(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】開口部保護を促進するためのサーモクロミック材料及びナノ構造体を有する光リミッタ
(51)【国際特許分類】
G02F 1/17 20190101AFI20241001BHJP
B82Y 20/00 20110101ALI20241001BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20241001BHJP
【FI】
G02F1/17
B82Y20/00
B82Y40/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019215000
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラム, タイ アン
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0342888(US,A1)
【文献】国際公開第2011/071167(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0288318(US,A1)
【文献】米国特許第06296036(US,B1)
【文献】特表2002-501628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部保護を促進するためのシステムであって、前記システムは、0.1W/cm
2~5W/cm
2の範囲の閾値放射照度を有する光リミッタ装置を含み、前記光リミッタ装置は、
複数のナノ構造体であって、前記複数のナノ構造体の少なくともサブセットが、
入射光を受容して、
前記入射光に反応して熱を生成する、
ように構成された複数のナノ構造体と、
10nmから500nmの間の厚みを有する連続層であるサーモクロミック材料であって、前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料のそれぞれの部分に接触し
ており、前記サーモクロミック材料の少なくとも一部は、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって生成される熱に反応して、第1の状態から第2の状態に遷移し、
前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるときには、前記入射光を遮断する、
ように構成されたサーモクロミック材料と
、を含む
、
開口部保護を促進するためのシステム。
【請求項2】
前記複数のナノ構造体の前記サブセットは、前記入射光がある周波数範囲内の周波数を有し且つ少なくとも前記閾値放射照度を有しているときに、前記入射光に反応して振動することにより熱を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記閾値放射照度と前記周波数範囲は、前記複数のナノ構造体の物理特性に少なくとも部分的に基づいている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるとき、前記サーモクロミック材料の前記一部は、前記入射光を吸収すること及び/又は散乱することによって、前記入射光を遮断するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記サーモクロミック材料の前記一部は、
熱によって前記サーモクロミック材料の前記一部が閾値温度を超える温度まで上昇すると、前記第1の状態から前記第2の状態に遷移し、
前記サーモクロミック材料の前記一部が前記閾値温度を下回る温度まで下降すると、前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する、
ように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記サーモクロミック材料に接触している基板層をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数のナノ構造体のうちの少なくとも1つは、コアと前記コアを包含するシェルを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数のナノ構造体は連続メタ材料層の一部を形成し、前記連続メタ材料層は前記サーモクロミック材料に接触している、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムは、ビークル、センサ、又はウェアラブルデバイスであって、前記入射光が前記システムの一又は複数のオペレータに、及び/又は前記システムの一又は複数の構成要素に到達するのを防止するため、前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるときには、前記サーモクロミック材料の前記一部は前記入射光を遮断するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記システムは航空機ビークルであって、
前記システムはさらに、
ハウジングと、
前記ハウジングに連結され、前記光リミッタ装置を受容するように構成された一又は複数の係合要素と、
を備え、
前記光リミッタ装置は、前記一又は複数の係合要素に係合し、光を前記航空機ビークルの中へ選択的に通過させるように構成されている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
基板層を提供することと、
前記基板層の上に前記サーモクロミック材料を配置することと、
前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料に接触するように、前記複数のナノ構造体を提供することと、
前記光リミッタ装置を受容するように構成された一又は複数の係合要素に前記光リミッタ装置を係合することと、
を含む、請求項1に記載のシステムを作る方法。
【請求項12】
前記複数のナノ構造体を提供することは、前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料内に少なくとも部分的に埋め込まれるように、前記サーモクロミック材料全体に前記複数のナノ構造体を分散させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数のナノ構造体を提供することは、前記複数のナノ構造体を含む連続メタ材料層を形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
光リミッタ装置を用いて、開口部保護を促進するための方法であって、
前記光リミッタ装置の複数のナノ構造体の少なくともサブセットによって、入射光を受容することであって、前記ナノ構造体の各々は、前記光リミッタ装置のサーモクロミック材料のそれぞれの部分と接触しており、
前記サーモクロミック材料が、10nmから500nmの間の厚みを有する連続層であり、前記光リミッタ装置が、0.1W/cm
2~5W/cm
2の範囲の閾値放射照度を有するものである、入射光を受容することと、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって、前記入射光に反応し
て熱を生成することと、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって生成された熱に反応して、前記サーモクロミック材料の少なくとも第1の部分を第1の状態から第2の状態に遷移させることと、
前記サーモクロミック材料の前記第1の部分が前記第2の状態にあるときに、前記サーモクロミック材料の前記第1の部分によって、前記入射光を遮断することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記熱は、前記入射光が、ある波長範囲内の波長を有し且つ少なくとも前記閾値放射照度を有しているときに、前記入射光に反応して生成される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して開口部保護に関し、より具体的には、開口部保護を促進するためのサーモクロミック材料及びナノ構造体を有する光リミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
容易に入手可能で安価な光源(例えば、レーザーポインタなど)の増加は、人の目やセンサに対する脅威になってきた。これは、このような光源が目を眩ませる(例えば、一時的に目を眩ませる)ために、及び/又はセンサを損傷させる及び/又は飽和状態にさせるために利用されうるからである。例えば、航空機ビークルのウィンドウを通して照射される光は、パイロットのビークル操縦能力に影響を及ぼすことがあり、深刻な結果につながる可能性がある。
【0003】
残念ながら、従来の多くの開口部保護技術は、入射光に対する反応が遅いか、及び/又はその反応が信頼できないため、望ましくない着色/色づけ(tinting/coloration)を引き起こし、コストを増大させ、及び/又は、開口部保護機構を起動する前に入射光の放射照度が高くなっていることが必要になる。したがって、開口部保護を促進するためには、手法の改良が必要になる。
【発明の概要】
【0004】
本書でさらに記載する様々な実施形態によれば、有害となりうる光からの開口部保護を促進するための光リミッタ装置が提供される。この点に関して、光リミッタ装置は、人の目、センサ、及び/又は多機能構造などを含みうる、一又は複数の開口部に有害となりうる光が到達するのを防止するために利用されうる。一般的に、入射光が有害になりうると見なされるか否かは概して用途固有のものであり、光に関連する周波数及び放射照度に依存しうる。いくつかの実施形態では、光リミッタ装置は、広い帯域幅保護、有害となりうる光に対する高速な応答、有害となりうる光からの迅速な回復、有害となりうることのない光に対しては透過性をもたらす。
【0005】
いくつかの実施形態では、光リミッタ装置は、サーモクロミック材料及びサーモクロミック材料に接するナノ構造体を含む。有害となりうる光が照射されたナノ構造体は、有害となりうる光に反応して、有害となりうる光の電場を捕捉し増幅する。このような電場の捕捉と増幅は、光と結合し、光を吸収し、吸収した光を熱に変換するナノ構造体を含みうる。各ナノ構造体はサーモクロミック材料のそれぞれの部分に接触しているため、光との反応でナノ構造体によって生成される熱は、(例えば、伝導によって)これらのナノ構造体の局所的なサーモクロミック材料部分の加熱を引き起こす。
【0006】
