(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】縦型充填包装設備
(51)【国際特許分類】
B65B 9/06 20120101AFI20241001BHJP
B65B 41/12 20060101ALI20241001BHJP
B65B 41/00 20060101ALI20241001BHJP
B65B 57/00 20060101ALI20241001BHJP
B65H 23/032 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B65B9/06
B65B41/12 502Z
B65B41/00 501J
B65B57/00 H
B65H23/032
(21)【出願番号】P 2023074003
(22)【出願日】2023-04-28
(62)【分割の表示】P 2022017182の分割
【原出願日】2022-02-07
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】307028493
【氏名又は名称】株式会社悠心
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 克規
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-196744(JP,A)
【文献】特開2003-063706(JP,A)
【文献】特開2016-210481(JP,A)
【文献】特開2021-130544(JP,A)
【文献】特開2001-122209(JP,A)
【文献】特開2005-137983(JP,A)
【文献】特開2009-249047(JP,A)
【文献】特開2011-201546(JP,A)
【文献】特開2018-158733(JP,A)
【文献】特開2019-206389(JP,A)
【文献】特開2020-183238(JP,A)
【文献】特開平03-095059(JP,A)
【文献】特開平10-194211(JP,A)
【文献】特開昭59-108658(JP,A)
【文献】実公昭47-027033(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0239595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 9/00
B65B 41/00
B65B 57/00
B65H 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻き回されたフィルム原反から帯状のプラスチックフィルムを順次に巻き戻す巻き戻しロールと、該巻き戻しロールにて巻き戻された帯状のプラスチックフィルムを縦向き搬送姿勢に方向転換する天ロールと、該天ロールにて搬送姿勢が方向転換された帯状プラスチックフィルムを2つに折り返す製袋ガイドと、2つに折り返された帯状のプラスチックフィルムの、少なくとも重なりあう側端部を挟持しながら、加圧、加熱して、該帯状のプラスチックフィルムの長手方向に1本もしくは複数本の縦シール部を連続的に形成する縦シールロール対と、該縦シール部が形成された帯状のプラスチックフィルムを挟持しながら、加圧、加熱して該帯状のプラスチックフィルムの幅方向に横シール部を形成する1または2以上の横シールロール対と、該横シールロール対によって形成された1の横シール部および該縦シールロール対により形成された縦シール部にて区画された帯状のプラスチックフィルムの内側の充填空間内に被包装物を充填する充填ノズルと、を備え、被包装物が充填された前記充填空間を該横シールロール対により形成されるもう1つの横シール部にて封止することにより、上下の端部を封止して包装袋同士が相互に連ねられた複数の包装袋を連続的に製造する縦型充填包装設備であって、
前記巻き戻しロールは、前記フィルム原反を保持し、軸受けを介して回転可能に支持されたロール本体と、該ロール本体の軸端につながり、該ロール本体をフィルム原反とともに該ロール本体の軸芯に沿って移動させる移動手段と、巻き戻し直後の帯状プラスチックフィルムの幅方向の中心位置を検知する検知手段と、該検知手段にて検知された情報にしたがい該移動手段を作動させて該ロール本体を該フィルム原反とともに該ロール本体の軸芯に沿って移動させて、巻き戻しに係わる帯状プラスチックフィルムの幅方向の中心位置を縦型充填包装設備に係わる機械中心に一致させる制御部と、からなり、
前記縦型充填包装設備に係わる機械中心が、前記縦シールロール対または前記横シールロール対の噛み込み中心であることを特徴とする縦型充填包装設備。
【請求項2】
