(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】部品装着装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20241001BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20241001BHJP
B25J 9/16 20060101ALI20241001BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H05K13/04 A
B25J15/08 C
B25J9/16
B25J15/00 F
(21)【出願番号】P 2020020473
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2023-01-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】石川 信幸
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-166215(JP,A)
【文献】特開平07-112385(JP,A)
【文献】特開2012-139808(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092236(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092243(WO,A1)
【文献】実開平03-047789(JP,U)
【文献】特開2013-082041(JP,A)
【文献】特開2017-100198(JP,A)
【文献】特開平08-323672(JP,A)
【文献】特開2006-269793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給位置において供給された部品を上方から把持し、把持した前記部品を部品実装機が備える基材搬送保持装置に固定的に保持された回路基材に装着する装着作業を行う
部品装着装置であって、
第1の電磁モータと
、第2の電磁モータと
、前記第1の電磁モータの駆動力に依拠して接近・離間することで前記部品を把持する複数の爪と
、前記複数の爪により把持され
る部品の上面に当接し、前記部品の位置を規定する当金と
、前記第2の電磁モータの駆動力に依拠して、前記当金の位置を任意の位置に制御可能に移動させる移動機構
とを有する把持装置と、
前記把持装置を上下方向の任意の位置に移動させる上下方向移動装置と、
を備え、
前記第2の電磁モータを作動させることで前記複数の爪が把持する部品の種類に応じた上下方向の所定の位置に規定した前記当金を前記供給位置において供給された部品の上面に接触させるまで前記上下方向移動装置を作動させて前記把持装置の位置を下降させることで、高さ方向において前記供給位置において供給された部品を位置決めし、
位置決めされている前記部品の側面を前記複数の爪が把持することで、前記供給位置において供給された種類の異なる部品を高さ方向において位置決めして把持し、把持した部品を前記回路基材に装着する
部品装着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の爪により部品を把持する把持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、部品に当金を当接させた状態で複数の爪により部品を把持する把持装置に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、部品に当金を当接させた状態で複数の爪により部品を適切に把持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、供給位置において供給された部品を上方から把持し、把持した前記部品を部品実装機が備える基材搬送保持装置に固定的に保持された回路基材に装着する装着作業を行う部品装着装置であって、第1の電磁モータと、第2の電磁モータと、前記第1の電磁モータの駆動力に依拠して接近・離間することで前記部品を把持する複数の爪と、前記複数の爪により把持される部品の上面に当接し、前記部品の位置を規定する当金と、前記第2の電磁モータの駆動力に依拠して、前記当金の位置を任意の位置に制御可能に移動させる移動機構とを有する把持装置と、前記把持装置を上下方向の任意の位置に移動させる上下方向移動装置と、を備え、前記第2の電磁モータを作動させることで前記複数の爪が把持する部品の種類に応じた上下方向の所定の位置に規定した前記当金を前記供給位置において供給された部品の上面に接触させるまで前記上下方向移動装置を作動させて前記把持装置の位置を下降させることで、高さ方向において前記供給位置において供給された部品を位置決めし、位置決めされている前記部品の側面を前記複数の爪が把持することで、前記供給位置において供給された種類の異なる部品を高さ方向において位置決めして把持し、把持した部品を前記回路基材に装着する部品装着装置を開示する。
