(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】スパッツおよび雨着ズボンを含む雨着
(51)【国際特許分類】
A41D 13/06 20060101AFI20241001BHJP
A41D 3/06 20060101ALI20241001BHJP
A41D 13/05 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A41D13/06
A41D3/06 Z
A41D13/05 143
(21)【出願番号】P 2022074012
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518312356
【氏名又は名称】中村 ▲高▼一
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】中村 ▲高▼一
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02406090(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0016744(US,A1)
【文献】米国特許第04856207(US,A)
【文献】特開平11-335907(JP,A)
【文献】実開平05-037908(JP,U)
【文献】登録実用新案第3039872(JP,U)
【文献】特開2009-161878(JP,A)
【文献】中国実用新案第213819908(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0096008(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 1/06
A41D 13/06
A41D 3/04
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパッツと、雨着ズボンとを含んで構成されている雨着であって、
前記スパッツは、
略筒状に形成されその両端部に開口部を画成する本体部と、
前記両端部に画成される前記開口部の径の大きさを調節可能な調節具とを有し、
前記本体部には、前記両端部のうち一方の端部である上端部を分断する本体切込みが設けられ、該本体切込みは、前記上端部から前記本体部上を延伸し、前記本体部の他方の端部である下端部に至る前の位置を終端とし、
前記
スパッツの本体部はさらに、前記本体切込みを自在に開閉する留め具を有
し、
前記雨着ズボンの各股下部の表面には、該表面上を周回する第1のつば部および第2のつば部が取り付けられ、第1のつば部の根元部分は前記各股下部の膝上部分に結合され、第2のつば部の根元部分は前記各股下部の膝下部分に結合され、
前記雨着ズボンに取り付けられる第1または第2のつば部および前記スパッツの上端部には、前記雨着ズボンに対して前記スパッツを着脱自在に装着可能にする少なくとも一組の結合具が着設されることを特徴とする
雨着。
【請求項2】
請求項1に記載の
雨着において、
前記スパッツは、略帯状の履き口カバーを有し、
該履き口カバーは、幅方向の基端部が前記本体部の下端部に沿って結合され、
前記履き口カバーと前記本体部との結合領域には、少なくとも
前記スパッツの背部領域が含まれ、
前記履き口カバーの幅方向の先端部は、該履き口カバーの基端部と結合された前記本体部の下端部からさらに下方に延伸していて、
前記履き口カバーには、
前記スパッツの背部領域に相当する部分に、前記幅方向の先端から基端部の方向にかけてカバー切込みが設けられていることを特徴とする
雨着。
【請求項3】
請求
項2に記載の
雨着において、
前記
履き口カバーの裏面には、前記
カバー切込みを架け渡すように防水生地が取り付けられ、
該防水生地の前記裏面への取付けは、少なくとも前記
カバー切込みの自在な開閉を確保できる程度のゆとり寸法を加えて、前記防水生地の前記
カバー切込みを挟んで対向している両端部を前記裏面に結合することによってなされることを特徴とする
雨着。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッツおよび雨着ズボンを含む雨着に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体に着用するタイプの雨具、すなわち雨着の一種として、着用者の足首部分を含む脚部を覆い靴の中に雨雪が浸入することを防ぐスパッツが広く知られている。雨着としてのスパッツは、例えば登山時のように、傘の使用が不適な場合に着用されることが多く、レインコートと併用されることも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、登山や山歩きを行なう者は、雨着としてのスパッツやレインコートを常に着用しているとは限らず、天候の急変など雨着を着用する必要性を感じてから着用する場合も少なくはない。
