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特許7563854大容量、コンパクトなリチウム薄膜バッテリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】大容量、コンパクトなリチウム薄膜バッテリー
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20241001BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20241001BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M10/0585
H01M4/62 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022517351
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 IB2020057793
(87)【国際公開番号】W WO2021059045
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】16/578,461
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】アンドリー、ポール
(72)【発明者】
【氏名】レワンドフスキー、エリック、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】トーター、ダナ、アレクサ
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/065573(WO,A1)
【文献】特開2017-103222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-4/62
H01M 10/058-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜バッテリーを形成するための方法であって、前記方法は、
基板にトレンチを形成すること、
前記基板の頂部表面上に、前記トレンチの側壁に整列する側壁を有するステンシルを堆積すること、
前記トレンチに、前記ステンシルと直接接触するカソード層を堆積すること、及び
前記トレンチに前記カソード層を圧入して前記カソード層の厚さを減少させること
を含む、方法。
【請求項2】
さらに、
前記トレンチの側壁及び底部に沿ってカソード・コレクタ層を堆積すること、
前記トレンチに前記カソード層を堆積すること、及び
前記カソード層を前記トレンチに圧入して、前記カソード層の厚さを減少すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カソード層を前記トレンチに堆積することは、前記ステンシルの側壁の部分に沿って前記カソード層を堆積することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カソード層を前記トレンチに圧入することは、加圧ヘッドを使用して前記カソード層に等方的な圧力を印加することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
さらに、
前記カソード層の頂部上に電解質層を堆積すること、
前記電解質層の頂部上にアノード層を堆積すること、及び
前記アノード層の頂部上にアノード・コレクタ層を堆積すること
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記カソード層にイオン性液体電解質を添加することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、多重ドープされたシリコンであり、前記多重ドープしたシリコンである基板の結果として、前記基板に背面のカソード接点をパターニングする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
薄膜バッテリーを形成するための方法であって、前記方法は、
基板に、バッテリーの異なる1つにそれぞれが対応する複数のトレンチを形成すること、
前記基板に、複数の前記トレンチのそれぞれの間に複数のダイシング・チャネルをそれぞれ形成すること、及び
請求項1~7のいずれか1項に記載された方法により前記バッテリーをそれぞれ形成すること
