(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20241001BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L21/68 C
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2024030371
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510052285
【氏名又は名称】株式会社 天谷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】関口 勝美
(72)【発明者】
【氏名】大野 俊典
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 博文
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晃
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特許第7412824(JP,B1)
【文献】特開2008-21945(JP,A)
【文献】特開2018-181969(JP,A)
【文献】特開2018-181968(JP,A)
【文献】特開2008-244099(JP,A)
【文献】特開平8-153684(JP,A)
【文献】特開平7-238380(JP,A)
【文献】特開平6-244269(JP,A)
【文献】特開平5-166734(JP,A)
【文献】特開2000-311894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に載置した板状の半導体ウエハと噴射吸着面とを相対的に接近させる接近手段と、
前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、
前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、
前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、
前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され
、
前記噴射吸着手段は、上側に配設された上板と、該上板の下側に配設された下板とを有し、該下板に前記複数の噴射吸着孔が形成され、前記上板と前記下板との間に、前記複数の噴射吸着孔に前記不活性ガスを案内する案内通路が設けられていることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記
上板と前記下板の中央位置から前記案内通路に前記不活性ガスが供給され、この案内通路が前記不活性ガスを前記中央位置から周囲に案内するように放射状に複数形成された放射状溝と、これらの放射状溝と連通するように同心状に複数形成された同心状溝とを有し、前記複数の放射状溝及び前記複数の同心状溝に連通して前記噴射吸着孔がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
載置部に載置した板状の半導体ウエハと噴射吸着面とを相対的に接近させる接近手段と、
前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、
前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、
前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、
前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され、
前記噴射吸着孔は、閉止部材が着脱自在に設けられ、該閉止部材が装着されることによって前記噴射吸着孔が閉止可能に構成されていることを特徴とす
る半導体製造装置。
【請求項4】
載置部に載置した板状の半導体ウエハと噴射吸着面とを相対的に接近させる接近手段と、
前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、
前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、
前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、
前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され、
前記噴射吸着孔は、円筒パイプが着脱自在に設けられ、該円筒パイプが装着されることによって前記噴射吸着孔の孔径が変更可能に構成されていることを特徴とす
る半導体製造装置。
【請求項5】
前記
半導体ウエハがSiCであることを特徴とする請求項1
乃至4のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の半導体ウエハを用いた半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置には、例えば特許文献1に記載された技術がある。この半導体製造装置は、サファイア基板を大気中で昇温させるホットプレートと、ホットプレートと所定の間隔を隔てて設置された支持板と、サファイア基板をホットプレートと支持板との間に所定の間隔を隔てて支持すると共に、ホットプレートとサファイア基板の裏面とが対向するように支持する支持部を設けた支持台と、支持台を昇降させる昇降装置と、支持板上に、サファイア基板と所定の間隔を隔てると共に、サファイア基板のおもて面と対向するように配置され、ホットプレートからの輻射熱を吸収する輻射熱吸収プレートと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載された技術は、ホットプレートからサファイア基板を透過した輻射熱を輻射熱吸収プレートで吸収してサファイア基板の周囲の空気をサファイア基板の表裏の面から加熱するようにしている。