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特許7563862バッテリー管理システム、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】バッテリー管理システム、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20241001BHJP
   G01R 31/367 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20241001BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20241001BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G01R31/396
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023511866
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 KR2022008407
(87)【国際公開番号】W WO2022265358
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0077048
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョル-テク
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヨン-チュル
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2021-0054407(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0066609(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0072912(US,A1)
【文献】国際公開第2011/037257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H02J 7/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックのためのバッテリー管理システムであって、
各バッテリーセルの状態パラメータを取得するセンシング回路と、
前記バッテリーパックの充電中に取得された前記状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定する制御回路と、を含み、
前記制御回路は、
前記バッテリーパックの放電中に取得された前記状態パラメータに前記SOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1放電時点における第3のSOCと第2放電時点における第4のSOCとの差である第2のSOC変化を決定し、
各バッテリーセルの前記第1のSOC変化を前記第2のSOC変化で除して各バッテリーセルの故障ファクターを決定し、
前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記故障ファクターに統計アルゴリズムを適用して基準ファクターを決定し、
各バッテリーセルの前記故障ファクターを前記基準ファクターと比較して各バッテリーセルの内部短絡故障を検出する、バッテリー管理システム。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記故障ファクターの平均または中央値と同一に前記基準ファクターを決定する、請求項に記載のバッテリー管理システム。
【請求項3】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、
前記基準ファクターに対する前記故障ファクターの比率が臨界値以下である場合、内部短絡故障であると判断する、請求項に記載のバッテリー管理システム。
【請求項4】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、
前記基準ファクターに対する前記故障ファクターの比率が以前の比率よりも臨界値以上小さい場合、内部短絡故障であると判断する、請求項に記載のバッテリー管理システム。
【請求項5】
請求項1からのうちいずれか一項に記載のバッテリー管理システムと、
前記複数のバッテリーセルを含む、バッテリーパック。
【請求項6】
請求項に記載のバッテリーパックを含む、電気車両。
【請求項7】
直列に接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックのためのバッテリー管理方法であって、
前記バッテリーパックの充電中に取得された前記複数のバッテリーセルそれぞれの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定する段階と、
前記バッテリーパックの放電中に取得された前記状態パラメータに前記SOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1放電時点における第3のSOCと第2放電時点における第4のSOCとの差である第2のSOC変化を決定する段階と、
各バッテリーセルの前記第1のSOC変化を前記第2のSOC変化で除して各バッテリーセルの故障ファクターを決定する段階と、
前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記故障ファクターに統計アルゴリズムを適用して基準ファクターを決定する段階と、
各バッテリーセルの前記故障ファクターを前記基準ファクターと比較して各バッテリーセルの内部短絡故障を検出する段階と、を含む、バッテリー管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月14日付け出願の韓国特許出願第10-2021-0077048号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、バッテリーセルの内部短絡故障を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、ノートパソコン、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急激に伸び、電気車両、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、人工衛星などの開発が本格化するにつれて、繰り返して充放電可能な高性能バッテリーに対する研究が活発に行われている。
