(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】抗菌又は抗ガン、又はそれら両方の活性を有するポリリシンポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 69/48 20060101AFI20241001BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20241001BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C08G69/48
A61P31/04
A61P35/00
A61K31/785
A61P31/00
(21)【出願番号】P 2022506794
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 IB2020056650
(87)【国際公開番号】W WO2021024057
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-12-23
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ナザニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリック、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、ガービン
(72)【発明者】
【氏名】ピウノーバ、ヴィクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、イー、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】タン、パン、カーン、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、チュワン
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー、チェリレッテ、アン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167333(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/085432(WO,A1)
【文献】特開2004-315820(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108184852(CN,A)
【文献】仏国特許出願公開第02851465(FR,A1)
【文献】特開2006-070036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0388460(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
A61P 31/00-31/22、35/00-35/04
A61K 31/33-33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学組成物であって:
ペンダント化されたグアニジニウム官能基に共有結合した分子バックボーンを含むポリマーを含み、前記分子バックボーンが、ε-ポリリシン構造の第1アミンが約50%以上前記グアニジニウム官能基で置換された構造を含む、化学組成物。
【請求項2】
前記ポリマーは、抗がん活性を示す、請求項1に記載の化学組成物。
【請求項3】
前記ε-ポリリシン構造が、ε-ポリ-L-リシン及びε-ポリ-D-リシンからなるグループから選択される、請求項1または2に記載の化学組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが病原体に対する抗菌活性を示し、かつ前記病原体がグラム陰性菌、グラム陽性菌、真菌及び酵母からなるグループから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化学組成物。
【請求項5】
化学組成物であって:
ペンダント化されたグアニジニウム官能基に共有結合した分子バックボーンを含むポリマーであって、前記分子バックボーンが、ポリリシン構造の少なくとも一部の第1アミンが前記グアニジニウム官能基で置換された構造を含む、ポリマーと、
治療薬と
を含み、前記ポリマーが活性の標的とされた細胞のサイトゾル・メンバーと相互作用することにより前記治療薬の前記活性を向上させる、化学組成物。
【請求項6】
前記治療薬が抗菌剤であり、前記ポリマーが病原体に対する
抗菌活性を示し、かつ前記病原体がグラム陰性菌、グラム陽性菌、真菌及び酵母からなるグループから選択される、請求項5に記載の化学組成物。
【請求項7】
化学組成物であって:
ペンダント化されたグアニジニウム官能基に共有結合した第1の分子バックボーンを含む第1のポリマーであって、前記第1の分子バックボーンが、ポリリシン構造を含む、前記第1のポリマーと、
ペンダント化されたアニオン性官能基に共有結合する第2の分子バックボーンを含む第2のポリマーであって、前記第2の分子バックボーンがもう1つのポリリシン構造を含み、かつ、前記ペンダント化されたアニオン性官能基がスルホン酸基、カルボン酸基、ボロン酸基、及びリン酸基からなるグループから選択される、前記第2のポリマーと
を含む、請求項1に記載の化学組成物。
【請求項8】
化学組成物であって、ポリマーを含み、前記ポリマーが化学式:
【化1】
で特徴づけられ、
前記“m”が5以上、かつ30未満の第1の数であり;かつ
前記“n”が0以上、かつ25以下の第2の数である、化学組成物。
【請求項9】
請求項5~請求項8のいずれか1項に記載の化学組成物を病原体の細胞に接触させることにより前記病原体を阻害することを含む、方法(人間を治療する方法を除く)。
【請求項10】
前記阻害は、前記ポリマーが前記細胞の膜を通してトランスロケーションすること及び前記細胞のサイトゾル内で生体巨大細胞を析出させることを含むトランスロケーション機構により容易にされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~請求項4および請求項8のいずれか1項に記載の化学組成物をガンの細胞に接触させることにより前記ガンを阻害することを含む、方法(人間を治療する方法を除く)。
【請求項12】
前記阻害は、前記ポリマーが前記細胞の膜を通してトランスロケーションすること及び前記細胞のサイトゾル内で生体巨大細胞を析出させることを含むトランスロケーション機構により容易にされる、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主題の開示は、抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有するポリマーに関し、より具体的には、複合処方(例えば、アニオン性界面活性剤)への適合性を備えると共に、抗菌活性又は抗ガン又はそれら両方の活性を示す1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーに関する。
【発明の概要】
【0002】
以下に、本発明の1つ又はそれ以上の基本的理解を提供するための要約を提示する。本概要は、鍵となる又は重要な要素を規定することを意図するものではないし、又は特定の実施形態の如何なる範囲又は請求項の如何なる範囲の境界付けを意図するものではない。その唯一の目的は、簡略化された形式において、より後に提示される、より詳細な説明の前章として、本概念を提示することである、本明細書で説明する1つ又はそれ以上の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウム基で機能化されたポリリシンポリマーに関する化学組成物又は方法又はそれら両方を記載する。
【0003】
実施形態に従い、化学組成物が提供される。化学組成物は、分子バックボーンに共有結合したグアニジニウム官能基を含むポリマーを含有することができ、ここで、分子バックボーンは、ポリリシン構造を有する。
【0004】
本実施形態に従い、方法が提供される。この方法は、抗菌性ポリマーを病原体の細胞に接触させることにより、病原体を阻害することを含む。抗菌性ポリマーは、ペンダント化されたグアニジニウム官能基で機能化されたポリリシン構造を有することができる。
【0005】
実施形態に従い、方法が提供される。この方法は、ポリマーをガン細胞に接触させることにより、ガンを阻害することを含む。ポリマーは、ペンダント化されたグアニジニウム官能基で機能化されたポリリシン構造を有することができる。
【0006】
本発明を、以下の図面において示されるように、好ましい実施形態を参照しつつ実施例のみの目的で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の本実施形態による、抗菌又は抗ガン活性又はそれらの両方を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを特徴づけることができる、抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する実施例で非限定的な化学構造の図である。
【
図2】
図2は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の本実施形態による、抗菌又は抗ガン活性又はそれらの両方を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの合成を特徴づけることができる、抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する実施例で非限定的な重合スキームの図である。
【
図3】