を含む方法。
【請求項9】
それぞれの前記ダイシング・チャネルは、反応性イオンエッチングを使用して前記基板に形成される、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね薄膜バッテリーに関し、より具体的には、高容量でコンパクトなリチウム薄膜バッテリーを形成するための方法及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な薄膜リチウム・バッテリーは、これらに限定されないが、カソード、セパレータ及びアノードを含む材料の異なる層を含む。そのようなバッテリーの容量は、一般にカソード層の厚さ及び構造により制限される。このため、厚いカソード層は大容量のバッテリーと解釈することができるが、薄いカソード層は、低容量のバッテリーと解釈することができる。さらに、層は、スパッタリング又はプラズマCVDといった薄膜真空堆積技術を使用して堆積される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の1つの実施形態によれば、薄膜バッテリーを形成するための方法が提供される。本方法は、基板にトレンチを形成すること、基板の頂部表面にステンシルを堆積することであって、ここではステンシルがトレンチに整列され、トレンチ内にカソードを堆積することであって、ここではカソード層がステンシルと直接接触しており、及びカソード層をトレンチ内に圧入してカソード層の厚さを減少させることを含むことができる。トレンチにカソード層を圧入することは、加圧ヘッドを使用してカソード層に等方的な圧力を印加することを含む。ステンシルは、高温ポリマー又は低温ポリマーから製造することができる。本方法は、側壁及びトレンチの底部に沿ってカソード・コレクタ層を堆積すること、カソード層をトレンチの内部に堆積すること、及びトレンチにカソード層を圧入して、カソード層の厚さを減少させることを含むことができる。本方法はまた、カソード層の頂部に電解層を堆積させること、電解層の頂部にアノード層を堆積させること、及びアノード層の頂部にアノード・コレクタ層を堆積することを含むことができる。
【0004】
本発明のもう1つの実施形態によれば、複数の薄膜バッテリーを形成する方法が提供される。本方法は、基板に複数のトレンチを形成すること、基板に複数のダイス・チャネルを形成することであって、ここではそれぞれの複数のダイス・チャネルが複数のトレンチのそれぞれの間に形成されており、基板の頂部表面にステンシルを堆積することであって、ここでステンシルがトレンチに整列されており、複数のトレンチ内にカソード層を堆積することであって、ここで、カソード層が、ステンシルに直接接触し、及びカソード層を複数のトレンチ内に圧入してカソード層の厚さを減少させることを含むことができる。
【0005】
本発明のもう1つの実施形態によれば、構造体が提供される。本構造体は、基板に沿って配置されたカソード・コレクタ層及び基板内に埋め込まれたカソード層を含むことができ、ここではカソード層の頂部表面は、カソード・コレクタ層と実質的に面一である。本構造体は、電解層の上部に配置されたアノード層を含み、ここでは電解層がアノード層からカソード層を分離しており、アノード層の頂部に配置されたアノード・コレクタ、及びアノード・コレクタ層の頂部に配置される絶縁層を含むことができる。
【0006】
本発明の以下の実詳細な説明は、実施例の目的のために提供され、本発明をそれのみに限定することを意図しておらず、添付の図面と共に組み合わせにおいて最良に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、例示的実施形態により基板内に形成されたトレンチを示す断面図である。
図2図2は、例示的実施形態により堆積されたカソードを示す断面図である。
図3図3は、例示的実施形態によるカソードの頂部に整列された加圧ヘッドを示す断面図である。
図4図4は、例示的実施形態による研磨されたカソードを示す断面図である。
図5図5は、例示的実施形態による、研磨されたカソード層の頂部上に追加の層を堆積させることを示す断面図である。
図6図6は、例示的実施形態による堆積層の頂部を被覆するカバーを示す断面図である。
図7図7は、例示的実施形態による複数のバッテリーを示す断面図である。
図8A図8Aは、例示的実施形態による複数のバッテリーを示す断面図である。
