(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】食品配送セット及び食品配送システム
(51)【国際特許分類】
F25D 3/00 20060101AFI20241001BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
F25D3/00 D
F25D11/00 101G
(21)【出願番号】P 2022071710
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】523443711
【氏名又は名称】白老プラセンタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】三浦 誠一
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-012878(JP,U)
【文献】特開2009-047337(JP,A)
【文献】実開平01-058478(JP,U)
【文献】登録実用新案第3041860(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0315553(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 3/00
F25D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を過冷却状態で配送するための食品配送セットであって、
前記食品を収容する配送箱と、
前記配送箱の内部に設けられた蓄冷材と、
前記配送箱の内部に設けられ、前記蓄冷材の冷熱を前記食品に伝えるための伝熱パックと、を備え、
前記伝熱パックは、前記蓄冷材の冷熱によっては凝固しない凝固点に設定された伝熱用液体が袋内に充填されることにより構成され、前記食品
を挟んだ両側にそれぞれ配置されており、
それら両側の伝熱パックは、周縁側が前記食品からはみ出して互いに接触した状態とされ、それら両側の伝熱パックを含む複数の伝熱パックにより前記食品が囲まれた状態とされており、
前記蓄冷材は、前記両側の伝熱パックが並ぶ並び方向において前記両側の伝熱パックを挟んだ両側にそれぞれ配置されており、
前記食品と前記各伝熱パックと前記各蓄冷材とをまとめて包むシート材を備える、食品配送セット。
【請求項2】
前記伝熱用液体は、液体調味料、汁又は飲料である、請求項1に記載の食品配送セット。
【請求項3】
前記蓄冷材は、袋内に充填された液体調味料、汁又は飲料が凍結状態とされることにより形成されている、請求項1に記載の食品配送セット。
【請求項4】
請求項1に記載の食品配送セットを用いた食品配送システムであって、
前記食品の注文と配送先を受け付ける受付部と、前記受付部により受け付けた配送先に基づき、前記蓄冷材の量及び温度の少なくともいずれかを決定する決定部とを有する処理装置と、
前記受付部により注文を受け付けた前記食品を前記配送箱に前記蓄冷材と前記伝熱パックとともに収容し梱包することで前記食品配送セットを形成する梱包場所と、を備え、
前記決定部は、前記梱包場所から前記配送先までの配送推定期間に基づいて、前記蓄冷材の量及び温度の少なくともいずれかを決定する、食品配送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を過冷却状態で配送するための食品配送セット、及び、その食品配送セットを用いた食品配送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚や肉等の食品を配送する際に、食品を冷凍庫内で冷凍保存した状態で配送する冷凍配送が行われることがある。冷凍配送により食品を配送する場合、食品に含まれる水分が凍って膨張することがある。その場合、その膨張に伴い食品の細胞が破壊され、食品の品質が損なわれるおそれがある。そこで、近年、こうした問題を解消するため、食品を過冷却状態で保存し配送する技術が提案されている。例えば特許文献1には、食品を過冷却状態で保存可能な冷蔵庫が開示されている。この冷蔵庫は、過冷却貯蔵室を形成する箱状の枠部と、枠部の内部に設けられ食品を載置するための載置部とを備えている。
