(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】分子カーゴを送達するためのエキソソーム容器
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20241001BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20241001BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20241001BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20241001BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K47/42
A61K9/10
C12N5/07
A61K39/395 A
A61K39/00 A
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2021526215
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2019060349
(87)【国際公開番号】W WO2020141369
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ドグラ、ナブニート
(72)【発明者】
【氏名】ストロビツキ、グスタボ、アレハンドロ
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/176894(WO,A1)
【文献】Biomaterials,2018年,Vol. 150, pp. 137-149
【文献】Sci. Transl. Med.,2018年,Vol. 10, No. 444, eaat0195
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキソソームと、
前記エキソソームの
第1の表面生体分子に
共有結合された
核酸であって、前記第1の表面生体分子に共有結合するための第1の反応性官能基を有する前記核酸と、
前記エキソソームの第2の表面生体分子に共有結合された抗体または抗原であって、前記第2の表面生体分子に共有結合するための第2の反応性官能基を有する前記抗体または抗原と
を含み、
前記表面生体分子が前記エキソソームの二分子膜上で前記エキソソームの細胞質とは反対側に位置し、
前記抗体または抗原は、細胞膜の標的抗原または標的抗体に対して化学的親和性を有する
ことを特徴とする、
エキソソーム容器。
【請求項2】
前記
第1および第2の表面生体分子が、
それぞれ独立に、タンパク質、抗体、抗原、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、および非局在化された前記二分子膜の骨格分子からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の
エキソソーム容器。
【請求項3】
前記第1の
反応性官能基が、アミン反応性
官能基、リン酸反応性
官能基、カルボジイミド
官能基、ヒドロキシル反応性
官能基、およびカルボキシル反応性
官能基からな
る群から選択される、請求項
1または2に記載の
エキソソーム容器。
【請求項4】
前記
第1の表面生体分子は、一級アミン、リン酸基、およびヒドロキシル基からな
る群から選択される
官能基を有する、請求項
3に記載の
エキソソーム容器。
【請求項5】
エキソソームの二分子膜上で前記エキソソームの細胞質とは反対側に位置する
第1の表面生体分子に、
核酸を共有結合することにより、前記エキソソームを官能化すること
であって、前記核酸は、前記表面生体分子に共有結合するための第1の反応性官能基を有する、前記官能化することと、
前記エキソソームの第2の表面生体分子に、抗体または抗原を共有結合することにより、前記エキソソームをさらに官能化することであって、前記抗体または抗原は、前記第2の表面生体分子に共有結合するための第2の反応性官能基を有し、前記抗体または抗原は、細胞膜の標的抗原または標的抗体に対して化学的親和性を有する、前記さらに官能化することと
を含む、方法。
【請求項6】
前記
第1の表面生体分子が、別のタンパク質、抗体、抗原、リン脂質、糖脂質、別の核酸、多糖体、糖、および非局在化された前記二分子膜の骨格分子からなる群から選択される第1の化合物であり、前記第2の表面生体分子が、前記群から選択される第2の化合物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記官能化することにおける前記共有結合が、前記
核酸に含まれる
第1の反応性官能基と、前記表面生体分子内に含まれる標的官能基との間のバイオコンジュゲーション反応によって確立され、前記第1の反応性官能基が、アミン反応性
官能基、リン酸反応性
官能基、カルボジイミド
官能基、ヒドロキシル反応性
官能基、およびカルボキシル反応性
官能基からな
る群から選択さ
れ、前記標的官能基が、一級アミン基、リン酸基、およびヒドロキシル基からな
る群から選択され
る、請求項
5または6に記載の方法。
【請求項8】
分子プローブにより、
前記エキソソーム
の前記表面生体分子の組成に基づいて、複数のエキソソーム
混合物から
前記エキソソームを単離することを
さらに含む、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記単離することは、前記分子プローブを化学的相互作用によって前記
第1の表面生体分子に結合すること
を含み、前記分子プローブが更に基材に結合されているものである、請求項
8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、分子カーゴの送達を促進することが可能な1つ以上のエキソソームに関し、より詳細には、所望の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に1つ以上の分子カーゴを輸送するために官能化された表面を有する1つ以上のエキソソームに関する。
【0002】
特定の細胞または組織に分子カーゴを送達するためのナノテクノロジーに影響を及ぼす3つの制約として、生体適合性、分子カーゴのローディング効率、および/または目的の細胞もしくは組織に対する送達システムの特異性が挙げられる。例えば、生体適合性の送達システムとするためには、受容体である生体に対して非毒性でなければならず、および/または生理学的条件で一体性を維持しなければならない(例えば、pH7における安定性もしくは免疫検出の回避またはその両方)。加えて、分子カーゴ送達システムは、多種多様な目的の分子(例えば、遺伝子操作のためのDNA、遺伝子サイレンシングのためのRNA、治療剤もしくは分子阻害剤またはそのいずれかの組み合わせ)を送達することが可能でなければならない。
【0003】
従来の分子カーゴ送達システムは、基剤となる送達容器と、分子カーゴを容器にローディングするためのプロトコルとで構成されている。更に、従来の分子カーゴ送達技術は、次に、2つの分類、すなわちナノ粒子技術と脂肪小胞技術とに分けることができる。しかしながら、ナノ粒子およびリポソーム小胞技術の両方共に、上記に記載される制約もしくは考慮事項またはその両方に関して複数の欠点を経験する可能性がある。
【0004】
従来の分子カーゴ送達システムで利用することができる例示的なナノ粒子としては、金、銀、もしくはチタンまたはそのいずれかの組み合わせが挙げられる。実際に、様々な官能基を共有結合させ、結果的に様々な生物活性分子をナノ粒子金属に共有結合させるための確立されたプロトコルが存在する。しかしながら、多くのナノ粒子は生体適合性であるものの、それらは経時的に身体に蓄積する傾向があり、毒性が生じる恐れがある。
【0005】
リポソームは、合成の脂質小胞であり、様々なサイズで調製することができる(例えば、直径数十ナノメートル(nm)から約10~20ミクロン(μm)の範囲)。更に、脂質の化学的/物理的構造および組成を変化させることによって、リポソームの形状、サイズ、形態および機能を改変させることができる。リポソームは、化合物の送達および他の治療目的のために使用されてきた。しかしながら、リポソームは、細胞(例えば、脂質およびタンパク質を含む)特性を正確に模倣するものではないため、生体適合性については不安が残る。このように、金から作製されたものなどのナノ粒子の広範な有用性には、それらの特有の非生分解性のために疑問の余地があり、リポソームをベースとした技術では、標的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜との相互作用に必要な特定の脂質もしくはタンパク質またはその両方が欠如している。
【0006】
更なる従来の分子カーゴ送達技術としては、送達容器としてエキソソームを使用することが含まれる。しかしながら、現在のエキソソームをローディングするためのプロトコルは非効率的で時間依存的であるか、もしくはエキソソームに損傷を与えるものであるか、またはその両方であるため、従来のエキソソームをベースとした分子カーゴ送達技術の機能が実質的に阻害されてしまう。例えば、エレクトロポレーションによるエキソソームへの核酸配列の封入は非効率的である(例えば、ごくわずかな対象のエキソソームだけが適切に分子カーゴにローディングされるか、もしくはこのプロセスによりエキソソームが損傷を受ける可能性があるか、またはその両方となる)。別の実施例では、分子カーゴを外部から結合させることができるように、クリック・ケミストリーを使用して、エキソソームの表面を官能化する。このプロセスは、エレクトロポレーションの非効率性に関する問題がない一方で、エキソソームの形態もしくは生化学またはその両方に悪影響を与える可能性のある厳しい条件で、24時間絶え間なく撹拌することが必要となる。このように、従来の技術は、効率的にエキソソームを使用してカーゴを輸送するのに十分なものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つ以上の本発明の実施形態の基本的な理解をもたらすために、以下に概要を提示する。この概要は、主要もしくは重要な要素を特定すること、または任意の範囲の特定の実施形態もしくは任意の範囲の請求項を示すことを意図するものではない。その唯一の目的は、後に提示されるより詳細な説明に対する前置きとして、簡略化された形式で概念を提示することである。本明細書に記載される1つ以上の実施形態では、分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、分子もしくは方法またはその両方が記載される。