サーモクロミック材料の温度がサーモクロミック材料の相転移温度を超えて上昇すると、サーモクロミック材料は、光の透過を可能にする透明状態から不透明状態に遷移する。サーモクロミック材料の局所的な加熱は、サーモクロミック材料の局所的な部分の遷移を引き起こす。局所的な加熱に反応して不透明状態に遷移するサーモクロミック材料の部分は、有害となりうる光を散乱させ、有害となりうる光が開口部に到達するのを防止する。状況によっては、サーモクロミック材料の遷移した部分が不透明であることは、このような遷移した部分による有害となりうる光の吸収を促進するため、不透明部分の拡大に役立ち、有害となりうる光の緩和を促進する正のフィードバック機構をもたらす。透明状態への遷移は可逆的である。この点に関して、有害となりうる光が取り除かれると(また、任意のさらに有害となりうる光がなくなると)、サーモクロミック材料は冷えて、相転移温度を下回ると、透明状態に戻る。
【0007】
一実施形態により、開口部保護を促進するためのシステムが提供される。システムは、光リミッタ装置を含む。光リミッタ装置は、複数のナノ構造体を含む。複数のナノ構造体の少なくともサブセットは、入射光を受容して、入射光に反応して熱を生成するように構成されている。光リミッタ装置はさらに、サーモクロミック材料を含む。複数のナノ構造体の各々は、サーモクロミック材料のそれぞれの部分に接触している。サーモクロミック材料の少なくとも一部は、複数のナノ構造体のサブセットによって生成される熱に反応して第1の状態から第2の状態に遷移し、サーモクロミック材料の一部が第2の状態になったとき入射光を遮るように構成されている。
【0008】
別の実施形態によれば、システムを製造する方法は、基板層を提供することを含む。方法はさらに、基板層上にサーモクロミック材料を堆積することを含む。方法はさらに、複数のナノ構造体の各々はサーモクロミック材料に接触するように、複数のナノ構造体を提供することを含む。方法はさらに、光リミッタ装置を受容するように構成された一又は複数の係合要素と光リミッタ装置を係合させることを含む。
【0009】
別の実施形態によれば、開口部保護を促進するための方法が提供される。方法は、複数のナノ構造体の少なくともサブセットによって、入射光を受容することを含み、複数のナノ構造体の各々はサーモクロミック材料のそれぞれの部分と接触している方法はさらに、入射光に反応して、複数のナノ構造体のサブセットによって、熱を生成することを含む。方法はさらに、複数のナノ構造体のサブセットによって生成された熱に反応して、サーモクロミック材料の少なくとも一部を第1の状態から第2の状態に遷移させることを含む。方法はさらに、サーモクロミック材料の一部が第2の状態にあるときに、サーモクロミック材料の一部によって入射光を遮ることを含む。
【0010】
本発明の範囲は、参照によりこの節に組み込まれる特許請求の範囲によって定義される。下記の一又は複数の実施形態の詳細な説明を検証することにより、当業者は、本発明の実施形態をより完全に理解し、そのさらなる利点を認識するに至るであろう。これより、まず簡潔に説明される添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一又は複数の実施形態により、開口部保護を促進するための光リミッタ装置を示す。
【
図2A】本開示の一又は複数の実施形態による、
図1の光リミッタ装置への入射光を示す。
【
図2B】本開示の一又は複数の実施形態により、入射光に反応して
図1の光リミッタ装置のサーモクロミック材料に形成された熱ホットスポットを示す。
【
図2C】本開示の一又は複数の実施形態により、入射光が取り除かれて冷えた熱ホットスポットを示す。
【
図3】本開示の一又は複数の実施例による、ナノ構造体の例を示す。
【
図4】本開示の一又は複数の実施例による、ナノ構造体の例を示す。
【
図5A】本開示の一又は複数の実施例による、メタ材料層の例の側面図を示す。
【
図5B】本開示の一又は複数の実施例による、
図5Aのメタ材料層の上面図を示す。
【
図6】本開示の一又は複数の実施形態により、開口部保護を促進するためのプロセスの例のフロー図を示す。
【
図7】本開示の一又は複数の実施形態により、開口部保護を促進するためのシステムを製造するプロセスの例のフロー図を示す。
【
図8】本開示の一又は複数の実施形態により、開口部保護を促進するための光リミッタ装置を有するシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態及びその利点は、下記の詳細な説明を参照することにより最もよく理解できる。同様の参照番号は、一又は複数の図に示されている同様の要素を特定するために使用されていることを理解されたい。図中の表示は本開示の実施形態の例示を目的としており、それを限定することを目的としていない。
【0013】
以下に記載する詳細な説明は、本技術の様々な構成の説明を意図するものであり、本技術を実施することができる構成のみを表すことは意図していない。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。様々な構成要素のサイズ、及びこれらの構成要素間の距離は、図面では一定の縮尺で描かれていないことに留意されたい。詳細な説明は、本技術の完全な理解を提供するために特定の詳細事項を含む。しかし、本技術が本明細書に記載の特定の詳細事項に限定されず、一又は複数の実施形態を使用して実施することができることは当業者には明らか且つ明白であろう。一又は複数の場合においては、本技術の概念が不明瞭となることを避けるため、構造及び構成要素をブロック図で示す。本開示の一又は複数の実施形態は、一又は複数の図によって示され、且つ/又は一又は複数の図に関連して説明され、請求項に記載される。
【0014】
開口部保護を促進するための様々な技術が提供される。いくつかの実施形態では、開口部保護を促進するため、有害となりうる光から一又は複数の開口部を保護するための光リミッタ装置が提供されうる。場合によっては、光リミッタ装置は、有害となりうる光が開口部に到達することを防止しつつ、他の光を通過させて開口部に到達させるように、開口部の前方に実装されうる(例えば、位置づけられうる)。例えば、開口部は、人の目、センサ、及び/又は多機能構造体を含みうる。多機能構造体には、センサ及び/又は構造体に埋め込まれた他の開口部(例えば、多機能開口部)が含まれうる。光リミッタ装置が存在しない場合、有害となりうる光は目を見えなくさせる、及び/又はセンサを破損及び/又は飽和させる可能性がある。
【0015】
一実施形態では、光リミッタ装置は、ビークル(例えば、陸上、海軍、航空、及び/又は宇宙のビークル)、センサ(例えば、レーダシステム)、ウェアラブルデバイス(例えば、眼鏡、保護眼鏡、ゴーグル、暗視ゴーグル、バイザー)、及び/又は一般的には開口部保護が実装されうる任意のシステム(例えば、多機能構造体、又は多機能開口部)内に設けられてよい。場合によっては、光リミッタ装置は、システムの保護を促進するため、システムの透明基板に連結されうる。透明基板は、ガラス、石英、ポリカーボネート、及び/又は他の透明材料を含みうる。一例として、光リミッタ装置は航空機ビークルのフロントガラス上に提供されてよく、光を選択的に通すため眼鏡類の被覆として提供されてもよい。別の実施例として、光リミッタ装置は航空機ビークルのフロントガラスとして提供されてもよい。航空機ビークルで使用される場合には、光リミッタ装置は、(例えば、レーザー攻撃などで)パイロット及び/又は光学機器が標的となりうる入射光に対し、パイロット及び/又は光学機器を保護するために利用されてよい。
【0016】
光リミッタ装置は、サーモクロミック材料(例えば、サーモクロミック媒体とも称される)、及びサーモクロミック材料に接触するナノ構造体を含む。一態様では、ナノ構造体はまた、共振構造体又は集光装置とも称されうる。ナノ構造体は、サーモクロミック材料の表面上にあってよく、サーモクロミック材料内に部分的に埋め込まれてよく、サーモクロミック材料に完全に埋め込まれてよく、及び/又は一般的に、サーモクロミック材料の少なくとも一部に接触するように配置されてもよい。サーモクロミック材料は、サーモクロミック材料の温度変化に反応して相を変化させる、相転移材料である。サーモクロミック材料は、温度が相転移温度を下回るときには透明状態(例えば、透明相と称される)にあり、温度が相転移温度を上回るときには不透明状態(例えば、不透明相、反射状態/相、又は金属状態/相とも称される)にある。相転移温度は、サーモクロミック材料の閾値温度とも称される。一実施形態では、サーモクロミック材料の一部に形成される熱ホットスポットは、当該部分の温度を上昇させる。温度が相転移温度を超えて上昇すると、当該部分は、光を通過させる透明状態から、光を遮る不透明状態に遷移する。
【0017】
サーモクロミック材料のナノ構造体は、サーモクロミック材料内に熱ホットスポットを形成するために利用される。このような熱ホットスポットを形成するため、光リミッタ装置に関連する一連の反応は以下のようになりうる。いくつかの態様では、有害となりうる光が照射されたナノ構造体は、有害となりうる光の電場を捕捉し増幅する。この点で、ナノ構造体は集光装置として動作する。このような電場の捕捉と増幅は、光と結合し、光を吸収し、吸収した光を熱に変換するナノ構造体を含みうる。このように、吸収された熱はナノ構造体の温度を上げる。各ナノ構造体は、サーモクロミック材料の各部分に接触しているため、光に反応してナノ構造体によって生成された光は、これらのナノ構造体の近傍のサーモクロミック材料の一部の(例えば、伝導による)加熱を引き起こす。一態様では、熱ホットスポットは、加熱されたナノ構造体及び/又はサーモクロミック材料の対応する加熱部分を指す。
【0018】
サーモクロミック材料の局所加熱は、サーモクロミック材料のこのような局所部分の透明状態から不透明状態への遷移を引き起こしうる。これに関連して、サーモクロミック材料の相転移温度を超える温度まで加熱されるサーモクロミック材料は、透明状態から不透明状態へ遷移する。局所加熱に反応して形成されたサーモクロミック材料の遷移部分は、有害となりうる光を散乱しうる。これに関連して、不透明状態に遷移するサーモクロミック材料が有害となりうる光の伝播経路と一致して、有害となりうる光の反射(例えば、散乱)を可能にするように、加熱されるサーモクロミック材料の部分は、有害となりうる光によって照射されたナノ構造体と空間的に対応する。一態様では、サーモクロミック材料の遷移した部分の不透明さは、これらの遷移した部分による有害となりうる光の吸収を促進し、その結果、不透明部分を拡大して、有害となりうる光の緩和を促進するのに役立つ正のフィードバック機構を提供する。正のフィードバックによって促進されるため、熱ホットスポットは迅速に拡大し、隣接する熱スポットと融合し、有害となりうる光を散乱する連続的な反射層(例えば、局所的な反射鏡)を効果的に形成する。
【0019】