図3は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の本実施形態による、抗菌又は抗ガン又はそれらの両方の活性を有するポリリシンの種々のグアニジニウム機能化の種々の程度をしたポリリシンポリマーの種々の程度を示すことができる、グラフ及び核磁気共鳴スペクトルの実施例で非限定的な図である。
【
図4A】
図4Aは、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の本実施形態による、1つ又はそれ以上の抗生物質との組み合わせにおける1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを含む、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーの効果を示すことができる、実施例で非限定的なグラフである。
【
図4B】
図4Bは、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の本実施形態による、1つ又はそれ以上の抗生物質との組み合わせにおける1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを含む、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーの効果を示すことができる実施例で、非限定的なグラフである。
【
図5】
図5は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のアニオン機能化ポリリシンポリマーを特徴づけることができる実施例で非限定的な化学構造の図である。
【
図6】
図6は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上の複合処方と適合性を示す1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーのアニオン機能化の種々の程度を示すことができる実施例で非限定的なグラフおよび対応する核磁気共鳴スペクトルの図である。
【
図7】
図7は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる実施例で非限定的な図である。
【
図8A】
図8Aは、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる実施例で非限定的な図である。
【
図8B】
図8Bは、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる実施例で非限定的な図である。
【
図8C】
図8Cは、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる実施例で非限定的な図である。
【
図8D】
図8Dは、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる実施例で非限定的な図である。
【
図9】
図9は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示すことができる実施例で非限定的な図を示す。
【
図10】
図10は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上の界面活性剤との適合性を示すポリリシンポリマーの写真を示す。
【
図11】
図11は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗ガン活性を示すことができる実施例で非限定的な図を示す。
【
図12】
図12は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを使用し、1つ又はそれ以上の病原体を阻害することができる実施例で非限定的な方法のフロー図を示す。
【
図13】
図13は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを使用し、1つ又はそれ以上の病原体を阻害することができる実施例で非限定的な方法のフロー図を示す。
【
図14】
図14は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを使用し、1つ又はそれ以上のガンを阻害することができる実施例で非限定的な方法のフロー図を示す。
【
図15】
図15は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を有する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを使用し、1つ又はそれ以上のガンを阻害することができる実施例で非限定的な方法のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の詳細な説明は、単に例示的なものであり、実施形態又は実施形態の用途又は使用又はそれら両方の限定を意図するものではない。さらに、上述の背景技術又は要約セクション又は詳細な説明において提示した如何なる明示又は暗示にも、限定する意図はない。
【0009】
1つ又はそれ以上の実施形態を、ここに図面を参照して説明するが、ここで、全体を通して同様の参照符号を、類似の要素を参照するために使用する。以下の説明においては、説明の目的のため、1つ又はそれ以上の実施形態のより完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細を説明する。しかしながら、種々の場合において1つ又はそれ以上の実施形態がこれらの特定の詳細なく実施可能であることは、明らかである。
【0010】
抗菌剤は、感染を防止し、かつ製品の棚段寿命を延長するために、広く使用されるコンシューマ製品である。コンシューマ商品においてみられる多くの抗菌剤は、500ダルトン(Da)未満の分子量を有し、アニリド(例えば、トリクロカルバン)、ビスフェノール(例えばトリクロサン)、ビグアニジン(例えば、クロルヘキシジン)、又は第4アンモニウム化合物(例えば、セチルピリジウムクロリド及びセトリミド)を含有する。トリクロサンは、最も広く使用されている化合物であり、50%を超える、石鹸、消臭剤、歯磨き粉、マウス・ウォッシュ、及びコスメチクスを含むコンシューマ製品で見出される。これは、グラム陽性菌に対しては有効であるが、グラム陰性菌及び粘菌に対してはわずかな活性を有する。上記にリストした抗菌剤の多くは、細菌(例えばクロストリジウム属)、グラム陽性(例えばマイコバクテリア)及びグラム陰性菌(例えば、シュードモナス・エルジノーサ)の芽胞の多くの負担に対する抵抗性を証明する。より重要なことに、主要な関心は、治療的に使用される抗生物質との交差性及び共存性を改善することであり、これが、相反するジレンマを複雑化する。新たに見出された微生物内での生化学的経路及び細胞標的を利用する努力にもかかわらず、新規な抗生物質のための化学組成物の開発パイプラインは、年々発見される耐性微生物の発達の速度に伴ったペースを維持できなくなっている。
【0011】
本明細書で説明する種々の実施形態は、1つ又はそれ以上のペンダント化されたグアニジニウム官能基で機能化した1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーを含む化学組成物に関することができる。加えて、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を示すことができる。例えば、1つ又はそれ以上の実施形態は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーと、病原体の1つ又はそれ以上の細胞とを接触させることにより、病原体を阻害すること(例えば、1つ又はそれ以上の細菌感染)に関することができる。また、1つ又はそれ以上の実施形態は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーと、ガンの1つ又はそれ以上の細胞とを接触させることにより、ガンを阻害することに関することができる。種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のペンダント化したグアニジニウム官能基による機能化の、種々の量を有することができる。さらに、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、アニオン性界面活性剤といった種々の複雑な処方に対して適合性を有する。
【0012】
図1~5に示すように、“m”は、例えば5以上、かつ30未満の数を表すことができ、又は“n”は、1以上、かつ25以下の数を表すことができるか、又はそれらの何れも表すことができる。加えて、“★”は、図示した構造の全部又は一部又はそれら両方、1つ又はそれ以上の水素、アルキル基、アリール基など、又はこれらの組み合わせを表すことができる。他の言及がない限り、本明細書に記載する実験、表、チャート、又は図面など又はそれらの組み合わせを容易するために使用される材料は、以下の供給源から取得することができる。細菌スタフィロコッカス・アウレウス、(“S.aureus”、ATCC29737)、エシェリッチア・コリ(“E.coli”、ATCC25922)”、シュードモナス・エルジノーサ(“P.aeruginosa”、ATCC9027)、カンジダ・アルビカンス(“C.albicans”、ATCC10231)、又はクレブシエラ・ニューモニエ(“K.pneumoniae”、ATCC700603)は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(“ATCC”)から取得することができる。
【0013】