【0008】
一実施形態によれば、分子が提供される。分子は、エキソソームの表面生体分子に結合された、化学修飾された分子カーゴを含み得る。表面生体分子は、エキソソームの二分子膜上でエキソソームの細胞質とは反対側に位置し得る。そのような分子の利点としては、1つ以上の治療化合物を送達するために、1つ以上のエキソソームを使用することができることである。
【0009】
いくつかの実施例では、表面生体分子とは、タンパク質、抗体、抗原、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、および非局在化された二分子膜の骨格分子からなる群から選択される化合物であってよい。そのような分子の利点としては、天然に生じるエキソソームの表面構造を利用して、分子カーゴとの1つ以上のバイオコンジュゲーションを促進することを可能にすることであり得る。
【0010】
一実施形態によれば、方法が提供される。方法は、化学修飾された分子カーゴを、エキソソームの二分子膜上でエキソソームの細胞質とは反対側に位置する表面生体分子に結合することにより、エキソソームを官能化することを含み得る。そのような方法の利点としては、1つ以上のエキソソーム容器を形成して、1つ以上の分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を促進することができるということである。更に、疎水基または炭素鎖を含有する表面生体分子を、二分子膜の足場内に介在させることもできる。
【0011】
いくつかの実施例では、方法はまた、第2の化学修飾された分子カーゴを、二分子膜上で細胞質とは反対側に位置する第2の表面生体分子に結合することにより、エキソソームを官能化することを含み得る。そのような方法の利点としては、1つ以上の合成されたエキソソーム容器に様々な種類の分子カーゴが同時にローディングされることによって、1つ以上の輸送もしくは送達またはその両方の機能を向上させることができるということである。
【0012】
一実施形態によれば、方法が提供される。方法は、分子プローブにより、エキソソームの二分子膜上でエキソソームの細胞質とは反対側に位置する表面生体分子の組成に基づいて、複数のエキソソームからエキソソームを単離することを含み得る。そのような方法の利点としては、特定の種類のエキソソームを利用して、分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を行うための1つ以上のエキソソーム容器を生成することができるということである。
【0013】
いくつかの実施例では、方法はまた、エキソソームによって分子カーゴを生物学的細胞に送達することを含み得る。エキソソームは、生物学的細胞に対して化学的親和性を有し得る。そのような方法の利点としては、エキソソームによって、目的の生物学的細胞に対して分子カーゴの標的特異的な輸送もしくは送達またはその両方を行うことができることである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴによって官能化された表面を有し得る、例示的で非限定的なエキソソーム容器の図を示す。
【
図2】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴを輸送もしくは送達またはその両方を行うことが可能なエキソソーム容器の形成を促進することができる、例示的で非限定的な官能化プロセスの図を示す。
【
図3】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴをエキソソームの表面に結合させることを促進することができる、例示的で非限定的なリガンドの改変の図を示す。
【
図4】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴを輸送もしくは送達またはその両方を行うことが可能なエキソソーム容器の形成を促進することができる、例示的で非限定的な官能化プロセスの図を示す。
【
図5】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴを輸送もしくは送達またはその両方を行うことが可能なエキソソーム容器の形成を促進することができる、例示的で非限定的な官能化プロセスの図を示す。
【
図6】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴを標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜に輸送する1つ以上のエキソソーム容器を含み得る、例示的で非限定的な送達プロセスの図を示す。
【
図7】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、目的の1つ以上のエキソソームを単離することを促進することができる、例示的で非限定的なオンチップ・プローブの図を示す。
【
図8】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴの特異的な送達機能のために、目的の1つ以上のエキソソームを捕捉することができる、例示的で非限定的な単離プロセスの図を示す。
【
図9】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソームの官能化を促進し、1つ以上の分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法のフローチャートを示す。
【
図10】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソームの官能化を促進し、1つ以上の分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法のフローチャートを示す。
【
図11】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴの特異的な送達機能を促進するために、目的の1つ以上のエキソソームを単離することを含み得る、例示的で非限定的な方法のフローチャートを示す。
【
図12】本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴの特異的な送達機能を促進するために、目的の1つ以上のエキソソームを単離することを含み得る、例示的で非限定的な方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、単に例示的なものに過ぎず、実施形態もしくは用途またはその両方、または実施形態の使用を限定することを意図するものではない。更に、前述の「背景技術」もしくは「発明の概要」の項、または「発明を実施するための形態」の項において提示される、任意の明示的または暗示的な情報に束縛されることを意図しない。
【0016】
次に、図面を参照して1つ以上の実施形態を説明するが、言及される同一の数字は、全体を通して同一の要素を指すものとして使用される。以下の明細書において、説明のため、1つ以上の実施形態の更なる完全な理解をもたらすために、多くの具体的な詳細が記載される。しかしながら、様々な場合では、これらの具体的な詳細がなくても1つ以上の実施形態を実行することができることは明らかである。
【0017】
従来の分子カーゴ送達システムに伴う上記の問題を考慮し、分子カーゴを輸送もしくは送達またはその両方を行うための容器としてエキソソームを利用することが可能な、1つ以上の分子もしくは方法またはその両方の形態で本開示を実行して、これらの問題の1つ以上に対する解決策を生み出すことができる。例えば、本明細書に記載されるエキソソーム容器は、上記に記載される有効な生体分子送達システムに関する3つの制約を満たすことができる。生体適合性の制約は、体液中もしくは細胞培養培地中またはその両方において自然に分泌されたエキソソームを細胞から単離することによって満たすことができ、これにより、生理学的条件下でエキソソームの基本的な安定性を維持することもできる。ローディング効率の制約は、エキソソーム表面で容易に見られる表面生体分子(例えば、リン脂質、タンパク質もしくは炭水化物またはそのいずれかの組み合わせ)と、化学修飾された分子カーゴとの間で共有結合を形成することによって満たすことができる(例えば、エキソソームでの厳しい反応条件を避けるために、大部分の反応段階をエキソソーム表面に結合する生体分子上で実行することができる)。更に、1つ以上のエキソソーム容器は、特異抗体をエキソソーム表面に共有結合させることによって、標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に対する特異性を獲得することができる。それら自体がタンパク質であるため、抗体をタンパク質以外の生体分子と反応するように官能化することができる。
【0018】
本明細書に記載される様々な実施形態は、官能化されたエキソソーム容器もしくは方法またはその両方に関するものであり、分子カーゴの輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる。例えば、本明細書に記載される1つ以上の実施形態は、1つ以上の分子カーゴ(例えば、核酸もしくはタンパク質またはその両方)を、1つ以上のエキソソームの表面に位置する1つ以上の生体分子にコンジュゲートすることを含み、それにより、1つ以上の所望の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に輸送もしくは送達またはその両方を行うために、1つ以上の分子カーゴをエキソソーム容器にローディングすることができる。1つ以上の実施形態では、このコンジュゲートは、1つ以上の分子カーゴと1つ以上の表面生体分子との間の、1つ以上の共有結合によって確立され得る。更に、1つ以上の抗体もしくは抗原またはその両方を、エキソソームの1つ以上の表面生体分子にコンジュゲートすることによって、対象のエキソソームを、特定の標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に対して化学的親和性のある容器とすることができる。
【0019】
