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特許7563806張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 11/12 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
F16G11/12 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023575284
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2023001433
(87)【国際公開番号】W WO2023140306
(87)【国際公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2022007914
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591083772
【氏名又は名称】株式会社永木精機
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 政則
(72)【発明者】
【氏名】坪岡 光司
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-130595(JP,A)
【文献】特開2005-211254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1取付対象物に取り付け可能な第1部材と、
第2取付対象物に取り付け可能な第2部材と、
前記第1部材を前記第2部材に向けて牽引する牽引要素と、
前記牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置と、
前記牽引要素が接続されるピン部材と、
プレート部材と
を具備し、
前記プレート部材は、
前記ピン部材の第1端部を受容する第1受容部と、
前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と
を有する
張線器。
【請求項2】
前記プレート部材は、前記牽引装置に着脱可能なように取り付けられ、
前記プレート部材の前記第1部分は、ユーザによって視認可能なように、前記牽引装置の外側に配置される
請求項1に記載の張線器。
【請求項3】
前記許容値の大きさは、前記プレート部材の板厚に依存する
請求項1に記載の張線器。
【請求項4】
前記牽引装置は、第1側部と、前記第1側部とは反対側の第2側部とを含み、
前記ピン部材によって破壊される部材は、前記牽引装置の前記第1側部のみに配置される
請求項1に記載の張線器。
【請求項5】
前記第1部分が破壊されるときに、前記ピン部材は、前記牽引要素の延在方向に対して傾動するように構成される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の張線器。
【請求項6】
前記牽引装置の第1側壁は、前記ピン部材の前記第1端部が挿入される第1長孔部を有し、
前記牽引装置の第2側壁は、前記ピン部材の第2端部が挿入される第2長孔部を有し、
前記ピン部材が前記牽引要素によって引っ張られる方向を第1方向と定義する時、前記第1長孔部の前記第1方向側の端は、前記第2長孔部の前記第1方向側の端よりも第1方向側に位置する
請求項5に記載の張線器。
【請求項7】
前記プレート部材の前記第1部分の移動を停止させるストッパ部材を更に具備し、
前記第1部分が破壊されるときに、前記第1部分は、前記ピン部材と前記ストッパ部材とによって挟持されるように構成される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の張線器。
【請求項8】
前記ストッパ部材は、前記牽引装置に螺合するボルトであるか、前記牽引要素の孔部に挿入される第2ピン部材であるか、あるいは、前記牽引要素の前記孔部に挿入される前記第2ピン部材に螺合するナットである
請求項7に記載の張線器。
【請求項9】
前記プレート部材は、切り欠き部を有し、
前記切り欠き部は、前記第1部分の破壊の起点を規定する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の張線器。
【請求項10】
前記牽引要素は、ワイヤ、チェーン、または、ベルトのうちの少なくとも1つによって構成される
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の張線器。
【請求項11】
牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置に固定部材を介して取り付けられる取付孔部と、
前記牽引要素に接続されるピン部材を受容する第1受容部と、
前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と
を具備する
張線器用のプレート部材。
【請求項12】
第1取付対象物に取り付け可能な第1部材と、第2取付対象物に取り付け可能な第2部材と、前記第1部材を前記第2部材に向けて牽引する牽引要素と、前記牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置と、前記牽引要素に接続されるピン部材と、を有する張線器本体部を準備する工程と、
前記ピン部材の第1端部を受容する第1受容部と、前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と、を有するプレート部材を準備する工程と、
前記プレート部材の前記第1受容部に、前記ピン部材の前記第1端部を配置する工程と、
前記プレート部材を前記牽引装置に固定する工程と
を具備する
張線器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空電線等を張設する張線器が知られている。
【0003】
関連する技術として、特許文献1には、張線装置が開示されている。特許文献1には、ベルト止着ピンはベルトの張力が所定値以上となったときに折損し、過負荷状態での本考案装置の使用が不可となる旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願昭57-139098号(実開昭59-42876号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、牽引要素に過張力が作用していたことを作業者に的確に知らせることが可能な張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す、張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法に関する。
【0007】
(1)第1取付対象物に取り付け可能な第1部材と、
第2取付対象物に取り付け可能な第2部材と、
前記第1部材を前記第2部材に向けて牽引する牽引要素と、
前記牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置と、
前記牽引要素が接続されるピン部材と、
プレート部材と
を具備し、
前記プレート部材は、
前記ピン部材の第1端部を受容する第1受容部と、
前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と
を有する
張線器。
(2)前記プレート部材は、前記牽引装置に着脱可能なように取り付けられ、
前記プレート部材の前記第1部分は、ユーザによって視認可能なように、前記牽引装置の外側に配置される
上記(1)に記載の張線器。
(3)前記許容値の大きさは、前記プレート部材の板厚に依存する
上記(1)または(2)に記載の張線器。
(4)前記牽引装置は、第1側部と、前記第1側部とは反対側の第2側部とを含み、
前記ピン部材によって破壊される部材は、前記牽引装置の前記第1側部のみに配置される
上記(1)乃至(3)のいずれか一つに記載の張線器。
(5)前記第1部分が破壊されるときに、前記ピン部材は、前記牽引要素の延在方向に対して傾動するように構成される
上記(1)乃至(4)のいずれか一つに記載の張線器。
(6)前記牽引装置の第1側壁は、前記ピン部材の前記第1端部が挿入される第1長孔部を有し、
前記牽引装置の第2側壁は、前記ピン部材の第2端部が挿入される第2長孔部を有し、
