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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】処置具挿入用ガイドアダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/018 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61B1/018 512
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024060274
(22)【出願日】2024-04-03
【審査請求日】2024-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521082134
【氏名又は名称】ORTメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 幸司
(72)【発明者】
【氏名】森 宏仁
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-526346(JP,A)
【文献】特開2017-104185(JP,A)
【文献】国際公開第2023/242957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が開口されるとともに、潤滑剤が充填される第1空間を有する収納部と、前記第1空間に連通する第2空間を有する先細形状の挿し込み部と、前記収納部の前記一端側で当該収納部の外方に位置して、前記収納部との間に第3空間を形成する円筒状の被嵌合部と、を有し、内視鏡の口金に装着された栓に前記挿し込み部を挿し込むことで前記栓に保持させることが可能なアダプタ本体と、
前記第1空間に向けた処置具の挿し込みを可能とする、少なくとも前記処置具の外径を超過する長さの切れ込みと、前記第3空間に挿入される円筒状の外周壁と、を有するとともに、前記外周壁を前記第3空間に挿入した状態で前記収納部の一端に装着されて当該収納部の前記一端を閉塞する第1の蓋部材と、
前記被嵌合部に嵌合される嵌合部と、当該嵌合部に連通する開口と、を有し、前記収納部の前記一端への装着時に、前記収納部の前記一端に装着された前記第1の蓋部材を被覆するとともに、前記開口を介して前記切れ込み及び当該切れ込みの近傍を露呈する第2の蓋部材と、
を備えることを特徴とする処置具挿入用ガイドアダプタ。
【請求項2】
前記第2の蓋部材は、前記収納部の前記一端に取り付けたときに、前記第1の蓋部材を前記収納部に向けて押圧する押圧部を有していることを特徴とする請求項1に記載の処置具挿入用ガイドアダプタ。
【請求項3】
前記収納部は、当該収納部の前記一端を閉塞した第1の蓋部材に食い込む少なくとも1条以上の環状凸部を有することを特徴とする請求項1に記載の処置具挿入用ガイドアダプタ。
【請求項4】
前記第1の蓋部材は、前記収納部の前記一端を閉塞したときに、前記第1空間側に湾曲する湾曲部を有しており、
前記切れ込みは、前記湾曲部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処置具挿入用ガイドアダプタ。
【請求項5】
前記第1の蓋部材は、前記収納部の前記一端を閉塞したときに、前記第1空間側に傾斜する2つの壁部を組み合わせた折曲部を有しており、
前記切れ込みは、前記折曲部において、前記2つの壁部が交差する部位に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の処置具挿入用ガイドアダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の口金に取り付けられる栓に装着される処置具挿入用ガイドアダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において用いられる内視鏡は、被検体となる患者の体腔内に内視鏡挿入部を挿入することによって、体腔内の対象位置(以下、単に対象位置と称する場合がある)の観察や、処置具を用いた対象部位への各種処置を行うために用いられている。内視鏡の操作ハンドルには、例えば鉗子口を有する鉗子口金が設けられている。上述した処置具は鉗子口を介して内視鏡の鉗子チャンネルに挿入されて、当該処置具の先端が内視鏡挿入部の先端から体腔内の対象部位へと導かれる。
【0003】