【発明の効果】
【0006】
本開示では、電磁モータの駆動力に依拠して、当金が移動する。これにより、例えば、把持対象の部品の寸法に応じて当金を移動させることで、部品に当金を当接させた状態で複数の爪により部品を適切に把持するが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】従来の作業ヘッドの把持爪を示す概略図である。
【
図5】従来の作業ヘッドの把持爪を示す概略図である。
【
図6】従来の作業ヘッドの把持爪を示す概略図である。
【
図7】小型部品を把持した状態の作業ヘッドを示す概略図である。
【
図8】リード部品を把持した状態の作業ヘッドを示す概略図である。
【
図9】リード部品を回路基材に向って押し付けている状態の作業ヘッドを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
図1に、部品実装機10を示す。部品実装機10は、回路基材12に対する部品の実装作業を実行するための装置である。部品実装機10は、装置本体20、基材搬送保持装置22、部品装着装置24、撮像装置26,28、部品供給装置30、ばら部品供給装置32を備えている。なお、回路基材12として、回路基板、三次元構造の基材等が挙げられ
、回路基板として、プリント配線板、プリント回路板等が挙げられる。
【0010】
装置本体20は、フレーム40と、そのフレーム40に上架されたビーム42とによって構成されている。基材搬送保持装置22は、フレーム40の前後方向の中央に配設されており、搬送装置50とクランプ装置52とを有している。搬送装置50は、回路基材12を搬送する装置であり、クランプ装置52は、回路基材12を保持する装置である。これにより、基材搬送保持装置22は、回路基材12を搬送するとともに、所定の位置において、回路基材12を固定的に保持する。なお、以下の説明において、回路基材12の搬送方向をX方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY方向と称し、鉛直方向をZ方向と称する。つまり、部品実装機10の幅方向は、X方向であり、前後方向は、Y方向である。
【0011】
部品装着装置24は、ビーム42に配設されており、2台の作業ヘッド60,62と作業ヘッド移動装置64とを有している。作業ヘッド移動装置64は、X方向移動装置68とY方向移動装置70とZ方向移動装置72とを有している。そして、X方向移動装置68とY方向移動装置70とによって、2台の作業ヘッド60,62が、一体的にフレーム40上の任意の位置に移動させられる。また、各作業ヘッド60,62は、
図2に示すように、スライダ74,76に作業者が工具を用いることなくワンタッチで着脱可能に位置決めして装着されており、Z方向移動装置72は、スライダ74,76を個別に上下方向に移動させる。これにより、作業ヘッド60,62は、Z方向移動装置72によって、個別に上下方向に移動させられる。
【0012】
作業ヘッド60,62は、部品を把持し、把持した部品の装着作業を行うものであり、
図3に示すように、1対の把持爪80,82と、爪作動機構84と、当金86と、当金移動機構88とを有している。なお、
図3は、作業ヘッド60,62の内部構造を示す図であり、作業ヘッド60,62のハウジングが省略されている。
【0013】
把持爪80,82は、本体部90と爪部92とにより構成されている。本体部90は、概して棒状をなし、上下方向に延びる姿勢で配設されている。そして、本体部90の下端部に爪部92が装着されている。なお、爪部92は先細形状とされており、本体部90の下端部に作業者が工具を用いることなくワンタッチで着脱可能に位置決めして装着されている。また、本体部90の上端部には、左右方向に貫通する貫通穴(図示省略)が形成されている。
【0014】
爪作動機構84は、ガイドレール100と、ボールねじ機構102と、伝達機構104と、電磁モータ106とを有している。ガイドレール100は、左右方向に延びるように配設されており、作業ヘッド60,62のハウジング(図示省略)の内部に固定されている。そして、ガイドレール100は、上下方向に延びた姿勢の1対の把持爪80,82を、各把持爪80,82の本体部90において左右方向にスライド可能に保持している。
【0015】
ボールねじ機構102は、ねじロッド110と1対のナット112,114とにより構成されている。ねじロッド110は、ガイドレール100の上方において、左右方向に延びるように、ガイドレール100と平行な状態で配設されている。そして、ねじロッド110は、両端部において、1対の把持爪80,82の本体部90の貫通穴に挿通されている。また、ねじロッド110の外周面には、中央から左側の端部に渡ってねじ溝116が形成されており、中央から右側の端部に渡ってねじ溝118が形成されている。なお、ねじ溝116は所定の方向に向って旋回するようにねじロッド110の外周面に形成されており、ねじ溝118は、ねじ溝116と異なる方向に向って旋回するようにねじロッド110の外周面に形成されている。また、ナット112,114は、複数のベアリングボール(図示省略)を保持しており、それら複数のベアリングボールを介してナット112が