前記ピン部材が前記牽引要素によって引っ張られる方向を第1方向と定義する時、前記第1長孔部の前記第1方向側の端は、前記第2長孔部の前記第1方向側の端よりも第1方向側に位置する
上記(5)に記載の張線器。
(7)前記プレート部材の前記第1部分の移動を停止させるストッパ部材を更に具備し、
前記第1部分が破壊されるときに、前記第1部分は、前記ピン部材と前記ストッパ部材とによって挟持されるように構成される
上記(1)乃至(6)のいずれか一つに記載の張線器。
(8)前記ストッパ部材は、前記牽引装置に螺合するボルトであるか、前記牽引要素の孔部に挿入される第2ピン部材であるか、あるいは、前記牽引要素の前記孔部に挿入される前記第2ピン部材に螺合するナットである
上記(7)に記載の張線器。
(9)前記プレート部材は、切り欠き部を有し、
前記切り欠き部は、前記第1部分の破壊の起点を規定する
上記(1)乃至(8)のいずれか一つに記載の張線器。
(10)前記牽引要素は、ワイヤ、チェーン、または、ベルトのうちの少なくとも1つによって構成される
上記(1)乃至(9)のいずれか一つに記載の張線器。
(11)牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置に固定部材を介して取り付けられる取付孔部と、
前記牽引要素に接続されるピン部材を受容する第1受容部と、
前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と
を具備する
張線器用のプレート部材。
(12)第1取付対象物に取り付け可能な第1部材と、第2取付対象物に取り付け可能な第2部材と、前記第1部材を前記第2部材に向けて牽引する牽引要素と、前記牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置と、前記牽引要素に接続されるピン部材と、を有する張線器本体部を準備する工程と、
前記ピン部材の第1端部を受容する第1受容部と、前記ピン部材によって押圧され、前記牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じて前記ピン部材によって破壊される第1部分と、を有するプレート部材を準備する工程と、
前記プレート部材の前記第1受容部に、前記ピン部材の前記第1端部を配置する工程と、
前記プレート部材を前記牽引装置に固定する工程と
を具備する
張線器の組立方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、牽引要素に過張力が作用していたことを作業者に的確に知らせることが可能な張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態における張線器を模式的に示す概略2面図である。
図2図2は、第1の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図3図3は、第1の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図4図4は、図3におけるB-B矢視断面図である。
図5図5は、図2におけるA-A矢視断面図である。
図6図6は、第1の実施形態の第1変形例における張線器の一部分を模式的に示す概略断面図である。
図7図7は、プレート部材の一例を模式的に示す概略2面図である。
図8図8は、プレート部材の変形例を説明するための図である。
図9図9は、プレート部材が破壊された後、ピン部材が傾動する様子を模式的に示す概略断面図である。
図10図10は、第1の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略3面図である。
図11図11は、第2の実施形態における張線器を模式的に示す概略2面図である。
図12図12は、第2の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図13図13は、図12におけるC-C矢視断面図である。
図14図14は、第2の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図15図15は、図14におけるD-D矢視断面図である。
図16図16は、第3の実施形態における張線器を模式的に示す概略2面図である。
図17図17は、第3の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図18図18は、図17におけるE-E矢視断面図である。
図19図19は、第3の実施形態における張線器の一部分を模式的に示す概略側面図である。
図20図20は、図19におけるF-F矢視断面図である。
図21図21は、第4の実施形態における張線器用のプレート部材を模式的に示す概略2面図である。
図22図22は、張線器本体部を模式的に示す概略2面図である。
図23図23は、配置工程が実行された後の状態を模式的に示す概略側面図である。
図24図24は、実施形態における張線器の組立方法の一例を示すフローチャートである。
図25図25は、張線器を用いて、電線等の線材の張設作業が実行されている様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施形態における張線器1、張線器用のプレート部材7、および、張線器1の組立方法について、詳しく説明する。なお、本明細書において、同種の機能を有する部材には、同一または類似の符号が付されている。そして、同一または類似の符号の付された部材について、繰り返しとなる説明が省略される場合がある。
【0011】
(方向の定義)
本明細書において、ピン部材6が牽引要素4によって引っ張られる方向を「第1方向DR1」と定義する。また、第1方向DR1とは反対の方向を「第3方向DR3」と定義する。本明細書において、牽引装置5の第2側部53から牽引装置5の第1側部52に向かう方向を「第2方向DR2」と定義する。第2方向DR2は、典型的には、第1方向DR1に垂直な方向である。
【0012】
(第1の実施形態)
図1乃至図10を参照して、第1の実施形態における張線器1Aについて説明する。図1は、第1の実施形態における張線器1Aを模式的に示す概略2面図である。図1の上側には、概略側面図が記載され、図1の下側には、概略底面図が記載されている。図2および図3は、第1の実施形態における張線器1Aの一部分を模式的に示す概略側面図である。図4は、図3におけるB-B矢視断面図である。図5は、図2におけるA-A矢視断面図である。なお、図2図5は、プレート部材7が破壊される前の状態を示し、図3図4は、プレート部材7が破壊された後の状態を示す。図6は、第1の実施形態の第1変形例における張線器1Aの一部分を模式的に示す概略断面図である。図7は、プレート部材7の一例を模式的に示す概略2面図である。図7の上側には、概略側面図が記載され、図7の下側には、概略底面図が記載されている。図8は、プレート部材7の変形例を説明するための図である。図9は、プレート部材7が破壊された後、ピン部材6が傾動する様子を模式的に示す概略断面図である。図10は、第1の実施形態における張線器1Aの一部分を模式的に示す概略3面図である。図10の上側には、第2側面図(第2方向DR2に沿って見たときの図)が記載され、図10の中央部分には、概略平面図が記載され、図10の下側には、第1側面図(第2方向DR2と反対の方向に沿って見たときの図)が記載されている。
【0013】
第1の実施形態における張線器1Aは、例えば、架空電線等の電線を張設するために使用される。張線器1Aは、第1部材2と、第2部材3と、牽引要素4と、牽引装置5と、ピン部材6と、プレート部材7と、を備える。
【0014】
第1部材2は、第1取付対象物に取り付け可能な部材である。第1部材2は、第1取付対象物に取り付け可能な任意の取付部21を含む。取付部21は、第1板部21aと、第2板部21bと、第1板部21aと第2板部21bとを連結するボルト21cと、を有していてもよい。図1に記載の例では、第1板部21aおよび第2板部21bの各々は、U字状のプレート部材21pの一部を構成している。
【0015】
第1取付対象物は、例えば、架空電線等の電線を把持可能な掴線器F1(必要であれば、図25を参照。)である。この場合、第1部材2が第2部材3に向けて牽引されることにより、掴線器F1によって把持された電線Eに張力が付与される。なお、第1取付対象物は、張力を付与すべき線材の種類、あるいは、張力を付与する作業の内容等に応じて適宜選択される。
【0016】
