(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】栽培トレイ
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20241001BHJP
A01G 31/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A01G31/00 601B
A01G31/00 612
A01G31/04 A
(21)【出願番号】P 2023041720
(22)【出願日】2023-03-16
(62)【分割の表示】P 2019038550の分割
【原出願日】2019-03-04
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】592026819
【氏名又は名称】伊東電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 政樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開平3-9147(JP,U)
【文献】特開平1-101827(JP,A)
【文献】特開平2-131529(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129674(WO,A1)
【文献】実開平2-123861(JP,U)
【文献】実開昭62-102356(JP,U)
【文献】実開平2-100448(JP,U)
【文献】実開平1-72054(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その凹状空間に培養液
を溜めることができる貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイ
であって、
栽培領域と給水領域
とに分か
つ縦壁部が設けられて
おり、
前記給水領域に
、前記貯留槽部内に培養液
を供給
する給水口があり、
前記栽培領域に、該植物の苗
を保持
する植物保持具
を有し、
前記給水領域に、
該給水口が設けられてなる細長い板状部であって、その全長が該凹状空間の側壁間の距離に相当する長さである細長い板状部を有し、
さらに、該給水口が、該栽培トレイの外部に向け開口しており、
該縦壁部により、該培養液が該栽培領域に流れ込むことが防止される、栽培トレイ。
【請求項2】
前記細長い板状部からなる前記給水領域、前記縦壁部の水平断面、及び、前記植物保持具からなる前記栽培領域からなる水平面が、前記凹状空間の上方開口全領域を、当該凹状空間の壁面に接して覆う、請求項1に記載の栽培トレイ。
【請求項3】
前記
細長い板状部と前記接する前記凹状空間の前記壁面の、当該細長い板状部の両短辺と前記接する部分である線分の上方の前記壁面である両短辺線分上方壁面に、前記細長い板状部に向かう窪みがあり、かつ、
前記貯留槽部の側面であって該窪みに繋がる部位に
、導水溝となる凹部が形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の栽培トレイ。
【請求項4】
前記貯留槽部の裏面に、前記導水溝と繋がる
溝があることを特徴とする請求項
3に記載の栽培トレイ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の栽培トレイ
であって、走行路に載置されて移動
するための溝であって、前記走行路と係合する溝が設けられていることを特徴とする栽培トレイ。
【請求項6】
前記貯留槽部
が、前記凹状空間の内底から
前記貯留槽部の裏面に連通
する排水口であって、前記給水領域の側に設けられた排水口を有する、請求項1から5のいずれかに記載の栽培トレイ。
【請求項7】
前記貯留槽部の前記裏面
に、溝又は凸壁
であって、前記排水口の開口部の周囲に形成されて
なる溝又は凸壁を有することを特徴とする請求項
6に記載の栽培トレイ。
【請求項8】
前記排水口に栓が設けられており、
前記貯留槽部が、前記凹状空間の前記内底の前記排水口の
開口部の周囲に
、切り欠き部又は開口部を有する堰部
を有し、
かつ、
該栓に
、通水路が形成されており、
該栓を
前記排水口に装着した状態において、
該通水路が
該堰
部の上に開口し、
該堰部を越える水位の
前記培養液が
、該切り欠き部又は該開口部、及び該通水路を経由して
、前記排水口から排水さ
れることを特徴とする請求項
6又は7に記載の栽培トレイ。
【請求項9】
前記栓は
前記排水口に回転可能に装着されており、
さらに
前記栓が特定の回転位置にある時には
、前記栓によって前記堰部の
前記切り欠き部又は
前記開口
部が封鎖され、
かつ、
前記栓が他の特定の回転位置にある時には
、前記栓の前記通水路の位置と、前記堰部の
前記切り欠き部又は
前記開口
部の位置とが
一致することで、前記排水口から排水されることを特徴とする請求項
8に記載の栽培トレイ。
【請求項10】
請求項7から9のいずれかに記載の栽培トレイ、
及び排水手段を有する植物栽培装置であって、
さらに、
該排水手段が、排水用の樋を含み、
前記
貯留槽部の前記裏面
の前記溝
又は前記凸壁が、該樋の
直上に位置
することを特徴とする
植物栽培装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の栽培トレイ、
及び給水手段を有する植物栽培装置であって、
さらに、
該給水手段が、養液タンクからポンプによって前記培養液を主管に圧送し、該主管から分岐した多数の枝管の内の枝管から、該栽培トレイに前記培養液を供給する培養液供給手段であり、さらに、
該枝管の先端の直下の位置が、該栽培トレイの前記給水口の位置と一致することを特徴とする
植物栽培装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の栽培トレイ、
及び、二条のローラコンベヤが間隔を空けて並列に配置されたローラコンベヤを有する植物栽培装置であって、
該ローラコンベヤは、前記栽培領域から前記給水領域への方向と直交する方向に延びるフレーム部材、及び該フレーム部材に取り付けられる複数のコロ部材を有し、さらに、
該栽培トレイの裏面には、二条の溝であって、互いに平行に延びる二条の溝を有し、さらに、
該二条の溝の一及び他の溝が、該二条のローラコンベヤの一及び他のローラコンベヤに各々と係合することで、
該栽培トレイが、該二条のローラコンベヤ上を直線移動し、蛇行せず、かつ、
移動中の該栽培トレイの前記給水領域に、前記培養液が落ちることを特徴とする