ところで、内視鏡を用いて対象位置の観察や各種処置を行っているとき、患者の体腔内の圧力が上昇する場合がある。このような場合、体液が内視鏡の鉗子チャンネルを逆流して、鉗子口金の鉗子口から漏れる事象が発生する虞がある。したがって、内視鏡の鉗子口金には、鉗子口を覆う鉗子栓が取り付けられる。
【0004】
内視鏡の鉗子口金に取り付けられる鉗子栓には、当該鉗子栓の内部に仕切り部を有しているものや、鉗子栓本体及び当該鉗子栓本体に装着される蓋のそれぞれに仕切り部を有しているものがある。これら鉗子栓では、各仕切り部に設けた円形の孔に処置具を挿通させると、処置具の外周が仕切り部に密着して液密に保持する構成となっている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-189304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した鉗子栓の仕切り部に設けられる孔を介して処置具を鉗子チャンネルに送り込むときには、仕切り部と処置具の外周面との間に摩擦力が発生して、処置具を送り込みづらいという問題がある。そこで、処置具の外周面に摩擦力を低減するための潤滑剤を予め塗布することも考えられるが、対象位置の観察や各種処置を行う前に予め潤滑材を塗布する作業は手間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、対象位置の観察や各種処置を行う前に予め潤滑材を塗布する作業を行わなくても、内視鏡の鉗子口金に取り付けた鉗子栓を介して、処置具を鉗子チャンネルに挿入させやすくした鉗子挿入用ガイドアダプタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様における鉗子挿入用ガイドアダプタは、一端が開口されるとともに、潤滑剤が充填される第1空間を有する収納部と、第1空間に連通する第2空間を有する先細形状の挿し込み部と、収納部の一端側で当該収納部の外方に位置して、収納部との間に第3空間を形成する円筒状の被嵌合部と、を有し、内視鏡の口金に装着された栓に挿し込み部を挿し込むことで栓に保持させることが可能なアダプタ本体と、第1空間に向けた処置具の挿し込みを可能とする、少なくとも処置具の外径を超過する長さの切れ込みと、第3空間に挿入される円筒状の外周壁と、を有するとともに、外周壁を第3空間に挿入した状態で収納部の一端に装着されて当該収納部の一端を閉塞する第1の蓋部材と、被嵌合部に嵌合される嵌合部と、当該嵌合部に連通する開口と、を有し、収納部の一端への装着時に、収納部の一端に装着された第1の蓋部材を被覆するとともに、開口を介して切れ込み及び当該切れ込みの近傍を露呈する第2の蓋部材と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、第2の蓋部材は、収納部の一端に取り付けたときに、第1の蓋部材を収納部に向けて押圧する押圧部を有していることが好ましい。
【0010】
また、収納部は、当該収納部の一端を閉塞した第1の蓋部材に食い込む少なくとも1条以上の環状凸部を有することが好ましい。
【0011】
また、第1の蓋部材は、収納部の一端を閉塞したときに、第1空間側に湾曲する湾曲部を有しており、切れ込みは、湾曲部に設けられていることが好ましい。
【0012】
また、第1の蓋部材は、収納部の一端を閉塞したときに、第1空間側に傾斜する2つの壁部を組み合わせた折曲部を有しており、切れ込みは、折曲部において、2つの壁部が交差する部位に設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本件開示によれば、対象位置の観察や各種処置を行う前に予め潤滑材を塗布する作業を行わなくても、内視鏡の鉗子口金に取り付けた鉗子栓を介して、処置具を鉗子チャンネルに挿入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に示す内視鏡の一構成を示す模式的な説明図である。
図2図2は、鉗子挿入部の近傍の構成を示す斜視図である。
図3図3は、鉗子挿入部の近傍の構成を示す断面図である。
図4図4は、ガイドアダプタの構成を分解して示す断面図である。
図5図5は、ガイドアダプタを鉗子栓に取り付ける手順を示す断面図である。
図6図6は、ガイドアダプタを介して処置具を鉗子チャンネルに挿し込む手順を示す断面図である。
