(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】濃度測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20241001BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20241001BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/33
G01N21/05
(21)【出願番号】P 2023148657
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2020548491の分割
【原出願日】2019-09-17
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018179089
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100137648
【氏名又は名称】吉武 賢一
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】田中 一輝
(72)【発明者】
【氏名】平尾 圭志
(72)【発明者】
【氏名】薬師神 忠幸
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
(72)【発明者】
【氏名】山路 道雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/021311(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/017122(WO,A1)
【文献】特開2014-219294(JP,A)
【文献】特開2018-025499(JP,A)
【文献】特開2016-180728(JP,A)
【文献】特開2005-273496(JP,A)
【文献】特開平08-233799(JP,A)
【文献】特開2006-004799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0162930(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
F16J 15/00 - F16J 15/14
F02M 39/00 - F02M 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定流体が流れる流路を有する測定セルと、前記測定セルへの入射光を発する光源と、前記測定セルから出射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力に基づいて前記被測定流体の吸光度および濃度を演算する演算部とを有する濃度測定装置であって、
前記測定セルは、セル本体と、前記流路に接するように前記セル本体に固定される窓部と、前記流路を挟んで前記窓部に対向配置された反射部材であって、前記光源から前記窓部を介して前記測定セルに入射した光を反射させ、反射させた光を前記窓部を介して前記測定セルから出射させる反射部材とを有し、
前記窓部は、
前記窓部に接し前記窓部と前記セル本体とに挟持されたガスケットを介して
、窓押さえ部材によって
前記セル本体に対して固定されており、前記窓部の面は、前記流路の中心軸に直交する面に対して、1°以上5°以下の傾斜角で傾くように配置されており、
前記窓押さえ部材は、前記窓部を押さえる下面と、前記下面と対向する上面とが非平行に形成されており、前記光源に接続されたコリメータの中心軸が前記流路の中心軸と平行になるように前記窓押さえ部材の上面にコリメータが固定されている、濃度測定装置。
【請求項2】
前記窓部の径は、前記測定セルの流路の径よりも大きく、前記窓押さえ部材の径は、前記窓部の径よりも大きい、請求項1に記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記測定セルの流路を往復した光の強度を測定する前記光検出器の検出信号に基づいて、ランベルト・ベールの法則に従って、流体濃度を求めるように構成されている、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記測定セルの両端部において前記流路に連通する流入口と流出口とが設けられており、前記流入口と流出口とは前記流路の長手方向横側の第1の側と前記第1の側に対向する第2の側とに設けられ、これによって