(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】転写箔
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20241001BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/00 M
B41M5/00 700
(21)【出願番号】P 2023211101
(22)【出願日】2023-12-14
【審査請求日】2023-12-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391005097
【氏名又は名称】株式会社ニッカテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】中山 仁
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-192895(JP,A)
【文献】特開2023-139482(JP,A)
【文献】特開2023-146274(JP,A)
【文献】特開平11-115325(JP,A)
【文献】特開2010-137495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、
転写積層とを備え、
前記転写積層は、
前記基材フィルム上に形成された剥離層と、
前記剥離層上に形成された第1樹脂系保護層と、
前記第1樹脂系保護層上に形成された
金属層と、
前記金属層上に形成された接着層とを含み、
前記第1樹脂系保護層は、可塑剤を含有し、紫外線硬化樹脂及び熱硬化樹脂の重層を含
み、
前記転写積層は、凹凸のある畝皺状の立体構造を有する、転写箔。
【請求項2】
請求項
1に記載の転写箔であって、
前記転写積層はさらに、
前記金属層と前記接着層との間に形成された第2樹脂系保護層を含む、転写箔。
【請求項3】
請求項1に記載の転写箔であってさらに、
前記基材フィルムと前記剥離層との間に形成されたフィルム保護層を備える、転写箔。
【請求項4】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記可塑剤は、
トルエンスルホンアミド系可塑材及びエチレンオレフィン系可塑材を含む、転写箔。
【請求項5】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層に対する前記
トルエンスルホンアミド系可塑剤の含有率は0.01~20重量%であ
り、前記第1樹脂系保護層に対する前記エチレンオレフィン系可塑剤の含有率は0.01~0.025重量%である、転写箔。
【請求項6】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層の厚さは1~20μmである、転写箔。
【請求項7】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層は1種以上のアクリル系樹脂を含有する、転写箔。
【請求項8】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層は硬化剤を含有する、転写箔。
【請求項9】
請求項1に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層は呈色剤を含有する、転写箔。
【請求項10】
請求項
9に記載の転写箔であって、
前記呈色剤は、10~120nmの粒径を有する顔料を含む、転写箔。
【請求項11】
請求項
10に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層は光安定剤を含有する、転写箔。
【請求項12】
請求項
10に記載の転写箔であって、
前記第1樹脂系保護層は紫外線吸収剤を含有する、転写箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は転写箔に関し、より具体的には、転写積層からなる修飾積層を含む転写箔に関する。
【背景技術】
【0002】
熱圧転写法等によって形成される樹脂系成形品の表装修飾としての転写箔は、基材フィルム上に順に形成された、保護層、剥離層、樹脂系保護層又は呈色樹脂系保護層、金属蒸着層、樹脂系保護層、及び接着層を含む。各層は選択的に形成されるほか、樹脂系保護層、呈色樹脂系保護層等は一緒に重層して塗布することにより形成される。熱圧転写法によると、被転写体上に接着層を向けて転写積層のあるフィルムを配置し、基材フィルム上から熱圧転写装置による加圧加熱を行い、転写積層を転移させた後、基材フィルムを引き剥がす。これによって、被転写体の表面は転写積層(修飾積層)による転移が行われ、被転写体は転写積層によって装飾される修飾品となる。
【0003】
樹脂系成型品等において、その表装修飾方法として、基材フィルムに剥離層、樹脂系保護層、金属蒸着層、接着層を重ね転写積層を持つ転写箔を作製して、樹脂系成形品等をはじめとする各種被転写体の表層を熱圧転写手段によってその表装を修飾する方法がある。
【0004】
基材フィルムに前記積層を持つ転写箔を用いて、被転写体となる樹脂系成形品はじめとする表層に接着層を合わせ、基材フィルム側から、転写機による。ゴム系ロール版、金属系平版30、凸版40等の形象熱媒体を選択して、加圧、加熱して樹脂系成型品等上、又は金属類、ガラス類、木材類、繊維類、紙類、若しくはゴム類上へ、剥離層、樹脂系保護層、金属蒸着層、及び接着層からなる転写積層を転移させた後、基材フィルムを取り去る。これによって樹脂系成形品をはじめとする被転写体上への表装への転写をなし、その材の表装の修飾をすることができる。
【0005】
特開昭56-53086号公報(特許文献1)は、転写絵付けにおける被転写体の保護用転写箔を開示する。この転写箔は、ベースシート上に形成された剥離層と、剥離層上に形成された第1の保護層と、第1の保護層上に形成された第2の保護層と、第2の保護層上に形成された着色層と、着色層上に形成された接着層とを含む。着色層は、熱可塑性アクリル樹脂、合成ゴム、及び塩化ビニル系樹脂を含有する。硬化性の第1及び第2の保護層と、可塑性の着色層及び接着層とが連層されている。第2の保護層と着色層との界面において、転写時又は経時に、被転写体及び転写箔が伸張又は収縮されようとすると、保護層の硬化性膜と着色層の可塑性膜との界面において、各層の弾性を転写負担として考慮にいれると、着色層に投入されている合成ゴムの可逆的な弾性及び収縮に対して保護膜を構成している層は硬化性膜として設定されている。着色層の収縮に対する保護層の硬化性膜の追従性については、膜の破断への影響について、回避に問題が残る。
【0006】
また、汎用の転写箔は次のような構成を有する。転写箔の一例を確認すると、基材フィルムに対して、剥離層、保護層、呈色層、金属蒸着層、及び接着層を含む転写箔において、転写時においても、転写後の経時においても、各種の不具合が存在する。熱圧転写時において起こる不具合としては、転写膜の破断精度の不良、クラック、割れ、層間密着不良、転写耐熱不良などの発生がある。転写後の経時によって起こる変化については、曝露下における環境の温度、湿度等の影響を被って発生するものとして、剥がれ、亀裂、膨れ等を生成する。光による褪色劣化等が起こるおそれがある。
【0007】
転写機を使った熱圧転写方法によると、加熱、加圧によって基材フィルム、剥離層、樹脂系保護層、呈色樹脂系保護層、金属蒸着層、樹脂系保護層、接着層等には負荷が生じる。転写積層や被転写体の転写時の熱圧力によって引き起こされる伸張や収縮、被圧等によって対応に差が生じる。樹脂系の層は伸張し易く、金属層は伸張し難い。樹脂系の層の伸張は金属層への引っ張り応力が懸かるものとなり、弾性率の高い金属層は凝集破壊が起こり、クラック、割れ、膨れ等が生じる。この不具合によって光反射層としての金属蒸着層の輝度が損なわれ、減衰する。修飾性のある光沢性が損なわれるおそれがある。
【0008】
基材フィルムから転写層を剥離する意味においては、フィルムを介しての層としては熱圧伝播される際に熱圧の吸収性を敏感にして感熱感圧性を引き下げることで剥離効果を示している。接着層は感熱感圧での低温感作に優れる樹脂を選択的に採用して機能させている。樹脂系保護層においては転写後の転写表層の物理的、化学的な影響を排除するために膜の耐性を高めている。呈色樹脂系保護膜は呈色剤を含有させ、呈色効果を表し、褪色変色を防ぐ膜の構成を形成している。金属蒸着層はメタライジング効果として使用金属の堆積層の膜反射としての光輝性を持つものや、海島状に点在化させた製膜、多重化製膜なるものがある。剥離層、接着層はより低温に、保護層、蒸着保護層、蒸着層はより高温にシフトしている。このことにより基材フィルムをはじめとして転写積層は熱圧転写によって起こる熱圧伝播により起こる転写積層、被転写体の伸張収縮は一様ではない。弾性の高い金属蒸着層への負荷が高くなり、転写層のクラック、割れ、膨れ等に繋がる結果となり、輝度の落ち込み、光沢の減衰へと進行するおそれがある。
【0009】
金属蒸着層の金属の伸張性が低い場合、転写の際の転写層に生じる転写積層に対して起こる伸張によって金属層の凝集性が破壊される。そのため、修飾積層のある転写層へはクラック、割れ、膨れの発現となる。樹脂系保護層の伸張性が高い場合、金属蒸着層の凝集性への影響は緩和できるが、転写時の加熱加圧による起こる保護層の伸張によって金属層には引張応力が働き、ともなって破断性が生じることによって修飾積層の光沢や輝度の減衰として働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭56-53086号公報
【文献】特開2002-192895号公報
【文献】特開2016-124289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、クラック、割れ、膨れ等の発生を防止することができる転写箔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による転写箔は、基材フィルムと、転写積層とを備える。転写積層は、基材フィルム上に形成された剥離層と、剥離層上に形成された第1樹脂系保護層と、第1樹脂系保護層上に形成された接着層とを含む。第1樹脂系保護層は可塑剤を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1による転写箔の構造を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2による転写箔の構造を示す断面図である。
【
図3】
図3は、平版を用いた上下式転写箔押機による製版を示す模式図である。
【
図4】
図4は、凸版を用いた上下式転写箔押機による製版を示す模式図である。
【
図5】
図5は、ロール式熱圧転写機による製版を示す模式図である。
【
図6】
図6は、グラビア印刷機及び乾燥炉1種炉を示す模式図である。
【
図7】
図7は、グラビア印刷機及び乾燥炉2種炉を示す模式図である。
【
図8】
図8は、転写積層の立体膜を示す写真である。
【
図9】
図9は、転写積層の立体膜を示す写真である。
【
図11】
図11は、転写積層の平膜に生じたクラック、割れ、膨れを示す写真である。
【
図12】
図12は、被転写体の立体膜に生じたクラックを示す写真である。
【
図13】
図13は、転写積層に生じたクラックの開口部を示す拡大写真である。
【
図17】
図17は、真空蒸着で成膜されたアルミニウム表面を示す写真である。
【
図18】
図18は、真空蒸着で成膜されたインジウム表面を示す写真である。
【
図19】
図19は、表9中の転写滞在時間を示すグラフである。
【
図20】
図20は、表9中の転写積層の開口幅を示すグラフである。
【
図21】
図21は、表9中の塩化ビニールシートの伸張率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態の概要]
本発明の実施形態による転写箔は、基材フィルムと、転写積層とを備える。転写積層は、基材フィルム上に形成された剥離層と、剥離層上に形成された第1樹脂系保護層と、第1樹脂系保護層上に形成された接着層とを含む。第1樹脂系保護層は可塑剤を含有する。
【0015】
この転写箔によれば、第1樹脂系保護層が可塑剤を含有しているため、剥離層、第1樹脂系保護層及び接着層は、転写に同調して伸張することができる。その結果、クラック、割れ、膨れ等の発生を防止することができる。
【0016】
転写積層はさらに、第1樹脂系保護層と接着層との間に形成された金属層を含んでいても良い。
【0017】
転写積層はさらに、金属層と接着層との間に形成された第2樹脂系保護層を含んでいても良い。
【0018】
転写箔はさらに、基材フィルムと剥離層との間に形成されたフィルム保護層を備えていても良い。
【0019】
この場合、第2樹脂系保護層は、金属層の耐性を引き上げる調合剤層として機能する。
【0020】
可塑剤は、例えば、塩化パラフィン、アジピン酸ブチル、アジピン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸2-エチルヘキシル、フタル酸エステル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデジル、クエン酸エステル類、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、トリメリット酸トリオクチル等のトリカルボン酸エステル、1,3,6-ヘキサトリカルボン酸とブチルジグルコールとのエステル、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリ2-エチルヘキシルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェート、低分子ポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ステアリン酸オクチル、エポキシ化脂肪ブチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、セバシン酸エステル、アゼラインエステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、アジエチン酸メチル、オレイン酸ブチル、オキシ酸エステル、二価アルコールエステル、脂肪族二塩基酸エステル系、トリフェニルホスフェート、ジノニルナフタレン、アセチルクエン酸トリブチル、P-トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンエチルアミド、アミノベンゼンスルホンアミド化合物、アミノトルエンスルホンアミド化合物、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-エチル-オルト-トルエンスルホンアミド、ジノニルナレン、アセチルクエン酸トリブチル、及びエチレンオレフィン系オリゴマーからなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0021】
可塑剤は、好ましくは、P-トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンエチルアミド、アミノトルエンスルホンアミド化合物、N-エチル-o-トルエンスルホンアミドからなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0022】
第1樹脂系保護層に対する可塑剤の含有率は、例えば0.01~20重量%である。当該含有率の好ましい下限は0.1重量%であり、さらに好ましい下限は1重量%である。一方、当該含有率の好ましい上限は10重量%であり、さらに好ましい上限は5重量%である。
【0023】
第1樹脂系保護層の厚さは、例えば1~20μmである。
【0024】
第1樹脂系保護層は、1種以上のアクリル系樹脂を含有していても良い。
【0025】
第1樹脂系保護層は、硬化剤を含有していても良い。
【0026】
第1樹脂系保護層は、呈色剤を含有していても良い。
【0027】
呈色剤は、10~120nmの粒径を有する顔料を含んでいても良い。ここで、粒径は、長軸径と短軸径を平均した幾何学的平均粒径である。
【0028】
第1樹脂系保護層は、光安定剤を含有していても良い。
【0029】
第1樹脂系保護層は、紫外線吸収剤を含有していても良い。
【0030】
[実施形態の詳細]
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。なお、図中の同一又は相当部分には同一の参照符号を付すことで、その説明を繰り返さない。
【0031】
[実施形態1]
図1に示されるように、実施形態1による転写箔10は、基材フィルム11と、転写積層(以下、「修飾積層」と称する場合がある。)12とを備える。転写積層12は、基材フィルム11上に形成された剥離層13と、剥離層13上に形成された樹脂系保護層(以下、単に「保護層」と称する場合がある。)14と、樹脂系保護層14上に形成された金属層15と、金属層15上に形成された接着層16とを含む。保護層14は可塑剤を含有する。
【0032】
[実施形態2]
図2に示されるように、実施形態2による転写箔20は、基材フィルム11と、転写積層21とを備える。転写積層21は、基材フィルム11上に形成されたフィルム保護層22と、フィルム保護層22上に形成された剥離層13と、剥離層13上に形成された樹脂系保護層14と、樹脂系保護層14上に形成された金属層15と、金属層15上に形成された樹脂系保護層23と、樹脂系保護層23上に形成された接着層16とを含む。実施形態2による転写箔20は、実施形態1による転写箔10の構成に加え、基材フィルム11と剥離層13との間に形成されたフィルム保護層22と、金属層15と接着層16との間に形成されたもう1つの樹脂系保護層23とを含む。
