(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】メタンガス生成装置及びメタンガス生成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/12 20060101AFI20241001BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07C1/12
C07C9/04
(21)【出願番号】P 2018170680
(22)【出願日】2018-09-12
【審査請求日】2020-12-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26~29年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素利用等先導研究開発事業/エネルギーキャリアシステム調査・研究/高効率メタン化触媒を用いた水素・メタン変換」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113608
【氏名又は名称】平川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100123319
【氏名又は名称】関根 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】八巻 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】四宮 博之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】泉屋 宏一
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】井上 典之
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135283(JP,A)
【文献】特開2015-196619(JP,A)
【文献】特開平01-201004(JP,A)
【文献】特開2000-336381(JP,A)
【文献】特開2018-168205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタネーション反応によってメタンガスを生成するメタンガス生成装置であって、
二酸化炭素と水素とを含む反応物を発熱反応させ、メタンガスと水蒸気とを含む生成物であって前記反応物よりも温度の高く、未反応の反応物を含む第1の生成物を生成させる第1の反応部と、
前記第1の反応部へ送られる前記反応物と前記第1の反応部から流出した前記第1の生成物とを熱交換させることにより、前記第1の反応部へ送られる前記反応物を予熱し、前記第1の反応部から流出した前記第1の生成物を冷却する、複数個直列に接続される熱交換器と、
前記第1の生成物における前記未反応の反応物をさらに発熱反応させ、前記第1の生成物と比較してメタンガスの純度がより高い生成物である第2の生成物を生成させる第2の反応部と、
前記第2の反応部へ送られる前記第1の生成物と前記第2の反応部から流出した前記第2の生成物とを熱交換させることにより、前記第2の反応部へ送られる前記第1の生成物を予熱し、前記第2の反応部から流出した前記第2の生成物を冷却する、追加熱交換器と、を備え、
前記複数個直列に接続される熱交換器は、前記第1の反応部へ送られる前記反応物と前記第1の反応部から流出した前記第1の生成物の水蒸気とを熱交換させることにより、前記第1の反応部から流出した前記第1の生成物の水蒸気を凝縮可能な伝熱交換面積を有する、
メタンガス生成装置。
【請求項2】
前記複数個直列に接続される熱交換器の夫々と前記追加熱交換器は、シェルアンドチューブ型熱交換器であり、
前記反応物
は、前記複数個直列に接続される熱交換器の夫々である前記シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過し、
前記未反応の反応物を含む前記第1の生成物は、前記複数個直列に接続される熱交換器の夫々である前記シェルアンドチューブ型熱交換器のチューブ部分、及び、前記追加熱交換器である前記シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過し、
前記第2の生成物は、前記追加熱交換器である前記シェルアンドチューブ型熱交換器の
チューブ部分を通過する、
請求項1に記載のメタンガス生成装置。
【請求項3】
前記複数個直列に接続される熱交換器の夫々において凝縮させられた水分を排水する排水手段をさらに備える、
請求項1または2に記載のメタンガス生成装置。
【請求項4】
前記複数個直列に接続される熱交換器の合計の伝熱交換面は、水蒸気を水へと凝縮させる面積を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のメタンガス生成装置。
【請求項5】
メタネーション反応によってメタンガスを生成するメタンガス生成方法であって、
二酸化炭素と水素とを含む反応物を発熱反応させ、メタンガスと水蒸気とを含む生成物であって前記反応物よりも温度の高く、未反応の反応物を含む第1の生成物を生成させる第1の反応工程と、
前記第1の反応工程へ送られる前記反応物と前記第1の反応工程において生成された前記第1の生成物とを熱交換させることにより、前記第1の反応工程へ送られる前記反応物を予熱し、前記第1の反応工程において生成された前記第1の生成物を冷却する第1の熱交換工程と、
前記第1の生成物における前記未反応の反応物をさらに発熱反応させ、前記第1の生成物と比較してメタンガスの純度がより高い生成物である第2の生成物を生成させる第2の反応工程と、
前記第2の反応工程へ送られる前記第1の生成物と前記第2の反応工程から流出した前記第2の生成物とを熱交換させることにより、前記第2の反応工程へ送られる前記第1の生成物を予熱し、前記第2の反応工程から流出した前記第2の生成物を冷却する、第2の熱交換工程と、を含み、
前記第1の熱交換工程において、前記第1の反応工程へ送られる前記反応物と前記第1の反応工程において生成された前記第1の生成物の水蒸気とを熱交換させることにより、前記第1の反応工程において生成された前記第1の生成物の水蒸気を凝縮可能である、
メタンガス生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタンガス生成装置及びメタンガス生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の抑制のために、温室効果ガスである二酸化炭素を削減する取り組みが行われている。また、例えば、特許文献1-2では、二酸化炭素と水素とを反応させ、メタンガスを生成させるメタネーション反応に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6299347号公報
【文献】特開2017-052669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタンガスを生成する場合、メタンガスの生成効率を向上させるためにメタネーション反応を促進させることが考えられる。メタネーション反応を促進させるためには反応物を予熱することが望ましい。しかしながら、反応物を予熱するためには、エネルギーを当然要することとなり、かえって温室効果ガスの削減効果が低下する虞が考えられる。
【0005】
また、メタネーション反応は、副生成物として水を生成する反応であるため、生成したメタンガスを有効に利用するためには副生成物である水分を、冷却などにより凝縮させ除去することが望ましいと考えられる。つまり、メタネーション反応によってメタンガスを生成する場合、メタンガスを冷却させるためのエネルギーも必要である。
【0006】
すなわち、メタネーション反応によってメタンガスを生成する場合、反応物の予熱やメタンガスの冷却を行うことが望ましいと考えられるが、そのためにはエネルギーが必要であり、温室効果ガスの削減効果が低下する虞が考えられる。また、反応物の予熱やメタンガスの冷却のための装置も必要であり、生成装置全体が大型化する虞も考えられる。
【0007】
そこで、本願は、メタンガスを効率良く生成するコンパクトなメタンガス生成装置及びメタンガス生成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、メタネーション反応をする反応物と、メタネーション反応により生成されるメタンガスとを熱交換させることとした。
【0009】
