(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20241001BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241001BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20241001BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20241001BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L21/66 N
B23K26/00 P
B23K26/53
H01L21/02 Z
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2020039066
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】佐野 いく
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-117776(JP,A)
【文献】特開2009-025995(JP,A)
【文献】特開2019-158811(JP,A)
【文献】国際公開第2011/096562(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/155894(WO,A1)
【文献】特開平11-320147(JP,A)
【文献】特開2018-064049(JP,A)
【文献】特開2017-204574(JP,A)
【文献】特開2017-164801(JP,A)
【文献】特開2013-074198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
B23K 26/00
B23K 26/53
H01L 21/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
前記ウエハを撮像する撮像部と、
情報の入力を受付ける入力部と、
制御部と、
情報を表示する表示部と、を備え、
前記入力部は、前記ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付け、
前記制御部は、
前記入力部によって受付けられた前記ウエハ加工情報に基づき前記照射部による前記レーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定することと、決定した前記加工条件で前記ウエハに前記レーザ光が照射されるように前記照射部を制御することと、前記ウエハを撮像するように前記撮像部を制御することによって前記レーザ光の照射による前記ウエハのレーザ加工結果を取得することと、前記レーザ加工結果に基づいて、前記加工条件を評価することと、を実行するように構成されて
おり、
決定した前記加工条件が表示されるように前記表示部を制御することを更に実行するように構成されており、
前記加工条件に基づき前記照射部により前記ウエハに前記レーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出し、レーザ光が照射される加工ラインに対して垂直又は水平な断面の該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージが表示されるように前記表示部を制御する、検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ウエハ加工情報と前記加工条件とが対応付けて記憶されたデータベースを参照することにより、前記入力部によって受付けられた前記ウエハ加工情報に対応する前記加工条件を決定する、請求項1記載の検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記レーザ加工結果及び前記ウエハ加工情報に基づいて、前記加工条件を評価する、請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記加工条件が適切でないと評価した場合に、前記レーザ加工結果に基づいて前記加工条件を補正することを更に実行するように構成されている、請求項2又は3記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加工条件を補正した場合に、補正後の前記加工条件を含む情報に基づき前記データベースを更新することを更に実行するように構成されている、請求項4記載の検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記データベースを参照することにより、入力を受付けた前記ウエハ加工情報に対応する前記加工条件の候補である複数の加工条件候補を抽出し、該複数の加工条件候補が表示されるように前記表示部を制御する、請求項
2~5のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項7】
前記入力部は、前記表示部によって前記複数の加工条件候補が表示された状態において、一の前記加工条件候補を選択するユーザ入力を受付け、
前記制御部は、前記入力部によって受付けられた前記ユーザ入力において選択された前記加工条件候補を、前記加工条件に決定する、請求項
6記載の検査装置。
【請求項8】
前記制御部は、複数の前記加工条件候補について、それぞれ前記ウエハ加工情報とのマッチ度合いを導出し、前記マッチ度合いを考慮した表示態様で前記複数の加工条件候補が表示されるように前記表示部を制御する、請求項
6又は
7記載の検査装置。
【請求項9】
前記入力部は、前記表示部によって前記推定加工結果イメージが表示された状態において、前記推定加工結果イメージにおける加工位置の補正に係る第1補正情報の入力を受付け、
前記制御部は、前記第1補正情報に基づいて、前記推定加工結果を補正すると共に、補正後の前記推定加工結果となるように前記加工条件を補正する、請求項