【0033】
[他の実施形態]
上述した転写箔10,20は金属層15を備えているが、金属層15はなくても良い。
【0034】
以下、実施形態1による転写箔10を例に挙げ、その詳細を説明するが、特に制約のない限り、その説明は実施形態2による転写箔20にも適用可能である。
【0035】
可塑剤は、特に限定されないが、塩化パラフィン、アジピン酸ブチル、アジピン酸2-エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸2-エチルヘキシル、フタル酸エステル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ2-エチルヘキシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデジル、クエン酸エステル類、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、トリメリット酸トリオクチル等のトリカルボン酸エステル、1,3,6-ヘキサトリカルボン酸とブチルジグルコールとのエステル、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリ2-エチルヘキシルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリエチルホスフェート、低分子ポリエステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ステアリン酸オクチル、エポキシ化脂肪ブチル、エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチル、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、セバシン酸エステル、アゼラインエステル、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、アジエチン酸メチル、オレイン酸ブチル、オキシ酸エステル、二価アルコールエステル、脂肪族二塩基酸エステル系、トリフェニルホスフェート、ジノニルナフタレン、アセチルクエン酸トリブチル、p-トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンアミド、トルエンスルホンエチルアミド、アミノベンゼンスルホンアミド化合物、アミノトルエンスルホンアミド化合物、N-ブチルベンゼンスルホンアミド、N-エチル-o(オルト)-トルエンスルホンアミド、ジノニルナレン、アセチルクエン酸トリブチル、及びエチレンオレフィン系オリゴマーからなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0036】
樹脂系保護層14に対する可塑剤の含有率は、特に限定されないが、1~20重量%である。樹脂系保護層14の厚さは、特に限定されないが、1~20μmである。樹脂系保護層14は、特に限定されないが、1種以上のアクリル系樹脂を含有する。樹脂系保護層14は、特に限定されないが、硬化剤を含有する。樹脂系保護層14は、特に限定されないが、呈色剤を含有する。以下、呈色剤を含有する樹脂系保護層を特に「呈色樹脂系保護層」と称する場合がある。樹脂系保護層14は、特に限定されないが、光安定剤を含有する。樹脂系保護層14は、特に限定されないが、紫外線吸収剤を含有する。
【0037】
上述した転写箔10は、
図3、
図4又は
図5に示される転写装置を使用し、被転写体に転写される。
図3は、平版30を用いた上下式転写箔押機31による製版を示す模式図である。箔押機31は、平版30で転写箔10を押圧することにより、転写積層12を軟質塩化ビニールシート等の被転写体32に転写する。
図4は、凸版40を用いた上下式転写箔押機41による製版を示す模式図である。箔押機41は、凸版40で転写箔10を押圧することにより、転写積層12を軟質塩化ビニールシート等の被転写体32に転写する。
図5は、ロール版50を用いた熱圧転写機(以下「ロール式転写機」という場合がある。)51による製版を示す模式図である。熱圧転写機51、ロール版50で転写箔10を押圧することにより、転写積層12を樹脂系成形品等の被転写体32に転写する。
【0038】
上述した転写箔10は、
図6又は
図7に示されるグラビア印刷機及び乾燥炉を使用し、製造される。
図6は、グラビア印刷機60及び乾燥炉1種炉61を示す模式図である。
図7は、グラビア印刷機60及び乾燥炉2種炉62を示す模式図である。
【0039】
図6及び
図7に示されるように、グラビア印刷機60は、フィルム巻出し部63と、フィルム制御ロール64と、グラビアコーティングヘッド部65とを備える。
図6に示されるグラビア印刷機60の下流には、乾燥炉1種炉61が設けられる。乾燥炉1種炉61は、駆動金属ロール66と、遠赤外線ヒータ67と、排気装置68と、熱風装置69とを備える。乾燥炉1種炉61の下流には、フィルム制御ロール70と、加圧装置71と、冷却装置72と、フィルム巻取り部73とが設けられる。
図7に示されるグラビア印刷機60の下流には、乾燥炉2種炉62が設けられる。乾燥炉2種炉62は、上述した乾燥炉1種炉61の構成に加え、紫外線照射設備74を備える。乾燥炉2種炉62の下流には、フィルム制御ロール70と、加圧装置71と、冷却装置72と、フィルム巻取り部73とが設けられる。
【0040】
本実施形態は、基材フィルム11の表面に、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、及び接着層16を含む転写積層12を形成し、被転写体32を形象修飾する熱圧転写転移膜に対し、クラック、割れ、膨れを防ぎ、褪色を低減できる感熱感圧転写用の転写箔10である。
【0041】
剥離層13、樹脂系保護層14及び接着層16は、グラビア印刷機60を用いて製膜を行う。金属層15は、2室式半連続真空蒸着装置を用いて製膜を行う。真空蒸着装置としては、例えば特開2002-192895号公報(特許文献2)の
図4に示される装置を使用することができる。可塑剤を調剤した樹脂系保護層14をグラビア印刷機60で加熱、熱風乾燥して剥離層13上に製膜し、金属層15及び接着層16を形成する。樹脂系保護層14は可塑剤を含有するので、柔軟性を得る。剥離層13上に製膜した樹脂系保護層14のドライ膜は、グラビア印刷機60の乾燥炉61,62で加熱され、熱風でアニール処理され、続いて、連結された加圧装置71及び冷却装置72を通過して加圧及び冷却され、これにより膜質は硬質なものから柔軟なものに変性する。その後、金属層15及び接着層16を成膜する。
【0042】
上述した方法の代わりに、次の方法でも転写箔10を製造することができる。可塑剤を含有する樹脂系保護層14上に金属層15を形成した後、この重層した剥離層13、保護層14及び金属層15を乾燥炉61,62の熱風装置69により加熱され、重層したドライ膜を加熱ベイキングするアニール処理を行い、乾燥炉61,62に連結して設営された炉外の加圧装置71及び冷却装置72を介することにより樹脂系保護層14及び金属層15は硬質性膜から柔軟性を帯び、樹脂系保護層14と金属層15との界面は接合性が進捗して伸張性を得る。
【0043】
転写積層12は平膜構造を有するが、グラビア印刷機60等による加熱、熱風、加圧、冷却を介することにより、コーティングによる立体構造を有するように製造することもできる。
【0044】
転写積層12,21は、熱圧転写の際において製膜時による残留応力の解放や、熱圧転写時における転写、剥離、定着の間、基材フィルム11、転写積層12、被転写面、構造、材質、形状等による転写積層12への影響は弾性の低い金属形成膜に影響を及ぼす。金属層15である金属堆積構造層や金属孤島構造層における金属の凝集構造にとらわれることなく、転写時の熱圧伝播により金属層15の凝集性への影響が発現される。金属層15の凝集破壊はクラック、割れ、膨れ等の形態により生成して現れる。金属層15や隣接する保護層14への生成として修飾性への影響や輝度の落ち込み、膜劣化への促進に繋がる。
【0045】
本実施形態の目的は、上記の不具合を回避し、転写積層12,21の転写能を向上させることである。本実施形態では、樹脂系保護層14に可塑剤を添加調合し、グラビア印刷機60等による熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理を行い、グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61又は2種炉62を用いる。樹脂系保護層14が可塑剤を含有するため、保護層14の柔軟性が金属層15に対して親和性を発現し、保護層14と金属層15とが接合する過程で、可塑剤の柔軟性が保護層14及び金属層15の一体化を促進し、保護層14及び金属層15の耐伸張及び耐収縮が向上する。
【0046】
前記不具合の解消は、輝度劣化の減衰にも繋がる。また、粒子状呈色剤を微粒子化して樹脂系保護層14に含有させれば、保護層14の透明性を保ちながら、呈色効果及び金属層15の反射率を高めることができる。粒子を選択することにより、呈色、透明性、金属反射性を伴うメタリック感とともに、耐光性を得ることができる。
【0047】
接着層16を形成する接着剤については、接着性、膜破断性及び膜安定性を考慮し、各種材料から適切なもの選択する。
【0048】
接着剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンプロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、ロジン系樹脂、有機顔料、無機顔料等が挙げられる。
【0049】
接着性については、ポリプロピレン系、ポリエステル系、ビニル系等から選択されることが好ましい。製膜の安定性を図るためには、セルロース系が好ましい。接着層16の膜破断性については、ロジン系、又は有機、無機若しくは体質群の顔料の中から選択するのが好ましい。
【0050】
樹脂系保護層14は、アクリル系樹脂を1種以上有し、耐候性を持つのが好ましい。自然光による紫外線劣化は、物性低下、外観変化を生じる。直達日射、散乱日射により転写積層12のポリマー、呈色剤は水素原子が切断され、ラジカルが生成する。ラジカルが大気の酸素と結合してペルオキシラジカルを生成する。ペルオキシラジカルがポリマーの水素原子を抜き取り、ラジカル及びヒドロペルオキシードを生成する。ヒドロペルオキシードがポリマーの劣化を進行させる。保護層14の耐性を向上させるために、遮蔽効果が長期的に見込まれるアクリル系樹脂、無機顔料等の紫外線遮蔽剤、紫外線を熱エネルギ等に変換する紫外線吸収剤(UVA)、ラジカルを捕捉する光安定剤(HALS)、ラジカルと酸素の結合で生成するペルオキシラジカルを捕捉するフェノール系酸化防止剤、ペルオキシラジカルがポリマーの水素原子を抜き取りラジカルとヒドロペルオキシードを生成、ヒドロペルオキシードを分解するリン系酸化防止剤を使用する。保護層14の調合剤に含まれるアクリル樹脂の1つは、樹脂骨格の中に紫外線吸収基及び紫外線安定性基(HALS)を含み、転写後の表層の剥離層13、樹脂系保護層14等に光によりラジカルが発生し、活性酸素を不活性化する紫外線の遮蔽効果が長期的に見込まれる。アクリル樹脂のもう1つは、紫外線吸収基及び紫外線安定性基(HALS)を含み、シリル基を有するシリコンアクリル樹脂で、アルキルシリケートを含み、硬度かつ紫外線に高耐性な被膜となる。アクリル樹脂のさらにもう1つは、反応性の官能基を付帯し、アミノ系樹脂と触媒により橋かけ成膜し、硬質膜となる。
【0051】
樹脂系保護層14は、アミノ系樹脂、硬化剤、アクリル系樹脂を有する熱硬化性樹脂とする。アミノ系樹脂はメラミン系の中から選択される。硬化剤には有機酸又は無機酸の中から選択される。アクリルとはアクリル又はメタクリルをいう。アクリル系樹脂は、紫外線安定基(HALS)を付加されたもの、シリル基、アミノ基、メチロール基、水酸基、オキサドリン基、シクロカーボネイト基、シクロカーボネイト基等の官能基が付帯されたもの、トリアルコキシビニルシラン等との共重合体、イソシアネート基、不飽和基との付加反応、アミンとの反応、エポキシ基等の付帯した材の中から選択される。
【0052】
基材フィルム11上に、グラビア印刷機60にて剥離層13、呈色剤を含有する樹脂系保護層14を形成し、さらに2室式半連続式真空蒸着装置により金属層15を作り、その上にグラビア印刷機60にて接着層16を生成し、感圧感熱式の熱圧転写積層12を含む転写箔10を作る。この転写箔10において、樹脂系保護層14に用いる呈色剤として顔料を使う。顔料の含有量が少ない場合、透過性はあるが、呈色効果はない。含有量が多い場合、呈色効果はあるが、金属層15の反射性を隠蔽する。保護層14の呈色剤として顔料を選択する。保護層14の厚さ1~10μm、調液溶媒60~80重量%、溶質20~40重量%、顔料の含有率5~15重量%、顔料粒径10~120nmの範囲に微細化を行う。さらに進めて、顔料を粒径10~80nmに整粒する。この微細化した顔料を保護層14の調剤に使用することよって、染料と同様の呈色効果が生まれ、保護層14の透過性が生まれ、金属層15の反射性が出現し、耐光性が生成される。これにより、金属層15の反射性を得るとともに、このメタライジング効果によるメタリック感を顔料の使用により呈色効果として発現することができる。樹脂系保護層14は、有機顔料等をはじめとする呈色剤を使用することにより耐光性を得る。
【0053】
呈色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料類、顔料を選択し、ビーズミル型分散機を用いて10~80nm近傍に整粒したものを用いる。呈色剤として顔料の透過性と、呈色形象効果として視認性を高めることができる。さらに、耐光性に優れる顔料を選択し、耐性を引き上げることができる。例えばTiO2、SO2、Al2O3、Fe2O3等の微粒子酸化物がある。さらに、光安定剤、紫外線吸収剤、光遮蔽剤を追備含有させることで、保護層14の褪色を抑止することができる。さらに、アクリル系樹脂の骨格に、光安定剤、シリコン、シリケート等を組む重合材を採用することで、耐性を助長向上することができる。
【0054】
樹脂系保護層14において、調剤に光安定剤を添加する。紫外線により生成したラジカルを捕捉して無害化することで光安定性に寄与する。非塩基性の中性タイプのヒンダードアミン系光安定剤を選択する。保護層14の熱硬化性膜の生成不調を回避する。
【0055】
樹脂系保護層14において、紫外線吸収剤を添加する。添加は保護層14の光劣化に繋がる光誘起反応を抑制することができる紫外線吸収剤から選択する。紫外線を吸収して、低い熱エネルギに変換して放出することで保護層14の安定を図るため、ヒドロキシフェニルトリアジン系材のうち、紫外線吸収波長280~350nm、310~330nmのものを選択する。
【0056】
転写積層12において、褪色、膜劣化を起こす光による化学反応を抑制するために、転写積層12は光を吸収して吸収エネルギによりも高エネルギ状態となり、一部は光増感現象となり、再び光エネルギとなる。一部は化学反応に及ぶ。また、過剰なエネルギが他の分子に移り、高分子に反応する。200~300nmの紫外線波長域が著しい化学作用を持つ。色保剤を含有する樹脂系保護層14における対策として、透明性のある微細顔料、アクリル系樹脂、アクリル系樹脂によるヒンダードアミンを構造中に結合している重合体、ヒンダードアミン系の光安定剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を得る調剤に加えて光作用の禁止剤として、サリチル酸エステル系、4-t-ブチルフェニル-サリシレート、サリチル酸フェニル等から選択して、光作用の禁止剤として、紫外線遮断剤であるサリチル酸フェニルを選択して添加する。
【0057】
金属層15を形成する手段としては、気相堆積法としてPVD(物理気相成長法)の中では、真空蒸着法、スパッタリング等が挙げられる。化学気相成長法(CVD)の中では、熱CVD、原子層堆積(ALD)、プラズマCVD、有機金属化学気相成長法、ツーフローMOCVD、触媒化学気相成長法(Cat-CVD)等が挙げられる。液相堆積法として融液法の中では、液相エピタキシー法、鍍金(めっき)法として湿式鍍金法、化学鍍金法、ゾルゲル法、塗布手段としてスピンコート、印刷、インクジェット等が挙げられる。使用する金属としては、Au、Ag、Cu、Sn、Al、Ni、Pt、Rh、Pd、Zn、Cr、Siのほか、酸化物としてIn2O3、CdO、CdIn2O4、Cd2SnO4、TiO2、SnO2、ZnO、SiO2、ZrO2等、硫化物としてZnS等、フッ化物としてMgF2等の中から1種以上を選択する。また、合金も使用できる。重層も可能である。金属層15の製膜形状としては、金属層15が孤島状態なる海島膜構造や、金属の堆積状態を示す堆積膜構造等の形状があるが、いずれの構造においても、採用金属や、金属の製膜状態にとらわれることなく、熱圧転写の際に転写積層12が受ける伸縮、被圧から生じるクラック、割れ、膨れ等を抑制できる。
【0058】
また、金属層15の厚さは、孤島状態の場合は10~30nm、連続被膜の堆積状態の場合は20~60nmである。いずれの場合も金属呈色感として光輝性を均一に保つことができる。熱圧転写の形象表示として修飾性、意匠性を高めるものとなる。
【0059】
[製法1]