図1に記載の例では、第1部材2は、牽引要素4(より具体的には、ワイヤ4a)の移動をガイドする滑車25を備える。この場合、第1部材2と牽引装置5との間に牽引要素4が2重に架け渡されることとなるため、より大きな張力を線材(例えば、架空電線等の電線)に作用させることが可能となる。図1に記載の例では、牽引要素4(より具体的には、ワイヤ4a)は、滑車25において折り返され、後述の回転体51によって巻き取り可能である。
【0017】
第2部材3は、第2取付対象物に取り付け可能な部材である。第2部材3は、第2取付対象物に取り付け可能な任意の第2取付部31を含む。第2取付部31は、第3板部31aと、第4板部31bと、第3板部31aと第4板部31bとを連結するボルト31cと、を有していてもよい。図1に記載の例では、第3板部31aおよび第4板部31bの各々は、U字状のプレート部材31pの一部を構成している。
【0018】
第2取付対象物は、例えば、電柱等に取り付けられたフレキシブル部材F2(必要であれば、図25を参照。)である。第2取付対象物は、位置固定された構造物(例えば、電柱)に取り付けられた部材であることが好ましい。ただし、第2取付対象物は、位置固定された構造物に取り付けられた部材に限定されず任意である。
【0019】
牽引要素4は、第1部材2を第2部材3に向けて牽引する線状部材あるいは帯状部材である。牽引要素4は、可撓性を有する。図1に記載の例では、牽引要素4は、ワイヤ4aである。ワイヤ4aは、複数の線素が撚り合わせられることにより形成されていてもよい。
【0020】
牽引要素4は、第1端部41と、第2端部とを有する。図1に記載の例では、第1端部41は、ピン部材6を受容可能な孔を有する環状端部41aである。環状端部41aは、例えば、ワイヤ4aを折り返すことによって形成される。より具体的には、固定部材48を介して、ワイヤ4aの折り返し部分4a-1をワイヤ4aの他の部分4a-2に固定することにより形成される。第2端部は、例えば、牽引装置5の回転体51に固定される。
【0021】
図1に記載の例では(下側の図を参照。)、牽引装置5は、牽引要素4に牽引力を付与する回転体51(例えば、巻き取りドラム)を有する。回転体51は、牽引要素4のうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分を、牽引装置5側に引き込む。こうして、牽引要素4が、回転体51によって巻き取られる。
【0022】
図1に記載の例では、牽引装置5に設けられた回転体51が第1回転方向R1に回転することにより、牽引要素4のうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分が、牽引装置5側に引き込まれる。その結果、第1部材2と第2部材3との間の距離が縮小する。
【0023】
ピン部材6には、牽引要素4(より具体的には、牽引要素4の第1端部41)が接続される。図1に記載の例では、牽引要素4の環状端部41aにピン部材6が挿入されることにより、ピン部材6に、牽引要素4の環状端部41aが接続される。
【0024】
図2に記載の例では、プレート部材7は、第1受容部71と、第1部分73とを有する。第1受容部71は、ピン部材6の第1端部6aを受容する。ピン部材6が、第1受容部71に受容されることにより、ピン部材6の位置が、プレート部材7の第1受容部71によって規制される。図2に記載の例では、第1受容部71は、ピン部材6の第1端部6aが挿入される第1孔部71hである。
【0025】
第1部分73は、ピン部材6によって押圧される部分である。より具体的には、ピン部材6が、牽引要素4によって第1方向DR1に引っ張られるとき、ピン部材6は、プレート部材7の第1部分73を第1方向DR1に押圧する。また、プレート部材7の第1部分73は、ピン部材6から受ける押圧力に抗して、ピン部材6を支持する。こうして、牽引要素4に作用する張力の一部が、ピン部材6を介して、プレート部材7によって支持される。図2に記載の例では、プレート部材7の第1部分73は、第1孔部71hの一部を規定している。
【0026】
プレート部材7の第1部分73は、ピン部材6によって破壊可能である。より具体的には、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じて、プレート部材7の第1部分73は、ピン部材6によって破壊される(図3を参照。)。図3に記載の例では、第1孔部71hの一部を規定する第1部分73が破壊されることにより、第1孔部71h自体が破壊される。
【0027】
第1部分73(あるいは、第1孔部71h)が破壊されることにより、大きな音が発生する。こうして、作業者は、牽引要素4に過張力が作用していたことを認識できる。
【0028】
また、図3に例示されるように、第1部分73が破壊され、第1部分73が第1方向DR1に移動することにより、ピン部材6の少なくとも一部が第1方向DR1に移動する。図4に記載の例では、第1部分73が破壊され、第1部分73が第1方向DR1に移動することにより、ピン部材6の第1端部6aおよびピン部材6の中央部分6cが第1方向DR1に移動する。こうして、牽引要素4に作用していた過張力が緩和される。
【0029】
第1の実施形態における張線器1Aでは、牽引要素4(より具体的には、ワイヤ4a)に作用する張力に応じて(より具体的には、ワイヤ4aに作用する張力が許容値を超えることに応じて)、プレート部材7の第1部分73が破壊される。こうして、第1の実施形態における張線器1Aは、プレート部材7の第1部分73が破壊されることによって(換言すれば、第1部分73の破壊に伴う音の発生によって)、牽引要素4に過張力が作用していたことを、作業者に、的確に知らせることができる。その結果、過張力に起因する事故の発生、および、過張力に起因する張線器1Aの破損が、防止される。
【0030】
また、第1の実施形態における張線器1Aでは、第1部分73が破壊された後、ピン部材6の中央部分6cが第1方向DR1に移動する。こうして、牽引要素4に作用していた過張力が緩和される。
【0031】
更に、第1の実施形態における張線器1Aでは、牽引要素4に過張力が作用することにより、ピン部材6ではないプレート部材7が破壊される。ピン部材6が破壊されないことにより、ピン部材6は、プレート部材7の破壊後も、牽引要素4に作用する張力を支持することができる。換言すれば、ピン部材6は、プレート部材7の破壊前においても、プレート部材7の破壊後においても、一貫して、牽引要素4に作用する張力を支持可能である。よって、第1の実施形態における張線器1Aでは、プレート部材7の破壊後、作業者は、破壊されていないピン部材6を用いて、張線作業を継続することができる。換言すれば、作業者は、予定していた作業の終了後に、破壊されたプレート部材7を交換すればよい。
【0032】
また、第1の実施形態における張線器1Aでは、破壊される部材が、ピン部材6ではなく、プレート部材7であるため、破壊される部材の交換が容易である。第1に、プレート部材7が破壊されても、ピン部材6と牽引要素4との間の接続関係は維持される。よって、破壊された部材を交換する際に、牽引要素4をピン部材6に再接続する必要がない。また、ピン部材6は、牽引要素4と接続される部材であるため、配置の自由度が小さい。例えば、図5に例示されるように、ピン部材6の中央部分6cは、牽引装置5の第1側部52と牽引装置5の第2側部53との間に配置せざるを得ない。これに対し、プレート部材7は、牽引要素4に直接的に接続される部材ではないため、配置の自由度が大きい。例えば、プレート部材7を、牽引装置5の外側(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52aの外側)に配置することも可能である。この場合、破壊されたプレート部材7の交換が、更に容易となる。
【0033】
続いて、図1乃至図10を参照して、実施形態における張線器1(例えば、第1の実施形態における張線器1A、後述の第2の実施形態における張線器1B、または、後述の第3の実施形態における張線器1C)において採用可能な任意付加的な構成について説明する。
【0034】
(プレート部材7)
図1に記載の例では、プレート部材7は、牽引装置5に着脱可能なように取り付けられている。また、図1に記載の例では、プレート部材7の第1部分73は、ユーザによって視認可能なように、牽引装置5の外側に配置されている。この場合、ユーザは、第1部分73が破壊されているか否かを容易に認識することができ、プレート部材7が交換されるべき状態であるか否かを容易に認識することができる。
【0035】