図7図7(a)は、異なるスリット弁を有する内側蓋の一例を示す上面図、図7(b)は、図7(a)におけるA-A’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に示す鉗子挿入用ガイドアダプタについて図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、鉗子挿入用ガイドアダプタを、単にガイドアダプタと称する場合がある。本実施形態に示すガイドアダプタは、内視鏡の鉗子口金に取り付けられた鉗子栓に装着される。
【0016】
図1に示すように、内視鏡10は、操作ハンドル11と、内視鏡挿入部12と、ユニバーサルチューブ13と、接続部14と、を備えている。
【0017】
操作ハンドル11は、操作部16と、鉗子挿入部17と、を有している。操作部16は、例えばアングルノブ16a,16bと、送気/送水ボタン16cと、吸引ボタン16dと、シャッターボタン16eと、を含む。
【0018】
アングルノブ16a,16bは、内視鏡挿入部12の先端側に設けた湾曲部12aの湾曲動作を行う際に回転操作される。アングルノブ16aは、内視鏡挿入部12の湾曲部12aを、例えば、図1中紙面に直交する方向に湾曲させる際に回転操作される。また、アングルノブ16bは、内視鏡挿入部12の湾曲部12aを、例えば、図1中左右方向に湾曲させる際に回転操作される。
【0019】
送気/送水ボタン16cは、内視鏡挿入部12の先端面12bに設けた観察口(不図示)や照明口(不図示)を洗浄する際に操作される。吸引ボタン16dは、内視鏡挿入部12の先端に設けた鉗子口(不図示)から体腔内の汚物を吸引する際に操作される。シャッターボタン16eは、内視鏡挿入部12の先端内部に設けた撮像装置(不図示)を用いて体腔内を撮像する際に操作される。
【0020】
図2及び図3に示すように、鉗子挿入部17には、鉗子口金21が設けられている。鉗子口金21は、例えば金属材料から生成されている。鉗子口金21は、例えば、当該鉗子口金21の中心軸方向(図2及び図3中直線L1に沿った方向)における両端部が開口された円筒状の部材である。なお、図2及び図3においては、鉗子口金21、鉗子栓31及びガイドアダプタ71の中心軸が各々同軸となるように配置した場合を例示している。以下、図2及び図3を用いて、鉗子口金21、鉗子栓31及びガイドアダプタ71を説明するにあたり、各部材の中心軸方向を中心軸(L1)方向と称する場合がある。
【0021】
鉗子口金21は、中心軸(L1)方向における一端を、鉗子挿入部17の端面17aから外部(図2中上方向)に突出した状態で鉗子挿入部17に保持されている。したがって、中心軸(L1)方向における内部空間22の両端部のうち、鉗子挿入部17の端面17aから外部に突出(露呈)した一端部分が鉗子口23として機能する。また、中心軸(L1)方向における内部空間22の両端部のうち、鉗子口23として機能する一端部とは反対側となる他端部は、鉗子挿入部17まで延在する鉗子チャンネル18に接続されている。ここで、鉗子口金21は、請求項に記載の口金に相当する。
【0022】
鉗子口金21のうち、鉗子口23として機能する一端部には、後述する鉗子栓31が嵌合される被嵌合部24が設けられている。被嵌合部24は、第1環状部24aと、第2環状部24bと、を有する。
【0023】
被嵌合部24を構成する第1環状部24a及び第2環状部24bは、中心軸(L1)方向における一端部側から他端部に向けて、第1環状部24a、第2環状部24bの順で設けられている。第1環状部24aの直径は、第2環状部24bの直径よりも大きい。
【0024】
また、鉗子口金21には、被嵌合部24に連なるように、フランジ部25が形成されている。フランジ部25の直径は、被嵌合部24の第2環状部24bの直径よりも大きい。したがって、被嵌合部24の第1環状部24a、第2環状部24b及びフランジ部25の直径がそれぞれ異なることで、被嵌合部24の第1環状部24aとフランジ部25との間には、鉗子口金21の全周に亘って溝26が形成されている。なお、図2及び図3においては、フランジ部25の直径が被嵌合部24の第1環状部24aの直径よりも大きい場合を例示しているが、フランジ部25の直径は、被嵌合部24の第1環状部24aの直径よりも小さい、又は同一径であってもよい。
【0025】
鉗子栓31は、例えば汎用シリコンまたはスチレン系熱可塑性エラストマーなどの合成樹脂材から生成されている。鉗子栓31は、栓本体32と、蓋部33と、接続部34と、を有している。接続部34は、栓本体32と蓋部33とを接続するものである。ここで、鉗子栓31は、請求項に記載の栓に相当する。