透明状態への遷移は可逆的である。これに関連して、有害となりうる光が取り除かれると(また、任意の付加的な有害となりうる光がなくなると)、サーモクロミック材料は冷えて(例えば、熱ホットスポットが消えて)、その温度が相転移温度を下回ると、透明状態に遷移する。場合によっては、サーモクロミック材料は元の温度(例えば、局所加熱前の温度)に戻る。このように、サーモクロミック材料の不透明部分は、有害となりうる光によって誘発され、光が取り除かれると消える一時的な散乱中心とみなされうる。一実施形態では、冷却を促進するため、サーモクロミック材料はおよそ10nmから500nmまでの間の厚みを有しうる。薄いサーモクロミック材料は一般的に、厚いサーモクロミック材料よりも急速に加熱され冷却される。いくつかの用途では、ナノ構造体及びサーモクロミック材料によって形成された材料システムは、有害となりうる光に反応して、透明状態から不透明状態へ遷移が1μs未満の所要時間で、及び/又は不透明状態から透明状態へ復帰が1μs未満の所要時間が可能になるように提供される。場合によっては、有害となりうる光が開口部(例えば、人の目)で観測されないようにするためには、透明状態から不透明状態への遷移が約1msの所要時間で十分になることがありうる。
【0020】
ナノ構造体での光の吸収による、有害となりうる光の散乱に加えて、ナノ構造体は光に結合し、光を散乱しうる。このような散乱は、有害となりうる光が開口部に到達するのを防止するため、有害となりうる光(例えば、サーモクロミック材料の加熱を含まない)を直接散乱しうる。場合によっては、このような散乱はまた、相転移温度を超える温度まで(例えば、ナノ構造体の加熱によって)サーモクロミック材料の一部の加熱を誘発し、サーモクロミック材料の当該部分の不透明状態への遷移を引き起こし、サーモクロミック材料が光を散乱するように誘導する。そのため、有害となりうる光の散乱は、主にナノ構造体による光の吸収に関して記述されているが、有害となりうる光はナノ構造体によって直接散乱されうる。さらに、この点に関して、サーモクロミック材料の加熱は、主にナノ構造体による光の吸収に関して記述されているが、ナノ構造体による光の散乱は、サーモクロミック材料の加熱にも寄与しうる。
【0021】
いくつかの態様では、有害となりうる光とは、特定の周波数範囲内にある周波数を有し、且つ閾値を上回る放射照度を有する光のことを指す。周波数及び閾値放射照度は、用途に固有のものになりうる。換言すると、ある用途で有害となりうる光と見なされるものが、別の用途では有害となりうる光と見なされない場合がある。この点に関して、サーモクロミック材料、サーモクロミック材料に接触するナノ構造体、及び/又は光リミッタ装置の他の構成要素は、所定の用途では有害となりうると見なされる光に反応するように選択又は構成(例えば、配置、位置づけ)されうる。例えば、有害となりうる光に反応して、ナノ構造体は、光を吸収及び/又は直接散乱しうる。一例として、レーザーポインタからの保護に恩恵を受けうる用途(例えば、航空機ビークルの飛行など、ビークルを運転すること)については、周波数は少なくとも可視光スペクトル内の任意の周波数を含みうる。
【0022】
閾値放射照度は、所定の用途では、害を引き起こす(例えば、一時的に又は永続的に目を見えなくさせる、センサを破損及び/又は飽和させる)と判断された放射照度値になりうる。一態様では、放射照度の閾値は概して、太陽に関する放射照度を上回るように選択され、およそ0.1W/cm2になりうる。この点に関して、光リミッタ装置は、一般的には、太陽からの光及び他の周辺光源が光リミッタ装置を通って開口部まで至ることができるように構成される。例えば、用途に応じて、閾値放射照度は、およそ0.1W/cm2、0.15W/cm2、0.2W/cm2、0.5W/cm2、1W/cm2、5W/cm2、並びにこれらの間のすべての値となるように選択されうる。光は、各々が放射照度値を有する複数の周波数成分を有しうることに留意されたい。異なる周波数は、異なる放射照度の閾値に関連付けられうる。場合によっては、放射照度を用いた入射光の特性評価に代えて、又は加えて、光強度及び/又はフルエンスが入射光の特性評価に利用されうる。
【0023】
周波数応答範囲及び放射照度の閾値は、光リミッタ装置において、用途の要件に応じてカスタマイズされてよく、サーモクロミック材料、ナノ構造体、及び/又はこれらの構成要素の配置をカスタマイズする(例えば、選択する)ことを含む。いくつかの態様では、ナノ構造体の物理特性、例えば、その材料組成、サイズ、及び/又は形状などは、特定の周波数、又は周波数の組み合わせを目標として設計及び混合することができる。一実施形態では、ナノ構造体が全体として、広く及び/又は様々な周波数範囲にわたって共振を提供するように、様々な材料組成、サイズ、及び/又は形状のナノ構造体が、サーモクロミック材料に接触した状態で提供されうる。
【0024】
ナノ構造体は、光リミッタ装置の周波数選択性を提供する。ナノ構造体は、(例えば、レーザー攻撃の一部として)光リミッタ装置で使用されうる光の周波数を包含するように設計された周波数応答範囲で構成されうる。周波数応答範囲内の高周波数と低周波数との間での周波数の差分は、帯域幅と称されることがある。広い帯域幅はまた、広いスペクトル応答範囲とも称される。場合によっては、共振周波数範囲は、(例えば、可視光レーザーポインタから保護するための)可視光スペクトル又はその一部、赤外スペクトル又はその一部、及び/又は電磁スペクトルの他の部分を包含しうる。ナノ構造体は、立方体、球形、桿状、板状、及び/又は他の形状であってよい。一実施例では、球形又は板状のナノ構造体は、およそ10nmから100nmの直径を有しうる。場合によっては、ナノ構造体は、パターン化された材料の連続層として提供されうる。
【0025】
このように、ナノ構造体は、周波数応答範囲内の周波数と閾値を超える放射照度を有する入射光が、ナノ構造体の少なくともサブセットによって吸収され、散乱されるように、光リミッタ装置の周波数応答範囲を定義しうる。入射光を吸収するナノ構造体のサブセットは、サーモクロミック材料の関連する部分を、相転移温度を超える温度まで加熱するのに十分な熱を生成しうる。所定のナノ構造体又はナノ構造体の群、ナノ構造体の材料組成、サイズ、及び形状は、ナノ構造体が光の吸収又は光の散乱によって光に反応するか否かを確率的に決定しうる。一態様では、ナノ構造体は主として、有害となりうる光を吸収することによって、また、サーモクロミック材料の対応する部分が有害となりうる光を散乱する不透明状態に遷移するように誘導することによって、有害となりうる光の散乱を促進する。周波数と波長は関連しているため、周波数応答範囲は同等の波長応答範囲を有する。一態様では、周波数応答範囲、波長応答範囲、及びスペクトル応答範囲という表現は、本書での議論では同じ意味で使用されうる。
【0026】
一態様では、熱ホットスポットは、ナノ構造体が利用されない場合と比較して、低い閾値放射照度レベル(例えば、低いレーザー強度とフルエンス)で生成されうる。サーモクロミック材料の厚みは、低い閾値放射照度レベルを達成するように選択されうる。一態様では、光リミッタ装置は、サーモクロミック材料の薄い層と共に実装され、薄いサーモクロミック材料は概して低い熱質量と関係があり、サーモクロミック材料よりも急速に加熱され冷却される。例えば、サーモクロミック材料は、およそ10nmから500nmの間の厚みを有しうる。サーモクロミック材料の薄層を利用することに代えて、又は追加して、サーモクロミック材料の不透明部分によって有害となりうる光を吸収することによってもたらされる正のフィードバックは、低い照度閾値レベルを達成するのに役立ちうる。
【0027】
場合によっては、サーモクロミック材料の小さい温度変化によって、サーモクロミック材料が不透明状態に遷移し、有害となりうる光を拡散させることができ、その結果、低い照射レベル(例えば、放射照度レベル)の有害となりうる光に対する反応時間がより速くなるよう促進される。一実施形態では、サーモクロミック材料は、相転移温度を下回る温度になったときには反射特性をほとんど、或いはまったく示さず、相転移温度付近及びそれ以上の温度で高い反射特性を示す、非線形サーモクロミック材料である。このような場合には、光リミッタ装置は、低照射レベルでの光でも、サーモクロミック材料の小さい温度変化を生じさせ、その結果、光を散乱させる透明な状態へ遷移を引き起こすため、高感度を有しているということができる。
【0028】
したがって、様々な実施形態を用いて、光リミッタ装置は、所定の用途について有害となりうると見なされる光が開口部に到達することを防止し、その一方で、有害になりうるとはみなされない光が開口部に到達すれことを可能にするように構成されうる。いくつかの実施形態では、光リミッタ装置は、有害となりうる光に高速で反応し、有害となりうる光から迅速に回復し、有害となりうることのない光に対しては透過性である。有害となりうる光が照射された光リミッタ装置の一部(例えば、サーモクロミック材料の一部)は、光が開口部に到達するのを防止するため、光に反応して効果的に不透明になり、有害になりうる光がない光リミッタ装置の部分は透明なままに留まり、有害になりうるとはみなされない光の通過を可能にする。この点に関して、有害となりうる光の散乱は、サーモクロミック材料全体の加熱がなくても実行されるが、サーモクロミック材料全体を加熱すると、サーモクロミック材料全体が不透明になるため、本書で提示されているように、ナノ構造体による局所的な加熱よりも持続時間が長くなる。有害となりうる光が取り除かれると、不透明状態にある光リミッタ装置は、透明状態に戻るように遷移する。様々な実施形態による光リミッタ装置は、光に選択的に反応する受動的なアプローチを利用するが、これは、バイアス回路並びに、光に反応するため、光リミッタ装置にバイアス信号を適用する関連の制御回路を利用するアプローチとは対照的である。このような受動的なアプローチは、バイアス回路並びに、バイアス信号を生成して調整する関連の制御回路を利用するアプローチと比較して、電力を節約し、複雑さを軽減することができる。
【0029】
図面を参照すると、
図1には、本開示の一又は複数の実施形態による開口部保護を促進するための光リミッタ装置100が示されている。しかしながら、図示したすべての構成要素が必要なわけではなく、また、一又は複数の実施形態は、図に示されていない追加の構成要素を含んでいてもよい。本明細書に記載する請求項の趣旨及び範囲から逸脱することなく、構成要素の配置及び種類に変更を加えてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、及び/又はより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0030】
光リミッタ装置100は、サーモクロミック材料105、サーモクロミック材料105に接触するナノ構造体、基板層120、及び接着層125を含む。例として、ナノ構造体110A、110B、110C、110D、110E、110F、及び110Gが
図1に示されている。
図1では、ナノ構造体がサーモクロミック材料105に接触するように、ナノ構造体はサーモクロミック材料105の上及び/又は全体に散在する。
図1に示したように、サーモクロミック材料105に接触しているナノ構造体は、ナノ構造体の一部が(例えば、サーモクロミック材料105の外に)露出するように、或いはサーモクロミック材料105(例えば、ナノ構造体110C)の表面上に露出するように、サーモクロミック材料105(例えば、ナノ構造体110B、110E、110F、及び110G)に完全に埋め込まれてよく、サーモクロミック材料105(例えば、ナノ構造体110A)に部分的に埋め込まれてもよい。一例として、ナノ構造体110A、110B、110C、110D、及び110Eは球形である。ナノ構造体110F及び110Gは矩形の断面を有し、例えば、矩形、プリズム又は十字の形状を有しうる。