図1に記載の例では、プレート部材7は、牽引装置5の第1側壁52aに取り付けられている。より具体的には、プレート部材7は、第1側壁52aの第2方向DR2側の側面に取り付けられている。この場合、ユーザは、第2方向DR2側から、プレート部材7を視認し易い。
【0036】
図5に記載の例では、牽引要素4に作用する張力の許容値は、プレート部材7の板厚(第2方向DR2に沿う方向におけるプレート部材7の厚さ)に依存する。換言すれば、プレート部材7の板厚をより大きくすれば、上述の許容値は大きくなり、プレート部材7の板厚をより小さくすれば、上述の許容値は小さくなる。よって、張線器1の仕様に合わせて、上述の許容値を調整または変更するのが容易である。これに対し、破壊される部材が、プレート部材7ではなく、ピン部材6である場合には、許容値の変更が困難である。より具体的には、ピン部材6の外径の変更に加えて、ピン部材6を受容する孔部の内径を変更する必要があるため、牽引要素4に作用する張力の許容値を容易に変更することができない。
【0037】
図5に記載の例では、牽引装置5は、第1側部52(より具体的には、第1側壁52a)と、第1側部52とは反対側の第2側部53(より具体的には、第2側壁53a)とを含む。また、ピン部材6によって破壊される部材(より具体的には、プレート部材7)は、牽引装置5の第1側部52のみに配置されている。換言すれば、ピン部材6によって破壊される部材(より具体的には、プレート部材7)は、牽引装置5の第2側部53には配置されていない。
【0038】
ピン部材6によって破壊される部材が、牽引装置5の一方側のみ(一方側の側部のみ)に配置されていることにより、ピン部材6によって破壊される部材が、一つのプレート部材7で済む。この場合、ピン部材6によって破壊された部材の交換作業に要する時間が少なくて済み、また、交換すべき部材が、一つのプレート部材7のみであるため、交換に要するコストが少なくて済む。
【0039】
図5に記載の例では、牽引要素4からピン部材6に作用する引っ張り荷重のうちの半分が、プレート部材7を介して、牽引装置5の第1側部52によって支持され、牽引要素4からピン部材6に作用する引っ張り荷重のうちの他の半分が牽引装置5の第2側部53によって支持される。この場合、プレート部材7の破断荷重の大きさを、牽引要素4に作用する張力の許容値の半分の大きさに設定すればよい。
【0040】
代替的に、図6に例示されるように、ピン部材6によって破壊される部材が、牽引装置5の両側に配置されてもよい。換言すれば、張線器1は、牽引装置5の第1側部52に配置されるプレート部材7に加え、牽引装置5の第2側部53に配置される第2プレート部材7’を有していてもよい。この場合、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じて、プレート部材7(より具体的には、第1部分73)がピン部材6によって破壊され、第2プレート部材7’(より具体的には、第2プレート部材7’の第1部分73’)がピン部材6によって破壊される。
【0041】
図7に記載の例では、プレート部材7は、ピン部材6によって破壊される第1部分73と、第1部分73を支持する第2部分74と、を有する。また、第2部分74は、第1脚部74aと、第2脚部74bと、第1脚部74aと第2脚部74bとを連結する第1連結部74cとを有する。図7に記載の例では、第2部分74は、側面視で略U字状の内面74nを有する。
【0042】
代替的に、図8に例示されるように、第1連結部74cが省略されてもよい。換言すれば、ピン部材6の第1端部6aを受容する第1受容部71は、第1孔部ではなく、第1凹部71dであってもよい。
【0043】
図7に記載の例では、第1部分73は、第1脚部74aと第2脚部74bとを連結するように配置される略直線状の部分である。代替的に、第1部分73は、第1脚部74aと第2脚部74bとを連結するように配置される曲線状部分であってもよい。図7に記載の例では、第1部分73は、第1脚部74aと第2脚部74bとを連結する連結部として機能する。
【0044】
図7に記載の例では、プレート部材7は、切り欠き部72を有する。当該切り欠き部72は、第1部分73の破壊の起点を規定する。プレート部材7が切り欠き部72を有する場合には、第1部分73の破壊の起点、および、第1部分73の破断荷重を、より正確に設定することができる。図7に記載の例では、切り欠き部72は、第1孔部71hの一部を構成しており、切り欠き部72が破壊されることにより、第1孔部71hが破壊される。
【0045】
切り欠き部72は、第1切り欠き部72aと、第2切り欠き部72bとを含んでいてもよい。プレート部材7が、第1切り欠き部72aおよび第2切り欠き部72bを有する場合、第1部分73が破壊された後、プレート部材7は、第1切り欠き部72aと第2切り欠き部72bとの間の第1部分73と、第2部分74と、に分離される。また、プレート部材7が、第1切り欠き部72aおよび第2切り欠き部72bを有する場合、第1部分73の破断荷重を、更により正確に設定することができる。
【0046】
図7に記載の例では、プレート部材7は、ピン部材6が挿入される第1孔部71hと、取付孔部75hと、を有する。第1孔部71hおよび取付孔部75hの各々は、例えば、ネジ部を有さない孔部である。図7に記載の例では、取付孔部75hは、第2部分74に配置されており、第1部分73には、取付孔部75hが配置されていない。取付孔部75hは、第2部分74の脚部(74a、74b)に配置されていてもよく、第2部分74の第1連結部74cに配置されていてもよい。
【0047】
図7に記載の例では、プレート部材7が有する取付孔部75hの数が、3個であるが、取付孔部75hの数は、2個、あるいは、4個以上であってもよい。
【0048】
図9に例示されるように、プレート部材7は、ボルト81a等の固定部材81を介して、牽引装置5に固定される。
【0049】
図9に例示されるように、プレート部材7の取付孔部75hには、固定部材81が挿入される。プレート部材7の取付孔部75hに、ボルト81aが挿入され、ボルト81aの先端部が、牽引装置5(より具体的には、第1側壁52a)に形成された穴部に螺合されてもよい。また、ボルト81aの頭部には、六角レンチに係合可能な六角穴部が形成されていてもよい。
【0050】
(ピン部材6)
図9に例示されるように、ピン部材6は、第1端部6aと、第2端部6bと、第1端部6aと第2端部6bとの間に配置される中央部分6cと、を有する。第1端部6aは、牽引装置5の第1側壁52aに形成された第1長孔部52hに挿入され、第2端部6bは、牽引装置の第2側壁53aに形成された第2長孔部53hに挿入される。
【0051】
図9に記載の例では(図9の下側の図を参照。)、プレート部材7の第1部分73が破壊されるときに、ピン部材6は、牽引要素4の延在方向(換言すれば、第1方向DR1)に対して傾動するように構成されている。より具体的には、第1部分73が破壊される前の状態におけるピン部材6の中心軸C1と第1方向DR1との間のなす角度を角度α1と定義し、第1部分73が破壊された後の状態におけるピン部材6の中心軸C1と第1方向DR1との間のなす角度を角度α2と定義するとき、角度α2は、角度α1と異なる。図9に記載の例において、角度α1は90度であり、角度α2は90度よりも小さな角度(例えば、80度以上90度未満)である。
【0052】
プレート部材7が破壊されているか否かは、牽引装置5の側方から視認可能である。また、ピン部材6の傾動(あるいは、ピン部材6の傾動に起因する牽引要素4の変位)は、牽引装置5の上方から視認可能である。よって、プレート部材7の第1部分73が破壊されるときに、ピン部材6が傾動するように構成される場合には、作業者は、プレート部材7の破壊あるいはピン部材6の傾動(あるいは、ピン部材6の傾動に起因する牽引要素4の変位)のうちのいずれかに基づいて、プレート部材7の破壊の有無を容易に認識することができる。
【0053】
プレート部材7の第1部分73の破壊後にピン部材6を円滑に傾動させる観点から、図9に記載の例では、第1方向DR1側へのピン部材6の第2端部6bの移動が禁止された状態で、ピン部材6の第1端部6aが第1方向DR1に移動可能なように構成されている。より具体的には、図9に記載の例において(図9の上側の図を参照。)、第1長孔部52hは、ピン部材6よりも第1方向DR1に延在し、第2長孔部53hは、ピン部材6よりも第3方向DR3(換言すれば、第1方向DR1とは反対方向)に延在する。
【0054】