【0004】
現在、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどのバッテリーが商用化しているが、中でもリチウムバッテリーはニッケル系のバッテリーに比べてメモリ効果が殆ど起きず充放電が自在であって、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
電気車両などのようなアプリケーションの高電圧及び大容量の要求を満たすため、直列に接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーシステム(例えば、バッテリーパック)が広く普及されている。
【0006】
このようなバッテリーシステムにおいて、幾つかのバッテリーセルの故障がバッテリーシステムの全体的な性能と安全性に悪影響を及ぼす可能性が高い。したがって、バッテリーシステムの運用において、個別バッテリーセルの故障を適切に検出することが重要である。
【0007】
バッテリーセルの多様な故障類型のうちの内部短絡故障は、火災に直間接的な影響を及ぼす主な故障である。内部短絡故障は、バッテリーセル内における副反応及び/またはバッテリーセル内への異物の浸透などに起因する。従来は複数のバッテリーセルの最小電圧と最大電圧との差及び/または休止中に観測される電圧降下の大きさを活用して各バッテリーセルの内部短絡故障を検出している。
【0008】
しかし、最小電圧と最大電圧は、内部短絡故障以外の原因(例えば、個別バッテリーセルの満充電容量、退化度、温度、内部抵抗)に大きく影響を受けるパラメータであるため、最小電圧と最大電圧との差に基づいて内部短絡故障を検出することは正確度が低い。さらに、複数のバッテリーセルが直列に接続された構造では、すべてのバッテリーセルに同じ大きさの充放電電流が流れると見なされるため、充放電電流の積算値自体からは個別バッテリーセルの内部短絡故障に関連する有用な情報を抽出し難い。
【0009】
また、休止中に観測される電圧降下の大きさに基づいて内部短絡故障を検出するには、短い場合は数時間から長い場合は数日にわたってすべてのバッテリーセルを放置しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、直列に接続された複数のバッテリーそれぞれの充電中のSOC変化及び/または放電中のSOC変化を用いて、各バッテリーの内部短絡故障を検出することができるバッテリー管理システム、バッテリーパック、電気車両及びバッテリー管理方法を提供することを目的とする。
【0011】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施形態によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組み合わせによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によるバッテリー管理システムは、直列に接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックのためのものである。前記バッテリー管理システムは、各バッテリーセルの状態パラメータを取得するように構成されるセンシング回路と、前記バッテリーパックの充電中に取得された前記状態パラメータにSOC(State of Charge:充電状態)推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定するように構成される制御回路と、を含む。前記制御回路は、前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記第1のSOC変化に統計アルゴリズムを適用して、基準ファクターを決定するように構成される。前記制御回路は、各バッテリーセルの前記第1のSOC変化及び前記基準ファクターに基づいて、各バッテリーセルの内部短絡故障を検出するように構成される。
【0013】
前記制御回路は、前記複数のバッテリーセルの前記第1のSOC変化のうちの少なくとも二つの平均または中央値と同一に前記基準ファクターを決定するように構成され得る。
【0014】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、前記基準ファクターに対する前記第1のSOC変化の比率が臨界値以下である場合、内部短絡故障であると判断するように構成され得る。
【0015】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、前記基準ファクターに対する前記第1のSOC変化の比率が以前の比率よりも臨界値以上小さい場合、内部短絡故障であると判断するように構成され得る。
【0016】
前記制御回路は、前記バッテリーパックの放電中に取得された前記状態パラメータに前記SOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1放電時点における第3のSOCと第2放電時点における第4のSOCとの差である第2のSOC変化を決定するように構成され得る。前記制御回路は、各バッテリーセルの前記第1のSOC変化を前記第2のSOC変化で除し、各バッテリーセルの故障ファクターを決定するように構成され得る。前記制御回路は、前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記故障ファクターに前記統計アルゴリズムを適用して、前記基準ファクターを決定するように構成され得る。前記制御回路は、各バッテリーセルの前記第2のSOC変化にさらに基づいて、各バッテリーセルの内部短絡故障を検出するように構成され得る。
【0017】