すなわち、特許文献1に記載された技術は、空気を介した熱伝達によってサファイア基板を予熱してサファイア基板の反りを抑制するようにしているため、サファイア基板を平坦化するための作業時間が長くかかるとともに、サファイア基板の望ましい平坦度が得られないという問題がある。その結果、半導体ウエハを吸着面に吸着させにくい不具合がある。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハのあらゆる反り形状に対応可能であり、半導体ウエハの反りを平坦化するための作業時間を短縮し、噴射吸着面に半導体ウエハを吸着させ易くした半導体製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、載置部に載置した板状の半導体ウエハと噴射吸着面とを相対的に接近させる接近手段と、前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され、前記噴射吸着手段は、上側に配設された上板と、該上板の下側に配設された下板とを有し、該下板に前記複数の噴射吸着孔が形成され、前記上板と前記下板との間に、前記複数の噴射吸着孔に前記不活性ガスを案内する案内通路が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記上板と前記下板の中央位置から前記案内通路に前記不活性ガスが供給され、この案内通路が前記不活性ガスを前記中央位置から周囲に案内するように放射状に複数形成された放射状溝と、これらの放射状溝と連通するように同心状に複数形成された同心状溝とを有し、前記複数の放射状溝及び前記複数の同心状溝に連通して前記噴射吸着孔がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、載置部に載置した板状の半導体ウエハと噴射吸着面とを相対的に接近させる接近手段と、前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され、前記噴射吸着孔は、閉止部材が着脱自在に設けられ、該閉止部材が装着されることによって前記噴射吸着孔が閉止可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、前記半導体ウエハの上面に不活性ガスを噴射する一方、前記接近手段により前記半導体ウエハと前記噴射吸着面とを相対的に接近させた前記噴射吸着面に前記半導体ウエハを吸着させる噴射吸着手段と、前記半導体ウエハを上側から加熱する加熱部と、前記半導体ウエハを前記噴射吸着面に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、前記噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設され、前記噴射吸着孔は、円筒パイプが着脱自在に設けられ、該円筒パイプが装着されることによって前記噴射吸着孔の孔径を変更可能に構成されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の構成に加え、前記半導体ウエハがSiCであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、噴射吸着手段が複数の噴射吸着孔を有し、これらの噴射吸着孔が中央部及び該中央部の周囲に配設されていることにより、半導体ウエハのあらゆる反り形状に対応可能となり、半導体ウエハの反りを平坦化するための作業時間を短縮し、噴射吸着面に半導体ウエハを吸着させ易くし、その結果、製品の歩留まりを向上させることができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、噴射吸着手段は、上側に配設された上板と、この上板の下側に配設された下板とを有し、この下板に複数の噴射吸着孔が形成され、上板と下板との間に、複数の噴射吸着孔に不活性ガスを案内する案内通路が設けられていることにより、半導体ウエハのあらゆる反り形状に一段と対応可能となり、半導体ウエハの反りを一段と平坦化し易くなるとともに、半導体ウエハを高精度に平坦化することができる。
【0014】
また、請求項2に記載の発明によれば、案内通路が不活性ガスを中央位置から周囲に案内するように放射状に複数形成された放射状溝と、これらの放射状溝と連通するように同心状に複数形成された同心状溝とを有し、複数の放射状溝及び複数の同心状溝に連通して噴射吸着孔がそれぞれ設けられていることにより、半導体ウエハのあらゆる反り形状に一段と対応可能となり、半導体ウエハの反りを一段と平坦化し易くなるとともに、半導体ウエハを高精度に平坦化することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明によれば、噴射吸着孔は、閉止部材が着脱自在に設けられ、該閉止部材が装着されることによって噴射吸着孔が閉止可能に構成されているので、噴射吸着孔を選択的に閉止することにより、半導体ウエハを極めて高精度に平坦化することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の発明によれば、噴射吸着孔は、円筒パイプが着脱自在に設けられ、該円筒パイプが装着されることによって噴射吸着孔の孔径を変更可能に構成されているので、噴射吸着孔の孔径を選択的に変更することにより、半導体ウエハを極めて高精度に平坦化することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の発明によれば、半導体ウエハがSiCであることから、半導体ウエハに反りがあっても、その反りを軽減させるための材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る半導体製造装置を示す概略平面図である。
【
図2】同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内の構造を示す概略縦断面図である。
【
図3】同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハが下側に凸形状に反った状態で載置された例を示す概略縦断面図である。
【