基材フィルム11としては、製造時の耐熱、溶質溶媒からの耐性、使用時の転写耐熱、耐圧性に異常が認められないフィルムであれば、いかなるものを使用しても良い。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、テレフタル酸-シクロヘキサンジメタノール-エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート-ポリエチレンナフタレート共押出しフィルム等のポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系、アクリル系、イミド系、各種エンジニアリング系、スチレン系、セルロース系等のフィルムがある。中でも、物理的、化学的な強度を維持するためには、ニ軸延伸されたフィルムが良い。これらから選択されるのはポリエチレンテレフタレートフィルムが良い。熱圧転写を考慮にいれると、フィルムが厚い場合、熱伝導、圧力の伝播がいずれも不足となる。一方、フィルムが薄い場合、機械的強度が不足となり、転写熱圧の支配下から逸脱して転写形象像を明瞭に表示しにくくなる。膜厚12~75μmの範囲から被転写体32の形状、材質に適合させて用いると良い。
【0060】
前記に準じて、剥離層13、樹脂系保護層14及び接着層16は、グラビア法により形成される。乾燥手段は遠赤外線ヒータ67及び熱風装置69を用いる。
図6は、グラビア印刷機60及び乾燥炉1種炉61の概略を示す。乾燥炉1種炉61を使用し、90~210℃の炉内雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、厚さ0.1~20μmの各膜を作製する。また、2室式半連続真空蒸着装置を使用し、厚さ30~60nmの金属層15を形成する。その後、接着層16を形成する。
【0061】
[製法2]
剥離層13及び樹脂系保護層14を形成した後、
図7に示されるグラビア印刷機60における容積2.64m
3の乾燥炉2種炉62を使用し、100~210℃の雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、ドライ膜をベイキングするアニール処理を行う。その後、金属層15及び接着層16を形成する。
【0062】
[製法3]
剥離層13、樹脂系保護層14の乾燥手段は、炉内の遠赤外線ヒータ67、熱風装置69を用いて
図6に示されるの乾燥炉1種炉61を使用し、90~210℃の雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、厚さ0.1~20μmの平膜を作製する。次に、蒸着機にて金属層15を形成した後、
図7に示されるグラビア印刷機60における乾燥炉2種炉62を使用し、150~210℃の雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、基材フィルム11上に積層された剥離層13、樹脂系保護層14及び金属層15からなるドライ膜をベイキングするアニール処理を行う。その後、接着層16を形成する。
【0063】
[製法4]
樹脂系保護層の乾燥手段は遠赤外線ヒータ67、熱風装置69を用いた。
図6に示される乾燥炉1種炉61を使用し、90~210℃の雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、厚さ0.1~20μmの平膜を作製する。次に、蒸着機にて金属層15を形成した後、
図7に示される乾燥炉2種炉62を持つグラビア印刷機60を用いて、を使用し、150~210℃の雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、炉内で加熱する。炉外に直接連結された加圧装置71による加圧処理、続いて設置された冷却装置72による冷却処理を行う。その後、接着層16を形成する。
【0064】
[製法5]
図6に示される乾燥炉1種炉61を使用し、90~210℃の雰囲気中を20~50秒間滞在させ、厚さ0.1~20μmの平膜を作製する。次に、蒸着機にて金属層15を形成した後、
図7に示される乾燥炉2種炉62を使用し、150~210℃の加熱雰囲気中を20~50秒間走行滞在させ、ドライ膜のベイキングを行うアニール処理をして、炉内加熱後、炉に連結している炉外加圧装置71、冷却装置72による連続した加圧、冷却処理を実施して、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15を含む立体構造膜を完成させる。その後、接着層16を形成する。
【0065】
[製法6]
図6に示される乾燥炉1種炉61を使用し、100~210℃の雰囲気中を20~50秒走行滞在させ、厚さ0.1~20μmの平膜を作製する。次に、真空蒸着機にて金属層15を形成した後、
図7に示される乾燥炉2種炉62を使用し、150~210℃の雰囲気中を20~50秒間滞在させ、加熱後に、連続した加圧処理及び冷却処理を実施し、平膜又は立体膜を完成させる。平膜と立体膜の製造の分別は、加熱、熱風、加圧、冷却処理の水準の変換によって行うことができる。その後、接着層16を形成する。
【0066】
本実施形態による転写箔10は、基材フィルム11と、剥離層13、保護層14、金属層15及び接着層16から構成される転写積層12とを含み、転写機の圧熱時間を介して基材フィルム11から転写積層12を剥離させて被転写体32に転移させる。転写作業の際、基材フィルム11から剥離する転写積層12は、転写機から供給される熱源、圧力、転写滞在時間を要して転写作用により被転写体32に転移される。被転写体32の形状や材質の硬軟等によって、受ける被熱、被圧による作用は一様ではない。転写積層12は、基材フィルム11及び被転写体32と比較すると、剥離性を持つ薄膜体で、かつ、転写剥離時に破断性を持つ。膜剥離性は、剥離抵抗値1~100g/cm2(朝日測器株式会社製の剥離抵抗試験機を使用)における膜剥離の開始点である。膜破断性は、500g~10Kg/cm2・0.5秒時(池田式転写装置を使用)における転写圧力による膜破断の開始点である。転写積層12は、剥離し易く、破断性を持つ。被転写体32は二次元、三次元と多種の形状を持ち、材質は皮革、紙、紙器、印刷紙、特殊紙、木材、繊維、樹脂シート、樹脂成型、金属、ガラスと材質も種々ある。基材フィルム11に架体される転写積層12を被転写体32との転写伸張性で考察すると、基材フィルム11及び被転写体32に比べ、転写積層12は転写時の熱圧供給に対する転写積層12の伸張性、破断性に起因するクラック、割れ、膨れがより生成し易い。ここで、保護層14に可塑剤を添加することにより柔軟性を与えることができる。さらに、グラビア印刷機60による工程を経ることにより保護層14と金属層15との密着性は接合へと亢進する。グラビア印刷機60による加熱、熱風、加圧、冷却の加担する効果は、保護層14に可塑剤を投入したことによる柔軟性は伸張性になり、耐熱性380℃はクラック、割れ、膨れの発生への耐性維持となり、保護層14及び金属層15が共生する能力の発現となる耐性の構造変容によって転写積層12としての能力の変化を来すものとなる。
【0067】
グラビア印刷機60による転写積層12の製膜時に新たに発現されるものとして、次のような製膜環境を整備できる。
(1)密着性:樹脂系保護層14及び金属層15の重層による接合
(2)伸張性:樹脂系保護層14及び金属層15の伸張性
(3)耐性:転写積層12の転写時、経時後におけるクラック、割れ、膨れの発生の回避
(4)金属反射率:Al金属層15の反射率82.15%(分光反射率%)
保護層14に顔料を使用する場合、光輝の確保に優れる。基材フィルム11、剥離層13、保護層14、Al金属層15、接着層16において、保護層14に微細顔料を使用した呈色層のAl膜反射率
(5)蒸着膜の形態:金属層15の形態が海島膜構造、堆積膜構造を問うことなく、保護層14と金属層15が接合性を保ち、伸張性を示す。金属の凝集性破壊から生じる転写積層12のクラック、割れ、膨れを回避することができる。
(6)耐熱性:転写積層12の転写後における耐熱試験において、380℃における転写積層12のクラック、割れ、膨れの耐性に優れる。
(7)樹脂系保護層14:熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、又は紫外線硬化樹脂及び熱硬化性樹脂の重層を用いることができる。いずれも上述した可塑剤を含有し、上述した製造工程により、耐熱性及び伸張性を示し、金属層15との接合性のある製膜を構成することができる。
(8)樹脂系保護層14:紫外線硬化樹脂としてキュアタイプを使用できる。
(9)樹脂系保護層14:紫外線硬化樹脂としてアフターキュアタイプを使用できる。
(10)樹脂系保護層14:紫外線硬化樹脂を用いた場合、転写方法としてホットスタンピング法及びコールドスタンピング法を使用できる。
(11)樹脂系保護層14:紫外線硬化樹脂及び熱硬化樹脂の重層を用いた場合、紫外線硬化樹脂は皮膜強度を上げるとともに、熱硬化樹脂は膜破断性を上げる。両樹脂には可塑剤を投入する。
(12)伸張性:樹脂系成形機等による樹脂系加工品として三次元の被転写体32がある。この場合、成型品の形成時に転写積層フィルムを成形機の金型に賦形し、溶融樹脂の熱と圧力によって貼り合わせ行い、その後、余分なフィルムを剥離する場合、転写積層12が受ける伸張に対応し得る耐性を維持できる。
【0068】
成型品の表層修飾については、基材フィルム11から剥離する転写積層12からなる修飾積層が転写機を用いて転写剥離されて修飾を行うほか、成形機中の転写転移により修飾を行うようにしても良い。可塑剤を含有する樹脂系保護層14若しくは呈色樹脂系保護層14又は形象形成された呈色樹脂系保護層14を基材フィルム11に接着させた後、樹脂系保護層14上に金属層15、樹脂系保護層23及び接着層16を形成し、転写装置を介して接着層16を被転写体32に接触させ、基材フィルム11上から供給される熱圧によって接着し、基材フィルム11と一緒に被転写体32に架体させることができる。本製造方法により、耐熱性及び伸張性に優れた多重積層が可能となる。このような多重積層構造によれば、基材フィルム11を用いた転写積層12や、基材フィルム11と一体化している修飾性形象化フィルムは、熱圧転写、アウトモールド、インモールドの区別なく適用できる。
【0069】
樹脂系材料を用いた成形機による二次元、三次元の成型品の作製についての熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を用いた成形法は、射出成形、ブロー成形(中空成形、吸込み成形)、押出し成形、注型成形、真空成形、圧空成形、圧縮成形、プレス成形、ハンドレイアップ、Tダイ法、インフレーション法、カレンダ成形、共押し出し多層Tダイ法、2軸延伸法、ラミネート法、異形押出し、押出被覆、共押出し等があり、成型品として形成後、後付けによる修飾積層として転写積層12の転移手段や成形機のモールド中においての一次加工法としてインモールド中の基材フィルム11からの成型品への形象像の剥離転移、基材フィルム11とともに成形品と貼り合わせるフィルム貼り合わせ等の手段がある。成型品同時転写、成型品同時貼り、後付け転写による被転写体32は、皮革をはじめとして上記にあるように成型法、修飾手段は多種にわたるものの中から選択されて形象呈色された修飾積層構造膜の利用が可能となる。
【0070】
選択した可塑剤を保護層14に投入し、上述した製造工程を通じた場合、作製した転写積層12、基材フィルム11とともに貼り合わせるフィルム貼り用等ともに、伸張性、耐熱性、層間密着性、金属層15の反射率の維持、耐光性、クラック、割れ、膨れの防止の機能性の付帯は、より品性の向上を示すものとなる。
【0071】
樹脂系保護層14を含む転写積層12の立体構造は、基材フィルム11、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、接着層16なる転写積層12では、グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62を用いた乾燥手段によって、各150~210℃の範囲での遠赤外線ヒータ67、熱風装置69の熱源を用いたコーティング膜を加熱乾燥、加圧、冷却をすることによって平膜、立体膜を区別して形成することができる。このとき、基材フィルム11上に、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、接着層16を順次形成して転写積層12を完成するが、樹脂系保護層14の処理の際にはグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61を用いて加熱乾燥、熱風処理、加圧処理、冷却処理を連続して処理する。加熱乾燥により可塑剤を含有するアミノ樹脂系材と硬化剤による調剤によって保護層14を硬質膜化しながら、加熱、熱風、加圧、冷却の連続操作をなすことによって樹脂系材は硬質になる。可塑剤を含有する保護層14は柔軟性を発現する。保護層14の製膜後、金属層15の製膜を行い、剥離層13、保護層14、金属層15が重層の状態でさらに、乾燥炉2種炉62を有するグラビア印刷機60を用い、ドライ膜のベイキングを実施する。これにより、保護層14には柔軟性の伝播が発現する。保護層14と金属層15の界面は加熱、加圧、冷却される際、加熱、加圧操作によって保護層14と金属層15とに親和性が生まれ、冷却操作によって層間の定着が確保されて転写積層12となる。金属層15は、金属が海島状になる孤島構造の場合でも、堆積状になる堆積構造の場合であっても良い。
【0072】
グラビアコーティングの乾燥過程に、乾燥炉2種炉62中の加熱と、炉外加圧、炉外冷却の処理を連続して設けることで、保護層14及び金属層15はこの工程を通して樹脂系保護層14は膜粘りが生じる。保護層14中の樹脂と金属層15中の金属粒の一部とに相溶性が生じる。保護層14の硬化時による膜収縮による残留応力の蓄積などによる影響は、可塑剤の同梱調剤により減少する。金属層15への剪断応力は少なくなり、金属層15の凝集性の破壊への負荷が減衰する。
【0073】
剥離層13及び樹脂系保護層14をグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61で処理し、金属層15を重層し、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62で加熱し、連続して炉外加圧、炉外冷却を実施することは、樹脂系保護層14の柔軟性を帯びた膜質を金属層15との界面へ伝播して定着させる上で必要な処理である。保護層14及び金属層15の両層は、加熱、加圧、冷却が加わることで、硬質で、粘りを持つ膜質となる。さらに、金属層15への保護層14の柔軟性のある膜質伝達は両層にとって、保護層14の硬化膜、強靭性と、可塑剤を含有する柔軟性からくる伸張性の発現を併せ持つものとなる。保護層14の残留応力が発現して金属層15の凝集破壊から発生する膜破断は、転写積層12の剪断に仕掛かり、クラック、割れ、膨れ等の発生の因子となる。これを抑制するため、両層間を耐熱性、柔軟性、密着性、伸張性を持つものに引き上げるため、膜質の変性を実行する。保護層14は、金属層15との定着を高めるために、保護層14の調剤に、耐熱性のある可塑剤、界面移行誘導性のある可塑剤を含む膜質を金属層15に転移、接合させ、加熱などのアニール処理、加圧処理、冷却処理を行う。保護層14と金属層15との相関が耐熱性、柔軟性、密着性、伸張性においては両層の接合との関連の中に発現するかの確認を行う。
【0074】
後述する実施例では、転写積層12の転写後における表面を観察すると、形成された立体構造は放射線弓形断面において、
図8に示されるように、弦1μm、高さ13μm、弧26μmを示す断面となった。凹凸ある畝皺状の連立した層の立体構造膜として発現した。さらに精査して、表層の熱圧転写後の表面の変化を拡大して確認したところ、クラック、割れ、膨れ等の現象は認められなかった。
【0075】
図8~
図10は、立体構造膜を示す写真である。
図11~
図14は、転写積層12の平膜構造膜上のクラック、割れ、膨れを示す写真である。
【0076】
基材フィルム11に剥離層13を形成し、乾燥炉1種炉61を有するグラビア印刷機60を使用し、可塑剤を含有する樹脂系保護層14をコーティングして平膜を作製する。次に、金属層15を重ねて形成し、重層のまま、乾燥炉2種炉62を有するグラビア印刷機60を使用し、ドライ膜のベイキングを実施し、遠赤外線ヒータ67、熱風による加熱、加圧、冷却を行なった。転写積層12が一緒に伸張隆起した畝皺状の連続した立体構造帯の生成が見られた。次に、接着層16を形成して転写積層12を完成させた。この転写積層12を軟質塩化ビニールシート上に転写し、転写積層12の表層を確認した。熱圧転写条件、上下式転写箔押機を使用し、温度160℃、圧力5Kg/cm2、転写滞在時間0.5秒で、凸版40を使用した結果、クラック、割れ、膨れ等の発現もなく、メタライジング効果においても変化は認められなかった。可塑剤を含有する樹脂系保護層14と金属層15はともに膜の伸張に同調したものであり、加熱、加圧、冷却の処理により、凝集力の低い金属層15と残留応力から解かれた保護層14とともに、保護層14の柔軟性、親和性、移行誘導性は、グラビア印刷機60による炉内、炉外工程によって金属薄膜に塑性変形を誘起し、可塑性をもたらす。金属層15は堆積状粒子膜又は孤島状粒子膜の構造を有し、その膜質を保護層14に伝播する。その結果、保護層14及び金属層15の両層は接合性を出現し、両層の界面を定着させる。
【0077】
図10の写真は、製法5に基づいた実験を課した転写箔10を上下式転写箔押機を用いて転写後、その表層を立体構造化像に拡大したものを示す。金属層15はアルミニウムを使用している膜厚さ40nm、谷幅は1.4~1.76μm、凸部分の山幅は0.99~1.2μm、凸部分の高さは11~14μmであった。
【0078】