図8B図8Bは、例示的実施形態による複数のバッテリーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は、スケール通りである必要はない。図面は、単に例示的な概要を示すに過ぎず、本発明の特定のパラメータを図示することを意図しない。図面は、本発明の典型的な実施形態を図示することのみを意図する。図面において、類似の符号は、類似の要素を表す。
【0009】
請求項の構造体及び方法の詳細な実施形態が本明細書において開示されるが、開示された実施形態は、種々の形態において実施することができる請求された構造体及び方法の単なる例示であることを理解することができる。本発明は、しかしながら、多くの異なる形態において実施することができ、かつ本明細書で述べる例示的な実施形態に限定するものとして考えられるべきではない。むしろ、これらの例示的実施形態は、本開示を全体として完全とし、かつ当業者に対して本発明の範囲を完全に伝えるために提供される。本明細書において、周知の特徴及び技術の詳細は、本実施形態を不必要に不明確化することを避けるために省略することができる。
【0010】
以下の説明の目的のため、用語“上側”、“下側”、“右”、“左”、“垂直”、“水平”、“頂部”、“底部”、及びそれらの派生語は、図示する図面において配置されるように、開示される構造体及び方法に関連する。用語、“重なる”、“頂上”、“頂部上”、“上に配置された”、又は“頂上に配置された”は、第1の構造といった第1の要素が第2の構造といった第2の要素の上に存在することを意味し、ここで、界面構造といった介在要素は、第1の要素と、第2の要素との間に存在することができる。用語“直接接触”は、第1の構造といった第1の要素及び第2の構造といった第2の要素が如何なる中間的な導電、絶縁、又は半導体層無しに、2つの要素の間の界面で結合されることを意味する。
【0011】
本発明の実施形態の提示を不明確にしないという趣旨において、後述する詳細な説明においては、本技術において知られたいくつかの処理ステップ又は操作は、提示及び例示目的のために互いに組み合わせることができ、かついくつかの例においては、詳細に説明されない場合がある。他の例においては、本技術において知られたいくつかの処理ステップ又は操作は全く説明されない可能性がある。むしろ後述する説明は、本発明の種々の実施形態の特有の特徴又は要素に焦点を当てたものであることが理解されるべきである。
【0012】
本発明の実施形態は、一般に大容量、コンパクトなリチウム薄膜バッテリーに関し、より具体的には、小さなシール表面積を有する大容量のリチウム薄膜バッテリーを形成するための構造体及び方法に関する。
【0013】
典型的には、薄膜リチウム・バッテリーは、異なる材料から製造され、ここで、それぞれの材料は、互いの頂部上に重ね合わされる。そのような層は、これらに限定されることはないが、カソード・コレクタ層、カソード層、電解質層、アノード層、アノード・コレクタ層及び遮蔽層を含むことができる。さらに、従来の薄膜リチウム・バッテリーの容量は、一般にカソード層の厚さ及び構造により制限されていた。そのため、厚いカソード層は、大容量と解釈できるが、薄いカソードは、低容量と解釈することができる。
【0014】
一般に、これらの層は、スパッタリングといった異なる真空堆積技術を使用して堆積される。しかしながら、これらの真空堆積技術は、それらの堆積速度により制限される。そのため、薄膜リチウム・バッテリーを製造するためにスパッタリング堆積技術を使用することは、時間を浪費し、高価である。さらに、大容量のバッテリーを製造する場合に、より時間を浪費し、かつ高価であるが、その理由は、そのようなバッテリーは、厚いカソードを堆積させるためより長いスパッタリング時間に換算される、厚いカソードを必要とするからである。加えて、リチウムは、高度に反応性なので、そのようなバッテリーは、水又は酸素と言った汚染源からリチウム層を保護するために大型のシールを要求する。この結果、製造されるバッテリーは、また、10mm~1000mmの間の表面積を有する物理的に大型となり、ここで、シールそれ自体の表面積は、少なくとも1mmである。
【0015】
技術の進歩に伴い、インターネット・オブ・シングス・センサ及びスマート・デバイスの新たな出現は、これらのセンサ及びスマート・デバイスに電力供給するために、10mmよりも小さい表面積を有するバッテリーを要求する可能性がある。したがって、大容量を有し、かつシールを含む全表面積が10mm、好ましくは1mmよりよりも小さい全表面積を有する薄膜リチウム・バッテリーを開発する必要がある。加えて、現在の薄膜技術を使用して達成することができるものをはるかに下回るレベルにまで、プロセッシング・コストを低下させる必要がある。このため、本発明の実施形態は、プロセッシング時間及びコストを削減しながら、10mm未満の全表面積を有する大容量のバッテリーを製造するために構造体及び方法を提供する。