図1は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の実施形態における1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを特徴づけることができる第1の化学構造100又は第2の化学構造102又はそれら両方の実施例で非限定的な図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
図1に示すように、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、α-ポリ-L-リシン構造(例えば、第2の化学構造102による)、α-ポリ-D-リシン構造(例えば、第2の化学構造102による)、ε-ポリ-L-リシン構造(例えば、第1の化学構造100による)、又はε-ポリ-D-リシン構造(例えば、第1の化学構造100による)、又はそれら両方を含むことができる。
【0014】
種々の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、カチオン性とすることができる。例えば、1つ又はそれ以上の正電荷は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーにわたって分布することができる。例えば、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー構造は、1つ又はそれ以上のプロトン化されたアミン類(例えば、プロトン化された第1アミン類、又はプロトン化された第2アミン類又はそれら両方)を含むことができる。これにより、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、主題のポリマーにわたって1つ又はそれ以上の電荷を分散させることができ、このポリマーが石鹸又は洗剤又はそれら両方の存在下で活性とすることができる。
【0015】
1つ又はそれ以上の実施形態においては、第1の化学構造100又は第2の化学構造102又はそれらの両方により特徴付けられる、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、例えば、2,000Da以上、かつ4,000Da(例えば4,000Da)以下の数平均分子量(“Mn”)を有することができる。加えて、1つ又はそれ以上の実施形態においては、第1の化学構造100又は第2の化学構造102又はそれら両方は、さらに、分子バックボーンに共有的に結合した糖部分を含むことができる。例えば、糖部分は、第1の化学構造100又は第2の化学構造102で特徴づけられる、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの10モル%以下で含むことができる。
【0016】
図2は、本明細書で説明する1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの合成を容易することができる、実施例で非限定的な重合スキームの図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。第1の重合スキーム200は、高ポテンシャルのハイドロン(“pH”)環境において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの合成についての例示的なスキームを示す。第2の重合スキーム202は、高い減圧環境において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの合成についての例示的なスキームを示す。
【0017】
図2に示すように、第1の重合スキーム200は、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー(例えば、1つ又はそれ以上のε-ポリ-L-リシン構造又はε-ポリ-D-リシン構造を含む)を、1つ又はそれ以上のグアニジニウム機能化試薬と反応させることを含む。1つ又はそれ以上のグアニジニウム機能化試薬は、1つ又はそれ以上のグアニジニウム官能基を含むことができる。例えば、グアニジニウム機能化試薬は、これに限定されないが、プラキサジン(praxadine)(例えば、
図2に示される。)などを含むことができる。種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー又はグアニジニウム機能化試薬又はそれら両方は、両方の試薬が完全に溶解するまでの超音波分散又はゆっくりした加熱又はそれらの両方が適用される。加えて、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー又はグアニジニウム機能化試薬は、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸カリウム、リン酸三カリウム、リン酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又はこれらの混合物の存在下で混合することができる。さらに1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー又はグアニジニウム機能化剤又はそれらの両方は、高pH環境で混合することができる。例えば、混合環境は、7以上、かつ14以下のpH(例えば、pH9)を有することができる。当業者は、
図2がε-ポリリシン構造に関して第1の重合スキームを示しているが、第1の重合スキーム200の構成は、それに限定されることはないことにつき容易に理解されよう。例えば、本明細書で記載する第1の重合スキーム200は、1つ又はそれ以上のα-ポリリシン構造で特徴づけられる1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーに関しても遂行することができる。
【0018】
例えば、20mLのシンチレーション・バイアルにポリリシンを充填し、2モル(M)のNa2CO3水溶液に溶解することができる。溶解した後、16時間の期間をかけてプラキサジンの一部分を添加しながら、NMR分光法を介して反応をモニタする。機能化の所望するレベルに達した時に、反応混合物をアセトン中に析出する。得られた固体を、追加のアセトン及びテトラヒドロフランで洗浄することができる。固体をその後、水に溶解し、濃HClで酸性(例えばpH~1)とし、その後水(例えば1000DaのMWCOメンブラン)を使用し、水を3度交換して24時間透析する。透析の後、サンプルを凍結乾燥して、所望するグアニジニウムで機能化したポリマーを提供する。
【0019】
図2に示すように、第2の重合スキーム202は、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー(例えば1つ又はそれ以上のε-ポリ-L-リシン又はε-ポリ-D-リシン又はそれらの両方)を、1つ又はそれ以上のシアナミド試薬と反応させることを含む。1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー又はシアナミド試薬又はそれら両方は、例えば、80°(℃)以上、120℃以下(例えば90℃)の範囲に加熱することができる。加えて、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマー又はシアナミド試薬又はそれら両方は、高減圧環境下で混合することができる。当業者は、
図2はε-ポリリシン構造に関して第2の重合スキームを示しているが、第2の重合スキーム202の構成は、限定されないことは容易に理解されよう。例えば、本明細書に記載した第2の重合スキーム202の種々の特徴は、1つ又はそれ以上のα-ポリリシン構造によって特徴づけられる、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーについても遂行することができる。
【0020】
種々の実施形態において、第1の重合スキーム200又は第2の重合スキーム又はこれら両方の試薬(例えば、グアニジニウム機能化剤又はシアナミド試薬又はそれら両方)は、時間をかけてフィルタされ、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーの所望する機能化水準を達成することができる。第1の重合スキーム200又は第2の重合スキーム202又はこれら両方の結果、1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーを、ポリリシン構造の第1アミンの1つ又はそれ以上の位置でペンダント化したグアニジニウム官能基で機能化することができる。加えて、グアニジニウム基で機能化されない1つ又はそれ以上の第1アミンは、プロトン化される(例えばHClによる)。これにより、1つ又はそれ以上の正電荷を、1つ又はそれ以上の合成された、グアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーの分子バックボーンに沿って分散することができる。
【0021】
図3は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の実施形態により、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの機能化の種々の量を示すことができる、実施例で非限定的な核磁気共鳴(“NMR”)グラフの図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。種々の実施形態においては、グアニジニウム基でのポリリシンポリマーの機能化の量は、NMRを使用してモニタすることができる。
図3に示すように、ポリリシン構造又は第1アミン官能基に結合するか又はそれら両方に含まれるアルファ炭素を、“α′”により表示し、ここで、グアニジニウム官能基に結合したアルファ炭素を、“α”により表示する。プロトン・シフト又はα又はα′又はそれら両方に伴うピークの高さをモニタすることにより、グアニジニウム基によるポリリシンポリマーの機能化量が決定できる。