本実施形態は、転写箔10が熱圧転写時、転写後の経時に伴う転写積層12に起こる不具合の改善を目指したものである。発生するクラック、割れ、膨れ、褪色等の転写積層12や被転写体32への熱圧負荷に対する外力、内力応力に対して転写積層12、被転写体32には引き起こされる伸び、縮み、ずれ、ねじれ、たわみ等の変形する相互作用が生まれる。この派生した現象から生じる被転写体32、転写積層12に対する転写の際の変形への作用は被転写体32上の修飾性を引き下げるものとなる。この変形する作用を転写積層12の受容負担として個々に臨むことのできる保全手法を得る必要が生じる。
【0079】
転写積層12が持つ機能として剥離、破断、接着、耐熱、光輝耐性、呈色、形象表示、装飾性等があり、これに加えて上記の転写時、経時後に起こる形態変容に対応するために、次のことを転写積層12の手段として加えることが必要となる。耐熱性、柔軟性、移行誘導性を用いた柔軟性による伸張性の発現による機能する材料を可塑剤の中から求めて、保護層14に添加することによって保護層14の機能を引き上げ、金属層15への機能伝播を果たすことができる。さらに、グラビア印刷機60による乾燥手段を加熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理を介することで金属層15への保護層14の移行誘導性の持つ材とともに、耐熱性、柔軟性の機能は金属層15界面への親和性から機能伝播となり、接合して定着する。これによって、樹脂系保護層14及び金属層15の両層の伸張性が生まれる。保護層14及び金属層15は転写破断性、伸張性、耐熱性を共有する。転写積層12は、転写時、経時後において、クラック、割れ、膨れに対応できる修飾積層となる。
【0080】
可塑剤のうち、柔軟性移行誘導材の設定を計る。保護層14の界面において層間剥離に至らない範囲の特定量の設定を探査する。熱硬化性樹脂系保護層14の界面近傍まで可塑剤入り調剤の柔軟性である性質を移行誘導する機能を持つことになる。熱硬化性樹脂系保護層14の可塑剤による柔軟性を持つ界面が硬化性膜構造中に封鎖されることなく、膜中に分散することによって、微量に界面にも定着する。保護層14をグラビア法によって製膜する際、製膜を加熱、熱風、加圧、冷却の手段を連続して介することによって、保護層14と金属層15との親和性が亢進される。
【0081】
可塑剤では耐熱性のある材、柔軟性のある材、移行誘導性のある材種の特定をして保護層14への調剤添加を計る。各材の特定と調剤量の設定を実験から課して、耐熱性、柔軟性、移行誘導性を維持して保護層14界面の臨層する製膜への親和性の生成に繋げる。これらの機能を生成できる可塑剤は上記の可塑剤のうち1種以上のものから選択することができる。
【0082】
グラビア法で基材フィルム11上に剥離剤の膜形成後、保護層14の形成は遠赤外線ヒータ67の加熱による乾燥炉1種炉61の加熱、熱風処理と、直結した炉外加圧装置71、炉外冷却装置72による製膜法を行う。あるいは、乾燥炉2種炉62を用いた加熱、熱風処理に直結した炉外加圧装置71、炉外冷却装置72による製膜操作の実行、あるいは、1種炉61、2種炉62による保護層14のドライ膜をベイキングするアニール処理、炉外加圧装置71、炉外冷却装置72による保護層14の膜変性処理、保護層14及び金属層15の両層の重層による変性処理、また、各層別の変性処理は保護層14の調剤への可塑剤の選択と投入量の設定と効果、保護層14及び金属層15の重層膜の界面変性処理等を適時組むことよって、転写積層12の平膜構造又は立体構造を形成することができる。
【0083】
加熱、熱風、加圧、冷却の各装置では樹脂系保護層14は樹脂膜の硬化、硬質化を加熱、熱風処理により得ることができる。加圧処理は樹脂膜の圧縮残留応力を解き、冷却処理では樹脂膜の軟質化定着を図り、保護層14及び金属層15の定着を図ることができる。樹脂系保護層14の加熱、熱風、加圧、冷却の処理、樹脂系保護層14及び金属層15の重層後の加熱、熱風、加圧、冷却におけるドライ膜をベイキングするアニール処理においては、保護層14及び金属層15は親和性が向上し、より軟質で、粘りのある膜質となる。
【0084】
転写箔10は、基材となるフィルム類と、それに積層する転写剥離する修飾積層とから構成される。化成フィルム類の中から選択した基材フィルム11上に、積層として順に、フィルム保護層22、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、樹脂系保護層23、接着層16を選択して積層して形成される。フィルム保護層22及び金属層15はなくても良い。樹脂系保護層14は重層することもできる。樹脂系保護層14には前記に挙げた可塑剤の中から1種以上を添加する。金属層15を除外し、染料、顔料等による呈色剤をもって呈色樹脂系保護層14を彩色層とすることもできる。
【0085】
フィルム保護層22、剥離層13、樹脂系保護層14、接着層16等はグラビア法により製膜する。金属層15は2室式半連続真空蒸着装置を使って蒸着層を製膜する。グラビアコーティングに用いられている乾燥設備は遠赤外線ヒータ67が炉内に設置され、熱風装置69とともに加熱乾燥することができる。加熱加温渦中の転写積層12は基材フィルム11とともに乾燥炉61,62の直ぐ外に設けた加圧装置71により加圧することができる。さらに連続して設置している冷却装置72を通過して急速冷却して製膜ができる。また、遠赤外線ヒータ67及び熱風装置69により加熱処理のみを行うこともできる。グラビア印刷機60は、
図6に示される乾燥炉1種炉61又は
図7に示される乾燥炉2種炉62を備える。乾燥設備は、調液のウェット状態から乾燥手段を介してドライ製膜を行うことができる。また、製膜されたもののドライ膜を加熱、熱風処理を通じてドライ膜をベイキングするアニール処理を行うことができる。さらに、加圧装置71によって加熱処理された軟質へ膨潤軟化した製膜を加圧縮することができる。かつ、続く冷却装置72によって製膜を急速冷却することにより各層間の定着性を亢進することができる。各手段は、装置、製膜は単独で実施することもできる。また、連携して重層して用いることもできる。選択して組み合わせることができる。
【0086】
樹脂系保護層14への可塑剤の調合とともに、グラビア法による加熱、熱風、加圧、冷却の各装置を加えた熱処理は、保護層14と金属層15との間において保護層14の柔軟を帯びた状態が各界面における親和性が熱処理を経ると、接合性を有する傾向が顕著となる。グラビア印刷機60による加熱、熱風、加圧、冷却等、各装置を介した工程によって樹脂系層と金属系層の相容は強制され、接合性は亢進される。転写積層12は熱圧転写時における転写装置からの加熱、加圧からの影響は、基材フィルム11を含む転写積層12、被転写体32の形容から生じて起こる伸張収縮の負荷に対して、樹脂系保護層14と金属層15がともに伸縮に対応することで転写積層12はクラック、割れ、膨れ等を防ぐ。
【0087】
樹脂系保護層14は、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、硬化剤、ケトン系樹脂、呈色剤、光安定剤、光遮断剤、紫外線吸収剤、可塑剤、溶剤等で構成される。これらは、転写積層12としてグラビア印刷機60により製膜される。転写の際は、伸縮圧熱の負荷が懸かる。転写積層12はクラック、割れ、膨れ等の生成に耐えるために、硬化膜中への柔軟性の付与を可塑剤の選択を持って行い、グラビア法により加熱、加圧、冷却を取り入れることにより、保護層14と金属層15との界面の親和性を亢進させる。これによって、転写積層12は延伸性に富む平膜構造又は立体膜構造を分別して作製することができる。
【実施例】
【0088】
修飾積層のうち、立体構造膜においては、転写積層12の表層は畝皺状の凹凸のある立体構造の連続した製膜を形成している。
図8の写真に示す。放物線の弓形断面を持つ弦22.30μm、高さ13.87μm、弧37.25μmを持つ連続した立体形状であり、凹部分の谷幅1.1~1.14μm、凸部分の山幅0.7~0.9μmの連続した立体膜構造を持つ。
【0089】
図8~
図10の写真は転写後の修飾積層の立体形象を示す。修飾積層の平膜構造については、転写後の耐熱試験においては常温から順次昇温して380℃に到達させて後、常温まで降温するサイクルにおいての試験の結果、クラック、割れ、膨れ等の発生はなく、金属層15の反射率の変化もなく、積層膜の層間の剥離等についても異常は認められなかった。
【0090】
上記の通り、立体構造膜の作膜は、転写積層12による表層の微細な凹凸のある連続被膜を形成している。膜中の金属層15への入射光は金属層15による反射によって表層へ至る。回析光による光は表層部への回帰となり、光干渉が発現して、干渉性メタライジング効果が生まれる。また、表層による微細立体層による受光が表層での光干渉が生まれる。
【0091】
転写積層12の微細立体構造の表層は熱圧転写時に、加圧5~10Kg/cm2、温度150~200℃、転写滞在時間0.5秒の条件下で、転写剥離抵抗値及び膜破断性を確認したところ、変容は認められなかった。光輝性についても変化は認められなかった。
【0092】
呈色樹脂系保護層14は、光安定剤、光遮断剤、紫外線吸収剤等を含み、染料、顔料、樹脂等の褪色が抑制される。
【0093】
樹脂系保護層14において、硬化膜として膜の強度があり、可塑剤を含有し、柔軟性を有する。グラビア法の乾燥手段により加熱、熱風、加圧、冷却を行うことにより、転写積層12には膜の強靭性と粘り性が発現している。転写積層12の平膜構造又は立体構造の形状が金属層15を含んだ状態で延伸が可能となる製膜において、転写破断性は調剤中に添加されるケトン系材料によって維持される。転写後に基材フィルム11を被転写体32から剥離する際、転写象形の輪郭の破断端面を明瞭に表示し、剪断性を持つ転写積層12となる。転写積層12の転写破断性については、
図16の写真に示される金属製転写凸版40を用いた上下式転写箔押機を使用し、温度120~150℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm
2、被転写体32として厚さ1mmのPPシートを使用して、転写を行った。転写後の破断性については
図15の写真に示す。PPシート上に転写された転写積層12は金属製製版の象形、
図16の写真の通り精緻に破断、転移されている。
【0094】
転写積層21は、基材フィルム11上に順に、フィルム保護層22、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、樹脂系保護層23、接着層16を積層することにより形成される。フィルム保護層22は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂、アニリン樹脂、スルホンアミド樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及び熱硬化性ポリイミド樹脂からなる群から選択される1種以上を含有する。フィルム保護層22は、グラビア印刷機60により基材フィルム11上に厚さ0.3~1μmで平滑にコーティングされ、接着される。フィルム保護層22は、熱圧転写時に剥離層13に対して剥離の均一性を与える機能を持つ。加えて、転写時の熱圧によって引き起こされる基材フィルム11及び転写積層21への熱圧伝播の均一性を維持する。さらに、基材フィルム11の受ける転写時の熱圧による伸縮動作の影響を抑止することができる。これらによって、転写積層12の剥離の均一性を維持するとともに、熱圧転写の安定性を維持することができる。
【0095】
樹脂系保護層14は可塑剤を含有しているため、熱圧転写によって転写積層12が伸張収縮を起こしても、金属層15は凝集破壊を起こさないので、転写積層12にクラック、割れ、膨れが生じない。
【0096】
転写箔10は熱圧転写装置を介して被転写体32との間に通した転写積層12を架体した転写フィルム上を加熱加圧されて被着体に転写積層12が基材フィルム11から剥離、破断され、選択された象形像として被転写体32上に転移する。被転写体32の表層の修飾をきたすものとなる。転写積層12なる修飾積層は基材フィルム11上に、基材フィルム11の保護と界面改質のために接着性を持つ樹脂系保護層14を設ける。基材フィルム11と接着させてかつ硬化膜とすることで基材フィルム11の持つ熱圧転写の際の基材フィルム11の伸縮の防止対策となり、転写積層12への伸縮伝播を防ぐものとなる。また、転写積層12が剥離の際の剥離安定性をもたらすものとなる。周知の熱硬化性樹脂を用いて膜厚さ0.3~5μmの範囲で形成する。次に、剥離層13を設ける。材料は公知のものから選択して用いることができるアクリル系樹脂のメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ビニルブチラール、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシアミノ系樹脂、アミノアルキッド樹脂、シリコンワックス系、シリコン樹脂、シリコン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース等の繊維素系材、硬質化剤としてのシリカ、ポリエチレンワックスを初めとする各種ワックス類等から選択して含有することが好ましい、選択して1種以上からの調合から形成することができる。剥離材、熱伝播材、硬質材、破断材、層間接合材、耐圧材、滑性材、耐熱材、光沢材、基材フィルム11又はフィルム保護層22との界面剥離の形態か転写熱圧による剥離層13内の凝集破壊による破壊剥離による剥離の結果、次層の樹脂系保護層14への剥離剤のカバー形成と転写後の物理的、化学的耐性の補助が剥離層13として成立させることは剥離能とともに必要な要素となる。そのために、剥離層13としては重層化しても良い。また、機能を分化して多層化しても良い。剥離層13の形成はグラビア印刷機60等の公知の膜形成機を用いて調合された調液を用いて乾燥させて作製される。膜厚さは0.1~20μmの厚さ、好ましくは、0.1~10μmが良い。
【0097】
基材フィルム11に順じて、フィルム保護層22、剥離層13、可塑剤を含有する樹脂系保護層14又は可塑剤を含有する呈色樹脂系保護層14、金属層15、可塑剤を含有する樹脂系保護層23、接着層16が順次積層され、転写箔10の転写積層12が形成される。各層は選択的に採用して組み合わせて転写箔10として構成することができる。例えば、順次基材フィルム11、剥離層13、可塑剤を含有する樹脂系保護層14又は可塑剤を含有する呈色樹脂系保護層14のいずれかの選択、金属層15、接着層16の設定や、基材フィルム11、フィルム保護層22、剥離層13、可塑剤を含有する樹脂系保護層14又は可塑剤を含有する呈色樹脂系保護層14、金属層15、接着層16の設定、基材フィルム11、剥離層13、可塑剤を含有する樹脂系保護層14又は可塑剤を含有する呈色樹脂系保護層14、金属層15、可塑剤を含有する樹脂系保護層14、接着層16の設定が形成可能となる。これらの手段は可塑剤を含有した各樹脂系保護層14をもって金属層15とともに熱圧転写時において派生する伸縮、被圧の負荷に対する適応に効果が反映されるものとなる。
【0098】
図2に示されるフィルム保護層22は、次の条件下で形成される。加熱加圧転写の際に基材フィルム11は熱圧の伝播を受けて伸張又は収縮する。これを抑制するため、硬質なフィルム保護層22が形成される。転写時における剥離層13の安定でかつ均一な剥離を実現するため、基材フィルム11と剥離層13との間に硬質で平滑なフィルム保護層22を形成する。これにより、転写時に感圧及び感熱を等しく伝播することができ、転写時の形象転移等の転写剥離、転写定着性、破断性が向上する。
【0099】
熱圧転写の際、基材フィルム11を初め、樹脂系保護層14、呈色樹脂系保護層14、接着層16はその際、膜の伸張を示す、金属層15には樹脂系保護層14や接着層16の伸張する引っ張り応力が加わるとき、金属層15、あるいは金属層15と樹脂系保護層14との間においてクラック、割れ、膨れ等が生じ、金属層15の光輝性の減衰や樹脂系保護層14の転写時の耐熱降伏による膨れ等によって転写積層12の輝度の落ち込みになる。
【0100】
基材フィルム11上に、フィルム保護層22、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、樹脂系保護層23、接着層16を順次積層して熱圧転写層を形成する転写積層21において、樹脂系保護層14においては可塑剤を投入して調液としている。フィルム保護層22、接着層16とともに、グラビア印刷機60を用いてコーティングにて形成される。各工程はグラビア印刷機60の乾燥炉61,62にて遠赤外線ヒータ67、熱風装置69により乾燥する。保護層14は、熱処理時において膜収縮を起こす。収縮の応力が膜内部に蓄積される。保護層14には可塑剤が調合されている。製膜の網目構造膜中の可塑剤は硬化性膜中においての柔軟性を付帯されたものとなっている。保護層14は受ける外力、内力の応力の発生の緩衝性を持ち込まれている。このため、保護層14の受ける伸縮に対しての変形も小さくすることができる。保護層14と金属層15との界面や保護層14の伸縮が金属層15にもたらす破断又は剪断の影響を少なくしたり、回避したりすることができる。
【0101】
呈色樹脂系保護層14は耐光性を有する層として、呈色材料として染料、無機顔料、有機顔料等を用いることができる。併せて、耐候材としては光安定剤であるヒンダードアミン系材を含有しているアクリル系樹脂が1種以上添加されている。紫外線吸収剤であるヒドロキシフェニルトリアジン系材が1種以上添加されている。光遮断剤としてサリチル酸フェニルを含有していることによって転写積層21の褪色劣化を抑制することができ、耐性を延長することができる。
【0102】