植物栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物等の植物を水耕栽培する際に使用する栽培トレイに関するものである。また本発明は、植物を栽培する植物栽培装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農作物を建屋内で栽培する植物栽培装置が知られている。植物栽培装置は、作物工場と称される栽培形態に使用され、人工照明を使用して作物に適度の日照を与えると共に、建屋内や室内を生育に適した温度や湿度に保って作物を生育する装置である。
【0003】
本出願人は、筒状の栽培空間内に栽培トレイを複数設置し、当該栽培トレイを順次下流側に移動させて行く植物栽培装置を発明し、特許文献1に開示した。
また特許文献1に開示した植物栽培装置を改良するものとして、筒状空間の下部に空気を攪拌する送風機を設置した構造を特許文献2に開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再表2016-129674号公報
【文献】特開2018-23336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示した植物栽培装置では、筒状空間の下部に空気を攪拌する送風機があり、栽培トレイの裏面側に空気が滞留することを防止することができる。
しかしながら従来技術の栽培トレイは、平面視が長方形であり、移動方向の前後の辺を構成する壁面が平坦である。
そのため筒状空間内においては隣接する栽培トレイの側壁同士が密接し、栽培トレイ群の裏面側と表面側との間の通気経路が少ない。そのため送風機が発生する風が上方に抜けにくく、筒状空間内における空気の攪拌効率が悪いという問題があった。
また従来技術の栽培トレイは、培養液が直接、苗にかかってしまうことがあった。
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、培養液が苗にかかることを防ぐことができる栽培トレイを提供することを課題とするものである。
また関連発明は、並べて配置しても空気が上下に流通し易い栽培トレイを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための態様は、培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、貯留槽部の上部が栽培領域と給水領域に分かれており、両者の間に障害壁が設けられていることを特徴とする栽培トレイである。
上記した態様において、前記給水領域に給水口があり、当該給水口から貯留槽部内に培養液が供給されることが望ましい。
上記した各態様において、植物の苗が保持される植物保持具と、貯留槽部の一部を覆う上部部材を有し、当該上部部材に前記障害壁が設けられていることが望ましい。
上記した各態様において、植物の苗が保持される植物保持具と上部部材を有し、前記植物保持具と前記上部部材によって貯留槽部が覆われ、貯留槽部の表面が前記障害壁によって前記栽培領域と前記給水領域に分けられることが望ましい。
上記した各態様において、貯留槽部を覆う上部部材を有し、当該上部部材に苗を保持する開口と前記障害壁が設けられていることが望ましい。
上記した課題を解決するための態様(関連発明)は、培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、少なくとも一つの側面に凹凸があり、複数の栽培トレイを直列的に並べた際に、前記凹凸によって隣接する栽培トレイ同士の間に上下方向に貫通する隙間が形成されることを特徴とする栽培トレイである。
【0007】
本態様の栽培トレイは、側面に凹凸があり、複数の栽培トレイを直列的に並べた際に、前記凹凸によって隣接する栽培トレイ同士の間に上下方向に貫通する隙間が形成される。当該隙間が通気口となり、空気が上下に流通する。
【0008】
上記した態様において、栽培トレイは、走行路に載置されて移動されるものであり、裏面側に前記走行路と係合する溝が設けられていることが望ましい。
【0009】
本態様によると、栽培トレイが蛇行することを防止することができる。
【0010】
上記した態様において、貯留槽部の底であって、特定の辺に近い位置に排水口があり、貯留槽部の底に前記排水口に繋がる流路が形成されていることが望ましい。
【0011】
本態様によると、貯留槽部の培養液の滞留を防止することができ、培養液の腐敗や藻の発生を抑制することができる。
【0012】
上記した態様において、排水口は一個であることが望ましい。
【0013】
排水口が一個であると、貯留槽部の中に、培養液が滞留する部分を減らすことができる。
【0014】
上記した態様において、前記流路は底部に設けられた流路形成壁によって構成されており、当該流路形成壁の前記特定の辺に近い部分に、高さの低い通水部が形成されていることが望ましい。
【0015】
例えば栽培トレイで生育した植物を収穫する際、栽培トレイ内の培養液を排水することが望ましい。栽培トレイ内の培養液を排出する方法として、栽培トレイを排水口が下になる様に傾けることが考えられる。
本態様の栽培トレイは、栽培トレイを排水口が下になる様に傾けて、排水口がある側の辺の培養液の水位が上がると、培養液は通水部を乗り越えて排水口側に流れる。そのため排水に要する時間を短縮することができる。
【0016】
上記した態様において、貯留槽部を覆う上部部材を有し、当該上部部材に給水口があり、当該給水口から貯留槽部内に培養液が供給され、前記貯留槽部の側面であって前記上部部材に繋がる部位に導水溝が形成されていることが望ましい。
【0017】
本態様の栽培トレイでは、貯留槽部の一部を覆う上部部材を有し、当該上部部材に給水口がある。本態様の栽培トレイでは、この給水口から貯留槽部内に培養液が供給される。しかしながら、例えば栽培トレイが移動中に給水が行われる等によって、培養液が給水口以外の部分に落下する場合もある。
この場合には、培養液が上部部材上を流れて栽培トレイの縁から下に落下することとなるが、いたるところから落下することとなると、栽培トレイの周囲が濡れ、清掃に手間が掛かることとなる。
そこで本態様では、前記給水口の近傍に導水溝を設け、上部部材上の培養液を特定の位置から落下させることとした。
【0018】
上記した態様において、貯留槽部の裏面側に溝があり、当該溝が前記導水溝と繋がっていることが望ましい。
【0019】
導水溝を流れた培養液は、貯留槽部の裏面側に溝に入る。そのため貯留槽部の裏面に培養液が広がることを防止することができる。
【0020】