【0022】
第1のNMRグラフ300は、塩酸の存在下でのポリリシンポリマーに対応する。第2のNMRグラフ302は、ポリリシンポリマーに対応する。第3のNMR304は、1つ又はそれ以上のグアニジン基による50%の機能化を有する、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーに対応する。第4のNMRグラフ306は、1つ又はそれ以上のグアニジン基による70%の機能化を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーに対応する。第5のNMRグラフ308は、1つ又はそれ以上のグアニジン基による90%の機能化を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーに対応する。
図3に示すように、NMRグラフの変化は、ポリリシンポリマーが経験したグアニジニウム機能化の量における変化に相関する。
【0023】
種々の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のトランスロケーション機構を介して抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を示すことができ、これは1つ又はそれ以上の病原体(例えば、グアム陰性菌、グラム陽性菌、真菌及び酵母)、又はガン細胞又はそれら両方を指向することができる。トランスロケーション機構の第1のステージでは、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば第1の化学構造100又は第2の化学構造102又はそれら両方)は、標的細胞(例えば細菌又はガン細胞又はそれら両方)の細胞膜に付着することができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、静電的に細胞膜に向かって引き付けられることができる。例えば、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの1つ又はそれ以上のグアニジニウム基は、カチオン性であるか、又は細胞膜に伴う1つ又はそれ以上の負電荷に静電的に引き寄せられることができるか、又はそれ両方である。
【0024】
トランスロケーション機構の第2のステージでは、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、対象の細胞の細胞膜を通過し、かつ細胞の内部へと侵入する。例えば、細胞膜(例えば、脂質二重層)は、対象の細胞を取り囲む環境から主題の細胞の内部を分離することができる。種々の実施形態では、1つ又はそれ以上のポリ(グアニジニウムカーボネート)ポリマーの1つ又はそれ以上のグアニジニウム官能基は、1つ又はそれ以上の多座配位の水素結合を、細胞膜内の1つ又はそれ以上のリン酸基と形成することができる。1つ又はそれ以上の多座配位の水素結合は、細胞膜の電荷を中和し、したがって、細胞膜304のトランスロケーションを誘発することができる。微生物へと侵入すると、1つ又はそれ以上のポリ(グアニジニウムカーボネート)ポリマーは、細胞膜の内側の小葉に付着する(例えば
図3に示すように)。
【0025】
トランスロケーション機構の第3のステージでは、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーは、微生物のサイトプラズマ内に分散された内部の小葉から解放される。トランスロケーション機構の第2のステージでは、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のタンパク、酵素又は遺伝子(例えば細胞の1つ又はそれ以上のDNAセグメント内に配置された)又はそれらの組み合わせを析出させることができる。例示的に、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のサイトゾル・タンパク、酵素、微生物の遺伝子又はそれらの組み合わせと相互作用することができるか、又はサイトゾル・メンバーを析出することができるか、又はこれらの組み合わせることができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーと、サイトゾル・メンバーとの間の上述した相互作用、又は析出又はそれら両方は、細胞のアポトーシスを生じさせる。
【0026】
種々の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーに含まれることができ、他の治療薬の抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を向上する。本明細書で使用するように、用語“コンビネーション・セラピー”は、疾患、疾病又はガン又はそれらの何れを治療するための多数の化学組成物を使用することを参照することができる。化学組成物は、抗ガン剤又は抗菌剤又はそれら両方といった医薬的組成物を含むことができる。加えて、化学組成物は、抗菌性ポリマー(例えば機能化したポリリシンポリマーと言った)といった医薬的組成物以外の化合物を含むことができる。多数の化学組成物は、組み合わせで使用されて、1つ又はそれ以上の相乗的効果を達成することができ、1つ又はそれ以上の化学組成物の療法的な治療を向上させるか又は容易にするか、又はそれらの両方である。加えて、コンビネーションは、種々のタイプの化学組成物を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上の医薬的組成物は、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーにおいて、1つ又はそれ以上の抗菌性ポリマーを組み合わせることができる。さらに、疾病を阻害すること(病原体又はガン又はそれらの両方)は、疾病を治療すること、疾病を根治すること、疾病を遅延すること、疾病を緩和すること、疾病による治療への抵抗性の進展を低下させることなど又はそれらの組み合わせを含むことができる。さらに、疾病(例えば感染)は、1つ又はそれ以上の微生物(例えば、グラム陰性菌といった細菌)により引き起こされることができる。
【0027】
1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、他の抗微生物薬(例えば抗菌剤)と共に使用されて、1つ又はそれ以上の抗菌剤の抗菌活性を向上させる。同様に、いくつかの実施形態では、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上の抗ガン剤と共に使用されて、1つ又はそれ以上の抗ガン剤の抗ガン活性を向上させる。1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーと共にコンビネーション・セラピーで含むことができる実施例の抗菌薬は、これらに限定されることはなく、リファンピシン、イミペネム、メロペネム、ペニシリン、リファミシン、アモキシリン、セフチオフル、エンロフロキサシン、クロルテトラサイクリン、フルコナゾールなど、又はこれらの組み合わせを含むことができる。1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーと共にコンビネーション・セラピーで含むことができる実施例の抗ガン剤は、これらに限定されることはなく、ドキソルビシン、パクリタキセル、5-FU、シスプラチン、ゲムシタビンなど、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0028】
例えば、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーにより標的とされる、1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバー(例えばタンパク、酵素又は遺伝子又はそれらの組み合わせ)は、1つ又はそれ以上の他の抗菌又は抗ガン又はそれら両方の薬剤の機能を阻害することができる。これにより、第1の化学構造100又は第2の化学構造102により特徴づけられる1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーは、標的細胞の1つ又はそれ以上のサイトゾル・タンパク、酵素又は遺伝子又はそれらの組み合わせに結合又は析出又はそれらの組み合わせにより、対象のコンビネーション・セラピー内に含まれる他の薬剤の抗菌又は抗ガン又はそれら両方の活性を向上することができる。
【0029】
図4A~4Bは、本明細書で説明した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上の抗生物質と組み合わせにおける1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを含む1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーの効果を示す実施例で非限定的な、グラフである。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
図4A又は4B又はそれら両方に示されるように、例示的なコンビネーション・セラピーは、セフチオフル、エンロフロキサシン、クロルテトラサイクリン又はリファンピシン又はこれらの組み合わせと共に、グアニジニウム機能化の種々の量の1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーを含むことができる。例えば、
図4A又は4B又はそれら両方に記載されたコンビネーション・セラピーは、K.pneumoniaeの治療に関する。
【0030】