【0004】
このような場合、雨着を迅速に着用することが求められるが、それは容易ではない。登山または山歩き中は靴を履いているのが通常であり、スパッツやレインコートの下衣を着用しようとする者は、一旦靴を脱ぐ必要があることも少なくない。また、靴を履いたままスパッツやレインコートの下衣を着用しようと試みる者もいるであろうが、その場合、靴を履いたままの足部をスパッツやレインコート下衣の裾口から円滑に貫出させることはやはり困難である。
【0005】
そのため、雨着としての機能を確保しつつも、容易に着用可能なスパッツやこれを含む雨着が求められていた。
本発明はこのような課題に鑑み、容易に着用可能なスパッツおよびこれを含む雨着を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上述の課題を解決するために、略筒状に形成されその両端部に開口部を画成する本体部と、両端部に画成される開口部の径の大きさを調整可能な調節具とを有し、本体部には両端部のうち一方の端部である上端部を分断する本体切込みが設けられ、本体切込みは上端部から本体部上を延伸して本体部の他方の端部である下端部に至る前の位置を終端とし、本体部はさらに本体切込みを自在に開閉する留め具を有するスパッツを提供する。
【0007】
また、本発明は上述の課題を解決するために、上記のスパッツと雨着ズボンとを含んで構成され、雨着ズボンの各股下部の表面には、表面上を周回する第1のつば部および第2のつば部が取り付けられ、第1のつば部の根元部分は各股下部の膝上部分に結合され、第2のつば部の根元部分は各股下部の膝下部分に結合され、雨着ズボンに取り付けられる第1または第2のつば部およびスパッツの上端部には、雨着ズボンに対してスパッツを着脱自在に装着可能にする少なくとも一組の結合具が着設されている雨着を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容易に着用可能でありながら、悪天候下での着用時であっても着用者の身体や衣服が濡れにくいという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るスパッツの一実施態様の正面図である。
【
図2】
図1で示すスパッツの前側方からの斜視図である。
【
図3】
図1で示すスパッツの本体に入っている切込みが開いた状態の正面図である。
【
図4】
図1で示すスパッツの実施態様の後方からの斜視図である。
【
図5】
図1で示すスパッツの実施態様の背面図である。
【
図6】
図5で示すスパッツの履き口カバーに入っている切込みが開いた状態の背面図である。
【
図7】
図1で示す(右脚用)スパッツの実施態様の上面図である。
【
図8】
図1で示すスパッツの実施態様の側面図である。
【
図9】本発明に係る雨着を構成しているスパッツの一実施態様の正面図である。
【
図10】本発明に係る雨着を構成している雨着ズボンの一実施態様の正面図である。
【
図11】本発明に係る雨着を構成しているスパッツの一実施態様の着用動作を示す図である。
【
図12】
図11で示す動作に続けて行なわれる、本発明に係る雨着を構成している雨着ズボンの一実施態様の着用動作を示す図である。
【
図13】
図12で示す動作に続けて行なわれる、本発明に係る雨着を構成しているスパッツの一実施態様の着用動作を示す図である。
【
図14】本発明に係る雨着の一実施形態において、雨着ズボンにスパッツを装着した状態の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に添付図面を参照して本発明によるスパッツの実施態様を詳細に説明する。なお、本発明の利点として、靴を履いたままでもスパッツの着用が容易である点が挙げられるため、本発明によるスパッツの一実施態様の構造を描写する
図1ないし
図8のうち、
図5ないし
図8については靴を履いている状態で着用者に着用されているスパッツの実施態様を図示している。
【0011】
図1を参照すると、本発明によるスパッツ10の実施態様は、左脚用スパッツ10Lと右脚用スパッツ10Rからなる一対のスパッツ10として構成されている。なお、
図1および