【0031】
基板層120は、サーモクロミック材料105が配置される第1の表面、及び、第1の表面に向かい合っていて接着層125がその上に配置される第2の表面を提供する。基板層120は、サーモクロミック材料105用の構造支持体を提供しうる。例えば、基板層120は透明基板になりうる。例えば、基板層120はガラス及び/又はアクリルを含みうる。基板層120の厚みは一般的に、用途に依存する。例えば、基板層120は、場合によっては、数百ミクロンから1ミリメートルの範囲の厚みを有しうる。
【0032】
接着層125は、基板層120の上に提供され、光リミッタ装置100とシステムの係合(例えば、結合)を促進して、システムの開口部保護を促進するように利用されうる。1つの事例では、自動車が開口部130を有するとき、接着層125は、光が開口部130に伝播するのを選択的に防止するため、光リミッタ装置100を自動車のフロントガラスに連結するために利用される粘着性の貼付層(peel-and-stick layer)になりうる。この場合、開口部130には、自動車の運転手及び/又は同乗者の目が含まれうる。一例として、
図1では、サーモクロミック材料105が開口部130に面し、自動車の外の環境から離れるように、接着層125は光リミッタ装置100をフロントガラスの内面(例えば、運転手及び同乗者に近い面)に結合しうる。サーモクロミック材料105のこの配置は、サーモクロミック材料105を外部環境から保護するのに役立ちうる。別の実施例として、サーモクロミック材料105が自動車の外の環境に面するように、接着層125は光リミッタ装置100をフロントガラスの外面(例えば、運転手及び同乗者から遠い面)に結合しうる。接着層125は、光リミッタ装置100の他の部分の上に配置されてもよい。例えば、接着層125の配置は、環境への配慮及び/又は構造上の配慮に基づきうる。構造上の配慮には、光リミッタ装置100が係合されるシステムの形状及び/又は寸法との関連で、光リミッタ装置100の形状及び/又は寸法が含まれうる。
【0033】
場合によっては、接着層125は任意選択になりうる。例えば、接着層125の使用に代えて、又は加えて、光リミッタ装置100は、一又は複数の他の種類の係合要素、例えば、釘、磁石、吸盤、隆起及び隆条(bumps and ridges)、及び/又は一般的な任意の締結具及び/又はシステムとの係合を促進する締結構造を含みうる。場合によっては、係合要素は、光リミッタ装置100が係合されるシステムに専用のものとして供給されてもよい。
【0034】
光リミッタ装置100は、一又は複数の保護層を含みうる。保護層は、光リミッタ装置100及び/又は光リミッタ装置100が連結されるシステムを保護しうる。例えば、保護層は、光リミッタ装置100を湿気から守るポリマー材料を含む環境保護層であってもよい。保護層は光リミッタ装置100に密着していてもよく、光リミッタ装置100から離されていてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、ナノ構造体とサーモクロミック材料105の動作によって、光リミッタ装置100は、光リミッタ装置100に入射する有害となりうる光が、光リミッタ装置100を経由して伝播し、開口部130に到達するのを選択的に防止する。一態様では、光リミッタ装置100は、入射光の周波数成分と、関連づけられた放射照度値とに基づいて、入射光が光リミッタ装置100を通って開口部130まで伝播することを選択的に防止する。この点に関して、光リミッタ装置100は、光リミッタ装置100に入射する光がある周波数範囲内の周波数成分及び閾値を上回る放射照度を有しているとき、当該光が有害となりうる光であると決定する。例えば、光は、可視光スペクトル内の周波数及び0.1W/cm2の閾値放射照度を上回る放射照度を有しうる。
【0036】
場合によっては、光リミッタ装置100は、およそ数ミリメートルの厚さ又は数ミリメートル未満の厚さ(例えば、接着層125の上面から
図1のサーモクロミック材料105の底面までの垂直距離)を有する。1つの事例では、光リミッタ装置100は1mmの厚みを有する。基板層120の厚みは約1mmになりうる。接着層125の厚みは、およそ50μmから150μmの間になりうる。アクティブ層の厚みは、およそ100nmから200nmの間になりうる。アクティブ層の厚みは、サーモクロミック材料105の厚みと、サーモクロミック材料105から突出するナノ構造体(ある場合)の厚みを含みうる。このような厚みは、非限定的な実施例として提示されたもので、他の厚みが利用されてもよい。光リミッタ装置100及びその構成要素の厚みとその他の寸法の特徴は、用途に依存する。
【0037】
一実施形態では、
図1に示すように、光リミッタ装置100は、開口部130の保護を促進するため開口部130の前方に実装(例えば、配置)することができる。開口130は、人の目、センサの開口部、及び/又は一般的には電磁(EM)放射を受けることができる任意の開口部であるか、又はこれらを含みうる。EM放射とは、一般的にはEMスペクトルの任意の放射のことを指し、EM放射ビーム、EMビーム、光、ビーム、又はこれらの変形(例えば、光のEMビーム)とも称されることがある。光という用語は、可視光、赤外光、紫外光、又は一般的にはEMスペクトルの任意の部分を含みうる。
【0038】
図1では、光リミッタ装置100に入射する光135は、光リミッタ装置100によって有害となりうると見なされず、したがって、光135は光リミッタ装置100を通過して開口部130に達する。これに対し、光135は、ナノ構造体の周波数応答範囲外の周波数、及び/又は閾値を下回る放射照度を有し、光リミッタ装置100を通って伝播することができる。例えば、光135は、太陽などからの環境光及び/又は迷光(stray light)になりうる。光135は、
図1では平行な光線として示されているが、このような描き方は図を簡潔にするために用いられる。光135の一部は、様々な角度から、サーモクロミック材料105、ナノ構造体、基板層120、及び接着層125を介して、光リミッタ装置100を通って開口部130まで伝播しうる。
図1の構成要素が不明瞭となることを避けるため、こうした光線135は
図1には示されていない。
【0039】
光リミッタ装置100に入射する光は、各々が放射照度値を有する複数の周波数成分を有しうる。この場合、ナノ構造体は、ナノ構造体の周波数応答範囲内にあり、それぞれの閾値を超える放射照度を有する入射光の周波数成分に反応して励起されるが、周波数応答範囲外の入射光の周波数成分及び/又はそれぞれの閾値を下回る放射照度を有する周波数成分は、光電子の放出を誘発しない。場合によっては、異なる周波数は異なる放射照度の閾値に関連づけられうる。
【0040】
図1は、サーモクロミック材料105のナノ構造体の例示的な分布及び物理特性(例えば、サイズ、形状)を示していること、並びに、ナノ構造体をサーモクロミック材料105の上に及び/又は内部に散在させる他の方法も(例えば、用途、コストなどに応じて)利用されうること、に留意されたい。この点に関して、光リミッタ装置100は、
図1に示したものよりもサーモクロミック材料105に接触している様々な配置のナノ構造体を含みうる。例えば、場合(図示せず)によっては、すべてのナノ構造体はサーモクロミック材料105内に完全に埋め込まれうる。一態様では、ナノ構造体は、サーモクロミック材料105に(例えば、表面及び/又は内部で)接触するナノパターンを有するメタ材料の一部(例えば、連続的なメタ材料層)として提供されうる。場合によっては、メタ材料層は、材料層(例えば、金、銀)の堆積と当該層のパターニングによって形成されうる。
【0041】
一実施例では、サーモクロミック材料105に接触している各ナノ構造体は、ナノ構造体及びサーモクロミック材料105の組成の物理特性(例えば、材料組成、サイズ、形状)に基づく所定の周波数帯(例えば、共振周波数範囲とも称される)での共振(例えば、プラズモン-ポラリトン共振)をサポートする。共振により、入射光の吸収、及びナノ構造体中の光子-電子相互作用による光の入射エネルギーから熱への変換が生じる。
【0042】
ナノ構造体が有害となりうる光(例えば、閾値を上回る放射照度を有する光)に照らされると、光によって各ナノ構造体とサーモクロミック材料105との境界面での集合的な表面電荷振動(例えば、自由電子電荷の振動)が励起される。ナノ構造体の振動は、所定の閾値を超える入射光に反応して、ナノ構造体による光の少なくとも一部の吸収及び/又は散乱を増加させる。ナノ構造体によって吸収される光の一部は、ナノ構造体によって熱に変換される。ナノ構造体によって生成されるこのような熱は、伝導などの熱伝達機構によってナノ構造体の温度を上昇させ、ナノ構造体の近傍(例えば、ごく近傍)のサーモクロミック材料105の一部の温度を上昇させる。
【0043】
いくつかの態様では、ナノ構造体との結合は、有害となりうる光の吸収を促進する。この点に関して、複数のサイズ、形状及び/又は材料のナノ構造体が、分子を形成するために共につながれ或いはリンクされ、ポリマーバックボーンに取り付けられ、鎖を形成するためにリンクされ或いはつながれ、及び/又は格子を形成するためリンクされる。このような結合は一般的にナノ構造体間の距離の関数であって、任意の2つのナノ構造体間の距離の拡大は、2つのナノ構造体間の結合に低下に関連している。例えば、吸収体の構造は、ナノ構造体110Fと110Gによって実装される。ナノ構造体110Fと110Gは、ナノ構造体110Fと110Gとの間及び周囲のサーモクロミック材料105の一部の加熱を促進するため、互いに結合するように配置されうる。このような結合は
図1の垂直方向に沿って示されているが、結合は水平方向(例えば、ナノ構造体110F又は110Gと、
図1の右側の一又は複数の隣接するナノ構造体)にも、及び/又はナノ構造体間の距離に基づいて、球形のナノ構造体でも起こりうる。
図1では、ナノ構造体110Gは基板層120に接触しており、一方、ナノ構造体110Fはサーモクロミック材料105内に埋め込まれている。同様に、球形のナノ構造体は互いに結合してよく、及び/又はナノ構造体間の距離に基づいて、非球形のナノ構造体と結合してもよい。
【0044】
サーモクロミック材料105の相/状態は温度に依存するため、ナノ構造体からの熱に反応して、サーモクロミック材料105が相転移温度を超えて上昇すると、ナノ構造体の近傍にあるサーモクロミック材料105の一部は透明状態から不透明状態に遷移する。このように、入射光は、光の経路に沿ってナノ構造体の温度上昇と、これに関連してサーモクロミック材料105の不透明状態への遷移を引き起こす。
【0045】
