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  • 特許-建設現場を再現した学習支援装置 図1
  • 特許-建設現場を再現した学習支援装置 図2
  • 特許-建設現場を再現した学習支援装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】建設現場を再現した学習支援装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 7/04 20060101AFI20241001BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241001BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
G09B7/04
G06Q50/08
G09B9/00 Z
G09B19/00 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019096110
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190644
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-04-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000156204
【氏名又は名称】株式会社淺沼組
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】松井 亮夫
【合議体】
【審判長】道祖土 新吾
【審判官】門 良成
【審判官】嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128510(JP,A)
【文献】特開平11-345228(JP,A)
【文献】特開2005-275939(JP,A)
【文献】特開2012-123241(JP,A)
【文献】特許第6397146(JP,B1)
【文献】特開2018-200699(JP,A)
【文献】特開2007-57578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ装置と、現場仮想体験を実現する3Dデータを格納した現場仮想体験ソフトと、個人情報反映処理部と、記憶装置からなる装置であって、前記3Dデータには構築物における危険個所や危険事象、危険行動に関する施工管理や安全管理上の不具合事象を有する座標が埋め込まれると共に、コンピュータ装置では前記現場仮想体験ソフトから読み出して画面表示された3Dデータに埋め込まれた座標に関連した複数の設問を有し、前記座標を指定した場合には前記複数の設問から選択された複数の設問を順次画面に表示し、前記コンピュータ装置では操作者が入力する回答の正誤を判定して採点処理を行い、この採点処理の結果を記憶装置に保存すると同時に、出題の意図や注意点などの解説を表示し、前記個人情報反映処理部では、前記記憶装置に保存された結果を分析して前記複数の設問を新たに選択し、画面表示し、採点することを複数回繰り返して蓄積することを特徴とする建設現場を再現した学習支援装置。
【請求項2】
現場仮想体験処理ソフトと記憶装置は、クラウドに格納した請求項1記載の建設現場を再現した学習支援装置。
【請求項3】
コンピュータ装置とクラウドはデータ通信網によって接続し、このコンピュータ装置は並列の関係で複数台を設置する請求項2記載の建設現場を再現した学習支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、実際の建設現場において施工管理や安全管理などに携わる人が、現場を訪問することなく仮想三次元画像を利用して、建設時に必要な知識を学習することができる支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場における各種の施工管理や安全管理を学習する際には、実際の現場を訪問して十分な知識を有する経験者がひとつひとつ教育することによって、習熟者を育成していた。しかしながら、実際の施工中の現場を経験者を伴って訪問する必要があるため、日程調整などが困難であった。また、施工中の現場そのものの数が限られているため、学習には制約があり、多くの現場経験を伝承することも困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-081549号公報