また、図9に記載の例において(図9の下側の図を参照。)、第1長孔部52hの第1方向DR1側の端52eは、第2長孔部53hの第1方向DR1側の端53eよりも第1方向DR1側に位置する。この場合、第2長孔部53hの端53eは、ピン部材6の第2端部6bが第1方向DR1に移動することを禁止し、第1長孔部52hは、ピン部材6の第1端部6aが第1方向DR1に移動することを許容する。
【0055】
(ストッパ部材82)
図3に記載の例では、張線器1は、プレート部材7の第1部分73の移動を停止させるストッパ部材82を備える。ストッパ部材82は、第1部分73が破壊された後、第1部分73がストッパ部材82を超えて第1方向DR1に移動することを防止する。第1部分73がピン部材6によって破壊されるときに、当該第1部分73は、ピン部材6とストッパ部材82とによって挟持されるように構成されることが好ましい。この場合、第1部分73が破壊された後、第1部分73が、牽引装置5から下方に落下することが防止される。
【0056】
図3に記載の例では、ストッパ部材82は、プレート部材7の第1部分73に対して、ピン部材6とは反対側に配置されている。より具体的には、ストッパ部材82は、第1部分73よりも第1方向DR1側に配置され、ピン部材6は、第1部分73よりも第3方向DR3側に配置されている。
【0057】
図4に記載の例では、ストッパ部材82は、牽引装置5(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52a)に取り付けられている。また、ストッパ部材82は、牽引装置5(より具体的には、第1側壁52a)に螺合するボルトである。代替的に、ストッパ部材82は、後述の第2ピン部材83、あるいは、第2ピン部材83に螺合するナット84であってもよい。
【0058】
(第2ピン部材83)
図4に記載の例では、張線器1は、ピン部材6よりも第1方向DR1側に配置される第2ピン部材83を有する。第2ピン部材83は、例えば、ボルトである。第2ピン部材83は、牽引要素4の孔部(より具体的には、牽引要素4の環状端部41a)に挿入される。この場合、万が一、ピン部材6が破断しても、牽引要素4の環状端部41aが第2ピン部材83によって支持される。よって、張線器1の安全性が、3重に確保される。より具体的には、プレート部材7が破壊されても、ピン部材6によって、牽引要素4の環状端部41aが安全に支持され、プレート部材7およびピン部材6が破壊されても、第2ピン部材83によって牽引要素4の環状端部41aが安全に支持される。
【0059】
(位置規制部材86)
図4に記載の例では、張線器1は、第2方向DR2に平行な方向における牽引要素4の環状端部41aの位置を規制する位置規制部材86を有する。位置規制部材86は、例えば、第2ピン部材83によって支持される。図4に記載の例では、位置規制部材86は、牽引要素4を受容する溝部86v(例えば、環状溝部)を有する。
【0060】
位置規制部材86の存在により、第2方向DR2に平行な方向における環状端部41aの変位が防止される。図4に記載の例では、位置規制部材86と牽引装置5の第1側壁52aとの間の距離は、位置規制部材86と牽引装置5の第2側壁53aとの間の距離と等しい。換言すれば、位置規制部材86は、第1側壁52aと第2側壁53aとの間のちょうど中間に配置されている。
【0061】
(抜け止め部材87)
図10に記載の例では、張線器1は、ピン部材6が牽引装置5から外れるのを防止する抜け止め部材87を有する。抜け止め部材87は、割ピンであってもよいし、ネジ付きのピン部材であってもよい。抜け止め部材87の数は、1個であってもよいし、2個以上であってもよい。
【0062】
(操作ハンドル93)
図1に記載の例では、張線器1は、操作ハンドル93を有する。操作ハンドル93は、牽引装置5に取り付けられている。
【0063】
操作ハンドル93は、回転体51を介して、牽引要素4を操作するための部材である。操作ハンドル93の操作は回転体51に伝達される。例えば、操作ハンドル93が、第1操作方向MR1に操作されると、回転体51が第1回転方向R1に回転する。回転体51が第1回転方向R1に回転すると、牽引要素4が牽引装置5に引き込まれる。その結果、牽引要素4によって、第1部材2が牽引装置5に向かう方向に牽引される。
【0064】
操作ハンドル93は、ラチェット機構付きのハンドルであることが好ましい。この場合、操作ハンドル93が、揺動軸AX1まわりに、繰り返し揺動操作されることにより、回転体51は、一貫して第1回転方向R1に回転する。なお、実施形態では、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じてプレート部材7の第1部分73が破壊されるため、操作ハンドル93と回転体51との間に、トルクリミッタを配置する必要はない。ただし、実施形態において、操作ハンドル93と回転体51との間に、トルクリミッタが配置される態様も排除されない。
【0065】
(牽引装置5)
図1に記載の例では、牽引装置5は、回転体51と、第1側壁52aと、第2側壁53aと、ストッパ54と、を有する。
【0066】
回転体51は、回転軸AX2まわりに回転可能である。図1に記載の例では、回転体51は、シャフトを介して、第1側壁52aおよび第2側壁53aによって回転可能に支持される。また、回転体51は、第1側壁52aと第2側壁53aとの間に配置される。回転体51は、例えば、牽引要素4を巻き取り可能なドラムである。
【0067】
第1側壁52aおよび第2側壁53aは、回転体51、ピン部材6、および、第2ピン部材83の各々を、直接的または間接的に支持する。また、第1側壁52aには、プレート部材7が取り付けられる。
【0068】
ストッパ54は、回転体51が第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に回転するのを禁止する。ストッパ54は、ストッパ爪54aを含んでいてもよい。
【0069】
牽引装置5は、ストッパ54を退避位置に移動させるモード切替部55を有していてもよい。モード切替部55の状態が第1モード状態(換言すれば、巻きモード状態)にされると、ストッパ54が進出位置に移動する。その結果、回転体51は第1回転方向R1にのみ回転可能となる。また、モード切替部55の状態が第2モード状態(換言すれば、戻しモード状態、あるいは、中立モード状態)にされると、ストッパ54が退避位置に移動する。その結果、回転体51は、第1回転方向R1および第2回転方向R2の両方向に回転可能となる。
【0070】
牽引装置5は、第2部材3を支持する支持部材56を有していてもよい。図1に記載の例では、第2部材3は、支持部材56に取り付けられている。
【0071】
(第2の実施形態)
図11乃至図15を参照して、第2の実施形態における張線器1Bについて説明する。図11は、第2の実施形態における張線器1Bを模式的に示す概略2面図である。図11の上側には、概略平面図が記載され、図11の下側には、概略側面図が記載されている。図12は、第2の実施形態における張線器1Bの一部分を模式的に示す概略側面図である。図13は、図12におけるC-C矢視断面図である。図14は、第2の実施形態における張線器1Bの一部分を模式的に示す概略側面図である。図15は、図14におけるD-D矢視断面図である。なお、図12図13は、プレート部材7が破壊される前の状態を示し、図14図15は、プレート部材7が破壊された後の状態を示す。
【0072】
第2の実施形態における張線器1Bは、牽引要素4が、チェーン4bである点で、第1の実施形態における張線器1Aとは異なる。
【0073】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第2の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第2の実施形態において、第1の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0074】
図11に例示されるように、第2の実施形態における張線器1Bは、(1)第1取付対象物に取り付け可能な第1部材2と、(2)第2取付対象物に取り付け可能な第2部材3と、(3)第1部材2を第2部材3に向けて牽引する牽引要素4と、(4)牽引要素4に牽引力を付与する回転体51を有する牽引装置5と、(5)牽引要素4が接続されるピン部材6と、(6)プレート部材7と、を具備する。また、(7)プレート部材7は、ピン部材6の第1端部6aを受容する第1受容部71(例えば、第1孔部)と、ピン部材6によって押圧され、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じてピン部材6によって破壊される第1部分73と、を有する。