前記ロール本体は、該ロール本体の回転速度を調整する制動手段または駆動手段を有することを特徴とする、請求項1に記載した縦型充填包装設備。
【請求項3】
前記フィルム原反は
、外表面において前記帯状のプラスチックフィルムをロール状に巻き回すとともに
、内側に形成された貫通孔部を前記ロール本体の胴体部分に適合させて該ロール本体の回転に同期して回転可能な環状体を有することを特徴とする請求項1または2に記載した縦型充填包装設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状のプラスチックフィルムを巻回してなるフィルム原反をロール本体に装着し、該ロール本体の回転にしたがって該フィルム原反からプラスチックフィルムを連続して巻き戻す、フィルム原反の巻き戻しロールを備えた縦型充填包装設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲食物や調味液、医薬品、化学品等の液状物や粘稠物、粉・粒状物等からなる被包装物を、帯状のプラスチックフィルムを袋状に成形しながら自動的に充填包装し、複数の包装袋を連続して製造することのできる、例えば特許文献1のような縦型充填包装機が知られている。
【0003】
この縦型充填包装機では、帯状のプラスチックフィルムを、該プラスチックフィルムがロール状に巻回してなるフィルム原反からフィルム案内機構を介してフィルム折返し機構である製袋ガイドに導き出し、該製袋ガイドによって該プラスチックフィルムを長手方向に沿って二つ折りとし、次いで、縦シール機構(縦シールロール対)によって該プラスチックフィルムを挟みながら送り出すと共に、ヒートシールすることにより、該プラスチックフィルムを筒状に縦シールし、続いて横シール機構(横シールロール対)によって該筒状のプラスチックフィルムを横方向にヒートシールすることにより横シールして包装袋の底部となる横シール部を形成し、さらに有底筒状に形成された該プラスチックフィルム内に、充填ノズルによって液状や粘稠状等の被包装物を充填すると共に、前記横シール機構によって包装袋の袋口側を横シールして連続した包装袋を形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記縦型充填包装機では、通常、帯状のプラスチックフィルムを、紙製等からなる芯管に1000m、2000m等の所定の長さで巻回してなるフィルム原反が使用され、プラスチックフィルムが消費されて無くなると、新たなフィルム原反に交換することで連続して充填包装を行うことができるように構成されている。
【0006】
このようなフィルム原反は、取り扱い時や使用時等において、芯管が抜けないように、巻き芯に近いほどプラスチックフィルムに強いテンションをかけながら巻回している。そのため、充填包装機において、プラスチックフィルムが巻き戻されるうちに蛇行が発生しやすくなり、とくにフィルム原反を交換する際には、使い切ったフィルム原反の、全くテンションのかかっていないプラスチックフィルムと、テンションのかかった新しいフィルム原反とを、走間で繋ぎ合わせる場合に、プラスチックフィルムが大きく蛇行するおそれがあった。そのため、従来は、フィルム原反の交換の度に充填包装機の生産を一旦、停止し、作業員が新たなフィルム原反を用いて試運転を行いながら生産条件を設定する必要があるため、生産性が低下すると共に、コストの点でも問題があった。
【0007】
また、上記縦型充填包装機では、帯状のプラスチックフィルムを、製袋ガイドによって長手方向に沿って二つ折りとする際、その折り返し位置がプラスチックフィルムの幅方向の中心位置から外れると、折り返した際に側端縁どうしが揃わず、所謂、耳ずれが発生するおそれがある。そのため、試運転の際に、作業員がプラスチックフィルムの幅方向中心位置にあわせて、製袋ガイドの位置を調整する等して耳ずれの発生を防止していたが、非常に手間がかかると共に、一度、調整を行っても巻き戻しに係わるプラスチックフィルムの蛇行により中心位置がずれて耳ずれが発生してしまうことがあった。しかも、従来は、プラスチックフィルムの幅方向中心位置をフィルム原反の芯管の幅から算出していたが、該芯管とプラスチックフィルムの幅には誤差があり、正確な位置を特定することができなかった。
【0008】