一態様では、光はサーモクロミック材料105の局所加熱を引き起こし、局所加熱に関連する光リミッタ装置100の一部に形成されるサーモクロミック材料105の反射性の部分は光を散乱し、一方、光リミッタ装置100の他の部分は光を開口部130まで通過させることができる。光が開口部130に到達しないように、サーモクロミック材料105の反射性状態にある部分は入射光を散乱し、その結果、光リミッタ装置100を通る光の透過が低減される、又はなくなるため、光が開口部130に到達することが防止される。開口部130に到達することができる光は、サーモクロミック材料105に接触するナノ構造体によって集合的にもたらされる共振周波数範囲外の周波数を有する、及び/又は閾値未満の放射照度を有し、概して所定の用途に対して有害とは見なされない。
【0046】
この点に関して、開口部130(例えば、光リミッタ装置100、センサを含む又は利用するシステムのオペレータ)は、サーモクロミック材料105の透明部分を透過する(例えば、有害になりうるとはみなされていない)光を見ることができ、一方、不透明部分に入射する有害となりうる光は、開口部130を保護するため散乱される。一実施形態では、サーモクロミック材料105の実装に利用される材料組成は、不透明状態では、サーモクロミック材料105の不透明部分が、ナノ構造体によってもたらされる少なくとも共振周波数範囲内の光の周波数成分を散乱するように、選択される。場合によっては、サーモクロミック材料105の材料組成に応じて、共振周波数範囲外の周波数成分もまた、サーモクロミック材料105の不透明部分によって散乱されうる。
【0047】
ナノ構造体の密度/濃度(例えば、単位体積当たり又は表面積当たりのナノ構造体の数)が高い場合には、有害となりうる可能性の低い光はサーモクロミック材料105を貫通することができる。例えば、開口部130が人の目を含む場合、サーモクロミック材料105は、光が光リミット装置100を透過して、(例えば、一時的又は永続的に)目を見えなくしうることを防止する。開口部130がセンサを含むときには、サーモクロミック材料105は、光がセンサに到達し、センサを飽和させる及び/又は破損させることを防止する。
【0048】
ナノ構造体は、有害となりうる光による照射が終わるまで、サーモクロミック材料105を不透明状態に維持する熱を生成し続ける。照射が終わると、ナノ構造体の温度は低下する。ナノ構造体の冷却により、サーモクロミック材料105は相転移温度を下回る温度まで低下し、透明な状態に戻る。例えば、ナノ構造体及びサーモクロミック材料105は、元の温度(例えば、有害となりうる光がサーモクロミック材料105に入射していないときの温度)まで戻りうる。一態様では、サーモクロミック材料105が透明な状態に戻ることは、サーモクロミック材料105の回復、或いは光リミッタ装置100の回復と称されることがある。この点に関して、サーモクロミック材料105の不透明部分は、有害となりうる光が取り除かれると、有害となりうる入射光によって誘発されるサーモクロミック材料105の中の一過性の散乱中心と見なされうる。
【0049】
このように、有害となりうる光に反応して、このような散乱中心を作る光リミッタ装置100の動作は可逆的である。場合によっては、不透明状態は、有害となりうる光に反応して、光によるナノ構造体の照射から1μs未満の時間で形成され、有害となりうる光が取り除かれると1μs未満の時間で透明状態に戻る。
【0050】
サーモクロミック材料105の特性(例えば、材料組成、格子構造)は、目指す用途に基づいて選択される。一実施形態では、サーモクロミック材料105の特性は相転移温度と可逆性(例えば、不透明状態との間での遷移)に基づいて選択される。一態様では、様々な用途で、一般的に相転移温度は、(例えば、サーモクロミック材料105が周囲温度に反応して不透明になるのを防止するため)周囲温度より高く、一方で、有害となりうる光が光リミッタ装置100に入射したときに、相転移温度に容易に到達しうるように十分に低くなっていることが望ましい。一例として、30℃の相転移温度を有する材料は、太陽からの環境光に反応して反応して不透明になることがあり、一方で700℃の相転移温度を有する材料は、相転移温度に到達する又は超えるためにはより多くの加熱が必要で、その結果、一般的に関連して反応時間は遅くなる。様々な用途で、サーモクロミック材料105は、およそ50℃(323K)から100℃(373K)の相転移温度を有しうる。
【0051】
一例として、サーモクロミック材料105は二酸化バナジウム(VO2)を含みうる。VO2は、およそ68℃(340K)の相転移温度を有する。68℃未満の温度では、VO2は単斜晶系構造を有する透明な絶縁体である。68℃を超える温度では、VO2はルチルに類似した正方晶系構造を有する反射性金属である。この点に関して、およそ68℃で、VO2の導電率は数桁増加し(例えば、およそ104倍の増加)、その結果、VO2は絶縁体から金属に遷移する。そのため、VO2の透明状態は、透明な絶縁体状態/相、或いは単斜晶系状態/相と称されることがあり、また、VO2の不透明状態は、金属反射状態/相、或いはルチル状態/相と称されることがある。VO2に形成される反射性ナノ構造体は、不透明状態にあるときには、金属ナノ構造体と称されうる。場合によっては、バルクVO2は、タングステン(W)などがドープされうる。VO2の相転移温度を調整するため(例えば、上昇又は下降させるため)、ドーパントが添加されうる。VO2により、有害となりうる光に反応して、透明状態から不透明状態への遷移に要する時間を1μs未満にすることが、また、不透明状態から透明状態に戻るのに要する時間を1μs未満にすることが可能である。場合によっては、VO2は、赤外線の用途では、サーモクロミック材料105の実装に利用される。可視光の用途では、サーモクロミック材料105は、例えばスピロピランを含みうる。上記は、サーモクロミック材料105の材料組成の非限定な例を示している。サーモクロミック材料105の他の材料組成は、用途に応じて利用されうる。
【0052】
一実施形態では、ナノ構造体が全体として、広く及び/又は様々な周波数範囲にわたって共振を提供するように、様々な材料組成、サイズ、及び/又は形状のナノ構造体が、サーモクロミック材料105に接触した状態で提供されうる。場合によっては、共振周波数範囲は、(例えば、可視光レーザーポインタから保護するための)可視光スペクトル、赤外スペクトル、及び/又は他のEMスペクトルを包含しうる。
【0053】
ナノ構造体は、サーモクロミック材料105の局所加熱に使用可能な、ナノ粒子、ナノパターン(例えば、メタ材料層)、及び/又は、ナノチューブ(例えば、カーボンナノチューブ)又はナノワイヤ(例えば、銀ナノワイヤ、金ナノワイヤ)などの他のナノ構造体を含みうる。いくつかの態様では、ナノ構造体は導電性材料を含みうる。非限定的な実施例として、金属ナノ構造体は、金、銀、他の貴金属、アルミニウム、銅、及び/又は他の金属を含みうる。場合によっては、それらはカーボンナノチューブ又は窒化チタン(TiN)を含みうる。ナノ構造体は、立方体、球形、桿状、板状、十字型及び/又は他の形状であってよい。一実施例では、球形又は板状のナノ構造体は、およそ10nmから100nmの直径を有しうる。一態様では、
図1に示すように、ナノ構造体(例えば、ナノ構造体110A)はコアシェル構造を有する。コアシェル構造は、コアとしてのナノ粒子と、ナノ粒子を囲むシェルとを含みうる。一例として、ナノ粒子はガラスなどの誘電体材料であってよく、シェルは金又は銀などの金属材料であってよい。場合によっては、コアシェル構造は、シェルがないナノ粒子よりも良好な散乱効率を提供しうる。一態様では、ナノ構造体は、様々なプラズモン共振子を形成することができる金属層/誘電体層を有するナノパターンを含みうる。
【0054】
図2Aは、本開示の一又は複数の実施形態による、光リミッタ装置100に入射する光205及び210を示す。これに関連して、光205及び210は、サーモクロミック材料105、及びサーモクロミック材料105に接触しているナノ構造体のサブセットに入射する。
図2Bは、本開示の一又は複数の実施形態による、光205に反応してサーモクロミック材料105に形成される熱ホットスポット220を示す。
図2A及び
図2Bにおいて、光210は、光リミッタ装置100を通って伝播し開口部130に到達しうるのに対し、熱ホットスポット220で形成されたサーモクロミック材料105によって、光205が開口部130に到達することが防止される。
【0055】
光205は、サーモクロミック材料105に接触するナノ構造体に関する共振周波数範囲内の周波数、及び閾値(例えば、0.1W/cm2)以上の放射照度を有する。これに対し、光210は、サーモクロミック材料105に接触するナノ構造体に関連する共振周波数範囲外の周波数、及び/又は閾値を下回る放射照度を有し、光リミッタ装置100を通って開口部130まで伝播することができる。これに関して、光205が有害となりうる光と見なされるのに対し、光210は有害と見なされない。光205は、レーザーポインタ又はレーザーダズラ(laser dazzler)などの光源215に由来する。光210は、太陽からの光及び/又は迷光などの周辺光を含みうる。
【0056】
図2Bでは、光205が照射されたサーモクロミック材料105の一部に接触するナノ構造体は熱を生成して、サーモクロミック材料105に熱ホットスポット220を作り出す。例えば、熱ホットスポット220は、少なくともナノ構造体110D及び110Eによって生成された熱によって作り出されうる。光205がサーモクロミック材料105を通って伝播する際に、光205の経路に沿ったナノ構造体は、光205を吸収し、吸収した光を、これらのナノ構造体に局在するサーモクロミック材料105の温度を上昇させる熱に変換しうる。
【0057】
熱ホットスポット220は、光205に反応してナノ構造体によって生成された熱を表わしている。ナノ構造体によって生成された熱は、ナノ構造体と空間的に対応するサーモクロミック材料105の一部に伝達される。サーモクロミック材料105の一部が、サーモクロミック材料105の相転移温度を超える温度まで加熱されると、サーモクロミック材料105の一部は透明状態から不透明状態に遷移する。不透明部分に入射する光205は、散乱され、開口部130への到達が妨げられる。
【0058】
光205が存在していると、光205は、ナノ構造体に熱を発生させ続け、その結果、サーモクロミック材料105の一部は不透明な状態のままになる。場合によっては、光リミッタ装置100のナノ構造体に関連する共振周波数範囲外の周波数を有する光は、このような光が不透明部分に入射された場合には、不透明部分によって散乱されうる。このような光は、ナノ構造体が通常そのような光を通過させても散乱されることがありうる(例えば、光は有害となりうる光ではない)。これに関して、不透明状態にあるサーモクロミック材料105(又はその一部)は周波数選択性があり、これはサーモクロミック材料105を構成するバルク材料組成及びドーパント(存在する場合)に基づきうる。不透明部分が存在していても、光リミッタ装置100の残りの部分は透明で、光210(及び有害となりうるとはみなされない他の入射光)が光リミッタ装置100を通過することを可能にし、その結果、光205から開口部130を保護しつつ、開口部130が光リミッタ装置100を介して光210を受容することを可能にする。例えば、開口部130にパイロットの目が含まれる場合、パイロットは、光205に反応して形成されるサーモクロミック材料105の不透明部分によってより遮断されていない光リミッタ装置100の一部を通して見ることができる。