縦型の測定セルが形成されている、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記光源と前記測定セルとは光ファイバを含む導光部材によって離間して設けられ、前記光源は複数の波長の紫外光を合成するように構成されており、前記反射部材は、アルミニウムを含む材料から形成された反射層または誘電体多層膜からなる反射層を含む、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記窓部の面は、前記流路の中心軸に直交する面に対して、2°以上4°以下の傾斜角で傾くように配置されている、請求項1または2に記載の濃度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃度測定装置に関し、特に、測定セル内を通過した光の強度を検出することによって被測定流体の濃度を測定する濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機金属(MO)等の液体材料や固体材料から形成された原料ガスを半導体製造装置へと供給するガス供給ラインに組み込まれ、ガス供給ラインを流れるガスの濃度を測定するように構成された濃度測定装置(いわゆるインライン式濃度測定装置)が知られている。
【0003】
この種の濃度測定装置では、被測定流体が流れる測定セルに、入射窓を介して光源から所定波長の光を入射させ、測定セル内を通過した透過光を受光素子で受光することにより吸光度を測定する。また、測定された吸光度から、ランベルト・ベールの法則に従って被測定流体の濃度を求めることができる(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
なお、本明細書において、内部に導入された被測定流体の濃度を検出するために用いられる種々の透過光検出構造を広く、測定セルと呼ぶことにする。測定セルには、ガス供給ラインから分岐して別個に配置されたセル構造だけでなく、特許文献1に示されるようなガス供給ラインの途中に設けられたインライン式の透過光検出構造も含まれる。
【0005】
特許文献2には、測定セルの端部に反射部材を設け、測定セル内を一往復した光の吸光度に基づいて測定セル内を流れる流体の濃度を検出する、反射型の濃度測定装置が開示されている。また、特許文献3には、測定セルの下流側に圧力センサを設けて、光検出器の出力から被測定流体の吸光度を求めるとともに、吸光度と圧力センサの出力とに基づいて被測定流体の濃度を演算する濃度測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-219294号公報
【文献】国際公開第2018/021311号
【文献】特開2018-25499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インライン式濃度測定装置において、内部に流路が形成された測定セルを適切にシールするためには、光入射用または光出射用の窓部を、セル本体の端部において気密に固定する必要がある。しかしながら、従来のように窓押さえ部材を用いて窓部の固定を行う場合、セル本体の支持面にシール用の環状突起を設けると、締め付け時に環状突起が窓部によって圧潰し、窓部の交換を行った後にはシール性が低下し得るという問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、シール性が良好であり、また、再使用性が向上したメンテナンスのしやすい濃度測定装置を提供することをその主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による濃度測定装置は、被測定流体が流れる流路を有する測定セルと、前記測定セルへの入射光を発する光源と、前記測定セルから出射した光を検出する光検出器と、前記光検出器の出力に基づいて前記被測定流体の吸光度および濃度を演算する演算部とを有する濃度測定装置であって、前記測定セルは、セル本体と、前記流路に接するように前記セル本体に固定される窓部と、前記流路を挟んで前記窓部に対向配置された反射部材であって、前記光源から前記窓部を介して前記測定セルに入射した光を反射させ、反射させた光を前記窓部を介して前記測定セルから出射させる反射部材とを有し、前記窓部は、前記セル本体に、ガスケットを介して窓押さえ部材によって固定されており、前記窓部を支持する前記ガスケットの第1の面には環状のシール用突起部が設けられ、前記ガスケットの前記第1の面と反対側の第2の面を支持する前記セル本体の支持面にも環状のシール用突起部が設けられ、前記窓押さえ部材によって前記窓部が前記セル本体に押圧されたときに、前記ガスケットの前記第1の面に設けられたシール用突起部が変形するとともに、前記セル本体の前記支持面に設けられた前記シール用突起部によって前記ガスケットの前記第2の面が変形するように構成されている。