前記制御回路は、前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記故障ファクターの平均または中央値と同一に前記基準ファクターを決定するように構成され得る。前記制御回路は、各バッテリーセルの前記故障ファクターを前記基準ファクターと比較し、各バッテリーセルの内部短絡故障を検出するように構成され得る。
【0018】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、前記基準ファクターに対する前記故障ファクターの比率が臨界値以下である場合、内部短絡故障であると判断するように構成され得る。
【0019】
前記制御回路は、各バッテリーセルに対し、前記基準ファクターに対する前記故障ファクターの比率が以前の比率よりも臨界値以上小さい場合、内部短絡故障であると判断するように構成され得る。
【0020】
本発明の他の一態様によるバッテリーパックは、上述したバッテリー管理システムを含む。
【0021】
本発明のさらに他の一態様による電気車両は、上述したバッテリーパックを含む。
【0022】
本発明のさらに他の一態様によるバッテリー管理方法は、直列に接続された複数のバッテリーセルを含むバッテリーパックのためのものである。前記バッテリー管理方法は、前記バッテリーパックの充電中に取得された前記複数のバッテリーセルそれぞれの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定する段階と、前記複数のバッテリーセルのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの前記第1のSOC変化に統計アルゴリズムを適用して、基準ファクターを決定する段階と、各バッテリーセルの前記第1のSOC変化及び前記基準ファクターに基づいて、各バッテリーセルの内部短絡故障を検出する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一態様のうち少なくとも一つによれば、直列に接続された複数のバッテリーそれぞれの充電中のSOC変化及び/または放電中のSOC変化を用いて、各バッテリーの内部短絡故障を検出することができる。
【0024】
本発明の効果は上記の効果に制限されず、他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【0025】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の詳細な説明ともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明による電気車両の構成を例示的に示した図である。
図2】バッテリーセルの例示的な等価回路を説明するために参照される図である。
図3】内部短絡故障の有無によるバッテリーセルのSOC変化を比較するために参照される例示的なグラフである。
図4】内部短絡故障の有無によるバッテリーセルのSOC変化を比較するために参照される例示的なグラフである。
図5】内部短絡故障の有無によるバッテリーセルのSOC変化を比較するために参照される例示的なグラフである。
図6】本発明の第1実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示したフロー図である。
図7】本発明の第2実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0028】
したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0029】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちある一つをその他の要素と区別するために使われたものであり、これら用語によって構成要素が限定されることはない。
【0030】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に言及されない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また、明細書に記載された「制御回路」のような用語は少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を意味し、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現され得る。
【0031】
さらに、明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されるとするとき、これは「直接的な連結(接続)」だけではなく、他の素子を介在した「間接的な連結(接続)」も含む。
【0032】
図1は、本発明による電気車両の構成を例示的に示した図である。
【0033】
図1を参照すると、電気車両1は、車両コントローラ2、バッテリーパック10、インバータ30、及び電気モータ40を含む。バッテリーパック10の充放電端子P+、P-は、充電ケーブルなどを通じて充電器3に電気的に結合され得る。充電器3は、電気車両1に含まれたものであるか、または、充電ステーションに設けられたものであり得る。
【0034】
車両コントローラ2(例えば、ECU:Electronic Control Unit)は、電気車両1に備えられた始動ボタン(図示せず)がユーザによってオン(ON)位置に変えられたことに応えて、キーオン信号をバッテリー管理システム100に伝送するように構成される。車両コントローラ2は、始動ボタンがユーザによってオフ(OFF)位置に変えられたことに応えて、キーオフ信号をバッテリー管理システム100に伝送するように構成される。充電器3は、車両コントローラ2と通信して、バッテリーパック10の充放電端子P+、P-を通じて定電流または定電圧の充電電力を供給し得る。充電器3は、放電機能を有し得、後述する第1充電ステージS1の開始に先立って、車両コントローラ2の要請に応じてバッテリー11のバッテリー電圧(例えば、OCV:Open Circuit Voltage)が所定の基準電圧以下になるようにバッテリー11を放電させ得る。
【0035】
バッテリーパック10は、バッテリー11、リレー20及びバッテリー管理システム100を含む。
【0036】