被転写体32の転写形状は平面形状から立体形状まであり、その材質は硬質から軟質状のものまであり、転写時の加熱加圧において、被転写体32と転写積層12の間には加熱加圧による伸張圧縮応力が加わる。同時に金属層15においては金属粒状堆積層である蒸着層は引き延ばされるものとなり、金属の凝集性を阻害する力が生じ、保護層14の引っ張り応力に対して金属堆積層、又は金属孤島層の凝集力への負荷が集中する結果、凝集破壊へと進む、これを起点として、転写積層12は、クラック、割れ、膨れ、亀裂、剥がれ、層間密着不良、層間不良による脱箔、耐熱不良、光輝性不良、耐候性不良等への進捗となるおそれが生じる。
【0103】
かかる状況を改善するために、多種の実験を積み重ねたところ、樹脂系保護層14の調液配合に対して可塑剤の選択的添加をすることによって、樹脂系保護層14と金属層15との相関において、親和性の発現となる。クラック、割れ、膨れ等の発生の抑制に寄与する保護層14、金属層15の界面定着を亢進させ、転写時において転写積層12の伸張の発現に、耐性を示す手段を得る。保護層14への可塑剤の添加、保護層の熱処理の方法、保護層14と金属層15を合わせた状態による加熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理、アニール処理等を工程中に取り入れることによって、転写積層12は耐熱性、柔軟性、伸張性を持つに至り、熱圧転写の転写時の応力に対峙して抑制することができる。
【0104】
[製法7]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14はアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。調剤はグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61において赤外線ヒータ、熱風装置69により加熱され、製膜される。次に、真空蒸着装置によって金属層15を形成し、接着剤を追備する。
【0105】
[製法8]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14は、アミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。調剤はグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61において赤外線ヒータ、熱風装置69により加熱され、製膜される。次に、乾燥炉2種炉62を持つグラビア印刷機60にて、基材フィルム11に、剥離層13と、可塑剤を含有する保護層14とを積層した状態のドライ膜を、容積2.64m3、温度100~210℃、炉内滞在時間20~50秒の操作により、ベイキングを成すアニール処理を実施する。その後、金属層15及び接着層16を形成する。平膜層構造の被転写体32の表層を修飾する転写積層12を含む転写箔10が得られる。
【0106】
[製法9]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14はアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。その後、金属層15を形成する。その後、乾燥炉2種炉62を持つグラビア印刷機60にて、上記の熱処理と同様にベイキング処理を行う。その後、接着層16を追備する。平膜層構造の被転写体32の表層を修飾する転写積層12を含む転写箔10が得られる。
【0107】
[製法10]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14はアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。その後、金属層15を形成する。その後、乾燥炉2種炉62を持つグラビア印刷機60にて、上記の熱処理と同様にベイキング処理を行う。乾燥炉61,62に直結した炉外加圧装置71、炉外冷却装置72を介して、熱処理と加圧処理と冷却処理を行い、保護層14の硬化、硬質、強靭な熱硬化性膜になるとともに、粘りがあり、柔軟性があり、伸張性を持つ膜質が金属層15に伝播した平膜構造を形成する。その後、接着層16を追備する。被転写体32の表層を修飾する転写積層12を含む転写箔10が得られる。
【0108】
[製法11]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14はアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。その後、金属層15を形成する。この後、乾燥炉2種炉62の設置されたグラビア印刷機60によって炉内加熱、熱風処理を行い、連結した炉外加圧装置71で加圧、炉外冷却装置72で冷却を行う。基材フィルム11、剥離層13、保護層14、金属層15のある重層体のドライ膜をベイキングするアニール処理を行う。この際、乾燥炉61,62の加熱、熱風の熱処理の状態を高温領域にして加圧、冷却を介することにより剥離層13、保護層14、金属層15は微細な凹凸のある畝皺状を呈した連続した立体構造層が形成される。その後、接着層16を追備する。被転写体32の表層を修飾する転写積層12を含む転写箔10が得られる。
【0109】
[製法12]
基材フィルム11上にグラビア印刷機60によりコーティングされる剥離層13を形成した後、可塑剤を含有する樹脂系保護層14はアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル樹脂が形成する熱硬化性樹脂層となる。可塑剤が添加されているため、柔軟性を帯びる製膜となる。グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61において遠赤外線ヒータ67、熱風処理を高温領域の処理にする。その後、金属層15を形成する。さらに、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62において遠赤外線ヒータ67、熱風処理を高温領域の処理を行い、続いて、加圧処理、冷却処理をする事によって微細な畝皺状の連続した立体構造層が形成される。その後、接着層16を追備する。被転写体32の表層を修飾する転写積層12を含む転写箔10が得られる。
【0110】
1種炉61、2種炉62の調温制御を低温領域100~160℃の間の設定、高温領域140~210℃の間に設定に分けた処理とすることによって、低温領域においては平膜構造の製膜に、高温領域においては立体膜構造の製膜となる。平膜構造、立体構造と分別して膜構造を製作できる。樹脂系保護層14はグラビア印刷機60の処理によって形成される。乾燥炉1種炉61と2種炉62による処理、遠赤外線ヒータ67による処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理を介して調液の乾燥、アニーリング、膜変性、膜接合が実施できる。
【0111】
[製法13]
上記立体構造体は畝皺状を呈する連続した膜構造となる。弓形の断面を持つ連続した立体膜を成したものとなる。弦の長さ10~70μm、高さ10~270μm、弧の長さ40~550μmの断面を持つ連続した立体構造を成したものとなる。
【0112】
図8に示した写真は、転写された転写積層12の表面を示す。
図9に示した右の写真は、可塑剤を含有する樹脂系保護層14を含む転写積層12の表面を示す。
図9に示した左の写真は、可塑剤を含有しない樹脂系保護層14を含む転写積層12の表面を示す。
図10に示した写真は、
図9に示した表面の凹凸部分を拡大したものを示す。
【0113】
形成は次の通りに実施する。基材フィルム11上に剥離層13をグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61で加熱乾燥して製膜、次に可塑剤を含有する樹脂系保護層14を乾燥炉1種炉61で加熱乾燥して製膜、次に金属層15を高周波励起プラズマ活性化反応性装置を介した2室式半連続真空蒸着機を用いて金属層15を形成、次にグラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62にて基材フィルム11上に剥離層13、保護層14、蒸着膜の形成された製膜とともにアニール処理を150~210℃の内、高温領域において加熱処理を行い、連続した熱風処理、炉外加圧処理、炉外冷却処理を実施する。この機において、剥離層13、保護層14、蒸着層は一体となり延伸隆起して毀損無き微細な立体構造を呈する。次に接着層16をグラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61を使い加熱乾燥して転写積層12の立体膜を完成する。
【0114】
立体膜の製膜において、保護層14と金属層15の界面は親和性のある界面定着に優れる接合性を持った製膜となっている。上記の例においては20~550μmの弓形、弧の断面を持つ連続した立体構造となっている。蒸着膜形成後の製膜の面積と乾燥炉2種炉62の工程後の面積をフィルムを含んだ状態で比較計測したところ同面積であった。可塑剤を含有する樹脂系保護層14と金属層15を合わせた熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理の操作の実行後は立体膜が形成されたものとなったもので弓形弧の断面は20~550μmを示し、延伸の倍率を表しているものとなっている。延伸後の保護層14と金属層15はいずれもクラック、割れ、膨れ等の発生は認められなかった。転写後の輝度に変化はないものとなった。
【0115】
可塑剤を含有する樹脂系保護層14は、グラビア印刷機60の乾燥炉61,62による加熱、熱風、加圧、冷却処理を行うことによってアミノ系樹脂、硬化剤、アクリル系樹脂によって熱硬化性樹脂膜となり、膜は硬質化される。網目構造膜中の可塑剤は膜質に柔軟性を与える。さらに膜中に移行誘導する可塑剤を限度内で使用することにより、柔軟性と移行誘導性を持つ可塑剤の複数剤を保護層14の硬化膜中に調合添付する。これにより保護層14は硬質強靭性を持つ膜質から、柔軟性、界面誘導性への膜質が付与される。膜中の硬質強靭性を持つ保護層14は粘りあるものとなり、柔軟性は伸縮性を帯びるものとなる。可塑剤の持つ界面誘導性は金属層15の金属堆積層、孤島状層の粒界への親和性を持つ保護層14の界面部を導くものとなる。可塑剤は柔軟性を示す性能と合わせて転写積層12の耐熱性を維持する必要がある。転写積層12が熱圧転写時に保護層14の柔軟性生成に優先して転写の熱負荷に耐える必要がある。保護層14の柔軟性を炉外加圧時において顕在化させ、移行誘導性を持つ剤とともに金属層15への親和性の促進を図り、炉外冷却をすることにより保護層14と金属層15との界面での定着を高める。樹脂系保護層14への可塑剤の添加数は1種以上が機能を成立させるため必要となる。
【0116】
さらに、グラビア印刷機60による加熱、熱風、加圧、冷却の連続作業を通じて可塑剤を含有する樹脂系保護層14は、熱硬化性樹脂膜として耐熱性が備わり、ドライ膜のベイキングを行うアニール処理、加圧によって応力が除去され、かつ、可塑剤による柔軟性の生成を併せ持ち、膜中の界面誘導性のある可塑剤は柔軟性のある可塑剤とともに金属層15の界面に導く。保護層14の耐熱性、柔軟性、延伸性を帯びたものが、強制加圧、強制冷却により、界面の親和性の発生からさらに密着の定着性へ亢進される。保護層14と金属層15は硬質強靭な膜質に加えて耐熱性、柔軟性と延伸性を持ち、層間による密着性を維持した製膜となる。
【0117】
可塑剤を含有する樹脂系保護層14と金属層15の間においては、保護層14に柔軟性を付与する可塑剤、移行性に働く可塑剤の選択を行う。さらに可塑剤は転写時の耐熱性を維持する。金属層15の界面との親和性の欠落を防ぐことを組むことによって、加熱、熱風、加圧、冷却の操作を介すると、金属層15は金属塑性変性が伴い、その金属堆積状構造又は金属孤島状構造に沿って保護層14の調剤中の可塑剤による移行誘導による誘導性により親和性は高まり、さらに、金属層15へ介在して、接合性へと進み、層間の定着はさらに進行する。
【0118】
転写箔10の不具合として、剥離性の不全、膜破断精度の不良、クラックの発生、割れの発生、亀裂、剥がれ、膨れ、層間密着不良、層間不良による脱箔、転写耐熱性不良、光輝性不良、耐候性不良、接着不良による脱箔、箔表層の滑り性不全、脱色、メタリック効果減衰する膜透過性の不良等がある。これらのうち、クラック、割れ、膨れについては、転写の際に発生する現象として、光輝の落ち込み、経時における脱箔因子に繋がり、美感の損傷等となる。被転写体32においても経時において湿度、温度、気候により寸法変化は発生する。これらの影響によっても転写積層12は修飾性を損ない、破損し、脱箔を生じる。
【0119】
図11~
図14は、転写積層12のクラック、割れ、膨れを撮影した写真である。
【0120】
転写積層12は、機能の異なる各層を持ち、材料を選択して充当して形成されている。各層は転写箔10として感熱、感圧、時間の転写条件を得て転写積層12は基材フィルム11から剥離して、全層ともに膜の破断性に同一同根性を生じ、製版材の形象像の造形を正確に転写転移する。また、被転写体32においては一般印刷類、紙器類、製本類、フィルムシート類、電線チューブ類、樹脂加工成形類、皮革類、繊維類、木材類、ガラス製品類、金属製品類等があり、形態形状は多岐に渡る。転写形状は平面形状から立体的形状まであり、転写時に被転写体32と転写箔10の間には応力対応、凝集力の違いに影響を与えることによって、転写積層12への伸縮として集中する。これにより、上述した転写箔10の不良につながってくる。
【0121】
本実施例は、上記に鑑みて、転写箔10においてクラック、割れ、膨れ等を抑制するとともに、耐熱性、耐光性等を向上させるために、転写積層12に用いる材料の選択、層間の密着強度を向上させ、耐伸張性を向上させ、各膜における応力を制御したものであり、転写積層12が転写機器と被転写体32との間で生じる不具合の対策を見い出すために、実験を重ねたものであり、以下詳細を挙げる。
【0122】
[実験1]
基材フィルム11には厚さ12μmのポリエステル製フィルムを用いた。基材フィルム11上に剥離層13を形成した。具体的には、トルエン71.1重量%(出光興産株式会社)、MIBK(メチルイソブチルケトン)25重量%(三菱ホールディング株式会社)、エチレングリコール0.03重量%(和光純薬工業京都株式会社)、フィッシャートロフィックワックス1.04重量%(サドール社;A859)、アクリル系樹脂0.9重量%(日本触媒株式会社;UV-G301)からなる剥離剤を調剤し、グラビア印刷機60により塗布乾燥し、厚さ0.5μmの剥離層13を形成した。グラビア印刷機60の1種炉61を使用し、加熱温度100~120℃の中に20~50秒滞在させ、厚さ0.5μmの平膜(剥離層13)を作製した。
【0123】
次いで、剥離層13の上に樹脂系保護層14を形成し、調剤を行ない、グラビア印刷機60にて塗布乾燥を行い、厚さ1μmの樹脂系保護層14を形成した。樹脂系保護層14は、トルエン26.9重量%(出光興産株式会社)、MEK(メチルエチルケトン)16.7重量%(出光興産株式会社)、MIBK(メチルイソブチルケトン)14.9重量%(三菱ケミカルホールディングス)、エチレングリコール0.04重量%(和光純薬工業京都株式会社)、アクリル系樹脂20.6重量%(日本触媒株式会社;UV-G301)、アクリル系樹脂11.7重量%(アルファ化研株式会社;シリコンアクリルシリケートUVHA)、アクリル系樹脂1.19重量%(ウィルバー・エリス社;パラロイドAT740)、メラミン樹脂1.49重量%(日本カーバイド株式会社;MS-001)、ケトン系樹脂4.4重量%(ウォーリー社;ポリトンK-97)、紫外線吸収剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin1600)、紫外線吸収剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin479)、光安定剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin249)、光遮断剤0.08重量%(東京化成工業株式会社;サリチル酸フェニル)、硬化剤0.03重量%(東京化成工業株式会社;p-トルエンスルホン酸)等をもって、熱硬化性樹脂系保護層14として調剤とした。
【0124】
熱可塑性樹脂系保護層14としては、上記メラミン樹脂と硬化剤を除外したもので構成した。容積5.28m3の1種炉61を使用し、150~210℃の加熱温度の中を20~50秒滞在させ、厚さ1μmの平膜(熱可塑性樹脂系保護層14)を作製した。
【0125】
次いで、金属層15を形成した。金属はアルミニウムを用い、2室式半連続真空蒸着装置及び高周波誘導加熱金属溶解熱源を用いて被覆膜厚さを30~80nmとした。
【0126】
次に、金属層15上に接着層16を形成した。トルエン50.0重量%(出光興産株式会社)、酢酸エチル37.7重量%(昭和電工株式会社)、酢酸ブチル1.5重量%(株式会社スタンダード石油)、エチルシリケート0.07重量%(コルコート株式会社;エチルシリケート100)、アクリル系樹脂2.7重量%(三菱ケミカル株式会社;コーポニールN2147)、エチレン酢酸ビニル2.7重量%(三菱ケミカル株式会社;ソアノールD2908)、ケトン樹脂3.0重量%(ウォーリー社;ポリトンK-97)をグラビアコータにより厚さ1μm及び2μmの膜を作製した。容積5.28m3の1種炉61を使用し、加熱温度100~120℃の中に20~50秒滞在させ、厚さ1μm及び2μmの平膜(接着層16)を作製した。
【0127】
上述した通り、熱硬化性樹脂系保護層14を含む転写箔10と、熱可塑性樹脂系保護層14を含む転写箔10とを作製した。また、厚さ1μmの接着層16を含む転写箔10と、厚さ2μmの接着層16を含む転写箔10とを製作した。熱圧転写機51を使用し、転写箔10のクラックの発生を評価した。
【0128】