【0010】
ある実施形態において、前記流路の中心軸に直交する面に対して、前記窓部の面は1°以上5°以下の傾斜角で傾くように配置されている。
【0011】
ある実施形態において、前記窓押さえ部材は、前記窓部を押さえる下面と、前記下面と対向する上面とが非平行に形成されており、前記光源に接続されたコリメータの中心軸が前記流路の中心軸と平行になるように前記窓押さえ部材の上面にコリメータが固定されている。
【0012】
ある実施形態において、前記演算部は、前記測定セルの流路を往復した光の強度を測定する前記光検出器の検出信号に基づいて、ランベルト・ベールの法則に従って、流体濃度を求めるように構成されている。
【0013】
ある実施形態において、前記測定セルの両端部において前記流路に連通する流入口と流出口とが設けられており、前記流入口と流出口とは前記流路の第1の側と前記第1の側に対向する第2の側とに設けられ、これによって縦型の測定セルが形成されている。
【0014】
ある実施形態において、前記光源と前記測定セルとは光ファイバを含む導光部材によって離間して設けられ、前記光源は複数の波長の紫外光を合成するように構成されており、前記反射部材は、アルミニウムを含む材料から形成された反射層または誘電体多層膜からなる反射層を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施形態によれば、窓部の交換等を行った時にもシール性を維持することができ、メンテナンス性の向上した濃度測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態による濃度測定装置の全体構成を示す模式図である。
【
図3】測定セルの端部を拡大して示す図であり、窓押さえ部材によって窓部がガスケットを介してセル本体に取り付けられている状態を示す。
【
図4】窓押さえ部材を示す図であり、(a)は平面図、(b)はb-b線断面図、(c)はc-c線断面図である。
【
図5】(a)は、測定セルの窓部の近傍を拡大して示す模式図であり、(b)は、締め付け前、締め付け後、取り外し時におけるガスケット等の形状を示す模式図である。
【
図6】窓部の傾斜角を0°、1°、2°としたときの迷光の割合を示すグラフである。
【
図7】迷光を測定するのに用いた濃度測定装置の構成を示す図である。
【
図8】窓部の傾斜角を2°に設定したときにおける、反射防止膜(ARコート)を設けた場合と、設けなかった場合とでの迷光の割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による濃度測定装置100の全体構成を示す模式図である。濃度測定装置100は、ガス供給ラインに組み込まれる測定セル4を有する高温ガスユニット50と、高温ガスユニット50と離して配置され光源1および演算部8などを含む電気ユニット52とを備えている。高温ガスユニット50と電気ユニット52とは、光ファイバ10aおよびセンサケーブル10bによって接続されている。
【0019】
高温ガスユニット50は、被測定流体の種類によって例えば100℃~150℃程度にまで加熱される可能性があるが、これと離間する電気ユニット52は典型的には室温(クリーンルーム雰囲気等)に維持されている。被測定流体としては、例えば、トリメチルガリウム(TMGa)やトリメチルアルミニウム(TMAl)等の有機金属材料を含んだプロセスガスが挙げられる。なお、ここでは「高温ガスユニット」としているが、必ずしも高温になるとは限らず、常温(室温)や常温以下のガスを用いる場合は、高温にならない(加熱しない)状態で使用する場合もある。
【0020】
また、図示する態様において、電気ユニット52には、デバイスネット通信などによって、外部制御装置54が接続されている。外部制御装置54は、濃度測定装置100に動作制御信号を送信したり、濃度測定装置100から測定濃度信号を受信したりすることができる。
【0021】
高温ガスユニット50には、被測定流体の流入口4a、流出口4bおよび長手方向に延びる流路4cを有し、流路4cに接する透光性の窓部(透光性プレート)3が設けられた測定セル4が設けられている。また、測定セル4には、入射した光を反射させるための反射部材5が設けられている。本明細書において、光とは、可視光線のみならず、少なくとも赤外線、紫外線を含み、任意の波長の電磁波を含み得る。また、透光性とは、測定セル4に入射させる前記の光に対する内部透過率が濃度測定を行い得る程度に十分に高いことを意味する。