バッテリー11は、複数のバッテリーセルBC~BC(Nは2以上の自然数)を含む。複数のバッテリーセルBC~BCは互いに直列に接続される。複数のバッテリーセルBC~BC(Nは2以上の自然数)は、互いに同じ電気化学的仕様を有するように提供されたものであり得る。以下、複数のバッテリーセルBC~BCに共通の内容を説明する際、バッテリーセルには参照符号「BC」を付することにする。
【0037】
バッテリーセルBCは、例えばリチウムイオンセルのように繰り返して充放電可能なものであれば、その種類は特に限定されない。
【0038】
リレー20は、バッテリー11とインバータ30とを連結する電力経路を通じてバッテリー11に電気的に直列に接続される。図1には、バッテリー11の正極端子と充放電端子P+との間に連結されているリレー20が示されている。リレー20は、バッテリー管理システム100からのスイッチング信号に応答してオンオフ制御される。リレー20は、コイルの磁気力によってオンオフされる機械式コンタクタであるか、または、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)のような半導体スイッチであり得る。
【0039】
インバータ30は、バッテリー管理システム100または車両コントローラ2からの命令に応答して、バッテリーパック10に含まれたバッテリー11からの直流電流を交流電流に変換するように提供される。電気モータ40は、インバータ30からの交流電力を用いて駆動する。電気モータ40としては、例えば三相交流モータを用い得る。インバータ30及び電気モータ40を含めて、バッテリー11の放電電力の供給を受ける電気車両1内の構成を電気負荷と総称し得る。
【0040】
バッテリー管理システム100は、センシング回路110及び制御回路150を含む。バッテリー管理システム100は、通信回路160をさらに含み得る。
【0041】
センシング回路110は、バッテリーセルBCの状態パラメータを取得するように構成される。バッテリーセルBCの状態パラメータは、バッテリーセルBCの電圧、電流及び/または温度を含む。センシング回路110は、電圧検出器120及び電流検出器130を含む。センシング回路110は、温度検出器140をさらに含み得る。
【0042】
電圧検出器120は、バッテリー11に含まれた複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの正極端子及び負極端子に接続されてバッテリーセルBCの両端にかかった電圧を測定し、測定された電圧を示す電圧信号を生成するように構成される。
【0043】
電流検出器130は、バッテリー11とインバータ30との間の電流経路を通じてバッテリー11に直列に接続される。電流検出器130は、バッテリー11を通じて流れる充放電電流を測定し、測定された充放電電流を示す電流信号を生成するように構成される。複数のバッテリーセルBC~BCは直列に接続されているため、複数のバッテリーセルBC~BCには共通の充放電電流が流れる。電流検出器130は、シャント抵抗、ホール効果素子などのような公知の電流検出素子のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせで具現され得る。
【0044】
温度検出器140は、バッテリー11の温度であるバッテリー温度を測定し、測定されたバッテリー温度を示す温度信号を生成するように構成される。温度検出器140は、バッテリー11の実際温度に近い温度を測定するように、ケース13内に配置され得る。例えば、温度検出器140は、バッテリー11に含まれた少なくとも一つのバッテリーセルBCの表面に取り付けられ得、バッテリーセルBCの表面温度をバッテリー温度として検出し得る。温度検出器140は、熱電対、サーミスタ、バイメタルなどのような公知の温度検出素子のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせで具現され得る。
【0045】
通信回路160は、制御回路150と車両コントローラ2との間の有線通信または無線通信を支援するように構成される。有線通信は、例えばCAN(controller area network)通信であり得、無線通信は、例えばジグビー(登録商標)(ZigBee(登録商標))やブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))通信であり得る。勿論、制御回路150と車両コントローラ2との間の有無線通信を支援するものであれば、通信プトトコルの種類は特に限定されない。通信回路160は、制御回路150及び/または車両コントローラ2から受信された情報をユーザ(運転者)が認識可能な形態で提供する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ)を含み得る。
【0046】
制御回路150は、リレー20、センシング回路110及び通信回路160に動作可能に結合される。二つの構成が動作可能に結合されるとは、片方向または両方向に信号を送受信可能に、二つの構成が直間接的に接続されていることを意味する。
【0047】
制御回路150は、電圧検出器120からの電圧信号、電流検出器130からの電流信号、及び/または温度検出器140からの温度信号を収集し得る。すなわち、制御回路150は、内部に設けられたアナログ-デジタル変換回路(ADC:Analog to Digital Converter)を用いて、センサ(120、130、140)から収集されたそれぞれのアナログ信号をデジタル値に変換及び記録し得る。
【0048】
制御回路150は、「バッテリーコントローラ」とも称され、ハードウェア的に、ASICs(application specific integrated circuits)、DSPs(digital signal processors)、DSPDs(digital signal processing devices)、PLDs(programmable logic devices)、FPGAs(field programmable gate arrays)、マイクロプロセッサ、その他の機能を実行するための電気的ユニットのうちの少なくとも一つを用いて具現され得る。
【0049】