【0026】
栓本体32は、中心軸(L1)方向における両端部が開口された円筒形状の部材である。栓本体32を円筒形状の部材とすることで、その内部空間35が第1チャンネルとして機能する。第1チャンネル35の内部には、当該第1チャンネル35を仕切る円錐筒部36が設けられている。円錐筒部36は、中心軸(L1)方向における上端側が開口され、下端側が閉口している。また、円錐筒部36は、栓本体32の上面32aから栓本体32の底面32bに向けて縮径している。
【0027】
円錐筒部36の下端側を閉口する端面37には、中心軸(L1)方向に直交する断面形状が例えば円形状の開口部38が形成されている。開口部38の内径は、ガイドアダプタ71の挿し込み部82の外径の最小径よりも小さい。開口部38には、鉗子栓31に挿し込まれたガイドアダプタ71の挿し込み部82が圧入される。ガイドアダプタ71の挿し込み部82が開口部38に圧入されると、円錐筒部36の端面37において、開口部38近傍の部位(図資料略)がガイドアダプタ71の挿し込み部82の外周面に圧接された状態で保持される(例えば、図5参照)。
【0028】
なお、開口部38の内径が、ガイドアダプタ71の挿し込み部82の外径の最小径に対して小さすぎる場合には、ガイドアダプタ71の挿し込み部82を開口部38に挿し込むことができないことが想定される。このような場合に対応するために、円錐筒部36の端面37に開口部38を設けるだけでなく、当該端面37に開口部38の径方向に延びる1以上のスリットを設けてもよい。
【0029】
中心軸(L1)方向において、当該第1チャンネル35の内部に設けられる円錐筒部36の上方に位置する部分は、蓋部33の被嵌合部57が嵌め込まれる第1嵌合部41として機能する。また、中心軸(L1)方向において、当該第1チャンネル35の内部に設けられる円錐筒部36の下方に位置する部分は、内視鏡10の鉗子口金21の被嵌合部24が嵌め込まれる第2嵌合部42として機能する。
【0030】
第1嵌合部41は、例えば、第1開口部44と、第1開口部44の内径よりも大きい内径を有する第2開口部45と、を有している。第1嵌合部41は、中心軸(L1)方向において、栓本体32の上面32a側から、第1開口部44、第2開口部45の順で設けられている。なお、符号46は、第1嵌合部41に向けて縮径されるテーパ部である。テーパ部46は、蓋部33に設けた被嵌合部57の第1嵌合部41への挿入をガイドする。
【0031】
第2嵌合部42は、例えば、第3開口部47と、第3開口部47の内径よりも大きい内径を有する第4開口部48とを有している。第2嵌合部42は、中心軸(L1)方向において、栓本体32の底面32b側から、第3開口部47、第4開口部48の順で設けられている。なお、符号49は、第2嵌合部42に向けて縮径されるテーパ部である。テーパ部49は、鉗子口金21の被嵌合部24の第2嵌合部42への挿入をガイドする。
【0032】
蓋部33には、処置具200が挿通されるための第2チャンネル51が形成されている。第2チャンネル51は、蓋部33が栓本体32に取り付けられることで、第1チャンネル35と連通する。
【0033】
蓋部33の一面33aにおける中央には、当該一面33aとは反対側の面33bに向けて湾曲する凹部55が設けられている。なお、凹部55と第2チャンネル51とは湾曲壁56により仕切られている。湾曲壁56には、スリット56aが形成されている。湾曲壁56に設けられるスリット56aの長さは、ガイドアダプタ71の挿し込み部82の外径の最大値より小さい。その結果、ガイドアダプタ71の挿し込み部82がスリット56aに挿し込まれると、スリット56aの周縁部が当該挿し込み部82の外周に圧接される。
【0034】
蓋部33は、面33b側の中央に、面33bから突出する被嵌合部57を有している。被嵌合部57は、蓋部33が栓本体32に取り付けられたときに、栓本体32の第1嵌合部41に嵌合される。
【0035】
被嵌合部57は、第1環状部58と、第2環状部59と、を有している。第1環状部58及び第2環状部59は、面33b側から、第1環状部58、第2環状部59の順で設けられている。また、第1環状部58の直径は、第2環状部59の直径よりも小さい。したがって、蓋部33が栓本体32に取り付けられると、第1環状部58が第1嵌合部41の第1開口部44に、第2環状部59が第1嵌合部41の第2開口部45にそれぞれ嵌め合わされる。
【0036】