図1は、1つ以上の分子カーゴ102によって官能化された、例示的で非限定的なエキソソーム容器100の図を示している。例えば、
図1は、エキソソーム容器100の1つ以上の表面生体分子104にコンジュゲートされた1つ以上の核酸の分子カーゴ102を含む、代表的なエキソソーム容器100を表している(例えば、
図1に示される波線は、1つ以上の核酸を示し得る)。
【0020】
本明細書で使用する場合、「エキソソーム」という用語は、多小胞体もしくは細胞膜またはその両方が融合することによって、細胞外の環境に分泌され得るエンドサイトーシスを発端とした、小さな(例えば、30~200nmの直径を有する)小胞を意味し得る。エキソソームには、膜貫通タンパク質、サイトゾルタンパク質、酵素、表面タンパク質、核酸、脂質、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない多様な生体分子を含み得る。
図1に示すように、エキソソームは、エキソソームの細胞質108の内部を画定する二分子膜106を含み得る。二分子膜106は、対象のエキソソームの様々な機構(例えば、酵素、タンパク質、核酸、それらの組み合わせ等)を収容することが可能なリン脂質二重層もしくは細胞質108またはその両方を含み得ることが、当業者であれば容易に認識されよう。エキソソームは、唾液、尿、血液、血清、血漿、汗、涙、それらの組み合わせ等などの、1つ以上の様々な体液によって、生体のすみずみに輸送することができる。様々な実施形態では、本明細書に記載される1つ以上のエキソソーム容器100は、1つ以上の分子カーゴ102が(例えば1つ以上の天然に存在する表面構造体によって)二分子膜106の表面にコンジュゲートされたエキソソームであってよい。
【0021】
1つ以上のエキソソーム容器100は、1つ以上の表面生体分子104を含み得る。1つ以上の表面生体分子104は、二分子膜106の表面に、もしくは少なくとも部分的に二分子膜106の内部に、またはその両方に位置し得る。例えば、1つ以上の表面生体分子104は、細胞質108とは反対側の二分子膜106上に位置し得る(例えば、1つ以上のエキソソーム容器100の内部の外側に位置する)。例示的な表面生体分子104としては、タンパク質、抗体、抗原、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、炭水化物、酵素、エキソソームの二分子膜106の足場、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
更に、1つ以上の表面生体分子104は、1つ以上の分子カーゴ102とのコンジュゲートを促進することが可能な、1つ以上の標的官能基を含み得る。1つ以上の表面生体分子104内に含むことが可能な例示的な標的官能基としては、一級アミン(例えば、リジン基、アルギニン基、それらの組み合わせ等)、システイン基、リン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシ基、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、1つ以上の標的官能基は、1つ以上の分子カーゴ102との共有結合を確立して、1つ以上の分子カーゴ102をエキソソーム容器100の表面にコンジュゲートすることを促進することができる。エキソソーム容器100は、二分子膜106上に、もしくは二分子膜106内に、またはその両方において様々な異なる種類の表面生体分子104を含み得る。更に、
図1に表される表面生体分子104の数は代表的なものであり、1つ以上のエキソソーム容器100が、
図1に示される17個よりも少ない、またはそれに加えた表面生体分子104を含むことができるということは、当業者であれば理解されよう。
【0023】
1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の表面生体分子104との化学的相互作用によって、エキソソーム容器100の表面に放射状に配置することができる、および/または(例えば、
図1に示すように)1つ以上の核酸もしくは1つ以上のタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含むことができる。例えば、分子カーゴ102の1つ以上は、1つ以上の核酸によって規定される、1つ以上の治療用化合物であってよい。1つ以上のエキソソーム容器100は、1つ以上の標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に、1つ以上の治療用化合物の輸送もしくは送達またはその両方を行うことができる。加えて、分子カーゴ102の1つ以上は、特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に対する化学的親和性によって、1つ以上のエキソソーム容器100を官能化することができる抗体もしくは抗原またはその両方であってもよい。1つ以上の実施形態では、1つ以上のエキソソーム容器100は、様々な種類の分子カーゴ102の混合物を含み得る。
【0024】
図2は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴ102を1つ以上の表面生体分子にコンジュゲートすることを促進することができる、例示的で非限定的な第1のコンジュゲーション・スキーム200の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図2に示されるように、代表的な第1のコンジュゲーション・スキーム200は、初期エキソソーム202を1つ以上の分子カーゴ102にコンジュゲートして、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することを含み得る。1つ以上の実施形態では、第1のコンジュゲーション・スキーム200を促進するために、(例えば、7以上10以下のpHを有する)塩基性溶液中で、1つ以上の分子カーゴ102もしくは1つ以上の初期エキソソーム202またはその両方を共に混合してもよい。
【0025】
1つ以上の初期エキソソーム202は、1つ以上の分子カーゴ102によるコンジュゲートの標的となり得る、1つ以上の表面生体分子104を含み得る。更に、1つ以上の分子カーゴ102(例えば、
図2に示されるような核酸、および/または抗体もしくは抗原またはその両方などの1つ以上のタンパク質を含む)は、1つ以上の反応性官能基204を含み得る。1つ以上の反応性官能基204は、1つ以上の表面生体分子104の1つ以上の官能基と化学的に相互作用し、1つ以上の分子カーゴ102と1つ以上の表面生体分子104との間の共有結合を確立することができる。
【0026】
1つ以上の反応性官能基204を含み得る例示的な化合物としては、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、カルボキシル反応性化合物、抗体、抗原、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。アミン反応性化合物は、アミンと反応して共有結合を形成することが可能な任意の反応基を含み得る。例示的なアミン反応性化合物としては、Nヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)エステル、スルホ-Nヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、フルオロフェニルエステル、エポキシド、イソチオシアネート、イソシアネート、スルホニルクロリド、アルデヒド、カルボジイミド、アシルアジド、無水物、フルオロベンゼン、カーボネート、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上の官能基は、アルギニンもしくはリジンまたはその両方の一級アミンなどの、アミノ酸の1つ以上の側鎖に結合することができる。リン酸反応性化合物は、リン酸基と反応して共有結合を形成することが可能な任意の反応基を含み得る。例示的なリン酸反応性化合物としては、カルボジイミド、アルキル基、アリール基、アシル基、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。ヒドロキシル反応性化合物は、ヒドロキシル基と反応して共有結合を形成することが可能な任意の反応基を含み得る。例示的なヒドロキシル反応性化合物としては、アルキル基、アリール基、アシル基、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。カルボキシル反応性化合物は、カルボキシルと反応して共有結合を形成することが可能な任意の反応基を含み得る。
【0027】
様々な実施形態では、1つ以上のエキソソーム容器100は、様々な治療的機能を可能にするための核酸(例えば、合成核酸)を輸送することができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102内に含まれる1つ以上の核酸は、1つ以上のエキソソーム容器100と相互作用する生物学的細胞もしくは組織またはその両方に先天性の1つ以上の免疫シグナリング・ネットワークを活性化することができる、免疫刺激性オリゴヌクレオチドであってよい。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、抗原提示もしくは共刺激またはその両方を開始すること、自然免疫細胞(例えばマクロファージもしくは樹状細胞またはその両方)を活性化すること、炎症性サイトカインの産生を誘導すること、それらの組み合わせ等が可能な合成核酸を含んでもよい。別の実施例では、1つ以上のエキソソーム容器100によって輸送もしくは送達またはその両方が行われる1つ以上の分子カーゴ102は、対象の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の内部において、アンチセンス技術、リボ核酸(「RNA」)干渉技術、スプライススイッチング技術、メッセンジャーRNAベースの治療法、それらの組み合わせ等が挙げられるが、これらに限定されない1つ以上の治療技術を実行することができる合成核酸を含んでもよい。
【0028】