樹脂系保護層14を熱硬化性又は熱可塑性とした場合、接着層16を厚さ1μm又は2μmとした場合について確認を行った。また、真鍮製平版30を用いた上下式転写箔押機31又は真鍮製凸版40を用いた上下式転写箔押機41を用い、被転写体32は厚さ0.9mmの軟質塩化ビニールシートを使い、転写後におけるクラックの発生を確認した。
図11に示される写真は、転写箔10のクラック、割れ、膨れを示す。
図12に示される写真は、凹凸のある被転写体32上の転写箔10のクラックを示す。
図13及び
図14に示される写真は、転写箔10のクラックの開口部を拡大したものである。
【0129】
熱硬化性、熱可塑性を持つ転写積層12を各々、上下式転写箔押機31又は41を使用し、転写温度120℃又は160℃、転写加圧力5Kg/cm2、転写滞在時間0.5秒の条件で転写を行った。熱硬化性及び熱可塑性樹脂系保護層14のいずれにおいても、可塑剤の含有率を3.0%とした。その結果、いずれの転写箔10上にもクラックは認められなかった。軟質塩化ビニールシートの伸張も認められなかった。表1にその結果を示す。表中、「○」は良好を示し、「×」は不良を示す。以下の表でも、これと同じである。
【0130】
【0131】
[実験2]
また、転写滞在時間を変えることによって被転写体32の伸張の変化と転写箔10への影響を次のように設定してその確認を行った。転写滞在時間を0.5秒、0.75秒、1.00秒の3段階に分けた。転写温度160℃、転写加圧力を5Kg/cm2とした。転写機には、凸版40(縦3mm×横6.75mm×高さ2mm)を用いた上下式転写箔押機41を使用した。接着層16の厚さは1μmとした。転写積層12を、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15及び接着層16で構成した。ただし、樹脂系保護層14は、熱硬化性又は熱可塑性樹脂とした。調剤は上記実験1と同じにした。転写後、軟質塩化ビニールシートの伸張を確認したところ、転写滞在時間が0.5秒の場合、軟質塩化ビニールシートの伸張はなかった。転写滞在時間が0.75秒の場合、軟質塩化ビニールシートの転写原寸の2%増の伸張を示した。転写滞在時間が1.00秒の場合、伸長は8.2%増を示した。転写箔10のクラックを確認したところ、0.5秒の場合、クラックを確認できなかった。0.75秒及び1.00秒の場合、クラックを確認した。表2に転写箔10のクラックの状態を記した。ここでは、保護層14を熱硬化性及び熱可塑性に分け、かつ、転写滞在時間を0.5秒、0.75秒及び1.00秒に分けた。
【0132】
また、軟質塩化ビニールシートの転写時の伸張について、転写版と転写版端面から軟質塩化ビニールシートの伸張部を計測した値を割合で表示した伸長割合(%)と、割れた部位の開口幅を計測したクラック開口幅(μm)を表2に記した。転写滞在時間が0.5秒の場合、クラックは発生しなかった。転写滞在時間が0.75秒の場合、軟質塩化ビニールシートは2%伸長し、開口幅は7μmであった。転写滞在時間が1.00秒の場合、軟質塩化ビニールシートは8.2%伸長し、開口幅は282μmであった。これらの結果から、被転写体32である軟質塩化ビニールシート上への加熱、加圧、時間による転写条件が加わり、加圧解放、常温に戻るまでのサイクルによって転写積層12の金属層15は軟質塩化ビニールシートの伸縮する引張応力、圧縮応力の影響を受け、凝集力の弱い金属層15への凝集破壊が進み、金属層15の破断から保護層14の界面、保護層14へと破断の応力が進み、クラックの生成となることが判明した。樹脂系保護層14は、熱硬化性及び熱可塑性のいずれの場合においても、転写滞在時間が0.75秒及び1.00秒のいずれの場合においても、クラックが発生した。その結果を表2に示す。なお、保護層14が可塑剤を含有しない場合、クラック開口幅及び伸長割合のいずれも極めて大きくなった。
【0133】
【0134】
[実験3]
上記実験2の結果から、クラックは転写滞在時間が0.75~1.00秒の場合に発生していることが判明した。これを改善するために、被転写体32の伸縮に対応するための手段を転写箔10中に装備する必要がある。被転写体32には、平面、立体面、硬質材、軟質材、有機材、無機材等多岐材に渡る材質形状がある。被転写体32と転写積層12の間において、転写の際に派生して発生する外力、内力等の各種応力によって、ひずみ、伸び、縮み、ずれ、ねじれ、たわみ、傾斜等の変形への対応が必要とされる。転写積層12は転写作業と被転写体32の間において発生した干渉する変形伸縮に耐えられず、膜破断、剪断に至る。転写積層12は転写破断性を有する膜、被転写体32の伸縮や、転写による各種応力の作用から受ける影響について膜性維持は困難となる。ここにおいて、転写積層12の破断剪断性を維持した状態で、クラック等に耐え、かつ、伸縮性を維持できる形態を検討した。
【0135】
前述した可塑剤の中から選択して、軟質塩化ビニールシートの転写伸張によって生れる転写積層12への変形として、転写箔10のクラック発生への影響に対して、耐性の維持が発揮できるものを樹脂系保護層14の調合において添加材料の選別を行った。樹脂系保護層14、呈色樹脂系保護層14等の調合添加剤として投入するにおいて得る機能として、柔軟性、伸張性、透明性、混合親和性があること、層間密着阻害がないこと、成分移行後の白化現象及び界面変質がないこと、経時変容がないこと、耐熱性に変化を与えないこと、膜の破断性に影響がないこと等が挙げられる。これらを選別のために、基材フィルム11上に順次各層を積層して転写箔10を作製した。
【0136】
基材フィルム11に、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、接着層16等の積層の中で、凝集性の脆弱な金属層15の界面には樹脂系保護層14及び接着層16がある。樹脂系保護層14の伸張性を向上させれば、転写積層12の変形を防ぐことができる。膜の塑性変形から起きるクラックの抑制剤として熱硬化性膜を用い、かつ、柔軟性及び伸張性を得るとともに、軟化点の下降、膜の剪断を防止するために、可塑剤を添加した。
【0137】
厚さ12μmのポリエステル製フィルムの基材フィルム11上に、上記実験1と同じく剥離層13を形成し、次いでその上に樹脂系保護層14を形成した。樹脂系保護層14に対し、トルエン26.9重量%(出光興産株式会社)、MEK17.2重量%(出光興産株式会社)、MIBK(メチルイソブチルケトン)14.9重量%(三菱ケミカルホールディングス)、エチレングリコール0.04重量%(和光純薬工業株式会社)、アクリル系樹脂20.6重量%(日本触媒;UV-G301)、アクリル系樹脂11.7重量%(アルファ化研;UVHA)、アクリル系樹脂1.19重量%(ウィルバー・エリス社;パラロイドAT-740)、メラミン樹脂1.49重量%(日本カーバイド株式会社;MS001)、ケトン系樹脂4.4重量%(ウォーリー社;ポリトンK97)、紫外線吸収剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin1600)、紫外線吸収剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin479)、光安定剤0.08重量%(BASF社;Tinuvin249)、光遮断剤0.08重量%(東京化成工業株式会社;サリチル酸フェニル)、硬化剤0.03重量%(東京化成工業株式会社;p-トルエンスルホン酸)、及び可塑剤1.0重量%を添加した。
【0138】
可塑剤としては、次の(1)~(5)を選択した。
(1)パラフィン類(日本精蝋株式会社;ParaffinWax115)
(2)低分子ポリエステル類(三菱ケミカル株式会社;アジピン酸ポリエステルD620)
(3)リン酸エステル類(東京化成工業株式会社;リン酸エステルPO271)
(4)スルホンアミド類(フジフイルム和光純薬株式会社;ベンゼンスルホンアミド)
(5)エチレンオレフィン類(出光興産株式会社;リニアレン6)
【0139】
塗膜調剤としては、グラビア印刷機60の1種炉61(容積5.28m3)を使用し、150~210℃の雰囲気中を20~50秒通過滞在させて膜形成を行った。膜厚さは1μmとした。次いで、上記実験1と同様に、金属層15及び接着層16を形成し、これにより平膜構造の転写箔10を作製した。次に、凸版40を取り付けた上下式転写箔押機41を使用し、軟質塩化ビニールシート上に熱圧転写を行い、基材フィルム11を引き剥がして、転写姿の確認を行なった。
【0140】
可塑剤の評価項目として、以下の機能を判定した。
1:調剤への混合性(調剤時の混合他材との親和性)
2:製膜の透明性(コーティングの際における塗膜の透過性)
3:製膜の柔軟性(転写装置凸版製版による箔のクラック、軟質塩化ビニールシート被転写材)
4:転写積層12の柔軟性(転写装置凸版製版による箔のクラック、軟質塩化ビニールシート被転写材)
5:転写積層12の耐熱性(転写装置凸版製版、温度160℃、転写滞在時間0.5秒、転写加圧力5Kg/cm2、被転写材、軟質塩化ビニールシート、光輝性の減衰)
6:転写積層12の破断性(転写の際における象形像の転写膜の破断、剪断姿の状態)
7:保護層14の両界面での相溶性(隣接する層界面での親和性、粘着テープ剥離による)
8:転写積層12の伸縮性(転写装置凸版製版、温度160℃、転写滞在時間0.75秒、転写加圧力5Kg/cm2、軟質塩化ビニールシート被転写材上の形象像のクラックの発現有無)
9:保護層14の両界面での層間密着性(転写層を中に上下粘着テープを設け、180℃引き剥がし試験による界面状態の剥離で確認)
10:投入可塑剤の移行性(軟質塩化ビニールシート上の転写物同士を合わせ、荷重500gをかけ、恒温恒湿槽で160℃、48時間経過後、常温に戻し、引き剥がし確認)
【0141】
表3に判定内容と結果を示す。
【0142】
【0143】
(a)パラフィン系及び(b)低分子ポリエステル系は特に柔軟性に乏しいので、選択の対象から除外してもよい。(c)リン酸エステル系は柔軟性に乏しいので、選択の対象から除外してもよい。(d)トルエンスルホンアミド系は全ての評価項目で異常は認められなかった。具体的には、柔軟性及び耐熱性で特徴が認められたが、伸張性、伸縮性、層間密着性、移行性で異常は認められなかった。(e)エチレンオレフィン系は伸張性、伸縮性、層間密着性、移行性で異常が認められたが、移行性で界面誘導性の特徴が認められた。本材の利用は保護層14の金属層15への親和性が向上するように添加量を確定し、効果を確認した。その結果、(d)トルエンスルホンアミド系は全ての評価項目で良好であった。(e)エチレンオレフィン系は界面誘導性を再確認するために選択した。上記の通り、(d)トルエンスルホンアミド系及び(e)エチレンオレフィン系を選択するのが好ましい。
【0144】
[実験4]
【0145】
(d)トルエンスルホンアミド系、(e)エチレンオレフィン系の可塑剤を添加した保護層14を選択した。この2点において、被熱影響の転写積層12における変化の確認をするために、平膜構造の転写積層12を作製し、耐熱性の試験を行った。試験内容としては、転写圧力、透明性、耐熱性、伸縮性、層間密着性、移行性等の結果から発生する転写箔10のクラック、割れ、膨れ等に繋がるものかを耐熱試験の評価を通して行った。
【0146】
耐熱性の評価は次のような内容で行った。縦10cm×横10cm×厚さ0.5cmの透明ガラス上に、長さ10cm×幅3cm×厚さ1μmのアクリル系バインダ膜をシルクスクリーンで印刷コーティングし、乾燥させた樹脂膜を被転写体32とした。
【0147】
基材フィルム11上に剥離層13を設けた保護層14中に、(d)トルエンスルホンアミド系可塑剤を含有した熱硬化性保護層14を含む転写箔10を作製した。さらに、保護層14中に、(e)エチレンオレフィン系可塑剤を含有した保護層14を含む転写箔10も作製した。
【0148】
図5に示されるロール式熱圧転写機51を使用し、上記2種類の転写箔10を熱圧転写した。転写機51はシリコンゴムローラを加熱加圧媒体とし、ガラス上に形成されたアクリル系樹脂層に転写線圧力0.5Kg/cm
2、箔送り速度2.5m/秒、ローラ被熱温度200℃の条件で転写した。転写後2時間経過後、恒温槽に、ガラス基材に転写された上記2種類の検体を各5点作製したものを入庫した。常温から380℃まで200分かけて昇温した後、5分間滞在させて後、150分かけて常温まで降温した。降温後12時間経過後取り出して検体上の転写積層12の確認を行った。目視による結果を、透明性の変化による光沢減衰、メタライジング効果への影響、可塑剤の保護層14内の移行による密着性の阻害、転写積層12に発生するクラック、被転写体32と転写積層12間に生じる割れ、転写積層12に生じる膨れ等の項から添加した可塑剤の効果を識別評価した。
【0149】
(d)トルエンスルホンアミド系可塑剤については、光輝性、密着性、クラック発生、割れの発生、膨れの発生など、いずれの不具合も発生は認められなかった。(e)エチレンオレフィン系可塑剤については、密着性において、セロハンテープ引き剥がし試験で剥離層13と保護層14との間、及び保護層14と金属層15との間で一部層間剥離現象が発生した。(d)トルエンスルホンアミド系可塑剤は保護層14内に留まり、(e)エチレンオレフィン系可塑剤は保護層14の熱硬化膜中の移行性を示したものとなった。
【0150】
上記の評価結果を表4に示す。
【0151】
【0152】
それぞれ5つの検体を作製した。評価結果はいずれも表4の結果となった。
【0153】
[評価方法]
耐熱性:熱圧転写機51を使用し、温度160℃、転写線圧力0.5Kg/cm2、転写滞在時間0.5秒で転写を行った。
光輝性:温度160℃、転写線圧力0.5Kg/cm2、転写滞在時間0.5秒で転写を行った後、目視で確認した。
密着性:15mm幅の粘着テープを用い、180度引き剥がし試験で確認した。
クラック発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
割れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
膨れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
【0154】
[評価結果]
(d)トルエンスルホンアミド系:熱処理上に不具合は見られなかった。
(e)エチレンオレフィン系:密着性にて層間剥離の不具合が発現した。
【0155】
[実験5]
上記実験4の結果については、(e)エチレンオレフィン系可塑剤については保護層14の両界面において一部層間剥離の現象が発生した。可塑剤の調剤されている保護層14は熱硬化性膜であり、この膜中の凝集した樹脂鎖に封鎖されることなく、(e)エチレンオレフィン系可塑剤が剥離層13及び金属層15の両界面まで移行し、到達していることを示した。
【0156】
膜構造として、保護層14の弾性を低下させ、破断性を維持し、伸張性を増加させ、移行誘導性を維持した状態で、柔軟性を与え、界面密着性を維持させるため等を補完させるため、添加量の特定を行った。
【0157】
保護層14に添加の(e)エチレンオレフィン系可塑剤の量を0.075重量%、0.05重量%、0.025重量%に定めて調剤を行ない、転写積層12を形成し、平膜構造の転写箔10を作製した。
【0158】
前記の如くガラス基板に樹脂加工を行い、ロール転写を行い、恒温槽に滞在させ、取り出して前記に順じて性能確認を行った。結果を表5に示す。表中、「△」は不良ではないが、欠陥を含むことを示す。
【0159】
(e)エチレンオレフィン系可塑剤について、その添加量の上限を0.025重量%とすると、密着性に変化なく有効であることが判明した。材料の移行誘導性等として柔軟性の伝播材として他の可塑剤とともに樹脂系保護層14の柔軟性の層間伝播剤として利用できるものとなった。
【0160】
上記の評価結果を表5に示す。
【0161】
【0162】
[評価方法]
耐熱性:視認により確認した。
密着性:恒温槽から取り出した後、15mm幅の粘着テープを用いて、180度引き剥がし試験を行った。
クラック発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
割れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
膨れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
【0163】
[評価結果]
耐熱性:光輝性に変化はなく、いずれも良好を示した。
層間密着性:添加量0.075重量%の場合は不良を示し、0.05重量%の場合は欠陥を含むことを示し、0.025重量%の場合は良好を示した。
(e)エチレンオレフィン系可塑剤は、添加量0.025重量%で、耐熱試験後における密着性、クラック発生、割れ発生、膨れ発生を視認した結果、膜変質と無関係で、耐性を維持できることを確認した。
【0164】
[実験6]
上記の経過によって、(e)エチレンオレフィン系可塑剤は熱硬化性樹脂膜の保護層14で、その硬化性樹脂膜中の層界面まで移行する現象が生じた。保護層14の界面剥離に繋るものとなった。さらに、添加量の調整を試みた結果、0.025重量%の添加量を上限として、層間密着の剥離については異常の発現はなく、保護層14の中で移行誘導性に関与できるものとなった。
【0165】
保護層14への含有可塑剤として、リン酸エステル系、トルエンスルホンアミド系、エチレンオレフィン系可塑剤については耐熱性については用いることができることは実験3で確認されている。
【0166】
可塑剤投入の効果としては、保護層14における柔軟性の生成、保護層14の界面への柔軟性の伝播を移行誘導させることによって、保護層14の界面は金属層15との接合性につきその親和を引き上げることが予測される。グラビア印刷機60による熱処理を通して保護層14の界面変性を可塑剤投入で行うことにより混合性、透明性、破断性、相溶性、柔軟性、耐熱性、移行誘導性が熱硬化性膜中に生まれる。可塑剤を含有した保護層14の温度幅の広がりは、保護層14の硬化性膜中の界面にまで到達していく。保護層14の持つ熱硬化性の強靭な膜は、耐熱性を維持したまま、樹脂系保護層14と金属層15とを柔軟性のある膜に変性していく場合、含有させる可塑剤として移行誘導性は必要な条件となる。