図2では一対のスパッツ10を構成する左脚用スパッツ10Lおよび右脚用スパッツ10Rをともに図示している。しかしながら、スパッツ10Lとスパッツ10Rとでは一部の構成要素の配置が左右対称であることを除けば本質的な構成は共通する。そのため、
図3以降においては、基本的に右脚用スパッツ10Rのみ明示し、特に必要性が高い場合を除いてスパッツ10Lについては図示を省略している。
【0012】
本実施態様では、スパッツ10は、その本体部分が防水性に優れた素材製の布状体から形成される。このように形成され防水性を備えたスパッツ10は、着用者の左右脚部、特に、寸法に応じて膝上または膝下近辺から足首部分までを覆うことにより着用者の脚部を雨雪から保護することができる。
【0013】
着用者の脚部を覆うことができるよう、使用者の脚部に着用するときのスパッツ10の本体部分の形状は略筒状体である。略筒状体の形状を採っているときのスパッツ10はその両端部に、着用者の脚部を通り抜けさせる開口部を画成する端部12a、12bを有する。ここで、スパッツ10の一方の端部12aは、着用時には着用者の膝部付近に位置することとなる膝側端部12aであり、他方の端部12bは、着用時には着用者の足首付近に位置することとなる足首側端部12bである。
【0014】
一般的に、雨着としての使用を特に想定しているスパッツは、着用時を除いては略矩形の布状体としての形状を採り、着用時には矩形布状体の対向する端部同士を線ファスナーなどの結合具により結合して、筒状体の形状にして使用するような構成を採っていることが多い。
【0015】
しかしながら、本実施態様に係るスパッツ10の場合、着用時以外でもその本体部は略筒状体の形状を採っている。特に、足首側の端部12bは常に結合状態にあり、分離することはない。これに対して、膝側の端部12aからは、膝側端部12aを分断した上で他方の端部12bの方向に向けてスパッツ10の本体部上を延伸している切込み(本体切込み)14が入っている。スパッツ10の本体部分に入っている本体切込み14は、その終端が足首側の端部12bに至る手前の位置にあり、したがって、足首側の端部12bは常に環状の開口部を画成することとなる。
【0016】
本体切込み14の両側にある切込み端部16a、16bには、切込み端部16同士を自在に連結または連結解除することによって本体切込み14を開閉自在にする留め具18が取り付けられる。切込み端部16に沿って取り付けられる留め具18が線ファスナーであると、特に好適である。もっとも、本体切込み14を開閉自在にすることができるものであれば、いかなるものでも留め具18として使用することができる。例えば、線ファスナーに代えて面ファスナーを留め具18として用いてもよい。
【0017】
このような構成にすれば、着用時にスパッツ10の膝側開口部を自在に広げることができる(
図2、
図3)ので、スパッツ10を着用しようとする者の脚部をスパッツ10の中に通すことが容易になる。さらに、スパッツ10の足首側端部12bは常に環状に結合した状態であるため、本体切込み14を閉じてスパッツ10を脚部に装着することも片手での留め具18の操作によって迅速かつ容易に行なうことができる。
【0018】
スパッツ10に設ける本体切込み14は、膝側の端部12aから垂直下方に足首側端部12bへ向けて延伸していてもよいが、より好ましくは、足首側端部12bへ向けて斜め下方に延伸していることが好ましい。より具体的に述べると、左脚用スパッツ10Lに対しては左手で、右脚用スパッツ10Rに対しては右手で留め具18、例えば線ファスナーの操作がしやすいよう、膝側端部12aに設けられた本体切込み14の基端部と、この基端部から延伸した本体切込み14の先端部の相対的な位置関係において、基端部を各スパッツ10L、10Rの外脚側に、先端部をより内脚側に配置することが好ましい(特に
図1を参照)。
【0019】
本体切込み14をこのように配置することによって、切込み端部16a、16bに沿って取り付けられた留め具18、特に線ファスナー18を片手で操作しやすくなり、スパッツ10の脚部への装着および脚部からの脱着がより容易になる。
【0020】
スパッツ10は、スパッツ10が筒状体の形状を採っているときの両端部12a、12bに画成される開口部の径の大きさをそれぞれ調節する調節具20a、20bを有する。調節具20a、20bは、例えば、紐状体(コード)22に紐止め具24を取り付けることによって構成したものである。紐状体22は、ある程度の伸縮性を有する材料でできていることが好ましく、特に好適な紐状体22の例は、ゴム製の紐である。紐止め具24は、例えば、ばね力による押圧式の摩擦固定装置いわゆるコードストッパであり、紐状体22を通す貫通孔および利用者の押圧動作により貫通孔の開閉状態を変化させる押圧部品を含むものである。