図4】同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハが断面略M字状に反った状態で載置された例を示す概略縦断面図である。
【
図5】同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハを噴射吸着面に真空吸着するときの状態を示す概略縦断面図である。
【
図6】同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハに熱酸化で成膜するときの状態を示す概略縦断面図である。
【
図7】同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部を示す断面図である。
【
図8】同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の上板を示す平面図である。
【
図9】同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の上板を示す底面図である。
【
図11】同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の下板を示す平面図である。
【
図12】同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の下板を示す底面図である。
【
図17】(a)は、
図16に閉止部材を設けた状態を示す拡大図、(b)は、(a)の閉止部材を示す拡大斜視図である。
【
図18】(a)は、
図16に円筒パイプを設けた状態を示す拡大図、(b)は、(a)の円筒パイプを示す拡大斜視図である。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内の構造を示す概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1~
図6には、本発明の第1実施形態を示す。
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体製造装置を示す概略平面図である。
図2は、同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内の構造を示す概略縦断面図である。
図3は、同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハが下側に凸形状に反った状態で載置された例を示す概略縦断面図である。
図4は、同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハが断面略M字状に反った状態で載置された例を示す概略縦断面図である。
図5は、同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハをサセプタに真空吸着するときの状態を示す概略縦断面図である。
図6は、同実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内で半導体ウエハに熱酸化で成膜するときの状態を示す概略縦断面図である。
【0020】
以下、本実施形態の半導体製造装置10について説明する。
【0021】
本実施形態の半導体製造装置10は、半導体ウエハ1を搬送装置30で搬送して、チャンバ50内で熱酸化処理を行って表面に熱酸化による成膜を施す装置である。なお、本実施形態の半導体ウエハ1は、SiC(シリコンカーバイド)からなるものを使用している。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の半導体製造装置10は、壁面12で囲まれた内部にクリーンルーム11を有しており、このクリーンルーム11内には、ロードポート20と、搬送装置30と、チャンバ50とが設置されている。
【0023】
本実施形態では、
図1に示すように、ロードポート20が1つの壁面に2箇所設けられている。これらのロードポート20には、それぞれウエハカセット5が載置され、各ウエハカセット5に複数の半導体ウエハ1が収容されている。
【0024】
また、
図1に示すように、搬送装置30は、半導体製造装置10の内部で半導体ウエハ1を搬送する装置であり、搬送ロボット31と、ロードスライダ41と、アンロードスライダ45とを有している。
【0025】
このうち、搬送ロボット31は、半導体ウエハ1を保持して移動させることが可能な搬送アーム32を備えている。この搬送アーム32は、半導体ウエハ1を、ロードポート20のウエハカセット5と、センタリング部25と、ロードスライダ41の開始位置と、アンロードスライダ45の終了位置との間において移動可能に構成されている。
【0026】
また、搬送アーム32は、半導体ウエハ1の上下を反転させる機能を有している。そのため、搬送アーム32は、ウエハカセット5に収納されていたときの半導体ウエハ1の上下方向を反転させた上でロードスライダ41に載置することができる一方、アンロードスライダ45に載置されていたときの半導体ウエハ1の上下方向を反転させた上でウエハカセット5に収納させることができる。
【0027】
センタリング部25は、半導体ウエハ1の位置出しを行う部位であり、搬送ロボット31の搬送アーム32がここに半導体ウエハ1を一旦載置して、位置出しを行って再度取り出すことで、搬送ロボット31の搬送アーム32がロードスライダ41の正確な位置に半導体ウエハ1を搬送可能となる。そして、本実施形態では、センタリング部25に半導体ウエハ1を一旦載置するときに、搬送アーム32が半導体ウエハ1の上下方向を反転させるように構成されている。
【0028】
ロードスライダ41は、チャンバ50の外部と内部の所定位置との間で半導体ウエハ1を載せて移動する装置である。このロードスライダ41は、レール部材49に対してスライド移動可能に構成されており、その先端に「載置部」としてのスライダ載置部42が設けられている。そして、ロードスライダ41は、スライダ載置部42に半導体ウエハ1を載置した状態で、レール部材49に沿って移動する。
【0029】