そこで、本発明では、巻き戻しに係わるプラスチックフィルムの蛇行を小さくするとともに、耳ずれの軽減された包装袋を安定して製造できるフィルム原反の巻き戻しロールを備えた縦型充填包装設備を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、ロール状に巻き回されたフィルム原反から帯状のプラスチックフィルムを順次に巻き戻す巻き戻しロールと、該巻き戻しロールにて巻き戻された帯状のプラスチックフィルムを縦向き搬送姿勢に方向転換する天ロールと、該天ロールにて搬送姿勢が方向転換された帯状プラスチックフィルムを2つに折り返す製袋ガイドと、2つに折り返された帯状のプラスチックフィルムの、少なくとも重なりあう側端部を挟持しながら、加圧、加熱して、該帯状のプラスチックフィルムの長手方向に1本もしくは複数本の縦シール部を連続的に形成する縦シールロール対と、該縦シール部が形成された帯状のプラスチックフィルムを挟持しながら、加圧、加熱して該帯状のプラスチックフィルムの幅方向に横シール部を形成する1または2以上の横シールロール対と、該横シールロール対によって形成された1の横シール部および該縦シールロール対により形成された縦シール部にて区画された帯状のプラスチックフィルムの内側の充填空間内に被包装物を充填する充填ノズルと、を備え、被包装物が充填された前記充填空間を該横シールロール対により形成されるもう1つの横シール部にて封止することにより、上下の端部を封止して包装袋同士が相互に連ねられた複数の包装袋を連続的に製造する縦型充填包装設備であって、
前記巻き戻しロールは、前記フィルム原反を保持し、軸受けを介して回転可能に支持されたロール本体と、該ロール本体の軸端につながり、該ロール本体をフィルム原反とともに該ロール本体の軸芯に沿って移動させる移動手段と、巻き戻し直後の帯状プラスチックフィルムの幅方向の中心位置を検知する検知手段と、該検知手段にて検知された情報にしたがい該移動手段を作動させて該ロール本体を該フィルム原反とともに該ロール本体の軸芯に沿って移動させて、巻き戻しに係わる帯状プラスチックフィルムの幅方向の中心位置を縦型充填包装設備に係わる機械中心に一致させる制御部と、からなり、
前記縦型充填包装設備に係わる機械中心が、前記縦シールロール対または前記横シールロール対の噛み込み中心であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の縦型充填包装設備においては、
(1)前記ロール本体は、該ロール本体の回転速度を調整する制動手段または駆動手段を有すること、
(2)前記フィルム原反は、外表面において前記帯状のプラスチックフィルムをロール状に巻き回すとともに、内側に形成された貫通孔部を前記ロール本体の胴体部分に適合させて該ロール本体の回転に同期して回転可能な環状体を有すること、
が好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る縦型充填包装設備によれば、フィルム原反から巻き戻された直後のプラスチックフィルムの幅方向の中心位置をCCDカメラやセンサー等の検知手段によって検知し、該検知手段によって得られた情報に従って、前記フィルム原反を、移動手段によってプラスチックフィルムの幅方向中心位置が所定位置(設定値)を通るように移動させることで、該フィルム原反から繰り出されたプラスチックフィルムの位置ずれ(蛇行)を作業員を要することなく自動で調整することができる。
【0012】
とくに、本発明によれば、フィルム原反の交換時等において、フィルム原反から繰り出されるプラスチックフィルムの位置合わせを、充填包装機を停止させることなく行うことができ、生産性を向上させることができると共に、省人化を図ることで製造コストを削減することができる。
【0013】
また、本発明によれば、フィルム原反から巻き戻された直後の前記プラスチックフィルムの幅方向の中心位置を検知手段によって検知し、該検知手段によって得られた情報に従って前記フィルム原反を、前記プラスチックフィルムの幅方向中心位置が、縦型充填包装設備を構成する機械中心に一致するように移動させることで、包装袋を充填包装しながら前記プラスチックフィルムの蛇行を調整することができると共に、該プラスチックフィルムを、幅方向中心位置で長手方向に二つに折り返す際に、正確に折り返すことができ、耳ずれが発生することがない。
【0014】
また、本発明によれば、縦型充填包装設備の充填包装機本体に対しては何ら改良等を加えることなく、帯状のプラスチックフィルムを順次に繰り出すための巻き戻しロールのみによって、該プラスチックフィルムの位置合わせ(センタリング)を行うことができるため、既設の充填包装機や他社製の充填包装機に対しても、後付けで取り付けて利用することができ汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の縦型充填包装設備の一実施形態を示す正面図である。
【
図4】(a)は、巻き戻しロールの構成を示す図であり、(b)は、
図4(a)のA-A矢視図である。
【
図5】
図1の縦型充填包装設備の左側面図であり、縦型充填包装設備における機械中心を説明する図である。