上記した態様において、前記栽培トレイは、給水手段と排水手段を有する植物栽培装置に配置されるものであり、前記植物栽培装置には、排水用の樋があり、前記溝は前記樋の上に相当する位置に設けられていることが望ましい。
【0021】
本態様によると、こぼれ落ちた培養液を排水用の樋に回収することができる。
【0022】
上記した態様において、排水口を有し、当該排水口は、貯留槽部の内底から裏面側に連通し、裏面側の開口部の周囲に溝又は凸壁が形成されていることが望ましい。
【0023】
本態様によると、排水口から排出された培養液の水切れが良く、貯留槽部の裏面に培養液が広がることを防止することができる。
【0024】
上記した態様において、貯留槽部の上部が栽培領域と給水領域に分かれており、両者の間に障害壁が設けられていることが望ましい。
【0025】
本態様によると、培養液が植物の葉にかかることが防止される。
【0026】
上記した態様において、排水口を有し、当該排水口に栓が設けられていることが望ましい。
【0027】
本態様によると、栓を抜くことによって栽培トレイ内の培養液を排水することができる。
【0028】
上記した態様において、排水口の周囲に堰部があり、当該堰部には切り欠き部又は開口があり、前記栓には通水路が形成されており、前記栓を排水口に装着した状態において、前記通水路が前記堰の上に開口し、堰部を越える水位の培養液が前記通水路を経由して排水され、前記栓は排水口に回転可能に装着されており、前記栓が特定の回転位置にある時には前記栓によって前記堰部の切り欠き部又は開口が封鎖され、前記栓が他の特定の回転位置にある時には前記堰部の切り欠き部又は開口が開放されることが望ましい。
【0029】
本態様では、排水口に栓が回転可能に装着されている。また本態様では、栓自体に通水路が形成されている。一方、堰部には切り欠き部又は開口がある。本態様では、栓の回転姿勢を変えることによって、栽培トレイ内に培養液を溜めたり、栽培トレイ内の培養液を排出することができる。
即ち栓が特定の回転位置にあるときには栓によって堰部の切り欠き部又は開口が封鎖され、栽培トレイ内に培養液を溜めることができる。また栓が特定の回転位置にある場合には、堰部の切り欠き部又は開口が開放され、栓に設けられた通水路を経由して培養液が排出される。
本態様の栓は、抜くことができないものであってもよい。
【0030】
植物栽培装置に関する態様は、上記したいずれかに記載の植物栽培トレイと、複数の栽培トレイを収容する栽培空間と、栽培トレイに培養液を供給する培養液供給手段と、栽培トレイから培養液を回収する樋と、栽培トレイを移動可能に載置する走行路と、植物栽培トレイよりも下部に設置された空気攪拌手段を備えたことを特徴とする植物栽培装置である。
【0031】
本態様の植物栽培装置によると、植物を効率よく育成することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の栽培トレイは、並べて配置しても空気が上下に流通し易いという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態に係る植物栽培装置の斜視図である。
【
図2】
図1の植物栽培装置を模式的に示す説明図であり、栽培トレイが収容されていない状態の内部を透過して示すものである。
【
図3】
図1の植物栽培装置を模式的に示す説明図であり、栽培トレイが収容された状態の内部を透過して示すものである。
【
図4】
図1の栽培設備の内部を示す正面図であり、栽培トレイが収容されていない状態を示すものである。
【
図5】
図1の栽培設備の内部を示す正面図であり、栽培トレイが収容されている状態を示すものである。
【
図6】本発明の実施形態の栽培トレイの斜視図である。
【
図8】
図6に示す栽培トレイを裏面側から観察した斜視図である。
【
図9】
図6に示す栽培トレイの貯留槽部の正面図である。
【
図10】(a)は
図9のA-A断面図であり、(b)は植物栽培時における貯留槽部内の水位を示す説明図であり、(c)は貯留槽部内の内底における排水口と流路形成壁と補強リブの高さ関係を示す説明図であり、(d)は貯留槽部内の内底における排水口と流路形成壁の通水部と補強リブの高さ関係を示す説明図である。
【
図11】(a)は栽培トレイの貯留槽部の正面図であり補強リブの図示を省略して流路を明確にしたものであり、矢印は植物栽培時における培養液の流れを示し、(b)は植物栽培時における貯留槽部内の水位を示す説明図である。
【
図12】(a)は栽培トレイの貯留槽部の正面図であり補強リブの図示を省略して流路を明確にしたものであり、矢印は排水作業時における培養液の流れを示し、(b)は排水作業時における貯留槽部内の水位を示す説明図である。
【
図13】栽培空間内における栽培トレイの配列状態を示す斜視図及びその一部拡大図である。
【
図14】栽培トレイの給排水側の辺部の拡大図である。
【
図15】本発明の他の実施形態における栽培トレイの排水口近傍の斜視図であり、栽培時における栓の姿勢を示す。
【
図16】本発明の他の実施形態における栽培トレイの排水口近傍の分解斜視図であり、排水口から栓を抜いた状態を示す。
【
図18】本発明の他の実施形態における栽培トレイの排水口近傍の斜視図であり、排水時における栓の姿勢を示す。
【
図19】本発明の他の実施形態における栽培トレイの導水溝部分及び溝(水切り溝)を示し、(a)は導水溝部分の正面図であり、(b)は(a)の矢視図であって溝(水切り溝)の形状を示す。
【
図20】本発明の他の実施形態における栽培トレイの導水溝部分及び溝(水切り溝)を示し、(a)は導水溝部分の正面図であり、(b)は(a)の矢視図であって溝(水切り溝)の形状を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る植物栽培装置1は、
図1で示されるように、棚部材2に複数並べて設置される。
【0035】
植物栽培装置1は、
図2、
図3に示されるように、複数のセル部材3を連結させて形成された外郭部材5を有している。外郭部材5の内部は、水平方向に延びる筒状の栽培空間7となっている。
【0036】
植物栽培装置1は、栽培空間7に植物の苗が植えられた状態の栽培トレイ10を搬入し、栽培トレイ10を栽培空間7の内部で移動させつつ植物を生育するものである。
【0037】
栽培空間7の内面には
図4の様に照明基板11と、
図2、
図4に示す様な栽培空間7内の空気を攪拌する空気攪拌手段12、13と、栽培トレイ10を移動可能に載置する走行路15を有している。また本実施形態の植物栽培装置1では、栽培空間7の内部に、栽培トレイ10に培養液を供給し、栽培トレイ10から排出される培養液を外部の所定位置まで流出させる養液制御手段17が設けられている。