【0022】
測定セル4の窓部3は、窓押さえ部材30によってセル本体40に固定されており、窓押さえ部材30には、光ファイバ10aが接続されたコリメータ6が取り付けられている。コリメータ6は、コリメータレンズ6aを有しており、光源1からの光を測定セル4に平行光として入射させることができ、また、コリメータ6は、反射部材5からの反射光を受光することができる。コリメータ6は、測定セル4を流れる被測定対象のガスが高温のときにも破損なく高精度に濃度測定を行えるように設計されている。
【0023】
また、本実施形態では、高温ガスユニット50において、測定セル4内を流れる被測定流体の圧力を検出するための圧力センサ20が設けられている。圧力センサ20は、本実施形態では、測定セル4の流出口4bの下流側に配置されているが、測定セル4の上流側に設けられていてもよいし、測定セル4の流路4cの途中に設けられていてもよい。圧力センサ20は、測定セル4内の流路4cに存在する流体の圧力を測定できる限り、任意の態様を有していてよく、公知の種々の圧力センサを利用することができる。また、測定セル4には、被測定流体の温度を測定するための温度センサ11(ここでは測温抵抗体)が設けられている。圧力センサ20および温度センサ11の出力は、センサケーブル10bを介して電気ユニット52に入力される。温度センサ11は、本実施形態では流出口4bの近傍に配置されているが、流路4c内に存在する流体の温度が測定できれば良く、流入口4a付近、あるいは、圧力センサ20の近傍や窓部3に設置されていても良い。
【0024】
電気ユニット52には、測定セル4内に入射させる光を発生する光源1と、測定セル4から出射した光を受光する測定光検出器7と、測定光検出器7から出力される、受光した光の強度に応じた検出信号に基づいて被測定流体の濃度を演算するように構成された演算部8と、光源1からの参照光を受光する参照光検出器9とが設けられている。
【0025】
本実施形態では、測定光検出器7と参照光検出器9とがビームスプリッタ12を挟んで対向して配置されている。ビームスプリッタ12は、光源1からの光の一部を参照光検出器9に入射させ、また、測定セル4からの検出光を測定光検出器7に入射させる。測定光検出器7および参照光検出器9を構成する受光素子としては、例えばフォトダイオードやフォトトランジスタが好適に用いられる。
【0026】
演算部8は、例えば、回路基板PCB上に設けられたプロセッサやメモリなどによって構成され、入力信号に基づいて所定の演算を実行するコンピュータプログラムを含み、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって実現され得る。
【0027】
光源1は、本実施形態では、2つの発光素子13A、13Bを用いて構成されており、発光素子13A、13Bは互いに異なる波長の紫外光を発するLEDである。発光素子13A、13Bには、発振回路を用いて異なる周波数の駆動電流が流され、周波数解析(例えば、高速フーリエ変換やウェーブレット変換)を行うことによって、測定光検出器7が検出した検出信号から、各波長成分に対応した光の強度を測定することができる。発光素子13A、13Bが発する光は、WDM(波長分割多重方式)の合波器14によって合成されて測定セル4に入射される。発光素子13Aの光の波長は例えば300nmであり、発光素子13Bの光の波長は例えば365nmである。発光素子13A、13Bとしては、LED以外の発光素子、例えばLD(レーザダイオード)を用いることもできる。また、複数の異なる波長の合波光を光源に用いる代わりに、単一波長の光源を利用することもでき、この場合、合波器や周波数解析回路は省略することができる。発光素子は、3つ以上設けられていてもよいし、設けたうちの選択された任意の発光素子のみを用いて入射光を生成するように構成されていてもよい。また、合波器14には図示するように測温抵抗体14aが取り付けられていてもよい。さらに、発光素子が発する光は、紫外光に限られず、可視光や赤外光であっても良い。
【0028】
濃度測定装置100において、光源1と測定セル4とは、導光部材である光ファイバ10aによって接続されている。光源1からの光は、光ファイバ10aによって測定セル4の窓部3に導光される。また、光ファイバ10aは、反射部材5によって反射された光を測定光検出器7に導光する機能も兼ね備えている。光ファイバ10aは、入射光用の光ファイバと検出光用の光ファイバとを含むものであってもよいし、光ファイババンドルの態様で提供されるものであってもよい。