【0059】
熱ホットスポット220に加えて、一又は複数の熱ホットスポットは、光205がサーモクロミック材料105を通って伝播する際に形成されうる。これに関して、熱ホットスポット220によって形成されたサーモクロミック材料105の不透明部分によって散乱されない光205の任意の残りの部分は、光205の残りの部分がサーモクロミック材料105を通って伝播する際に生成されたその後の熱ホットスポットによって形成されるその後の不透明領域によって散乱されうる。ナノ構造体の密度/濃度(例えば、単位体積当たり又は表面積当たりのナノ構造体の数)が高いほど、サーモクロミック材料105に接触しているナノ構造体を通過して開口部130に到達する光205は少なくなる。
【0060】
一態様では、さらなる要因が、光205の吸収、及びそのような吸収に反応した熱ホットスポットの関連する生成に寄与することがありうる。サーモクロミック材料105の遷移した部分の不透明さは、この遷移部分による光205の吸収を促進し、その結果、不透明部分の拡大を助け、開口部130の光205からの保護を促進する正のフィードバック機構を提供する。正のフィードバックによって促進されるため、熱ホットスポットは拡大し、(熱ホットスポットが十分に近い場合には)隣接する熱ホットスポットと融合して、光205を散乱する連続的な反射層(例えば、局所的な反射鏡)を効果的に形成する。場合によっては、ナノ構造体間の結合は有害となりうる光の吸収を促進しうる。このような結合は一般的にナノ構造体間の距離の関数であって、任意の2つのナノ構造体間の距離の拡大と、2つのナノ構造体間の結合の低下には関連がある。
【0061】
光205の特性は、光205の照射に反応して、ナノ構造体のどの部分が励起されるかを、また、光205に反応したナノ構造体の励起によって不透明状態に遷移したサーモクロミック材料105の部分の対応するサイズを、決定しうる。例えば、光205は、約2mmのビーム直径を有する(例えば、レーザーポインタからの)レーザー光になりうる。熱ホットスポット220のサイズは、光205のサイズと同程度になりうる。同様に、不透明状態に遷移するサーモクロミック材料105の一部分のサイズは、数ミリメートルの直径(例えば、この例では、光205に関連するビーム径と同程度のサイズ)を有しうる。
【0062】
図2Cは、本開示の一又は複数の実施形態により、光205が取り除かれて冷えた熱ホットスポット220を示している。例えば、光205は、光源215がオフになると取り除かれうる。熱ホットスポット220が冷めるにつれて、サーモクロミック材料105の不透明部分は冷める。不透明部分の温度が相転移温度を下回ると、サーモクロミック材料105の不透明領域は透明状態に戻る。場合によっては、不透明部分は、ナノ構造体への光205の照射から1μs未満の時間で光205に反応して形成され、光205が取り除かれてから1μs未満の時間で透明状態に戻る。
【0063】
光リミッタ装置100に入射する光205と210は、各々が放射照度値を有する複数の周波数成分を有しうることに留意されたい。この場合、サーモクロミック材料105に接触するナノ構造体は、ナノ構造体の一又は複数の共振周波数と一致し且つそれぞれの閾値を上回る放射照度を有する入射光の周波数成分に反応して熱を生成する。場合によっては、異なる周波数は異なる放射照度の閾値に関連づけられうる。ナノ構造体は、共振周波数又はナノ構造体に包含される周波数の範囲外、及び/又は閾値放射照度を下回る入射光の周波数成分が開口部130を通過することを可能とする。
【0064】
図3は、本開示の一又は複数の実施例による、ナノ構造体300の例を示す。一実施形態では、ナノ構造体300は、
図1及び
図2A~
図2Cに示した球形ナノ構造体(例えば、110A)の1つになりうる。ナノ構造体300は、ナノ粒子305(例えば、コアとも称される)と、ナノ粒子305を包含するシェル310(例えば、コーティングとも称される)を含む。ナノ粒子305は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ化物、リン化インジウム、セレン化カドミウム、硫化亜鉛、他の物質、及び/又はこれらの組み合わせを含みうる。シェル310は、金、銀、窒化チタン、及び/又は他の元素又は化合物(例えば、金属合金)を含みうる。場合によっては、シェル310は(例えば、ナトリウム、スズ、金属合金などの金属で)ドープされうる。1つの場合には、ナノ粒子305はガラスを含み、シェル310は金を含む。一例として、ナノ構造体300はおよそ70nmの物理的断面を有しうる。この例では、ナノ粒子305はおよそ60nmの直径を有し、シェル310はおよそ5nmの厚みを有しうる。
【0065】
図4は、本開示の一又は複数の実施例による、ナノ構造体400の例を示す。ナノ構造体400は十字型を有する。一実施形態では、ナノ構造体400は、
図1及び
図2A~
図2Cに示した非球形ナノ構造体(例えば、110F)の1つになりうる。場合によっては、ナノ構造体400は単独で提供されることも、吸収構造体の一部として提供されることもあり、有害となりうる光の吸収及び/又は散乱を促進する。ナノ構造体400は、金、銀、窒化チタン、及び/又は他の元素又は化合物(例えば、金属合金)を含みうる。
【0066】
図5A及び
図5Bは、一又は複数の実施形態による、メタ材料層500の例を示している。具体的には、
図5A及び
図5Bは、メタ材料層500(例えば、ナノパターンとも称される)は側面図と上面図をそれぞれ示している。メタ材料層500を形成するため、材料層は、構造体505、510、及び515を画定するため、リソグラフィを用いて提供され、パターン形成される。材料層は、金、銀、窒化チタン、及び/又は他の元素又は化合物(例えば、金属合金)を含みうる。一実施形態では、メタ材料層500は、サーモクロミック材料(例えば、
図1のサーモクロミック材料105)で提供されうる。例えば、
図1を参照すると、メタ材料層500は、サーモクロミック材料105及び/又は基板層120の表面上に配置されてよく、及び/又はサーモクロミック材料105に少なくとも部分的に埋め込まれてもよい。場合によっては、吸収構造体を形成するため、第2のメタ材料層はメタ材料層500から垂直に移動されうる。構造体505、510、及び515は、
図5A及び
図5Bでは十字型であるが、構造体505、510、及び515は一般的に、所望の共振周波数又は共振周波数範囲を有効にするのに適した任意の形状になりうる。構造体505、510、及び515は、異なる形状及び/又はサイズになりうる。一態様では、メタ材料層500、構造体505、510、及び515の各々、並びにメタ材料層500の任意の部分はナノ構造体と称されうる。メタ材料層500はパターン化された材料の連続層で、連続層として提供されるナノ構造体、及び/又は連続層の一部として形成されるナノ構造体、とみなされうる。
【0067】
一実施形態では、ナノ構造体(例えば、ナノ構造体300及び400)とメタ材料層500(又は、その一部)は、サーモクロミック材料(例えば、サーモクロミック材料105)全体に堆積、及び/又は散在される。いくつかの態様では、複数のサイズ、形状及び/又は材料のナノ構造体が、分子を形成するために共につながれ或いはリンクされ、ポリマーバックボーンに取り付けられ、鎖を形成するためにリンクされ或いはつながれ、及び/又は格子を形成するためリンクされる。ナノ構造体間のこのような結合は、ナノ構造体による有害となりうる光の吸収及び/又は散乱を促進しうる。
【0068】
図6は、本開示の一又は複数の実施形態による、開口部保護を促進するための例示的なプロセス600のフロー図を示す。例示のため、ここでは
図1及び
図2A~
図2Cの光リミッタ装置100を参照してプロセス600を説明するが、プロセス600は
図1及び
図2A~
図2Cの光リミッタ装置100に限定されない。一又は複数の工程が、所望に応じて、組み合わされたり、省略されたり、及び/又は異なる順序で実施されうることに留意されたい。
【0069】
ブロック605では、光リミッタ装置100がシステムの一部として提供される。システムは、ビークル(例えば、陸上、海軍、航空、及び/又は宇宙ビークル)、センサ(例えば、レーダセンサ)、ウェアラブルデバイス(例えば、眼鏡、ゴーグル)、多機能構造体(例えば、一又は複数のセンサが埋め込まれた構造体)、多機能開口部、及び/又は一般的には開口部保護が実装されうる任意のシステムであるか、これらを含むか、又はこれらの一部であってよい。システムの一実施例を、
図8に関連して説明する。
【0070】
ブロック610では、光205及び210は、サーモクロミック材料105に接触しているナノ構造体の少なくともサブセットに入射している。例えば、ナノ構造体は、サーモクロミック材料105の表面上に配置されたナノ構造体、及び/又はサーモクロミック材料105に少なくとも部分的に埋め込まれたナノ構造体(例えば、ナノ構造体110D及び110E)を含みうる。光205は、ナノ構造体によって集合的に提供される共振周波数範囲内の周波数及び閾値を上回る放射照度を有する。光210は、共振周波数範囲外の周波数、及び/又は閾値を下回る放射照度を有し、サーモクロミック材料105から伝送される。
【0071】
ブロック615では、熱は、光205に反応して、ナノ構造体のサブセットによって生成される。一態様では、ナノ構造体は、光205に反応した振動によって熱を生成する。この点に関して、ナノ構造体は、光205を吸収し、光205をナノ構造体の温度を上昇させる熱に変換する。例えば、ナノ構造体は熱を(例えば、伝導によって)サーモクロミック材料105に伝達し、サーモクロミック材料105の温度上昇を示す熱ホットスポット220を作り出す。
【0072】
ブロック620では、サーモクロミック材料105の一部は、ナノ構造体のサブセットによって生成された熱に反応して、透明状態から不透明状態に遷移する。一態様では、遷移を引き起こすため、ナノ構造体のサブセットによって生成された熱は、サーモクロミック材料105の相転移温度を超える温度までサーモクロミック材料105の一部を加熱する。場合によっては、サーモクロミック材料105の遷移した部分の不透明性は、光205の吸収を促進する。
【0073】
ブロック625では、光205が開口部130に到達するのを防止するため、不透明状態に遷移したサーモクロミック材料105の一部が光205を遮断(例えば、反射、散乱)する。ブロック630では、光205が取り除かれると、サーモクロミック材料105の一部は不透明状態から透明状態に遷移する。これに関連して、光205が(例えば、
