mm超に達する場合があり、右心房と右心室との間の通路又は開口の範囲を定める三尖弁弁輪の解剖学的領域に対応する。(本発明によるフレームの自己三尖弁弁輪の)環状領域は、高さ5~7mmである。
【0073】
右心室内の領域132において、フレームは右心室内で血流の方向に下流側に続いている。一実施形態では、フレームは右心室内で10~12mmの高さにわたって延び、右心室側が拡がっている(即ち、凸形状を有する)。右心室内の部分の最大直径1321は、弁輪の領域における直径よりわずかに大きい。右心室内のその遠位部分において、フレームの端部は、バイオプロテーゼの直径に実質的に等しい値を有する直径(例えば、35mm又は40mm)で終端する。この機械的構成(即ち、凸形状及び直径の選択)は、有利には、自己三尖弁を形成している3つの弁尖が開放状態に維持されることを可能にし、右心室の充填室内で血流の阻害をもたらすことはない(右心室流出路の阻害はない)。
【0074】
右心房内の領域133にあり、弁輪の領域から上流側に位置するのは、右心房に配置されたフレームの近位部である。一実施形態では、フレームは凸状に広がった形状を有する。一実施形態では、最大直径1332は弁輪の領域の直径より6~8mm大きい。例えば、弁輪が42mmの場合、直径の値は50mmであり得る。右心房内のこの領域133では、フレームはバイオプロテーゼの寸法に応じて可変距離にわたって延びる。例えば、この距離はおよそ15mmであり得る。右心房内のフレームのこの領域は、バイオプロテーゼを収容しているステントへの取付領域に対応する。
【0075】
図2Aは、従来技術によるステント200を示す。本発明の一実施形態では、使用されているステント200は自己拡張型ステントである。ステント200は円筒状であり、金属合金、例えば、フレーム100の合金と同一の合金(チタン-ニッケル)の複数セル201で形成されている。ステント200の直径は、弁輪の領域のフレームの直径よりもわずかに小さなものであり得る。ステント200の寸法は、一般に、段階的であり、標準寸法は30、35、及び40mmである。ステントの寸法はバイオプロテーゼ210の寸法に対応する(ステント200はバイオプロテーゼ210を担持する)。
【0076】
図2Bは、従来技術による三尖弁バイオプロテーゼ210を示す。三尖弁バイオプロテーゼは、動物組織(例えば、ウシ又はブタ心膜)及び/又は合成繊維で作製された3つの弁膜尖(211,212,213)で形成されている。バイオプロテーゼを形成している3つの弁膜尖又は「弁尖」は、ステント内で又はステント上で又はステントによって又はステントを介して連結されている(例えば、関連付けられている又は固定されている又は取り付けられている又は溶接されている又は縫い合わされている)。バイオプロテーゼは血流の生理学的方向において機能し、右心房に達し、収縮期に右心室の充填室に導入される。
【0077】
種々の技術を用いて、ステント及びバイオプロテーゼを異なる接触点220に連結することができる(例えば、溶接、接着、固定リンク又はばね、可撓性又は部分的に回転する接触点等)。一実施形態では、3つの接触点220を使用し、三尖弁のより確実な固定を可能にする。一実施形態では、複数の接触点(4つ以上)によってバイオプロテーゼをステント内に保持する。破損の確率は、一般に、接触点の数が増加するにつれて低下する。
【0078】
図3Aは、バイオプロテーゼ210を担持しているステント200に対するフレーム100の相対的位置の図である。一実施形態では、バイオプロテーゼを収容しているステントは、フレーム内に配置されている。ステントの近位端301(即ち、基部)は、フレームの右心房領域133に配置されている。バイオプロテーゼ210は、したがって、主に弁輪下部(infra-annular)位置にある。バイオプロテーゼ210を収容しているステント302の遠位端はわずか数ミリメートルではあるが右心室内の領域132内に配置されている。ステントは、したがって、フレームの最も狭い部分である弁輪の領域に対し非対称位置に配置される。