スパッツ10の各端部12a、12bにはそれぞれ、調節具20a、20bの紐状体22の通し口26a、26bが設けられる。通し口26は、端部12の全長または実質的に全長にわたって設けられる。通し口26には紐状体22の通り穴28が設けられる。
【0021】
上述のとおり、スパッツ10の足首側端部12bは常に環状に結合した状態であるため、足首側端部12bに設けられる通し口26bは、その内部を紐状体22が延伸している環状の通路となっている。紐状体22は通し口26bに沿って延在し、紐状体22の両端部は通り穴28から通し口26の外に突き出ている。すなわち、通り穴28は紐状体22にとっては通し口26への出入口となる。
【0022】
なお、通し口26bに設ける通り穴28の数は1つの調節具20bに対して1つまたは2つである。添付図面(特に
図2)に示すように、紐状体22の両端部は、同一の通り穴28を通し口26bへの出入口にしてもよい。あるいは、紐状体22の一方の端部に対する通し口26bへの出入口となる通り穴28と、他方の端部に対する通し口26bへの出入口となる通り穴28をそれぞれ別に設けてもよい。
【0023】
通り穴28から突き出ている紐状体22の両端部は、紐止め具であるコードストッパ24bの貫通孔を通り抜けるように取り付けられる。コードストッパ24の貫通孔を通り抜けた紐状体22の端部同士は結び合わされる。このようにして、紐状体22およびコードストッパ24は、足首側端部12bを外周として形成される開口部の径の大きさを調節する調節具20bの構成要素として働くこととなる。
【0024】
他方、本実施形態によれば、スパッツ10の膝側端部12aは本体切込み14によって環状にならずに分断されているため、通し口26aは、その内部を切込み端部16a側から切込み端部16b側にかけて紐状体22が延伸している帯状の通路となっている。添付図面に示す実施形態では、本体切込み14を閉じているときに膝側端部12aを外周として形成される開口部の径の大きさを調節する調節具20aを、上述した調節具20bの構成と同様に形成してもよいが、以下に述べるように構成してもよい。
調節具20aの好適な構成例では、紐状体22の一方の端部は、通し口26a内の通路先端すなわち切込み端部16a近傍に固定される。他方、通し口26aの切込み端部16b近傍には、紐状体22用の通り穴28が設けられる。
【0025】
一方の端部が通し口26aの通路内先端部に固定された紐状体22の他端部は、通し口26bに沿って延在し、通り穴28を介して通し口26aの外に出る。通り穴28から突き出ている紐状体22の他端部は、紐止め具であるコードストッパ24aの貫通孔を通り抜けるように取り付けられる。このようにして、紐状体22およびコードストッパ24は、本体切込み14を閉じているときに膝側端部12aを外周として形成される開口部の径の大きさを調節する調節具20aの構成要素として働くこととなる。
【0026】
なお、ここまでで述べたように、調節具20a、20bを構成する紐状体22は、その大部分が通り口26a、26bの内部に延在しているため、通り穴28から突き出ている端部を除いては外部から視認することはできない。そのため、
図4に関しては便宜上、通し口26内に延在している紐状体22を破線で表している。
【0027】
膝側端部12aおよび足首側端部12bに設けられる通し口26a、26bは、スパッツ10を形成する布状体の、両端部12a、12bに相当する部分を折り返して、折り返した布状体の縁部を布状体の本体に対して縫合する等して結合させて形成してもよい。あるいは、スパッツ10を形成する布状体とは別に、帯形状の布状体を用意して、この帯形状の布状体をスパッツ10の端部12a、12bに沿って結合させることによって通し口26a、26bを形成してもよい。
紐状体22の通り穴28a、28bは、スパッツ10の表面側に設けてもよく、裏面側に設けてもよい。
【0028】
紐状体22の通し口26a、26bは、各図で示すようにそれぞれ膝側端部12aおよび足首側端部12bに沿って配置することが好適である。しかしながら、スパッツ10の膝側または足首側の開口端部の径の円滑な拡張または収縮が確保される限りにおいて、通し口26または通り穴28の配設位置は任意に定めることができる。例えば、通り口26bを、足首側端部12bを周回した後には膝側端部12aまで上方に延伸するようにして、さらには紐状体22b用の通り穴28bを膝側端部12aの近傍に設けるよう構成しても構わない。
【0029】