メモリ151は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(solid state disk)、SDD(silicon disk drive)、マルチメディアマイクロカード、RAM(random access memory)、SRAM(static RAM)、ROM(read only memory)、EEPROM(electrically erasable programmable ROM)、PROM(programmable ROM)のうち少なくとも一つの形態の保存媒体を含み得る。メモリ151には、制御回路150による演算動作に必要なデータ及びプログラムが保存され得る。メモリ151には、制御回路150による演算動作の結果を示すデータが保存され得る。メモリ151には、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出するのに用いられる、SOC推定アルゴリズム及び統計アルゴリズムが保存され得る。メモリ151は、制御回路150内に集積化され得る。
【0050】
電気負荷(30、40)及び/または充電器3の動作中にリレー20がターンオンされる場合、バッテリー11は充電モードまたは放電モードになる。充電モードまたは放電モードにおけるバッテリー11の使用中にリレー20がターンオフされる場合、バッテリー11は休止モードに切り換えられる。
【0051】
制御回路150は、キーオン信号に応答してリレー20をターンオンさせ得る。制御回路150は、キーオフ信号に応答してリレー20をターンオフさせ得る。キーオン信号は、休止から充電または放電への切換を要請する信号である。キーオフ信号は、充電または放電から休止への切換を要請する信号である。代案的にリレー20のオンオフ制御は、制御回路150の代わりに車両コントローラ2が担当してもよい。
【0052】
制御回路150は、バッテリーパック10の充電中に、複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの電圧をモニタリングし、複数のバッテリーセルBC~BCの最大電圧を識別し得る。最大電圧は、複数のバッテリーセルBC~BCの電圧のうちの最大のものである。
【0053】
制御回路150は、バッテリーパック10の放電中に、複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの電圧をモニタリングし、最小電圧を識別し得る。最小電圧は、複数のバッテリーセルBC~BCの電圧のうちの最小のものである。
【0054】
制御回路150は、バッテリーパック10の充電中に、複数のバッテリーセルBC~BCの最大電圧が所定の上限電圧(例えば、4.25V[volt])に到達すると、バッテリーパック10の充電を中断し得る。
【0055】
制御回路150は、バッテリーパック10の放電中に、複数のバッテリーセルBC~BCの最小電圧が所定の下限電圧(例えば、3.20V)に到達すると、バッテリーパック10の放電を中断し得る。
【0056】
図2は、バッテリーセルの例示的な等価回路を説明するために参照される図である。本明細書において、正常バッテリーセルは複数のバッテリーセルBC~BCのいずれにも内部短絡故障がないものを称し、故障バッテリーセルは複数のバッテリーセルBC~BCのうちのいずれかに内部短絡故障が生じたものを称する。
【0057】
図2を参照すると、正常バッテリーセルは、直流電圧源VDC、内部抵抗成分R、及びRCペアR、Cの直列回路として等価化され得る。これに対し、故障バッテリーセルは、正常バッテリーセルに対応する直列回路の両端間に追加的抵抗成分RISCが連結されたものに等価化され得る。追加的抵抗成分RISCは漏洩電流IISCの経路として作用する。
【0058】
故障バッテリーセルを充電するとき、充電電力の一部は故障バッテリーセルに貯蔵できずに漏洩電流IISCとして消耗されてしまう。また、故障バッテリーセルの放電時には、放電電力の一部は電気負荷に供給できずに漏洩電流IISCとして消耗されてしまう。参考までに、故障バッテリーセルの休止時には、放電時と同様に、故障バッテリーセルに貯蔵されたエネルギーが漏洩電流IISCとして消耗されてしまう。抵抗RISCの抵抗値の減少は内部短絡故障の深化を意味し、内部短絡故障が深刻になるほど漏洩電流IISCとして消耗される電力量が増加し得る。
【0059】
結果的に、充電において、故障バッテリーセルの電圧変化(すなわち、SOCの上昇量)は正常バッテリーよりも小さい。一方、放電において、故障バッテリーセルの電圧変化(すなわち、SOCの低下量)は正常バッテリーセルよりも大きい。
【0060】
図3図5は、内部短絡故障の有無によるバッテリーセルのSOC変化を比較するために参照される例示的なグラフである。図3図5は、同一期間における充放電電流、バッテリーセルBCの電圧、及びバッテリーセルBCのSOC変化をそれぞれ例示している。
【0061】
図3を参照すると、時点t0及び時点t4は休止から充電に切り換えられる時点を示し、時点t1及び時点t5は充電から休止に切り換えられる時点を示し、時点t2は休止から放電に切り換えられる時点を示し、時点t3は放電から休止に切り換えられる時点を示す。すなわち、図3において、時点t0から時点t1までの期間及び時点t4から時点t5までの期間が充電期間であり、時点t2から時点t3までの期間が放電期間であり、その他は休止期間である。説明の便宜上、図3においては、各充電期間の充電電流に正の値を付与し、放電期間の放電電流に負の値を付与し、各期間における電流は一定しているものとして例示した。
【0062】
図4において、カーブ41は図3に示された電流カーブに対応する正常バッテリーセルの電圧カーブを示し、カーブ42は図3に示された電流カーブに対応する故障バッテリーセルの電圧カーブを示す。カーブ41を複数のバッテリーセルBC~BCの平均電圧の時系列として取り扱ってもよい。制御回路150は、複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの状態パラメータを周期的または非周期的に取得し、状態パラメータの時系列をメモリ151に記録し得る。
【0063】
図4を参照すると、充電期間において、正常バッテリーセルと故障バッテリーセルは両方とも電圧が漸進的に上昇する。但し、故障バッテリーセルは正常バッテリーセルよりも充電電力の収容能力が低いため、故障バッテリーセルの電圧上昇量は正常バッテリーセルよりも小さい。