【0167】
実験1にある熱硬化性樹脂系保護層14の調剤に可塑剤ベンゼンスルホンアミド1重量%(富士フィルム和光純薬株式会社)、可塑剤エチレンオレフィン系樹脂0.025重量%(出光興産株式会社;リニアレン6)を追加添加することによって、柔軟性、耐熱性、移行誘導性の発現を課して、剥離層13、保護層14、金属層15、接着層16を形成し、平膜構造の転写積層12を作製した。
【0168】
実験4に挙げたガラス基版上の加工に準じて実行し、ロール式転写装置による熱圧転写を実施して、恒温槽に滞在させる耐熱試験を実施して、取り出して確認を行った。クラック、割れ、膨れの現象は認められなかった。結果を表8に記した。グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61を用いたコーティング製膜は、強靭な熱硬化性樹脂膜中に、(d)トルエンスルホンアミド系可塑剤、(e)エチレンオレフィン系可塑剤を添加することによって、柔軟性、耐熱性、柔軟性の移行誘導性が加味されるものとなった。
【0169】
上記の評価結果を表6に示す。
【0170】
【0171】
[評価方法]
ガラス基盤に樹脂コートを行い、ロール式転写法にて転写後、恒温槽に入庫して、常温から380℃に昇温し、5分間滞在させ、常温まで降温した後、耐性を確認した。その他、上記実験2と同様に実施した。
耐熱試験後の界面密着性:15mm幅の粘着テープを用いて、180度引き剥がし試験を行った。
クラック発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
割れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
膨れ発生:検体を500倍に拡大して目視で確認した。
【0172】
[評価結果]
表6に記載の通り、耐熱試験の結果、保護層14と剥離層13又は金属層15との界面密着性について不具合は認められなかった。クラック、割れ、膨れの現象についても変質は見られなかった。
【0173】
[実験7]
ベンゼンスルホンアミド系可塑剤1重量%及びエチレンオレフィン系可塑剤0.025重量%を投入して調剤した保護層14を作製した。これを用いて樹脂系保護層14を形成した。基材フィルム11上に、剥離層13、保護層14、金属層15及び接着層16からなる平膜構造の転写積層12を形成して検体を作製した。この検体を用い、上下式転写箔押機41を使用して凸版40(縦3mm×横6.75mm×凸部の高さ2mm)で軟質塩化ビニールシート上に熱圧転写を行った。転写温度160℃、転写圧力5Kg/cm2、転写滞在時間は各要領で実施した。軟質塩化ビニールシートの伸張に対して転写積層12の追従性を確認した。軟質塩化ビニールシートへの転写時伸張とクラック発生との結果を表7に示す。
【0174】
転写滞在時間0.5秒時間においては、軟質塩化ビニールシートの伸張は確認されず、開口は発現せず、クラック、割れの現象も認められなかった。転写滞在時間0.75秒時においては、2.4%の伸張があり、割れの開口幅は8.4μmであった。転写滞在時間1.00秒時においては、11.48%の伸張があり、割れの開口幅は394μmであった。
【0175】
さらに、熱圧転写時において、軟質塩化ビニールシートの伸張と、転写積層12の開口及びクラックの発生を確認するために、転写滞在時間0.5秒から0.75秒までの間を0.58秒、0.66秒、0.74秒と区切って設定した。その結果、転写滞在時間0.58秒においては、シートの伸張は0.8%、開口幅は0μmであった。転写滞在時間0.66秒においては、シートの伸張は1.6%、開口幅は5.6μmであった。転写滞在時間0.74秒においては、シートの伸張は2.4%、開口幅は8.4μmであった。可塑剤を含有する保護層14を含む平膜構造の転写積層12は、軟質塩化ビニールシートの伸張に対する転写積層12の追従性につき、転写滞在時間0.58秒において、軟質塩化ビニールシートに起こる伸張の0.8%に達する場合まで耐えることが判明した。
【0176】
上記の評価結果を表7~表9に示す。
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
保護層14は、調剤中に可塑剤を選択して1種以上を投入した。耐熱性と柔軟性を合わせ持ち、保護層14と金属層15の定着性は良く、両層の伸張は上記実験7の経過を観ると、表7に示す。転写滞在時間0.58秒において、ポリ塩化軟質ビニールシートの伸張率は0.8%となり、可塑剤2種添加された転写箔10にはクラック開口は認められなかった。樹脂系保護層14に受けた可塑剤の効果となり、被転写体32の伸張において追従することが判明した。
【0181】
可塑剤を含有する保護層14の持つ柔軟性は製膜時にかかる内部応力を弱めることによって、金属層15に対する膜破断、膜剪断を同時に弱めることができる。転写時において被転写体32に起こる伸張、転写積層12に起こる伸張によって金属層15に生まれる凝集破壊から出現する転写積層12のクラック、割れ、膨れ等を緩和することができる。被転写体32が0.8%以上の伸張を示すときは保護層14、金属層15に加わる内部応力、破断剪断応力を弱められず、光輝性の減退や、経時によって被転写体32より脱箔するおそれがある。
【0182】
【0183】
基材フィルム11としては、ポリエチレンテレフタレート類などのポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド等が挙げられる。フィルムの厚みは12~75μmの中から選ばれる。基材フィルム11と保護層14の間には剥離層13を設けている。樹脂類、ワックス類をもってなる層であり、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ワックス類等が使用でき、単品か1種以上の混合体でも良い。剥離層13の厚みは0.1~10μmが良い。保護層14は、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ケトン系樹脂、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤光遮断剤、染料、顔料、無機剤、可塑剤は1種以上を使用した調剤となる。厚みは1~20μmが良い。金属層15はAg、Cu、Sn、In、Al、Ni、Cr、Si、Zn、In2O3、CdO、CdIn2O4、Cd2SnO4、TiO2、SnO2、ZnO、SiO2、ZrO2、ZnS、MgF2等の1種以上の金属を使用する合金も使用できる。金属層15の厚みは20~60nmが良い。金属層15としては湿式鍍金、乾式鍍金、化学鍍金より製膜できる。樹脂系保護層14と金属層15との定着性を考慮に入れると、乾式鍍金を選択する。具体的には、真空蒸着、電子線蒸着、化学蒸着等の蒸着、スパッタリング等が挙げられる。接着層16は被転写体32と転写積層12(修飾積層)を接着する機能を持つ、接着剤としては、アクリル系樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。1種以上の混合された調剤でも良い、接着層16の厚みは1~10μmの間が良い。被転写体32としては樹脂、金属、金属、木材、皮革、繊維等がある。剥離層13、保護層14、接着層16はグラビア印刷機60を使用とする。金属層15は2室式半連続真空蒸着装置を使用する。
【0184】
転写積層(修飾積層)12
基材フィルム11と剥離層13の間にフィルム保護層22を設けることがある。アミノ系樹脂と硬化剤の中からメラミン系樹脂、スルホン酸系硬化剤を用いてグラビア印刷機60を用いて塗布する。基材フィルム11の表面の平滑性確保と剥離性の均一化の確保のために用いる。製膜は基材フィルム11に接着する。
厚みは0.5~5μmの間が良い。
【0185】
金属層15と接着層16の間に樹脂系保護層14を設けることができる。基材フィルム11、剥離層13、樹脂系保護層14、金属層15、樹脂系保護層14、接着層16の構造では両保護層14を同一のものを用いることによって金属層15の凝集破壊をさらに回避することができる。剥離層13と金属層15の間には呈色剤を用いた呈色樹脂系保護層14を設けることができる。さらに、樹脂系保護層14は重層することもできる。金属層15は取り除いた転写積層12とすることもできる。
【0186】
[実験8]
基材フィルム11に厚み12μmのポリエステル製フィルムのベースフィルムを使用し、その上に剥離層13を形成した。乾燥炉1種炉61(容積5.28m3)を持つグラビア印刷機60は、遠赤外線ヒータ67、熱風装置69により100~140℃の中、炉内走行滞在時間20~50秒の範囲で0.5~0.8μmの厚さに製膜した。調液は実験1と同等とした。保護層14は、乾燥炉1種炉61(容積5.28m3)を持つグラビア印刷機60を用い、遠赤外線ヒータ67、熱風装置69により炉内温度の150~210℃の中を20~50秒滞在時間走行させて1~2μm厚さの平膜を作製した。保護層14の調液は実験1と同じく熱硬化性樹脂膜とした。可塑剤として、ベンゼンスルホンアミド1重量%(富士フィルム和光純薬株式会社)、エチレンオレフィン系樹脂0.025重量%(出光興産株式会社リニアレン6)を添加した。その後、金属層15を形成した。2室式半連続真空蒸着装置及び高周波誘導加熱金属溶解熱源を用い、厚さ40~60nmのアルミニウムで保護層14を被覆した。次に、接着層16を形成した。調合は実験1と同じものとした。グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61で80~110℃の炉内温度で20~50秒の滞在走行時間で1μmの厚さで製膜を行った。
【0187】
この平膜構造の転写箔10を使用し、実験4に記載されたガラス試験片を10枚作製してロール式転写機51にて転写を行い、恒温槽に入庫して耐熱試験を行った。常温から380℃まで200分かけて昇温した後、5分間滞在させ、その後、150分かけて常温まで降温した。恒温で12時間経過後に取り出し、検体上の転写積層12の確認を行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、いずれも異常は認められなかった。
【0188】
[実験9]
基材フィルム11に厚み12μmのポリエステル製フィルムのベースフィルムを使用し、その上に剥離層13を形成した。乾燥炉1種炉61(容積5.28m3)を持つグラビア印刷機60は、遠赤外線ヒータ67、熱風装置69により100~140℃の中、炉内走行滞在時間20~50秒の範囲で0.5μm~0.8の厚さに製膜した。調液は実験1と同等とした。保護層14は、乾燥炉1種炉61(容積5.28m3)を持つグラビア印刷機60を用い、遠赤外線ヒータ67、熱風装置69により炉内温度の150~210℃の中を20~50秒滞在時間走行させて1~2μm厚さの平膜を作製した。保護層14の調液は実験1と同じく熱硬化性樹脂膜とした。可塑剤として、ベンゼンスルホンアミド1重量%(富士フィルム和光純薬株式会社)、エチレンオレフィン系樹脂0.025重量%(出光興産株式会社リニアレン6)を添加した。その後、乾燥炉2種炉62を持つグラビア印刷機60を用い、100~210℃の炉内温度の中を20~50秒の炉内滞在時間を要するドライ膜をベイキングするアニール処理を行った。その後、金属層15を形成した。2室式半連続真空蒸着装置及び高周波誘導加熱金属溶解熱源を用い、厚さ40~60nmのアルミニウムで保護層14を被覆した。次に、接着層16を形成した。調合は実験1と同じものとした。グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61で80~110℃の炉内温度で20~50秒の滞在走行時間で1μmの厚さで製膜を行った。
【0189】
この平膜構造の転写箔10を使用し、表2に示したガラス試験片を10枚作製してロール式転写機51にて転写を行い、恒温槽に入庫して耐熱試験を行った。常温から380℃まで200分かけて昇温した後、5分間滞在させ、その後、150分かけて常温まで降温した。恒温で12時間経過後に取り出し、検体上の転写積層12の確認を行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、いずれも異常は認められなかった。
【0190】
[実験10]
基材フィルム11に厚み12μmのポリエステル製フィルムのベースフィルムを使用し、その上に剥離層13を形成した。乾燥炉1種炉61を持つグラビア印刷機60にて樹脂系保護層14を製膜した。その後、アルミニウムで金属層15を形成した。その後、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62を用い、基材フィルム11、剥離層13、保護層14、金属層15の形成された状態で、炉内温度150~210℃、炉内走行滞在時間20~50秒の条件下で、加熱してアニール処理を行った。その後、接着層16を前記に準じて形成した。平膜構造の転写積層12を得た。耐熱試験を前記に準じて行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、いずれも異常は認められなかった。
【0191】
[実験11]
基材フィルム11に厚み12μmのポリエステル製フィルムのベースフィルムを使用し、その上に剥離層13を形成した。乾燥炉1種炉61を持つグラビア印刷機60にて樹脂系保護層14を製膜した。その後、アルミニウムで金属層15を形成する。その後、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62を用い、基材フィルム11、剥離層13、保護層14、金属層15の形成された状態で、炉内温度150~210℃、炉内走行滞在時間20~50秒の条件下で、加熱してベイキング処理を行った。炉内の遠赤外線ヒータ67による加熱処理に加えて炉内へ熱風装置69にて100~140℃の熱風を送気した。さらに、炉に直結した炉外加圧装置71を用い、転写線圧10~50Kg/cm2が得られる金属ロールにEPDMロールが加圧されている間を通過させた。続いて、炉外冷却装置72を用い、5~15℃を維持した金属ロールにSiロールが加圧されたロール間を基材フィルム11、剥離層13、保護層14、金属層15ともに通過させた。その後、接着層16を前記に準じて形成した。平膜構造の転写積層12を得た。耐熱試験を前記に準じて行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、いずれも異常は認められなかった。
【0192】
[実験12]
実験11に準じた製膜作業において、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62による加熱温度を180~210℃において熱風120~140℃を設定したアニール処理、加圧、冷却することにより、凹凸のある畝皺状を呈する連続した立体構造になった。耐熱試験を前記に準じて行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、いずれも異常は認められなかった。
【0193】
立体構造をした転写積層12の転写後の表面を拡大して確認した写真を
図23~
図25に示す。放物線状の弓形断面は次のようになった。すなわち、
図23では、弦の長さは22.30μm、高さは13.87μm、弧の長さは37.25μmになった。
図24では、弦の長さは21.96μm、高さは35.98μm、弧の長さは66.29μmになった。
図25では、弦の長さは66.29μm、高さは267.30μm、弧の長さは542.70μmになった。
【0194】
剥離層13、保護層14、金属層15、接着層16の形成膜は、可塑剤の添加、グラビア印刷機60による加熱、熱風、加圧、冷却の工程を通じることにより、製膜の変性が生成されて層間の接合に至り、膜伸張の負荷に臨んでも不具合の発生はないものとなった。
【0195】
[実験13]
実験11に準じた製膜作業において、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62による加熱温度を120~160℃において熱風80~100℃を設定したアニール処理、加圧、冷却することにより、平膜を呈する転写積層12を得た。実験12の処理では立体構造になったが、本実験13の処理では平膜構造になった。耐熱試験を前記に準じて行った。目視による結果をクラック、割れ、膨れ、光沢減衰において行い、平膜構造、立体構造、いずれも異常は認められなかった。
【0196】
実験8~13の耐熱試験によるクラック、割れ、膨れ、光沢について評価結果を表10に示した。
【0197】
【0198】