【0003】
食品が過冷却状態にある場合に、食品に振動が加わると、それをきっかけとして食品の凍結が開始されることがある。そのため、食品の過冷却状態を維持するためには、食品に加わる振動を抑制する必要がある。その点、特許文献1の冷蔵庫では、食品を載置する載置部が枠部に対してゴムやばね等の緩衝手段を介して設けられている。そのため、冷蔵庫に加わる外部からの振動が食品に伝わることが抑制されており、その結果、食品の過冷却状態を好適に維持できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の技術では、食品を過冷却状態に保つ上で、専用の冷蔵庫が必須となる。しかしながら、かかる冷蔵庫は高価なものになると考えられ、その導入は難しいと考えられる。
【0006】
本発明は、過冷却状態を保つための専用の冷蔵庫を用いることなく、食品を過冷却状態で配送することを可能とする食品配送セット及び食品配送システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の食品配送セットは、
食品を過冷却状態で配送するための食品配送セットであって、
前記食品を収容する配送箱と、
前記配送箱の内部に設けられた蓄冷材と、
前記配送箱の内部に設けられ、前記蓄冷材の冷熱を前記食品に伝えるための伝熱パックと、を備え、
前記伝熱パックは、前記蓄冷材の冷熱によっては凝固しない凝固点に設定された伝熱用液体が袋内に充填されることにより構成され、前記食品を囲むように複数又は1つ配置されており、
前記蓄冷材は、前記伝熱パックを挟んで前記食品とは反対側に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蓄冷材の冷熱が伝熱パックを介して食品に伝えられるため、その冷熱により、食品を過冷却状態で冷やすことが可能となる。また、伝熱パックは、蓄冷材の冷熱によっては凝固しない凝固点に設定された伝熱用液体が袋内に充填されることにより構成されているため、蓄冷材の冷熱により伝熱用液体が凝固するのを防止することができる。さらに、伝熱パックは、食品を囲むように配置されているため、伝熱用液体による緩衝作用により、配送時に生じる振動が食品に伝わるのを抑制することができる。そのため、食品の過冷却状態を好適に保つことが可能となる。よって、以上より、過冷却用の冷蔵庫を用いることなく、食品を過冷却状態で配送することが可能となる。
【0009】
なお、「食品」とは、料理されたものだけでなく、料理される前の食材をも含む意味である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、食品配送セット10の内部を示す断面図である。
図2は、食品配送セット10の内部を示す平面図である。
【0012】
食品配送セット10は、食品16を過冷却状態で配送するためのものである。
図1及び
図2に示すように、食品配送セット10は、配送箱11と、配送箱11の内部に設けられた食品パック12、蓄冷材13及び伝熱パック14とを備える。配送箱11は、直方体状の箱体であり、例えば発泡スチロールにより形成されている。なお、
図2では、配送箱11の蓋11aを取り外した状態で示している。
【0013】
食品パック12は、食品16がビニル製の袋17に詰められたものである。食品16は、例えば刺身や鮮魚、精肉等の生鮮食品である。食品16は、袋17内に扁平状に詰められている。また、食品16は、袋17内が十分に空気抜きされた状態で詰められている。そのため、食品パック12は全体として扁平形状とされている。
【0014】
蓄冷材13は、食品パック12内の食品16に冷熱を供給するものである。蓄冷材13は、ビニル製の袋18内に充填された蓄冷媒体19が凍結状態とされることにより形成されている。蓄冷材13は、矩形の扁平形状とされている。また、本実施形態では、蓄冷媒体19として液体調味料が用いられ、その液体調味料が凍結状態とされている。液体調味料は、例えばめんつゆである。蓄冷材13の温度は0℃以下に設定され、詳しくは-20℃~-60℃の範囲に設定されている。この場合、蓄冷材13の温度は、食品16を過冷却状態で冷やすことが可能な温度となっている。