1つ以上の実施形態では、1つ以上の抗体もしくは抗原またはその両方を、1つ以上の反応性官能基204として使用することができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の抗体に結合された1つ以上の核酸を含んでもよく、1つ以上の抗体は、初期エキソソーム202上に位置する1つ以上の表面抗原と1つ以上の抗体-抗原相互作用を確立し(例えば、本明細書に記載されるような1つ以上の表面生体分子104としての役割を果たし)、1つ以上の分子カーゴ102のコンジュゲートを促進することができる。別の実施例では、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の抗原に結合された1つ以上の核酸を含んでもよく、1つ以上の抗原は、初期エキソソーム202上に位置する1つ以上の表面抗体と1つ以上の抗原-抗体相互作用を確立し(例えば、本明細書に記載されるような1つ以上の表面生体分子104としての役割を果たし)、1つ以上の分子カーゴ102のコンジュゲートを促進することができる。
【0029】
図3は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、(例えば、第1のコンジュゲーション・スキーム200に関して記載されているように)1つ以上の分子カーゴ102を1つ以上の表面生体分子104にコンジュゲートすることができる、例示的で非限定的なバイオコンジュゲーション・スキーム300の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
【0030】
多種多様なバイオコンジュゲーション反応を利用して、例えば、アルキル化、アシル化、ジスルフィド結合、抗体-抗原相互作用、アミン結合、リン酸結合、核酸のアニーリング、それらの組み合わせ等などの、1つ以上の分子カーゴ102と1つ以上の表面生体分子104とのコンジュゲートを促進することができる。様々な実施形態では、1つ以上の分子カーゴ102の1つ以上の反応性官能基204は、1つ以上の表面生体分子104の1つ以上の標的官能基と反応して、バイオコンジュゲーション反応を確立することができる。
【0031】
例えば、バイオコンジュゲーション・スキーム300は、代表的なバイオコンジュゲーション反応を表しており、反応性官能基204はアミン反応性化合物であってもよく、1つ以上の表面生体分子104の標的官能基は一級アミノ基であってもよい。
図3は、本明細書に記載される様々な実施形態による、代表的な分子カーゴ102の構造を表している。例えば、
図3に示される代表的な分子カーゴ102は、NHS反応性官能基204に結合された1つ以上の核酸(例えば、1つ以上の波線によって示される)を含み得る。
図3に示されるように、反応性官能基204(例えば、NHSエステル)は、1つ以上の核酸の5プライム(「5´」)末端に結合することができる。加えて、
図3は、本明細書に記載される様々な実施形態による、代表的な表面生体分子104の構造を表している。
図3に示される代表的な表面生体分子104は、アミン(例えば、
図3で表されるようなリジン)に結合されたポリペプチド鎖302からなるタンパク質であってよい。
図3に示されるように、1つ以上の標的官能基は、1つ以上の表面生体分子104の先端に位置していてもよい。
【0032】
代表的なバイオコンジュゲーション・スキーム300では、1つ以上の核酸含有分子カーゴ102を、7以上9以下のpHを有する環境で、初期エキソソーム202の1つ以上の表面生体分子104に導入することができる。1つ以上の反応性官能基204の化学的親和性により、1つ以上の反応性官能基204と1つ以上の標的官能基との間の共有結合の形成を促進することができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上のタンパク質表面生体分子104のリジン構造内に含まれる一級アミノ基と共有結合することができる。
図3に示されるように、結果として生じたバイオコンジュゲーションにより、分子カーゴ102の1つ以上の核酸を、1つ以上の表面生体分子104(例えば、初期エキソソーム202の表面上の1つ以上のタンパク質)に結合させることができ、それにより、1つ以上の結合された核酸を輸送もしくは送達またはその両方を行うことが可能なエキソソーム容器100を形成することができる。
【0033】
図3は、1つ以上の分子カーゴ102もしくは1つ以上の表面生体分子104またはその両方に関する代表的な構造を表すものであるが、本明細書に記載されるバイオコンジュゲーションの構成は、そのように制限されるものではない。例えば、1つ以上の反応性官能基204もしくは1つ以上の標的官能基またはその両方は、本明細書に記載される様々な化学的カテゴリーもしくは実施例またはその両方によって裏付けられる、任意の化学構造を含み得る。加えて、
図3は1つ以上のタンパク質を有する1つ以上の核酸のバイオコンジュゲーションを表すものであるが、本明細書に記載されるバイオコンジュゲーションの構成は、そのように制限されるものではない。例えば、本明細書に記載されるように、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上のタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)もしくは、抗体、抗原、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、炭水化物、エキソソームの二分子膜106の足場、それらの組み合わせ等であってよい、1つ以上の表面生体分子またはその両方を含み得る。
【0034】
図4は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴ102を1つ以上の表面生体分子104にコンジュゲートすることを促進することができる、例示的で非限定的な第2のコンジュゲーション・スキーム400の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図4に示されるように、代表的な第2のコンジュゲーション・スキーム400は、初期エキソソーム202を1つ以上の分子カーゴ102とコンジュゲートして、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することを含み得る。1つ以上の実施形態では、第2のコンジュゲーション・スキーム400を促進するために、(例えば、7以上9以下のpHを有する)塩基性溶液中で、1つ以上の分子カーゴ102もしくは1つ以上の初期エキソソーム202またはその両方を共に混合してもよい。
【0035】
第2のコンジュゲーション・スキーム400は、1つ以上の分子カーゴ102が、1つ以上の反応性官能基204に結合された1つ以上の抗体(例えば、
図4で「Y」形状の構造体として表されている)を含み得るということを例証することができる。
図2もしくは3またはその両方に関して本明細書に記載されているように、1つ以上の反応性官能基204は、1つ以上の分子カーゴ102の1つ以上の抗体を、初期エキソソーム202の1つ以上の表面生体分子104に結合することを促進することができる。エキソソーム容器100の表面に1つ以上の抗体を結合することによって、エキソソーム容器100を、特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化するように官能化することができる。例えば、抗体を含有する分子カーゴ102(例えば、
図4に示されるような)を搬送する、1つ以上のエキソソーム容器100は、抗体に結合することができる抗原の種類を含む1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に化学的に引きつけられ得る。換言すれば、抗体の分子カーゴ102(例えば、
図4に示されるような)は、1つ以上のエキソソーム容器100と、1つ以上の標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方との間の抗体-抗原相互作用を可能にし、それにより、1つ以上のエキソソーム容器100の輸送もしくは送達またはその両方の機能に特異性を付与することができる。加えて、1つ以上の実施形態では、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の抗原(図示せず)を含み、1つ以上のエキソソーム容器100と、特異抗体を含む1つ以上の標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方との間の抗体-抗原相互作用を可能にし得る。
【0036】
図5は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上の分子カーゴ102を1つ以上の表面生体分子104にコンジュゲートすることを促進することができる、例示的で非限定的な第3のコンジュゲーション・スキーム500の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図5に示されるように、代表的な第3のコンジュゲーション・スキーム500は、初期エキソソーム202を複数の分子カーゴ102とコンジュゲートして、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することを含み得る。1つ以上の実施形態では、第3のコンジュゲーション・スキーム500を促進するために、(例えば、7以上9以下のpHを有する)塩基性溶液中で、1つ以上の分子カーゴ102もしくは1つ以上の初期エキソソーム202またはその両方を共に混合してもよい。
【0037】
第3のコンジュゲーション・スキーム500は、1つ以上のエキソソーム容器100が、複数の異なる種類の分子カーゴ102を含むことができるということを例証するものである。例えば、
図5は、第1の種類の1つ以上の核酸を含んだ分子カーゴ102と、第2の種類の1つ以上の抗体を含んだ分子カーゴ102とを含む例示的なエキソソーム容器100を表す(例えば、核酸を表し得る1つ以上の波線、もしくは抗体を表し得る1つ以上の「Y」形状の構造体、またはその両方)。第3のコンジュゲーション・スキーム500に示されるように、1つ以上の初期エキソソーム202に、様々な種類の分子カーゴ102を同時にコンジュゲートすることができる。例えば、1つ以上の初期エキソソーム202に、核酸を含んだ分子カーゴ102と抗体を含んだ分子カーゴ102とを同時にコンジュゲートすることができる。あるいは、1つ以上の初期エキソソーム202に、1つ以上の第1の種類の分子カーゴ102(例えば、1つ以上の核酸を含む)をコンジュゲートすることができ、その後、1つ以上の第2の種類の分子カーゴ102(例えば、1つ以上の抗体を含む)に、得られたエキソソーム容器100を更にコンジュゲートすることができる。