ねじ溝116に螺合し、ナット114がねじ溝118に螺合している。そして、ナット112が把持爪80の本体部90の貫通穴の内部において固定され、ナット114が把持爪82の本体部90の貫通穴の内部において固定されている。
【0016】
伝達機構104は、2個の歯車120,122とベルト124とを有している。歯車120は、ねじロッド110と同軸的に、ねじロッド110の端部に固定されている。また、歯車122は、電磁モータ106のモータ軸126と同軸的に、そのモータ軸126に固定されている。なお、電磁モータ106は、モータ軸126がねじロッド110と平行となるように配設されている。そして、ベルト124が2個の歯車120,122に巻きかけられている。
【0017】
このような構造により、爪作動機構84は、1対の把持爪80,82を接近・離間させ、把持爪80,82の爪部92により部品を把持することが可能とされている。つまり、電磁モータ106の作動により歯車122が回転し、ベルト124が周回することで、歯車120が回転する。そして、歯車120とともにねじロッド110が回転し、1対のナット114が直線的に接近・離間することで、1対の把持爪80,82も直線的に接近・離間する。これにより、1対の把持爪80の間に位置する電気部品130が、1対の把持爪80,82により把持される。つまり、電磁モータ106の駆動力に依拠して1対の把持爪が接近・離間することで、電気部品130が把持される。なお、電磁モータ106はサーボモータとされており、1対の把持爪80,82がスライド方向の位置において制御可能に接近・離間することで、電気部品130が適切な把持力で把持される。
【0018】
また、当金移動機構88は、スライド機構150と、ボールねじ機構152と、伝達機構154と、電磁モータ156とを有している。スライド機構150は、スライダ160とガイドレール162とを含む。スライダ160は、概して円柱形状とされており、上下方向に延びる姿勢で配設されている。そのスライダ160の下端面には、当金86が装着されている。なお、当金86は、作業者が工具を用いることなくワンタッチで着脱可能に位置決めして装着されている。そして、スライダ160は、ガイドレール162により上下方向にスライド可能に保持されている。なお、スライダ160の内部は空洞とされており、その空洞はスライダ160の上端面に開口している。
【0019】
ボールねじ機構152は、ねじロッド170とナット172とにより構成されている。ねじロッド170は、上下方向に延びる姿勢で、スライダ160の上端面の開口からスライダ160の内部に挿入されている。そのねじロッド170の外周面には、上端部から下端部に渡ってねじ溝178が形成されている。また、ナット172は、複数のベアリングボール(図示省略)を保持しており、それら複数のベアリングボールを介してねじ溝178に螺合している。そして、ナット172がスライダ160の内部において固定されている。
【0020】
伝達機構154は、2個の歯車180,182とベルト184とを有している。歯車180は、ねじロッド170と同軸的に、ねじロッド170の上端部に固定されている。また、歯車182は、電磁モータ156のモータ軸186と同軸的に、そのモータ軸186に固定されている。なお、電磁モータ156は、モータ軸186がねじロッド170と平行となるように配設されている。そして、ベルト184が2個の歯車180,182に巻きかけられている。
【0021】
このような構造により、当金移動機構88は、当金86を上下方向に移動させることが可能とされている。つまり、電磁モータ156の作動により歯車182が回転し、ベルト184が周回することで、歯車180が回転する。そして、歯車180とともにねじロッド170が回転し、ナット172がねじロッド170の軸線方向にスライドすることで、
当金86が上下方向に移動する。つまり、電磁モータ156の駆動力に依拠して当金86が上下方向に移動する。なお、電磁モータ156はサーボモータとされており、当金86は上下方向の位置において制御可能に移動する。つまり、エンコーダを用いてフィードバック制御等を行うことで、電磁モータ156の作動により、当金86を上下方向の任意の位置に移動させることができる。
【0022】
また、撮像装置26は、
図2に示すように、下方を向いた状態でスライダ74に取り付けられており、作業ヘッド60とともに、X方向,Y方向およびZ方向に移動させられる。これにより、撮像装置26は、フレーム40上の任意の位置を撮像する。撮像装置28は、
図1に示すように、フレーム40上の基材搬送保持装置22と部品供給装置30との間に、上を向いた状態で配設されている。これにより、撮像装置28は、作業ヘッド60,62に把持された部品を撮像する。なお、撮像装置26,28は、2次元カメラとされており、2次元撮像データを形成する。
【0023】
部品供給装置30は、フレーム40の前後方向での一方側の端部に配設されている。部品供給装置30は、トレイ型部品供給装置190とフィーダ型部品供給装置192とを有している。トレイ型部品供給装置190は、トレイ上に載置された状態の部品を供給する装置である。フィーダ型部品供給装置192は、テープフィーダ、スティックフィーダによって部品を供給する装置である。