1~8のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項10】
前記入力部は、前記表示部によって前記加工条件が表示された状態において、前記加工条件の補正に係る第2補正情報の入力を受付け、
前記制御部は、前記第2補正情報に基づいて、前記加工条件を補正すると共に、補正後の前記加工条件に基づいて前記推定加工結果を補正する、請求項
1~9のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記レーザ加工結果が表示されるように前記表示部を制御する、請求項
1~10のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記入力部によって受付けられた前記ウエハ加工情報が適切でない場合に、修正を促すメッセージが表示されるように前記表示部を制御する、請求項
1~10のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項13】
前記ウエハ加工情報には、前記ウエハの仕上げ厚さを示す情報が含まれている、請求項1~1
2のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項14】
前記ウエハ加工情報には、前記ウエハに前記レーザ光が照射された際に形成される改質領域から延びる亀裂が前記ウエハの表面にまで到達した状態とするか又は到達していない状態とするかを示す亀裂到達情報と、前記亀裂到達情報において前記亀裂が前記ウエハの表面にまで到達していない状態とすることが示されている場合における前記レーザ光の照射後の研削による前記亀裂の想定延び量を示す情報とが含まれている、請求項1~1
2のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項15】
前記ウエハ加工情報には、レーザ加工及び研削加工が完了した後の前記ウエハの仕上げ断面に、前記ウエハに前記レーザ光が照射された際に形成される改質領域が現れた状態とするか否かを示す仕上げ断面情報が含まれている、請求項1~1
4のいずれか一項記載の検査装置。
【請求項16】
ウエハにレーザ光を照射する照射部と、
情報の入力を受付ける入力部と、
制御部と、
情報を表示する表示部と、を備え、
前記入力部は、前記ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付け、
前記制御部は、前記入力部によって受付けられた前記ウエハ加工情報に基づき、前記照射部により前記ウエハに前記レーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出することと、
レーザ光が照射される加工ラインに対して垂直又は水平な断面の該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージが表示されるように前記表示部を制御することと、該推定加工結果に基づき、前記照射部による前記レーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定することと、を実行するように構成されている、検査装置。
【請求項17】
ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付ける第1工程と、
前記第1工程において受付けられた前記ウエハ加工情報に基づき、前記ウエハに照射されるレーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定する第2工程と、
前記第2工程において決定された前記加工条件に基づき前記ウエハに前記レーザ光を照射する第3工程と、
前記第3工程における前記レーザ光の照射による前記ウエハのレーザ加工結果に基づいて、前記加工条件を評価する第4工程と、を含
み、
前記第2工程において決定された前記加工条件を表示すると共に、前記加工条件に基づき前記ウエハに前記レーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出し、レーザ光が照射される加工ラインに対して垂直又は水平な断面の該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージを表示する、検査方法。
【請求項18】
ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付ける第1工程と、
前記第1工程において受付けられた前記ウエハ加工情報に基づき、前記ウエハにレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出
し、レーザ光が照射される加工ラインに対して垂直又は水平な断面の該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージを表示する第2工程と、
前記第2工程において導出された前記推定加工結果に基づき、前記レーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定する第3工程と、を含む検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板と、半導体基板の一方の表面に形成された機能素子層と、を備えるウエハを複数のラインのそれぞれに沿って切断するために、半導体基板の他方の面側からウエハにレーザ光を照射することにより、複数のラインのそれぞれに沿って半導体基板の内部に複数列の改質領域を形成する検査装置が知られている。特許文献1に記載の検査装置は、赤外線カメラを備えており、半導体基板の内部に形成された改質領域、機能素子層に形成された加工ダメージ等を半導体基板の裏面側から観察することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような検査装置においては、ウエハにレーザ光を照射する(ウエハをレーザ加工する)前段階において、ウエハの情報及びレーザ加工目標等に基づき、レーザ光の照射条件を含む加工条件を決定する必要がある。