図2Cに示したように)取り除かれると、ナノ構造体は温度が低下する。ナノ構造体の温度の低下は、サーモクロミック材料105の一部の温度の低下を引き起こす。サーモクロミック材料105の一部が、相転移温度を下回る温度になると、サーモクロミック材料105の一部は不透明状態から透明状態に遷移する。
【0074】
図7は、本開示の一又は複数の実施形態による、開口部保護を促進するシステムを製造するための例示的なプロセス700のフロー図を示す。例示のため、ここでは
図1の光リミッタ装置100を参照してプロセス700を説明するが、プロセス700は
図1の光リミッタ装置100に限定されない。一態様では、プロセス700は、
図6のプロセス600のブロック605で実装されうる。一又は複数の工程が、所望に応じて、組み合わされたり、省略されたり、及び/又は異なる順序で実施されうることに留意されたい。
【0075】
ブロック705では、基板層120が提供される。基板層120は、ガラス及び/又はアクリルなどの透明な基板になりうる。ブロック710では、サーモクロミック材料105は基板層120の上に配置されている。例えば、サーモクロミック材料105は基板層120の上に堆積される。様々な用途で、サーモクロミック材料105を実装するために選択された材料は、およそ50℃(323K)から100℃(373K)の相転移温度を有しうる。サーモクロミック材料105は、(例えば、赤外線用途で)VO2、或いは(例えば、可視光用途で)スパイロピランを含みうる。ブロック715では、ナノ構造体は、サーモクロミック材料105に接触して提供される。ナノ構造体は、サーモクロミック材料105の表面上、及び/又は部分的にサーモクロミック材料105内に提供されうる。場合によっては、ナノ構造体は、サーモクロミック材料105が基板層120の上に堆積されるにつれて提供されうる。ナノ構造体は、ナノ粒子、コアシェル構造、ナノパターン、及び/又はナノパターンの一部として提供される構造を含みうる。場合によっては、様々なサイズ、形状、及び/又は材料組成のナノ構造体が、広い共振周波数範囲を有効にするため、サーモクロミック材料105全体に堆積、及び/又は散在される。光リミット装置100は、ブロック705、710、及び715によって形成される。場合によっては、光リミッタ装置100の形成の一部として、接着層125が基板層120の上に堆積される。接着層125は、サーモクロミック材料105が堆積される前後に堆積されうる。
【0076】
ブロック720では、光リミッタ装置100は、一又は複数の係合要素を用いてシステムの構成要素に係合される。光リミッタ装置100は、これら係合要素と係合するためのウィンドウ構造を提供しうる。係合要素は、接着剤、釘、磁石、吸盤、隆起及び隆条、及び/又は一般的には光リミッタ装置100を支持することができる、及び/又は光リミッタ装置100をシステムの構成要素に連結することができる任意の締結具及び/又は締結構造を含みうる。一例として、係合要素は、システムの構造支持基板に適用されうる光リミッタ装置100の粘着性の貼付層(例えば、接着層125)を含みうる。構造支持基板は、ガラス、石英、ポリカーボネート、及び/又は他の透明材料からなる透明な基板を含みうる。例えば、構造支持基板は、接着層125を用いて光リミッタ装置100が接着される航空機ビークルのフロントガラスを含みうる。代替的に及び/又は追加的に、光リミッタ装置100を受容するため、係合要素システムによって提供されうる。これに関連して、接着層125は場合によっては、任意選択となる。
【0077】
図8は、本開示の一又は複数の実施形態による開口部保護を促進するための光リミッタ装置805を有するシステム800を示す。しかしながら、図示の構成要素のすべてが必要なわけではなく、一又は複数の実施形態は、図に示されていない追加の構成要素を含んでいてもよい。本書に記載する請求項の趣旨及び範囲から逸脱することなく、構成要素の配置及び種類に変更を加えてもよい。追加の構成要素、異なる構成要素、及び/又はより少ない構成要素が提供されてもよい。
【0078】
システム800は、構成要素の適切な選択及び構成(例えば、動作周波数、材料組成など)を伴って、陸上、海軍、航空、及び/又は宇宙用途で利用されうる。システム800は、ビークル(例えば、自動車、航空機ビークル、衛星)、センサ(例えば、赤外線センサ)、多機能構造体、多機能開口部、又はウェアラブルデバイス(例えば、眼鏡、ゴーグル)であってよく、これらを含んでもよく、或いはこれらの一部であってよい。一態様では、
図8中の破線は、システム800のハウジングを表しうる。
【0079】
システム800は、光リミッタ装置805、処理回路810、通信回路815、一又は複数の出力デバイスインターフェース820、一又は複数の入力デバイスインターフェース825、位置付け回路830、メモリ835、電源840、他の構成要素845、及びバス850を含む。光リミッタ装置805は、有害となりうる光がシステム800に関連する開口部に到達することを防止するために利用されうる。例えば、システム800が航空機ビークルである場合、開口部は航空機ビークルに乗っている人(例えば、乗客、パイロットなど)の目及びセンサ機器(例えば、赤外線センサ機器)を含みうる。場合によっては、光リミッタ装置805は、システム800のウィンドウとして設けられるか、システム800のウィンドウに連結されうる。一態様では、システム800は、各光リミッタ装置が一又は複数の開口部保護に使用されうる、複数の光学リミッタ装置を含みうる。
【0080】
一実施形態では、光リミッタ装置805は、光リミッタ装置100であるか、光リミッタ装置100を含むか、又は光リミッタ装置100の一部であってよい。上に示したように、システム800によっては、システム800は、追加の構成要素、異なる構成要素、及び/又は
図8に示したものよりも少ない構成要素を含んでいてもよい。例えば、システム800を1つの眼鏡に実装する場合、システム800は、各眼鏡レンズに連結された、又は各眼鏡レンズ(例えば、
図8に示す構成要素の多くを含まない)の前方又は後方に配置された光リミッタ装置を含みうる。
【0081】
処理回路810は、メモリ835に保存された機械可読命令(例えば、ソフトウェア、ファームウェア、又は他の命令)を実行しうる。この点に関して、処理回路810は、システム800の動作を促進するための様々な動作、プロセス、及び技術のいずれかを実施しうる。例えば、航空機ビークルでは、処理回路810は、航空機ビークルの飛行及び航空機ビークルの任意の特定ミッション向けプロセス(例えば、レーダ用途、撮像用途など)を含む、航空機ビークルの動作を促進しうる。処理回路810は、一又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASICs)、プログラマブルロジックデバイス(PLDs)(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)、複合プログラマブルロジックデバイス(CPLDs)、フィールドプログラマブルシステムオンチップ(FPSCs)、又は他の種類のプログラマブルデバイス)、コード、及び/又は他の処理デバイスとして実装されうる。一実施形態では、有害となりうる光に反応して、処理回路810は、例えば光により引き起こされる損傷を軽減する(例えば、バックアップセンサ機器を電源オンして、光により破損したセンサ機器と交換する)、光源を発見する、及び/又は光源を取り除くなどのために、制御信号を生成してシステム800及び/又は他のシステムの内部の他の構成要素に送信しうる。
【0082】
通信回路815は、システム800の様々な構成要素間、及びシステム800と別のシステムとの間の有線及び/又は無線通信を取り扱うか、管理するか、又は促進するように構成されうる。一実施例では、通信回路815は、無線通信回路(例えば、IEEE802.11規格、Bluetooth(商標)規格、ZigBee(商標)規格、又は他の無線通信規格)、セルラー回路、又は他の適切な通信回路を含みうる。場合によっては、通信回路815は、専用無線通信プロトコル及びインターフェース向けに構成されてもよい。通信回路815は、無線通信用アンテナを含んでよく、又は、無線通信用アンテナと通信してもよい。したがって、一実施形態では、通信回路815は、携帯用デバイス、基地局、無線ルータ、ハブ、又は他の無線ネットワーキングデバイスとの無線リンクを確立することにより、無線通信を取り扱いうるか、管理しうるか、又は促進しうる。
【0083】
通信回路815は、イーサネットインターフェース、電力線モデム、デジタル加入者線(DSL)モデム、公衆交換電話網(PSTN)モデム、ケーブルモデム、及び/又は有線通信用の他の適切な構成要素などを介して、有線ネットワークとインターフェース接続するように構成されうる。代替的に又は追加的に、通信回路815は、専用有線通信プロトコル及びインターフェースを支持しうる。通信回路815は、有線通信を目的として、(例えば、ネットワークルータ、スイッチ、ハブ、又は他のネットワーク装置を介して)有線リンク上で通信するように構成されうる。有線リンクは、電力線ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、或いは対応する有線ネットワーク技術を支持する他のケーブル又は配線を用いて実装されうる。
【0084】
出力デバイスインターフェース820は、システム800を一又は複数の出力デバイスに結合しうる。出力デバイスインターフェース820は、グラフィック及び/又はオーディオドライバカード、グラフィック及び/又はオーディオドライバチップ、及び/又はグラフィック及び/又はオーディオドライバプロセッサを含みうる。出力デバイスは、システム800が出力情報をユーザに提供することを可能にしうる。例えば、出力デバイスは、一又は複数の表示デバイスを含みうる。表示デバイスは、情報をユーザに表示するために利用されうる。例えば、光リミッタ装置805に入射する有害となりうる光に反応して、表示デバイスは、当該有害となりうる光に関連する情報を提供しうる。情報は、例えば更なる脅威の検出及び/又は特定を促進するための、関連する光源がありうる位置、周辺領域に関連する画像、有害となりうる光及び/又は他の脅威に応答するための指示、及び/又はユーザからの入力を要求するためのプロンプト(例えば、警報が鳴ることをユーザに承認要求するプロンプト)を含みうる。表示デバイスは、フラットスクリーンディスプレイ、タッチスクリーンディスプレイ、発光ダイオード(LED)、又は一般的に情報を視覚的に伝えうる任意のデバイスを含みうる。
【0085】
入力デバイスインターフェース825は、システム800を一又は複数の入力デバイスに結合しうる。入力デバイスは、ユーザがデータ及びコマンドをシステム800に提供する(例えば、入力する)ことを可能にしうる。入力デバイスは、例えば、オーディオセンサ、マイクロフォン、カメラ(静止画又はビデオ)、音声認識システム、キーボード(例えば、物理的又は仮想キーボード)、カーソルコントロールデバイス(例えば、マウス)、タッチスクリーン、及び/又はシステム800へのユーザ入力を提供するための他のデバイスを含みうる。この点に関して、ユーザ入力は、聴覚(例えば、発話)、視覚、及び/又は触覚などの任意の形態で受容されうる。いくつかの場合においては、入力デバイスは、タッチスクリーンディスプレイなどにおいて、ディスプレイと一体化されていてよく、またディスプレイの一部でもあってよい。