【
図6】縦シールロール対の噛み込み中心を説明する図である。
【
図7】本発明の縦型充填包装設備の参考例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、包装袋を一列もしくは複数列(多列)で同時に製造するいずれの場合にも適用が可能であるが、以下の説明は、主として一列充填の例で説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る縦型充填包装設備1の一実施形態(一列充填)を示す正面図であり、
図2は、
図1の縦型充填包装設備1の右側面図であり、
図3は、本発明に係る巻き戻しロール12の構造を示す断面図であり、
図4の(a)は、巻き戻しロール12の構成を示す図であり、(b)は
図4(a)のA-A矢視図であり、
図5は、
図1の縦型充填包装設備1の左側面図であり、縦型充填包装設備1における機械中心を説明する図であり、
図6は、
図5の縦シールロール対4の噛み込み中心を説明する図であり、
図7は、本発明に係る縦型充填包装設備の参考例を示す図である。以下、
図1~7に示す例に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0018】
図1に示す縦型充填包装設備1は、巻き戻しロール12、天ロール2、製袋ガイド3、縦シールロール対4、横シールロール対5、冷却ロール対6および切り離し手段7を具えている。
【0019】
巻き戻しロール12は、
図2に示すように、主にフィルム原反10を装着するロール本体20と、該ロール本体20の軸端につながる移動手段21と、フィルム原反10から巻き戻された直後のプラスチックフィルムFの幅方向中心位置を検知する検知手段22と、該検知手段22からの情報を受けて移動手段21を駆動させる制御部23と、から構成されている。
【0020】
フィルム原反10は、
図3に示すように径方向の中心に環状体からなる紙管11を有し、該紙管11にプラスチックフィルムFが巻回されるとともに、該紙管11を介して巻き戻しロール12のロール本体20に装着されている。なお、プラスチックフィルムFを巻回してなる環状体は、本実施形態の紙製(紙管11)のみならず、プラスチック製や金属製等、各種のものを用いることができる。
【0021】
プラスチックフィルムFのフィルム構成は、少なくともベース層とシーラント層を有するものであればとくに限定されるものではなく、本実施形態では、一軸もしくは二軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルム層やナイロン樹脂フィルム層等からなるベース層と、無延伸のポリエチレン層やポリプロピレン層等からなるシーラント層とを具えるプラスチックフィルムFを用いる。例えば、アルミ箔、アルミ合金箔、アルミニウム蒸着層および/または紙などを積層してなる積層プラスチックフィルムも好適に使用することができる。
【0022】
フィルム原反10は、紙管11の両端部にそれぞれ環状のストッパー24を嵌着することで巻き戻しロール12のロール本体20に固定され、該ロール本体20と一体で回転するように構成されている。なお、フィルム原反10のロール本体20への固定方法は、とくに限定されるものではなく、例えばロール本体20がエアシャフト構造を有し、該シャフトが拡径または縮径することで、フィルム原反10を、紙管11を介してロール本体20に固定または解除できるようにすることや、エアシャフトを用いずに機械的に固定すること(メカニカルチャック)等とすることができる。
【0023】
ロール本体20は、両端部が回転支持部25に対して軸受け26により回転自在に支持され、一方の軸端には電動モータや油圧、空気圧を利用したアクチュエータ等の移動手段21がつながっており、後述する制御部23の指令に従って移動手段21を駆動させることで、軸芯に沿ってスライド(進退移動)するように構成されている。したがって、ロール本体20のスライドに伴い、フィルム原反10もまた、該ロール本体20と一体で移動することになる。
【0024】
また、ロール本体20の他方の軸端には、制動手段または駆動手段27を設けてもよく、該制動手段または駆動手段27によってロール本体20の回転速度を調整することで、フィルム原反10から所期した速度でプラスチックフィルムFを繰り出すことができる。
【0025】