加工条件を適切に決定するためには、例えば加工条件をユーザが調整しながらレーザ加工処理を繰り返し行って適切な加工条件を導出すること等が必要になる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、適切な加工条件を容易に決定することができる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る検査装置は、ウエハにレーザ光を照射する照射部と、ウエハを撮像する撮像部と、情報の入力を受付ける入力部と、制御部と、を備え、入力部は、ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付け、制御部は、入力部によって受付けられたウエハ加工情報に基づき照射部によるレーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定することと、決定した加工条件でウエハにレーザ光が照射されるように照射部を制御することと、ウエハを撮像するように撮像部を制御することによってレーザ光の照射によるウエハのレーザ加工結果を取得することと、レーザ加工結果に基づいて、加工条件を評価することと、を実行するように構成されている。
【0007】
本発明の一態様に係る検査装置では、ウエハ加工情報が入力されると、該ウエハ加工情報に応じた加工条件が決定される。このように、ウエハ加工情報を入力することによって加工条件が自動的に決定されることにより、例えば加工条件をユーザが調整しながらレーザ加工処理を繰り返し行って適切な加工条件を導出するような場合と比べて、容易に加工条件を決定することができる。そして、本発明の一態様に係る検査装置では、決定された加工条件で実施されたレーザ加工結果に基づき、該加工条件が評価される。これにより、例えば評価結果に基づき必要に応じて加工条件の変更を行う等、加工条件の適正化を適切に実行することができる。以上のように、本発明の一態様に係る検査装置によれば、適切な加工条件を容易に決定することができる。
【0008】
制御部は、ウエハ加工情報と加工条件とが対応付けて記憶されたデータベースを参照することにより、入力部によって受付けられたウエハ加工情報に対応する加工条件を決定してもよい。データベースの情報に基づき加工条件を決定することにより、加工条件の決定処理を簡易化することができる。
【0009】
制御部は、レーザ加工結果及びウエハ加工情報に基づいて、加工条件を評価してもよい。これにより、例えばウエハに対するレーザ加工目標が達成されるように実際のレーザ加工が行われていたか否かに基づき加工条件を評価することができ、加工条件を適切に評価することができる。
【0010】
制御部は、加工条件が適切でないと評価した場合に、レーザ加工結果に基づいて加工条件を補正することを更に実行するように構成されていてもよい。これにより、加工条件が適切ではない場合に、レーザ加工結果に基づいて加工条件を自動で変更することができ、加工条件の適正化をより容易に行うことができる。
【0011】
制御部は、加工条件を補正した場合に、補正後の加工条件を含む情報に基づきデータベースを更新することを更に実行するように構成されていてもよい。このように補正後の加工条件がデータベースに登録されることによって、それ以降に、ウエハ加工情報の入力に基づき加工条件を決定する際に、より適切な加工条件を決定することが可能になる。
【0012】
上述した検査装置は、情報を表示する表示部を更に備え、制御部は、決定した加工条件が表示されるように表示部を制御することを更に実行するように構成されていてもよい。加工条件が表示(ユーザに提案)されることにより、どのような加工条件で加工されるのかをユーザに知らせることができると共に、必要に応じてユーザ指示に基づき加工条件の変更等を行うことが可能となる。
【0013】
制御部は、データベースを参照することにより、入力を受付けたウエハ加工情報に対応する加工条件の候補である複数の加工条件候補を抽出し、該複数の加工条件候補が表示されるように表示部を制御してもよい。これにより、ウエハ加工情報に応じた(適した)加工条件が複数ある場合に、それぞれを加工条件候補として表示(ユーザに提案)することができる。
【0014】
入力部は、表示部によって複数の加工条件候補が表示された状態において、一の加工条件候補を選択するユーザ入力を受付け、制御部は、入力部によって受付けられたユーザ入力において選択された加工条件候補を、加工条件に決定してもよい。これにより、ユーザ指示に基づき、複数の加工条件候補の中からユーザが希望する加工条件に決定することができる。
【0015】
制御部は、複数の加工条件候補について、それぞれウエハ加工情報とのマッチ度合いを導出し、マッチ度合いを考慮した表示態様で複数の加工条件候補が表示されるように表示部を制御してもよい。これにより、例えばマッチ度合いをユーザに示したり、マッチ度合いが高い加工条件候補とマッチ度合いが低い加工条件候補とを区別して表示する等が可能になり、複数の加工条件候補の中から適切な加工条件をユーザに選択させやすくすることができる。
【0016】
制御部は、加工条件に基づき照射部によりウエハにレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出し、該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージが表示されるように表示部を制御してもよい。加工条件に基づきレーザ加工が行われた場合の加工イメージを表示することによって、加工条件の妥当性をユーザに示し、加工条件の変更要否等をユーザに判断させやすくすることができる。
【0017】