詳細には、本発明は、メタネーション反応によってメタンガスを生成するメタンガス生成装置であって、二酸化炭素と水素とを含む反応物を発熱反応させ、メタンガスと水蒸気とを含む生成物であって反応物よりも温度の高い生成物を生成させる反応部と、反応部へ送られる反応物と反応部から流出した生成物とを熱交換させることにより、反応部へ送られる反応物を予熱し、反応部から流出した生成物を冷却する熱交換器と、を備える、メタンガス生成装置である。
【0010】
このようなメタンガス生成装置であれば、メタネーション反応前の反応物は予熱される。よって、メタネーション反応は、促進される。
【0011】
また、生成物が冷却されることにより、生成物に含まれる水蒸気が凝縮されて分離される場合、生成物の飽和蒸気圧は低下する。すなわち、生成物の取り扱いは容易となる。
【0012】
また、生成物には、未反応の反応物が含まれる場合がある。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、生成物に未反応の反応物が含まれる場合、生成物は、未反応の反応物と化学平衡状態の関係にある。ここで、生成物が冷却されることにより水蒸気が凝縮され、凝縮水が生成物から分離させられる場合、当該化学平衡状態が変化し、未反応の反応物から新たにメタンガスと水蒸気が生成される。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置であれば、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0013】
また、反応物と生成物とを熱交換させることにより、反応物の予熱とメタンガスの冷却は実現される。つまり、反応物の予熱、及びメタンガスの冷却を夫々別々に行っていないため、反応物の予熱、及びメタンガスの冷却に必要なエネルギーは節減される。よって、温室効果ガスの削減効果の低下は抑制され、メタンガスの生成効率は向上する。
【0014】
また、このようなメタンガス生成装置とは異なり、反応物と生成物とを熱交換させず、反応物の予熱と生成物の冷却とを夫々別々に行う場合、反応物量が変動した場合に、反応物量の変動前と比較して反応物の予熱後の温度は変動することとなる。よって、反応物の予熱後の温度の変動を抑制するためには、反応物と熱交換する熱媒体の流量を反応物量に応じて制御する必要がある。
【0015】
また、メタンガスの生成量はガスの需要や反応物の供給量の変化などの事情により調整されることが必要であるが、生成物量が変動した場合にも、同様に、生成物量の変動前と比較して生成物の冷却後の温度は変動することとなる。よって、生成物の冷却後の温度の変動を抑制するためには、生成物と熱交換させる熱媒体の流量を生成物量に応じて制御する必要がある。しかしながら、上記のようなメタンガス生成装置は、反応物量が変動した場合、反応物と熱交換する生成物の量は、反応物量と同様に変動することとなる。すなわち、反応物量が変動した場合であっても、反応物の予熱後の温度の変動を抑制するために、反応物と熱交換する熱媒体の流量を反応物量に応じて制御せずに済む。また、生成物量が変動した場合にも、生成物の冷却後の温度の変動を抑制するために、生成物と熱交換する熱媒体の流量を生成物量に応じて制御せずに済む。すなわち、反応物の予熱後の温度の変動の抑制や、生成物の冷却後の温度の変動の抑制のための構成が不要である。
【0016】
また、上記のようなメタンガス生成装置であれば、反応物の予熱及び生成物の冷却は、1つの熱交換器において行うことが可能である。この場合、反応物の予熱と生成物の冷却とを別々の熱交換器において行う場合と比べてメタンガス生成装置をコンパクトにすることができる。
【0017】
ところで、熱交換器は、シェルアンドチューブ型熱交換器であり、反応物は、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過し、生成物は、シェルアンドチューブ型熱交換器のチューブ部分を通過してもよい。
【0018】
このようなメタンガス生成装置であれば、反応物は、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過する。よって、反応物は、生成物と熱交換しつつも、混合撹拌が促進させられる。反応器へ投入される前段階で反応物が充分混合撹拌されるため、熱交換器を通過した反応物のメタネーション反応は促進される。よって、メタンガスの生成効率は向上する。また、反応物の予熱及び反応物の混合撹拌は、1つの熱交換器において行うことが可能である。また、反応物を混合するための撹拌機を別に設けずとも、本発明における熱交換器の使用方法によって混合撹拌の機能を持たせることができるためメタンガス生成装置のコンパクト化も実現される。
【0019】
ところで、熱交換器は、反応部へ送られる反応物と反応部から流出した生成物の水蒸気とを熱交換させることにより、反応部から流出した生成物の水蒸気を凝縮可能な伝熱交換面積を有してもよい。
【0020】
上記のようなメタンガス生成装置であれば、水蒸気の少なくとも一部は、水へと凝縮させられる。よって、水蒸気は、容易にメタンガスから分離させられる。また、生成物には、未反応の反応物が含まれる場合がある。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、生成物に未反応の反応物が含まれる場合、生成物は、未反応の反応物と化学平衡状態の関係にある。ここで、凝縮水が生成物から分離させられる場合、当該化学平衡状態が変化し、未反応の反応物から新たにメタンガスと水蒸気が生成される。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置であれば、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0021】
また、発生した凝縮水が排水される場合、生成物全体の熱容量は、低下することとなる。よって、メタンガスの冷却効率は向上する。よって、メタンガス生成装置をコンパクトにすることができる。
【0022】
ところで、熱交換器は、複数個直列に接続されてもよい。
【0023】
このようなメタンガス生成装置であれば、反応物と生成物との熱交換効率は高まる。換言すれば、1台あたりの熱交換器をコンパクトにすることができる。
【0024】
また、複数個直列に接続される熱交換器の夫々において凝縮させられた水分を排水する排水手段をさらに備えてもよい。
【0025】
生成物には、未反応の反応物が含まれる場合がある。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、生成物に未反応の反応物が含まれる場合、生成物は、未反応の反応物と化学平衡状態の関係にある。よって、熱交換器から凝縮水が排水されることにより、当該化学平衡状態が変化し、未反応の反応物から新たにメタンガスと水蒸気が生成される。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置であれば、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0026】
また、このようなメタンガス生成装置であれば、熱交換器から凝縮水が排水されることにより、生成物全体の熱容量は低下することとなる。よって、メタンガスの冷却効率は向上する。よって、1台あたりの熱交換器をコンパクトにすることができる。
【0027】
また、上記のようなメタンガス生成装置であれば、複数個直列に接続された熱交換器の夫々において、水蒸気は段階的に凝縮される。よって、夫々の熱交換器から温度の異なる凝縮水を得ることができる。よって、これら温度の異なる凝縮水を再利用する場合、省エネルギー化は実現される。
【0028】
また、複数個直列に接続される熱交換器の合計の伝熱交換面は、水蒸気を水へと凝縮させる面積を有してもよい。
【0029】
上記のようなメタンガス生成装置であれば、複数個直列に接続される熱交換器を通過する生成物から凝縮水を得ることができる。また、凝縮水が発生した熱交換器から凝縮水が排水される場合、生成物全体の熱容量は、低下することとなる。よって、メタンガスの冷却効率は向上する。よって、熱交換器をコンパクトにすることができる。
【0030】
また、生成物には、未反応の反応物が含まれる場合がある。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、生成物に未反応の反応物が含まれる場合、生成物は、未反応の反応物と化学平衡状態の関係にある。よって、凝縮水が発生した熱交換器から凝縮水が排水される場合、当該化学平衡状態が変化し、未反応の反応物から新たにメタンガスと水蒸気が生成される。すなわち、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0031】