【0038】
様々な異なる種類の分子カーゴ102のコンジュゲーションによって、1つ以上のエキソソーム容器100の機能を向上させることができる。例えば、本明細書に記載されるように、1つ以上の核酸の分子カーゴ102をコンジュゲートすることにより、1つ以上のエキソソーム容器100が治療用化合物を輸送もしくは送達またはその両方を行うことを可能にし得る。更に、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)の分子カーゴ102を対象のエキソソーム容器100にコンジュゲートすることによって、治療用化合物の輸送もしくは送達またはその両方に対する特異性を取り入れることができる。このように、核酸の分子カーゴ102と、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)の分子カーゴ102との両方とにコンジュゲートされた1つ以上のエキソソーム容器100は、治療用化合物の輸送もしくは送達またはその両方を有利に行い、生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化することができる。
【0039】
図6は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソーム容器100によって促進することができる、例示的で非限定的な送達プロセス600の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図6に示されるように、1つ以上のエキソソーム容器100は、1つ以上の分子カーゴ102を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜602に輸送することができる。
【0040】
例えば、1つ以上のエキソソーム容器100は、細胞膜602を横断して1つ以上の分子カーゴ102を輸送することができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のエキソソーム容器100は、1つ以上の表面生体分子104と、および/または細胞膜602上に、もしくはその内部に、またはその両方において配置される、1つ以上の細胞受容体との間の1つ以上の相互作用によって、細胞膜602に付着することができる。加えて、様々な実施形態では、1つ以上の表面生体分子104と、細胞膜602に位置する1つ以上の標的抗原604との間の抗体-抗原相互作用により、1つ以上のエキソソーム容器100が細胞膜602に引きつけられるか、もしくはそうでなければ細胞膜602に付着するか、またはその両方となり得る。例えば、1つ以上のエキソソーム容器100は、細胞膜602に対して(例えば、細胞膜602の表面に位置する標的抗原604もしくは標的抗体またはその両方に対して)化学的親和性を有するタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)を含む、1つ以上の分子カーゴ102を含んでもよい。1つ以上のエキソソーム容器100は、一度細胞膜602に付着すると、以下のことを可能にする:細胞内シグナル伝達経路によって可溶性シグナリング伝達を誘導すること、細胞膜602と融合し、それにより細胞膜602を横断して1つ以上の分子カーゴ102を移送すること、および/またはファゴサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、受容体依存性エンドサイトーシスもしくはラフト介在性エンドサイトーシスまたはそのいずれかの組み合わせによってエンドサイトーシスされること。例えば、1つ以上の実施形態では、受容体依存性エンドサイトーシスによって、1つ以上のエキソソーム容器100を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方へと内部移行させることができるが、その際には、エキソソーム容器100の表面に位置する(例えば、二分子膜106上に位置する)1つ以上のリガンド(例えば、表面生体分子104もしくは分子カーゴ102またはその両方)が、細胞膜602に位置する1つ以上の細胞受容体(例えば、スカベンジャー受容体)と係合する。更に、1つ以上のエンドサイトーシス機構によって、1つ以上のエキソソーム容器100を内部移行させることができる。
【0041】
図7は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、複数のエキソソーム試料から1つ以上の初期エキソソーム202を単離するために利用することができる、例示的で非限定的なオンチップ・プローブ700の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図7に示されるように、1つ以上のオンチップ・プローブ700は、基材704に取り付けられた、1つ以上の分子プローブ702(例えば、
図7の破線によって描写される)を含み得る。1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上の初期エキソソーム202の二分子膜106の表面に結合された1つ以上の一本鎖核酸に相補的となり得る一本鎖核酸複合体(例えば、
図7において波線として示されている)であってもよい。
【0042】
図7に示されるように、1つ以上の分子プローブ702を1つ以上の基材704に固定することができる。1つ以上の基材704を構成することができる例示的な材料は、シリコン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、ポリ(メタクリル酸メチル)(「PMMA」)、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態では、物理的吸着、チオール、アミン、核酸-ビオチン、それらの組み合わせ等によって、1つ以上の分子プローブ702を1つ以上の基材704に固定することができる。
【0043】
図8は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、複数のエキソソーム試料から1つ以上の初期エキソソーム202を単離するために実行することができる、例示的で非限定的なエキソソーム単離プロセス800の図を示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
図8に示されるように、エキソソーム単離プロセス800により、1つ以上のオンチップ・プローブ700を利用して、目的の1つ以上の初期エキソソーム202を収集することができる。
【0044】
複数のエキソソームを含む試料を、1つ以上のオンチップ・プローブ700に(例えば、リソグラフィ技術、所望の溶液中での浸漬、またはマイクロ流体システムによって)導入することができる。1つ以上の複数のエキソソームが1つ以上のオンチップ・プローブ700を通過すると、エキソソームの表面上の1つ以上の化合物が、1つ以上の基材704に固定された1つ以上の分子プローブ702に引きつけられるか、もしくはそうでなければ1つ以上の分子プローブ702と相互作用するか、またはその両方となり得る。1つ以上の分子プローブ702に対して化学的親和性を有する1つ以上の表面化合物がないエキソソームは、相互作用することなく、1つ以上のオンチップ・プローブ700を通過することができる。対照的に、分子プローブ702に対して化学的親和性を有する1つ以上の表面化合物を含むエキソソームは、1つ以上の分子プローブ702と化学的に相互作用する(例えば、アニーリング)か、もしくはそれにより、1つ以上の分子プローブ702によって捕捉されるか、またはその両方が可能となる。このように、エキソソーム単離プロセス800によって、1つ以上の分子プローブ702(例えば、1つ以上の第2の部分708)を構成する化合物の選択に基づいて、特異的な表面組成を有するエキソソームを単離することができる。
【0045】
例えば、1つ以上の分子プローブ702に相補的な一本鎖核酸を含む、1つ以上のタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)によって、1つ以上の初期エキソソーム202の表面を改変することができる。例えば、第2の部分に結合した第1の部分から構成される核酸-抗体複合体802を合成することができる。核酸-抗体複合体802の第1の部分は、一本鎖核酸分子プローブ702に相補的な一本鎖核酸であり得る。核酸-抗体複合体802の第2の部分は、目的の初期エキソソーム202の1つ以上の表面生体分子104に結合するための親和性を有する1つ以上の抗体であり得る。例えば、1つ以上の抗体は、1つ以上の抗原表面生体分子104に結合するための親和性を有し得る(例えば、目的の初期エキソソーム202に位置する1つ以上の表面生体分子104と抗体-抗原相互作用を開始するような親和性を有する)。このように、1つ以上の核酸-抗体複合体802は、1つ以上の分子プローブ702に相補的な一本鎖核酸によって、標的となる初期エキソソーム202の表面を官能化することができる。
図8に示されるように、1つ以上の核酸-抗体複合体802は、更に、1つ以上の分子プローブ702とアニーリングすることができ、それにより、オンチップ・プローブ700は、目的の1つ以上の初期エキソソーム202(例えば、1つ以上のエキソソーム容器100によって輸送特異性を助長し得る特異抗原などの特異的な表面生体分子104を含む1つ以上の初期エキソソーム202)を捕捉することができる。
【0046】
図8は、同一の、または実質的に同一の化学構造を有する複数の分子プローブ702からなるオンチップ・プローブ700を表すものであるが、分子プローブ702の構成は、そのように制限されるものではない。例えば、1つ以上の実施形態では、オンチップ・プローブ700内に含まれる分子プローブ702の1つ以上は、オンチップ・プローブ700内に含まれる1つ以上の他の分子プローブ702とは異なる構造を有してもよい。例えば、第1の分子プローブ702は、第1の一本鎖核酸配列を含むことができる一方で、第2の分子プローブ702は、異なる一本鎖核酸配列を含むことができる。2つ以上の異なる構造を有する複数の分子プローブ702からなるオンチップ・プローブ700により、2つ以上の異なる種類の標的のエキソソームを、エキソソーム単離プロセス800によって単離することができる。
【0047】