なお、本実施形態では、ロール本体20そのものを、その軸芯に沿って移動させる場合を一例として示しているが、例えば、ロール本体20の胴体部分にスプライン歯を設け、紙管11の内側に形成された貫通部に該スプライン歯を適合するスプライン溝を設け、これを利用してフィルム原反10のみを、ロール本体20の軸芯に沿ってスライドさせるようにしてもよく、この場合には、ロール本体20は、軸芯に沿って移動させる必要がない。フィルム原反10を、ロール本体20の軸芯に沿ってスライドさせるには、例えば、ストッパー24をロール本体20の軸芯に沿って移動できる構造としておき、制御部23からの指令にしたがい、該ストッパー24を作動させてフィルム原反10を紙管11とともにロール本体20の軸芯に沿って移動させればよい。
【0026】
また、フィルム原反10の上方位置には、
図4に示すようにフィルム原反10から巻き戻された直後のプラスチックフィルムFの幅方向の中心位置を検知するための検知手段22が設けられている。なお、検知手段22は、プラスチックフィルムFの幅方向の中心位置を検知することができればどのようなものであってもよく、例えば、CCDカメラや各種エッジセンサー(例えば、画像センサーでプラスチックフィルムFの幅を検出する方法や、超音波やレーザーなどをプラスチックフィルムFに照射し、検出器にて透過してきたもの、あるいは反射してきたものを判断してエッジを検出する方法など)を用いて、プラスチックフィルムFの幅方向の両側縁位置を検知することにより、幅方向の中心位置を求めることができる。
【0027】
検知手段22によって検知された情報(プラスチックフィルムFの幅方向の中心位置)は、制御部23に送信され、予め入力された設定値とのずれが算出される。制御部23において、設定値とのずれが規定した範囲以上であると判定されると、制御部23からの指令によって巻き戻しロール12の移動手段21が駆動し、ロール本体20が、そのずれに基づいてスライド移動する。なお、
図1の縦型充填包装設備1の場合、制御部23に入力される設定値を、縦型充填包装設備1を構成する機械の中心位置とする。
【0028】
ロール本体20のスライド移動によって、
図1の縦型充填包装設備1では、フィルム原反10から巻き戻されたプラスチックフィルムFの幅方向中心位置が、常に縦型充填包装設備1を構成する機械の中心位置を通るように自動で調整され、下流に向かって走行するプラスチックフィルムFの蛇行を効果的に抑制することができる。このため、フィルム原反10の交換時など、テンションの違いからプラスチックフィルムFが大きく蛇行する可能性のある場合であっても、縦型充填包装設備1の運転を停止することなく、自動でプラスチックフィルムFの走行位置を調整することができる。なお、検知手段22による検知のタイミング(ロール本体20のスライド)は、1回/0.1秒~10秒とすることで安定した調整を行うことができる。
【0029】
上記の縦型充填包装設備1を構成する機械の機械中心とは、
図5に示すように縦シールロール対4、横シールロール対5をそれぞれ構成する一対のロール間位置、とくに縦シールロール対4または横シールロール対5の噛み込み中心とする。なお、縦シールロール対4および横シールロール対5はいずれも、一対のシールロール間が、初めから所定の隙間に調整されたもの、プラスチックフィルムFが噛み込まれていない状態では、シールロール同士が接触しているが、プラスチックフィルムFを噛み込んだときに所定の隙間に保持されるもの等を使用することができるが、いずれの場合も、噛み込み中心とは、
図6に示すようにプラスチックフィルムFの噛み込まれる隙間の中央を意味している。
【0030】
このようにプラスチックフィルムFの幅方向中心位置を、縦型充填包装設備1を構成する機械の中心位置を通るように設定することで、使用するプラスチックフィルムFが変更されても、制御部23の設定を変更する手間がなく、また、プラスチックフィルムFを機械中心に合わせて繰り出すことで、蛇行を効果的に抑制することができ、縦シールや横シール時のシール不良(シワ等による液漏れやピンホールの発生等)の発生を抑制することができる。
【0031】
また、制御部23に設定値を入力せず、検知手段22によって、プラスチックフィルムFの幅方向中心位置と、縦型充填包装設備1の所要の位置に設けたマーキング(機械中心と一致するマーキング)とを同時に検知し、該マーキングに、プラスチックフィルムFの幅方向中心位置を一致させるように、ロール本体20(フィルム原反10)を軸芯に沿ってスライドさせるようにしてもよい。
【0032】
上記したように、フィルム原反10の移動によるプラスチックフィルムFの幅方向中心位置の調整(センタリング)は、巻き戻しロール12(ロール本体20、移動手段21、検知手段22および制御部23)によって行うことができ、そのため、縦型充填包装設備1の機械本体に改良を加える必要がなく、既設の縦型充填包装設備1に対して、後付けで取り付けることもでき、また縦型充填包装設備1の機種を選ばないため汎用性が高いという利点を有している。