入力部は、表示部によって推定加工結果イメージが表示された状態において、推定加工結果イメージにおける加工位置の補正に係る第1補正情報の入力を受付け、制御部は、第1補正情報に基づいて、推定加工結果を補正すると共に、補正後の推定加工結果となるように加工条件を補正してもよい。これにより、推定加工結果イメージを確認したユーザからの推定加工結果イメージの補正指示に基づいて、加工条件を容易に補正することができる。ユーザにとっては、希望する加工結果となるように推定加工結果イメージの補正指示を出すと、それに合った加工条件に自動で補正されるため、希望する加工を容易に行うことができる。
【0018】
入力部は、表示部によって加工条件が表示された状態において、加工条件の補正に係る第2補正情報の入力を受付け、制御部は、第2補正情報に基づいて、加工条件を補正すると共に、補正後の加工条件に基づいて推定加工結果を補正してもよい。これにより、ユーザからの補正指示に基づいて加工条件を容易に補正すると共に、補正後の加工条件とした場合の推定加工結果イメージを適切に表示することができる。
【0019】
制御部は、レーザ加工結果が表示されるように表示部を制御してもよい。これにより、加工条件に応じたレーザ加工結果をユーザに示すことができる。
【0020】
制御部は、入力部によって受付けられたウエハ加工情報が適切でない場合に、修正を促すメッセージが表示されるように表示部を制御してもよい。これにより、適切でないウエハ加工情報が入力されている場合にユーザに修正を促すことができる。
【0021】
ウエハ加工情報には、ウエハの仕上げ厚さを示す情報が含まれていてもよい。これにより、例えばステルスダイシング後に研削を行うような場合のウエハの仕上げ厚さを考慮して加工条件を適切に決定することができる。
【0022】
ウエハ加工情報には、ウエハにレーザ光が照射された際に形成される改質領域から延びる亀裂がウエハの表面にまで到達した状態とするか又は到達していない状態とするかを示す亀裂到達情報と、亀裂到達情報において亀裂がウエハの表面にまで到達していない状態とすることが示されている場合におけるレーザ光の照射後の研削による亀裂の想定延び量を示す情報とが含まれていてもよい。これにより、例えばステルスダイシング後に研削を行って亀裂を伸ばすことによって亀裂をウエハの表面に到達させる場合に、研削による亀裂の延び量を適切に考慮して加工条件を決定することができる。
【0023】
ウエハ加工情報には、レーザ加工及び研削加工が完了した後のウエハの仕上げ断面に、ウエハにレーザ光が照射された際に形成される改質領域が現れた状態とするか否かを示す仕上げ断面情報が含まれていてもよい。これにより、例えばチップの強度アップ又はパーティクル低減等を目的として仕上げ断面に改質領域を残さないことをユーザが希望する場合等において、このような仕上げ断面の情報を適切に考慮して加工条件を決定することができる。
【0024】
本発明の一態様に係る検査装置は、ウエハにレーザ光を照射する照射部と、情報の入力を受付ける入力部と、制御部と、を備え、入力部は、ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付け、制御部は、入力部によって受付けられたウエハ加工情報に基づき、照射部によりウエハにレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出することと、該推定加工結果に基づき、照射部によるレーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定することと、を実行するように構成されている。
【0025】
本発明の一態様に係る検査装置では、ウエハ加工情報が入力されると、該ウエハ加工情報に応じた推定加工結果が導出され、推定加工結果に基づき加工条件が決定される。このように、ウエハ加工情報を入力することによって加工条件が自動的に決定されることにより、例えば加工条件をユーザが調整しながらレーザ加工処理を繰り返し行って適切な加工条件を導出するような場合と比べて、容易に加工条件を決定することができる。以上のように、本発明の一態様に係る検査装置によれば、加工条件を容易且つ適切に決定することができる。
【0026】
本発明の一態様に係る検査方法は、ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付ける第1工程と、第1工程において受付けられたウエハ加工情報に基づき、ウエハに照射されるレーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定する第2工程と、第2工程において決定された加工条件に基づきウエハにレーザ光を照射する第3工程と、第3工程におけるレーザ光の照射によるウエハのレーザ加工結果に基づいて、加工条件を評価する第4工程と、を含む。
【0027】
本発明の一態様に係る検査方法は、ウエハの情報及び該ウエハに対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付ける第1工程と、第1工程において受付けられたウエハ加工情報に基づき、ウエハにレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出する第2工程と、第2工程において導出された推定加工結果に基づき、レーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定する第3工程と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明の検査装置及び検査方法によれば、適切な加工条件を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】
図2に示されるウエハの一部分の断面図である。
【
図4】
図1に示されるレーザ照射ユニットの構成図である。
【
図5】
図1に示される検査用撮像ユニットの構成図である。
【
図6】
図1に示されるアライメント補正用撮像ユニットの構成図である。
【
図7】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図8】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するためのウエハの断面図、及び当該検査用撮像ユニットによる各箇所での画像である。