【0079】
図3Bは、弁輪の領域の高さにおける水平断面図を示す。この図は、フレーム100、ステント200、及びバイオプロテーゼ210の存在を示す。
【0080】
【0081】
フレーム100は、1つ以上のストランドによって、プロテーゼ210を含むステント200に接続されている。
【0082】
ストランドの数、位置、及び性質(例えば、材料)は実施形態に応じて様々である(組立品は可撓性がより高い又は低い、より安定性がある若しくは維持される又はより安定性がない若しくはより維持されない、循環をより妨げる又はあまり妨げない等)。
【0083】
特定の実施形態では、単一固定ストランドで十分な場合がある(任意選択的に強化されたこの単一ストランドを介した機械的力の伝達はモデル化され、最適化され得る)。有利には、血流の阻害は最小限である。
【0084】
2つ又は3つのストランドを備える構成は可能である。
【0085】
図に示される例では、4つのストランド411,412,413,414によってステントをフレームに保持している。
【0086】
一実施形態では、図に示す例の4つのストランドによって、ステント200を(右心房内のその領域132において)フレーム100の基部に(その最も広い領域、即ち、右心房内の領域132において)結合している。血流の循環の上流側で取り付けが行われるこの構成は、下流側におけるステントのねじれ安定性をもたらすという利点を有する。一実施形態(図示せず)によれば、弁の上流側及びステントの基部による取り付けに加えて又はその代わりに、フレームに対するステントの1つ以上の付加的な、任意の取り付けを、弁輪の領域において、又はステントの遠位部分を介して(ステントの遠位部分がわずかに右心室領域内に入ったとしても)行うことができる。
【0087】
一実施形態では、1つ以上のストランド(又は「タブ」)はニチノール製である。概して、感熱材料及び/又は形状記憶材料が使用され得る。
【0088】
一実施形態では、1つ以上のストランドは剛性である。いくつかの実施形態では、1つ以上のストランドは弾性又は可撓性又は変形可能である。他の実施形態は弾性ストランドと剛性ストランドとを組み合わせている(例えば、組立品の構造の動的挙動に応じて)。他の高性能の実施形態は、作動可能な又は設定可能なストランドの使用を伴う。
【0089】
図4Bは、本発明による組立品の一例の平面図を示す。この図は、特に、フレーム100内におけるバイオプロテーゼ210の配置を示す。
【0090】
図5Aは、本発明の別の実施形態を示す。組立品は、1つ以上の任意の固定要素(即ち、心臓内に保持するための)を有する。一実施形態では、固定要素は、「ラケット」又は「ループ」又は「タブ」(例えば、参照番号501)の形態を有する。一実施形態では、固定要素はニチノール合金製である。固定要素は、およそ8~10mmの高さ及び10~12mmの長さを有する。一実施形態では、これら任意の固定要素の1つ以上が弁輪領域131においてフレーム100に接合されており、心房側のみ開いている。本発明のいくつかの実施形態では、固定要素は使用されていない。本発明の一実施形態では、単一固定要素が使用されている。本発明の一実施形態では、2つの固定要素が対称に配置されている。安定性の向上のため、実際には第2の固定要素を配置することができる(例えば心房中隔壁に向かって例えば対称に)。しかしながら、この形態は場合によっては電気伝導障害(房室ブロックを含む)のリスクを高める可能性がある。一実施形態では、複数の固定要素を使用し、伝導障害のリスクを低下させる。
【0091】
このような取付要素の技術的効果(機能)は特に、心臓内においてフレーム100を安定させ、固定するというものである。特に、これら固定要素は、回転及び/又はねじり及び/又は並進時の本発明による組立品の安定性を向上させる。
【0092】
図5Bは、任意の固定要素の解剖学的位置を示す。保持ループが血流199の上流側に配置されている。