ガイドアダプタ71は、上述した鉗子栓31に挿し込まれるとともに、鉗子栓31に挿し込まれた状態で処置具200が挿し込まれるものである。なお、ガイドアダプタ71は、鉗子栓31の蓋部33が栓本体32から取り外された状態で栓本体32の上面32a側から挿し込まれる。
【0037】
図4に示すように、ガイドアダプタ71は、アダプタ本体72と、内側蓋73と、外側蓋74とから構成されている。また、ガイドアダプタ71を構成するアダプタ本体72の内部に潤滑剤75が充填されている。ここで、内側蓋73は請求項に記載の第1の蓋部材に、外側蓋74は請求項に記載の第2の蓋部材にそれぞれ相当する。なお、図4では、ガイドアダプタ71の構成を説明するにあたり、アダプタ本体72と、内側蓋73と、外側蓋74との中心軸を各々同軸に配置している。したがって、アダプタ本体72、内側蓋73及び外側蓋74を説明する際に、これら部材の中心軸を中心軸L2と称して説明する場合がある。
【0038】
アダプタ本体72は、例えばポリカーボネイトなどの合成樹脂材を用いて生成される。。アダプタ本体72は、潤滑剤収納部81、挿し込み部82及び接続部83を有している。アダプタ本体72は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における同図中右側端部から左端部に向けて、潤滑剤収納部81、接続部83及び挿し込み部82の順で設けられている。
【0039】
潤滑剤収納部81は、例えば円筒形状である。潤滑剤収納部81は、例えば合成樹脂材を用いて成型により生成されている。潤滑剤収納部81は、アダプタ本体72の中心軸(L2)方向における一端が開口された内部空間84を有している。内部空間84には潤滑剤75が充填される。潤滑剤収納部81は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における一端部の外周面は、端面81aに向けて縮径されたテーパ部85となっている。ここで、潤滑剤収納部81は請求項に記載の収納部に、内部空間84は請求項に記載の第1空間にそれぞれ相当する。
【0040】
潤滑剤収納部81の端面81aには、2条の環状凸部86,87が設けられている。2条の環状凸部86,87は、内側蓋73がアダプタ本体72の空間99に取り付けられたときに内側蓋73の端面73bに食い込み、潤滑剤収納部81との間を液密に保持する。
【0041】
ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向において、接続部83に連なる端部とは反対側となる端部には、潤滑剤収納部81の全周に亘ってフランジ部91が設けられている。フランジ部91の外径は、潤滑剤収納部81の外径よりも大きい。
【0042】
フランジ部91に設けられる面91aには、円筒状の被嵌合部92が設けられている。被嵌合部92は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向において、テーパ部85が設けられる端部側に突出している。この被嵌合部92の外周面には、フランジ部91の径方向に突出する突起93が設けられている。
【0043】
ここで、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向において、フランジ部91の面91aを基準としたとき、当該面91aから2条の環状凸部86,87の先端までの距離は、面91aから被嵌合部92の先端までの距離よりも短い。また、テーパ部85の最大外径は、被嵌合部92の内径未満である。したがって、被嵌合部92と、当該被嵌合部92に包囲されるテーパ部85との間には、空間99が形成される。なお、空間99には、内側蓋73が取り付けられる。
【0044】
挿し込み部82は、当該挿し込み部82の外周面が、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向において、接続部83に接続される一端側から他端側に向けて、縮径された筒形状となる。すなわち、挿し込み部82は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における両端部が開口された内部空間100を有している。ここで、挿し込み部82の最大径は、潤滑剤収納部81の外径未満である。また、挿し込み部82の内径は、処置具200の外径を超過し、潤滑剤収納部81の内径未満である。内部空間100は請求項に記載の第2空間に相当する。
【0045】