【
図9】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図10】半導体基板の内部に形成された改質領域及び亀裂のSEM画像である。
【
図11】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図12】
図5に示される検査用撮像ユニットによる撮像原理を説明するための光路図、及び当該検査用撮像ユニットによる焦点での画像を示す模式図である。
【
図17】データベースからのレシピ選択を説明する図である。
【
図18】データベースからの複数レシピ選択を説明する図である。
【
図19】推定加工結果イメージの表示画面の一例である。
【
図20】推定加工結果イメージを説明する図である。
【
図21】推定加工結果イメージを説明する図である。
【
図23】ウエハ厚さの導出に係るデータベースの一例である。
【
図24】検査判定結果(NG)の表示画面の一例である。
【
図25】検査判定結果(OK)の表示画面の一例である。
【
図28】変形例に係る処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[検査装置の構成]
【0031】
図1に示されるように、検査装置1は、ステージ2と、レーザ照射ユニット3(照射部)と、複数の撮像ユニット4,5,6と、駆動ユニット7と、制御部8と、ディスプレイ150(入力部,表示部)とを備えている。検査装置1は、対象物11にレーザ光Lを照射することにより、対象物11に改質領域12を形成する装置である。
【0032】
ステージ2は、例えば対象物11に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、対象物11を支持する。ステージ2は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動可能であり、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。なお、X方向及びY方向は、互いに垂直な第1水平方向及び第2水平方向であり、Z方向は、鉛直方向である。
【0033】
レーザ照射ユニット3は、対象物11に対して透過性を有するレーザ光Lを集光して対象物11に照射する。ステージ2に支持された対象物11の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、対象物11の内部に改質領域12が形成される。
【0034】
改質領域12は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域12としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域12は、改質領域12からレーザ光Lの入射側及びその反対側に亀裂が延び易いという特性を有している。このような改質領域12の特性は、対象物11の切断に利用される。
【0035】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、対象物11に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12sがX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12sは、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域12は、1列に並んだ複数の改質スポット12sの集合である。隣り合う改質スポット12sは、対象物11に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0036】
撮像ユニット4は、対象物11に形成された改質領域12、及び改質領域12から延びた亀裂の先端を撮像する。
【0037】
撮像ユニット5及び撮像ユニット6は、制御部8の制御のもとで、ステージ2に支持された対象物11を、対象物11を透過する光により撮像する。撮像ユニット5,6が撮像することにより得られた画像は、一例として、レーザ光Lの照射位置のアライメントに供される。
【0038】
駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6を支持している。駆動ユニット7は、レーザ照射ユニット3及び複数の撮像ユニット4,5,6をZ方向に沿って移動させる。
【0039】
制御部8は、ステージ2、レーザ照射ユニット3、複数の撮像ユニット4,5,6、及び駆動ユニット7の動作を制御する。制御部8は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部8では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。
【0040】
ディスプレイ150は、ユーザから情報の入力を受付ける入力部としての機能と、ユーザに対して情報を表示する表示部としての機能とを有している。
【0041】
[対象物の構成]
本実施形態の対象物11は、
図2及び
図3に示されるように、ウエハ20である。ウエハ20は、半導体基板21と、機能素子層22と、を備えている。なお、本実施形態では、ウエハ20は機能素子層22を有するとして説明するが、ウエハ20は機能素子層22を有していても有していなくてもよく、ベアウエハであってもよい。半導体基板21は、表面21a(第二表面)及び裏面21b(第一表面)を有している。半導体基板21は、例えば、シリコン基板である。機能素子層22は、半導体基板21の表面21aに形成されている。機能素子層22は、表面21aに沿って2次元に配列された複数の機能素子22aを含んでいる。機能素子22aは、例えば、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。機能素子22aは、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合もある。なお、半導体基板21には、結晶方位を示すノッチ21cが設けられているが、ノッチ21cの替わりにオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。