スパッツ10の内側の面(裏面)には、切込み端部16a、16bの間に挟まれている本体切込み14を架け渡すように防水生地32が結合されている。防水生地32は、防水性に優れた材料製の布状体で形成されている。
【0030】
スパッツ10の裏面への防水生地32の結合は、本体切込み14が開いた状態のときでも防水生地32が伸びきってしまって膝側端部12aから着用者の脚部を通す開口部の拡張が抑えられないようになされる。より具体的に述べると、スパッツ10の本体切込み14が閉じていて筒状体の形状を採っているときに、防水生地32が蛇腹状に折り畳まれた状態など生地に余裕をもたせた状態になるように、少なくとも本体切込み14の自在な開閉を確保できる程度のゆとり寸法を加えて、防水生地32の端部のうち本体切込み14を挟んで対向している方の両端部をスパッツ10の裏面に結合させる。そのため、防水生地32は、スパッツ10の膝側端部12aに沿った方向、特に切込み端部16a、16b付近ではスパッツ10に結合されない。防水生地32をスパッツ10の裏面上に固定させる部分は、本体切込み14の円滑な開閉を確保できるように必要最小限の範囲にとどめておくことが好ましいということになる。
【0031】
スパッツ10の裏面に防水生地32を設けることにより、雨天下の野外でスパッツ10を着用する際でも着用者の脚部が濡れる心配はなくなる。しかも、着用のために本体切込み14を開いたときでも過度の力を要さず膝側端部12aの開口部を拡げることができる。
【0032】
スパッツ10はさらに、靴を履いている着用者の足首背部や、足首背部と靴の履き口の間にできる隙間を覆う履き口カバー34を有する。履き口カバー34は略帯状をした布状体であり、その長手方向の一方端部がスパッツ10の足首側端部12bに沿って結合される。この結合部分が、履き口カバー34にとっては幅方向の基端部となる。履き口カバー34は、スパッツ10を着用したときに、着用者の外踝付近から足首背部を経て内踝付近までを覆うことができるように足首側端部12bに沿って結合されていることが好ましい。すなわち、好適な実施形態においては、履き口カバー34と足首側端部12bの結合領域には、少なくともスパッツ10の背部領域が含まれることとなる。
【0033】
履き口カバー34の短手方向の下方に延びている長さすなわち幅は、一方の長手方向端部から中央部分にかけて徐々に広がり、最も幅広の中央部分から他方の長手方向端部にかけて徐々に狭まってゆくことが好ましい。いわば、履き口カバー34の幅方向先端部は、履き口カバー34の基端部と結合された足首側端部12bさらに下方に延伸しているのだが、下向きの弧状に形成すると好適であるといえる。
【0034】
履き口カバー34には、幅方向の先端部から、足首側端部12bに結合されている基端部の方向に向けて切込み(カバー切込み)36が入っている。スパッツ10の着用者の足首背部付近上にカバー切込み36が位置するように、本実施形態ではスパッツ10の背部領域に相当する履き口カバー34の部分、すなわち、最も幅広となる履き口カバー34の長手方向における略中央部に配置される。
【0035】
スパッツ10の履き口カバー34にカバー切込み36を設けることによって、スパッツ10を着用する際に着用者のかかと部分が履き口カバー34に引っかかることなくスムーズに着用することができる。特に、着用者が靴を履いたままスパッツ10を着用する場合であっても、靴の履き口部分が履き口カバー34に引っかかることがなくなる。
【0036】
カバー切込み36の両側にある切込み端部38a、38bには、
図4などに示すように、切込み端部38同士を自在に連結または連結解除することによってカバー切込み36を開閉自在にする留め具40が取り付けられる。切込み端部38a、38bに沿って取り付けられる留め具40が面ファスナーであると、特に好適である。もっとも、カバー切込み36を開閉自在にすることができるものであれば、いかなるものでも留め具40として使用することができる。例えば、面ファスナーに代えて線ファスナーを留め具40として用いてもよい。
【0037】
履き口カバー34の内側の面(裏面)には、切込み端部38a、38bに挟まれたカバー切込み36の間を架け渡すように防水生地42が結合されている。防水生地42は、防水性に優れた材料製の布状体で形成されている。
履き口カバー34の裏面への防水生地42の結合は、カバー切込み36が開いた状態のときに防水生地42が伸びきってしまってスパッツ10のスムーズな着用が妨げられないようになされる。好ましくは、防水生地42が蛇腹状に折り畳まれた状態など生地に余裕をもたせた状態になるように、少なくともカバー切込み36の自在な開閉を確保できる程度のゆとり寸法を加えて、防水生地42の端部のうちカバー切込み36を挟んで対向している両端部を履き口カバー34の裏面に結合させる。そのため、防水生地42を履き口カバー34の裏面上に固定させる部分は、カバー切込み36の円滑な開閉を確保できるように必要最小限の範囲にとどめておくことが好ましい。