接続部83は、潤滑剤収納部81と、挿し込み部82との間に設けられている。上述したように、挿し込み部82の最大外径は、潤滑剤収納部81の外径未満である。したがって、接続部83の外周面83aは、潤滑剤収納部81の外周面81bと、挿し込み部82の外周面82aとを繋ぐテーパ面となる。
【0046】
接続部83は、潤滑剤収納部81の内部空間84と、挿し込み部82の内部空間100とを接続する内部空間101を有している。ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向を含む断面において、挿し込み部82の内部空間101に面する内周面101aは、テーパ面又は湾曲した面となる。
【0047】
内側蓋73は、例えばシリコンゴムなどの合成樹脂材を用いて生成されている。内側蓋73は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における一端に取り付けられて、潤滑剤収納部81の内部空間84を閉塞する。内側蓋73は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における両端面73a,73bのうち、一方の端面73aの中央が他方の端面73b側に湾曲する湾曲部105を有する。また、湾曲部105には、スリット107が設けられている。スリット107は請求項の切れ込みに相当する。
【0048】
スリット107は、処置具200が挿し込まれていない状態では、湾曲部105を塞いでいる。また、処置具200がスリット107に挿し込まれると、当該処置具200によってスリット107が押し開かれて、スリット107に挿し込まれた処置具200の外周面に密着する。このように、湾曲部105にスリット107を設けることで、当該内側蓋73の湾曲部105がスリット弁として機能する。なお、スリット107の長さは、挿入される処置具200の外径を超過する長さであることが好ましい。
【0049】
内側蓋73には、他方の端面73bの外周縁部に、外周壁108が設けられている。外周壁108は、内側蓋73をアダプタ本体72に取り付けた時に、空間99に入り込んだ状態で保持される。
【0050】
外側蓋74は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂材を用いて生成されている。外側蓋74は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における一方の端面74aに嵌合部110を有している。嵌合部110には、潤滑剤収納部81に設けた被嵌合部92が挿入される。嵌合部110の底面110aには、一方の端面74aに向けて突出した突出部111が設けられている。突出部111は、外側蓋74をアダプタ本体72に取り付けた時に、アダプタ本体72に取り付けた内側蓋73をアダプタ本体72に向けて押圧する。これにより、アダプタ本体72と内側蓋73とが液密に保持される。ここで、突出部111は請求項に記載の押圧部に相当する。
【0051】
外側蓋74は、ガイドアダプタ71の中心軸(L2)方向における一方の端面74aとは反対側となる端面74bの中央に、端面74から嵌合部110に向けて縮径されるテーパ状の凹部112が設けられている。凹部112と嵌合部110とは、貫通孔113により連通している。貫通孔113を設けることで、外側蓋74をアダプタ本体72に取り付けたときに、内側蓋73の湾曲部105や、当該湾曲部105に設けたスリット107が露呈される。ここで、貫通孔113の内径は、処置具200の外径や内側蓋73に設けられるスリット107の長さよりも長い。
【0052】
潤滑剤75は、処置具200がガイドアダプタ71に挿通されるときに、当該処置具200の表面に塗布される。潤滑剤75としては、例えば水、グリセリン、増粘剤、pH調整剤、保湿剤、メリルパラペン(抗菌剤)などを調合したジェル(ゲル)が用いられる。
【0053】
キャップ120は、アダプタ本体72の潤滑剤収納部81に潤滑剤75を充填する際に、アダプタ本体72の挿し込み部82の先端に取り付けられる。また、キャップ120は、ガイドアダプタ71を鉗子栓31に挿し込むときに、アダプタ本体72の挿し込み部82から取り外される。
【0054】
ガイドアダプタ71は、アダプタ本体72の挿し込み部82にキャップ120を取り付けた状態で、アダプタ本体72の潤滑剤収納部81に潤滑剤75が充填される。アダプタ本体72の潤滑剤収納部81に潤滑剤75が充填された後、アダプタ本体72の空間99に内側蓋73が取り付けられる。最後に、アダプタ本体72に外側蓋74が取り付けられる。これにより、ガイドアダプタ71が生成される。