【0038】
照明基板11は、薄い樹脂製の基板に発光素子としてLEDが多数取り付けられたものであり、内部の植物に人工照明を照射するものである。
【0039】
走行路15は、二条のローラコンベヤ21が間隔を空けて並列に配置されたものである。
ローラコンベヤ21は、植物栽培装置1の長手方向に延びるフレーム部材22と、このフレーム部材22に取り付けられる複数のコロ部材23を有している。各コロ部材23は動力を持たず、空転するものである。
【0040】
本実施形態では、空気攪拌手段として、上部側空気攪拌手段12と下部側空気攪拌手段13を有している。
上部側空気攪拌手段12は、栽培空間7の上部に設けられ、栽培空間7の長手方向に延びる2本の送風管25によって構成されている。当該送風管25には、一定間隔をあけて複数の送風口26が設けられている。送風管25は図示しない送風機に接続されており、
図4、
図5の様に送風口26から栽培空間7の中央側に向かって送風され、栽培空間7内の空気が攪拌される。
【0041】
下部側空気攪拌手段13は、
図2に示されるように、外郭部材の底部材27に設けられた軸流ファン又は遠心ファンである。本実施形態で採用する下部側空気攪拌手段13は、モータ30とプロペラ型の羽根車28によって構成されている。羽根車28は、モータ30の出力軸に固定されており、モータ30が回転することによって羽根車28が回転する。
本実施形態では、下部側空気攪拌手段13のモータ30は、栽培空間7の外部に設置されており、羽根車28は栽培空間7の内部であって底部材27の近傍に位置している。
従ってモータ30を回転することによって底部材27の近傍で羽根車28が回転する。
【0042】
養液制御手段17は、培養液供給手段31と樋32によって構成されている。
即ち植物栽培装置1の栽培空間7内には、栽培トレイ10に培養液を供給する培養液供給手段31が設けられている。
培養液供給手段31は、主管35と、主管35から分岐された多数の枝管36を有する給水手段である。
本実施形態では、外部に図示しない養液タンクがあり、図示しないポンプによって培養液が主管35に圧送され、枝管36から栽培トレイ10に供給される。
栽培トレイ10からオーバーフローした培養液は、樋32で回収され、養液タンクに回収される。この様に栽培空間7には、栽培トレイ10に培養液を供給する給水手段と栽培トレイ10からオーバーフローした培養液を排水する排水手段を備えている。
【0043】
次に、栽培トレイ10の構造を
図6以下を参照しつつ説明する。栽培トレイ10は、水耕栽培に使用されるものであり、平面視が四角形の小型の貯留槽部50と、植物保持具51及び貯留槽部50の一部を覆う上部部材70によって構成されている。
貯留槽部50は発泡スチロール等の軽量の樹脂で作られたものであり、小型であって水が漏らない構造であり、上面が開放されたトレイである。
貯留槽部50は、底壁52と、底壁52の4辺から立設された4辺の側壁55、56、57、58を有している。そして底壁52と側壁55、56、57、58で囲まれた凹状空間53に培養液を溜めることができる。
本実施形態では、側壁55、57が対向する短辺を構成し、側壁56、58が対向する長辺を構成する。
側壁55、56、57、58の凹状空間53側には、段部65が設けられている。
【0044】
貯留槽部50の底壁52の表面、即ち貯留槽部50の内底60には、排水口67と、流路形成壁61a、61b、61c及び補強リブ63a、63b、63c、63dが形成されている。
本実施形態では、排水口67は、凹状空間53の角の位置に一個だけ形成されている。より具体的には、排水口67は
図7、
図9に示すように短辺を構成する側壁55と、長辺を構成する側壁58で囲まれた角に設けられている。
【0045】
排水口67は
図10(c)(d)の様に貯留槽部50の内底60から一定の高さAだけ立ち上げられた位置に開口している。貯留槽部50の内底60には、管状部66が立設されており、管状部66の開口が排水口67となっている。
排水口67は、凹状空間53側に開口し、裏面側に連通している。
【0046】
流路形成壁61a、61b、61cは、後記する給水口83から貯留槽部50内の給水予定地Xに落下した培養液を排水口67に向かって流す流路を構成するものである。
流路形成壁61a、61b、61cは、いずれも貯留槽部50の長辺と平行にのびるものであり、貯留槽部50の短辺に対して互い違いに接している。
即ち流路形成壁61a、61b、61cは、一方の短辺たる側壁55又は側壁57から、他方の短辺たる側壁57又は側壁55に向かって長辺と平行に延びている。そして流路形成壁61a、61b、61cは、いずれも一端側が短辺たる側壁55又は側壁57と接しており、他端側は対向する短辺たる側壁57又は側壁55とは離れている。
【0047】
具体的には、給水予定地Xに最も近い位置に形成された流路形成壁61aは、給水予定地X側の側壁55を基端とし、対向する側壁57の近傍に至っている。但し、流路形成壁61aの他端と対向する側壁57との間には流路の一部となる隙間71aがある。
中央の流路形成壁61bは、給水予定地Xに対向する側の側壁57を基端とし、給水予定地X側の側壁55の近傍に至っている。但し、流路形成壁61bの他端と側壁55との間には流路の一部となる隙間71bがある。
給水予定地Xから最も遠い位置に形成された流路形成壁61cは、給水予定地X側の側壁55を基端とし、対向する側壁57の近傍に至っている。但し、流路形成壁61cの他端と対向する側壁57との間には流路の一部となる隙間71cがある。
【0048】
排水口67に近い側壁55を基端とする流路形成壁61a、61cには、側壁55の近傍に切り欠き状部(通水部)72a、72bが設けられている。
【0049】
補強リブ63a、63b、63c、63dは、長辺を構成する側壁56、58と前記した流路形成壁61a、61cの間、及び流路形成壁61a、61b、61c同士の間に設けられている。
【0050】
次に排水口67と、流路形成壁61a、61b、61c及び補強リブ63a、63b、63c、63dの高さ関係について、
図10(c)を参照しつつ説明する。
本実施形態では、排水口67の高さAと、流路形成壁61a、61b、61cの高さBと、補強リブ63a、63b、63c、63dの高さCを比較すると、流路形成壁61a、61b、61cの高さBが最も高く、次いで排水口67の高さAが高く、補強リブ63a、63b、63c、63dは最も低い。