さらに下記に示す表1は、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー又は抗生物質又はそれら両方の、それぞれK.pneumoniaeに関する抗菌活性を示す。グアニジウムで機能化したポリリシンポリマーは、修飾しないポリリシンに比較して、同等のMICを有する。
【0031】
【0032】
図4A又は4B又はそれら両方(例えば表1との比較において)に示すように、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー及び抗生物質との組み合わせは、相乗的な効果を有する。例えば、分別的阻害濃度指数(“FICI”)≧0.5は、相乗効果を示し;0.5~1は、追加的効果を示し;1~4は、組み合わせに違いの無いことを示し;又は>4は、阻害的効果を示す。コンビネーション・セラピーで達成される相乗的効果は、ポリリシンポリマーのグアニジニウム機能化の程度を増加させる。
【0033】
図5は、本明細書で記載する1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で、非制限的な、1つ又はそれ以上のアニオン機能化したポリリシンポリマーを特徴づけることができる、第3の化学構造500を示す図である。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。種々の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌又は抗ガン又はこれら両方の活性は、1つ又はそれ以上のアニオン機能化したポリリシンポリマー(例えば、第3の化学構造500で特徴づけられる。)を導入することにより、著しく向上することができる。
図5に示すように、1つ又はそれ以上のアニオン基(例えば、
図5の“X”により表される。)は、ポリリシン構造に1つ又はそれ以上の負電荷を提供することができる。例示的なアニオン基(例えば
図5の“X”により表される。)は、これに限定されるものではく、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基など、又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0034】
例えば、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、化学構造100又は化学構造102又はそれら両方で特徴づけられる。)は、1つ又はそれ以上のアニオン機能化したポリリシンポリマー(例えば第3の化学構造500で特徴づけられる。)と組み合わせることで、静電的なコアセルベート複合体を生成し、これは中性であり、複合体が体内を循環する場合に1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの毒性を遮蔽することができ、それにより、哺乳動物細胞に対する1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの毒性を低減する。いくつかの実施形態では、コアセルベート複合体は、アニオン基の存在下で、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを投与することにより形成することができる。
【0035】
これらのコアセルベート複合体は、調節可能な粒径で高い調整性が有る良好に規定されたナノコンプレックスであり、血清タンパクの存在下にあったとしても、生理学条件の下で安定である。いくつかの実施においては、コアセルベート複合体は、さらにビオチンで機能化して、さらに病原体又はガン細胞又はそれら両方によるコアセルベート複合体の摂取を増加させることができる。1つ又はそれ以上の追加的な実施形態では、これらのコアセルベート複合体は、診断目的のために使用することができる。これらの実施形態により、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、特定の病原体又はガン細胞のタイプ又はそれら両方を標的とするように調整することができ、かつ1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを、コアセルベート複合体と、特定の病原体又はガン細胞のタイプとの反応に応答して発光する蛍光染料で機能化することができる。
【0036】
図6は、本明細書で説明した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で非限定的な、1つ又はそれ以上のアニオン機能化したポリリシンポリマーの機能化を示すNMRグラフ図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0037】
図6に示す6番目のNMRのグラフ600は、ポリリシンポリマーに対応することができる。
図6に示す7番目のNMRのグラフ602は、水酸化ナトリウム(“NaOH”)存在下でのポリリシンポリマーに対応することができる。
図6の8番目のNMRのグラフ604は、1つ又はそれ以上のスルホン酸基による約100%の機能化を有するスルホン酸で機能化したポリリシンポリマーに対応する。種々の実施形態において、
図6に示すスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマーは、第3の化学構造500により、アニオン機能化した又は第4の化学構造606で特徴づけられる又はそれら両方による実施例のポリリシンポリマーとすることができる。
図6に示すように、アニオンで機能化したポリリシンポリマーにおける1つ又はそれ以上のアニオン基による機能化の量は、またNMRによりモニタすることができる。
【0038】
図7は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー又はグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体又はそれら両方の溶血活性を示す図である。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0039】
グラフ700は、第1の化学構造100又は第2の化学構造102又はそれら両方により特徴づけられる1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性に関連する。ライン702は、約100%のスルホン化を有するスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図6に示した)の溶血活性を示す。ライン704は、約50%のグアニジニウム化を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方で示した)の溶血活性を示す。ライン706は、約70%のグアニジニウム化を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方で示した)の溶血活性を示す。ライン708は、約90%のグアニジニウム化を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方で示した)の溶血活性を示す。ライン710は、非機能化ポリリシンポリマーの溶血活性を示すことができる。
【0040】
グラフ714は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体の溶血活性に関する。ライン716は、約50%のグアニジニウム化を有するアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方に示した)及び約100%のスルホン化を有するスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマー(例えば第4の化学構造606により特徴づけられる)を含む、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体の溶血活性を示す。ライン718は、約70%のグアニジニウム化を有するアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方に示した)及び約100%のスルホン化を有するスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマー(例えば第4の化学構造606により特徴づけられる)を含む、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体の溶血活性を示す。ライン720は、約90%のグアニジニウム化を有するアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方に示した)及び約100%のスルホン化を有するスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマー(例えば第4の化学構造606により特徴づけられる)を含む、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体の溶血活性を示す。ライン722は、約100%のグアニジニウム化を有するアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は
図2又はそれら両方に示した)及び約100%のスルホン化を有するスルホン酸基で機能化したポリリシンポリマー(例えば第4の化学構造606により特徴づけられる)を含む、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのコアセルベート複合体の溶血活性を示す。グラフ700又はグラフ714又はそれら両方に示されるように、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーを、1つ又はそれ以上のアニオン機能化したポリリシンポリマーを使用する1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体に組み込むことは、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を低下させることができる。