また、本実施形態では、半導体ウエハ1をチャンバ50の外部から内部に移動させる際にロードスライダ41を用い、このロードスライダ41の下側に、半導体ウエハ1をチャンバ50の内部から外部に移動させる際に使用するアンロードスライダ45を有している。このアンロードスライダ45もロードスライダ41と同様の構成であり、レール部材49に対してスライド移動可能に構成されており、その先端にスライダ載置部46が設けられている。そして、アンロードスライダ45は、スライダ載置部46に半導体ウエハ1を載置した状態で、レール部材49に沿って移動する。
【0030】
このように本実施形態では、チャンバ50に対して外部から内部と、この内部から外部とで異なる搬送機構(ロードスライダ41,アンロードスライダ45)が設けられている。これにより、本実施形態によれば、チャンバ50に対する半導体ウエハ1の出し入れの動作を同時に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0031】
図2~
図6に示すように、ロードスライダ41のスライダ載置部42の下方には、「下側加熱部」としてリングヒータ43が設けられている。このリングヒータ43を所定の温度、例えば200~300℃に制御して、半導体ウエハ1の下面2を加熱する。
【0032】
チャンバ50は、その内部で半導体ウエハ1に対して成膜加工を行うものである。このチャンバ50は、
図2~
図6に示すように、「噴射吸着手段」としての噴射吸着部60と、「加工手段,成膜手段」としてのガス供給装置80と、同じく「加工手段,成膜手段」としての半導体ウエハ回動装置90と、を備えている。
【0033】
噴射吸着部60は、上側加熱部55と、上側に配設された上板61と、この上板61の下側に配設された下板70と、噴射を行う噴射装置(図示省略)及び真空吸引を行う吸引装置(図示省略)の噴射吸引路63とを有している。下板70には、下側を向いた噴射吸着面62が設けられており、この噴射吸着面62に半導体ウエハ1を真空吸引によって吸着させる。噴射吸引路63は、噴射吸着部60の上側加熱部55の中心部から上板61底面における中心部まで延びている。
【0034】
本実施形態では、真空吸引を行う噴射吸引路63が不活性ガス(本実施形態では窒素(N
2)ガス)を噴射する噴射装置(図示省略)の噴射路を兼ねている。この噴射吸引路63は、半導体ウエハ1を噴射吸着部60に吸着させる前の状態で不活性ガスを噴射することで、半導体ウエハ1の上面3を冷却する。なお、この不活性ガスは、
図2に示すように、噴射吸着部60の周囲に配設された排気口51から排気される。
【0035】
チャンバ50は、
図2~
図6に示すように、噴射吸着部60が「接近手段」としての上下動機構92によって上下方向に移動可能に構成されている。上下動機構92によって噴射吸着部60を下方に移動させてロードスライダ41のスライダ載置部42に載せられた半導体ウエハ1に密着させて、図示しない吸引装置の噴射吸引路63により真空吸引することで、噴射吸着面62に半導体ウエハ1を吸着する。
【0036】
また、「所定位置」としての噴射吸着面62の下方位置に、ロードスライダ41でチャンバ50の外部から半導体ウエハ1を搬送するように構成されている。一方、アンロードスライダ45で噴射吸着面62の下方位置からチャンバ50の外部まで半導体ウエハ1を搬送するように構成されている。
【0037】
本実施形態は、半導体ウエハ1がスライダ載置部42に載せられた状態で、ロードスライダ41によりチャンバ50の内部の噴射吸着面62の下方の所定位置まで移動されるときに、スライダ載置部42のリングヒータ43で半導体ウエハ1の下面2が加熱される。このとき、リングヒータ43は例えば200~300℃程度に加熱される。
【0038】
図6に示すように、チャンバ50には、ガス供給装置80と、半導体ウエハ回動装置90と、が設けられている。このうちガス供給装置80は、ガス発生部81から発生したガスを、ノズルプレート82を通して半導体ウエハ1の下面2に供給する。具体的に、本実施形態では、中央の第1ガス発生部83でO
2及びSiH
4を発生させ、第1ガス発生部83の周囲の第2ガス発生部84でN
2を発生させる。
【0039】
半導体ウエハ回動装置90には、回動機構91が設けられており、この回動機構91が噴射吸着部60と一体に固定され、成膜時に噴射吸着部60を回動させるように構成されている。また、半導体ウエハ回動装置90は、常に噴射吸着部60の上部に固定されており、噴射吸着部60、排気管85及び半導体ウエハ回動装置90は、固定状態のガス供給装置80に対し上下動機構92によって同時に上下動可能に構成されている。
【0040】
そして、本実施形態では、噴射吸着部60に真空吸引で吸着された半導体ウエハ1に対して、上側加熱部55で半導体ウエハ1を例えば400℃程度に加熱し、半導体ウエハ回動装置90の回動機構91で噴射吸着部60を回動させながら、ガス供給装置80からSiH4,O2,N2を供給することで、熱酸化処理により噴射吸着部60に吸着された半導体ウエハ1の下面2に成膜処理を行う。
【0041】
なお、この成膜処理時には、噴射吸着部60が回転するように構成されているため、半導体ウエハ1を回転させながらガスを供給することができる。これにより、半導体ウエハ1に均等に成膜を行うことができる。また、この成膜処理時のガスは、排気口51を通して排気管85より排出される。
【0042】
図3に示すように、スライダ載置部42に半導体ウエハ1を載置して搬送装置30により噴射吸着部60の下方位置まで搬送するまでの間、リングヒータ43によって半導体ウエハ1の下面2を例えば200~300℃に加熱して半導体ウエハ1を下方に湾曲させる。ここで、スライダ載置部42に順次載置される半導体ウエハ1において、その反りは一様ではなく、互いに複雑な反りの形状に形成されている。
【0043】
そこで、本実施形態では、スライダ載置部42に半導体ウエハ1を載置して噴射吸着部60の下方位置まで搬送するまでの間、リングヒータ43によって半導体ウエハ1の下面2を加熱することで、半導体ウエハ1を一様に下方に湾曲させる。
【0044】