【0015】
伝熱パック14は、蓄冷材13の冷熱を食品パック12内の食品16に伝えるものである。伝熱パック14は、袋21の内部に伝熱用液体22が充填されることにより構成されている。伝熱パック14は、矩形の扁平形状とされ、その平面視の大きさが蓄冷材13の平面視の大きさと略同じとされている。
【0016】
伝熱パック14の袋21は、可撓性及び柔軟性を有する材料により形成され、例えばビニル製である。また、伝熱用液体22としては、汁(スープ)が用いられている。汁は、例えばみそ汁である。伝熱用液体22(みそ汁)は塩分等を含んでいるため、凝固点降下が生じて、凝固点が水の凝固点(つまり0℃)よりも低い温度となっている。この場合、伝熱用液体22の凝固点は、蓄冷材13の冷熱によって凝固しない温度となっている。伝熱用液体22の凝固点は、望ましくは-10℃以下であり、より望ましくは-20℃以下であり、さらに望ましくは-30℃以下である。また、伝熱用液体22の凝固点は、蓄冷材13の温度よりも低い温度であるのが好ましい。
【0017】
続いて、配送箱11に収容されている食品パック12、蓄冷材13及び伝熱パック14の配置について説明する。
【0018】
食品パック12、蓄冷材13及び伝熱パック14はいずれも、厚み方向を上下方向に向けた状態で配送箱11に収容されている。配送箱11の底部には蓄冷材13が配置され、蓄冷材13の上には伝熱パック14が配置され、伝熱パック14の上には食品パック12が配置されている。さらに、食品パック12の上には伝熱パック14が配置され、その伝熱パック14の上には蓄冷材13が配置されている。したがって、配送箱11の内部では、食品パック12、蓄冷材13及び伝熱パック14が上下に積層配置されて、全体として5層となっている。
【0019】
食品パック12は、その平面視の大きさが配送箱11内部の平面視の大きさよりも小さくなっている。食品パック12は、平面視において配送箱11の中央に位置するように配置されている。したがって、食品パック12の周縁部の全域は配送箱11の内面から離間した状態とされている。なお、平面視における配送箱11の長手方向及び短手方向のそれぞれにおいて、食品パック12(食品16)の寸法は配送箱11の内寸法よりも5%以上小さくなっている(10%以上小さくなっていることが望ましい。)
食品パック12を挟んだ上下両側にはそれぞれ伝熱パック14が配置されている。下側の伝熱パック14(以下、場合によって「14A」とする)と上側の伝熱パック14(以下、場合によって「14B」とする)とはそれぞれ、横並びに複数(例えば2つ)ずつ隣接して配置されている。隣接する各伝熱パック14A,14Bは互いに接触した状態とされている。これらの伝熱パック14A,14Bはいずれも、食品パック12に密着した状態で配置され、詳しくは食品パック12の袋17を介して食品16に密着した状態で配置されている。
【0020】
各伝熱パック14A,14Bは、その周縁側が食品パック12からはみ出してはみ出し部24となっている。各伝熱パック14Aのはみ出し部24と、各伝熱パック14Bのはみ出し部24とは、食品パック12の周縁側において互いに接触した状態となっており、詳しくは食品パック12の周縁側全域において互いに接触した状態となっている。これにより、各伝熱パック14Aと各伝熱パック14Bとにより、食品パック12の全体が囲まれた状態となっており、ひいては食品16の全体が囲まれた状態となっている。
【0021】
各伝熱パック14A,14B(及び食品パック12)を挟んだ上下両側にはそれぞれ蓄冷材13が配置されている。下側の蓄冷材13(以下、場合によって「13A」とする)と上側の蓄冷材13(以下、場合によって「13B」とする)とはそれぞれ、横並びに複数(例えば2つ)ずつ隣接して配置されている。隣接する各蓄冷材13A,13Bは互いに接触した状態とされている。下側の蓄冷材13Aは、伝熱パック14Aに密着した状態で配置され、上側の蓄冷材13Bは、伝熱パック14Bに密着した状態で配置されている。また、各蓄冷材13Aは、各伝熱パック14Aの下面全域に亘るように配置され、各蓄冷材13Bは、各伝熱パック14Bの上面全域に亘るように配置されている。なお、本実施形態では、上下に隣接する蓄冷材13と伝熱パック14とが、1対1の関係で配置されている。