【0055】
なお、ガイドアダプタ71を生成するにあたり、アダプタ本体72に内側蓋73を取り付けると、アダプタ本体72の潤滑剤収納部81の端面81aに設けた2条の環状凸部86,87が内側蓋73の端面73bに食い込んだ状態となる。また、アダプタ本体72に外側蓋74が取り付けられると、外側蓋74の突出部111は、アダプタ本体72に取り付けた内側蓋73をアダプタ本体72に向けて押圧する。これらにより、アダプタ本体72と内側蓋73とが液密に保持される。この状態では、内側蓋73のスリット107は閉じている。したがって、アダプタ本体72の潤滑剤収納部81に充填された潤滑剤75はスリット107を介して漏洩することが防止される。
【0056】
図5(a)に示すように、鉗子栓31は、鉗子挿入部17の鉗子口金21に取り付けられている。また、鉗子栓31の蓋部33は、栓本体32に取り付けられている。したがって、蓋部33に設けた第2チャンネル51は、栓本体32に設けた第1チャンネル35に連通した状態となっている。また、このとき、鉗子栓31の蓋部33に設けたスリット56aは閉塞している。したがって、内視鏡10の内視鏡挿入部12が患者の体腔内に挿入されると、患者の体腔内の圧力や、患者の体腔内に挿入された内視鏡10の鉗子チャンネル18内の圧力は、一定の圧力に保持される。したがって、患者の体腔内の圧力が変動して体液などが鉗子チャンネル18を逆流したとしても、鉗子口金21に取り付けられた鉗子栓31によって、鉗子口23から噴出することが防止される。
【0057】
例えば処置具200を使用するとき、ガイドアダプタ71が鉗子栓31に挿し込まれる。ガイドアダプタ71の挿し込み部82が鉗子栓31のスリット56aを押圧すると、スリット56aが開口する。その結果、図5(b)に示すように、ガイドアダプタ71の挿し込み部82がスリット56aを介して鉗子栓31に挿し込まれる。
【0058】
鉗子栓31に挿し込まれたガイドアダプタ71の挿し込み部82の先端は、円錐筒部36の端面37を押圧する。図示は省略するが、ガイドアダプタ71の挿し込み部82の先端が、円錐筒部36の端面37を押圧することで、円錐筒部36の端面37に設けられた開口部38が拡径する。その結果、図5(c)に示すように、ガイドアダプタ71の挿し込み部82は、その先端側から開口部38に圧入される。このとき、開口部38に圧入された挿し込み部82の外周面82aは、円錐筒部36の端面37のうち、開口部38の周縁部分に圧接される。すなわち、ガイドアダプタ71は、鉗子栓31の端面37及びスリット56aの各々に圧接された状態で保持される。このときも、体液などが鉗子チャンネル18を逆流したとしても、鉗子栓31及び当該鉗子栓31に挿し込まれたガイドアダプタ71の挿し込み部分から噴出することが防止される。
【0059】
ガイドアダプタ71において、内側蓋73の湾曲部105のスリット107は、外側蓋74の貫通孔113を介して露呈されている。図6(a)、図6(b)及び図6(c)に示すように、処置具200をスリット107に押し込むと、スリット107が押し開かれる。これにより、処置具200はスリット107を介して内視鏡10の鉗子チャンネル18に送り込まれる。すなわち、スリット107からガイドアダプタ71の内部に送り込まれた処置具200の外周面は、ガイドアダプタ71の潤滑剤収納部81に充填された潤滑剤75の内部を移動し、外周面に潤滑剤75が塗布された状態で、鉗子チャンネル18へと送り込まれる。
【0060】
上述したように、ガイドアダプタ71は、潤滑剤収納部81の内部空間84の内径に対して、挿し込み部82の内部空間100の内径は小さくなっている。潤滑剤75は、挿し込み部82の内部空間100まで充填されている。しかしながら、挿し込み部82の先端の表面張力によって、潤滑剤75が挿し込み部の先端から漏れ出すことが防止される。
【0061】
また、ガイドアダプタ71を介して挿し込まれる処置具200は、スリット弁105に圧接された状態となる。すなわち、処置具200がガイドアダプタ71に挿し込まれた状態では、ガイドアダプタ71内部に保持される潤滑剤75がスリット107から漏れ出すことが防止される。
【0062】
本実施形態では、内側蓋73の一方の端面73aの中央に、他方の端面73b側に向けて湾曲させた湾曲部105にスリット107を設けることで、湾曲部105をスリット弁として機能させている。しかしながら、スリット弁の形状は、これに限定されるものではない。図7(a)及び図7(b)に示すように、例えば、内側蓋130の端面130aの中央に、2つの壁部131a,131bをV字形状に組み合わせた折曲部131を設け、2つの壁部131a,131bが交差する部位132に、スリット133を形成することも可能である。