【0024】
ばら部品供給装置32は、フレーム40の前後方向での他方側の端部に配設されている。ばら部品供給装置32は、ばらばらに散在された状態の複数の部品を整列させて、整列させた状態で部品を供給する装置である。なお、部品供給装置30および、ばら部品供給装置32によって供給される部品として、電子回路部品,太陽電池の構成部品,パワーモジュールの構成部品等が挙げられる。また、電子回路部品には、リードを有する部品,リードを有さない部品等が有る。
【0025】
部品実装機10では、上述した構成によって、基材搬送保持装置22に保持された回路基材12に対して部品の装着作業が行われる。具体的には、回路基材12が、作業位置まで搬送され、その位置において、クランプ装置52によって固定的に保持される。次に、撮像装置26が、回路基材12の上方に移動し、回路基材12を撮像する。これにより、クランプ装置52による回路基材12の保持位置の誤差等に関する情報が得られる。また、部品供給装置30若しくは、ばら部品供給装置32は、所定の供給位置において、電気部品130を供給する。そして、作業ヘッド60,62の何れかが、電気部品130の上方に移動し、電気部品130を把持する。この際、作業ヘッド60,62は、当金86を電気部品130の上面に接触させた状態で、1対の把持爪80,82により電気部品130の側面を把持する。
【0026】
詳しくは、部品実装機10の作動を制御する制御装置(図示省略)には、把持対象の供給される種類の部品の高さ寸法及び幅寸法が記憶されている。ここで、供給される種類の部品の高さ寸法とは、供給位置において供給される部品の上方を向く面と下方を向く面との間の距離を示す寸法であり、供給位置において供給される部品の上下方向の寸法である。このため、供給される種類の部品の高さ方向は、供給位置において供給される部品の上下方向となる。また、供給される種類の部品の幅寸法とは、供給位置において供給される部品の対向する1対の側面の間の距離を示す寸法であり、供給位置において供給される部品の左右方向の寸法である。このため、供給される種類の部品の幅方向は、供給位置において供給される部品の左右方向となる。
【0027】
そして、部品が作業ヘッド60,62により把持される前に、当金86の上下方向の位置が、把持する種類の部品の高さ寸法に応じて、当金移動機構88により調整され規定さ
れる。この際、例えば、当金86の下端面と、把持爪80,82の爪部92の先端との間の距離が、把持する部品の高さ寸法より短くなるように、当金86の上下方向の位置が調整される。また、部品が作業ヘッド60,62により把持される前に、1対の把持爪80,82の左右方向の位置が、把持する部品の幅寸法に応じて、爪作動機構84により調整される。この際、例えば、1対の把持爪80,82の間の距離が、把持する部品の幅寸法より長くなるように、1対の把持爪80,82の左右方向の位置が調整される。そして、把持対象の部品、つまり、電気部品130の上方に、作業ヘッド60,62が移動した後に、当金86が電気部品130の上面に接触するまで、Z方向移動装置72の作動により作業ヘッド60,62が下降する。続いて、1対の把持爪80,82が電気部品130の1対の側面に接触して適切な把持力で部品を把持するまで、爪作動機構84の作動により1対の把持爪80,82が接近する。これにより、
図3に示すように、当金86が電気部品130の上面に当接した状態で、電気部品130が1対の側面において1対の把持爪80,82により把持される。この際、1対の把持爪80,82により把持された電気部品130の下端面は、把持爪80,82の下端より下方に位置している。このように、電気部品130が作業ヘッド60,62により把持されることで、電気部品130が高さ方向において位置決めされた状態で、把持した部品を移動させ回路機材に装着するときに落下や位置ズレを起こすことがないように、作業ヘッド60,62により把持される。
【0028】
そして、電気部品130が作業ヘッド60,62に把持されると、作業ヘッド60,62が、撮像装置28の上方に移動し、撮像装置28によって、作業ヘッド60,62に把持された電気部品130が撮像される。これにより、電気部品130の作業ヘッド60,62による保持姿勢等に関する情報が得られる。次に、作業ヘッド60,62が、回路基材12の上方に移動し、作業ヘッド60,62により把持された電気部品130の下端面が回路基材12に接触するまで下降する。これにより、作業ヘッド60,62により把持された電気部品130が回路基材12に装着される。なお、回路基材12への装着時において、回路基材12の保持位置,電気部品130の保持姿勢等に基づいて、電気部品130は回路基材12に装着される。このように、部品実装機10では、装着対象の部品が当金86により部品の高さ方向において位置決めされた状態で1対の把持爪80,82により把持され、その把持された部品が回路基材12に装着される。これにより、把持した部品を移動させ回路機材に装着するときに落下や位置ズレを起こすことがなくなり、適切な装着作業を行うことが可能とされている。