【0086】
位置付け回路830は、システム800の位置を監視するために利用されうる。位置付け回路830は、例えば通信回路815を介して、システム800の位置を提供する全地球測位システム(GPS)を含みうるか又はGPSと通信しうる。
【0087】
メモリ835は、システム800の動作を促進するための情報を保存するために利用されうる。非限定的な実施例として、メモリ835は、読取専用メモリ(ROM)、プログラマブルROM(PROM)、消去可能プログラマブルROM(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)などの不揮発性メモリを含みうる。メモリ835は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、などの揮発性メモリを含みうる。メモリ835は、システム800の様々な構成要素(例えば、処理回路810)により実行される指示、例えば通信回路815によって送信されるバッファリングされた情報、及び/又は他の情報などの情報を保存しうる。いくつかの場合においては、メモリ835は、有害となりうる光に応じて実行される指示などの情報を保存しうる。
【0088】
電源840は、システム800の様々な構成要素に電力を供給することなどにより、システム800を動作させるための電力を供給しうる。電源840は、一又は複数のバッテリ(例えば、充電式バッテリ、非充電式バッテリなど)でありうるか、又は一又は複数のバッテリを含みうる。代替的に又は追加的に、電源840は、一又は複数の太陽電池でありうるか、又は一又は複数の太陽電池を含みうる。太陽電池は、電力を供給してシステム800を動作させる及び/又は一又は複数の充電式バッテリを充電するために利用されうる。
【0089】
加えて、システム800は他の構成要素845を含みうる。非限定的な実施例として、他の構成要素845は、様々な用途(例えば、レーダ撮像用途、監視用途、搬送用途、構築用途など)について所望に応じ、システム800の任意の特徴を実行するために使用されてよい。バス850は、システム800の様々な構成要素間でのデータ通信を促進するために利用されうる。
【0090】
上記の寸法的な特徴(例えば、サーモクロミック材料の厚み、コアシェル構造の直径)は、非限定的な例であって、一般的には用途に依存することに留意されたい。さらに、このような特徴は一般的に公称値であって、寸法公差に関連していることを理解されたい。
【0091】
適用可能な場合には、本明細書に記載された様々なハードウェア構成要素及び/又はソフトウェア構成要素は、本開示の精神から逸脱することない限り、ソフトウェア、ハードウェア、又はその両方を含むサブ構成要素に分けることができる。さらに、適用可能な場合には、ソフトウェア構成要素をハードウェア構成要素として実施し得、又はその逆を実施し得ることが考えられる。
【0092】
プログラムコード及び/又はデータなどの本開示によるソフトウェアは、一又は複数の非一過性のマシン可読媒体に保存することができる。本明細書で特定されるソフトウェアは、ネットワーク化された及び/又はそれ以外の、一又は複数の汎用又は特定目的のコンピュータ及び/又はコンピュータシステムを使用して、実施されうることも考えられている。適用可能な場合には、本明細書に記載された様々なステップの順序は、本明細書に記載された特徴をもたらすために、変更してもよく、複合ステップに組み合わせてもよく、且つ/又はサブステップに分割してもよい。
【0093】
さらに、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0094】
条項1. 開口部保護を促進するためのシステムであって、前記システムは光リミッタ装置を含み、前記光リミッタ装置は、
複数のナノ構造体であって、前記複数のナノ構造体の少なくともサブセットが、
入射光を受容して、
前記入射光に反応して熱を生成する、
ように構成された複数のナノ構造体と、
サーモクロミック材料であって、前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料のそれぞれの部分に接触し、前記サーモクロミック材料の少なくとも一部は、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって生成される熱に反応して、第1の状態から第2の状態に遷移し、
前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるときには、前記入射光を遮断する、
ように構成されたサーモクロミック材料と、
を含む、開口部保護を促進するためのシステム。
【0095】
条項2. 前記複数のナノ構造体の前記サブセットは、前記入射光がある周波数範囲内の周波数を有し且つ少なくともある閾値放射照度を有しているときに、前記入射光に応じて振動することにより前記熱を生成するように構成される、条項1に記載のシステム。
【0096】
条項3. 前記閾値放射照度と前記周波数範囲は、前記複数のナノ構造体の物理特性に少なくとも部分的に基づいている、条項2に記載のシステム。
【0097】
条項4. 前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるとき、前記サーモクロミック材料の前記一部は、前記入射光を吸収すること及び/又は散乱することによって、前記入射光を遮断するように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0098】
条項5. 前記サーモクロミック材料の前記一部は、
熱によって前記サーモクロミック材料の前記一部が閾値温度を超える温度まで上昇すると、前記第1の状態から前記第2の状態に遷移し、
前記サーモクロミック材料の前記一部が前記閾値温度を下回る温度まで下降すると、前記第2の状態から前記第1の状態に遷移する、
ように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0099】
条項6. 前記サーモクロミック材料に接触している基板層をさらに含む、条項1に記載のシステム。
【0100】
条項7. 前記複数のナノ構造体のうちの少なくとも1つは、コアと前記コアを包含するシェルを含む、項1に記載のシステム。
【0101】
条項8. 前記複数のナノ構造体は連続メタ材料層の一部を形成し、前記連続メタ材料層は前記サーモクロミック材料に接触している、条項1に記載のシステム。
【0102】
条項9. 前記システムは、ビークル、センサ、又はウェアラブルデバイスであって、前記入射光が前記システムの一又は複数のオペレータに、及び/又は前記システムの一又は複数の構成要素に到達するのを防止するため、前記サーモクロミック材料の前記一部が前記第2の状態にあるときには、前記サーモクロミック材料の前記一部は前記入射光を防止するように構成されている、条項1に記載のシステム。
【0103】
条項10. 前記システムは航空機ビークルであって、
前記システムはさらに、
ハウジングと、
前記ハウジングに連結され、光リミッタ装置を受容するように構成された一又は複数の係合要素と、
を備え、
前記光リミッタ装置は、一又は複数の係合要素に係合し、光を航空機ビークルの中へ選択的に通過させるように構成されている、条項9に記載のシステム。
【0104】
条項11. 基板層を提供することと、
前記基板層の上に前記サーモクロミック材料を配置することと、
前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料に接触するように、前記複数のナノ構造体を提供することと、
前記光リミッタ装置を受容するように構成された一又は複数の係合要素に前記光リミッタ装置を係合することと、
を含む、条項1に記載のシステムを作る方法。
【0105】
条項12. 前記複数のナノ構造体を提供することは、前記複数のナノ構造体の各々が前記サーモクロミック材料内に少なくとも部分的に埋め込まれるように、前記サーモクロミック材料全体に前記複数のナノ構造体に分散することを含む、条項11に記載の方法。
【0106】
条項13. 前記複数のナノ構造体を提供することは、前記複数のナノ構造体を含む連続メタ材料層を形成することを含む、条項11に記載の方法。
【0107】
条項14. 開口部保護を促進するための方法であって、
複数のナノ構造体の少なくともサブセットによって、入射光を受容することであって、前記複数のナノ構造体の各々はサーモクロミック材料のそれぞれの部分と接触している、入射光を受容することと、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって、前記入射光に反応して熱を生成することと、
前記複数のナノ構造体の前記サブセットによって生成された前記熱に反応して、サーモクロミック材料の少なくとも第1の部分を第1の状態から第2の状態に遷移させることと、
前記サーモクロミック材料の前記第1の部分が前記第2の状態にあるときに、前記サーモクロミック材料の前記第1の部分によって、前記入射光を遮断することと、
を含む方法。
【0108】
条項15. 前記熱は、前記入射光が、ある波長範囲内の波長を有し且つ少なくともある閾値放射照度を有しているときに、前記入射光に反応して生成される、条項14に記載の方法。
【0109】
条項16. 前記第1の部分が前記第2の状態にある間に、前記サーモクロミック材料の第2の部分に、前記波長の範囲外の波長を有し、及び/又は前記閾値を下回る放射照度を有する光を透過させることをさらに含む、条項15に記載の方法。
【0110】
条項17. 遮断することは、前記入射光を吸収すること及び/又は散乱することを含む、条項14に記載の方法。
【0111】
条項18. 前記サーモクロミック材料の前記第1の部分は、熱によって前記サーモクロミック材料の前記第1の部分が閾値温度を超える温度まで上昇すると、前記第1の状態から前記第2の状態に遷移し、前記サーモクロミック材料の前記第1の部分が前記閾値温度を下回る温度まで下降すると、前記方法はさらに、前記第1の部分を前記第2の状態から前記第1の状態に遷移させることを含む、条項14に記載の方法。
【0112】
条項19. 前記複数のナノ構造体のうちの少なくとも1つは、コアと前記コアを包含するシェルを含む、条項14に記載の方法。
【0113】
条項20. 前記複数のナノ構造体は連続メタ材料層の一部を形成し、前記連続メタ材料層は前記サーモクロミック材料に接触している、条項14に記載の方法。
【0114】
上述の実施形態は、本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。本発明の原則に従って数多くの修正例及び変形例が可能であることも理解されたい。したがって、本発明の範囲は下記の請求項及びその均等物によってのみ定義されるものである。