【0063】
<効果のまとめ>
一端が開口されるとともに、潤滑剤75が充填される内部空間84を有する潤滑剤収納部81と、内部空間84に連通する内部空間100を有するとともに、内視鏡10の鉗子口金21に装着された鉗子栓31に挿し込まれる挿し込み部82と、を備えるアダプタ本体72と、内部空間84に向けた処置具の挿し込みを可能とするスリット107を有するとともに、潤滑剤収納部81の一端を閉塞する内側蓋73と、内側蓋73により閉塞された潤滑剤収納部81の一端に取り付けられて、内側蓋73に設けたスリット107及び当該スリット107の近傍を露呈する外側蓋74と、を有している。
【0064】
これによれば、潤滑剤を充填する構成を設けた、新たな鉗子栓を設ける必要はない。また、鉗子栓31にガイドアダプタ71を装着することで、処置具200を鉗子チャンネル18に挿入するだけで、当該処置具200に潤滑剤75が塗布される。したがって、処置具200を迅速に鉗子チャンネル18に挿入させることができる。また、内視鏡10による体腔内の対象位置の観察や各種処置の際に、処置具に潤滑剤75を予め塗布しておく必要がなくなる。したがって、内視鏡による体腔内の対象位置の観察や各種処置を行う際の準備が簡素化される。
【0065】
また、外側蓋74は、潤滑剤収納部81の一端に取り付けたときに、内側蓋73を潤滑剤収納部81に向けて押圧する突出部111を有していることが好ましい。
【0066】
これによれば、内側蓋73と潤滑剤収納部81とを液密に保持することができる。
【0067】
また、潤滑剤収納部81は、当該潤滑剤収納部81の一端を閉塞した内側蓋73に食い込む少なくとも1条以上の環状凸部86,87を有していることが好ましい。
【0068】
これによれば、内側蓋73と潤滑剤収納部81とを液密に保持することができる。
【0069】
また、内側蓋73は、潤滑剤収納部81の一端を閉塞したときに、内部空間84側に湾曲する湾曲部105を有しており、スリット107は、湾曲部105に設けられていることが好ましい。
【0070】
これによれば、処置具200がスリット107への挿し込みを容易に行うことができるとともに、スリット107の近傍の部位が処置具200の外周面に密着しやすくなる。
【0071】
また、内側蓋73は、潤滑剤収納部81の一端を閉塞したときに、内部空間84側に傾斜する2つの壁部131a,131bを組み合わせた折曲部131を有しており、スリット133は、折曲部131において、2つの壁部131a,131bが交差する部位132に設けられていることが好ましい。
【0072】
これによれば、処置具200がスリット133への挿し込みを容易に行うことができるとともに、スリット133の近傍の部位が処置具200の外周面に密着しやすくなる。
【符号の説明】
【0073】
10 内視鏡
21 鉗子口金(口金)
31 鉗子栓(栓)
71 処置具挿入用ガイドアダプタ(ガイドアダプタ)
72 アダプタ本体
73 内側蓋(第1の蓋部材)
74 外側蓋(第2の蓋部材)
75 潤滑剤
81 潤滑剤収納部(収納部)
84 内部空間(第1空間)
86,87 環状凸部
100 内部空間(第2空間)
105 湾曲部
107 スリット(切れ込み)
111 突出部(押圧部)
131 折曲部
131a,131b 壁部
132 2つの壁部131a,131bが交差する部位
133 スリット(切れ込み)
200 処置具
【要約】
【課題】内視鏡の鉗子口金に取り付けた鉗子栓を介して、処置具を鉗子チャンネルに挿入させやすくする。
【解決手段】本発明の処置具挿入用ガイドアダプタ71は、一端が開口されるとともに、潤滑剤75が充填される内部空間84を有する潤滑剤収納部81と、内部空間84に連通する内部空間100を有するとともに、内視鏡10の鉗子口金21に装着された鉗子栓31に挿し込まれる挿し込み部82と、を備えるアダプタ本体72と、内部空間84に向けた処置具の挿し込みを可能とするスリット107を有するとともに、潤滑剤収納部81の一端を閉塞する内側蓋73と、内側蓋73により閉塞された潤滑剤収納部81の一端に取り付けられて、内側蓋73に設けたスリット107及び当該スリット107の近傍を露呈する外側蓋74と、を有している。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7