また、本発明は、方法の側面から捉えることもできる。すなわち、例えば、メタネーション反応によってメタンガスを生成するメタンガス生成方法であって、二酸化炭素と水素とを含む反応物を発熱反応させ、メタンガスと水蒸気とを含む生成物であって反応物よりも温度の高い生成物を生成させる反応工程と、反応工程へ送られる反応物と反応工程において生成された生成物とを熱交換させることにより、反応工程へ送られる反応物を予熱し、反応工程において生成された生成物を冷却する熱交換工程と、を含む、メタンガス生成方法であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
上記のメタンガス生成装置及びメタンガス生成方法であれば、メタンガスを効率良く生成するコンパクトな装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかるメタンガス生成装置の概要の一例を示している。
【
図2】
図2は、熱交換器の概要の一例を示している。
【
図3】
図3は、メタンガス生成装置によりメタンガスが生成されるフローチャートの一例を示している。
【
図4】
図4は、反応物の流量あたりの伝熱交換面積に対する、熱交換器に流出入する反応物の温度差のグラフの一例を示している。
【
図5】
図5は、
図4において2つの熱交換器が直列に並べられた場合の構成の概要、及び1つの熱交換器の場合の構成の概要の一例を示している。
【
図6】
図6は、直列に並べられた2つの熱交換器の代替として1つの熱交換器を備えるメタンガス生成装置の概要の一例を示している。
【
図7】
図7は、反応物の流量あたりの熱交換器の伝熱交換面積に対する熱交換器から流出した第1の生成物の温度の一例を示している。
【
図8】
図8は、圧力に対する水の沸点の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の技術的範囲を以下の態様に限定するものではない。
【0035】
<装置構成>
図1は、本発明の実施形態にかかるメタンガス生成装置100の概要の一例を示している。
図1に示されるメタンガス生成装置100は、気体状態の二酸化炭素ガスと水素ガスとを含む反応物の発熱反応によって、メタンガスと水蒸気とを含む生成物を生成させる。このような化学反応は、メタネーション反応と呼ばれる。また、上記の化学反応は可逆反応でもある。上記の化学反応式は、以下のように表される。
【0036】
4H2+CO2⇔CH4+2H2O (1)
【0037】
メタンガス生成装置100は、反応塔1A、1Bを備える。反応塔1Aと反応塔1Bとは、直列に接続される。また、反応塔1A、1Bは、夫々、反応器2A、2Bを備える。反応器2A、2Bの内部では、式(1)のメタネーション反応が行われる。ここで、反応
器2A、2Bは、本発明の「反応部」の一例である。また、反応器2A、2Bには、メタネーション反応を促進させる触媒が充填されている。触媒は、例えば安定化元素が固溶し、正方晶系、及び、又は、立方晶系の結晶構造を有する安定化ジルコニア担体と、安定化ジルコニア担体に担持されるNiと、を含む。また、安定化元素は、例えばMn、FeおよびCoからなる群から選択される少なくとも1種の遷移元素からなる。これらの触媒は活性が高いことが知られており、本発明の対象となる反応温度は、一例として200℃(473K)付近のものを対象としている。また、反応塔1A、1Bには、図示しないが、反応器2A、2B内の温度を計測する温度計が設けられる。
【0038】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3A、3Bを備える。熱交換器3A、3Bは、直列に設けられる。熱交換器3A、3Bは、反応塔1Aと連結される。ここで、熱交換器3A、3Bは、夫々本発明の「熱交換器」の一例であって、本発明の「複数個直列に接続される熱交換器」の一例でもある。また、熱交換器は2つに限らず何個でも直列に設けられてもよい。
【0039】
熱交換器3A、3Bの種類は、例えばシェルアンドチューブ型熱交換器である。熱交換器にはシェルアンドチューブ型熱交換器以外の方式も工業的に使用されているが、本発明のように入口と出口の温度差が大きい場合には他の方式では熱交換器の破損が生じる虞が考えられる。そこで、本実施形態では、熱交換器3A、3Bには、シェルアンドチューブ型の熱交換器を採用した。もちろん、熱交換器3A、3Bとして、シェルアンドチューブ型以外の方式の熱交換器を使用してもよい。
図2は、熱交換器3Aの概要の一例を示している。熱交換器3Aは、
図2に示されるように、シェル部分の入口から出口へ向かって、互い違いに配置された内壁30を備える(熱交換器3Bも同様)。また、
図2に示されるように、熱交換器3Aでは、反応器2Aへ送られる反応物がシェル部分を通過することとなる。また、熱交換器3Aのチューブ部分は、反応器2Aにおいて式(1)のメタネーション反応により生成された生成物(以下、第1の生成物という)であって、熱交換器3Bのチューブ部分を通過した第1の生成物が通過することとなる。ここで、第1の生成物には、メタンガス、水蒸気、及び未反応の反応物が含まれる。また、第1の生成物は、本発明の「生成物」の一例である。
【0040】
また、熱交換器3Bのシェル部分は、熱交換器3Aのシェル部分を通過し、反応器2Aへ送られる反応物が通過することとなる。また、熱交換器3Bのチューブ部分は、反応器2Aから流出した第1の生成物が通過することとなる。また、熱交換器3A、3Bの伝熱交換面積の合計は、第1の生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮させる値である。
【0041】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3A、3Bのチューブ部分において、第1の生成物に含まれる水蒸気が凝縮して凝縮水が発生した場合に、発生した凝縮水を貯える凝縮水タンク4A、4Bを備える。
図2に示されるように、凝縮水タンク4Aは、熱交換器3Aのチューブ部分の出口の底部と連通するように設けられる。また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Aのチューブ部分の出口の底部と、凝縮水タンク4Aとの間に、フロートタイプの排水弁5Aを備える。また、図示しないが、凝縮水タンク4Bも同様に、熱交換器3Bのチューブ部分の出口の底部と連通するように設けられる。また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Bのチューブ部分の出口の底部と、凝縮水タンク4Bとの間に、フロートタイプの排水弁5Bを備える。ここで、凝縮水タンク4A、4B及び排水弁5A、5Bは、本発明の「排水手段」の一例である。
【0042】
また、メタンガス生成装置100は、凝縮水タンク4A、4Bと夫々接続し、凝縮水タンク4A、4Bから凝縮水を排水させる排水管を備える。また、メタンガス生成装置100は、当該配水管の途中に、排水量を調整する調整弁6A、6Bと、調整弁6A、6Bを夫々制御する弁制御装置7A、7Bを備える。弁制御装置7A、7Bは、調整弁6A、6
Bを夫々制御することにより、凝縮水タンク4A、4B内に貯められる凝縮水の水量を調整する。
【0043】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Aと反応塔1Bとの間に熱交換器3Cを備える。熱交換器3Cは、例えばシェルアンドチューブ型熱交換器であり、熱交換器3A、3Bと同じように互い違いの内壁30を備える熱交換器である。ここで、熱交換器3Cは、本発明の「熱交換器」の一例である。熱交換器3Cのシェル部分は、熱交換器3Aのチューブ部分及び反応器2Bと配管を通じて連結されている。また、熱交換器3Cのチューブ部分は、反応器2Bと配管を通じて連結されている。つまり、熱交換器3Cでは、シェル部分に、熱交換器3Aのチューブ部分から流出した第1の生成物が流入する。そして、当該第1の生成物は、反応器2Bへ送られる。また、熱交換器3Cのチューブ部分には、反応器2Bにおいて第1の生成物に含まれる未反応の反応物が式(1)のメタネーション反応することにより生成された生成物(以下、第2の生成物という)が流入する。ここで、第2の生成物には、第1の生成物と、反応器2Bにおいて第1の生成物に含まれる未反応の反応物のメタネーション反応によって生成された生成物と、第1の生成物に含まれ、反応器2Bにおいて反応しなかった未反応の反応物と、を含む。また、第2の生成物は、本発明の「生成物」の一例である。