1つ以上の実施形態では、エキソソーム単離プロセス800によって単離されるエキソソームは、本明細書に記載される1つ以上のバイオコンジュゲーション反応のための初期エキソソーム202としての役割を果たし、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することができる。例えば、エキソソーム単離プロセス800を利用して、送達プロセス600の1つ以上の特徴を向上させる、もしくは可能にする、またはその両方を行うために、特定の表面構造(例えば、表面生体分子104の特定の組成物)を有する初期エキソソーム202に、1つ以上の分子カーゴ102をコンジュゲートすることができる。例えば、送達プロセス600は、1つ以上の特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化するのに有利である可能性があり、エキソソーム単離プロセス800により、目的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の1つ以上の生体分子に対して化学的親和性がある、1つ以上の表面生体分子104を有する初期エキソソーム202を単離することが可能となり、それにより、特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方への1つ以上の分子カーゴ102の輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる。別の例では、エキソソーム単離プロセス800によって標的化される1つ以上の表面生体分子104は、1つ以上の標的の生物学的細胞もしくは組織またはその両方によって、1つ以上の分子カーゴ102の取り込みを向上させる、もしくは1つ以上の分子カーゴ102の取り込みを可能にする、またはその両方を行うことができる(例えば、ファゴサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、受容体依存性エンドサイトーシスもしくはラフト介在性エンドサイトーシスまたはそのいずれかの組み合わせなどの1つ以上のエンドサイトーシスのプロセスを強化する、もしくは可能にする、またはその両方を行う)。
【0048】
図9は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソーム容器100を使用して、1つ以上の分子カーゴ102の輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法900のフローチャートを示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
【0049】
902において、方法900は、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102を、1つ以上のエキソソームの二分子膜106上で1つ以上のエキソソームの細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の表面生体分子104に結合することにより、1つ以上のエキソソーム(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202)を官能化することを含み得る。例えば、この官能化は、本明細書に記載される第1のコンジュゲーション・スキーム200、第2のコンジュゲーション・スキーム400もしくは第3のコンジュゲーション・スキーム500またはそのいずれかの組み合わせに従って行うことができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の核酸もしくはタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方、もしくは1つ以上の反応性官能基204(例えば、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含んでもよい。更に、1つ以上の表面生体分子104は、1つ以上の反応性官能基204との化学的相互作用(例えば、共有結合もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方)を促進することが可能な、1つ以上の官能基を含んでもよい。例示的な表面生体分子104としては、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、非局在化された二分子膜106の骨格分子、酵素、それらの組み合わせ等を挙げることができる。官能化の結果、1つ以上の分子カーゴ102が1つ以上の初期エキソソーム202の表面に放射状に配置して結合され、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することができる。
【0050】
904において、方法900は、エキソソームによって、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102を1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に送達することを含み得る。例えば、904における送達は、本明細書に記載される送達プロセス600に従って行うことができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のエキソソームに結合した(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202に結合した)1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102により、1つ以上のエキソソーム容器100が1つ以上の特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化して、1つ以上の分子カーゴ102を送達することを可能にし得る。例えば、分子カーゴ102の1つ以上は、目的の1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の1つ以上の抗原に特異的に引きつけられる可能性のある、1つ以上の抗体を含み得る。更に、1つ以上のエキソソーム容器100は、細胞内シグナル伝達経路によって可溶性シグナリング伝達を誘導すること、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜602と融合し、それにより細胞膜602を横断して1つ以上の分子カーゴ102を移送すること、および/またはファゴサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、受容体依存性エンドサイトーシスもしくはラフト介在性エンドサイトーシスまたはそのいずれかの組み合わせによってエンドサイトーシスすることによって、1つ以上の分子カーゴ102を送達することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、受容体依存性エンドサイトーシスによって、1つ以上のエキソソーム容器100を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方へと内部移行させることができるが、その際には、エキソソーム容器100の表面に位置する(例えば、二分子膜106上に位置する)1つ以上のリガンド(例えば、表面生体分子104もしくは分子カーゴ102またはその両方)が、細胞膜602に位置する1つ以上の細胞受容体(例えば、スカベンジャー受容体)と係合する。1つ以上の分子カーゴ102を送達することにより、アンチセンス技術、リボ核酸(「RNA」)干渉技術、スプライススイッチング技術、メッセンジャーRNAベースの治療法、マイクロRNAベースの治療法、それらの組み合わせ等などの1つ以上の治療上の療法を促進することができる。
【0051】
図10は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソーム容器100を使用して、1つ以上の分子カーゴ102の輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法1000のフローチャートを示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
【0052】
1002において、方法1000は、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102を、1つ以上のエキソソームの二分子膜106上で1つ以上のエキソソームの細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の表面生体分子104に結合することにより、1つ以上のエキソソーム(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202)を官能化することを含み得る。例えば、この官能化は、本明細書に記載される第1のコンジュゲーション・スキーム200、第2のコンジュゲーション・スキーム400もしくは第3のコンジュゲーション・スキーム500またはそのいずれかの組み合わせに従って行うことができる。例えば、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102は、1つ以上の核酸もしくはタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方、もしくは1つ以上の反応性官能基204(例えば、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含んでもよい。更に、1つ以上の表面生体分子104は、1つ以上の反応性官能基204との化学的相互作用(例えば、共有結合もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方)を促進することが可能な、1つ以上の官能基を含んでもよい。例示的な表面生体分子104としては、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、非局在化された二分子膜106の骨格分子、酵素、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。官能化の結果、1つ以上の分子カーゴ102が1つ以上の初期エキソソーム202の表面に放射状に配置して結合され、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することができる。