【0016】
ここで、図1を参照すると、実施形態による構造体100が示されている。構造体100は、基板102と、カソード・コレクタ層104と、ステンシル106と、トレンチ108とを含むことができる。基板102は、シリコン・ベースの材料を含むことができる。基板102のために好適な例示的な実施例のシリコン・ベースの材料は、これらに限定されることはなく、シリコン、シリコン、シリコン-ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム-カーボン、シリコン-カーボン、及びそれらの多層のものを含むことができる。実施形態においては、基板102は、背面電極接続を可能とするため、多重ドープされたシリコンとすることができる。
【0017】
基板102は、既知のリソグラフィー技術を使用してパターン付けされて、トレンチ108を形成することができる。基板102は、また、エッチングされてトレンチ108を形成することもできる。例えば、反応性イオンエッチングは、基板102内にトレンチ108をエッチングするために使用することができる。一度トレンチ108が形成されると、カソード・コレクタ層104が基板102の頂部面上に、かつトレンチ108の側壁及び底部に沿ってコンフォーマルに堆積される。カソード・コレクタ層104は、例えば、蒸着、化学的気相堆積、原子層堆積、スパッタリング又は他の好適な堆積プロセスといった異なる堆積プロセスを使用して堆積することができる。
【0018】
カソード・コレクタ層104は、例えば、銅、銀、金、白金又は他の如何なる非反応性材料といった非反応性材料から形成することができる。カソード・コレクタ層104は、電気的に導電性であり、かつバリヤとして機能する。電流経路をカソード(110)に提供することに加え、カソード・コレクタ層104は、基板102及び環境内に見出され、カソード・コレクタ層104の頂部表面の頂部上に堆積される可能性のある他の層に集まった不純物を阻止することができる。
【0019】
ステンシル106は、本明細書で上述したように既知の好適な堆積技術を使用してカソード・コレクタ層104の頂部表面上に堆積させることができる。実施形態においては、ステンシル106は、カソード・コレクタ層104の頂部表面及びトレンチ108の側壁及び底部上に堆積される。一度ステンシル106が堆積されると、ステンシル106は、既知の技術を使用してパターン付けされて、トレンチ108内に予め堆積されたステンシル106を除去することができる。この結果、トレンチ108は、カソード・コレクタ層104で囲まれ、かつその内部には、如何なるステンシル106も有しない。ステンシル106は、基板102の頂部表面の頂部上のカソード・コレクタ層104の頂部表面上に残るだけである。
【0020】
ステンシル106は、さらに基板102内にパターン付けされたトレンチ108を規定する。ステンシル106がカソード・コレクタ層104の頂部表面上に残るのみなので、ステンシル106は、カソード・コレクタ層104の頂部表面及び基板102の上側のトレンチ108の側壁に延びる。この結果、トレンチ108に最も近いステンシル106の側壁は、実質的にトレンチ108の側壁に整列する。ステンシル106は、また、カソード・コレクタ層104を、バッテリー製造の後続するプロセッシング・ステップから保護する。
【0021】
ステンシル106は、また、除去可能であり、かつ異なるポリマーから製造することができる。例えば、低温加圧プロセッシング・ステップがカソード層を形成するために続けて使用される場合、ステンシル106は、高温加圧可能なポリマーから製造される。しかしながら、高温加圧プロセッシング・ステップがカソード層を形成するために続いて使用される場合、ステンシル106は、低温ポリマーから形成される。
【0022】