【0044】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Cと接続する熱交換器3Dを備える。熱交換器3Dは、例えばシェルアンドチューブ型熱交換器である。また、熱交換器3Dのシェル部分は、熱交換器3Cのチューブ部分と配管を通じて連結されている。つまり、反応器2Bから流出し、熱交換器3Cのチューブ部分を通過した第2の生成物が熱交換器3Dのシェル部分に流入することとなる。また、熱交換器3Dは、シェル部分を通過する第2の生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮可能な伝熱交換面積を有する。
【0045】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分へ冷却水を供給するチラー8を備える。また、チラー8と熱交換器3Dとの間には、冷却水が循環する循環管路が形成される。また、メタンガス生成装置100は、当該循環管路の途中に、循環管路を流れる冷却水の流量を制御する弁9A、9Bを備える。また、メタンガス生成装置100は、チラー8から熱交換器3Dへの管路の途中に、管路を流れる冷却水の圧力を制御する圧力制御器10Aを備える。また、メタンガス生成装置100は、チラー8から熱交換器3Dへの管路の途中に、管路を流れる冷却水の流量を制御する流量制御器11Aを備える。すなわち、チラー8から熱交換器3Dへ供給される冷却水の圧力及び流量は、所望の値に制御されることとなる。また、メタンガス生成装置100は、チラー8から熱交換器3Dへの管路の途中に、管路を流れる冷却水の温度を計測する温度計12Aを備える。
【0046】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分において発生する凝縮水を貯える凝縮水タンク4Cを備える。凝縮水タンク4Cは、熱交換器3Dのシェル部分の底部と連通するように設けられる。また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分の底部と、凝縮水タンク4Cとの間に、フロートタイプの排水弁5Cを備える。
【0047】
また、メタンガス生成装置100は、凝縮水タンク4Cと接続し、凝縮水タンク4Cから凝縮水を排水させる排水管を備える。また、メタンガス生成装置100は、当該配水管の途中に、排水量を調整する調整弁6Cと、調整弁6Cを制御する弁制御装置7Cを備える。弁制御装置7Cは、調整弁6Cを制御することにより、凝縮水タンク4C内の凝縮水の水量を調整する。
【0048】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分と連結され、熱交換器3Dのシェル部分から流出したメタンガスが通過する配管を備える。また、メタンガス生
成装置100は、当該配管の途中に温度計12Bと、圧力指示調節器13と、圧力制御弁14とを備える。温度計12Bは、当該配管を流れるメタンガスの温度を計測する。また、圧力指示調節器13が圧力制御弁14を制御することにより、当該配管内の圧力は調整される。
【0049】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分から流出したメタンガスを製品ガスとして系外へ供給する配管と、当該配管から分岐し、パージ装置50と連結する配管とを備える。ここで、パージ装置50は、メタンガスに含まれる未反応の反応物等の不純物をメタンガスからパージする。
【0050】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分から流出したメタンガスを製品ガスとして系外へ供給する配管の途中と、当該配管から分岐し、パージ装置50と連結する配管の途中とに、On-Off弁15A、15Bを備える。On-Off弁15A、15Bが制御されることにより、熱交換器3Dから流出したメタンガスを製品ガスとして供給するか、あるいは熱交換器3Dから流出したメタンガスをパージ装置50へ送ってパージするかが決定される。
【0051】
また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分とパージ装置50との間に、バルブ付きダンプナー16を備える。パージ装置50へ送られるメタンガスは、バルブ付きダンプナー16を通過することにより、その脈動は抑制されることとなる。
【0052】
また、メタンガス生成装置100の反応塔1A、1Bは、反応器2A、2Bを囲むようにジャケット17A、17Bを夫々備える。ジャケット17A、17Bには、熱媒油が流入する。ジャケット17A、17Bに熱媒油が流入することにより、反応器2A、2B内の物質と熱媒油とが熱交換させられ、反応器2A、2B内の物質の温度の変動は抑制される。すなわち、反応器2A、2B内において式(1)のメタネーション反応は安定的に進行することとなる。
【0053】
また、メタンガス生成装置100は、上記の熱媒油を貯める熱媒油タンク18を備える。また、メタンガス生成装置100は、熱媒油タンク18内の熱媒油を加熱するためのヒータ19を備える。
【0054】
また、メタンガス生成装置100は、熱媒油タンク18と接続し、熱媒油タンク18から熱媒油を排出させる排出管を備える。また、メタンガス生成装置100は、当該排出管の途中に、弁9C、9Dと、弁9C、9Dを制御する弁制御装置20を備える。弁制御装置20は、弁9C、9Dを制御することにより、熱媒油タンク18に貯められる熱媒油量を調整する。
【0055】
また、メタンガス生成装置100は、熱媒油タンク18と、ジャケット17A、17Bとを接続し、熱媒油を循環させる循環管路を備える。そして、メタンガス生成装置100は、熱媒油タンク18とジャケット17Aとの間の管路に、熱媒油タンク18から流出させる熱媒油量を調整する弁9Eと、流出した熱媒油をジャケット17Aへ圧送するポンプ21を備える。また、メタンガス生成装置100は、ジャケット17Aへ送られる熱媒油の圧力を制御する圧力制御器10Bと、弁9Fと、ジャケット17Aへ送られる熱媒油の流量を制御する流量制御器11Bを備える。
【0056】
また、メタンガス生成装置100は、熱媒油の循環管路の途中であってジャケット17Aの上流に、熱媒油の温度を計測し、ヒータ19を制御する温度指示調節器22Aを備える。また、メタンガス生成装置100は、熱媒油の循環管路の途中であってジャケット17Aとジャケット17Bとの間に温度計12Cを備える。
【0057】
また、メタンガス生成装置100は、熱媒油の循環管路の途中であって、ジャケット17Bの下流に熱媒油を冷却させる熱媒油冷却器23を備える。熱媒油冷却器23は、例えばシェルアンドチューブ型熱交換器である。熱媒油冷却器23のシェル部分には、ジャケット17Bから流出した熱媒油が流入する。一方、熱媒油冷却器23のチューブ部分には、系外から冷却水が供給される。
【0058】
また、メタンガス生成装置100は、熱媒油の循環管路の途中であって、ジャケット17Bと熱媒油冷却器23との間に、熱媒油の温度を計測する温度計12Dを備える。また、メタンガス生成装置100は、ジャケット17Bと熱媒油冷却器23との間の熱媒油の循環管路から分岐し、熱媒油冷却器23を経由せずに熱媒油タンク18と接続する分岐配管を備える。そして、メタンガス生成装置100は、当該分岐配管の途中に温度制御弁24を備える。また、メタンガス生成装置100は、熱媒油冷却器23と熱媒油タンク18との間を流れる熱媒油の温度を計測する温度計12Eと、温度計12Eによる計測値に基づき温度制御弁24の制御を行う温度指示調節器22Bを備える。温度制御弁24が制御されることにより、ジャケット17Bから流出した熱媒油のうち、熱媒油冷却器23を経由して熱媒油タンク18へ冷却されて戻る量と、熱媒油冷却器23を経由せずに熱媒油タンク18へ戻る量とが決定される。このようにして熱媒油の冷却量は調整される。
【0059】
<生成フロー例>
次に、メタンガス生成装置100の動作によりメタンガスが生成されるフローの一例を説明する。メタンガスを生成するに当たって、