【0029】
ただし、従来の作業ヘッドでは、装着対象の部品の種類が変更される際に、部品を把持する把持爪の交換作業が必要とされる場合がある。詳しくは、従来の作業ヘッドには、例えば、
図4に示す1対の把持爪200が装着されている。把持爪200の先端部には、段差面202が形成されており、段付形状とされている。なお、段差面202と把持爪200の先端との間の距離は、電気部品130の高さ寸法より短くされている。そして、電気部品130の上面に段差面202が接触した状態で部品の高さ方向は位置決めされ、電気部品130の対向する1対の側面が、把持爪200の段差面202より下方の部分(以下、「把持部」と記載する)206により把持される。これにより、把持した部品を移動させ回路機材に装着するときに落下や位置ズレを起こすことがないように、把持爪200により電気部品130を把持することができる。
【0030】
しかしながら、電気部品130より小さいサイズの電気部品、例えば、
図5に示す電気部品210の高さ寸法は、段差面202と把持爪200の先端との間の距離より短い。このような電気部品210を把持爪200により把持しようとすると、電気部品210の上面が段差面202に接触する前に、把持爪200の先端が、電気部品210が載置されている載置面などに当接する。このため、電気部品210は、
図5に示すように、上面が段差面202に接触しない状態で、把持部206により把持されることとなり、把持された部品を移動させ回路機材に装着するときに落下や位置ズレを起こす虞がある。
【0031】
そこで、把持対象の部品が電気部品210である場合には、把持爪200の代わりに、
図6に示す1対の把持爪220が作業ヘッドに装着される。把持爪220の先端部にも、段差面222が形成されており、段付形状とされている。そして、段差面222と把持爪220の先端との間の距離は、電気部品210の高さ寸法より短くされている。このため、電気部品210の上面に段差面222が接触した状態で、電気部品210の対向する1対の側面を、把持爪220の段差面222より下方の部分、つまり、把持面226により把持することができる。これにより、把持した部品を移動させ回路機材に装着するときに落下や位置ズレを起こすことがないように、把持爪220により電気部品210を把持することができる。
【0032】
このように、従来の作業ヘッドでは、異なる種類や形状の電気部品210を適切に把持するためには、作業ヘッドに装着されていた把持爪200を、把持爪220に交換する必要があり、交換作業のためにタクトタイムが長くなる。一方で、部品実装機10で用いられている作業ヘッド60,62では、当金86の上下方向の位置、つまり、部品の高さ方向の位置を当金移動機構88により制御可能に変更することが可能とされている。このため、
図7に示すように、当金86の下端面と、把持爪80,82の爪部92の下端との間の距離が、電気部品210の高さ寸法より短くなるように、当金86の上下方向の位置が調整される。これにより、電気部品210の上面に当金86の下端面が接触し把持した部品の高さ方向は位置決めされた状態で、電気部品210の対向する1対の側面を爪部92により把持することができる。このように、作業ヘッド60,62では、把持対象の部品の高さ寸法に応じて、当金86の上下方向の位置を制御可能に変更することができるため、把持爪の交換作業を行う必要がなくなり、タクトタイムの大幅な短縮を図ることが可能となる。
【0033】
さらに言えば、作業ヘッド60,62では、1対の把持爪80,82により把持した部品を当金86により下方に向って押し付けることが可能である。具体的には、例えば、
図8に示すリード部品230の装着作業時において、作業ヘッド60,62は、1対の把持爪80,82により、リード部品230の部品本体232を把持する。この際、当金86の下端面と、把持爪80,82の爪部92の下端との間の距離が、リード部品230の部品本体232の高さ寸法より短くなるように、当金86の上下方向の位置が調整されている。これにより、リード部品230の部品本体232の上面に当金86が接触した状態で、部品本体232の対向する1対の側面が、把持爪220により把持される。
【0034】
そして、作業ヘッド60,62に把持されたリード部品230は、作業ヘッド移動装置64のX方向移動装置68及びY方向移動装置70の作動により、回路基材12に形成された1対の貫通穴236の上方に移動する。そして、作業ヘッド60,62が、作業ヘッド移動装置64のZ方向移動装置72の作動により下降し、作業ヘッド60,62に保持されたリード部品230の1対のリード234が、1対の貫通穴236に挿入される。この際、リード部品230の部品本体232の下面が回路基材12に接触する前に、作業ヘッド60,62の下降が停止する。つまり、作業ヘッド60,62は、1対のリード234が1対の貫通穴236に挿入されるまで下降し、部品本体232の下面が回路基材12に接触する前に、作業ヘッド60,62の下降動作は停止する。そして、爪作動機構84の作動により、1対の把持爪80,82が離間することで、把持爪80,82によるリード部品230の把持が解除される。続いて、当金86が、当金移動機構88の作動により下降することで、リード部品230が当金86により下方に向って押し付けられる。この際、