ここで図2を参照すると、ステンシル106がカソード・コレクタ層104の頂部表面上に堆積された後、カソード層110がトレンチ108内に堆積される。カソード層110は、例えば、LiCO、LiMn、LiFePO又は他の好適なカソード材料(例えば、金属酸化物)といった、リチウム含有材料から製造することができる。一度堆積されると、カソード層110は、カソード・コレクタ層104の頂部表面上であるがステンシル106の頂部表面よりも下に延在する。そのようにして、カソード層110は、ステンシル106により生成される側壁の内側においてトレンチ108内に収容され、かつステンシル106の側壁の部分と直接接触する。実施形態においては、カソード層110は、カソード・コレクタ層104の頂部表面上に延びるので、本明細書の図3~4を参照して説明される、さらなる処理の後、カソード・層110は、基板102の頂部表面に沿って延びるカソード・コレクタ層104の頂部表面と実質的に面一とすることができ、カソード層110の最初の密度及び最終的な所望する密度を説明する。
【0023】
ここで図3を参照すると、加圧ヘッド112がカソード層110の直上に配置されている。加圧ヘッド112は、例えば、シリコン、又は他の如何なる好適な材料といった、基板102と同一の材料で形成することができる。加圧ヘッド112の位置決めは、カソード層110の頂部表面の上に延びるステンシル106の側壁により支援される。この結果、加圧ヘッド112は、ステンシル106によって形成される領域の間において、カソード層110の直上にフィットする。
【0024】
一度加圧ヘッド112が位置決めされると、加圧ヘッド112は、基板102内にパターン付けされたトレンチへとカソード層110を等方的に圧入するために使用される。カソード層110が先ずトレンチ108内に堆積され、カソード層110は、トレンチ108にフィットして、カソード・コレクタ層104の頂部表面の上であるが、ステンシル106の頂部表面の下で延びる。この結果、トレンチ108をちょうど充填するよりも必要以上のカソード層110が堆積される。これは、カソード層110が基板102内にパターン付けされたトレンチ内に圧入されて、その厚さを減少することで達成される。
【0025】
カソード層110の等方的な加圧は、低温又は高温の何れかで行うことができる。実施形態においては、カソード層110は、ステンシル106が適応できる低温で等方的に加圧又は圧縮されることができる。一度カソード層110が圧縮されると、ステンシル106が除去されて、カソード層110は、さらに加圧され、加熱される。等方的な加圧の間、加圧ヘッド112は、すべての方向に等しい圧力を印加し、かつカソード層110を下へと押し付けてカソード層110を稠密化する。
【0026】
一般に、スパッタリングといった堆積技術を使用してカソードを堆積させる場合、その後カソードの頂部に追加の層を堆積させる前に研磨ステップが必要とされる。スパッタリング堆積ステップは、カソードに対して不純物を導入する可能性がある。カソード層110を圧縮するために加圧ヘッド112を使用することは、不純物の無い密なカソード層110を生成する。加圧ヘッド112を使用してそれを圧縮した後、カソード層110は、引き続いてパターン付けされ、シールされることができる清浄な界面を有する。
【0027】
加えて、従来のスパッタリング堆積プロセスのようにではなく、加圧ヘッド112を使用してカソード層110を圧縮することは、カソード層110の多孔性を制御することを可能とする。カソード層110の多孔性は、堆積されたカソード層110の特性を制御することにより制御することができる。例えば、カソード層110の特性とは、カソード層110を形成する粒子の形状を参照する。
【0028】
カソード層110の多孔性は、また、加圧ヘッド112によりカソード層110に対して印加される圧力の量によっても制御することができる。例えば、カソード層110の同一の厚さを両方のシナリオにおいて堆積する。第1のシナリオにおいては、カソード層110に対してより大きな圧力を加圧ヘッド112により印加する場合、カソード層110は、より密に充填することができる。しかしながら、第2のシナリオにおいては加圧ヘッド112により小さな圧力が印加される場合、カソード層110は、充填されるがそれはより密度が小さく、かつより多孔性である。
【0029】
カソード層110の多孔性は、カソード層110の圧縮期間によって制御することができる。例えば、加圧ヘッド112によるカソード層110の圧縮期間は、カソード層110の異なる密度をもたらす。例えば、カソード層110の同一の厚さが堆積される。圧縮の期間が短い場合、カソード層110は、加圧期間がより長い場合に比較してより低密度である。
【0030】