図5Bに示す実施形態では、組立品は、2つの固定要素501及び502を含む。これら要素は、フレームに対し対称位置に対向して配置されている。各要素は、フレームに実質的に垂直に配置されており、自己組織の壁を支持している。固定要素501の1つは心房中隔の側に配置されており、他方の固定要素502は右心房の外壁(櫛状筋と呼ばれる)の方に配置されている。実施形態によれば、固定要素をフレームに取り付けるために使用される技術は様々である。例えば、取付箇所は溶接され得る。動的観点から、システム全体を送出するカテーテルの除去時におけるフレームの解放中に複数の固定要素を自発的に又は自動的に外側に留置する。
【0093】
図6Aは、ステントとフレームとの間の周囲空間又は隙間空間を示す。自己弁輪の領域内の、ステント200とフレーム100との間に、実際、様々な大きさの自由周辺空間601がある。フレーム100の機能は、特に、自己弁輪に半径方向力を加えながらもシステム全体を維持及び剛化し、心臓内における安定した配置を確実にすることである。ステント及びバイオプロテーゼは円筒形状のものである(段階的及び標準的な大きさのものである)。ステントの直径とバイオプロテーゼの直径は実質的に等しく、フレームの直径よりも小さい。したがって、フレーム100とステント200との間には隙間空間(間隙)がある。
【0094】
図6Bは、封止スカートを含む本発明の別の実施形態を示す(断面図)。
【0095】
この封止スカートの位置及び性質については多くの代替的実施形態が可能である。
【0096】
封止スカートの機能は、本発明による組立品(即ち、フレームとバイオプロテーゼを担持しているステントとで形成されたシステム)を(特に房室弁輪の領域において)封止することである。特に、封止スカートはプロテーゼ周囲の漏れのリスクを最小限にする(以下、物品6104)。
【0097】
封止スカート610はフレームを全般的に支持し、ステント200を少なくとも部分的に覆っている。
【0098】
一実施形態では、封止スカート610の取り付けの開始点6101は、弁輪の領域を広く覆う高さにわたってステントの外壁に縫い付けられている(又は結合されている)。封止スカートのファブリックは、その後、折り畳まれ(例えば、外側に180°折り返され)、フレーム6102の内壁に沿って下る。最後に、その心房内基部によって、封止スカートのファブリックは、フレーム6103の外壁を上昇させることによりフレーム100を覆い囲み、フレーム100の大文字S字形の関節部及び/又は要素に縫い付けられた若しくは接着された弁輪の領域上方で終端することで、このフレームを、自己組織6104に押し付けられた最も狭い領域において補強する。この点6104は特に、プロテーゼ周囲の漏れの防止における決定的役割を果たす。別の実施形態については、封止スカートがフレームを完全に覆い囲む必要はない。
【0099】
一実施形態では、封止スカートは、合成材料(例えば、ポリエチレンテレフタレート即ちPET、水又は血液に不透過性の可撓性材料)で形成されている。一実施形態では、Dacronなどの密封材料を有利に使用してもよい。スカートは、例えば、層及び/又は切片で配置された複数の材料を含み得る(即ち、例えば、包装時における組立品の厚みを最小限にするために、心房側の、弁輪の領域から上流側に、補強された領域を備える及び/又は単一層及び/若しくはオープンワーク加工された空間(「開口」、「穴」、多孔質又は透過性のサブセクション等)を含む領域を備える)。
【0100】
スカートの構造(例えば、材料、サブセクションの配置構成、層、オープンワーク加工された空間の分布等)は、特に、最適化するように(即ち、包装時における組立品の厚みを最小限にするように及び/又はこのように構成されたスカートの血流に対する抵抗を確保するように及び/又は適所にある組立品の保持(例えば、回転及び/又は並進時の安定性)の強化に寄与するように)実施され得る。
【0101】