また、本実施形態では、リングヒータ43で半導体ウエハ1の下面2を約200~300℃に加熱し、上側加熱部55で半導体ウエハ1の上面3を約400℃に加熱するとともに、半導体ウエハ1を下方に湾曲した状態から上方に湾曲した状態になる。この場合、噴射吸引路63が噴射吸着部60の噴射吸着面62における平面視略中心部だけに配設されていると、噴射吸着部60で半導体ウエハ1の上面3に不活性ガス(窒素ガス)を噴射した場合、
図4に二点鎖線で示すように、半導体ウエハ1が断面略M字状に湾曲することになる。すると、半導体ウエハ1に噴射吸着部60を接近させて噴射吸着部60に半導体ウエハ1を吸着させようとしても、吸着することができない。
【0045】
次に、半導体ウエハ1の上面3に不活性ガスを噴射して半導体ウエハ1を断面略M字状に湾曲した状態から平坦化するための噴射吸着部60の上板61、噴射吸着面62、噴射吸引路63、及び下板70の構成について説明する。
【0046】
まず、
図7~
図10に基づいて上板61の構成を説明する。
【0047】
図7は、同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部を示す断面図である。
図8は、同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の上板を示す平面図である。
図9は、同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の上板を示す底面図である。
図10は、
図8のA-A線による断面図である。
【0048】
図7~
図10に示すように、上板61は、モリブデン(Mo)によって円形の薄板状に形成され、その中央部まで噴射吸引路63の先端部が延びている。上板61の上面には、噴射吸引路63の先端部から周方向に同一の角度で8本の放射溝64が外周縁まで放射状に形成されている。これらの放射溝64は、噴射吸引路63から噴射された不活性ガスを下板70の後述する外周側の噴射吸着孔に案内する。上板61には、下板70と図示しない締結部材によって連結するための連結孔65が周方向に同一の角度で4つ形成されている。また、上板61には、上側加熱部55に図示しない固定部材によって固定するための固定孔66が連結孔65よりもやや内周側で連結孔65と周方向に異なる角度で4つ形成されている。これらの連結孔65及び固定孔66は、
図7及び
図8に示すように、上板61の上面から底面まで貫通するように形成されている。
【0049】
上板61の下面には、
図9及び
図10に示すように案内通路67が形成され、この案内通路67は、不活性ガスを中央位置の噴射吸引路63から周囲に案内するように放射状に複数形成された放射状溝としての十字状溝68と、これらの十字状溝68とそれぞれ連通するように3本同心状に形成された同心状溝69a,69b,69cとを有している。これら3本の同心状溝69a,69b,69cは、例えば内周側から100mm、130mm、169mmの径を有している。
【0050】
次に、下板70の構成を説明する。
【0051】
図11は、同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の下板を示す平面図である。
図12は、同実施形態に係る半導体製造装置の噴射吸着部の下板を示す底面図である。
図13は、
図11のB-B線による断面図である。
図14は、
図11のC-C線による断面図である。
図15は、
図11のD-D線による断面図である。
図16は、
図14のE部拡大図である。
図17(a)は、
図16に閉止部材を設けた状態を示す拡大図、(b)は、(a)の閉止部材を示す拡大斜視図である。
図18(a)は、
図16に円筒パイプを設けた状態を示す拡大図、(b)は、(a)の円筒パイプを示す拡大斜視図である。
【0052】
図7、
図10~
図15に示すように、下板70は、上板61と同様にモリブデン(Mo)によって円形の薄板状に形成され、その上面に上板61が嵌め込まれるように収納される収納凹部71が形成されている。下板70の上面には、上板61と同一の位置に上板61と図示しない締結部材によって連結するための連結穴72が上板61の連結孔65と周方向に同一の角度で4つ形成されている。
【0053】
下板70には、上板61の下面に形成された100mm、130mm、169mmの径の同心状溝69a,69b,69cとそれぞれ連通する噴射吸着孔73a,73b,73cが
図2~
図5にも示すように周方向に一定間隔をおいて多数設けられている。これらの噴射吸着孔73a,73b,73cは、下板70のやや外周寄りに配置され、上面から下面に貫通するように形成されている。
【0054】
噴射吸着孔73a,73b,73cは、それぞれ円孔に形成され、これらは例えば
図15に示す噴射吸着孔73cのように下板70の厚さ方向に対して上面側から半分以上にわたって大径孔731が形成され、その大径孔731に連続して下面側が小径孔732に形成されている。大径孔731と小径孔732とは、同心円状に形成されている。つまり、噴射吸着孔73a,73b,73cには、オリフィスが形成されている。これにより、本実施形態では、不活性ガスを噴射吸着孔73a,73b,73cから噴射する際に、大径孔731に供給された不活性ガスが小径孔732によって流路が縮径化され、流路を縮径しない場合と比較して噴射される不活性ガスの流速を速くすることができる。
【0055】
また、噴射吸着孔73cの外周側には、上板61の上面に形成された8本の放射溝64の外周端と連通する
図11、
図12及び
図15に示す外周側の噴射吸着孔74aが周方向に一定間隔をおいて多数形成されている。これらの噴射吸着孔74aは、上側加熱部55の底面外周部と下板70の上面外周部との間の隙間G(
図7に示す)を通して互いに連通状態となるように形成されている。これらの噴射吸着孔74aから不活性ガスを噴射することで、噴射吸着孔73a,73b,73cと、後述する噴射吸着孔74bから噴射した不活性ガスの周囲への回り込みを未然に防止している。
【0056】
さらに、下板70の中央位置であって、噴射吸着孔73aの内周側には、
図2~
図5にも示すように上板61の下面に形成された十字状溝68の交差部近傍と連通するように4つの噴射吸着孔74bが形成されている。これら4つの噴射吸着孔74bもそれぞれ図示しないが噴射吸着孔73a,73b,73cと同様に大径孔及び小径孔が上下方向に連続して形成されている。すなわち、4つの噴射吸着孔74bもオリフィスに形成されている。