【0041】
下記に示す表2は、さらに、グラフ700又はグラフ714又はそれら両方に示された、ポリマー又はコアセルベート複合体又はそれら両方の抗菌活性を示す。組み合わせにおいて、
図7及び表2は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーが強い抗菌活性を有することができること、又は1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマーのコアセルベート複合体がまた、低レベルの溶血活性を示しつつ、抗菌活性を示すこと、又はそれら両方を示す。
【0042】
【0043】
図8A~Dは、本明細書で説明した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化されたポリリシンポリマー(例えば、第1の化学構造100又は第1の化学構造又はそれら両方)の抗菌活性の広範なスペクトルを示すことができるグラフである。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0044】
図8Aは、化学構造100で特徴づけられるグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの溶血活性を示す。さらに、以下に提示する表3は、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示す。
【0045】
【0046】
図8Bは、S.aureus細菌に関し、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示し、ここで、細菌の光学密度は、600ナノメートル(“OD.600”)で測定した。
図8Cは、E.coli細菌に関し、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示す。
図8Dは、P.aeruginos細菌に関し、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示す。
【0047】
図9は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で、非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーと、1つ又はそれ以上の複合処方との適合性を示すことができるグラフ900を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。例えば、種々の実施形態において、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上の複合的な化学処方に適合することができる。実施例の複合的な化学処方は、これらに限定されることはなく、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリリシン類、アニオン性ポリカーボネート、又はアニオン性ポリエステル類など、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、
図9は、アニオン性界面活性剤LAS(例えば
図9に示した化学構造により特徴づけられる)の存在下における、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーの抗菌活性を示す。
【0048】
図10は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で非限定的な、水中での1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーに見られた析出量を示すことができる写真1000の図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
図10に示すように、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのグアニジニウム基の量は、ポリマーの析出特性に影響を与える。例えば、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、グアニジニウム基の増加につれて高い析出性を示すことができる。
【0049】
図11は、本明細書で記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で、非限定的な、抗ガン活性を示すことができるグラフを示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0050】
グラフ1100は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリカー(例えば第1の化学構造100又は第2の化学構造102)に48時間接触させたBT-474細胞の生存率を示す。ライン1102は、グアニジニウム化が約50%を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は2又はそれら両方)の抗ガン活性を示す。ライン1104は、グアニジニウム化が約70%を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は2又はそれら両方)の抗ガン活性を示す。ライン1106は、グアニジニウム化が約90%を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は2又はそれら両方)の抗ガン活性を示す。ライン1110は、非機能化のポリリシンポリマーの抗ガン活性を示す。非修飾のポリリシンポリマーは、約1000μg/mL以上のIC
50(細胞生存率が50%を示すポリマーの阻害濃度)を有るが、グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、著しく低いIC
50の値を有し、これはガン細胞に対するより高い細胞毒性を示す。加えて、グアニジニウム化の程度が増大すると、より高い抗ガン活性を示す。
【0051】
グラフ1112は、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、第1の化学構造100又は第2の化学構造102)に24時間接触させたHep-G2細胞の生存率を示す。ライン1114は、グアニジニウム化が約50%を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は2又はそれら両方)の抗ガン活性を示す。ライン1116は、グアニジニウム化が約90%を有するグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマー(例えば、
図1又は2又はそれら両方)の抗ガン活性を示す。ライン1118は、非機能化のポリリシンポリマーの抗ガン活性を示す。グアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、非修飾のポリリシンポリマーよりも著しく低いIC
50の値を有しており、これはガン細胞に対するより高い細胞毒性を示す。加えて、グアニジニウム化の程度が増大すると、より高い抗ガン活性を示す。例えば表4は、本明細書に記載したグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーのIC
50の値を示す。
【0052】
【0053】
図12は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で、非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーによる1つ又はそれ以上の病原体の阻害に関わることができる方法1200のフロー図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0054】
1202で、方法1200は、病原体に苦しむ患者への1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーのMICを投与することを含むことができる。病原体は、例えばグラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、酵母など又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
1204で、方法1200は、病原体の1つ又はそれ以上の細胞を、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーに接触させることにより阻害することを含むことができ、ここで、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上のペンダント化したグアニジニウム官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、第1の化学構造100又は、第2の化学構造102又はそれら両方により特徴づけることができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、1204の阻害は、細胞膜を通過する1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーのトランスロケーション又は細胞のサイトゾル内での1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーの析出又はこれら両方を介した、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーにより容易にすることができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、タンパク、酵素又は遺伝子又はこれらの組み合わせといった、細胞の1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーと相互作用又は析出又はそれら両方を可能とする。