【0029】
図2は、測定セル4のより詳細な構成を示す断面図である。測定セル4は、ステンレス製のセル本体(セルブロック)40において形成されており、セル本体40には、ガスケット等を介して後段ブロック45が接続されている。後段ブロック45の流路には圧力センサ20が取り付けられており、被測定流体の圧力を測定することができる。
【0030】
測定セル4の流入口4aと流出口4bとは流路4cの両側(図面における流路4cの右側と左側)に配置され、ガス供給ラインに組み込まれたときに、濃度測定装置100は全体として水平方向にガスを流すように構成されているのに対して、流路4cは、ガス供給ラインにおける全体の流れ方向に直交する方向に延びている。本明細書では、このような構成を、縦型の測定セル4と呼んでいる。縦型の測定セル4を用いれば、ガス供給ラインに組み込まれたときに省スペース化を実現できるとともに、メンテナンスがしやすいという利点が得られる。なお、図示する測定セル4では、流入口4aが反射部材5の近傍に配置され、流出口4bが窓部3の近傍に配置されているが、他の態様において、流入口4aが窓部3の近傍に配置され、流出口4bが反射部材5の近傍に配置されていてもよく、また流路4cは必ずしも全体の流れ方向に対して直交する方向に延びなければならないと言う事はない。
【0031】
上記の縦型の測定セル4において、窓部3は、窓押さえ部材30によって、リング状のガスケット15を介して、セル本体40の上面に設けられた取り付け凹部の支持面に固定されている。ここで、窓部3は、流路4cの中心軸4xに直交する面(ここでは水平面)に対して、0°超10°以下、好適には1°以上5°以下、より好適には、2°以上4°以下の傾斜角で窓面が傾くように配置されている。このことを実現するために、上記のセル本体40の窓部3の支持面も、中心軸4xに直交する面に対して傾くように形成されており、本実施形態では、窓部3およびガスケット15を収容するセル本体40の上面の取り付け凹部の全体が中心軸4xから傾くように形成されている。
【0032】
同様に、窓部3の窓押さえ部材30の下面(窓部3を押さえる面)は水平面に対して傾きを有して配置されているが、一方で、窓押さえ部材30の上面は、中心軸4xに直交する面と平行な水平面をなすように配置されている。すなわち、窓押さえ部材30の上面30Uと下面30Dとは非平行に形成されている(
図4(c)参照)。そして、コリメータ6は、窓押さえ部材30の上面である水平面に固定されており、コリメータ6の光軸と流路の中心軸4xとは一致している。
【0033】
この構成において、窓部3を傾けて配置することによって、窓部3の両側面で反射した光が検出光としてコリメータ6に入射することが抑制されるので測定精度を向上させ得る。一方で、コリメータ6の光軸は流路中心軸4xと一致しているので、流路4cに沿ってまっすぐに入射光を入れることができる。
【0034】
窓部3としては、紫外光等の濃度測定に用いる検出光に対して耐性および高透過率を有し、機械的・化学的に安定なサファイアが好適に用いられるが、他の安定な素材、例えば石英ガラスを用いることもできる。測定セル4のセル本体40(流路形成部)は例えばSUS316L製であってよいし、流通する被測定流体によっては、SUS316Lのようなステンレス鋼以外の金属や非金属、非鉄金属材料等を用いても良い。
【0035】
また、測定セルの窓部3の反対側の端部に配置された反射部材5は、押さえ部材32によって、ガスケット16を介して、セル本体40の下面に設けられた取り付け凹部の支持面に固定されている。反射部材5の反射面は、入射光の進行方向または流路の中心軸4xに対して垂直になるように設けられており、反射光は入射光と実質的に同じ光路を通って窓部3へと反射される。反射部材5は、例えば、サファイアプレートの裏面にスパッタリングによって反射層としてのアルミニウム層が形成された構成を有していてもよい。ただし、反射部材5は、サファイアプレートの裏面に反射ミラーが配置された構成を有していてもよい。また、反射部材5は、反射層として誘電体多層膜を含むものであってもよく、誘電体多層膜を用いれば、特定波長域の光(例えば近紫外線)を選択的に反射させることができる。誘電体多層膜は、屈折率の異なる複数の光学被膜の積層体(例えば、高屈折率薄膜と低屈折率薄膜との積層体)によって構成されるものであり、各層の厚さや屈折率を適宜選択することによって、特定の波長の光を反射したり透過させたりすることができる。また、誘電体多層膜は、任意の割合で光を反射させることが出来るため、例えば、入射光が反射部材5によって反射される際、入射した光を100%反射するのではなく、一部(例えば10%)は透過するようにし、反射部材5の下部に設置した光検出器または光検出器に接続された光学機器によって、透過した光を受光することもできる。反射部材5を透過した光は参照光として利用することができ、上記の光検出器を