【0057】
噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74a,74bは、それぞれ吸引装置(図示省略)から真空吸引を行うとともに、噴射装置(図示省略)から供給された不活性ガスをそれぞれ噴射する。
【0058】
下板70の下面には、上述した噴射吸着面62が設けられている。下板70の下面には、
図12に示すように、上板61の下面と同様に案内通路75が形成され、この案内通路75は、下板70の下面の中央位置から周囲に放射状に複数形成された放射状溝としての十字状溝76と、これらの十字状溝76とそれぞれ連通するように3本同心状に形成された同心状溝77a,77b,77cとを有している。
【0059】
十字状溝76は、上板61の十字状溝68と同じ長さに形成されている。3本の同心状溝77a,77b,77cは、上板61の3本の同心状溝69a,69b,69cと同じく内周側から100mm、130mm、169mmの径を有している。これらの同心状溝77a,77b,77cには、それぞれ上述した多数の噴射吸着孔73a,73b,73cが配設されている。
【0060】
多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bには、
図17(a),(b)に示す閉止部材78が着脱可能に設けられる。この閉止部材78が多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bに装着されることによって噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bが閉止される。
【0061】
閉止部材78は、円柱状に形成され、多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bから真空吸引を行わず、また不活性ガスをそれぞれ噴射させたくない部位の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bを閉止する。
【0062】
また、多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bには、
図18(a),(b)に示すように円筒パイプ79が着脱可能に設けられる。この円筒パイプ79は、装着時と離脱時に多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの径が異なるように構成されている。これにより、多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74a,74bのいずれかに円筒パイプ79が装着されることによって多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの孔径が変更可能となる。ここで、円筒パイプ79は、孔径の異なるものを多数用意し、噴射及び吸着する部位の反りに応じて噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの孔径を異なるようにしてもよい。
【0063】
次に、本実施形態の半導体製造装置10の全体の動作について説明する。
【0064】
まず、
図1に示すように、ロードポート20に載置されたウエハカセット5から、搬送ロボット31の搬送アーム32が1枚の半導体ウエハ1を取り出す。そして、その半導体ウエハ1を反転させてセンタリング部25に載置して位置出しを行う。
【0065】
次に、位置出しを行った半導体ウエハ1がロードスライダ41の手前側の開始位置に位置するスライダ載置部42に載置された場合、スライダ載置部42の保持部(図示省略)で半導体ウエハ1が保持され、半導体ウエハ1の下面2をリングヒータ43で加熱して
図3に示すように半導体ウエハ1を下方に湾曲させるようにした状態で、ロードスライダ41がチャンバ50内にスライド移動して噴射吸着部60の下方の所定位置、すなわち噴射吸着部60の下方位置まで搬送される。
【0066】
このように本実施形態では、半導体ウエハ1を搬送している間に半導体ウエハ1の下面2をリングヒータ43で約200~300℃に加熱することで、半導体ウエハ1の反りが様々に形成されていたとしても、半導体ウエハ1を一様に下方に湾曲させるようにしている。そして、半導体ウエハ1が噴射吸着部60の下方位置まで到達すると、
図6に示す上下動機構92を駆動してその間隔が所定の間隔になるように噴射吸着部60を下降させる。
【0067】
次いで、半導体ウエハ1と噴射吸着部60との間隔が所定の間隔になったら、半導体ウエハ1の上面3を上側加熱部55で約400℃に加熱すると、半導体ウエハ1を下方に湾曲した状態から上方に湾曲した状態になる。この状態では、半導体ウエハ1の下面2はリングヒータ43で上記温度に加熱されたままである。
【0068】
そして、従来のように噴射吸引路63が噴射吸着部60の噴射吸着面62における平面視略中心部だけに配設されていると、噴射吸着部60で半導体ウエハ1の上面3に冷却用に常温の不活性ガス(窒素ガス)を噴射した場合、
図4に二点鎖線で示すように、半導体ウエハ1が断面略M字状に湾曲することになる。すると、半導体ウエハ1に噴射吸着部60を接近させて噴射吸着部60に半導体ウエハ1を吸着させようとしても、吸着することができない。
【0069】
そこで、本実施形態では、噴射吸引路63に供給された不活性ガス(窒素ガス)を上板61の放射溝64を経て上板61の外周端まで案内し、さらに下板70の多数の噴射吸着孔74aを通して半導体ウエハ1の上面3の外周部に噴射する。
【0070】
同時に、不活性ガスは、噴射吸引路63から上板61の案内通路67の十字状溝68の中央位置から下板70の4つの噴射吸着孔74bに流入し、これらの噴射吸着孔74bから噴射されるとともに、十字状溝68から同心状溝69a,69b,69cを通り、多数の噴射吸着孔73a,73b,73cから噴射される。このように下板70の中央位置から4つの噴射吸着孔74bから不活性ガスが噴射されるとともに、これら4つの噴射吸着孔74bの周囲に配設された多数の噴射吸着孔73a,73b,73cから不活性ガスが噴射されることにより、半導体ウエハ1が断面略M字状に湾曲していた場合は勿論のこと、半導体ウエハ1があらゆる形状に反っていたとしても対応可能であり、半導体ウエハ1の反りを平坦化することができる。