図1に示されるヒータ19が起動される。そして、熱媒油タンク18内の熱媒油が加熱される。そして、弁9Eが開けられ、ポンプ21が起動される。このような動作により、熱媒油が、ジャケット17A、17Bへ循環させられる。熱媒油がジャケット17Aへ圧送される際の圧力は、圧力制御器10Bによって所望の値に制御される。また、熱媒油の循環流量は、流量制御器11Bによって所望の値に制御される。また、ヒータ19は、反応塔2A、2Bにおいて反応物の反応が進行する温度の近傍まで熱媒油タンク18内の熱媒油を加温するために、温度指示調節器22Aによる指示に基づき、制御される。このようにして、ジャケット17A、17Bには、所望の温度、圧力の熱媒油が循環することとなる。ここで、ジャケット17A、17Bに流入する熱媒油の所望の温度とは、式(1)のメタネーション反応が進行することのできる温度のことであり、例えば200℃程度である。また、熱媒油冷却器23のチューブ部分には、冷却水が供給される。また、チラー8と熱交換器3Dとの間には、冷却水が循環させられる。
【0060】
図3は、上記のようにメタンガス生成装置100においてメタンガスの生成の準備がなされた後に、メタンガス生成装置100によりメタンガスが生成されるフローチャートの一例を示している。
【0061】
(ステップS101)
ステップS101では、二酸化炭素ガスと水素ガスとを含む反応物が、熱交換器3Aのシェル部分に流入させられる。そして、シェル部分に流入する二酸化炭素ガスと水素ガスとを含む反応物は、直線状に進行せず、熱交換器3Aの内壁30に当たることによって拡散されることとなる。よって、反応物は、混合撹拌することとなる。このように混合撹拌した反応物は、熱交換器3Aのシェル部分から流出し、熱交換器3Bのシェル部分へ流入する。そして上記の反応物は、同様にさらに混合撹拌し、反応器2Aへ流入する。
【0062】
(ステップS102)
ステップS102では、反応器2Aにおいて、流入した反応物のメタネーション反応が進行する。メタネーション反応の進行により、生成物としてメタンガスが生成される。ま
た、副生成物として水蒸気が生成される。メタネーション反応が進行している場合、メタネーション反応により生じた熱は、ジャケット17Aを流れる熱媒油に吸収される。すなわち、反応器2A内の温度の変動は抑制され、反応器2Aにおけるメタネーション反応は安定的に進行することとなる。
【0063】
また、メタネーション反応により生じた熱の一部は、メタンガスと水蒸気を含む生成物と、未反応の反応物とを含む第1の生成物にも吸収される。すなわち、第1の生成物の温度は、反応器2Aへ流入する反応物の温度よりも高い状態となっている。そして、それら第1の生成物は、メタネーション反応により生じた圧力によって反応器2Aから流出し、熱交換器3Bのチューブ部分へ流入する。
【0064】
(ステップS103)
ステップS103では、熱交換器3Bにおいて、第1の生成物と、反応器2Aへ送られる前の反応物とが熱交換する。熱交換器3Bのチューブ部分に流入した第1の生成物と、熱交換器3Bのシェル部分に流入した反応器2Aへ送られる前の反応物とが熱交換する。ここで、第1の生成物の温度は、反応器2Aへ送られる前の反応物の温度よりも高い状態となっている。よって、熱交換器3Bのシェル部分において、反応器2Aへ送られる前の反応物は、混合撹拌されつつも予熱されることとなる。
【0065】
一方、熱交換器3Bのチューブ部分を流れる第1の生成物は反応物と熱交換することにより冷却させられる。そして、第1の生成物に含まれる水蒸気が冷却させられて凝縮水が発生する場合、発生した凝縮水は熱交換器3Bのチューブ部分の出口の底部に溜まる。そして、熱交換器3Bのチューブ部分の出口の底部に溜まった凝縮水は、排水弁5Bが開けられることにより、凝縮水タンク4Bへ流入する。凝縮水タンク4Bへ貯まった凝縮水の温度は、例えば100度以上である。また、熱交換器3Bのチューブ部分を流れる第1の生成物は、冷却後に熱交換器3Aのチューブ部分へ流入する。
【0066】
(ステップS104)
ステップS105では、熱交換器3Bに加えて、熱交換器3Aにおいて、第1の生成物と、反応器2Aへ送られる前の反応物であって熱交換器3Bへ送られる前の反応物とが熱交換する。熱交換器3Aにおいて第1の生成物は、さらに冷却される。ここで、熱交換器3A、3Bの伝熱交換面積の合計は、チューブ部分を通過する生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮させる値である。よって、熱交換器3Aにおいては、第1の生成物に含まれる水蒸気が冷却させられて凝縮水が発生することとなる。そして、発生した凝縮水は熱交換器3Aのチューブ部分の出口の底部に溜まる。そして、熱交換器3Aのチューブ部分の出口の底部に溜まった凝縮水は、排水弁5Aが開けられることにより、凝縮水タンク4Aへ流入する。凝縮水タンク4Aへ貯まった凝縮水の温度は、例えば100度以上である。また、水蒸気は、熱交換器3Bから熱交換器3Aへと段階的に冷却されている。よって、凝縮水タンク4Aに貯まる凝縮水の温度は、凝縮水タンク4Bに貯まる凝縮水の温度よりも低下している。また、熱交換器3Aのシェル部分を通過する反応物は、反応物よりも温度の高い第1の生成物と熱交換するため、熱交換器3Bへ送られる前においても予熱されることとなる。
【0067】
(ステップS105)
ステップS105では、熱交換器3Aのチューブ部分において冷却させられた第1の生成物が、熱交換器3Cのシェル部分へ流入する。そして、第1の生成物は、直線状に進行せず、熱交換器3Cの内壁30に当たることによって拡散されることとなる。よって、第1の生成物は、混合撹拌することとなる。その後、熱交換器3Cのシェル部分において混合撹拌された第1の生成物は、反応器2Bへ送られる。
【0068】
ここで、熱交換器3A、3Bの伝熱交換面積の合計は、チューブ部分を通過する生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮させる値であるため、熱交換器3A又は3Bにおいて水蒸気の一部は、凝縮水として分離させられている。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物と生成物との関係は、水蒸気の分離により化学平衡状態では無くなっている。よって、反応器2Bへ送られた第1の生成物に含まれる未反応の反応物はメタネーション反応することとなる。
【0069】
(ステップS106)
ステップS106では、反応器2Bへ流入した第1の生成物に含まれる未反応の反応物から、メタネーション反応によりメタンガスがさらに生成される。また、メタネーション反応により生じた熱は、ジャケット17Bを流れる熱媒油に吸収される。すなわち、反応器2B内の温度の変動は抑制され、反応器2Bにおけるメタネーション反応は安定的に進行することとなる。
【0070】
また、反応器2Bでは、生成物として新たにメタンガスが生成され、副生成物として水蒸気もさらに生成されることとなる。すなわち、反応器2Bには、第1の生成物と、反応器2Bにおいて新たに生成された生成物とを含む第2の生成物が存在することとなる。第2の生成物の温度は、発熱反応であるメタネーション反応により生じた熱の少なくとも一部を吸収し、反応器2Bへ流入する反応物(第1の生成物)の温度よりも高い状態となっている。そして、それら第2の生成物は、メタネーション反応により生じた圧力によって反応器2Bから流出し、熱交換器3Cのチューブ部分へ送られる。
【0071】
また、反応熱を吸収した熱媒油の少なくとも一部は、ジャケット17Bから流出し、熱媒油冷却器23のシェル部分へ流入することとなる。熱媒油冷却器23では、熱媒油は、冷却水と熱交換し、冷却される。そして、冷却された熱媒油は、熱媒油タンク18へ戻される。また、温度指示調節器22Bにより熱媒油冷却器23から熱媒油タンク18へ戻される熱媒油の温度が計測される。そして、計測された温度に基づき、温度制御弁24が制御される。つまり、温度制御弁24が制御されることにより、ジャケット17Bから熱媒油冷却器23へ流入する量と、ジャケット17Bから熱媒油冷却器23を経由せずに熱媒油タンクへ直接戻される熱媒油の量とのバランスが調整される。このようにして、循環する熱媒油の温度の変動は抑制される。また、反応物の供給が開始され反応がはじまった後は反応熱が放熱量を上回るためヒータ19は運転が停止されてもよい。ヒータ19の運転が停止される場合、加熱量に使用するエネルギーは節減される。
【0072】
(ステップS107)
ステップS107では、第1の生成物よりも温度の高い第2の生成物が熱交換器3Cのチューブ部分へ流入する。一方で、熱交換器3Cのシェル部分には、反応器2Bへ流入する前の第1の生成物が流入している。すなわち、熱交換器3Cにおいて第1の生成物と第2の生成物とが熱交換することとなる。熱交換器3Cにおいて、第1の生成物と第2の生成物とが熱交換することにより、第1の生成物が予熱され、第2の生成物が冷却されることとなる。