排水口67の高さAと、流路形成壁61a、61cに設けられた切り欠き状部(通水部)72a、72b及び補強リブ63a、63b、63c、63dの高さ関係は、
図10(d)の通りであり、切り欠き状部72a、72bの高さDが最も高く、次いで排水口67の高さAが高く、補強リブ63a、63b、63c、63dは最も低い。
【0051】
上記した様に流路形成壁61a、61cには、切り欠き状部72a、72bが設けられている。切り欠き状部72a、72bの高さDと他の領域の高さを比較すると、高さDは、排水口67の高さAよりも僅かに高い。
【0052】
次に、貯留槽部50の外郭形状について説明する。
前記した様に貯留槽部50は、底壁52と、側壁55、56、57、58を有しており、貯留槽部50の外郭は、これらの外面によって構成されている。
貯留槽部50の外郭形状は高さが低い直方体であるが、各部に特徴的な凹凸がある。
貯留槽部50の長辺を構成する側壁56の外面側に注目すると、
図6乃至
図9の様に3か所に大きな凹凸がある。即ち貯留槽部50の側壁56には、幅広く且つ深い縦溝75a、75b、75cによって構成された凹凸がある。縦溝75a、75b、75cは、等間隔に設けられている。縦溝75a、75b、75cは、側壁56の高さ方向の全域に渡って伸びている。この様に貯留槽部50の一方の長辺側の側面には、縦溝75a、75b、75cで形成された凹凸がある。当該凹部及び凸部は、天地方向に連通している。
もう一つの長辺を構成する側壁58についても同様であり、3か所に大きな縦溝76a、76b、76cがある。縦溝76a、76b、76cは、等間隔に設けられている。縦溝76a、76b、76cは、側壁58の高さ方向の全域に渡って伸びている。
この様に貯留槽部50の他方の長辺側の側面にも、縦溝76a、76b、76cで形成された凹凸がある。当該凹部及び凸部は、天地方向に連通している。
なお本実施形態では、貯留槽部50は上部側の領域に比べて下部側の領域がやや小さく作られており、両者の境界部分に段部がある。3本の縦溝75a、75b、75c及び縦溝76a、76b、76cの内、両脇の縦溝75a、75c及び縦溝76a、76cについては、上部側と下部側の双方に溝が形成されており、上部側と下部側の境界に段部がある。中央の縦溝75b、76bの部分には、段部はない。
【0053】
また長辺を構成する側壁56、58であって、給水予定地X及び排水口67に近い短辺たる側壁55の近傍に、導水溝77a、77bが形成されている。導水溝77a、77bは、幅が上部部材70の幅と略等しく、深さが浅い溝である。
前記した様に本実施形態では、貯留槽部50は上部側の領域に比べて下部側の領域がやや小さく作られており、導水溝77a、77bは上部側と下部側の境界に段部がある。
導水溝77a、77bの上端部においては、側壁56、58が切り欠かれた形状となっている。即ち側壁56、58の上端には、導水溝77a、77bと連通する切り欠き部78a、78bが形成されている。
【0054】
貯留槽部50の裏面側に目を移すと、
図8の様に、溝80a、80b、及び溝(水切り溝)92が形成されている。
溝80aと溝80bは、同一の幅及び深さであり、平行に設けられている。溝80aと溝80bは、相当に大きな幅と深さを有している。溝80aと溝80bは、いずれも貯留槽部50の裏面にあって一方の側壁56から他方の側壁58にまで至っている。そして溝80aと溝80bは、前記した側壁56、58の縦溝の内、縦溝75a、76aと、縦溝75c、76cに連通している。
即ち裏側の溝80aは一端が縦溝75aと連通し、他端が縦溝76aと連通している。また裏側の溝80bは一端が縦溝75cと連通し、他端が縦溝76cと連通している。
溝80a、80bは、走行路15と係合する機能を有している。
【0055】
溝92は、溝80a、80に比べて深さが浅い溝であり、一方の側壁56から他方の側壁58まで至っている。そして裏側の溝92は一端が導水溝77aと連通し、他端が導水溝77bと連通している。
本実施形態では、
図8に示すように、溝92内に排水口67と連通する外部開口87がある。また外部開口87の周囲を環状の溝88が取りまいている。即ち貯留槽部50の裏面側の溝92内に、環状の溝88があり、その中央に排水口67と連通する外部開口87が突出している。溝88に変わって、溝88の周囲を凸壁で取り巻いてもよい。
【0056】
次に、植物保持具51及び上部部材70について説明する。
植物保持具51は、比重の軽い素材で作られた板であり、複数の開口38が設けられている。開口38には
図13の様に植物の苗が保持される。植物保持具51の幅は、凹状空間53の長辺側の側壁56、58間の距離に相当する長さである。植物保持具51の長さは、凹状空間53の短辺側の側壁55、57間の距離よりも短い。
【0057】
上部部材70は、細長い板状部81に縦壁部82が設けられた部材である。
板状部81の全長は凹状空間53の長辺側の側壁56、58間の距離に相当する長さである。
縦壁部82は、板状部81の全長に渡って形成されている。縦壁部82は、板状部81の長手方向に沿って形成された垂直壁である。
板状部81の長手方向の端部近傍には、給水口83が開口している。
【0058】
栽培トレイ10は、
図6の様に、貯留槽部50の開口側に植物保持具51と上部部材70が装着されたものである。
植物保持具51と上部部材70は、両者によって貯留槽部50の凹状空間53の開口を略完全に覆う。植物保持具51と上部部材70は、辺部が貯留槽部50の側壁55、56、57、58に設けられた段部65に載置された状態で貯留槽部50に設置される。植物保持具51と上部部材70の裏面側と、排水口67と、流路形成壁61a、61b、61c及び補強リブ63a、63b、63c、63dとの間は離れていて接していない。
上部部材70は、給水予定地X及び排水口67に近い側壁55に沿った位置にあり、導水溝77a、77bに繋がる位置に設置される。
【0059】
次に、本実施形態の植物栽培装置1によって植物を生育する際の各部の動作について説明する。
【0060】
本実施形態の植物栽培装置1では、
図2、
図3で示されるように、外郭部材5の一端が栽培空間7に新たな栽培トレイ10を搬入するトレイ搬入口85(搬入口)となっている。反対に他端側の開口部分が、栽培トレイ10を取り出すためのトレイ搬出口93(搬出口)となっている。
本実施形態では、
図3の様に、栽培空間7内に栽培トレイ10を直列状であって密に並べられる。
【0061】
栽培トレイ10は、
図5に示す様に、走行路15に載置される。即ち栽培トレイ10の裏面には、二条の溝80a、80bが平行に設けられている。そして当該溝80a、80bがそれぞれ走行路15のローラコンベヤ21と係合している。