【0053】
1004において、方法1000は、1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102を、二分子膜106上で細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の第2の表面生体分子104に結合することにより、1つ以上のエキソソームを官能化することを含み得る。例えば、この1004における官能化は、本明細書に記載される第3のコンジュゲーション・スキーム500に従って行うことができる。例えば、1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102は、1つ以上の核酸もしくはタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方、もしくは1つ以上の反応性官能基204(例えば、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含んでもよい。1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102の1つ以上の反応性官能基204により、1つ以上の第2の表面生体分子104との1つ以上の結合(例えば、バイオコンジュゲーション反応、共有結合もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方)を促進することができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102と、1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102とは、1つ以上のエキソソーム容器100に異なる官能基を付与するように、異なる化学的組成を有してもよい。例えば、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102と、1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102とは、1つ以上のバイオコンジュゲーション反応によって1つ以上の初期エキソソーム202に同時にもしくは順次またはその両方で結合されてもよい(例えば、1つ以上の第2の化学修飾された分子カーゴ102のバイオコンジュゲーションを実質的に阻害することなく、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102のバイオコンジュゲーションを行うことができる)。1つ以上のエキソソーム(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202)を複数の異なる化学修飾された分子カーゴ102で官能化することによって、得られた1つ以上のエキソソーム容器100が、複数の機能(例えば、治療的機能および標的特異的な送達)を呈することができる。
【0054】
1006において、方法1000は、エキソソームによって、1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102を1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に送達することを含み得る。例えば、この1006における送達は、本明細書に記載される送達プロセス600に従って行うことができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上のエキソソームに結合した(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202に結合した)1つ以上の化学修飾された分子カーゴ102により、1つ以上のエキソソーム容器100が1つ以上の特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化して、1つ以上の分子カーゴ102を送達することを可能にし得る。例えば、分子カーゴ102の1つ以上は、目的の1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の1つ以上の抗原に特異的に引きつけられる可能性のある、1つ以上の抗体を含み得る。更に、1つ以上のエキソソーム容器100は、細胞内シグナル伝達経路によって可溶性シグナリング伝達を誘導すること、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜602と融合し、それにより細胞膜602を横断して1つ以上の分子カーゴ102を移送すること、および/またはファゴサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、受容体依存性エンドサイトーシスもしくはラフト介在性エンドサイトーシスまたはそのいずれかの組み合わせによってエンドサイトーシスすることによって1つ以上の分子カーゴ102を送達することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、受容体依存性エンドサイトーシスによって、1つ以上のエキソソーム容器100を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方へと内部移行させることができるが、その際には、エキソソーム容器100の表面に位置する(例えば、二分子膜106上に位置する)1つ以上のリガンド(例えば、表面生体分子104もしくは分子カーゴ102またはその両方)が、細胞膜602に位置する1つ以上の細胞受容体(例えば、スカベンジャー受容体)と係合する。1つ以上の分子カーゴ102を送達することにより、アンチセンス技術、リボ核酸(「RNA」)干渉技術、スプライススイッチング技術、メッセンジャーRNAベースの治療法、マイクロRNAベースの治療法、それらの組み合わせ等などの1つ以上の治療上の療法を促進することができる。
【0055】
図11は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソーム容器100を使用して1つ以上の分子カーゴ102の輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法1100のフローチャートを示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
【0056】
1102において、方法1100は、1つ以上の分子プローブ702により、1つ以上のエキソソームの二分子膜106上で1つ以上のエキソソームの細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の表面生体分子104の組成に基づいて、複数のエキソソームから1つ以上のエキソソームを単離することを含み得る。例えば、この1102における単離は、本明細書に記載されるエキソソーム単離プロセス800に従って行うことができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上のオンチップ・プローブ700内に含まれていてもよく、ここで、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上の基材704に固定されていてもよい。更に、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上の基材704に結合された第1の部分706(例えば、1つ以上の核酸を含む)もしくは1つ以上の分子プローブ702の第2の部分708(例えば、1つ以上の抗体もしくは抗原またはその両方を含む)またはその両方を含み得る。第2の部分708は、エキソソームの表面上にある1つ以上の表面生体分子104と(例えば、1つ以上のバイオコンジュゲーションもしくは抗体-抗原相互作用またはその両方によって)化学的に相互作用することができる。第2の部分708を構成する化合物は、特定の化合物と結合するか、もしくはそうでなければ特定の化合物と相互作用するか、またはその両方の化学的親和性を有する可能性があり、それにより、(例えば、本明細書に記載されるバイオコンジュゲーション反応もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方に従って)1つ以上の分子プローブ702によって単離されたエキソソームを、1つ以上の特定の化合物からなるエキソソームとすることができる。例えば、第2の部分708は、1つ以上の分子プローブ702によって捕捉することのできる1つ以上の抗体、もしくは1つ以上の抗体によって標的化される1つ以上の抗原を含む1つ以上のエキソソーム、またはその両方を含むことができ、それにより単離の対象となり得る。様々な実施形態では、オンチップ・プローブ700は、異なる表面組成を有する複数のエキソソームを単離するための、異なる化合物からなる複数の分子プローブ702を含み得る。
【0057】
1104において、方法1100は、1つ以上の分子カーゴ102によって表面を官能化することを含み得る。例えば、この官能化は、本明細書に記載される第1のコンジュゲーション・スキーム200、第2のコンジュゲーション・スキーム400もしくは第3のコンジュゲーション・スキーム500またはそのいずれかの組み合わせに従って行うことができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の核酸もしくはタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方、もしくは1つ以上の反応性官能基204(例えば、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含んでもよい。官能化の結果、1つ以上の分子カーゴ102が1つ以上の初期エキソソーム202の表面に放射状に配置して結合され、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することができる。
【0058】