【0038】
履き口カバー34の裏面に防水生地42を設けることにより、雨天下の野外でスパッツ10を着用する際など履き口カバー34のカバー切込み36が開いている場合であっても、着用者の足首部と靴の履き口との間にできる隙間に雨水が浸入することを防ぐことができるようになる。
【0039】
履き口カバー34には、幅方向の先端部すなわち下端部に、履き口カバー34の表面から外方に突き出ているつば部44が設けられている。本実施形態では、履き口カバー34の先端部はカバー切込み36によって分断されているといえるが、つば部44は、履き口カバー34の分断された各先端部のほぼ全長に渡って延伸している形状で設けられている。一部の図面では便宜上、スパッツ10の一方の側方から切込み端部38aの近傍にまで延伸しているつば部をつば部44a、他方の側方から切込み端部38bの近傍にまで延伸しているつば部をつば部44bとして示している。
【0040】
さらに、つば部44には、
図5に示すように、履き口カバー34とつば部44の間に溜まった雨水などの液体を履き口カバー34の外部へ排出する排出口46が設けられている。排出口46は、スパッツ10の一方の側方から切込み端部38aの近傍にまで延伸しているつば部44a、および、他方の側方から切込み端部38bの近傍にまで延伸しているつば部44bの長手端の延伸を、切込み端部38の少し手前までにとどめることによって形成することができる。これにより、カバー切込み36を閉じたときに、つば部44aおよび44bからなるつば部44の長手方向中心部には隙間が生じることとなる。この隙間が排出口46としての役割を果たし、つば部44a、44bの面上を伝って垂れ流れる雨水は、つば部44aおよび44bの間に形成された隙間から流れ出て、履き口カバー34の外部に排出されることとなる。
【0041】
このように、履き口カバー34の表面上につば部44を配設することによって、履き口カバー34を伝って垂れ流れる雨水によりスパッツ10の着用者の足部、特に靴の濡れや汚れを軽減することが可能となる。
スパッツ10はさらに、スパッツ10の着用時にスパッツ10を着用者の足部に固定する用に供する固定紐48を有することが好ましい。固定紐48は、好ましくは平面状の紐状体である。
【0042】
固定紐48は、その長手端の一方がスパッツ10の足首側端部12bに固着される。固定紐48の固着位置52は、スパッツ10の側部であることが好ましい。本実施形態では、
図8で示すように、固着位置52は履き口カバー34に覆われている。固定紐48の長手端のもう一方には、留め具54が設けられている。留め具54は、例えば面ファスナーであり、一対の面ファスナーのそれぞれを、固定紐48の同一平面上に所定の間隔を開けて設けてもよい。留め具54が一対の面ファスナーである場合、スパッツ10の着用者は、履いている靴の結んだ状態にある靴紐に固定紐48を通し、面ファスナーの各部の間に靴紐を挟むようにして固定紐48を折り返して、面ファスナーの各部同士を結合させる。
【0043】
このように、スパッツ10に留め具54付きの固定紐48を設けることにより、スパッツ10を靴に対して固定することが可能となる。このため、着用者の歩行動作に伴ってスパッツ10が上部すなわち膝側にずれてゆくことを防ぐことができる。
本実施形態に係るスパッツ10は、ここまでで述べたような構成、特に、開閉自在なスパッツ10の切込み16および履き口カバー34のカバー切込み36、ならびに、スパッツ10を着用しようとする者の脚部を通り抜けさせる開口部の径を自在に調節する調節具20a、20bを有することにより、この者が靴を履いたままの状態であってもスパッツ10を容易に着用することが可能となる。
【0044】
本実施形態に係るスパッツ10はさらに、ここまでで述べたような構成、特に、スパッツ10の本体部分の裏面に防水生地32、42を設けることによって、スパッツ10を着用しようとする者が着用動作の途中で切込み16、36が開いている状態であっても、スパッツ10の内部に雨水などが浸入して着用者の身体や衣服が濡れてしまうことを防止することができる。
【0045】
続いて、添付図面を参照して本発明に係る雨着の一実施態様を詳細に説明する。本発明に係る雨着100の実施態様は少なくとも、一対のスパッツと、一対のスパッツを自在に装着および脱着可能な雨着ズボンを含んで構成されている。