【0033】
フィルム原反10を移動させることで幅方向中心位置が調整されたプラスチックフィルムFは、駆動機構を有する縦シールロール対4によって、複数の搬送ロールを通って頂部に位置する天ロール2まで引き上げられた後、下方に位置する製袋ガイド3へと導かれ、該製袋ガイド3によってシーラント層が互いに向かい合わせになるように幅方向に二つに折り返され、側端部(遊端部)13どうしが重なり合う。
【0034】
このとき、プラスチックフィルムFは、上記したように幅方向中心が、縦型充填包装設備1を構成する機械の中心に一致しているため、製袋ガイド3によってプラスチックフィルムFを幅方向の中心位置において正確に折り返すことができ、プラスチックフィルムFの側端部13どうしが正確に重ね合わさって耳ずれの発生が抑制される。
【0035】
なお、製袋ガイド3は、プラスチックフィルムFのシーラント層側に接して、該プラスチックフィルムFの折返しをガイドするガイド棒31を、
図4に示す縦型充填包装設備1を構成する機械(縦シールロール対4、横シールロール対5、冷却ロール対6、切り離し手段7)の中心、とくに縦シールロール対4または横シールロール対5の噛み込み中心に一致するように設けることが好ましい。これにより、製袋ガイド3によって折り返されたプラスチックフィルムFは、蛇行することなく機械中心に沿って搬送方向に繰り出されることになり、縦シールロール対4や横シールロール対5によって形成されるシール部に、シワや依れ等が発生することがなく、シール不良の発生を効果的に阻止することができる。
【0036】
また、プラスチックフィルムFの幅方向中心位置を検知するための前記検知手段22とは別に、製袋ガイド3に検知手段をさらに設け、その両方によってプラスチックフィルムFの幅方向中心位置のずれを検知するようにしてもよい。
【0037】
次に、プラスチックフィルムFは、幅方向への折返しによって重なり合う側端部13どうしを、
図1において前後で一対の縦シールロール対4(水平面内で、図の前後方向で平行に延在する。図では手前側に位置する前方側のものだけを示す。)の回転下で、加熱、加圧することで、対面するシーラント層どうしを長手方向(縦方向)に連続して融着接合させて縦シール部15を形成し、これによって筒状体16を形成する。
【0038】
ここで、縦シールロール対4は、それらを相互に逆向きに等速で回転駆動させる、一の駆動モータおよび歯車機構(図示しない)と、一方(前方側)の縦シールロールの両端部を軸受け支持する軸受けブロックを、他方(後方側)の縦シールロールを軸受け支持する軸受けブロックに向けて押圧する一対の、たとえばエアシリンダを具えている。
【0039】
一対の縦シールロール対4は、その外周面に円形フランジ状のシールバー41を有するとともに、該シールバー41の加熱に寄与するヒータを内蔵している。一対の縦シールロール対4は、図示しない一対のシリンダによって前方側の縦シールロールを後方側の縦シールロールに向けて押圧することで、プラスチックフィルムFの重ね合わせた側端部13をシールバー41間に挟持し、加熱、加圧して合掌状に融着させて縦シール部15を形成するとともに、縦シールロール対4の回転に基づいて筒状体16を図の下方側へ繰り出し走行させる。
【0040】
本実施形態では、縦シールロール対4が、駆動手段を具える場合を例示しているが、縦シールロール対4には駆動手段を設けず、縦シールロール対4の上流位置および/または下流位置に駆動手段を有するフィードロールを設け、該フィードロールによってプラスチックフィルムFを繰り出すようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、三方シール形の包装袋を製造する場合を示しているが、四方シール形の包装袋を製造する場合には、縦シールロール対4に、プラスチックフィルムFの折返し部14位置をシールするためのシールバーをさらに設け、該縦シールロール対4によって、プラスチックフィルムFの重ね合わせた側端部13および折返し部14のそれぞれに縦シール部15を形成する。
【0042】
なお、
図1に示す実施形態では、1の巻き戻しロール12によってフィルム原反10から巻き戻された1枚のプラスチックフィルムFを、前記したように幅方向の中央位置で二つに折り返し、重なり合う側端部どうしを縦シールすることで筒状体に成形する場合を一例として示しているが、