【0064】
放電期間において、正常バッテリーセルと故障バッテリーセルは両方とも電圧が漸進的に低下する。但し、故障バッテリーセル内では、正常バッテリーセルの放電電力に加えて漏洩電流IISCによる追加的な電力消耗が発生するため、故障バッテリーセルの電圧低下量は正常バッテリーセルよりも大きい。
【0065】
図5において、カーブ51は図4に示された電圧カーブ41に対応する正常バッテリーセルのSOCカーブを示し、カーブ52は図4に示された電圧カーブ42に対応する故障バッテリーセルのSOCカーブを示す。カーブ51を複数のバッテリーセルBC~BCの平均SOCの時系列として取り扱ってもよい。
【0066】
制御回路150は、バッテリーセルBCの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、バッテリーパック10の充電期間、放電期間、及び/または休止期間におけるバッテリーセルBCのSOC変化をモニタリングし得る。一例として、SOC推定アルゴリズムとしては、OCV-SOC関係マップまたはカルマンフィルターが活用され得る。OCV-SOC関係マップ及びカルマンフィルターはSOC推定に広く活用される技法であるため、具体的な説明は省略する。
【0067】
図5を参照すると、充電期間において、故障バッテリーセルは正常バッテリーセルよりもSOCの上昇速度及び上昇量が小さい。放電期間において、故障バッテリーセルは正常バッテリーセルよりもSOCの低下速度及び低下量が大きい。さらに、休止期間において、正常バッテリーセルのSOCはほぼ一定している一方、故障バッテリーセルのSOCは充放電電流が流れていないにもかかわらず徐々に低下している。
【0068】
制御回路150は、バッテリーパック10の充電時毎に、最近の充電期間における複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出するための診断プロセスを行い得る。一例として、制御回路150は、時点t1で充電から休止に切り換えられるとき、充電期間t0~t1で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出し得る。他の例として、制御回路150は、時点t5で充電から休止に切り換えられるとき、最近の充電期間t4~t5で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出し得る。
【0069】
代案的には、制御回路150は、バッテリーパック10の充電または放電時毎に、最近の充電期間における複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化及び最近の放電期間における複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出するための診断プロセスを行い得る。一例として、制御回路150は、時点t3で放電から休止に切り換えられるとき、最近の充電期間t0~t1で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化及び最近の放電期間t2~t3で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出し得る。他の例として、制御回路150は、時点t5で充電から休止に切り換えられるとき、最近の放電期間t2~t3で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化及び最近の充電期間t4~t5で取得した複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC変化に基づいて、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出し得る。
【0070】
図3図5では充電期間と放電期間との間に休止モードが位置しているが、これは一例に過ぎない。例えば、充電から休止なく放電に切り換えられるか、または、放電から休止なく充電に切り換えられることもあり得る。
【0071】
図6は、本発明の第1実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示したフロー図である。図6の方法は、最近の充電期間でモニタリングした複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC推移に基づいてバッテリーセルBCの内部短絡故障を検出するためのものである。説明の便宜上、最近の充電期間を時点t4から時点t5までと仮定する。
【0072】
図1図6を参照すると、段階S610において、制御回路150は、バッテリーパック10の充電中に取得された複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルBCに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定する。第1充電時点及び第2充電時点は、最近の充電期間内の異なる二つの時点であれば特に制限されない。一例として、第1充電時点は最近の充電期間の開始時点t4であり得、第2充電時点は最近の充電期間の終了時点t5であり得る。図6の方法は充電に関するものであるため、第1のSOC変化は第1充電時点から第2充電時点までのSOCの上昇量を示す。一例として、図5を参照すると、故障バッテリーセルの第1のSOC変化は、第1のSOC(524)と第2のSOC(525)との差である。
【0073】
段階S620において、制御回路150は、複数のバッテリーセルBC~BCのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの第1のSOC変化に統計アルゴリズムを適用して、基準ファクターを決定する。基準ファクターは、複数のバッテリーセルBC~BCのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの第1のSOC変化の平均または中央値と同一であり得る。一例として、図5を参照すると、カーブ51が第1のSOC変化の平均である場合、基準ファクターはSOC(514)とSOC(515)との差である。
【0074】