カソード層110の多孔性はまた、カソード層110が圧縮される温度によっても制御することができる。焼結プロセスの下で、カソード層110は圧縮することができる。これは、カソード層110を形成する粒子を互いに接着及び結合させて、最初にトレンチ(108)内に堆積されたカソード層110よりもより低い多孔性のカソード層110を形成する。
【0031】
加えて、カソード層110は、バッテリーの効率を増大させる添加物と組み合わされる。実施形態においては、カソード層110は、低蒸気圧のイオン性液体電解質と組み合わされて、カソード層110の性能を増大することができる。もう1つの実施形態においては、カソード層110は、導電性カーボンと組み合わせることができ、これはまた、その電気的導電性を増加させることによりカソード層110の性能を増大する。実施形態においては、カソード層110を圧縮するためにホット・プレスを使用する場合、その後、毛管力を介してイオン性液体電解質を、圧縮されたカソード層110へと流すことにより、イオン性液体電解質をカソード層110に対して追加することができる。代替的な実施形態においては、カソード層110を圧縮するためにコールド・プレスを使用する場合、その後イオン性液体電解質は、カソード層が加圧ヘッド112で圧縮される前にカソード層110に追加することができる。
【0032】
ここで、図4を参照すると、カソード層110が圧縮されるので、カソード層110の頂部表面は実質的に基板102の頂部表面に沿って延びるカソード・コレクタ層104の頂部表面と実質的に面一である。これを十分に保証するため、カソード層110は、加圧ヘッド112により圧縮された場合にカソード層110が実質的にカソード・コレクタ層104に実質的に面一となるように堆積される。一般に、リチウム・バッテリーを製造する場合、カソード層は、例えばスパッタリングといった堆積プロセスを使用して、カソード・コレクタ層104の頂部に堆積される。本明細書で上述するように、カソード層110が厚くなればなるほど、バッテリーの容量は大きくなる。したがって、これは厚いカソード層110を有するバッテリーを製造するために有効である。しかしながら、従来の堆積プロセスは、時間を浪費し、かつ高価である。カソード層110をトレンチ108(図1)内にホット又はコールド・プレスするために加圧ヘッド112を使用することは、従来の技術を使用して堆積させる場合によりも、所望する厚さ及び密度のカソード層110を生成し、さらにバッテリーの容量を増大する。
【0033】
基板102内にカソード層110を埋設することはまた、バッテリーのシール面積を減少する。本明細書で上述したように、従来のバッテリーを製造する場合、カソード層は、カソード・コレクタ層の頂部上に堆積され、かつカソード・コレクタ層は、基板の頂部に堆積される。この結果、従来のバッテリーは、シールされる必要のある積み重なった層を有する。シールは、カソードの形状に適合するように、より厚くされる必要がある。これが今度はより大きなシール面積を要求する。さらに、高効率のバッテリーを製造するために、カソード層の厚さが増加する。これは、層の追加の積み重なりが一層高くなるので、いっそう大きなシール面積を説明する。より高い層の積み重なりで、層を汚染源の環境的ソースから保護するため、シール面積が増加する。
【0034】
実施形態においては、カソード層110は、もはや基板102の頂部表面に座していない。そうではなく、カソード層110は、基板102内に埋設され、カソード層110の頂部表面は、カソード・コレクタ層104の頂部表面と実質的に面一である。カソード層110はもはや基板102の頂部に堆積されないので、カソード層が基板の頂部上に堆積される従来のバッテリーを製造する場合の層の積み重なりのような丈はない。層のより低い積み重なりは、より小さなシール面積を説明する。加えて、より厚いカソード層110を有するバッテリーの製造は、カソード層110が基板102内にさらに埋め込まれて、カソード層110がカソード・コレクタ層104の頂部表面の上まで延びないので、積み重なりの高さを増加させない。
【0035】
実施形態においては、一度カソード層110が等方的に圧縮されると、カソード層110の頂部表面を平滑化し、かつそれをさらなる処理ついて準備させるため、表面平坦化処理を使用することができる。
【0036】
ここで図5を参照すると、一度カソード層110が圧縮されると、追加の層がカソード層110及びカソード・コレクタ層104の頂部表面上に堆積される。追加の層の堆積は、標準的な技術を使用して達成することができる。追加の層は、これらに限定されることはないが、電解質層114、アノード層116、アノード・コレクタ層118及び遮蔽層120を含む。