【0022】
上述の構成によれば、各蓄冷材13は、伝熱パック14を挟んで食品パック12(食品16)とは反対側に配置されている。この場合、蓄冷材13の冷熱が伝熱パック14を介して食品パック12内の食品16に伝えられる。これにより、蓄冷材13の冷熱により、食品16を過冷却状態で冷やすことが可能となる。また、この場合、例えば、食品16の温度が-3℃~0℃の範囲となるように、食品16が蓄冷材13によって冷やされ、それにより食品16が過冷却状態で保持される。
【0023】
配送箱11の内部には、食品パック12と各伝熱パック14A,14Bと各蓄冷材13A,13Bとをまとめて包むシート材25が設けられている。シート材25は、可撓性及び柔軟性を有する材料からなり、例えばポリエチレン製のクッションシート(エアキャップシート)からなる。そのため、シート材25は、クッション性及び断熱性を有している。また、シート材25により食品パック12と各伝熱パック14A,14Bと各蓄冷材13A,13Bとが包まれた状態が保持されるよう、シート材25はテープ等を用いて固定されるのが望ましい。なお、
図1では便宜上、シート材25を点線で示しており、また、
図2ではシート材25の図示を省略している。
【0024】
続いて、上述した食品配送セット10を用いた食品配送システムについて
図3に基づき説明する。
図3は、食品配送システムの構成を示す図である。
【0025】
食品配送システムは、食品配送セット10を用いて食品16を配送先に配送するためのシステムであり、食品16を配送する業者(例えば食品16の販売業者)によって管理されている。
図3に示すように、食品配送システムは、業者の事業所に設置された管理サーバ30と、食品16の梱包を行う梱包場所31に設置された端末装置32とを備える。管理サーバ30と端末装置32とは、例えばパーソナルコンピュータにより構成されている。また、管理サーバ30と端末装置32とは、ネットワーク34を介して通信可能に接続されている。さらに、管理サーバ30は、各顧客の顧客端末35ともネットワーク34を介して通信可能に接続されている。顧客端末35は、例えばパーソナルコンピュータやスマートフォン等の携帯型端末により構成されている。なお、管理サーバ30が処理装置に相当する。
【0026】
管理サーバ30は、顧客から食品16の注文と配送先を受け付ける受付部37を有している。受付部37は、顧客端末35によりアクセス可能な受け付け画面を有している。顧客は、その受け付け画面にアクセスして、受け付け画面上で食品16の注文や配送先の指示を行うことが可能となっている。これにより、受付部37により食品16の注文と配送先とが受け付けられる。
【0027】
管理サーバ30は、さらに、受付部37により食品16の注文を受け付けた場合に、受け付けた食品16の配送先に基づき、配送箱11に収容する蓄冷材13の量及び温度を決定する決定部38を有している。決定部38は、梱包場所31から配送先までの配送推定期間を算出し、その算出した配送推定期間に基づき、蓄冷材13の量及び温度を決定する。具体的には、決定部38は、梱包場所31から配送先までの距離が長い場合には配送推定期間として長い期間を推定し、そして、その配送推定期間に基づき蓄冷材13の量を多くしたり、蓄冷材13の温度を低くしたりする決定を行う。
【0028】
なお、決定部38が、蓄冷材13の量及び温度のうちいずれか一方だけ決定するようにしてもよい。
【0029】
受付部37により食品16の注文を受け付けた場合、管理サーバ30は、梱包場所31の端末装置32に、食品16の梱包指示に関する梱包指示情報を送信する。この梱包指示情報には、決定部38により決定された蓄冷材13の量及び温度の情報がそれぞれ含まれる。梱包指示情報が端末装置32により受信されると、端末装置32は、受信した梱包指示情報をディスプレイに表示する。これにより、梱包場所31の梱包作業者は、表示された梱包指示情報に基づき、食品16を配送箱11に伝熱パック14と蓄冷材13とともに収容し梱包する作業を行う。また、この梱包作業の際、梱包作業者は、ディスプレイ上に指示された量及び温度の蓄冷材13を配送箱11に収容する。これにより、食品配送セット10が形成され、食品16の配送準備が完了する。なお、蓄冷材13の量の調整は、蓄冷材13の個数を調整することにより行ってもよいし、袋18内に充填する蓄冷媒体19の量を調整することにより行ってもよい。