【0056】
種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、さらに、1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーを含むコアセルベート複合体内に含まれることができる。1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーは、例えばスルホン酸基、カルボキシル基、又はリン酸基又はそれらの組み合わせといった、1つ又はそれ以上のペンダント化されたアニオン性官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーは、化学構造500により特徴づけることができる。
【0057】
1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上の抗菌剤を含むコンビネーション・セラピーにおいて含まれることができ、ここで、抗菌ポリマーは、抗菌剤の抗菌活性を向上させることができる。例えば、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーの標的とされる1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーは、1つ又はそれ以上の抗菌剤の1つ又はそれ以上の機能に対して応答することができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗菌剤の抗菌活性が、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーが1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーを阻害(例えば結合又は析出又はそれら両方を通して)することにより、向上することができる
【0058】
図13は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーによる1つ又はそれ以上の病原体の阻害に関わることができる方法1300のフロー図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0059】
1302で、方法1300は、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーを合成することを含み、この1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上のペンダント化されたグアニジニウム官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、第1の化学構造100又は、第2の化学構造102又はそれら両方により特徴づけることができる。種々の実施形態では、1302の合成は、1つ又はそれ以上の第1の重合スキーム200又は第2の重合スキーム202又はそれらの両方の1つ又はそれ以上の特徴にしたがって遂行することができる。
【0060】
加えて、1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体又はコンビネーション・セラピー又はそれら両方へと組み込むことができる。例えば、1304で、方法1300は、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーを、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化したポリリシンポリマーを有する1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体へと組み込むことを含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化されたポリリシンポリマーは、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、又はリン酸基又はそれらの組み合わせといった、1つ又はそれ以上のペンダント化されたアニオン性基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化されたポリマーは、第3の化学構造500により特徴づけることができる。種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーの毒性は、1304での組み込みで低減させることができる。
【0061】
他の実施例では、1306において方法1300は、1つ又はそれ以上の他の抗菌剤(例えば、抗微生物剤)と共に1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーに対し、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーを組み込むことを含む。例えば、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上の他の抗菌剤の抗菌活性を向上させることができる。例えば、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーにより標的とされた1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーは、1つ又はそれ以上の抗菌剤の1つ又はそれ以上の機能を阻害することに応答することができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗菌剤(例えば、抗微生物剤)の抗菌活性は、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーによる1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーの阻害(例えば、結合又は析出又はそれら両方を介して)により向上させることができる。1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体又はコンビネーション・セラピー又はこれら両方に組み込むことができる。
【0062】
1308で、方法1300は、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーと、1つ又はそれ以上の病原体とを接触させることにより、1つ又はそれ以上の病原体を阻害することを含む。病原体は、例えばグラム陽性菌、グラム陰性菌、真菌、酵母など又はこれらの組み合わせを含むことができる。1つ又はそれ以上の実施形態においては、1308での阻害は、細胞膜を通過する1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーのトランスロケーション又は細胞のサイトゾル内での1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーの析出又はこれら両方を介する1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーにより容易にすることができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、タンパク、酵素又は遺伝子又はこれらの組み合わせといった、細胞の1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーと相互作用又は析出又はそれら両方を可能とする。ここで、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーは、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーに組み込むことができ、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーにより遂行される、1つ又はそれ以上のトランスロケーション機構は、1つ又はそれ以上の他の抗菌剤の活性を向上させることができる。
【0063】
図14は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーによる1つ又はそれ以上のガン細胞の阻害に関わることができる方法1400のフロー図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0064】
1402で、方法1400は、ガンに苦しむ患者への1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーのMICを投与することを含むことができる。ガンは、例えばBT-474又はHep-G2又はそれら両方を含むことができる。
【0065】