【0037】
電解質層114は、気密を破ることなく、in-situプロセッシングを提供する固体電解質を含む。実施形態においては、電解質層114は、他の材料も使用することはできるが、例えばLiPON、又はスピン塗布ゾルゲルといった薄膜固体フィルムを含むことができる。電解質層は、蒸着、化学的気相堆積法、スパッタリング、又は他の好適な堆積プロセスにより堆積することができる。電解質層114は、カソード層110と、アノード層116の間で、層110,116を分離するように、カソード層110の頂部表面に堆積することができる。電解質層114は、カソード層110と、アノード層116との間でイオン導電性を提供することができる。
【0038】
アノード層116は、電解質層114の頂部表面に堆積することができる。アノード層116は、リチウム、リチウム合金、又は他の如何なる好適な材料で形成することができる。アノード層116は、蒸着、化学的気相堆積法、スパッタリング又は他の好適な堆積プロセスによって堆積することができる。
【0039】
アノード・コレクタ層118は、アノード層116の頂部表面上に堆積することができる。アノード・コレクタ層118は、アノード層116のための電流経路を提供する。アノード・コレクタ層118は、例えば、銅、銀、金、白金、又は他の如何なる好適な材料といった非反応性材料から形成することができる。アノード・コレクタ層118は、蒸着、化学的気相堆積法、スパッタリング又は他の好適な堆積プロセスによって堆積することができる。実施形態においては、アノード・コレクタ層118は、基板102と直接接触してシールを形成することができる。実施形態においては、アノード・コレクタ層118及びカソード・コレクタ層104は、両方ともシールから露出するが、互いに直接接触しない。
【0040】
遮蔽層120は、アノード・コレクタ層118の頂部表面上に堆積することができる。遮蔽層120は、例えばアルミニウム、又は如何なる他の好適な材料といった導電性材料から製造することができる。遮蔽層120は、外部環境から、構造体の電気的な遮蔽性を維持することができる。
【0041】
ここで、図6を参照すると、キャップ層122が遮蔽層120の頂部表面上に堆積される。キャップ層122は、基板102を形成するのと同一のシリコン・ベースの、例えばシリコン、シリコン、シリコン-ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム-カーボン、シリコン-カーボン及びそれらの多重層といった材料から形成することができる。キャップ層122は、また、バッテリーを劣化させる酸素、水、及び他の種に対する低透過性を示す材料の、如何なる組み合わせから形成することができる。そのような材料の例示的な実施例は、これらに限定されることはないが、金属フィルム、多層金属フィルム、絶縁体フィルム、多層絶縁体フィルム、又は多層の金属及び絶縁体フィルムを含むことができる。キャップ層122は、化学的気相堆積法、スパッタリング、蒸着、又は如何なる他の好適な堆積プロセスによって形成することができる。
【0042】
キャップ層122は、カソード・コレクタ層104,カソード層110,電解質層114,アノード層116,アノード・コレクタ層118及び遮蔽層120を被覆する。キャップ層122は、これらの層を環境的な要素への暴露、腐食、又は損傷から保護する。実施形態では、キャップ層122は、遮蔽層120の頂部に堆積される。代替的な実施形態では、キャップ層122は、遮蔽層120の頂部上に堆積されない。そうではなく、遮蔽層120は、構造体100の最上層である。しかしながら、キャップ層122で遮蔽層120を含む他の層を被覆することは、キャップ層122が遮蔽層120よりも良好に環境的な要素から遮蔽して、構造体100の棚段寿命を増加させるので、より利益的である。
【0043】
従来のバッテリーは、カソード又はアノードにアクセスするために、典型的には絶縁層又はセパレータ層の何れも通過する分離ビアがパターン付けされる。加えて、典型的には接点がバッテリーのアノード側に形成される。実施形態においては、例えばアノード接点は、遮蔽層120を通過する分離ビアをパターニングすることにより形成することができる。しかしながら、カソード接点は、例えば多重ドープされたシリコンといった導電性のカソード基板を使用して形成することができる。導電性のカソード基板を使用する場合、カソード・コレクタ層104は、基板102とオーミック接続とすることができ、背面のオーミック金属接点のパターン付けを可能とする。背面接点は、従来のアノード側(又は前面側)の接続スキームに比較して、より小さな面積を占め、電気化学的材料のため、より大きな面積の使用を可能とする。