上流側から下流側、右心房から右心室において、本発明による組立品により血流がわずかに修正される。上流側、心房側において、フレームの凸状構造には血流の乱流をいくらか伴うが、この変化は許容可能である又は医学的若しくは機械的に重要なものではない。患者は、バイオプロテーゼ及びそのフレームの存在に起因する凝塊形成を防止するために凝固阻止剤による治療下にある。その結果、血液のレオロジーが変化する。
【0102】
図6BのゾーンI(「接触」領域又は空間)において、血流は「遮断」(若しくは停止若しくは阻止若しくは閉塞若しくは防止)される又は自己弁輪の領域において(即ち、周囲全体及び少なくとも部分的に心臓弁輪の対応する円筒部の高さにわたって少なくとも実質的に最小限になる。
【0103】
図6BのゾーンII(「隙間」領域又は空間)において、スカートが血流を捕捉し、血流を、その耐漏洩のため、バイオプロテーゼを通じて送る。折り目6110(
図6B)の形状は、バイオプロテーゼの方向における再循環に偶然的に影響する場合がある。いくつかの有利な実施形態には、血流の動的流れを最適化するためにスカートのこの折り目を多かれ少なかれ「きつくすること」又は「緩めること」を伴う。バイオプロテーゼの直径は、実際には、自己弁輪の直径よりごくわずかに小さいことから、弁自体の外周の周囲に血流のわずかな阻害がある。しかしながら、自己弁輪は、三尖弁の置換を妥当とする病状により拡張されているため、この特定の阻害は割合としては無視できるものになる。弁輪の領域において、フレームが自己組織に(接触した状態で)適用される。フレームと自己組織との間の漏れは実際には存在しない又はわずかである(即ち、フレームと自己組織との間に隙間空間の形成を可能としない三尖弁弁輪の石灰化がないことにより、及びまた、スカートのファブリックが弁輪の領域に折り目を形成し、この領域における耐漏洩性が向上することにより)。3倍の厚み(材料の(例えば、PETの))によってプロテーゼシステムを封止し、プロテーゼと自己組織との間においてプロテーゼを超える漏れ(para-prosthetic leaks)を有利に排除するが、組立品の厚みはその折り畳まれた構成において増す場合がある。別の実施形態は、折り畳み領域を移動させること又は組立品の種々の構成要素を、その幾何学的な折り畳みを最適化するように配置することによってこれら要件を満たすことを可能にする。
【0104】
本発明の一部の実施形態は、赤血球に及ぼす影響を最小限にするために、管状若しくは円筒状若しくは楕円形状を有するストランド及び/又はステントメッシュの使用を提供する。一実施形態では、ストランド及び/又はステントメッシュの断面は楕円形であり、レオロジーを向上するように並びに/又は局所的及び/若しくは大域的血流を最適化するように(「航空機のフラップ」のように)方向付けられている。最後に、心室側から下流側において、流れは一部ステントによって送られ、医学的な副作用を生じることはない(特に、これにより右心室に入る血流の阻害がもたらされることはない)。弁輪の下流側においてフレームは広くなっている(外側を向いた凸形状)が、上流側領域より直径は小さく、右心室に位置する肺動脈弁への約10mmの駆出路は妨げない。
【0105】
図7Aは、下大静脈内に配置されたステントに対する更なる固定を含む本発明の完全に任意の別の実施形態を示す。
【0106】
一部のまれな解剖学的状況において、(多くの場合拡張している)三尖弁弁輪は、安定した取付領域又は石灰化領域を有しないことがある。これら特定の場合においては、特定の、付加的な、任意の固定デバイスを適所に配置すると有利であり、これらを本発明による組立品と組み合わせることで、本発明による組立品の(例えば、並進時の)保持及び維持が向上する。
【0107】