【0073】
(ステップS108)
ステップS108では、熱交換器3Cにおいて冷却された第2の生成物は、熱交換器3Dのシェル部分へ送られる。熱交換器3Dにおいては、第2の生成物は、チューブ部分を流れる冷却水によって、さらに冷却される。ここで、熱交換器3Dは、シェル部分を通過する第2の生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮可能な伝熱交換面積を有している。つまり、熱交換器3Dにおいて第2の生成物に含まれる水蒸気の多くが凝縮水となり、熱交換器3Dのシェル部分の底部に溜まる。そして、熱交換器3Dのシェル部分の底部に溜まった凝縮水は、排水弁5Cが開けられることにより、凝縮水タンク4Cへ流入する。凝縮水
タンク4Cへ貯まった凝縮水の温度は、例えば100度以上である。
【0074】
また、熱交換器3Dのシェル部分において冷却された第2の生成物には、熱交換器3Dが水蒸気を水へと凝縮させる伝熱交換面積を有するため、水蒸気がほぼ含まれていない。また、第2の生成物に残存する未反応の反応物は、反応器2Bにおけるメタネーション反応によって、ほぼ無くなっている。よって、熱交換器3Dのシェル部分から流出したメタンガスは、製品ガスとして系外へ供給され得る。メタンガスが製品ガスとして系外へ供給される場合、On-Off弁15Aが閉じられ、On-Off弁15Bが開けられる。また、メタンガス生成装置100は、熱交換器3Dのシェル部分から流出したメタンガスを、パージ装置50へ送り、メタンガスに混合する微量の不純物をパージさせることもできる。メタンガスがパージ装置50へ送られてパージされる場合、On-Off弁15Aが開けられ、On-Off弁15Bが閉じられる。
【0075】
<作用・効果>
上記のようなメタンガス生成装置100であれば、熱交換器3A、3Bにおいて、反応器2Aに流入するメタネーション反応前の反応物は予熱される。また、熱交換器3Cにおいて、反応器2Bに流入する第1の生成物は予熱される。よって、反応器2A、2Bにおいてメタネーション反応は、促進される。
【0076】
また、反応器2Aにおいて生成されたメタンガスは、熱交換器3A、3Bにおいて冷却され、反応器2Bにおいて生成されたメタンガスは、熱交換器3C、3Dにおいて冷却される。そして、熱交換器3A、3B、3C、3Dにおいてメタンガスに含まれる水蒸気が凝縮されて排水される場合、メタンガスの飽和蒸気圧は低下する。すなわち、メタンガスの取り扱いは容易となる。
【0077】
また、熱交換器3A、3Bでは、反応器2Aにおいてメタネーション反応が行われる前の反応物と、メタネーション反応により生成されるメタンガスを含む第1の生成物とが熱交換することにより、反応物の予熱と第1の生成物の冷却が実現されている。また、熱交換器3Cでは、反応器2Bにおいてメタネーション反応が行われる前の反応物(第1の生成物に含まれる未反応の反応物)と、メタネーション反応により生成されるメタンガスを含む第2の生成物とが熱交換することにより、反応物の予熱と第2の生成物の冷却が実現されている。つまり、上記のようなメタンガス生成装置100は、反応物の予熱、及びメタンガスを含む生成物の冷却のために夫々別個の熱交換器を設けていない。よって、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、反応物の予熱、及びメタンガスの冷却のためのエネルギーを節減することができる。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置100は、メタンガスの生成効率を向上させることができる。また、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、反応物の予熱と生成物の冷却とを別々に行う場合に比べてメタンガス生成装置をコンパクトにすることができる。
【0078】
また、反応物の予熱、及びメタンガスを含む生成物の冷却のために夫々別個の熱交換器が設けられる場合、反応物量が変動すると、反応物量の変動前と比較して反応物の予熱後の温度は変動することなる。よって、反応物の予熱後の温度の変動を抑制するためには、反応物と熱交換する熱媒体の流量を反応物量に応じて制御する必要がある。また、生成物量が変動した場合にも、同様に、生成物量の変動前と比較して生成物の冷却後の温度は変動することなる。よって、生成物の冷却後の温度の変動を抑制するためには、生成物と熱交換する熱媒体の流量を生成物量に応じて制御する必要がある。しかしながら、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、熱交換器3A、3Bへ流入する反応物量が変動した場合、反応器2Aから流出して熱交換器3A、3Bへ流入し、反応物と熱交換する第1の生成物の量は、当該反応物量に従って変動することとなる。すなわち、熱交換器3A、3Bへ流入する反応物量が変動した場合であっても、熱交換器3A、3Bにおいて反応物と熱交換する第1の生成物の流量を反応物量に応じて制御しなくとも、自律的に反応物
の予熱後の温度の変動は抑制される。
【0079】
また、熱交換器3A、3Bから流出する第1の生成物量が変動した場合であっても、同様に、熱交換器3A、3Bにおいて第1の生成物と熱交換する反応物の流量を第1の生成物量に応じて制御しなくとも、自律的に第1の生成物の冷却後の温度の変動は抑制される。すなわち、反応物の予熱の変動の抑制や第1の生成物の冷却の変動の抑制ための構成が不要である。また、熱交換器3Cにおいても同様のことが言え、第1の生成物の予熱の変動の抑制や第2の生成物の冷却の変動の抑制ための構成が不要である。
【0080】
また、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、反応物は、熱交換器3A、3Bにおいて、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過する。よって、シェル部分の内壁30に反応物が当たることによって反応物が拡散される。すなわち、反応物の混合撹拌が促進される。よって、熱交換器3A、3Bにおいて予熱され、混合撹拌された反応物が流入する反応器2Aにおいて、メタネーション反応は促進される。
【0081】
また、熱交換器3Cにおいても、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を第1の生成物は通過する。そして、熱交換器3Cは、熱交換器3A、3Bと同タイプの熱交換器である。よって、熱交換器3Cのシェル部分の内壁30に反応物があたることによって第1の生成物が拡散される。よって、第1の生成物の混合撹拌は促進される。よって、熱交換器3Cにおいて予熱され、混合撹拌された第1の生成物が流入する反応器2Bにおいて、メタネーション反応は促進される。すなわち、メタネーション反応の促進のために、熱交換器3A、3B、3Cの他に新たな機器を設け、反応物の混合撹拌を行わずに済む。よって、メタンガスの生成効率は向上する。また、メタンガス生成装置100のコンパクト化も実現される。
【0082】
また、反応器2Aから流出した第1の生成物は、反応器2A内の圧力を受けて、夫々熱
交換器3A、3Bのチューブ部分を通過し、反応器2Bから流出した第2の生成物は、反応器2B内の圧力を受けて、熱交換器3Cのチューブ部分を通過する。すなわち、第1の生成物及び第2の生成物が熱交換器3A、3B、3Cを通過するためのポンプや圧縮機などの圧送手段を新たに設けずに済む。すなわち、第1の生成物及びよって、圧送に要する動力を節減でき、省エネルギー化は実現される。
【0083】
また、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、熱交換器3A、3Bの伝熱交換面積の合計は、チューブ部分を通過する第1の生成物に含まれる水蒸気を水へと凝縮させる値である。よって、熱交換器3A、3Bにおいて、生成物に含まれる水蒸気の少なくとも一部は、水へと凝縮させられる。つまり、水蒸気は、容易にメタンガスから分離される。よって、メタンガスの純度を容易に高めることができる。
【0084】