図1に示した参照光検出器9の代替とすることも可能である。
【0036】
以上に説明した測定セル4において、測定セル4内を往復する光の光路長は、窓部3の表面と反射部材5の表面との距離の2倍によって規定することができる。濃度測定装置100において、測定セル4に入射され、その後、反射部材5によって反射された光は、測定セル4内の流路4cに存在するガスによって、ガスの濃度に依存した大きさで吸収される。そして、演算部8(
図1参照)は、測定光検出器7からの検出信号を周波数解析することによって、当該吸収波長での吸光度Aを測定することができ、さらに、以下の式(1)に示すランベルト・ベールの法則に基づいて、吸光度Aからガス濃度Cを算出することができる。
A=-log
10(I/I
0)=αLC ・・・(1)
【0037】
上記の式(1)において、I0は測定セルに入射する入射光の強度、Iは測定セル内のガス中を通過した光の強度、αはモル吸光係数(m2/mol)、Lは光路長(m)、Cは濃度(mol/m3)である。モル吸光係数αは物質によって決まる係数である。
【0038】
なお、上記式における入射光強度I0については、測定セル4内に吸光性のガスが存在しないとき(例えば、紫外光を吸収しないパージガスが充満しているときや、真空に引かれているとき)に測定光検出器7によって検出された光の強度を入射光強度I0と見なしてよい。
【0039】
測定セル4の光路長Lは、上記のように、窓部3と反射部材5との距離の2倍として規定することができるので、光入射窓と光出射窓とを測定セルの両端部に備える従来の濃度測定装置に比べて、2倍の光路長を得ることができる。これにより、小型化したにも関わらず、測定精度を向上させることができる。また、濃度測定装置100では、測定セル4の片側に設けた1つの窓部3を介して1つの光学機器のみを用いて光入射および受光を行うので、部品点数を削減することができる。
【0040】
さらに、濃度測定装置100では、圧力センサ20が設けられており、測定セル4内のガスの圧力を測定することができる。したがって、圧力センサ20からの出力に基づいて、光検出器の出力によって測定された吸光度を所定圧力(例えば、1気圧)のときの吸光度に補正することができる。そして、補正した吸光度に基づいて、特許文献3に記載の濃度測定装置と同様に、ランベルト・ベールの法則から、被測定流体の濃度を演算により求めることができる。このように、演算部8が、測定光検出器7および圧力センサ20を用いて被測定流体の濃度を演算するので、濃度測定をより精度よく行うことができる。なお、測定セル4を流れるガスの温度を測定する温度センサ11をさらに設けているので、温度による補正をさらに行って濃度検出を行うこともできる。
【0041】
以下、ガスケット15を用いたセル本体40への窓部3の取り付け態様を詳細に説明する。
図3に示すように、窓部3は、金属製のガスケット15を介してセル本体40の支持面42に支持され、傾いた角度で固定されている。本実施形態では、窓部3の窓面法線方向3xと、流路4cの中心軸4x(またはコリメータ6の光軸)とがなす角度が2°に設定されている。
【0042】
図4は、窓押さえ部材30の構成を示す図であり、
図4(a)は平面図、
図4(b)はb-b線断面図、
図4(c)はc-c線断面図である。
図4(a)~(c)に示すように、窓押さえ部材30は、コリメータ6を挿入するための挿入孔6Hや、窓押さえ部材30をセル本体40に固定するための取付孔30Hを有している。また、
図4(c)に示すように、窓押さえ部材30の上面30Uと下面30Dとは非平行に形成されており、互いに対して2°傾いている。このため、下面30Dの法線方向(窓部3の窓面法線方向3xに対応)と上面30Uの法線方向(流路中心軸4xに対応)とは2°異なるものとなっている。
【0043】
再び
図3を参照して、窓部3は、窓押さえ部材30により、セル本体40に対して押圧されている。窓押さえ部材30は、セル本体40に対して、
図4に示した取付孔30Hを貫通する図示しない固定ネジの締め付けにより固定されており、これらの接触面はO-リング34によってシールされている。
【0044】