【0075】
よって、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0076】
(第1部材2、第2部材3)
第1部材2は、第1取付対象物に取り付け可能な任意の取付部21を含む。図11に記載の例では、取付部21は、第1取付対象物に取り付け可能な第1フック部21fを含む。第2部材3は、第2取付対象物に取り付け可能な任意の第2取付部31を含む。図11に記載の例では、第2取付部31は、第2取付対象物に取り付け可能な第2フック部31fを含む。
【0077】
(牽引要素4)
図11に記載の例では、牽引要素4は、チェーン4bである。チェーン4bは、第1部材2を第2部材3に向けて牽引する。チェーン4bは、第1端部41と、第2端部42とを有する。図11に記載の例では、第1端部41は、ピン部材6に接続されている。また、第2端部42には、端部ストッパ43が配置されている。端部ストッパ43は、チェーン4bが、牽引装置5から外れるのを防止する。より具体的には、端部ストッパ43は、チェーン4bの第2端部42が牽引装置5側に戻される際に、当該第2端部42の戻り限界位置を規定する。
【0078】
チェーン4bは、複数の環状要素Kによって構成されており、第1端部41を構成する環状要素K1は、環状端部41aとして機能する。ピン部材6は、第1端部41を構成する環状要素K1(換言すれば、環状端部41a)に挿入されている。
【0079】
図11に記載の例では、チェーン4bは、第1端部41から第1部材2に向かって延在し、第1部材2の滑車25によって折り返されて、牽引装置5に向かって延在する。また、チェーン4bは、牽引装置5の回転体51によって折り返されて、牽引装置5からチェーン4bの第2端部42まで延在する。
【0080】
(回転体51)
図11に記載の例では、回転体51は、ロードシーブである。回転体51は、回転軸AX2まわりを回転可能である。回転体51は、チェーン4bのうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分を、牽引装置5側に引き込む。
【0081】
図11に記載の例では、操作ハンドル93の操作が、歯車等の伝達部材を介して回転体51に伝達される。例えば、操作ハンドル93が、第1操作方向MR1に操作されると、回転体51が第1回転方向R1に回転し、その結果、チェーン4bのうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分が、牽引装置5側に引き込まれる。
【0082】
(プレート部材7)
図12に記載の例では、プレート部材7は、牽引装置5(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52a)に着脱可能なように取り付けられている。また、図12に記載の例では、プレート部材7の第1部分73は、ユーザによって視認可能なように、牽引装置5の外側に配置されている。
【0083】
プレート部材7としては、第1の実施形態において説明されたプレート部材7と同様の構成を採用可能である。図12に例示されるように、プレート部材7は、第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)と、第1部分73と、第2部分74と、を有する。プレート部材7は、取付孔部75h(図13を参照。)を有していてもよい。第1受容部71、第1部分73、第2部分74、取付孔部75hについては、第1の実施形態において説明済みであるため、第1受容部71、第1部分73、第2部分74、取付孔部75hについての繰り返しとなる説明は省略する。
【0084】
(ピン部材6)
図13に例示されるように、ピン部材6は、第1端部6aと、第2端部6bと、第1端部6aと第2端部6bとの間に配置される中央部分6cと、を有する。第1端部6aは、牽引装置5の第1側壁52aに形成された第1長孔部52hに挿入され、第2端部6bは、牽引装置の第2側壁53aに形成された第2長孔部53hに挿入される。
【0085】
牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じて、ピン部材6は、プレート部材7の第1部分73を破壊する(図14を参照。)。また、図15に記載の例では、プレート部材7の第1部分73が破壊されるときに、ピン部材6は、牽引要素4の延在方向(換言すれば、第1方向DR1)に対して傾動するように構成されている。
【0086】
(ストッパ部材82)
図15に記載の例では、張線器1Bは、プレート部材7の第1部分73の移動を停止させるストッパ部材82を備える。ストッパ部材82は、第1部分73が破壊された後、第1部分73がストッパ部材82を超えて第1方向DR1に移動することを防止する。より具体的には、第1部分73がピン部材6によって破壊されるときに、当該第1部分73は、ピン部材6(より具体的には、ピン部材6の第1端部6a)とストッパ部材82とによって挟持されるように構成される。
【0087】
図15に記載の例では、ストッパ部材82は、牽引装置5の第1側壁52aおよび第2側壁53aに取り付けられている。また、ストッパ部材82は、牽引要素4(より具体的には、チェーン4b)の孔部4h(より具体的には、環状端部41a)に挿入される部材である。ストッパ部材82は、第2ピン部材83(例えば、ボルト)であってもよく、第2ピン部材83に螺合するナット84であってもよい。代替的に、図4に記載の例と同様に、ストッパ部材82は、第2ピン部材83とは別の部材であってもよい。
【0088】
(第2ピン部材83)
図15に記載の例では、張線器1Bは、ピン部材6よりも第1方向DR1側に配置される第2ピン部材83を有する。第2ピン部材83は、牽引要素4の環状端部41aに挿入される。この場合、万が一、ピン部材6が破断しても、牽引要素4の環状端部41aが第2ピン部材83によって支持される。
【0089】
(第3の実施形態)
図16乃至図20を参照して、第3の実施形態における張線器1Cについて説明する。図16は、第3の実施形態における張線器1Cを模式的に示す概略2面図である。図16の上側には、概略平面図が記載され、図16の下側には、概略側面図が記載されている。図17は、第3の実施形態における張線器1Cの一部分を模式的に示す概略側面図である。図18は、図17におけるE-E矢視断面図である。図19は、第3の実施形態における張線器1Cの一部分を模式的に示す概略側面図である。図20は、図19におけるF-F矢視断面図である。なお、図17図18は、プレート部材7が破壊される前の状態を示し、図19図20は、プレート部材7が破壊された後の状態を示す。
【0090】
第3の実施形態における張線器1Cは、牽引要素4が、ベルト4cである点で、第1の実施形態における張線器1Aおよび第2の実施形態における張線器1Bとは異なる。
【0091】
第3の実施形態では、第1の実施形態および第2の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。よって、第3の実施形態において明示的に説明されなかったとしても、第3の実施形態において、第1の実施形態または第2の実施形態で説明済みの事項を採用可能であることは言うまでもない。
【0092】
図16に例示されるように、第3の実施形態における張線器1Cは、(1)第1取付対象物に取り付け可能な第1部材2と、(2)第2取付対象物に取り付け可能な第2部材3と、(3)第1部材2を第2部材3に向けて牽引する牽引要素4と、(4)牽引要素4に牽引力を付与する回転体51を有する牽引装置5と、(5)牽引要素4が接続されるピン部材6と、(6)プレート部材7と、を具備する。また、(7)プレート部材7は、ピン部材6の第1端部6aを受容する第1受容部71(例えば、第1孔部)と、ピン部材6によって押圧され、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じてピン部材6によって破壊される第1部分73と、を有する。
【0093】
よって、第3の実施形態は、第1の実施形態または第2の実施形態と同様の効果を奏する。
【0094】
(第1部材2、第2部材3)