また、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、反応器2Aから流出する第1の生成物には、未反応の反応物が含まれている。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物と、第1の生成物に含まれるメタンガス及び水蒸気とは化学平衡状態の関係にある。ここで、熱交換器3A又は熱交換器3Bにおいて水蒸気が第1の生成物から分離される場合、当該化学平衡状態の関係が変化する。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物とメタンガス及び水蒸気との関係は、水蒸気の分離により化学平衡状態の関係ではなくなっている。よって、熱交換器3A、3Bを通過し、反応器2Bへ送られた第1の生成物は、それに含まれる未反応物の反応物がメタネーション反応することとなる。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物からメタンガスが再度生成されることとなる。すなわち、第1の生成物に含まれる未反応の反応物の割合が減り、第1の生成物に含まれるメタンガスの割合が増える。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置100であれば、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0085】
また、上記のメタンガス生成装置100では、熱交換器3Cにおいて熱交換器3Bから流出した第1の生成物を再度予熱し、混合撹拌した後に、反応器2Bへ送っている。よって、反応器2Bにおけるメタネーション反応は促進され、メタンガス生成効率は向上することとなる。
【0086】
また、熱交換器3Aにおいて凝縮水が第1の生成物から分離され、熱交換器3Aから排水される場合、第1の生成物全体の熱容量は低下することとなる。換言すれば、第1の生成物は、凝縮水が分離される前と比較して速やかに冷却可能となる。よって、上記のような直列に接続された熱交換器3A、3Bでは、熱交換器3Aの伝熱交換面積を縮小し、熱交換器3Aをコンパクトにすることができる。
【0087】
また、上記のようなメタンガス生成装置100は、熱交換器3A、3Bの両方において凝縮水が発生する場合、凝縮水タンク4A、4Bにおいて温度の異なる凝縮水が貯められることとなる。そして、これら温度の異なる凝縮水を再利用すれば省エネルギー化は実現される。凝縮水の再利用の一例としては、パージ装置50が、メタンガスを透過させ、メタンガスに含まれる不純物を透過させない膜を備える装置である場合、膜を透過する前のメタンガスを加温するために使用されることが挙げられる。このようなメタンガス生成装置100であれば、膜に流入するメタンガスが結露することは抑制され、パージ装置50の運用に影響が及ぶことは抑制される。
【0088】
なお、上記の実施形態において反応物の供給圧力が充分であれば、圧縮機の断熱圧縮による原料物の加温などは不要である。
【0089】
<変形例1>
上記のメタンガス生成装置100では、熱交換器3A、3Bにおいて凝縮水が発生する場合、発生した凝縮水は、熱交換器3A、3Bから排水されている。しかし、熱交換器3A、3Bにおいて凝縮水が発生した場合であっても、発生した凝縮水は熱交換器3A、3Bから排水されなくともよい。メタンガス生成装置100Aは、熱交換器3A、3Bのチューブ部分の出口の底部と連通する凝縮水タンク4A、4B及び排水弁5A、5Bを備えていない点でメタンガス生成装置100と構成が異なる。
【0090】
ここで、メタンガス生成装置100Aのように、凝縮水の排水手段を備えず、熱交換器を2台直列に並べる場合の反応物と生成物との熱交換効率について検証を行った。
図4は、熱交換器を2つ直列に並べた場合(以下、(A)という)の、反応物の流量あたりの伝熱交換面積に対する、熱交換器から流出する反応物の温度と熱交換器へ流入する反応物の温度との差が例示されている。また、
図4には、熱交換器を1つ設けた場合(以下、(B)という)の、反応物の流量あたりの伝熱交換面積に対する、熱交換器から流出する反応物の温度と熱交換器へ流入する反応物の温度との差も例示されている。
【0091】
また、
図5は、(A)の構成の概要、及び(B)の構成の概要の一例を示している。
図5に示されるように、(A)は、メタンガス生成装置100Aに設けられる熱交換器3A、3B、及び反応塔1Aから形成される。そして、熱交換器3Aのシェル部分、及び熱交換器3Bのシェル部分にメタネーション反応前の反応物が流入する。そして、熱交換器3Aのチューブ部分、及び熱交換器3Bのチューブ部分にメタネーション反応後の生成物が流入する。
【0092】
また、
図4に示される、反応物の流量あたりの伝熱交換面積は、熱交換器3Aの伝熱交換面積と熱交換器3Bの伝熱交換面積との和である。また、
図4に示される、熱交換器に流出入する反応物の温度差は、熱交換器3Bのシェル部分から流出する反応物の温度(T
1A)から、熱交換器3Aのシェル部分へ流入する反応物の温度(T2A)を差し引いた値である。
【0093】
一方、(B)は、1つの熱交換器3Eおよび反応塔1Aから形成される。そして、熱交換器3Eのシェル部分にメタネーション反応前の反応物が流入する。そして、熱交換器3Eのチューブ部分にメタネーション反応後の生成物が流入する。また、
図4に示される、反応物の流量あたりの伝熱交換面積は、熱交換器3Eの伝熱交換面積のことである。また、
図4に示される、熱交換器に流出入する反応物の温度差は、熱交換器3Eのシェル部分から流出する反応物の温度(T1B)から、熱交換器3Eのシェル部分へ流入する前の反応物の温度(T2B)を差し引いた値である。
【0094】
図4に示されるように、(A)の場合は、反応物の流量あたりの熱交換器の伝熱交換面積に関わらず、(B)の場合よりも熱交換器に流出入する反応物の温度差は大きい結果となっている。すなわち、熱交換器を2台直列に並べる構成は、熱交換器が1台設けられる構成よりも熱交換効率が向上することが確認された。また、熱交換器を2台直列に並べる構成は、凝縮水を排水する排水手段を備えていなくとも熱交換効率が向上することが確認された。換言すれば、(A)の場合は、熱交換器を小型化し、熱交換器の熱交換面積を縮小した場合であっても、(B)の場合と同等の、反応物の予熱効果や生成物の冷却効果を得ることができると言える。よって、(A)の場合は、装置全体をコンパクトにすることができる。
図4、
図5の検証結果から、メタンガス生成装置100Aは、熱交換器3A、3Bを小型化することにより、熱交換器が1台の構成の場合よりもメタンガス生成装置全体をコンパクトにすることができると言える。さらに、メタンガス生成装置100Aは、装置全体をコンパクトにしつつも、熱交換器が1台の構成の場合と同等の熱交換効率を実現することができると言える。
【0095】
<変形例2>
また、メタンガス生成装置は、熱交換器3A、3Bの代替として1台の熱交換器を備えてもよい。
図6は、熱交換器3A、3Bの代替として熱交換器3Fを備えるメタンガス生成装置100Bの概要の一例を示している。熱交換器3Fのシェル部分には、図示しないが熱交換器3Aと同様に、シェル部分の入口から出口へ向かって、互い違いに配置された内壁を備える。そして、熱交換器3Fのシェル部分には、反応器2Aへ送られる反応物が流入する。一方、熱交換器3Fのチューブ部分には、反応器2Aから流出した第1の生成物が流入する。つまり、熱交換器3Fにおいて反応器2Aへ送られる反応物と第1の生成物とが熱交換する。そして、反応器2Aへ送られる反応物が予熱され、また第1の生成物が冷却される。また、反応物は、熱交換器3Fのシェル部分において混合撹拌される。
【0096】
上記のようなメタンガス生成装置100であれば、熱交換器3Fにおいて、反応器2Aに流入するメタネーション反応前の反応物は予熱される。また、熱交換器3Cにおいて、反応器2Bに流入する第1の生成物は予熱される。よって、反応器2A、2Bにおいてメタネーション反応は、促進される。
【0097】
また、反応器2Aにおいて生成されたメタンガスは、熱交換器3F、3C、3Dにおいて冷却される。また、反応器2Bにおいて生成されたメタンガスは、熱交換器3C、3Dにおいて冷却される。そして、熱交換器3F、3C、3Dにおいてメタンガスに含まれる水蒸気が凝縮されて排水される場合、メタンガスの飽和蒸気圧は低下する。すなわち、メタンガスの取り扱いは容易となる。
【0098】
また、熱交換器3Fでは、反応器2Aにおいてメタネーション反応が行われる前の反応物と、メタネーション反応により生成されるメタンガスを含む第1の生成物とが熱交換することにより、反応物の予熱と第1の生成物の冷却が実現されている。また、熱交換器3