図9に示すように、当金86は、部品本体232の下面が回路基材12の上面に接触するまで下降する。これにより、リード234が貫通穴236に圧入され、根元まで貫通穴236に挿入されることで、リード部品230が回路基材12に装着される。
【0035】
このように、作業ヘッド60,62では、当金移動機構88の作動により当金86が下降することで、リード部品230が回路基材12に向って押し付けられて、回路基材12に装着される。一方で、従来の作業ヘッドにおいても、1対の把持爪により把持されたリード部品230のリード234が貫通穴236に挿入される迄、作業ヘッドがZ方向移動装置72の作動により下降する。ただし、従来の作業ヘッドでは、リード234が貫通穴236に挿入された後も、部品本体232の下面が回路基材12に接触するまで、作業ヘッドがZ方向移動装置72の作動により下降し、リード部品230が回路基材12に装着される。つまり、従来の作業ヘッドでは、Z方向移動装置72の作動により作業ヘッドが下降することで、リード234が貫通穴236に圧入され、リード部品230が回路基材12に装着される。この際、Z方向移動装置72は、質量の大きな作業ヘッドを、大きな力で下降させる必要があるため、微小な圧力でリード234を貫通穴236に圧入することができず、回路基材12,リード部品230等に余分な負荷が生じることがあった。一方で、部品実装機10で用いられている作業ヘッド60,62では、上述したように、当金移動機構88の作動により当金86が下降することで、リード234が貫通穴236に圧入され、リード部品230が回路基材12に装着される。この際、当金移動機構88は、質量の小さな当金86を下降させればよいため、微小な圧力でリード234を貫通穴236に圧入することができる。このため、作業ヘッド60,62を用いることで、リード部品230の装着時において、回路基材12,リード部品230等への負荷を少なくすることが可能となる。また、異なる種類やサイズの部品を把持する場合においても、段差面を有する把持爪を用いる必要もなく、把持する部品の高さは当金の位置を制御することで適切に位置決めして規定することができる。
【0036】
なお、作業ヘッド60,62は、把持装置及び作業ヘッドの一例である。把持爪80,82は、爪の一例である。当金86は、当金の一例である。当金移動機構88は、移動機構の一例である。電磁モータ106は、第1の電磁モータの一例である。電磁モータ156は、第2の電磁モータの一例である。
【0037】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、電磁モータ106,156が作業ヘッド60,62に内蔵されているが、作業ヘッド60,62の外部に配設されていてもよい。例えば、作業ヘッド60,62が装着されるスライダ74,76に電磁モータ106,156が配設され、作業ヘッド60,62がスライダ74,76に着脱可能に位置決めして装着されることで、電磁モータ106,156の駆動力が作業ヘッド60,62に伝達されてもよい。また、例えば、部品実装機10の所定の位置に電磁モータ106,156が配設され、作業ヘッド60,62が、その所定の位置に移動することで、電磁モータ106,156の駆動力が作業ヘッド60,62に伝達されてもよい。この場合、所定の位置において、作業ヘッドの当金の位置は移動して位置決めされ、把持爪は部品を把持する。
【0038】
また、上記実施例では、本発明が作業ヘッド60,62に適用されているが、複数の爪により部品を把持可能な装置であれば、種々の装置に本発明を適用することが可能とである。具体的には、例えば、ロボットハンド,チャックなどに本発明を適用することが可能である。なお、チャック等は、作業ヘッドに着脱されるため、チャック等に本発明が適用された場合には、当金移動機構88等を駆動する電磁モータは、チャックに配設されてもよく、作業ヘッドに配設されてもよい。なお、ロボットハンドやチャックなどは多関節ロボット等、さまざまな種類のロボットに適用できる。
【0039】
また、上記実施例では、作業ヘッド60,62により部品が把持される前に、当金86の上下方向の位置が調整されているが、作業ヘッド60,62により部品が把持された後に、当金86の上下方向の位置が調整されてもよい。つまり、当金86を上方に移動させ
た状態で、1対の把持爪80,82により部品を把持する。この際、当金86は、部品の上面に接触していない。そして、1対の把持爪80,82により部品が把持された後に、当金86を下降させて、当金86を、把持爪80,82に把持された部品の上面に接触させてもよい。
【符号の説明】
【0040】
60:作業ヘッド(把持装置) 62:作業ヘッド(把持装置) 80:把持爪(爪) 82:把持爪(爪) 86:当金 88:当金移動機構(移動機構) 106:電磁モータ(第1の電磁モータ) 156:電磁モータ(第2の電磁モータ)