従って栽培トレイ10が押されると、栽培トレイ10は走行路15上を直線移動する。本実施形態では、栽培空間7の外に設けられた図示しない押圧装置によって、最もトレイ搬入口85に近い位置の栽培トレイ10が押され、その力によって栽培空間7内の全ての栽培トレイ10が、走行路15に沿って直線移動する。
本実施形態では、二条の溝80a、80bが走行路15のローラコンベヤ21と係合しているので、移動時に蛇行しない。
【0062】
樋32は、栽培トレイ10の下部にあり、栽培トレイ10の溝(水切り溝)92の真下の位置に樋32がある。逆に言えば溝92は樋32の真上にあり、溝92に沿ってのびている。
【0063】
次に栽培空間7内における空気の流れについて説明する。
本実施形態では、栽培トレイ10同士の間に隙間86ができるため、栽培空間7内の空気が栽培トレイ10の上下方向に流通する。
以下、説明する。
栽培トレイ10は、
図3の様に、長辺側の側壁56、58を進行方向の前後方向に向けて走行路15の設置され、栽培空間7内に並べられる。
従って
図3、
図13の様に、各栽培トレイ10は、長辺側の側壁56、58同士が接した状態で配列される。
ここで本実施形態では、長辺側の側壁56に縦溝75a、75b、75cが設けられている。またもう一つの長辺側の側壁58にも縦溝76a、76b、76cが設けられている。
【0064】
本実施形態では、栽培空間7内において、一つの栽培トレイ10の側壁56に、隣接する栽培トレイ10の側壁58が接する。このとき、一方の栽培トレイ10の縦溝75a、75b、75cと、他方の栽培トレイ10の縦溝76a、76b、76cで形成される凹部同士が合致し、
図13の様に隣接する栽培トレイ10同士の間に上下方向に連通する隙間86a、86b、86cが形成される。
【0065】
そのため下部側空気攪拌手段13を起動すると、栽培トレイ10の下部側の空気が、隙間86a、86b、86cから上方に抜ける。そのため栽培空間7内の空気が効率良く攪拌される。そのため栽培空間7内における空気の淀みが解消し、例えば灰色カビ病のような植物の病害を防止することができる。
【0066】
次に栽培空間7内における培養液の流れについて説明する。
本実施形態では、培養液が主管35に圧送され、枝管36から栽培トレイ10に供給される。本実施形態では、枝管36の先端が栽培トレイ10の給水口83の位置と一致し、枝管36から給水口83に培養液が供給される。そして培養液は、栽培トレイ10内を流れ、余剰の培養液が排水口67からオーバーフローして下部の樋32に回収される。
【0067】
ここで本実施形態では、栽培トレイ10内に一本の流路が構成されており、培養液は、給水予定地Xから当該一本の流路を流れて排水口67に至る。
以下説明する。
【0068】
前記した様に、貯留槽部50の内底60には、排水口67と、流路形成壁61a、61b、61c及び補強リブ63a、63b、63c、63dが設けられている。前記した様にこれらの高さ関係は、流路形成壁61a、61b、61cの高さBが最も高く、次いで排水口67の高さAが高く、補強リブ63a、63b、63c、63dの高さCは最も低い。
栽培トレイ10で植物を育成している間は、栽培トレイ10は概ね水平姿勢であり、余剰の培養液は排水口67から排出されるから、栽培トレイ10内における液面の高さは、
図10(b)の様に排水口67の高さと等しい。
ここで補強リブ63a、63b、63c、63dの高さCは、排水口67よりも低いから、補強リブ63a、63b、63c、63dは全体が液面下にある。そのため培養液は、補強リブ63a、63b、63c、63dを横切ることとなり、補強リブ63a、63b、63c、63dは培養液の流路とはならない。ただし補強リブ63a、63b、63c、63dは流路形成壁61a、61b、61cに対して平行にのび、且つ直線状であるから、培養液の流れを層流化させる作用がある。本実施形態では、補強リブ63a、63b、63c、63dは、主に強度を向上させるために形成されている。
【0069】
これに対して、流路形成壁61a、61b、61cの高さBは、排水口67の高さAよりも高いから、
図10(b)の様に培養液は流路形成壁61a、61b、61cを乗り越えることができず、流路形成壁61a、61b、61cは流路を構成することとなる。
【0070】
図11、
図12では、流路を明確にして実施形態の理解を容易にするため、培養液の流れに影響が少ない補強リブ63a、63b、63c、63dの図示を省略している。
本実施形態では、上部部材70に給水口83が設けられており、貯留槽部50に給水される給水予定地Xは、予め決まっている。即ち本実施形態では、上部部材70の給水口83からのみ貯留槽部50に給水されるので、培養液は、必ず
図11に示した給水予定地Xに落下する。即ち本実施形態では、給水口83は、側壁55と、側壁56で囲まれた角に設けられている。
また前記した様に排水口67は、側壁55と、側壁58で囲まれた角に設けられている。
本実施形態では、一か所の給水予定地Xと、一か所の排水口67とが、一本の流路90で繋がっている。
【0071】
本実施形態では、側壁56及び流路形成壁61aで挟まれた第一往き側流路91aと、隙間71aと、流路形成壁61a及び流路形成壁61bで挟まれた第一戻り側流路91bと、隙間71bと、流路形成壁61b及び流路形成壁61cで挟まれた第二往き側流路91cと、隙間71cと、側壁58及び流路形成壁61cで挟まれた第二戻り側流路91dによって構成される一連の流路90によって給水予定地Xと排水口67とが繋がっている。
【0072】
本実施形態では、給水予定地Xに供給された培養液が、
図11(a)の矢印の様に、第一往き側流路91a、隙間71a、第一戻り側流路91b、隙間71b、第二往き側流路91c、隙間71c、第二戻り側流路91dを流れ、余剰の培養液が排水口67から外部に排出される。
そのため、培養液が滞留する箇所が少なく、藻等の発生が少ない。
【0073】
また栽培トレイ10の重量等の影響によって、栽培空間7内において栽培トレイ10の姿勢が多少傾斜することがあっても、培養液が滞ることはない。
即ち本実施形態では、給水予定地Xと排水口67の位置は、いずれも貯留槽部50の角の位置であり、予め決まっていて、栽培トレイ10の姿勢が傾斜してもこの位置は変わらない。そして貯留槽部50内には、給水予定地Xと排水口67を繋ぐ流路90は、一本しか存在せず、給水予定地Xと排水口67は、前記した流路90の両端の位置にある。