図7に示す参考例のように2つの巻き戻しロール12、12’を使って、それぞれに装着されたフィルム原反10、10’から巻き戻された2枚のプラスチックフィルムF、F’を重ね合わせ、その両側端部を縦シールロール対4によって挟持しながら加圧、加熱し、長手方向に沿って縦シールすることで筒状体を形成することもできる。この場合には、2つの巻き戻しロール12、12’にそれぞれ移動手段21、21’を設けると共に、検知手段22a、22a’、22b、22b’によって、巻き戻し直後の2枚のプラスチックフィルムFの搬送経路および/または縦シールロール対4の入側の2枚のプラスチックフィルムF、F’の搬送経路を検知し、該検知手段22a、22a’、22b、22b’からの情報に基づき、制御部23によってフィルム原反10、10’をそれぞれ移動させて2枚のプラスチックフィルムF、F’の搬送経路を一致させることで、2枚のプラスチックフィルムF、F’を正確に重ね合わせることができることができる。
なお、前記プラスチックフィルムFの搬送経路は、例えば、プラスチックフィルムの幅方向の中心位置あるいは幅方向の側縁位置で検知すればよい。
【0043】
上記のようにして形成された筒状体16の内側へは、それぞれ図示しないタンクから図示しないポンプおよび供給路を介して、供給された被包装物Mが充填ノズル8から連続的に充填される。なお、被包装物Mは、固形物を含まない液状物や粘稠物の他、胡椒や胡麻などの穀物粒子や肉、魚、野菜などの固形物を含む液状物や粘稠物、塩や胡椒等の粉粒状物、流動性を有する固形物や半固形物(シリコンや練り物等)などの飲食品や化学品、医薬品等、各種のものを用いることができる。
【0044】
1対の横シールロール対5では、走行する筒状体16を挟持し、該筒状体16の長手方向に所定の間隔をおいて、充填ノズル8から充填された被包装物を絞り出しながら、その絞り出し位置を加熱および加圧して横シール部17を形成することで、上下端部が横シール部17によって、両側端部が縦シール部15と折返し部14によって包囲された包装袋Wを、プラスチックフィルムFの長手方向へ繋がった状態で製袋することができる。
【0045】
横シールロール対5は、
図1の前後方向に平行に延在させてあり(図では手前側に位置する前方側のものだけを示す。)、歯車組を介してモータで互いに逆向きにかつ等速で回転駆動するものである。例えば、該横シールロール対5については、その外周面上に等間隔に位置し、軸芯方向へ延在する複数本のヒートシールバー51を有し、対向するヒートシールバー51同士によって筒状体16を挟持し、加熱することで、筒状体16の走行方向と直交する方向に、その全幅にわたって横シール部17を形成することができる。
【0046】
なお、横シールロール対5は、筒状体16に向かって接近または離間する開閉動作に合わせ、プラスチックフィルムFの繰り出し方向に一定の間隔で上下動する昇降動作を組み合わせたボックスモーションの動作を行うものであることが好ましい。このボックスモーション形の横シールロール対5では、筒状体16を挟持して横シールしながら降下動作を行うため、横シール時間を十分に確保することができるため、横シール部17のシール強度を高めることができ、たとえプラスチックフィルムFに、アルミ箔や紙等のシーラント層への熱の伝わりを阻害するような材料が積層されていても、シール不良(液漏れや剥離等)の発生を阻止することができる。
【0047】
次に、1対の冷却ロール対6は、横シールロール対5と同じ間隔で軸芯方向へ延在する複数本のシールバー61を有し、横シールロール対5で形成された横シール部17部分を、冷却された該シールバー61によって押さえ付けることで、横シール部17を定着させて安定化させることができる。
【0048】
次に、冷却ロール対6を経て連続して製袋された包装袋Wは、ロータリーカッター等による切り離し手段7によって横シール部17の走行方向の略中間位置を幅方向にカットして一体ずつ、もしくは所要の複数体ずつに切り離したり、横シール部17の走行方向の略中間位置にミシン目を入れて複数体を繋げた状態で搬出される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、耳ずれの抑制された包装袋を効率的に製造し得る縦型充填包装設備が提供できる。
【符号の説明】
【0050】
1 縦型充填包装設備
2、2’ 天ロール
3 製袋ガイド
31 ガイド棒
4 縦シールロール対
41 シールバー
5 横シールロール対
51 シールバー
6 冷却ロール対
61 シールバー
7 切り離し手段
8 充填ノズル
10 フィルム原反
11 紙管
12、12’ 巻き戻しロール
13 側端部
14 折返し部
15 縦シール部
16 筒状フィルム
17 横シール部
20 ロール本体
21、21’ 移動手段
22、22a、22a’、22b、22b’ 検知手段
23 制御部
24 ストッパー
25 回転支持部
26 軸受け
27 制動手段または駆動手段
F、F’ プラスチックフィルム
W 包装袋
M 被包装物