Cでは、反応器2Bにおいてメタネーション反応が行われる前の反応物(第1の生成物に含まれる未反応の反応物)と、メタネーション反応により生成されるメタンガスを含む第2の生成物とが熱交換することにより、反応物の予熱と第2の生成物の冷却が実現されている。つまり、上記のようなメタンガス生成装置100Bは、反応物の予熱、及びメタンガスを含む生成物の冷却のために夫々別個の熱交換器を設けていない。よって、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、反応物の予熱、及びメタンガスの冷却のためのエネルギーを節減することができる。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置100Bは、メタンガスの生成効率を向上させることができる。また、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、反応物の予熱と生成物の冷却とを別々に行う場合に比べてメタンガス生成装置をコンパクトにすることができる。
【0099】
また、反応物の予熱、及びメタンガスを含む生成物の冷却のために夫々別個の熱交換器が設けられる場合、反応物量が変動すると、反応物量の変動前と比較して反応物の予熱後の温度は変動することなる。よって、反応物の予熱後の温度の変動を抑制するためには、反応物と熱交換する熱媒体の流量を反応物量に応じて制御する必要がある。また、生成物量が変動した場合にも、同様に、生成物量の変動前と比較して生成物の冷却後の温度も変動することなる。よって、生成物の冷却後の温度の変動を抑制するためには、生成物と熱交換する熱媒体の流量を生成物量に応じて制御する必要がある。しかしながら、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、熱交換器3Fへ流入する反応物量が変動した場合、反応器2Aから流出して熱交換器3Fへ流入し、反応物と熱交換する第1の生成物の量は、当該反応物量に従って変動することとなる。すなわち、熱交換器3Fへ流入する反応物量が変動した場合であっても、熱交換器3Fにおいて反応物と熱交換する第1の生成物の流量を反応物量に応じて制御しなくとも、反応物の予熱後の温度の変動は自律的に抑制される。
【0100】
また、熱交換器3Fから流出する第1の生成物量が変動した場合であっても、熱交換器3Fにおいて第1の生成物と熱交換する反応物の流量を第1の生成物量に応じて制御しなくとも、第1の生成物の冷却後の温度の変動は自律的に抑制される。すなわち、反応物の予熱の変動の抑制や第1の生成物の冷却の変動の抑制ための構成が不要である。また、熱交換器3Cにおいても同様のことが言え、第1の生成物の予熱の変動の抑制や第2の生成物の冷却の変動の抑制ための構成が不要である。
【0101】
また、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、反応物は、熱交換器3Fにおいて、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を通過する。よって、シェル部分の互い違いに設けられた内壁に反応物が当たることによって反応物が拡散される。よって、反応物の混合撹拌が促進される。よって、熱交換器3Fにおいて予熱され、混合撹拌された反応物が流入する反応器2Aにおいて、メタネーション反応は促進される。同様にして、熱交換器3Cにおいて、シェルアンドチューブ型熱交換器のシェル部分を第1の生成物は通過する。よって、第1の生成物の混合撹拌は促進される。よって、熱交換器3Cにおいて予熱され、混合撹拌された第1の生成物が流入する反応器2Bにおいて、メタネーション反応は促進される。すなわち、メタネーション反応の促進のために、熱交換器3F、3Cの他に新たな機器を設け、反応物の混合撹拌を行わずに済む。よって、メタンガスの生成効率は向上する。また、メタンガス生成装置100Bのコンパクト化も実現される。
【0102】
また、反応器2A、2Bから流出した第1の生成物及び第2の生成物は、反応器2A、2B内の圧力を受けて、夫々熱交換器3F、3Cのチューブ部分を通過する。すなわち、第1の生成物及び第2の生成物が熱交換器3F、3Cを通過するためのポンプや圧縮機などの手段を新たに設けずに済む。よって、圧送に要する動力を節減でき、省エネルギー化は実現される。
【0103】
また、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、反応器2Aから流出する第1の生成物には、未反応の反応物が含まれている。そして、メタネーション反応は、可逆反応である。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物と、第1の生成物に含まれるメタンガス及び水蒸気とは化学平衡状態の関係にある。ここで、熱交換器3Fにおいて水蒸気が第1の生成物から分離される場合、当該化学平衡状態の関係が変化する。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物とメタンガス及び水蒸気との関係は、水蒸気の分離により化学平衡状態の関係ではなくなっている。よって、熱交換器3Cを通過し、反応器2Bへ送られた第1の生成物は、それに含まれる未反応物の反応物がメタネーション反応することとなる。つまり、第1の生成物に含まれる未反応の反応物からメタンガスが再度生成されることとなる。すなわち、第1の生成物に含まれる未反応の反応物の割合が減り、第1の生成物に含まれるメタンガスの割合が増える。すなわち、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、生成されるメタンガスの純度は高まることとなる。
【0104】
また、上記のメタンガス生成装置100Bでは、熱交換器3Cにおいて熱交換器3Bから流出した第1の生成物を再度予熱し、混合撹拌した後に、反応器2Bへ送っている。よって、反応器2Bにおけるメタネーション反応は促進され、メタンガス生成効率は向上することとなる。
【0105】
また、熱交換器3Fの伝熱交換面積は、0.005[m
2/(L/min)]以上であってもよい。
図7は、反応物の流量あたりの熱交換器3Fの伝熱交換面積に対する熱交換器3Fから流出した第1の生成物の温度の一例を示している。また、
図7は、熱交換器3Fのチューブ内の圧力が、熱交換器3Fのチューブ内の定格圧力(0.4MPaG)の場合、定格圧力よりも低い大気圧の場合、そして、定格圧力よりも高い0.7MPaGの計3つの異なる場合の夫々について、第1の生成物の温度がプロットされている。また、
図8は、圧力に対する水の沸点の一例を示している。
図7、
図8より、熱交換器3Fの伝熱交換面積が、0.005[m
2/(L/min)]以上であれば、熱交換器3Fのチューブ内の圧力に関わらず、水蒸気は凝縮水へと変化することが分かる。よって、上記のようなメタンガス生成装置100Bであれば、多くの凝縮水が発生することとなる。よって、発生した凝縮水を熱交換器3Fから排出し、第1の生成物に含まれる未反応の反応物のメタネーション反応を促進させることができる。よって、メタンガスを高純度化することができる。また、得られた凝縮水をメタンガス生成装置100のように再利用し、省エネルギー化を実現することもできる。
【0106】
また、上記の熱交換器3A、3Bでは、シェル部分を反応物が通過し、チューブ部分を第1の生成物が通過しているが、シェル部分を第1の生成物が通過し、チューブ部分を反応物が通過してもよい。そして、このような場合、凝縮水タンク4A、4Bは、熱交換器3A、3Bのシェル部分の底部と夫々連通するように設けられる。
【0107】
また、上記のようなメタンガス生成装置では、反応塔が2つ設けられているが、反応塔の個数は何個でもよい。また、熱媒油は、水などの他の熱媒体でもよい。また、熱媒油冷却器23へ供給される冷却水は、チラー8から供給されてもよい。
【0108】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0109】
1A、1B・・反応塔;2A、2B・・反応器;3A、3B、3C、3D、3E、3F・・熱交換器;4A、4B、4C・・凝縮水タンク;5A、5B、5C・・排水弁;6A、6B、6C・・調整弁;7A、7B、7C・・弁制御装置;8・・チラー;9A、9B、9C、9D、9E、9F・・弁;10A、10B・・圧力制御器;11A、11B・・流
量制御器;12A、12B、12C、12D、12E・・温度計;13・・圧力指示調節器;14・・圧力制御弁;15A、15B・・On-Off弁;16・・バルブ付きダンプナー;17A、17B・・ジャケット;18・・熱媒油タンク;19・・ヒータ;20・・弁制御装置;21・・ポンプ;22A、22B・・温度指示調節器;23・・熱媒油冷却器;24・・温度制御弁;30・・内壁;50・・パージ装置;100、100A、100B・・メタンガス生成装置