この別の実施形態によれば、自己拡張型ステント701(例えば、ニチノール製)が下大静脈内に、フレームから距離を開けて配置される。ステント701は概ねおよそ30mmの可変直径のものであり、下大静脈の、その右心房への合流部の大きさに適合されている。下大静脈内に配置されるステントは、肝上(suprahepatic)静脈の循環を妨げないように、僧帽弁に設けられる付加的な固定手段に比べて短くなければならない。換言すると、三尖弁の場合の固定用手段の配置構成もまた、僧帽弁の配置構成と比べると特別である。ステント701は種々の手法で(例えば、ワイヤリンク702によって)フレーム100に接続される。ワイヤリンク702は、下大静脈の合流部と面一のステント701の上部においてステント701に接続される。ワイヤリンク702は、その下部が右心房内基部において主要フレームに接続される。このワイヤリンク702は蛍光透視検査において放射線不透過性マーカーにより可視化することができる。この可撓性且つ変形可能なワイヤリンクは、直線又は波状であり得る。その長さは適応させることができる(三尖弁弁輪と下大静脈との間の解剖学的距離に応じてプラス又はマイナス30mm)。
【0108】
図8は、本発明によるシステム又は組立品を配置する方法を示す。「折り畳まれた」又は「圧縮された」又は「パッケージされた」と呼ばれる第1の状態において、送出カテーテル800(又は「送出システム」)は、フレームと、ステントと、バイオプロテーゼと、(並びにまた、適宜、別の実施形態による固定要素と、封止スカートと)を含む。「緩和された」又は「解放された」又は「圧縮されていない」と呼ばれる第2の状態において、本発明による組立品は患者の心臓に留置される(術者側の操作によって)。
【0109】
本発明の一実施形態では、パッケージされた状態において、バイオプロテーゼはステント内で「折り畳まれて」おり、ステント自体フレーム内で(封止スカートとともに)「折り畳まれている」。
【0110】
以下、本発明による組立品の「解放」の異なる実施形態を記載する。器具及び解放デバイス又は「送出システム」は、a)その非外傷的遠位端が「巻き貝形」に湾曲し、右心室腔内に配置されるように適合された適切な長さ(ほぼ280mmの長さ)の0.35インチガイドと、b)右心房及び右心室までの(鼠径部中腔の)総大腿静脈の距離に適合された長さを有するカテーテルと、(同軸チューブで形成され、オーバザワイヤカテーテルと呼ばれるこのカテーテル又はシースは0.35インチガイドを中心にする。このカテーテルはその遠位部分に、進退可能なシースを有する。その18~24Frenchの直径が本発明による組立品には好適である。シースはその遠位端において、三尖弁を横断し右心室先端に配置されるようになっている0.35同軸ガイドを受け入れるように適合された非外傷的な円錐形先端部が先行する。)c)バイオプロテーゼを放出するための機構を含むハンドルと、を含む。このハンドルは同軸チューブに溶接されている。ハンドルは、組立品の留置を制御する。ハンドルは、組立品の留置及び解放を制御する刻み付きねじを有する。デバイスには、本発明による組立品を収容しているシースよりも先にチューブをその遠位端で曲げる及び案内するためのシステムも設けられている。
【0111】
以下、本発明による組立品を留置及び解放するための方法を記載する。シース(18~24Fr)は進退可能であり、本発明による(その可能な変形形態による)組立品を収容している。第1の工程において、イントロデューサシステムを受け入れるように適合された24Frデジレット(desilet)が経皮的に総大腿静脈の適所に配置される。第2の工程において、0.35ガイドが右心室の先端に配置される。第3の工程において、フレーム及びバイオプロテーゼを収容しているイントロデューサシステムをデジレットに挿通し、その後、0.35ガイド上において下大静脈を通過させて右心房まで押す。第4の工程において、右心房に達すると、機械的なハンドルによってシースはその端部で三尖弁口に向かって曲げられる。第5の工程において、組立品は、その後、三尖弁にわたって押される。第6の工程において、フレームは蛍光透視下(放射線不透過性マーカーがフレームの、弁輪の領域の高さに配置されている)並びに経食道心エコー及び/又は3D制御下で徐々に留置される。時計回り方向に回転するハンドルの刻み付きねじによって、バイオプロテーゼを収容するフレームを経食道心エコー及び蛍光透視下で徐々に解放する。