【文献】特開2018-116571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、作業現場において危険箇所を、危険事象を示す情報とともに画像で表示し、学習データを用いて機械学習を実行するものである。しかし、この特許文献1に示された発明は将来的な拡張性を考慮したものではなく、学習者が繰り返し学習を行った場合には飽きがきてしまう。また、特許文献2に示された発明は、管理システムに備えられた管理サーバにおいて、管理対象を識別して移動体に取り付けた撮影装置によって撮影し、これを撮影位置情報によって所在位置を特定し、これらの情報を記録するものである。しかしながら、特許文献2に示された発明は、管理対象となる人などを識別して、その所在位置を特定することを目的としたものであり、建築現場などにおいて学習者が様々な現象を模擬的に習熟することを目的としたものではない。
【0005】
本発明では、従来のように経験者とともに現場に出向いて経験者の動きなどを見たうえで習熟するという現地学習ではなく、コンピュータプログラムを用いて学習者単独で建設現場における施工管理や安全管理の習熟を行うことができる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、実際の建設現場で起こりうる危険個所や危険事象を3次元CADデータを基にした仮想建設現場空間に構築し、学習者がコンピュータならびにバーチャルリアリティ(仮想現実)機器を通して模擬体験を行う事により多くの建設現場を短い期間(時間)で体験することを可能とする。
【0007】
具体的な手段としては、コンピュータ装置と、現場仮想体験を実現する3Dデータを格納した現場仮想体験ソフトと、個人情報反映処理部と、記憶装置からなる装置であって、前記3Dデータには構築物における危険個所や危険事象、危険行動に関する施工管理や安全管理上の不具合事象を有する座標が埋め込まれると共に、コンピュータ装置では前記現場仮想体験ソフトから読み出して画面表示された3Dデータに埋め込まれた座標に関連した複数の設問を有し、前記座標を指定した場合には前記複数の設問から選択された複数の設問を順次画面に表示し、前記コンピュータ装置では操作者が入力する回答の正誤を判定して採点処理を行い、この採点処理の結果を記憶装置に保存すると同時に、出題の意図や注意点などの解説を表示し、前記個人情報反映処理部では、前記記憶装置に保存された結果を分析して前記複数の設問を新たに選択し、画面表示し、採点することを複数回繰り返して蓄積することを特徴とする建設現場を再現した学習支援装置を利用することとした。ここで、本発明における座標とは、予め3Dデータ内に埋め込んである施工管理や安全管理上の不具合現象を意味する。また、不具合現象とは、たとえばハッチの蓋が外れて開口していたり、水漏れによる不自然な水たまりなどの現象が画面上に表現されていることを意味する。
【0008】
また、現場仮想体験処理ソフトと記憶装置は、クラウドに格納するという手段を採用した。さらに、コンピュータ装置とクラウドはデータ通信網によって接続し、このコンピュータ装置は並列の関係で複数台を設置するという手段も用いた。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、実際の建設現場訪問では容易に体験できない危険個所や危険事象を、様々な種類の建設現場において短い期間(時間)で体験する事で、通常複数年を必要とする安全管理や施工管理の学習を短い期間で実現する事ができ、現場体験が少ない若年職員が起こしやすい施工管理や安全管理上の不具合を減らし、安全で効率的な建設現場を運営することができる。また、学習のための経費を節減すると同時に、機械学習によって学習者が習熟することができるので、全体として工期を短縮することに寄与することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明を利用した教育用アプリケーションシステムの処理フロー図。
図2】本発明の一実施形態の処理フローを示すフローチャート。
図3】本発明をデータ通信網を利用して実現したところを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付した図面に従って説明する。図1は、3次元モデルの建設現場を画面に表示した状態で操作者が教育アプリケーションソフトと建設現場を模擬的に体験できるアプリケーションソフトとを連動させながら逐次学習の段階を進めていくステップを示した概念図である。ここに示した手順は、ログインした後は一連の段階が完了するまでは全ての工程は独立したコンピュータ内で進行する。コンピュータ内にはウエブブラウザ上で表示する教育アプリケーションソフトと、事前に建築の施工手順に従って構築物を組み立てていくためのアプリケーションソフトが組み込まれている。なお、構築物の3Dデータは事前にアプリケーションソフト内のメモリに組み込まれている。