【0044】
ここで、図7を参照すると、構造体200が図示される。構造体200は、単一のウエハ上に横並びに製造された多数の構造体100又はバッテリーを表す。2つの構造体100のみが図示されているが、本発明の実施形態は、図1~6を参照して本明細書で説明したように、単一の基板102上に製造される複数の構造体100を想定する。
【0045】
ここで、図8A及び図8Bを参照すると、両方とも2つ以上のバッテリー(100)を有する構造体200を図示する。図8Aは、従来のスパッタリング・プロセッシングを使用して製造された構造体200を示し、図8Bは、本発明により製造された構造体200を示す。構造体200は、複数のバッテリーを含むことができ、それらのそれぞれがカソード層110を含む。バッテリー(100)の他のコンポーネントは、明確化及び理解のため、図8A及び図8Bから省略されていることに留意されるべきである。バッテリー(100)を形成した後、構造体200は、ライン124に沿って切断又はダイスされて、多数の個別的なバッテリーを製造する。本明細書で上述したように、従来のスパッタリング・プロセッシングを使用するバッテリーの製造は、環境の汚染源からシールされ、かつ保護される必要のある層の積み重なりのため、それらのカソード層110の面積に対してより大きなシール面積を有するバッテリーを生成する。加えて、より大きなシール面積は、また、個別的なバッテリーに分離する場合に構造体200を切断する間、層の一体性を保護するべき必要がある。そのため、本発明により製造されるバッテリーに比較して、従来のプロセッシングは、比較的小さなカソード層110及び比較的大きなシール面積を有するバッテリーをもたらす。
【0046】
図1~6を参照して本明細書で上述し、かつ図8Bに示されるように、カソード層110を、基板102内に埋設することにより、同一のダイシングのフットプリントを維持しながら、カソード層110のサイズが増加でき、かつシール面積が縮小/減少できる。カソード層110はもはや基板102の上には延在しないので、層の積み重なりを少なくでき、それによって個別的なバッテリーの構造体(100)の機能及び物理的一体性を維持しながら、シールを縮小する。シール面積/幅の減少したサイズの結果として、カソード層110を増大(幅/長さ)することができ、このため、バッテリーの容量が増大する。
【0047】
加えて、基板102(図1)にトレンチをエッチングする間、また、ダイシング・チャネル126を基板102に同時にエッチングすることができる。ダイシング・チャネル126は、それぞれの構造体100(図7)の間に配置することができ、かつそれぞれの構造体100の縁部を画定する。ダイシング・チャネル126は、基板を切断して単一の構造体100を形成することを支援する、基板102内の小さなチャネルである。
【0048】
本発明の実施形態は、ダイシング・チャネル126が、構造体200が個別的なバッテリー(構造体100)へと切断される際に加えられる応力を減少するために追加される。ダイシング・チャネル126は、それぞれのバッテリーがそのシール一体性を維持することを可能とする。加えて、それぞれのカソード層110は、より大きなシール面積がもはや必要ではないため、より大きく作成できる。したがって、ダイシング・チャネル126を含ませ、かつカソード層110を基板102内に埋め込むことで、本発明の実施形態は、そのシールと、カソード層110との間の比が従来のバッテリーのシールと、カソード層110との間の比に比較して減少されたバッテリーを提供する。そのようにして、バッテリーの全表面積がまた従来のバッテリーの全表面積から減少される。
【0049】
本開示の種々の実施形態の説明は、例示の目的のために提示されたが、開示された実施形態への排他又は限定を意図するものではない。多くの変更例又は変形例は、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者において自明である。本明細書で使用する用語は、本実施形態の原理、実用的用途、又は市場において見出される技術を超える技術的改善を最良に説明するため、又は本明細書において開示された実施形態を当業者の他の者が理解できるようにするために選択したものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B