図5(a)および(b)に模式的に示すように、窓押さえ部材30をセル本体40に固定ネジの締め付けにより固定する前の状態において、ガスケット15の上面、すなわち、窓部3と接する面(第1の面と呼ぶことがある)には、環状の突起部15aが形成されている。一方、ガスケット15の下面、すなわち、セル本体40の支持面42と接する面(第2の面と呼ぶことがある)には、突起部は設けられておらず平坦な面に形成されている。窓部3は、例えば直径16mm、厚さ1.8mmの寸法を有するサファイア製の円形プレートであり、ガスケット15は、外径16mm、内径11.5mm、厚さ1.8mmの寸法を有するステンレス製(例えばSUS316L製)のリング部材である。ガスケット15の上面に設けられる環状の突起部15aは、例えば12.6mmの径を有し、頂部面(シール面)の幅が0.35mm、高さ0.1mm程度に形成されていてよい。
【0045】
また、本実施形態では、セル本体40の支持面42にも環状の突起部42aが設けられる。さらに、窓押さえ部材30において、窓部3と対向しガスケット15を支持する支持面にも環状の突起部30aが形成されている。環状の突起部42a、30aの寸法は、ガスケット15に設けた環状の突起部15aと同様の寸法であってよい。
【0046】
図5(b)に示すように、窓部3およびガスケット15を挟み込んだ状態で窓押さえ部材30をセル本体40に対して固定ネジの締め付けなどによって押圧すると、ガスケット15の上面の突起部15aが窓部3によって圧潰するとともに、ガスケット15の下面はセル本体40の突起部42aによってへこみが生じる。また、窓押さえ部材30の下面の突起部30aも圧潰する。この状態において、高いシール性が実現される。ガスケット15は、窓部3よりも硬度が低い材料から形成されていることが好ましく、また、セル本体40の突起部42aによって変形可能な程度の硬さであることが好ましい。
【0047】
さらに、
図5(b)に示すように、窓部3を取り外す場合、ガスケット15は変形しているものの、セル本体40の突起部42aは、ほとんど変形していない状態に保たれている。このため、ガスケット15を新しいものと取り換えることにより、再度、窓部3を固定したときにも高いシール性を実現することができる。したがって、ガスケット15の交換だけで済むため、低コストでメンテナンス性に優れた構成となっている。
【0048】
なお、窓部3として石英ガラスを用いている場合、高腐食性又は高析出性を有する有機原料ガスの濃度測定においては、窓部3が腐食され、又は原料の析出によりその透明度が早期に低下することになる。窓部3をサファイア製にすれば、光透過率の低下が抑制されるが、長期の使用においては、やはり透過率の低下は避けられない。このときにも、上記のガスケット15を用いて窓部3を固定しておくことによって、窓部3を交換または洗浄するとともにガスケット15を交換して再度セル本体40に固定し、高いシール性を維持しながら透過率を改善することができる。このような窓部3の交換は、セル本体40をガス流路に組み込んだまま実行することができるので、メンテナンス性が良好である。
【0049】
また、上記の態様において、窓押さえ部材30の下面の突起部30aも圧潰するので、窓部3の交換の際には、窓押さえ部材30も新しいものに取り換えてもよい。あるいは、窓押さえ部材30と窓部3との間に、ガスケット15と同様の構成を有するガスケットを表裏を反対にして取り付けておき、窓押さえ部材30の突起部の圧潰を防止し、窓部3の取り換えの際には窓部3を挟む2枚のガスケットを取り換えるようにしてもよい。
【0050】
また、
図2に示したように、濃度測定装置100では、反射部材5も、押さえ部材32によって、ガスケット16を挟んでセル本体40の下面に固定されている。この構成において、窓部3の固定態様と同様に、ガスケット16の反射部材5を支持する面のみに環状の突起部を設け、また、セル本体40の支持面にも環状の突起部を設けておくことで、ガスケット16を新しいものと交換すれば、反射部材5の交換後にも高いシール性を確保することができる。
【0051】
次に、
図6~
図8を参照して、上記のように窓部3を傾けて配置させたときの効果について説明する。
【0052】
図6は、窓部3の傾斜角(流路の中心軸4xまたはコリメータ6の光軸と、窓部3の窓面法線方向3xとがなす角)を、0°、1°、2°としたときの迷光の割合を示すグラフである。なお、迷光とは、測定セル内の流路において、入射した光が様々な部分に反射する不必要な光のことである。これらの光が、測定器等に入る事で、測定結果に誤差を生じさせるため、これを排除することが必要となる。
【0053】