【0012】
まず、教育アプリケーションソフトを起動し(スタート1)、操作者(学習者)は事前に登録されたパスワードなどを画面の指示に従って打ち込む。そうすると、初期操作であれば実績などが開示されずに初期画面が表示される。一方、以前に途中まで学習し、その状態をセーブしている場合にはセーブされたデータが学習実績として画面に表示される。なお、本実施形態では学習の内容に応じてセーブされたデータを基に学習の進捗状況を分析し、次回のそれぞれのアプリケーションソフトで表示される内容を学習段階に応じて自動的に変化させるものである。また教育アプリケーションソフトは設問解答形式とし、連動する現場模擬体験アプリケーションソフトで予め仕込まれている危険個所や危険事象、危険行動などを何度も訪れて体験しながら回答し、教育効果を高めるものである。
【0013】
上記の処理を図1に沿って説明すると、スタート1によって処理が開始されれば、パスワードを打ち込めば個人情報反映処理部2においてパスワードによって特定された情報を検索し、事前のセーブが存在する場合にはセーブされた状態が画面に再現され、特定されたパスワードではセーブデータが存在しなかった場合には初期画面がミッション画面表示処理3によって表示される。そして、操作者が要求されたボタン操作4によって操作を開始すると、予め装置に組み込まれている構築物の3Dデータとともに現場仮想体験ソフト5が起動する。この現場仮想体験ソフト5はコンピュータ装置内に組み込まれる独立したアプリケーションソフトであり、操作者の操作によって任意に呼び出すことができるが、3Dデータは現場仮想体験ソフト5に組み込まれているので、学習時には常駐することになる。なお、3Dデータは単数でもよいが、メモリが許容するのであれば複数の構築物のデータを備え、任意の構築物を操作者が選択することもある。
【0014】
続いて、別のボタン操作6によって学習を開始、あるいは再開すると、構築物が表示された画面の予め設定されている任意の座標を指定した場合には回答時や解説時に出題に関連する3Dデータ内の不具合現象の画像を現場仮想体験ソフト5内で表示する(ステップ7)。たとえば、建設中の構築物において現場監督などが確認すべき事項、あるいは危険箇所が確実に処置されているかどうかなど、実際の現場における確認事項に応じた出題が行われる。出題形式は、基本的にはN択問題であり、正答を選択した場合には採点結果に加算され、誤答である場合には加算されないという採点処理ステップ8が行われる。なお、9は解説表示ステップであり、出題の意図や注意点などが表示される。この解説表示ステップ9はステップ自体を省略することや、操作者がスキップすることも可能である。採点結果が表示されれば、操作者はボタン操作10によってその状態で終了することも可能であり、満足する結果を得られなかったと判断した場合には再度同じ出題に帰還することも可能である。なお、採点処理されたデータは装置内あるいはウエブ内のメモリに必要な情報(たとえば個々のパスワード)とともに記憶装置11に保存される。この場合、再度同じ出題に帰還するという処理を行ったときには、直前の採点とともに保存することも、直前の採点結果に新しい採点結果を上書きすることも装置の設計時の任意事項である。なお、ステップ7では任意の座標を指定すると画面上に出題をポップアップするという手段を採用することも可能である。
【0015】
上記説明はボタン操作によって操作を行うこととしたが、ボタン操作に代えてマウスによる操作も許容されることはもちろんである。なお、現場仮想体験ソフト5と出題との関係は、現場仮想体験ソフト5はたとえば構築物を順を追って時系列にて基礎から完成まで施工する画面を3Dデータによって提供するものであり、出題については個人情報処理部2に関連づけられたデータとして装置内に格納されている。すなわち、予め現場仮想体験ソフト5に埋め込まれた座標を画面上においてポインタで指定すると、この座標に関連づけられた出題項目を画面にポップアップさせるものである。出題項目については別途データベースに格納し、個人情報処理部2からの指示に基づいてデータベースから装置に読み込む処理も可能である。
【0016】