【0071】
次いで、上記の所定時間経過した後は、冷却用の不活性ガス(窒素ガス)の供給を停止すると同時に、上下動機構92を駆動して半導体ウエハ1と噴射吸着部60の噴射吸着面62とが密着するまで噴射吸着部60を下降させる。そして、半導体ウエハ1に噴射吸着部60の噴射吸着面62が密着すると、噴射吸引路63を吸引路としての役割に切り替え、真空吸引を開始し、
図5に示すように下側を向いた噴射吸着面62に半導体ウエハ1を吸着させる。
【0072】
なお、
図4に二点鎖線で示すようにM字状に反っている場合には、そのままでは噴射吸着部60に接触する面積が小さいため、吸着できない場合が多いが、本実施形態のように4つの噴射吸着孔74bと、これらの周囲に多数の噴射吸着孔73a,73b,73cが配設されていることにより、半導体ウエハのあらゆる反り形状に対応可能となり、半導体ウエハを平坦化するための作業時間を短縮し、噴射吸着面に半導体ウエハを吸着させ易くすることが可能となる。
【0073】
その後、ロードスライダ41とスライダ載置部42をチャンバ50の外部に退避させ、
図6に示すように、固定状態のガス供給装置80に対して噴射吸着部60と半導体ウエハ回動装置90を近づけるように移動させ、これらの構成により、上側加熱部55で半導体ウエハ1を加熱し、半導体ウエハ回動装置90で噴射吸着部60を回転させながら、半導体ウエハ1の下面2にSiH
4,O
2,N
2を吹き付け、熱酸化処理による成膜加工を行う。
【0074】
半導体ウエハ1の下面2への成膜が終了すると、上下動機構92を駆動させ、噴射吸着部60及び半導体ウエハ回動装置90を成膜時の位置より上方に移動させ、チャンバ50の外部からアンロードスライダ45を噴射吸着部60の下方に移動させ、成膜が終わった半導体ウエハ1をアンロードスライダ45のスライダ載置部46に載せてチャンバ50から外部に搬送する。
【0075】
その後、所定時間の冷却を行った後、搬送ロボット31の搬送アーム32によって半導体ウエハ1の上下方向を反転させつつ、ロードポート20のウエハカセット5に収納する。その後、ウエハカセット5のシャッタ(図示省略)を閉じて、次の工程を行う装置に搬送する。
【0076】
以上のように、本実施形態の半導体製造装置10によれば、噴射吸着部60が上側加熱部55の下側に設けられるとともに、複数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bを有し、これらの噴射吸着孔が中央部及びこの中央部の周囲に配設されていることにより、断面略M字状に湾曲した半導体ウエハ1は勿論のこと、半導体ウエハ1のあらゆる反り形状に対応可能となり、半導体ウエハ1の反りを平坦化するための作業時間を短縮し、噴射吸着面62に半導体ウエハ1を吸着させ易くし、その結果、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0077】
また、本実施形態の半導体製造装置10によれば、噴射吸着部60は、上側に配設された上板61と、この上板61の下側に配設された下板70とを有し、下板70に複数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bが形成され、上板61と下板70との間に、複数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bに不活性ガスを案内する案内通路67が設けられていることにより、半導体ウエハ1のあらゆる反り形状に一段と対応可能となり、半導体ウエハ1の反りを一段と平坦化し易くなるとともに、半導体ウエハ1を高精度に平坦化することができる。
【0078】
また、本実施形態の半導体製造装置10によれば、案内通路67が不活性ガスを中央位置から周囲に案内するように放射状に複数形成された放射状溝としての十字状溝68と、この十字状溝68と連通するように同心状に複数形成された同心状溝69a,69b,69cとを有し、十字状溝68及び複数の同心状溝69a,69b,69cに連通して噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bがそれぞれ設けられていることにより、半導体ウエハ1のあらゆる反り形状に一段と対応可能となり、半導体ウエハ1の反りを一段と平坦化し易くなるとともに、半導体ウエハ1を高精度に平坦化することができる。
【0079】
また、本実施形態の半導体製造装置10によれば、噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bは、閉止部材78が着脱自在に設けられ、この閉止部材78が装着されることによって噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bが閉止可能に構成されているので、噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bを選択的に閉止することにより、半導体ウエハ1を極めて高精度に平坦化することができる。
【0080】
また、本実施形態の半導体製造装置10によれば、噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bは、円筒パイプ79が着脱自在に設けられ、この円筒パイプ79が装着されることによって噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの孔径を変更可能に構成されているので、噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの孔径を選択的に変更することにより、半導体ウエハ1を極めて高精度に平坦化することができる。
【0081】
また、本実施形態の半導体製造装置10によれば、半導体ウエハ1がSiCであることから、半導体ウエハ1に反りがあっても、その反りを軽減させるための材料として好適である。
[第2実施形態]