1404で、方法1400は、ガンの1つ又はそれ以上の細胞を、1つ又はそれ以上のポリマーに接触させることにより阻害することを含むことができ、ここで、1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上のペンダント化したグアニジニウム官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のポリマーは、第1の化学構造100又は、第2の化学構造102又はそれら両方により特徴づけることができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、1404の阻害は、細胞膜を通過する1つ又はそれ以上のポリマーのトランスロケーション又は細胞のサイトゾル内での1つ又はそれ以上のポリマーの析出又はこれら両方を介する1つ又はそれ以上のポリマーにより容易にすることができる。これにより、1つ又はそれ以上のポリマーは、タンパク、酵素又は遺伝子又はこれらの組み合わせといった、細胞の1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーと相互作用又は析出又はそれら両方を可能とする。
【0066】
種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上のポリマーは、さらに、1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーを含むコアセルベート複合体内に含まれることができる。1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーは、例えばスルホン酸基、カルボキシル基、又はリン酸基又はそれらの組み合わせといった、1つ又はそれ以上のペンダント化されたアニオン性官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のアニオン性ポリマーは、化学構造500により特徴づけることができる。
【0067】
1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上の抗ガン剤を含むコンビネーション・セラピーにおいて含ませることができ、ここで、ポリマーは、抗ガン剤の抗ガン活性を向上させることができる。例えば、1つ又はそれ以上のポリマーの標的とされる1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーは、1つ又はそれ以上の抗ガン剤の1つ又はそれ以上の機能に対して応答することができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗ガン剤の抗ガン活性が、1つ又はそれ以上のポリマーが1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーを阻害(例えば結合又は析出又はそれら両方を通して)することにより、向上することができる
【0068】
図15は、本明細書に記載した1つ又はそれ以上の実施形態による、実施例で、非限定的な、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーによる1つ又はそれ以上の病原体の阻害に関わることができる方法1500のフロー図を示す。本明細書で記載する他の実施形態に使用される類似の要素の反復的な説明は、簡略化の目的で省略する。
【0069】
1502で、方法1500は、1つ又はそれ以上のポリマーを合成することを含み、この1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上のペンダント化されたグアニジニウム官能基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシンポリマーを含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のポリマーは、第1の化学構造100又は、第2の化学構造102又はそれら両方により特徴づけることができる。種々の実施形態では、1502の合成は、1つ又はそれ以上の第1の重合スキーム200又は第2の重合スキーム202又はそれらの両方の1つ又はそれ以上の特徴にしたがって遂行することができる。
【0070】
加えて、1つ又はそれ以上の実施形態においては、1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体又はコンビネーション・セラピー又はそれら両方へと組み込むことができる。例えば、1504で、方法1500は、1つ又はそれ以上のポリマーを、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化したポリリシンポリマーを有する1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体へと組み込むことを含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化されたポリリシンポリマーは、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基、又はリン酸基又はそれらの組み合わせといった、1つ又はそれ以上のペンダント化されたアニオン性基で機能化された1つ又はそれ以上のポリリシン構造を含むことができる。例えば、1つ又はそれ以上のアニオン性基で機能化されたポリマーは、第3の化学構造500により特徴づけることができる。種々の実施形態においては、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーの毒性は、1404の組み込みにより低減させることができる。
【0071】
1つ又はそれ以上の実施形態においては、1506で、方法1500は、1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上の抗ガン剤を含むコンビネーション・セラピーにおいて含まれることができる。1つ又はそれ以上のポリマーは、抗ガン剤の抗ガン活性を向上させることができる。例えば、1つ又はそれ以上のポリマーの標的とされる1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーは、1つ又はそれ以上の抗ガン剤の1つ又はそれ以上の機能に対して応答することができる。これにより、1つ又はそれ以上の抗ガン剤の抗ガン活性が、1つ又はそれ以上のポリマーによる、1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーを阻害(例えば結合又は析出又はそれら両方を通して)することにより、向上することができる。1つ又はそれ以上の実施形態では、1つ又はそれ以上のグアニジニウムで機能化したポリリシンポリマーは、1つ又はそれ以上のコアセルベート複合体又はコンビネーション・セラピー又はこれら両方に組み込むことができる。
【0072】
1508で、方法1500は、1つ又はそれ以上のポリマーと、1つ又はそれ以上のガン細胞とを接触させることにより、1つ又はそれ以上のガン細胞を阻害することを含む。ガンは、例えばBT-474細胞又はHep-G2細胞又はこれら両方を含むことができる。1つ又はそれ以上の実施形態においては、1508での阻害は、細胞膜を通過する1つ又はそれ以上のポリマーのトランスロケーション又は細胞のサイトゾル内での1つ又はそれ以上のポリマーの析出又はこれら両方を介する1つ又はそれ以上のポリマーにより容易にすることができる。これにより、1つ又はそれ以上のポリマーは、タンパク、酵素又は遺伝子又はこれらの組み合わせといった、細胞の1つ又はそれ以上のサイトゾル・メンバーと相互作用又は析出又はそれら両方を可能とする。ここで、1つ又はそれ以上のポリマーは、1つ又はそれ以上のコンビネーション・セラピーに組み込むことができ、1つ又はそれ以上の抗菌ポリマーにより遂行される、1つ又はそれ以上のトランスロケーション機構は、1つ又はそれ以上の他の抗ガン剤の活性を向上させることができる。
【0073】
本開示にわたり、用語“又は”は、排他的な“又は”ではなく、包括的な“又は”を意味することを意図する。すなわち、他の言及がない又は文脈から明らかではない限り、“Xは、A又はBを使用する。”は、如何なる普通の包括的な交換を意味することを意図する。すなわち、XはAを使用し;Xは、Bを使用し;又はXはA及びBを使用する場合、そこから“Xは、A又はBを使用する。”が、上述した例の何れの下でも満たされる。さらに、対象とする明細書及び添付する図面において使用する冠詞“a”及び“an”は、単一形態を指すことについて他の特定がない又は文脈から明らかでない限り、一般に、“1つ又はそれ以上”を意味するものと解釈されるべきである。本明細書で使用するように、用語“実施例”又は“例示的”又はそれらの両方は、実施例、例、又は例示として提供することを意味するために使用される。疑義を避けるべく、本明細書で説明した主題は、そのような実施例により限定されない。加えて、“実施例”又は“例示的”又はそれら両方として本明細書で説明した如何なる特徴又は設計でも、他の特徴又は設計を超える好ましい又は効果的であると解釈される必要はないし、当業者に知られた等価的な例示的構造及び技術を排除することを意味するものではない。
【0074】
当然ながら、本開示を記述する目的として、コンポーネント、製品又は方法のすべての想定できる組み合わせ全部を記述することは不可能であるが、当業者は、本開示の多くのさらなる組み合わせ及び置換が可能であることを認識することができる。さらに詳細な説明、請求項、付録及び図面において使用される、“含む”、“有する”、“所有する”などは、請求項における移記的なものとして用いられる場合に“備える”が解釈されるように、用語“備える”のような仕方で包括的であることを意図する。種々の実施形態の説明は、例示目的で提示されたものであり、開示した実施形態を排他的に又は限定的とすることを意図するものではない。多くの修正及び変更は、開示された実施形態の範囲から逸脱することなく当業者において自明である。本明細書において使用される用語は、実施形態の原理、市場において見出される技術を超えた実際的な用途又は技術的改善を最良に説明するため、又は本明細書において開示された実施形態を当業者が理解することができるようにするため、選択されたものである。
【図 】