ところで、本発明における個人情報反映処理部2は、パスワードにて特定された操作結果のみを記憶処理するだけでなく、処理された結果が順次処理される操作ステップに反映される。すなわち、現場仮想体験ソフト5では複数の構築物の3Dデータが存在することや、同じ構築物であっても異なる難易度の施工手順が存在し、操作者の学習による習熟レベルに応じて難易度を上げた3D画面を表示することもある。この場合、選択する難易度は採点レベルに対応したレベルでもよいが、複数の難易度から任意の難易度を選択することも可能である。さらにまた、出題内容についてもN択のN数を増減し、難易度を変化させることも可能である。これらの処理は、図中において処理結果の反映12というステップによって実現するものであり、個人情報反映処理部2によって決定された内容は出題ステップ7、採点処理ステップ8、および必要に応じて解説表示ステップ9に反映される。もちろん、このようにして決定された内容は現場仮想体験ソフト5にもコマンドとして与えられ、難易度に応じた構築物の3D画面を呼び出し、新たな学習の開始に備えられる。
【0017】
図2は出題ステップ7から採点処理ステップ8に至る処理手順の一例を示したフローチャートであり、処理が開始されれば一連のグループからなる出題のうち、セーブした段階で設問が残っているかどうかを判断し(ステップ20)、データ群から予めリストに挙げられた設問を一例としてリストの先頭から10問選択し(ステップ21)、選択した問題を任意にシャッフルし(ステップ22)、順次設問を画面に表示して回答を促す(ステップ23)。操作者がボタン、あるいはマウスによって解答をすると順次設問が進行し、10問の回答が終了したかどうかを判断し(ステップ24)、全問に回答を行ったと判断すると自動的に、あるいは操作(ステップ25)によって採点結果が表示される。そして、採点結果は図1の個人情報反映処理部2に記憶され、その処理結果は前述したようにステップ7の出題内容などに反映される。このようにして学習者(操作者)は学習を繰り返し、現場における危険回避などを画面上で習熟する。
【0018】
なお、上記説明は操作者が学習途中でセーブした状態について説明したものであるが、ステップ20において設問が残っているかどうかを判断した場合に全て学習が完了し、未回答の設問はないと判断した場合には、特定のグループからなるデータ群ではなく、装置が備えている全設問をデータベースから読み出し、設問の順序が一定化しないようにシャッフルする(ステップ26)。このステップ26は設問が10問を超える設定をしている場合に作動するものであり、総設問数が10問である場合にはこのステップは働かない。なお、実施形態では10問としているが一例であり、任意のN問として捉えるべきであり、ステップ26が作動するのは総設問数が11以上の場合である。
【0019】
ところで、図1の処理は独立した装置について説明したものであるが、複数の操作者が異なる装置を利用して同時に学習する場合がある。図3はこれに対応するシステムの全体図であって、30A~30Eは5台の端末装置であり、本実施形態では5名の操作者が同時に学習を行うことができる。端末装置の数は任意である。31A~31Eはそれぞれの端末装置に備えられたウエブブラウザであり、このウエブブラウザ31を介して図1に示した現場仮想体験ソフト5を呼び出し、画面に仮想現場を再現する。32はクラウドであり、クラウド32には現場仮想体験ソフト5がアプリケーションソフト33として格納され、さらに操作者がセーブした内容や新たに操作した内容がパスワードなどと関連づけられてデータ34として記憶されている。なお、本実施形態ではこれらのアプリケーションソフト33とデータ34をクラウドを利用して実行操作するものであるが、これらを格納する場所はクラウドに限定されるものではなく、一般的に利用されるホストコンピュータと各端末装置30A~30Eをデータ通信網によって接続する構成であれば、ホストコンピュータの記憶領域に格納することも可能である。
【0020】
本実施形態で説明した内容は一例であって、その他設問の数や設問の種類などは適宜自由に変更することができるのはもちろんである。ここで必要な構成は、現場仮想体験ソフトに格納された3Dデータを操作者が画面に呼び出し、この画面を見ながら危険個所などをチェックし、当該箇所の座標に埋め込まれたコマンドによって適宜出題内容を画面に表示するものであり、学習した内容を個人情報反映処理部において処理し、その処理結果に基づいて出題項目や出題難度、さらに3Dデータの難易度を変更するという全体的な構造である。これを実現することができるものであれば独立装置であっても情報通信網に接続されたシステムであっても問わない。
【符号の説明】
【0021】
2 個人情報反映処理部
3 ミッション画面表示処理
5 現場仮想体験ソフト
8 採点処理ステップ
9 解説表示ステップ
11 記憶装置
30 端末装置
31 ウエブブラウザ
32 クラウド
33 アプリケーションソフト
34 データ
図1
図2
図3