第7の工程において、弁輪の領域の後、右心房内の一部において、留置を継続し、心房及び心房中隔の外壁に押し付けられる1つ以上の固定要素(「フック」、「ラケット」、「ループ」)を解放する。同時に、バイオプロテーゼが解放され、右心房内のフレームの一部が完全に解放されるとすぐに機能を開始する。下大静脈内の固定ステントの配置を含む一実施形態に対応する任意の工程において、シースは下大静脈の合流部口(anastomosis orifice)内に継続的に抜去され、ニチノール製のストランドによってフレームに固定されたステントを解放する。これは経食道心エコー及び蛍光透視下で、放射線不透過性造影剤を伴って行われる。最後に、血管造影及び経食道心エコーの工程によって、自己三尖弁内の適所にあるバイオプロテーゼの耐漏洩性、即ち、漏れがないことを確認する。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態では,組立品は、センサ(例えば、1つ以上のパッシブマーカーのアクティブセンサ)及び/又はアクチュエータを含んで備えることができる。
【0113】
本発明による組立品は、特に、患者の心臓内における組立品の正しい位置を定量化、測定、及び確認するための放射線不透過性マーカーを含み得る。
【0114】
加えて又はあるいは、本発明による組立品は、また、組立品の移動又は空間的再調節を可能にするデバイスを含み得る。組立品の位置は時間の経過とともに変化しても更には変動してもよい。
【0115】
換言すると、本発明による組立品は、いくつかの実施形態では静的であってもよい及び/又は他の実施形態では動的若しくは順応的であってもよい。本発明による組立品は、特に、1つ以上の微小電気機械システムを含み得る。微小電気機械システムは、センサ及び/又はアクチュエータ機能を実現するために電気をエネルギー源として使用する1つ以上の機械的要素を含む略マイクロメートル寸法の微小システムである。別の実施形態では、バイオメディカル微小電気機械システムが使用される。アクチュエータは、フレームの異なる部分内若しくは上に、及び/又はフレームの異なるサブセクションの取付領域に、及び/又はフレームをステントに取り付けるストランド内若しくは上に配置され得る。
【0116】
アクチュエータは、特に、例えば、フレームの形状(例えば、その凸面)を再構成するために、及び/又は封止スカートによって提供される被覆を調整するために(例えば、特定の場所におけるスカート表面の湾曲、折り返し、張り等)、及び/又はフレームに対するステントの固定を調整するために使用され得る。移動又は空間的再調整は、概して、短い距離にわたって実施される。移動又は空間的再調整は、可逆的又は不可逆的であり得る(例えば、機械的な移動止め)。移動又は空間的再調整は、構成され得る及び/又は構成可能であり得る。移動又は空間的再調整は、少なくとも一部、外部デバイスによって、即ち、開ループにおいて決定され得る(操作する医師によって制御され得る)。適切な場合、論理デバイス及び/又は物理デバイスによって空間的変更を固定することができる。構造に対して施された構造的変更は、また、例えば、血流中に挿入された組立品の静的位置及び動的挙動測定値に従い閉ループにおいて制御され得る。
【0117】
一実施形態では、本発明の組立品は、僧帽弁の置換を可能にするように変更される。用語「三尖弁」及び「僧帽弁」は、一般に、入れ替えることはできない。本発明の特定の一実施形態では、組立品は、病理学的僧帽弁の直径が病理学的三尖弁の直径よりも大幅に小さいことを考慮し、僧帽弁の置換を可能にするように修正される。静的変更形態の中でもとりわけ、三尖弁用の組立品と比較すると、僧帽弁バイオプロテーゼに加えて、フレームを構成するより少数のサブセクション(例えば、より容易に得ることができる機械的安定度)、及び可能であれば、パッケージされた状態においてより小さな値の封止スカートの厚みを使用することに優先が与えられる。