転写積層12体のクラック、割れ、膨れに対する対処においては実験8~13においてのいずれの製法を採用しても可能となる。実験8の製法においては、表9に示したように、被転写体32の0.8%までの伸張に追従する平膜の転写積層12を示している。実験12の製法においては、上述したように、立体膜の転写積層12の伸張は弓形放物線弧の断面の長さ40~550μmを示している。この伸張性を得る手段は、上述したように、平膜状、立体膜状の構造に作り分けることができるものとなっている。グラビア印刷機60の乾燥炉1種炉61、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62によって、加熱、熱風による調液の乾燥、保護層14のドライ膜のアニール処理、加圧装置71、冷却装置72による処理を介することによる保護層14、金属層15の硬質化、軟質化、応力の変性を図ることによって、金属光沢を失うことなく、平膜、立体膜の転写積層12の伸張追従性を図ることができる。実験8~12に準じて、(1)剥離層13、保護層14の1種炉61による乾燥、2種炉62によるアニール乾燥、金属層15、接着層16、(2)剥離層13、保護層14の1種炉61による乾燥、金属層15、2種炉62によるアニール処理、接着層16、又は(3)剥離層13、保護層14の1種炉61による乾燥、金属層15、2種炉62による熱風処理を含むアニール処理、加圧処理、冷却処理、接着層16、ここまでは、各処理の制御により、膜を平らに形成することができる。さらに、剥離層13、保護層14の1種炉61による高温乾燥、金属層15、2種炉62による熱風処理を含む高温アニール処理、加圧処理、冷却処理、接着層16、保護層14と金属層15の高温処理においては、膜を立体的に形成することができる。
【0199】
表11~表13に、樹脂系保護層14、金属層15の加工、加工順序、耐性、伸張を示す。
【0200】
【0201】
【0202】
表中、○は良好を示し、×は不良を示す。
【0203】
【0204】
[実験14]
基材フィルム11の上に、剥離層13及び樹脂系保護層14を形成した後、2室式半連続真空蒸着機を用いて金属層15を形成した。具体的には、厚さ20~65nmの範囲でAl、Cr、Snの金属層15をそれぞれ形成した。その後、接着層16を形成し、これにより転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を測定した。Alの分光反射率L=89.44、Crの分光反射率L=62.36、Snの分光反射率L=68.31であった。
【0205】
[実験15]
基材フィルム11の上に、剥離層13、含金染料を含有する呈色樹脂系保護層14、厚さ20~65nmのAlの金属層15、厚さ1μmの感圧感熱性接着層16を形成することにより、転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を呈色樹脂系保護層14を介して測定した。Alの分光反射率L=80.21であった。JISZ8781-4による空間色度L*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて測定した。明度色度は、L=80.21、a=3.86、b=28.54であった。転写積層12は、金属層15の反射を得て、透過性のあるメタライジングされた金色を呈する平膜構造である。
【0206】
[実験16]
基材フィルム11の上に、剥離層13、微粒子化した透過性のある顔料を含有する呈色樹脂系保護層14、厚さ20~65nmのAlの金属層15、厚さ1μmの感圧感熱性接着層16を形成することにより、転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を呈色樹脂系保護層14を介して測定した。Alの分光反射率L=82.15であった。JISZ8781-4による空間色度L*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて測定した。明度色度は、L=82.15、a=-0.04、b=24.49であった。転写積層12は、金属層15の反射を得て、透過性のあるメタライジングされた金色を呈する平膜構造である。
【0207】
[実験17]
基材フィルム11の上に、剥離層13、汎用顔料を含有する呈色樹脂系保護層14、厚さ20~65nmのAlの金属層15、厚さ1μmの感圧感熱性接着層16を形成することにより、転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を呈色樹脂系保護層14を介して測定した。明度色度は、JISZ8781-4による空間色度L*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて測定した。顔料を含有する呈色樹脂系保護層14は、その隠蔽性の出現によりAlの反射率は低くなった。Alの分光反射率Lは、青色の顔料を含有する場合はL=43.99、ピンク色の顔料を含有する場合はL=61.28、赤色の顔料を含有する場合はL=45.84、黄色の顔料を含有する場合はL=81.85、黒色の顔料を含有する場合はL=31.63であった。
【0208】
[実験18]
基材フィルム11の上に、剥離層13、含金染料を含有する呈色樹脂系保護層14、厚さ20~65nmのAlの金属層15を形成した後、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62を使用し、アニール処理による加熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理を行い、金属層15までの積層を立体膜にした。さらにその上に接着層16を形成することにより、転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を呈色樹脂系保護層14を介して測定した。Alの分光反射率L=75.40であった。JISZ8781-4による空間色度L*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて測定した。明度色度は、L=75.40、a=3.06、b=28.67であった。転写積層12は、金属層15の反射を得て、透過性のあるメタライジングされた金色を呈する立体構造である。
【0209】
[実験19]
基材フィルム11の上に、剥離層13、透明な樹脂系保護層14、厚さ20~65nmのAlの金属層15を形成した後、グラビア印刷機60の乾燥炉2種炉62を使用し、アニール処理による加熱処理、熱風処理、加圧処理、冷却処理を行い、金属層15までの積層を立体膜にした。さらにその上に接着層16を形成することにより、転写積層12を作製した。次に、熱圧転写機51を用い、カレンダリングされた光沢厚紙に、転写温度100~140℃、転写滞在時間0.5秒、圧力5Kg/cm2で、転写積層12を転写した後、その表層をスペクトロカロリーメータ(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて金属層15の反射率を透明な樹脂系保護層14を介して測定した。Alの分光反射率L=87.74であった。JISZ8781-4による空間色度L*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を用いて測定した。明度色度は、L=87.74、a=-0.17、b=0.76であった。転写積層12は、金属層15の反射を得て、透過性のあるメタライジングされた銀色を呈する立体構造である。
【0210】
【0211】
金属層15の分光反射率から保護層14の反射率の減衰を確認した。実験16では、微細化した顔料による透過性の良好な状態が判明した。実験19では、立体構造の製膜でもAlの金属層15の反射率は変化しないことが判明した。実験16では、保護層14の顔料は、含金染料と同等の呈色及び透過性を示すことが判明した。実験17では、汎用顔料はいずれもAlの金属層15の反射を遮蔽した。実験18及び19では、立体構造からくる分光反射率の減衰は認められなかった。
【0212】
[実験20]
基材フィルム11を架体支持とし、剥離層13、透過性のある顔料を用いた呈色樹脂系保護層14、Alの金属層15及び接着層16からなる転写積層12を形成した。剥離層13は次の通り設定した。すなわち、溶媒として、トルエン72.2重量%(出光興産株式会社)、MIBK25.4重量%(三菱ケミカルホールディングス)、エチレングリコール0.03重量%(京都和光純薬工業株式会社)を用い、溶質として、フィッシャートロフィックワックス1.07重量%(サドール社;A859)、脂肪酸エステル0.04重量%(日油株式会社;WEP)、アクリル系樹脂0.9重量%(日本触媒株式会社;UV-G301)を用い、これらを調合した。グラビア印刷機60を使用し、炉内乾燥温度90~140℃、乾燥炉61,62内の滞在時間20~60秒、厚さ0.1~20μmの条件で、膜を形成した。樹脂系保護層14は、呈色剤として顔料を採択した。具体的には、トルエン14.6重量%(出光興産株式会社)、酢酸ブチル8.7重量%(株式会社スタンダード石油)、MEK17.0重量%(出光興産株式会社)、MIBK17.0重量%(三菱ケミカルホールディングス株式会社)、エチレングリコール0.004重量%(京都和光純薬工業株式会社)、アクリル系樹脂20.5重量%(日本触媒株式会社;UV-G301)、アクリル系樹脂1.1重量%(ウィルバー・エリス;AT740)、メラミン樹脂1.3重量%(日本カーバイド;MS-001)、ケトン系樹脂4.3重量%(ウォーリー社;K-95)、硬化剤0.1重量%(東京化成工業株式会社;p-トルエンスルホン酸)、赤色系酸化鉄1.0重量%(御国色素株式会社;8196M)、黄色系酸化鉄0.05重量%(御国色素株式会社;8197M)、赤色系顔料1.0重量%(デュポン社;シンカシャレッドB)、黄色系顔料0.95重量%(BASFジャパン株式会社;パリオトールイエロー1070)を配して調合液とした。剥離層13及び樹脂系保護層14は、グラビア印刷機60を使用し、乾燥炉61,62内の温度100~180℃、滞在時間20~60秒、厚さ0.5~20μmの条件で、膜を形成した。樹脂系保護層14の厚さを1~10μmの範囲とすることはさらに良い。顔料の粒度を10~80nmの範囲にすることは、呈色性、透過性、金属層15からの反射性を得てメタリック性を出現させることで、呈色材として顔料を使用する上で必要となる。顔料類は、ビーズミル型顔料分散機KD-5型DYNO-MIL社製を用い、微粒子分散に整粒した。金属層15は、厚さ40~60nmのアルミニウムを蒸着した。接着層16の厚さは1~10μm、乾燥温度は80~140℃、炉内走行滞在時間10~40秒とした。調剤は、トルエン51.7重量%(出光興産株式会社)、酢酸エチル37.7重量%(昭和電工株式会社)、酢酸ブチル1.5重量%(株式会社スタンダード石油)、エチルシリケート0.7重量%(コルコート株式会社;HAS-10)、アクリル系樹脂2.7重量%(三菱ケミカル株式会社;N2147)、エチレン酢酸ビニル系樹脂2.7重量%(三菱ケミカル株式会社;D2908)、ケトン系樹脂3.0重量%(ウォーリー社;K-95)を用いた。
【0213】
完成した転写箔10の樹脂系保護層14の呈色は、顔料を使用しているにもかかわらず、透明性の高いものとなった。平滑にカレンダ処理され、表面を樹脂コートされたボール紙上に、上下式熱圧転写機51を用いて転写を行い、検体(転写された転写積層12)を作製した。キセノンアーク式耐光性試験機(スガ試験機株式会社;XT1500)を使用し、800時間経過後に検体を取り出し、分光式色彩色差計(日本電色工業株式会社;SZS-Σ90)を使用し、呈色の変位ΔEを計測した。曝露の有無の結果を表15に表す。微細化した顔料を含む樹脂系保護層14を持ち、透明性のある金色呈色の金属反射を得たメタリック層となった転写積層12は、耐光性に優れるものとなった。
【0214】
【0215】
[実験21]
実験20では、微細化した透明性のある顔料を用いた転写積層12は、金属層15を持つため、メタリックな呈色を示し、かつ、耐光性を有するものが得られた。実験22では、さらに公知の材を使用し、耐光性の耐性の助長を計るものとした。
【0216】
微細加工され、透明性のある顔料が呈色性を示し、メタライジング感なる金属層15の反射が得られる転写積層12の耐光性の耐性の追備を課すものとした。基材フィルム11の上に、剥離層13、呈色樹脂系保護層14、金属層15、接着層16を形成してなる転写積層12において、剥離層13及び呈色樹脂系保護層14に次のものを添加して耐光性の向上を試みた。
【0217】
紫外線を受けた呈色樹脂系保護層14は、ポリマーの水素原子が切断され、ヒドロペルオキシードとなり、ポリマーの劣化を進行させる。これを抑止するために、ヒンダードアミン系材を使用する。光分解によるラジカル発生の連鎖反応としてポリマーの劣化が発生するが、これを抑制する。紫外線をほとんど吸収しないアクリル系樹脂を選択するとともに、耐光性の良いシリコン、光遮蔽性のあるシリケート系材、光安定剤としてのヒンダードアミン等の重合されているアクリル重合材を選択した。アクリル系樹脂には、ヒンダードアミンが重合された日本触媒製ハルスハイブリッドUV-G301、アクリル樹脂には、シリコン、シリケート、ヒンダードアミンが重合されたアルファ化研株式会社製のUVHを選択した。また、樹脂への紫外線による光分解作用への安定剤として、中性仕様の単量体のヒンダードアミンであるBASF社製のTinuvin249を選択した。紫外線吸収剤としてヒドロキシフェニルトリアジン系材を選択した。具体的には、BASF社製のTinuvinタイプの中から波長域を選択してTinuvin479、1600を選択した。光遮蔽剤として、粒径10~80nmに微細化した酸化鉄類、酸化チタン、耐光性の良い呈色する有機顔料類を選択した。光作用の禁止剤として、遮断効果のある紫外線光量子を高分子鎖に移さないサリチル酸フェニルを選択した。剥離層13においては、紫外線の遮蔽剤として、酸化チタン、酸化鉄、サリチル酸フェニルを用い、バインダとして、ヒンダードアミンを重合材としてあるアクリル系樹脂を選択した。剥離層13の調合は、トルエン72.2重量%(出光興産株式会社)、MIBK25.4重量%(三菱ケミカルホールディングス)、エチレングリコール0.03重量%(京都和光純薬工業株式会社)、フィッシャートロフィックワックス1.07重量%(サドール社A859)、脂肪酸エステル0.04重量%(日油株式会社;WEP)、アクリル系樹脂0.91重量%(日本触媒株式会社)、ヒンダードアミンが重合されたハルスハイブリッドUV-G301、酸化鉄0.05重量%(御国色素株式会社;8197M)、酸化チタン0.062重量%(石原テクノ株式会社;TTO-55D)、サリチル酸フェニル0.081重量%(東京化成工業株式会社)とした。呈色樹脂系保護層14の調合は、トルエン14.65重量%(出光興産株式会社)、酢酸ブチル8.57重量%(株式会社スタンダード石油)、MEK17重量%(出光興産株式会社)、MIBK17重量%(三菱ケミカルホールディングス株式会社)、エチレングリコール0.0039重量%(京都和光純薬工業株式会社)、アクリル型樹脂1.08重量%(ウィルバー・エリス社;AT740)、アミノ系樹脂1.37重量%(日本カーバイド株式会社;MS-001)、ケトン系樹脂4.32重量%(ウォーリー社;K95)、アクリル系樹脂20.5重量%(日本触媒株式会社;UV-G301)、アクリル系樹脂11.7重量%(アルファ化研株式会社;UVHA)、紫外線吸収剤0.078重量%(BASF社;Tinuvin1600)、紫外線吸収剤0.078重量%(BASF社;479)、酸化セリウム0.157重量%(多木化学株式会社;B10)、酸化チタン0.157重量%(石原テクノ株式会社;TTO-55T)、酸化鉄0.049重量%(御国色素株式会社;8197M)、酸化鉄0.9836重量%(御国色素株式会社8196M)、赤色系顔料0.9836重量%(デュポン社;シンシャカレッドB)、黄色系顔料0.934重量%(BASF社;パリオトールイエロー1070)、サリチル酸フェニル0.078重量%(東京化成工業株式会社)とした。酸化セリウムの粒径は10~30nm、酸化チタンの粒径は10~40nm、酸化鉄類の粒径は40~100nm、呈色顔料の粒径は60~100nmの整粒範囲が透過性を先導し、呈色効果として良い。金属層15及び接着層16については、上記に準じて成膜を行った。剥離層13、呈色樹脂系保護層14及び接着層16については、グラビア印刷機60を使用し、乾燥温度90~180℃、乾燥炉61,62内の滞在時間20~60秒、厚さ0.1~20μm、乾燥炉1種炉61(容積5.28m3)で、成膜を行った。
【0218】
[実験22]
実験20に記載の仕様に基づいて実験21に記載の耐光試験を行った。本実験22では、実験21による転写積層12を検体とした。耐光試験の結果を表16に表す。
【0219】
【0220】
樹脂系保護層14の呈色効果としては、原姿のAlの金属層15の反射率は81.33%で、透過性の高いものとなった。1400時間経過後においても金属層15の反射率は81.53%と原姿と同水準であった。空間色度Lab値の1400時間経過後の変化について、ΔEは1.23で、原姿と同等の呈色となった。微細化加工した透明性の高い呈色を有する顔料を含有する金属層15の反射率が高いものとなった。剥離層13の調剤には、ヒンダードアミンを含有するアクリル系樹脂、微細加工された酸化鉄、酸化チタン、光遮蔽剤であるサリチル酸フェニルを投入した。呈色樹脂系保護層14の調剤には、ヒンダードアミンが重合されたアクリル系樹脂、ヒンダードアミン、シリコン、シリケート、ヒンダードアミンが重合されたアクリル系樹脂、紫外線吸収剤、酸化セリウム、酸化チタン、サリチル酸フェニル、呈色材として酸化鉄類、耐光性に優れる有機顔料類を選択して配し、剥離層13、保護層14の連層において耐光性の向上を課した。耐光試験において、1400時間経過後の確認は空間色度L*a*b*においてΔE=1.23となり、実験20による保護層14の調剤に使用した有機顔料の耐光性を維持した。
【符号の説明】
【0221】
10:転写箔
11:基材フィルム
12,21:転写積層
13:剥離層
14,23:樹脂系保護層
15:金属層
16:接着層
22:フィルム保護層
【要約】
【課題】クラック、割れ、膨れ等の発生を防止することができる転写箔を提供する。
【解決手段】転写箔10は、基材フィルム11と、転写積層12とを備える。転写積層12は、基材フィルム11上に形成された剥離層13と、剥離層13上に形成された樹脂系保護層14と、樹脂系保護層14上に形成された接着層16とを含む。樹脂系保護層14は可塑剤を含有する。
【選択図】
図1