図12は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態に従って、1つ以上のエキソソーム容器100を使用して、1つ以上の分子カーゴ102の輸送もしくは送達またはその両方を促進することができる、例示的で非限定的な方法1200のフローチャートを示している。簡潔にするために、本明細書に記載される他の実施形態で使用される同一の要素については、繰り返し説明することを省略する。
【0059】
1202において、方法1200は、1つ以上の分子プローブ702により、1つ以上のエキソソームの二分子膜106上で1つ以上のエキソソームの細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の表面生体分子104の組成に基づいて、複数のエキソソームから1つ以上のエキソソームを単離することを含み得る。例えば、この1102における単離は、本明細書に記載されるエキソソーム単離プロセス800に従って行うことができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上のオンチップ・プローブ700内に含まれていてもよく、ここで、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上の基材704に固定されていてもよい。更に、1つ以上の分子プローブ702は、1つ以上の基材704に結合された第1の部分706(例えば、1つ以上の核酸を含む)もしくは1つ以上の分子プローブ702の第2の部分708(例えば、1つ以上の抗体もしくは抗原またはその両方を含む)またはその両方を含み得る。第2の部分708は、エキソソームの表面上にある1つ以上の表面生体分子104と(例えば、1つ以上のバイオコンジュゲーションもしくは抗体-抗原相互作用またはその両方によって)化学的に相互作用することができる。第2の部分708を構成する化合物は、特定の化合物と結合するか、もしくはそうでなければ特定の化合物と相互作用するか、またはその両方の化学的親和性を有する可能性があり、それにより、(例えば、本明細書に記載されるバイオコンジュゲーション反応もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方に従って)1つ以上の分子プローブ702によって単離されたエキソソームを、1つ以上の特定の化合物からなるエキソソームとすることができる。例えば、第2の部分708は、1つ以上の分子プローブ702によって捕捉することのできる1つ以上の抗体、もしくは1つ以上の抗体によって標的化される1つ以上の抗原を含む1つ以上のエキソソーム、またはその両方を含むことができ、それにより単離の対象となり得る。様々な実施形態では、オンチップ・プローブ700は、異なる表面組成を有する複数のエキソソームを単離するための、異なる化合物からなる複数の分子プローブ702を含み得る。
【0060】
1204において、方法1200は、1つ以上の分子カーゴ102を、二分子膜106上で細胞質108とは反対側に位置する1つ以上の第2の表面生体分子104に結合することを含み得る。例えば、この1204における結合は、本明細書に記載される第1のコンジュゲーション・スキーム200、バイオコンジュゲーション・スキーム300、第2のコンジュゲーション・スキーム400もしくは第3のコンジュゲーション・スキーム500またはそのいずれかの組み合わせに従って行うことができる。例えば、1つ以上の分子カーゴ102は、1つ以上の核酸もしくはタンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方、もしくは1つ以上の反応性官能基204(例えば、アミン反応性化合物、リン酸反応性化合物、ヒドロキシル反応性化合物、抗体もしくは抗原またはその両方)またはその両方を含んでもよい。更に、1つ以上の第2の表面生体分子104は、1つ以上の反応性官能基204との化学的相互作用(例えば、共有結合もしくは抗体-抗原相互作用またはその両方)を促進することが可能な、1つ以上の官能基を含んでもよい。例示的な第2の表面生体分子104としては、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗原またはその両方)、リン脂質、糖脂質、核酸、多糖体、糖、非局在化された二分子膜106の骨格分子、酵素、それらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されない。結合の結果、1つ以上の分子カーゴ102が1つ以上の単離されたエキソソームの表面に放射状に配置して結合され、1つ以上のエキソソーム容器100を形成することができる。
【0061】
1206において、方法1200は、1つ以上のエキソソーム(例えば、1つ以上のエキソソーム容器100)によって、1つ以上の分子カーゴ102を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に送達することを含むことができ、ここで、1つ以上のエキソソームは、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に対して化学的親和性を有し得る。例えば、この1206における送達は、本明細書に記載される送達プロセス600に従って実施することができる。1つ以上の実施形態では、1つ以上の単離されたエキソソームに結合した(例えば、1つ以上の初期エキソソーム202に結合した)1つ以上の分子カーゴ102により、1つ以上のエキソソーム容器100が1つ以上の特定の生物学的細胞もしくは組織またはその両方を標的化して、1つ以上の分子カーゴ102を送達することを可能にし得る。例えば、1202では、1つ以上のエキソソームを、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方に対するそれらの化学的親和性に基づいて単離することができる(例えば、1つ以上の分子プローブ702との1つ以上の化学的相互作用を促進することができる同じ表面生体分子104によって、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方との1つ以上の化学的相互作用を促進することもできる)。更に、1つ以上のエキソソーム容器100は、細胞内シグナル伝達経路によって可溶性シグナリング伝達を誘導すること、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜602と融合し、それにより細胞膜602を横断して1つ以上の分子カーゴ102を移送すること、および/またはファゴサイトーシス、マイクロピノサイトーシス、受容体依存性エンドサイトーシスもしくはラフト介在性エンドサイトーシスまたはそのいずれかの組み合わせによってエンドサイトーシスすることによって、1つ以上の分子カーゴ102を送達することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、受容体依存性エンドサイトーシスによって、1つ以上のエキソソーム容器100を、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方へと内部移行させることができるが、その際には、エキソソーム容器100の表面に位置する(例えば、二分子膜106上に位置する)1つ以上のリガンド(例えば、表面生体分子104もしくは分子カーゴ102またはその両方)が、1つ以上の生物学的細胞もしくは組織またはその両方の細胞膜602上に位置する1つ以上の細胞受容体(例えば、スカベンジャー受容体)と係合する。1つ以上の分子カーゴ102を送達することにより、アンチセンス技術、リボ核酸(「RNA」)干渉技術、スプライススイッチング技術、メッセンジャーRNAベースの治療法、マイクロRNAベースの治療法、それらの組み合わせ等などの1つ以上の治療上の療法を促進することができる。
【0062】
加えて、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく、包含的な「または」を意味するものと意図される。すなわち、特に明記されない限り、または文脈から明白でない限り、「XはAまたはBを使用する」とは、任意の自然な包含的な順列を意味するものと意図される。すなわち、XがAを使用する場合、XがBを使用する場合、またはXがAおよびBの両方を使用する場合、前述の例のいずれかのもとで「XはAまたはBを使用する」が満たされる。更に、本明細書および添付図面中で使用される場合、「a」および「an」という冠詞は、単数形を対象にすべきであると特に明記されない限り、または文脈から明白でない限り、「1つ以上」を意味するものと一般に解釈されるべきである。本発明で使用する場合、「例示的」もしくは「代表的」またはその両方の用語は、例、実例、または例証としての役割を果たすことを意味するために使用される。誤解を避けるために、本明細書に開示される主題は、そのような例によって限定されるものではない。加えて、「例示的」もしくは「代表的」またはその両方として本明細書に記載されるいかなる態様も、必ずしも他の態様よりも好ましいか、または有利であると解釈されるべきではなく、当業者に公知の同等の例示的構造および技術を排除することを意味するものでもない。
【0063】
当然のことながら、本開示を説明する目的で、構成成分、製品もしくは方法またはそのいずれかの組み合わせの、あらゆる考え得る組み合わせを記載することは不可能である。しかしながら、一当業者であれば、多くの更なる本開示の組み合わせおよび並べ替えが可能であるということを認識することができよう。更に、発明を実施するための形態、特許請求の範囲、添付物および図面において「含む(includes)」、「有する(has)」、「備える(possesses)」等の用語が使用される限りにおいて、そのような用語は、「含む(comprising)」が特許請求の範囲の移行句として使用される場合に解釈されるような「含む(comprising)」という用語と同様の様式で、包含的であるということが意図される。説明の目的のために、各種実施形態の記載を提示してきたが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図しない。多数の修正および変形が、記載された実施形態の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本明細書で使用された用語は、実施形態の原理、実用的用途または市場で見出される技術に対する技術的な改善を最も良く説明するために、または、他の当業者が本明細書にて開示される実施形態を理解することを可能にするために選択された。