雨着100を構成するスパッツの基本的な構成は、
図1ないし
図8で示した実施態様のスパッツ10と同様でよい。ただし、
図9に示すように、雨着100の一部をなす場合のスパッツ10には、膝側端部12aまたはその付近に雨着ズボンとの着脱自在な装着を可能にする結合具112が着設されている。結合具112は、面ファスナーの構成要素であると特に好ましいが、着脱自在な装着が可能である限り面ファスナーには限定されない。
【0046】
他方、雨着100を構成する雨着ズボン120は、防水性や撥水性に優れた材料で形成されている。雨着ズボン120は、
図10で示すように、各股下部122R、122Lの外周表面の全体を周回するように、つば部124(右脚側:つば部124R、左脚側:つば部124L)およびつば部126(右脚側:つば部126R、左脚側:つば部126L)の根元部分すなわち基端部が取り付けられている。すなわち、雨着ズボン120の着用者の左右の膝を覆う位置のやや上部に相当すると見込まれる各股下部122R、122Lの表面上には、つば部124R、124Lの根元部分が結合され、雨着ズボン120の着用者の左右の膝を覆う位置のやや下部に相当すると見込まれる各股下部122R、122Lの表面上には、つば部126R、126Lの根元部分が結合される。
【0047】
雨着ズボン120の股下部122R、122L毎に設けられるつば部の数は、少なくとも1つあれば十分であるが、
図10でも示す本実施形態のように、股下部毎の膝上部分および膝下部分にそれぞれ1つずつ、すなわち各股下部に合計で2つずつ設けておくと特に好適である。もっとも、股下部毎に3つ以上のつば部を設けたとしても構わない。
【0048】
雨着ズボン120のつば部124、126の裏面には、スパッツ10との結合によりスパッツ10を着脱自在に装着する結合具128、130が着設されている。より具体的に述べると、左右のつば部124L、124Rの裏面にはそれぞれ結合具128L、128Rが、左右のつば部126L、126Rの裏面にはそれぞれ結合具130L、130Rが着設されている。雨着ズボン120に設けられた結合具128、130は、スパッツ10に設けられた結合具112とともに、スパッツ10を雨着ズボン120に結合する用に供する一組の結合器具として構成されている。結合具128、130は、結合具112とともに面ファスナーの構成要素であると特に好ましいが、着脱自在な装着が可能である限り面ファスナーには限定されない。
【0049】
結合具128、130を各つば部の裏面に着設すると、つば部の裏面に結合具を着設するとスパッツ10を取り付けたつば部124、126が捲れ上がりにくくなり、雨着ズボン120はより好ましい構成を有することになる。
結合具112、128、130は、スパッツ上端部表面またはつば部裏面の全周にわたって、または全周の一部分に設けられる。あるいは、結合具112、128、130をそれぞれ複数の部分要素で構成して、複数の部分要素を適宜の間隔を空けてスパッツ10の膝側端部12aの近傍面上およびつば部124、126の裏面に配設してもよい。
【0050】
なお、
図10では、雨着ズボン120のつば部124、126の裏面に結合具128、130が着設されている構成をより明確に描写するために、股下部122R側に設けられているつば部124R、126Rについてはつば部の先端が下方すなわち裾口132の方向に向いている一方で、股下部12LR側に設けられているつば部124L、126Lについてはつば部の先端が上方すなわち腰口134の方向を向くよう捲り上げた状態を示している。本実施態様のようにつば部124、126の裏面に結合具128、130を設けた場合、つば部の先端が裾口132の方向に向いている状態のときには結合具128、130は外界から視認することができないため、つば部124R、126Rの裏面に着設されている結合具128R、130Rについては破線で図示している。
【0051】
続いて、本実施形態に係る雨着100の着用動作の例を、
図11ないし
図13を参照しながら説明する。雨着100を着用しようとする者は、予め調節具20bを操作しておくことによって、スパッツ10の足首側端部12bに形成されている開口部の径の大きさを窄めておく。また、スパッツ10の本体に設けられた本体切込み14は、スパッツ10の着用に先立って開いた状態にしておくことが好ましい。
【0052】
雨着100を着用しようとする者は、まずはスパッツ10の着用動作を執り行なう。具体的には、雨着100のスパッツ10を着用しようとする者は、