段階S630において、制御回路150は、各バッテリーセルBCに対し、第1のSOC変化を基準ファクターと比較し、内部短絡故障を検出する。内部短絡故障の検出において、下記の検出条件のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせが活用され得る。
【0075】
[条件#1:第1のSOC変化が基準ファクターよりも臨界値TH1以上小さい。]
【0076】
[条件#2:基準ファクターに対する第1のSOC変化の比率が臨界値TH2以下である。ここで、TH2は0~1である。]
【0077】
[条件#3:基準ファクターに対する第1のSOC変化の比率が以前の比率よりも臨界値TH3以上小さい。]
【0078】
条件#3において、以前の比率は、最近の充電期間に先行する充電期間(図4ではt0~t1)における基準ファクターに対する第1のSOC変化の比率である。
【0079】
臨界値TH1、TH2、TH3は、予め決められた固定値であり得る。代案的には、制御回路150は、第1充電時点から第2充電時点までの期間にかけて測定された充電電流の積算値に基づいて、臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つを決定し得る。すなわち、バッテリーパック10の充電モードが再開される度に、臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つが新たに更新され得る。一例として、制御回路150は、充電電流の積算値(例えば、3Ah[ampere-hour])をバッテリーセルBCの設計容量(例えば、5Ah)で除してSOC変化の目標値(例えば、60%)を求め、目標値に対する基準ファクターの比率に所定のスケーリング定数(正の値)を掛けて臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つを決定し得る。臨界値TH1、TH2、TH3のうちのいずれか一つの決定に用いられるスケーリング定数は、臨界値TH1、TH2、TH3のうちの他の一つの決定に用いられるスケーリング定数とは相異なるものであり得る。目標値は、段階S610、S620及びS630のうちの少なくとも一つの進行中に決定され得る。臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つは、S620及びS630の少なくとも一つの進行中に決定され得る。
【0080】
複数のバッテリーセルBC~BCがすべて正常である場合、目標値と基準ファクターとはほぼ等しい。一方、複数のバッテリーセルBC~BCのうち内部短絡故障が生じたバッテリーセルの個数が増加するほど、基準ファクターは目標値から著しく減少する。したがって、臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つを上述した方式で決定することで、内部短絡故障の検出正確性を向上させることができる。
【0081】
一方、目標値が段階S620の前に決定された後、段階S620では、複数のバッテリーセルBC~BCのすべての第1のSOC変化のうち、目標値以下の第1のSOC変化のみを基準ファクターの決定に用いてもよい。この場合、基準ファクターの決定において、複数のバッテリーセルBC~BCのすべての第1のSOC変化から目標値を超過するものが除外されるため、相対的に深刻な内部短絡故障を有するバッテリーセルBCを複数のバッテリーセルBC~BCから優先的に検出可能である。
【0082】
図7は、本発明の第2実施例によるバッテリー管理方法を例示的に示したフロー図である。図7の方法は、最近の放電期間及び最近の充電期間のそれぞれでモニタリングした複数のバッテリーセルBC~BCすべてのSOC推移に基づいてバッテリーセルBCの内部短絡故障を検出するためのものである。説明の便宜上、最近の充電期間を時点t4から時点t5までと仮定し、最近の放電期間を時点t6から時点t7までと仮定する。
【0083】
図1図5及び図7を参照すると、段階S710において、制御回路150は、バッテリーパック10の充電中に取得された複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルBCに対し、第1充電時点における第1のSOCと第2充電時点における第2のSOCとの差である第1のSOC変化を決定する。第1充電時点及び第2充電時点は、最近の充電期間内の異なる二つの時点であれば特に制限されない。一例として、第1充電時点は最近の充電期間の開始時点t4であり得、第2充電時点は最近の充電期間の終了時点t5であり得る。
【0084】
段階S720において、制御回路150は、バッテリーパック10の放電中に取得された複数のバッテリーセルBC~BCそれぞれの状態パラメータにSOC推定アルゴリズムを適用して、各バッテリーセルBCに対し、第1放電時点における第3のSOCと第2放電時点における第4のSOCとの差である第2のSOC変化を決定する。第1放電時点及び第2放電時点は、最近の放電期間内の異なる二つの時点であれば特に制限されない。一例として、第1放電時点は最近の充電期間の開始時点t6であり得、第2放電時点は最近の充電期間の終了時点t7であり得る。
【0085】
図5を参照すると、故障バッテリーセルにおいて、第1のSOC変化は第1のSOC(524)と第2のSOC(525)との差であり、第2のSOC変化は第3のSOC(526)と第4のSOC(527)との差である。図7では段階S710が段階S720に先行しているが、これは一例として理解せねばならない。例えば、最近の充電期間が最近の放電期間に先行していれば、段階S720が段階S710に先行してもよい。他の例として、最近の充電期間と最近の放電期間が両方とも終わった後、段階S710と段階S720とが同時に行われてもよい。
【0086】
段階S730において、制御回路150は、各バッテリーセルBCに対し、第1のSOC変化を第2のSOC変化で除し、故障ファクターを決定する。すなわち、「故障ファクター=(第1のSOC変化)/(第2のSOC変化)」である。一例として、図5を参照すると、故障バッテリーセルの故障ファクターは「{SOC(525)-SOC(524)/{SOC(526)-SOC(527)}」である。故障ファクターはクーロン効率とも称され得る。
【0087】