そのため栽培トレイ10が多少傾斜したとしても、給水予定地Xに供給された培養液は、流路90以外に流れる道筋はなく、且つ給水予定地Xと排水口67は、流路90の両端の位置にあるので、培養液が滞る場所はない。
そのため、培養液が滞留することは少ない。
【0074】
次に、栽培トレイ10内の培養液を排水する場合の挙動について説明する。
本実施形態では、栽培トレイ10を栽培空間7から取り出す際に、
図12(b)の様に栽培トレイ10を傾けて栽培トレイ10内の培養液を排出する。
このとき、栽培トレイ10内の培養液は、
図12(b)の様に排水口67側に集まり、排水口67側にある側壁55側の水位が上昇する。即ち
図12(a)の矢印の様に培養液は、側壁57側から排水口67がある側壁55側に向かって流れる。
ここで本実施形態では、側壁55の近傍に切り欠き状部72a、72bが設けられている。
そのため側壁55の近傍においては、培養液は、切り欠き状部72a、72bを経由して流路形成壁61a、61cを乗り越え、排水口67側に流れる。
そのため本実施形態によると、排水に要する時間が短い。
なお切り欠き状部72a、72bの高さDと他の領域の高さを比較すると、高さDは、排水口67の高さAよりも僅かに高いので、栽培トレイ10が水平姿勢である場合には、培養液は切り欠き状部72a、72bを乗り越えることができない。
【0075】
次に、各部の水切れについて説明する。
上記した様に、本実施形態では、枝管36の先端が栽培トレイ10の給水口83の位置と一致し、枝管36から給水口83に培養液が供給される。しかしながら、栽培トレイ10は、走行路15に沿って直線移動するので、例えば移動中に枝管36から培養液が落ちると、培養液は給水口83を外れて板状部81上に落下することとなる。
また栽培トレイ10の移動中に培養液の供給を停止していたとしても、枝管36の水切れが悪く、枝管36から培養液が滴下されることもある。
【0076】
この様な場合には、培養液は、
図14の矢印の様に上部部材70上を流れ、上部部材70の端部に至る。本実施形態では、上部部材70の両端に相当する位置の側壁56、58に切り欠き部78a、78bが形成されている。そして当該切り欠き部78a、78bは側壁56、58に形成された導水溝77a、77bと連通している。
上部部材70上を流れて上部部材70の端部に至った培養液は、切り欠き部78a、78bを経て導水溝77a、77bに入り、導水溝77a、77bの内壁を伝って下方向に進み、下端から滴下されて樋32に回収される。そのため上部部材70に落下した培養液が過度に広がることはない。
【0077】
また排水口67から排水された培養液は、外部開口87から外部に排出されるが、本実施形態では、外部開口87の周囲を環状の溝88があり、外部開口87はその中に突出した形状となっているから、外部開口87から排出された水は溝88の部分で貯留槽部50の他の底面と縁切りされ、他の領域に広がりにくい。また仮に外部開口87から排出された水が外部開口87の周囲に付着したとしても、外部開口87の周囲にはさらに溝92があるので、培養液は栽培トレイ10の裏面に広がりにくい。そのため排水口67から排水された培養液は、真下の樋32に落ちる。
【0078】
次に上部部材70の縦壁部82の作用について説明する。
本実施形態では、植物保持具51と上部部材70によって貯留槽部50の凹状空間53が覆われる。本実施形態では、植物保持具51に植物の苗が保持される。そのため貯留槽部50の表面が縦壁部82によって栽培領域120と給水領域121に分けられることとなる。
【0079】
本実施形態では、上部部材70で構成される給水領域121に培養液が供給されるが、培養液が上部部材70の板状部81に落ちて跳ね返ることがある。ここで、培養液が直接植物に当たると、肥料成分が葉に残ることがあり、避けるべきである。
本実施形態では、栽培領域120と給水領域121の間に、縦壁部82があるので、跳ね返った培養液が縦壁部82に当たり、培養液が植物に当たったり、培養液が栽培領域に流れ込むことが防止される。即ち縦壁部82が防護壁となって培養液が植物の葉の部分に触れることが阻止される。
【0080】
以上説明した実施形態では、栽培トレイ10を傾けることによって培養液を排水したが、栽培トレイ10の底に、排水口とは別に開口を設け、当該開口に栓を設け、当該栓を抜くことによって培養液を排水してもよい。
また排水口にコックを設け、当該コックを開いて排水してもよい。
【0081】
例えば、
図15に示す様に、排水口100の周囲を取り巻く堰101を設け、当該堰101の一部に切り欠き部106や開口を設ける。
一方、栓102は、コックとしての機能を発揮する。
即ち栓102は、径が大きい頭部103と、棒状の脚部105を有している。また栓102の内部には、
図16、
図17の様に空洞部110があり、当該空洞部110は脚部105の下端側に開口している。
また栓102の側面には、頭部103から脚部105にかけてスリット111が設けられている。
【0082】
栓102を排水口100に装着し、
図15の様に、スリット111の位置を堰101の切り欠き部106の位置から外した姿勢にすると、堰101の切り欠き部106が栓102の脚部105の側面で封鎖され、切り欠き部106からの排水が阻止される。
その一方、頭部103は堰101に突出し、側面のスリット111が堰101の上に開口する。そのため堰101を越える水位の培養液は、頭部103のスリット111を経て空洞部110に入り、下端側の開口から排出される。
【0083】
栽培トレイ10内の培養液を排水する場合には、栓102を回転し、
図18の様にスリット111の位置を堰101の切り欠き部106と一致させる。その結果、堰101の切り欠き部106が開放され、切り欠き部106を通過した培養液が、スリット111を経て空洞部110に流れ込み、下端側の開口から排出される。なお栓102を抜いても排水は可能である。
【0084】
以上説明した実施形態では、隣接する栽培トレイ10と接する2側面(側壁56、側壁58)に凹凸を設けたが、一方の面だけに凹凸を設けても隣接する栽培トレイ10との間に隙間を設けることができる。
【0085】
本発明の栽培トレイ10は、略閉塞された栽培空間7内に直列的に複数並べて使用されることが推奨されるが、オープン空間で使用されてもよい。
また栽培トレイ10の下部に送風機等が設置されていることが望ましいが、送風機等の設置は必須ではない。
【0086】
以上説明した実施形態では、給水予定地Xから排水口67に至る流路は、直線を基調とした流路であるが、流路形成壁を曲線的にのばし、流路を曲線流路としてもよい。
給水予定地Xと排水口67は対角の位置にあってもよい。
【0087】