図11で示すように、足首側端部12bを窄めた状態のスパッツ10に、自らの足部140を膝側端部12aに形成されている開口部から挿入する。このとき、スパッツ10の着用動作者は、靴を履いたまま足部をスパッツ10の内部に挿入しても構わない。
スパッツ10の足首側端部12bにある開口部は窄められているので、着用動作者の足部140は足首側開口部から突き出ずスパッツ10の内部に留め置かれ、スパッツ10を被せた状態になる。
【0053】
ところで、上述のように本体切込み14を開いた状態でスパッツ10の着用動作を執り行なうと、膝側端部12aに形成されている開口部からスパッツ10内への足部140の挿入が容易に成し遂げられる。
【0054】
続けて、
図12で示すように、足部140にスパッツ10を被せた状態にある者は、雨着ズボン120を着用する。スパッツ10を被せた足部140は、腰口134から雨着ズボン120の内部に入り込み、股下部内を経て、裾口132から雨着ズボン120の外部に出ることとなる。
このようにして雨着ズボン120を着用した者は、スパッツ10を被せた足部140を雨着ズボン120の裾口132から外部に出した後には、
図13で示すように、足部140をさらにスパッツ10の外部に出すための動作を執り行なう。
【0055】
雨着ズボン120を着用した者は、調節具20bを操作して、窄めていた足首側端部12bの開口部の径を拡げる。そして、拡げた開口部から足部140を通り抜けさせる。このとき、履き口カバー34のカバー切込み36を開いておくと、たとえ靴を履いていたとしても足部140のかかと側が履き口カバー34に引っかかることもなく、スムーズに開口部を通り抜けさせることができる。
【0056】
続いて、この者は、雨着ズボン120を履いた状態にある脚部の外側を覆うようにスパッツ10を装着する動作を執り行なう。このとき、切込み16を適宜に開閉したり、調節具20aを操作して開口部径を適宜に調整したりすると、雨着ズボン120を覆うようにスパッツ10を装着しやすくなる。
【0057】
図14では、本実施形態に係る雨着100において、雨着ズボン120へのスパッツ10の装着が完了した状態の一例を示している。雨着ズボン120およびスパッツ10の着用者は、
図11ないし
図13を参照しながら説明した動作を経て、つば部126の裏側に着設された結合具130にスパッツ10に着設された結合具112を結合させる動作に入る。この結合動作を具体的に述べると、着用者は、つば部126を一旦捲り上げて、つば部126の裏側に着設された結合具130の位置に対するスパッツ10に着設された結合具112(
図9参照)の位置の調整を行なったうえで、結合具130と結合具112を結合させる。その後、着用者は、スパッツ10を取り付けたつば部126の先端部を下側すなわち裾口132側に向け、これによりスパッツ10の雨着ズボン120への装着が完了する。
【0058】
図14では、スパッツ10を雨着ズボン120のつば部126に装着することによって外界からは視覚的に遮蔽される雨着ズボン120およびスパッツ10の部分は破線で示している。例えば、股下部122L、122Rのうちつば部126よりも裾口132側は、スパッツ10の内側に入り込むこととなる。
【0059】
なお、雨着ズボン120の各股下部に複数のつば部、本実施形態ではつば部124、126が設けられている場合には、雨着10の着用者は任意のつば部124または126にスパッツ10を結合装着させることができる。
図14では、相対的に裾口132には
配設されたつば部126にスパッツ10を装着した例を示しているが、もちろんつば部124にスパッツ10を取り付けても構わない。
【0060】
また、雨着100の構成要素としてのスパッツ10は、1対のみならず各対で寸法が異なるスパッツ10を複数対用意しておき、着用者が任意のスパッツ10を選択できるようにしても構わない。この場合に雨着100の着用者は、例えばスパッツ10の寸法に応じて、つば部124または126のうちより適切と考える方にスパッツ10を装着することができる。
【0061】
本発明において、添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であり、または上述の実施例と本質的な構成が同等に構成され得ることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0062】
10 スパッツ
12a 膝側端部
12b 足首側端部
14 本体切込み
18 留め具
20a、20b 調節具
32 防水生地
34 履き口カバー
36 カバー切込み
42 防水生地
44 つば部
46 排出口
100 雨着
112 結合具
120 雨着ズボン
124、126 つば部
128、130 結合具