第1部材2は、第1取付対象物に取り付け可能な任意の取付部21を含み、第2部材3は、第2取付対象物に取り付け可能な任意の第2取付部31を含む。取付部21、第2取付部31については、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、取付部21、第2取付部31についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0095】
(牽引要素4)
図16に記載の例では、牽引要素4は、ベルト4cである。ベルト4cは、第1部材2を第2部材3に向けて牽引する。ベルト4cは、第1端部41と、第2端部とを有する。図16に記載の例では、第1端部41は、ピン部材6に接続されている。また、第1端部41は、ピン部材6を受容可能な孔を有する環状端部41aである。環状端部41aは、例えば、ベルト4cを折り返すことにより形成される。より具体的には、環状端部41aは、ベルト4cの折り返し部分4c-1をベルト4cの他の部分4c-2に固定することにより形成される。
【0096】
図16に記載の例では、ベルト4cは、第1端部41から第1部材2に向かって延在し、第1部材2の滑車25によって折り返されて、牽引装置5に向かって延在する。ベルト4cの第2端部は、例えば、牽引装置5の回転体51に固定される。
【0097】
(回転体51)
牽引装置5は、牽引要素4に牽引力を付与する回転体51を有する。回転体51は、例えば、巻き取りドラムである。回転体51は、牽引要素4のうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分を、牽引装置5側に引き込む。こうして、牽引要素4が、回転体51によって巻き取られる。
【0098】
図16に記載の例では、牽引装置5に設けられた回転体51が第1回転方向R1に回転することにより、牽引要素4のうちの第1部材2と牽引装置5との間の部分が、牽引装置5側に引き込まれる。その結果、第1部材2と第2部材3との間の距離が縮小する。
【0099】
(プレート部材7)
図17に記載の例では、プレート部材7は、牽引装置5(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52a)に着脱可能なように取り付けられている。また、図17に記載の例では、プレート部材7の第1部分73は、ユーザによって視認可能なように、牽引装置5の外側に配置されている。
【0100】
プレート部材7としては、第1の実施形態または第2の実施形態において説明されたプレート部材7と同様の構成を採用可能である。プレート部材7については、第1の実施形態または第2の実施形態において説明済みであるため、プレート部材7についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0101】
(ピン部材6)
図18に例示されるように、ピン部材6は、第1端部6aと、第2端部6bと、第1端部6aと第2端部6bとの間に配置される中央部分6cと、を有する。第1端部6aは、牽引装置5の第1側壁52aに形成された第1長孔部52hに挿入され、第2端部6bは、牽引装置の第2側壁53aに形成された第2長孔部53hに挿入される。
【0102】
牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じて、ピン部材6は、プレート部材7の第1部分73を破壊する(図19を参照。)。また、図20に記載の例では、プレート部材7の第1部分73が破壊されるときに、ピン部材6は、牽引要素4の延在方向(換言すれば、第1方向DR1)に対して傾動するように構成されている。
【0103】
(ストッパ部材82)
図20に記載の例では、張線器1Cは、プレート部材7の第1部分73の移動を停止させるストッパ部材82を備える。ストッパ部材82は、第1部分73が破壊された後、第1部分73がストッパ部材82を超えて第1方向DR1に移動することを防止する。より具体的には、第1部分73がピン部材6によって破壊されるときに、当該第1部分73は、ピン部材6(より具体的には、ピン部材6の第1端部6a)とストッパ部材82とによって挟持されるように構成される。
【0104】
図20に記載の例では、ストッパ部材82は、牽引要素4(より具体的には、ベルト4c)の孔部4h(より具体的には、環状端部41a)に挿入される第2ピン部材83に螺合するナット84である。代替的に、ストッパ部材82は、牽引要素4の孔部4hに挿入される第2ピン部材83の頭部であってもよい。また、ストッパ部材82は、牽引装置5の第1側壁52aに取り付けられるボルトであってもよい。
【0105】
(第2ピン部材83)
図20に記載の例では、張線器1Cは、ピン部材6よりも第1方向DR1側に配置される第2ピン部材83を有する。第2ピン部材83は、牽引要素4の環状端部41aに挿入される。この場合、万が一、ピン部材6が破断しても、牽引要素4の環状端部41aが第2ピン部材83によって支持される。
(第4の実施形態)
図1乃至図21を参照して、第4の実施形態における張線器用のプレート部材7について説明する。図21は、第4の実施形態における張線器用のプレート部材7を模式的に示す概略2面図である。図21の上側には、概略側面図が記載され、図21の下側には、概略底面図が記載されている。
【0106】
図21に例示されるように、第4の実施形態における張線器用のプレート部材7は、(1)牽引要素に牽引力を付与する回転体を有する牽引装置に固定部材を介して取り付けられる取付孔部75hと、(2)牽引要素に接続されるピン部材を受容する第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)と、(3)ピン部材によって押圧され、牽引要素に作用する張力が許容値を超えることに応じてピン部材によって破壊される第1部分73と、を具備する。
【0107】
よって、第4の実施形態における張線器用のプレート部材7が取り付けられた張線器1は、第1の実施形態における張線器1A、第2の実施形態における張線器1B、または、第3の実施形態における張線器1Cと同様の効果を奏する。
【0108】
図21に記載の例では、張線器用のプレート部材7は、第2の実施形態における張線器1Bの牽引装置5に取り付けられたプレート部材7(例えば、図12を参照。)と同様の形状を有する。代替的に、張線器用のプレート部材7は、第1の実施形態における張線器1A(または、第3の実施形態における張線器1C)の牽引装置5に取り付けられたプレート部材7(例えば、図2図8図17等を参照。)と同様の形状を有していてもよい。
【0109】
図21に記載の例では、プレート部材7は、ピン部材6によって破壊される第1部分73と、第1部分73を支持する第2部分74と、を有する。第2部分74には、牽引装置5にプレート部材7を固定するための固定部材が挿入される取付孔部75hが設けられている。
【0110】
図21に記載の例では、第2部分74は、第1脚部74aと、第2脚部74bとを有する。第2脚部74bは、プレート部材7の第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)に対して、第1脚部74aとは反対側に配置される。図21に記載の例では、第1脚部74aの第1方向DR1側の端部741aが第1部分73の第1端部731に連結され、第2脚部74bの第1方向DR1側の端部741bが、第1部分73の第2端部732に連結されている。第1脚部74aの端部741aと第1部分73の第1端部731との間に第1切り欠き部72aが配置されていてもよい。また、第2脚部74bの端部741bと第1部分73の第2端部732との間に第2切り欠き部72bが配置されていてもよい。
【0111】
図21に記載の例では、プレート部材7は、第1脚部74aと第2脚部74bとを連結する第1連結部74cを有する。より具体的には、第1連結部74cは、第1脚部74aの第3方向DR3側の端部743aと、第2脚部74bの第3方向DR3側の端部743bとを連結する。第1連結部74cは、プレート部材7の第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)に対して、第1部分73とは反対側に配置される。
【0112】
図21に記載の例では、第1脚部74aと、第1部分73と、第2脚部74bと、第1連結部74cとによって、ピン部材6の第1端部6aが挿入される第1孔部71hが規定されている。なお、第1連結部74cが省略される場合には、第1脚部74aと、第1部分73と、第2脚部74bとによって、ピン部材6の第1端部6aを受容する凹部が規定される。
【0113】
図21に記載の例では、第1脚部74aと、第2脚部74bと、第1連結部74cとによって、略U字状の内面74nが規定され、第1部分73によって、略平面状の内面73nが規定されている。