図19には、本発明の第2実施形態を示す。
図19は、本発明の第2実施形態に係る半導体製造装置のチャンバ内の構造を示す概略縦断面図である。なお、前記第1実施形態と同一又は対応する部分には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
図19に示すように、噴射吸引路63には、配管105を介して噴射用バルブ102及び噴射装置101と、吸引用バルブ104及び吸引装置103が並列に接続されている。そして、本実施形態では、噴射装置101と吸引装置103を隣接するように配置することで、配管105の長さを可及的に短くしている。
【0083】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0084】
噴射装置101から噴射用バルブ102、配管105、及び噴射吸引路63を経て噴射吸着部60の噴射吸着面62から不活性ガスを噴射して半導体ウエハ1の反りを補正した後、半導体ウエハ1を吸着位置に移動させる。そして、噴射用バルブ102を閉じると同時に吸引用バルブ104を開にする。
【0085】
すると、半導体ウエハ1は噴射吸着部60の噴射吸着面62に吸着される。このとき、不活性ガスの噴射動作の終了時に対して半導体ウエハ1の吸着動作が遅れると、半導体ウエハ1の反り戻りが発生して噴射吸着面62に半導体ウエハ1を吸着することができない場合がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、上記のように配管105の長さを可及的に短くし、具体的には約5メートルから数十センチ程度に変更することによって、不活性ガスの噴射動作の終了時と半導体ウエハ1の吸着動作との切り替えの応答性を高めるようにしている。これにより、半導体ウエハ1の反り戻りを未然に防止することができる。その他の構成及び作用は、前記第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
[他の実施形態]
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【0087】
例えば、上記各実施形態では、SiCからなる半導体ウエハ1を用いた例について説明したが、これに限定するものではなく、反りが問題となるものであればシリコン等の適宜の材質のものも適用することができる。また、ワークとしては半導体ウエハに限らず、その他の基板等に適用してもよい。また、上記実施形態では、半導体ウエハ成膜装置に対して本発明の技術を用いるようになっていたが、これに限るものではなく、成膜装置以外の半導体製造装置であっても適用可能である。
【0088】
また、上記各実施形態では、接近手段としての上下動機構92によって半導体ウエハ1に噴射吸着面62を接近させるように構成したが、これに限らずロードスライダ41とスライダ載置部42との間に上下動機構を設置し、上記とは逆に噴射吸着面62に半導体ウエハ1を接近させるように構成してもよい。加えて、半導体ウエハ1に噴射吸着面62を接近させると同時に、噴射吸着面62に半導体ウエハ1を接近させるようにしてもよい。つまり、半導体ウエハ1及び噴射吸着面62の少なくとも一方を相対的に接近させるように構成すればよい。
【0089】
さらに、前記第1実施形態では、多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bを閉止するために円柱状に形成された閉止部材78を装着する例について説明したが、これに限らず、例えば多数の噴射吸着孔73a,73b,73c及び噴射吸着孔74bの領域を選択してその領域に対応した形状、例えば扇形、円弧状、又は円環状等に形成した薄板を上板61と下板70との間に配置してその領域内の噴射吸着孔を閉止するようにしてもよい。
【0090】
そして、前記第1実施形態では、上板61の下面に放射状溝としての十字状溝68を形成した例について説明したが、これに限らず例えば
図7に示す上板61の放射溝64のように8本の放射状溝に形成するようにしてもよく、要するに放射状に形成されていればよい。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体ウエハ
2 下面
3 上面
10 半導体製造装置
20 ロードポート
30 搬送装置
31 搬送ロボット(搬送装置)
41 ロードスライダ(搬送装置)
42 スライダ載置部(載置部)
43 リングヒータ
45 アンロードスライダ(搬送装置)
46 スライダ載置部
50 チャンバ
55 上側加熱部(加熱部)
60 噴射吸着部(噴射吸着手段)
61 上板
62 噴射吸着面
63 噴射吸引路
64 放射溝
65 連結孔
66 固定孔
67 案内通路
68 十字状溝(放射状溝)
69a,69b,69c 同心状溝
70 下板
71 収納凹部
72 連結穴
73a,73b,73c 噴射吸着孔
74a,74b 噴射吸着孔
75 案内通路
76 十字状溝(放射状溝)
77a,77b,77c 同心状溝
78 閉止部材
79 円筒パイプ
80 ガス供給装置(成膜手段,加工手段)
90 半導体ウエハ回動装置(成膜手段,加工手段)
91 回動機構
92 上下動機構(接近手段)
101 噴射装置
102 噴射用バルブ
103 吸引装置
104 吸引用バルブ
105 配管
731 大径孔
732 小径孔
G 隙間
【要約】
【課題】半導体ウエハのあらゆる反り形状に対応可能であり、半導体ウエハの反りを平坦化するための作業時間を短縮し、噴射吸着面に半導体ウエハを吸着させ易くした半導体製造装置を提供する。
【解決手段】スライダ載置部42に載置した半導体ウエハ1と噴射吸着面62とを相対的に接近させる接近手段と、半導体ウエハ1の上面に不活性ガスを噴射する一方、接近手段により半導体ウエハ1と噴射吸着面62とを相対的に接近させた噴射吸着面62に半導体ウエハ1を吸着させる噴射吸着部60と、半導体ウエハ1を上側から加熱する上側加熱部55と、半導体ウエハ1を噴射吸着面62に吸着させた状態で加工する加工手段と、を備え、噴射吸着部60が複数の噴射吸着孔73a,73b,73cを有し、これらの噴射吸着孔73a,73b,73cが中央部及び該中央部の周囲に配設されている。
【選択図】
図2