図6において、上段には波長300nmの紫外光を用いた場合、下段には波長365nmの紫外光を用いた場合の迷光測定結果を示す。また、各グラフにおいて、2種類4つのコリメータC1~C4と、3種類の測定セルCe1~Ce3(傾斜角が2°、1°、0°の3種類)とを用いて各々3回ずつ試験を行った結果が示されている。200/200μmで示すコリメータC1、C2は、
図7に示すような入射光と検出光とを異なる光ファイバ10c、10dで導光する場合のファイバ径がいずれも200μmであるコリメータであり、また、200/400μmで示すコリメータC3、C4は、入射光の光ファイバ10cの径が200μm、検出光の光ファイバ10dの径が400μmであるコリメータである。
【0054】
また、
図6のグラフは、窓部3(ここではサファイアプレート)のコリメータ側の表面に、反射防止膜(ARコート)を設けたときの結果を示している。ARコートを設ければ、コリメータ側の窓部表面での反射は大きく抑制されると考えられる。ただし、窓部3の反対側の面(ガスと接する面)にARコートを設けることはガスへの汚染の問題等が生じるため困難である。このため、窓部3の反対側の面からの迷光が生じている。
【0055】
図6に示されるように、いずれの波長(300nm/365nm)の紫外光を入射させたときにも、傾斜角0°の場合には、迷光の割合(%)が相当に大きいのに対して、傾斜角1°の場合に、十分に迷光が抑制され、傾斜角2°の場合には、さらに迷光が抑制されることがわかる。ここで、迷光の割合とは、測定セル4には入射せずに窓部3で反射することによって直接コリメータ6に入射された光の強度の入射光強度に対する割合を示している。迷光割合の測定は、測定セル4の反射部材5を取り外して、検出光強度を測定することによって行うことができる。
【0056】
以上の結果から、好適には1°以上、より好適には2°以上の傾斜角を窓部3に持たせることによって、迷光を好適に低減できることがわかる。また、傾斜角を大きくするほど迷光の割合は低下すると考えられるが、傾斜角が大きすぎると屈折や反射により検出光の強度も低下するため、傾斜角は大きすぎないことが求められる。この観点から、窓部3の傾斜角は、10°以下、好適には5°以下、より好適には、4°以下であることが好ましい。
【0057】
また、
図8は、窓部3の傾斜角を2°に設定したときの、AR有り/無しでの迷光の割合を示す。
図8には、2つのサンプル(a)、(b)におけるAR有りの場合と無しの場合について、波長300nm、365nmの入射光で試験を行った結果が示されている。
図8からわかるように、傾斜角を2°に設定したときには、ARコートを設けなくても、迷光割合は1%以下となり、十分に迷光を抑制することができる。したがって、適切な傾斜角で窓部3を配置すれば、ARコートを形成するコストや手間を省略することができるという利点も得られる。
【0058】
以上、本発明の実施形態による濃度測定装置を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定解釈されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、測定に用いられる光としては、紫外領域以外の波長域の光も利用可能である。また、上記実施形態では、対象となる被測定流体(ガス)は加熱されているとしているが、被測定流体は加熱された流体に限定されることなく、気体として流路を流通する事が出来るものであれば、どのようなものでも良い。さらに、
図2及び
図3では、傾斜は右肩上がりに形成されているが、傾斜の方向はどのような方向でも良く、例えば
図2及び
図3とは反対となる、右肩下がりに傾斜を構成しても良いし、その他の方向に傾斜するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の実施形態にかかる濃度測定装置は、半導体製造装置などに用いられるガス供給ラインに組み込まれて、流路を流れるガスの濃度を測定するために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1 光源
3 窓部
4 測定セル
4a 流入口
4b 流出口
4c 流路
5 反射部材
6 コリメータ
7 測定光検出器
8 演算部
9 参照光検出器
10a 光ファイバ
10b センサケーブル
15 ガスケット
15a 突起部
16 ガスケット
20 圧力センサ
30 窓押さえ部材
32 押さえ部材
40 セル本体
42 支持面
42a 突起部
45 後段ブロック
50 高温ガスユニット
52 電気ユニット
54 外部制御装置
100 濃度測定装置