【0030】
その後、食品配送セット10が配送業者により配送先へと配送される。なお、食品配送セット10の配送は、通常の冷蔵配送便(輸送時の保冷温度が0~10℃)により行ってよいし、常温配送の配送便により行ってもよい。
【0031】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0032】
上述したように、蓄冷材13の冷熱が伝熱パック14を介して食品パック12内の食品16に伝えられるため、その冷熱により食品16を過冷却状態で冷やすことが可能となる。また、伝熱パック14の伝熱用液体22は、凝固点が蓄冷材13の冷熱によっては凝固しない温度に設定されているため、蓄冷材13の冷熱により伝熱用液体22が凝固するのを防止することができる。また、各伝熱パック14は、食品16を囲むように配置されているため、伝熱用液体22による緩衝作用により、配送時に生じる振動が食品16に伝わるのを抑制することができる。そのため、食品16の過冷却状態を好適に保つことが可能となる。よって、以上より、過冷却用の冷蔵庫を用いることなく、食品16を過冷却状態で配送することが可能となる。
【0033】
伝熱パック14の伝熱用液体22がみそ汁となっている。この場合、食品16とともにみそ汁を配送する際に、みそ汁を伝熱用液体22として用いることができ、都合がよい。
【0034】
蓄冷材13の蓄冷媒体19が液体調味料としてのめんつゆとなっている。この場合、食品16とともにめんつゆを配送する際に、めんつゆを用いて蓄冷材13を形成することができ、都合がよい。
【0035】
食品16を挟んだ上下両側にそれぞれ伝熱パック14A,14Bが配置され、それら両側の伝熱パック14A,14Bのはみ出し部24が食品16(食品パック12)の周縁側において互いに接触されている。この場合、比較的容易に伝熱パック14を食品16を囲んだ状態で配置することができる。また、両側の伝熱パック14A,14Bの並び方向(つまり上下方向)においてそれら両側の伝熱パック14A,14Bを挟んだ両側にそれぞれ蓄冷材13が配置されている。この場合、それら各蓄冷材13からそれぞれ冷熱が伝熱パック14を介して食品16に伝えられるため、食品16を過冷却状態に好適に保つことが可能となる。
【0036】
食品16と伝熱パック14と蓄冷材13とがシート材25によりまとめて包まれている。この場合、食品16と伝熱パック14とを密着させ易く、また伝熱パック14と蓄冷材13とを密着させ易くすることができる。そのため、蓄冷材13の冷熱を伝熱パック14を介して食品16に伝え易くすることができる。また、伝熱パック14は伝熱用液体22を有しているため、その形状が変化し易い。その点、シート材25を用いた上記の構成によれば、伝熱パック14により食品16を囲んだ状態を保持し易く、食品16への振動の伝達を確実に抑制することができる。よって、この場合、食品16の過冷却状態を好適に保つことが可能となる。
【0037】
食品16(食品パック12)と伝熱パック14と蓄冷材13とはいずれも扁平形状とされ、その厚み方向を上下方向に向けて積層配置されている。この場合、積層状態の安定性を確保することができるとともに、蓄冷材13の冷熱を伝熱パック14を介して食品16に均等に伝え易くすることができる。
【0038】
食品配送システムの管理サーバ30は、食品16の注文と配送先を受け付ける受付部37と、受付部37により受け付けた配送先に基づき、蓄冷材13の量及び温度を決定する決定部38とを有している。受付部37により食品16の注文が受け付けられると、梱包場所31において食品16が蓄冷材13と伝熱パック14とともに配送箱11に収容され梱包される。これにより、食品配送セット10が形成され、過冷却状態での配送準備が完了する。また、決定部38は、梱包場所31から配送先までの配送推定期間に基づいて、配送箱11に収容する蓄冷材13の量及び温度を決定する。これにより、配送先に応じた量及び温度の蓄冷材13を配送箱11に収容することができるため、配送先にかかわらず食品16を過冷却状態で好適に配送することができる。