段階S740において、制御回路150は、複数のバッテリーセルBC~BCのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの故障ファクターに統計アルゴリズムを適用して、基準ファクターを決定する。基準ファクターは、複数のバッテリーセルBC~BCのうちの少なくとも二つのバッテリーセルの故障ファクターの平均または中央値と同一であり得る。一例として、図5を参照すると、カーブ51が複数のバッテリーセルBC~BCの平均SOCである場合、基準ファクターは「{SOC(515)-SOC(514)/{SOC(516)-SOC(517)}」である。
【0088】
段階S750において、制御回路150は、各バッテリーセルBCに対し、故障ファクターを基準ファクターと比較し、バッテリーセルBCの内部短絡故障を検出する。内部短絡故障の検出において、下記の検出条件のうちの一つまたは二つ以上の組み合わせが活用され得る。
【0089】
[条件#1:故障ファクターが基準ファクターよりも臨界値TH11以上小さい。]
【0090】
[条件#2:相対クーロン効率が臨界値TH12以下である。ここで、TH12は0~1である。]
【0091】
[条件#3:基準ファクターに対する故障ファクターの比率が以前の比率よりも臨界値TH13以上小さい。]
【0092】
条件#2において、相対クーロン効率は、基準ファクターに対する故障ファクターの比率、すなわち、(故障ファクター/基準ファクター)である。
【0093】
条件#3において、以前の比率は、最近の放電期間(t6~t7)に先行する充電期間(図4ではt4~t5)における第1のSOC及び放電期間(図4ではt2~t3)における第2のSOCに基づいた基準ファクターに対する故障ファクターの比率である。
【0094】
臨界値TH11、TH12、TH13は、予め決められた値であり得る。一例として、臨界値TH11、TH12、TH13はそれぞれ、第1実施例で上述した予め決められた臨界値TH1、TH2、TH3と同一であり得る。代案的には、制御回路150は、第1充電時点から第2充電時点までの期間にかけて測定された充電電流の積算値及び第1放電時点から第2放電時点までの期間にかけて測定された放電電流の積算値に基づいて、臨界値TH11、TH12、TH13のうちの少なくとも一つを決定し得る。すなわち、バッテリーパック10の充電モードまたは放電モードが再開される度に、臨界値TH11、TH12、TH13のうちの少なくとも一つが新たに更新され得る。一例として、制御回路150は、充電電流の積算値を放電電流の積算値で除して目標値を求める。その後、制御回路150は、目標値に対する基準ファクターの比率に所定のスケーリング定数(良医値)を掛けて臨界値TH11、TH12、TH13のうちの少なくとも一つを決定し得る。臨界値TH11、TH12、TH13のうちのいずれか一つの決定に用いられるスケーリング定数は、臨界値TH11、TH12、TH13のうちの他の一つの決定に用いられるスケーリング定数とは相異なるものであり得る。目標値は、段階S710、S720、S730及びS740のうちの少なくとも一つの進行中に決定され得る。臨界値TH1、TH2、TH3のうちの少なくとも一つは、S730及びS740の少なくとも一つの進行中に決定され得る。
【0095】
複数のバッテリーセルBC~BCがすべて正常である場合、目標値と基準ファクターとはほぼ等しい。一方、複数のバッテリーセルBC~BCのうち内部短絡故障が生じたバッテリーセルの個数が増加するほど、基準ファクターは目標値から著しく減少する。したがって、臨界値TH11、TH12、TH13のうちの少なくとも一つを上述した方式で決定することで、内部短絡故障の検出正確性を向上させることができる。
【0096】
一方、目標値が段階S740の前に決定された後、段階S740では、複数のバッテリーセルBC~BCのすべての故障ファクターのうち、目標値以下の故障ファクターのみを基準ファクターの決定に用いてもよい。この場合、基準ファクターの決定において、複数のバッテリーセルBC~BCのすべての故障ファクターから目標値を超過するものが除外されるため、相対的に深刻な内部短絡故障を有するバッテリーセルBCを複数のバッテリーセルBC~BCから優先的に検出可能である。
【0097】
各実施例において、制御回路150は、複数のバッテリーセルBC~BCのうち所定個数以上のバッテリーセルで内部短絡故障が検出される場合、通信回路160を用いて故障バッテリーセルの存在を車両コントローラ2に通知可能である。
【0098】
各実施例において、制御回路150は、複数のバッテリーセルBC~BCのうち所定個数以上のバッテリーセルで内部短絡故障が検出される場合、充放電電流の許容範囲を縮小可能である。一例として、故障バッテリーセルの個数に比例して、許容範囲の上限(正の値)が減少するかまたは許容範囲の下限(負の値)が増加し得る。
【0099】
上述した本発明の実施形態は、装置及び方法のみによって具現されるものではなく、本発明の実施形態の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じても具現され得、このような具現は上述した実施形態の記載から当業者であれば容易に具現できるであろう。
【0100】
以上のように、本発明を限定された実施形態と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0101】
また、上述した本発明は、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者により、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形及び変更が可能であって、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、多様な変形のため各実施形態の全部または一部が選択的に組み合わせられて構成され得る。
【符号の説明】
【0102】
1:電気車両
2:車両コントローラ
10:バッテリーパック
11:バッテリー
20:リレー
30:インバータ
40:電気モータ
100:バッテリー管理システム
110:センシング回路
150:制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7