上記した実施形態では、貯留槽部50の凹状空間53を、植物保持具51と上部部材70で覆ったが、両者を一体化してもよい。例えば貯留槽部50の凹状空間53に合致する面積を有する板に、苗を保持する開口38と給水口83を設け、開口38が設けられた栽培領域120と給水領域121を区切る縦壁部82を設けてもよい。
一体化された板は、植物保持具51としても機能し、上部部材70としても機能する。即ち一体化された板は、上部部材70でもある。
【0088】
上記した実施形態では、導水溝77a、77bは、幅が一定の溝を例示した。溝(水切り溝)92についても幅が一定の溝を例示した。
本発明はこの構成に限定されるものではなく、例えば
図19に示す導水溝77cの様に、上部側が傾斜していて零れた培養液を集めやすい形状としてもよい。
【0089】
また図20に示す導水溝77dの様に、上部側を傾斜させた形状とするのに加え、本来の溝部130の両脇に、捕捉用の溝131を設けることも推奨される。本実施形態によると、仮に溝部130の淵から培養液が広がっても、捕捉用の溝131に捕捉され、それよりも外側には広がらない。
本実施形態では、本来の溝部130と捕捉用の溝131との間の土手部132が、側壁56、58の下端よりも下に突出している。そのため土手部132を伝った培養液は、突出した突端部分から落下し、側壁56、58には広がらない。
本実施形態では、溝(水切り溝)92aについても、捕捉用の溝135が設けられている。
【0090】
上記した実施形態の栽培トレイ10は、以下の特徴的構成を有しており、使用方法は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0091】
(1)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、当該栽培トレイは、走行路に載置されて移動されるものであり、裏面側に前記走行路と係合する溝が設けられていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、移動中に蛇行する問題があった。本態様の栽培トレイ10によると、蛇行を防ぐことができる。
【0092】
(2)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、貯留槽部の内底であって、特定の辺に近い位置に排水口があり、貯留槽部の内底に前記排水口に繋がる流路が形成されており、前記流路は内底に設けられた流路形成壁によって構成されており、当該流路形成壁の前記特定の辺に近い部分に、高さの低い通水部が形成されていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、傾斜させて培養液を排水する際に時間がかかるという問題があった。本態様の栽培トレイ10によると、比較的短時間で排水することができる。
【0093】
(3)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、貯留槽部を覆う上部部材を有し、当該上部部材に給水口があり、当該給水口から貯留槽部内に培養液が供給され、前記貯留槽部の側面であって前記上部部材に繋がる部位に導水溝が形成されていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、給水口に入らなかった培養液が、各部に広がって周囲を汚すという問題があった。本態様の栽培トレイによると、漏れた培養液が所定の位置に誘導されるので汚れが広がりにくい。
【0094】
(4)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、排水口を有し、当該排水口は、貯留槽部の内底から裏面側に連通し、裏面側の開口部の周囲に溝又は凸壁が形成されていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、排水口から排水された培養液が、栽培トレイの裏面に伝い広がり、栽培トレイの裏面を汚してしまうという問題があった。本態様の栽培トレイによると、培養液が広がりにくく汚れが広がりにくい。
【0095】
(5)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、貯留槽部の上部が栽培領域と給水領域に分かれており、両者の間に障害壁が設けられていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、培養液が直接、苗にかかってしまうことがあった。本態様の栽培トレイ10によると、培養液が苗にかかることを防ぐことができる。
【0096】
(6)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、排水口を有し、当該排水口に栓が設けられていることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、培養液を排水する際に時間がかかるという問題があった。本態様の栽培トレイ10によると、比較的短時間で排水することができる。
【0097】
(7)培養液を貯留する貯留槽部を備え、植物を水耕栽培する栽培トレイにおいて、排水口を有し、排水口の周囲に堰部があり、当該堰部には切り欠き部又は開口があり、前記栓には通水路が形成されており、前記栓を排水口に装着した状態において、前記通水路が前記堰の上に開口し、堰部を越える水位の培養液が前記通水路を経由して排水され、前記栓は排水口に回転可能に装着されており、前記栓が特定の回転位置にある時には前記栓によって前記堰部の切り欠き部又は開口が封鎖され、前記栓が他の特定の回転位置にある時には前記堰部の切り欠き部又は開口が開放されることを特徴とする栽培トレイ。
従来技術の栽培トレイは、培養液を排水する際に時間がかかるという問題があった。本態様の栽培トレイ10によると、比較的短時間で排水することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 植物栽培装置
7 栽培空間
10 栽培トレイ
13 下部側空気攪拌手段
15 走行路
31 培養液供給手段
32 樋
50 貯留槽部
52 底壁
55、56、57、58 側壁
60 内底
61a、61b、61c 流路形成壁
67 排水口
70 上部部材
72a、72b 切り欠き状部(通水部)
75a、76a 縦溝
77a、77b、77c 導水溝
80a、80b 溝
82 縦壁部(障害壁)
83 給水口
86a、86b、86c 隙間
88 環状の溝
92、92a 溝(水切り溝)
100 排水口
102 栓
101 堰
106 切り欠き部