【0039】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、蓄冷材13の蓄冷媒体19として液体調味量を用いたが、みそ汁や野菜スープ等の汁(スープ)、又はジュースや水等の飲料を蓄冷媒体19として用いてもよい。また、蓄冷媒体19としては、必ずしも飲食用の液体(液体調味量や汁、飲料)を用いる必要はなく、保冷液等、蓄冷専用の液体を用いてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、蓄冷材13を、袋18内に蓄冷媒体19を充填することにより形成したが、これを変更して、樹脂製又は金属製の容器に蓄冷媒体19を充填することにより形成してもよい。
【0042】
・下側の蓄冷材13Aと上側の蓄冷材13Bとは必ずしも2つずつ配置する必要はなく、3つ以上ずつ配置したり、1つずつ配置したりしてもよい。要するに、蓄冷材13A,13Bの個数は、配送推定期間等に応じて、食品16を過冷却状態に保持可能な個数に適宜設定すればよい。また、食品16を過冷却状態で保持できるのであれば、下側の蓄冷材13Aと上側の蓄冷材13Bとのうちいずれか一方だけ設けるようにしてもよい。
【0043】
・上記実施形態では、伝熱パック14の伝熱用液体22としてみそ汁を用いたが、野菜スープやコーンスープ等、みそ汁以外の汁を用いてもよい。また、伝熱用液体22として、めんつゆや醤油等の液体調味量、又はジュース等の飲料を用いてもよい。但し、これら液体調味料や飲料を伝熱用液体22として用いる場合にも、凝固点が蓄冷材13の冷熱によって凝固しない温度に設定されたものを用いる必要がある。また、伝熱用液体22としては、必ずしも液体調味量や汁、飲料といった飲食用の液体を用いる必要はなく、保冷液等、伝熱専用の液体を用いてもよい。
【0044】
・下側の伝熱パック14Aと上側の伝熱パック14Bとは必ずしも2つずつ配置する必要はなく、3つ以上ずつ配置したり、1つずつ配置したりしてもよい。また、下側の伝熱パック14Aと上側の伝熱パック14Bとは必ずしも同じ個数である必要はなく、異なる個数であってもよい。要するに、食品パック12(食品16)を囲むように複数の伝熱パック14を配置するようにすれば、伝熱パック14の個数は任意としてよい。
【0045】
また、伝熱パック14の数を1つにし、その1つの伝熱パック14を食品パック12を囲むように配置するようにしてもよい。この場合、例えば伝熱パック14を長尺状に形成し、その長尺状の伝熱パック14を食品パック12を挟むように折り畳んだ状態で配置することが考えられる。
【0046】
・上記実施形態では、配送箱11を発泡スチロールにより形成したが、段ボール等、他の材料により形成してもよい。
【0047】
・配送箱11に収容する食品パック12の数は必ずしも一つである必要はなく、複数であってもよい。この場合、複数の食品パック12を上下に積層して配置し、それら複数の食品パック12を囲むように伝熱パック14を配置するようにすればよい。
【0048】
・食品配送セット10を用いて配送する食品16は必ずしも生鮮食品である必要はなく、生鮮食品以外の食品であってもよい。また、食品16は、料理されたものでも、料理する前の食材であってもよい。また、食品16を配送箱11に収容する際には、必ずしも食品16を袋詰めした状態で(つまり食品パック12の状態で)収容する必要はなく、そのまま(むき出し)の状態で収容してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…食品配送セット、11…配送箱、12…食品パック、13…蓄冷材、14…伝熱パック、16…食品、22…伝熱用液体、30…処理装置としての管理サーバ、31…梱包場所、37…受付部、38…決定部。