【0114】
(張線器の組立方法)
図1乃至図24を参照して、実施形態における張線器の組立方法について説明する。図22は、張線器本体部10を模式的に示す概略2面図である。図22の上側には、概略側面図が記載され、図22の下側には、概略底面図が記載されている。図23は、配置工程が実行された後の状態を模式的に示す概略側面図である。図24は、実施形態における張線器の組立方法の一例を示すフローチャートである。
【0115】
実施形態における張線器の組立方法によって組み立てられる張線器1は、第1の実施形態における張線器1Aであってもよいし、第2の実施形態における張線器1Bであってもよいし、第3の実施形態における張線器1Cであってもよいし、その他の張線器であってもよい。
【0116】
第1ステップST1において、張線器本体部10が準備される。第1ステップST1は、第1準備工程である。図22に例示されるように、第1準備工程で準備される張線器本体部10は、第1取付対象物に取り付け可能な第1部材2と、第2取付対象物に取り付け可能な第2部材3と、第1部材2を第2部材3に向けて牽引する牽引要素4と、牽引要素4に牽引力を付与する回転体51を有する牽引装置5と、牽引要素4に接続されるピン部材6と、を有する。牽引要素4は、ワイヤ4aであってもよいし、チェーン4bであってもよいし、ベルト4cであってもよい。
【0117】
図22に記載の例では、牽引装置5(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52a)は、後述の固定部材81が挿入される穴部52pを有する。穴部52pは、例えば、固定部材81の先端部に螺合するネジ穴である。
【0118】
図22に記載の例では、第1準備工程において、ピン部材6が牽引装置5に取り付けられた状態の張線器本体部10が準備されている。代替的に、第1準備工程において準備される張線器本体部10において、ピン部材6は、牽引装置5に取り付けられていなくてもよい。換言すれば、第1準備工程において準備される張線器本体部10は、ピン部材6が牽引装置5に取り付けられる前の張線器本体部であってもよい。
【0119】
第1準備工程で準備される張線器本体部10は、新品であってもよいし、流通済みの中古品であってもよい。なお、張線器本体部10の牽引装置5に、ピン部材6によって破壊されたプレート部材が取り付けられている場合には、第1準備工程において、当該破壊されたプレート部材が、牽引装置5から取り外される。
【0120】
第2ステップST2において、プレート部材7が準備される。第2ステップST2は、第2準備工程である。図21に例示されるように、第2準備工程で準備されるプレート部材7は、ピン部材の第1端部を受容する第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)と、ピン部材によって押圧され、牽引要素4に作用する張力が許容値を超えることに応じてピン部材によって破壊される第1部分73と、を有する。第2準備工程で準備されるプレート部材7は、図7、または、図8等に示されるプレート部材7であってもよい。
【0121】
第3ステップST3において、プレート部材7の第1受容部71(より具体的には、第1孔部71h)に、ピン部材6の第1端部6aが配置される。第3ステップST3は、配置工程である。図23に記載の例では、配置工程は、プレート部材7の第1受容部71が、ピン部材6の第1端部6aを囲むように、プレート部材7を牽引装置5に配置することを含む。
【0122】
第4ステップST4において、プレート部材7が牽引装置5に固定される。第4ステップST4は、固定工程である。固定工程は、固定部材81(例えば、ボルト81a)をプレート部材7の取付孔部75hに挿入することと、固定部材81を介して、プレート部材7を牽引装置5に固定すること、とを含む。固定工程は、固定部材81の先端部を、牽引装置5(より具体的には、牽引装置5の第1側壁52a)に螺合させることを含んでいてもよい。図2図12図17には、固定工程を実行後の状態が示されている。
【0123】
固定工程(第4ステップST4)は、配置工程(第3ステップST3)の後に実行されることが好ましいが、代替的に、固定工程は、配置工程の実行前に実行されてもよい。例えば、プレート部材7が牽引装置5に固定された後、プレート部材7の第1孔部71h、牽引装置5の第1長孔部52h、および、牽引要素4の環状端部41aにピン部材6が挿入されてもよい。また、牽引要素4の環状端部41aにピン部材6が挿入された後、ピン部材6に、抜け止め部材87(図10図13図18等を参照。)が取り付けられてもよい。
【0124】
実施形態における張線器の組立方法では、ピン部材6によって破壊可能なプレート部材7を有する張線器1が組み立てられる。よって、組み立てられた張線器1では、プレート部材7が破壊されることにより、牽引要素4に過張力が作用していたことを作業者に的確に知らせることができる。また、実施形態における張線器の組立方法では、極めて容易に、ピン部材6によって破壊可能なプレート部材7を牽引装置5に取り付けることができる。また、プレート部材7が破壊された後、破壊されたプレート部材7を新品のプレート部材に交換するのが容易である(換言すれば、張線器の再組立を極めて容易に実行することができる。)。
【0125】
本発明は上記各実施形態または各変形例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態または各変形例は適宜変形または変更され得ることが明らかである。また、各実施形態または各変形例で用いられる任意の構成要素を、他の実施形態または他の変形例に組み合わせることが可能であり、また、各実施形態または各変形例において任意の構成要素を省略することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の張線器、張線器用のプレート部材、および、張線器の組立方法を用いると、牽引要素に過張力が作用していたことを作業者に的確に知らせることができる。よって、過張力に起因する事故の発生、および、過張力に起因する張線器の破損が、防止される。したがって、張線器を用いて作業を行う業者、および、張線器または張線器用のプレート部材を製造する製造業者にとって有用である。
【符号の説明】
【0127】
1、1A、1B、1C…張線器、2…第1部材、3…第2部材、4…牽引要素、4a…ワイヤ、4a-1…ワイヤの折り返し部分、4a-2…ワイヤの他の部分、4b…チェーン、4c…ベルト、4c-1…ベルトの折り返し部分、4c-2…ベルトの他の部分、4h…孔部、5…牽引装置、6…ピン部材、6a…第1端部、6b…第2端部、6c…中央部分、7…プレート部材、7'…第2プレート部材、10…張線器本体部、21…取付部、21a…第1板部、21b…第2板部、21c…ボルト、21f…第1フック部、21p…U字状のプレート部材、25…滑車、31…第2取付部、31a…第3板部、31b…第4板部、31c…ボルト、31f…第2フック部、31p…プレート部材、41…第1端部、41a…環状端部、42…第2端部、43…端部ストッパ、48…固定部材、51…回転体、52…第1側部、52a…第1側壁、52e…第1方向側の端、52h…第1長孔部、52p…穴部、53…第2側部、53a…第2側壁、53e…第1方向側の端、53h…第2長孔部、54…ストッパ、54a…ストッパ爪、55…モード切替部、56…支持部材、71…第1受容部、71d…第1凹部、71h…第1孔部、72…切り欠き部、72a…第1切り欠き部、72b…第2切り欠き部、73…第1部分、73'…第1部分、73n…内面、74…第2部分、74a…第1脚部、74b…第2脚部、74c…第1連結部、74n…内面、75h…取付孔部、81…固定部材、81a…ボルト、82…ストッパ部材、83…第2ピン部材、84…ナット、86…位置規制部材、86v…溝部、87…抜け止め部材、93…操作ハンドル、731…第1端部、732…第2端部、741a…第1方向側の端部、741b…第1方向側の端部、743a…第3方向側の端部、743b…第3方向側の端部、AX1…揺動軸、AX2…回転軸、E…電線、F1…掴線器、F2…フレキシブル部材、K…環状要素、K1…第1端部を構成する環状要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
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