【0042】
ウエハ20は、複数のライン15のそれぞれに沿って機能素子22aごとに切断される。複数のライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合に複数の機能素子22aのそれぞれの間を通っている。より具体的には、ライン15は、ウエハ20の厚さ方向から見た場合にストリート領域23の中心(幅方向における中心)を通っている。ストリート領域23は、機能素子層22において、隣り合う機能素子22aの間を通るように延在している。本実施形態では、複数の機能素子22aは、表面21aに沿ってマトリックス状に配列されており、複数のライン15は、格子状に設定されている。なお、ライン15は、仮想的なラインであるが、実際に引かれたラインであってもよい。
【0043】
[レーザ照射ユニットの構成]
図4に示されるように、レーザ照射ユニット3は、光源31と、空間光変調器32と、集光レンズ33と、を有している。光源31は、例えばパルス発振方式によって、レーザ光Lを出力する。空間光変調器32は、光源31から出力されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器32は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。集光レンズ33は、空間光変調器32によって変調されたレーザ光Lを集光する。なお、集光レンズ33は、補正環レンズであってもよい。
【0044】
本実施形態では、レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射することにより、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の内部に2列の改質領域12a,12bを形成する。改質領域12aは、2列の改質領域12a,12bのうち表面21aに最も近い改質領域である。改質領域12bは、2列の改質領域12a,12bのうち、改質領域12aに最も近い改質領域であって、裏面21bに最も近い改質領域である。
【0045】
2列の改質領域12a,12bは、ウエハ20の厚さ方向(Z方向)において隣り合っている。2列の改質領域12a,12bは、半導体基板21に対して2つの集光点C1,C2がライン15に沿って相対的に移動させられることにより形成される。レーザ光Lは、例えば集光点C1に対して集光点C2が進行方向の後側且つレーザ光Lの入射側に位置するように、空間光変調器32によって変調される。なお、改質領域の形成に関しては、単焦点であっても多焦点であってもよいし、1パスであっても複数パスであってもよい。
【0046】
レーザ照射ユニット3は、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。一例として、厚さ775μmの単結晶シリコン基板である半導体基板21に対し、表面21aから54μmの位置及び128μmの位置に2つの集光点C1,C2をそれぞれ合わせて、複数のライン15のそれぞれに沿って半導体基板21の裏面21b側からウエハ20にレーザ光Lを照射する。このとき、例えば2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が半導体基板21の表面21aに至る条件とする場合、レーザ光Lの波長は1099nm、パルス幅は700n秒、繰り返し周波数は120kHzとされる。また、集光点C1におけるレーザ光Lの出力は2.7W、集光点C2におけるレーザ光Lの出力は2.7Wとされ、半導体基板21に対する2つの集光点C1,C2の相対的な移動速度は800mm/秒とされる。
【0047】
このような2列の改質領域12a,12b及び亀裂14の形成は、次のような場合に実施される。すなわち、後の工程において、例えば、半導体基板21の裏面21bを研削することにより半導体基板21を薄化すると共に亀裂14を裏面21bに露出させ、複数のライン15のそれぞれに沿ってウエハ20を複数の半導体デバイスに切断する場合である。
【0048】
[検査用撮像ユニットの構成]
図5に示されるように、撮像ユニット4(撮像部)は、光源41と、ミラー42と、対物レンズ43と、光検出部44と、を有している。撮像ユニット4はウエハ20を撮像する。光源41は、半導体基板21に対して透過性を有する光I1を出力する。光源41は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I1を出力する。光源41から出力された光I1は、ミラー42によって反射されて対物レンズ43を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。このとき、ステージ2は、上述したように2列の改質領域12a,12bが形成されたウエハ20を支持している。
【0049】
対物レンズ43は、半導体基板21の表面21aで反射された光I1を通過させる。つまり、対物レンズ43は、半導体基板21を伝搬した光I1を通過させる。対物レンズ43の開口数(NA)は、例えば0.45以上である。対物レンズ43は、補正環43aを有している。補正環43aは、例えば対物レンズ43を構成する複数のレンズにおける相互間の距離を調整することにより、半導体基板21内において光I1に生じる収差を補正する。なお、収差を補正する手段は、補正環43aに限られず、空間光変調器等のその他の補正手段であってもよい。光検出部44は、対物レンズ43及びミラー42を透過した光I1を検出する。光検出部44は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I1を検出する。なお、近赤外領域の光I1を検出(撮像)する手段はInGaAsカメラに限られず、透過型コンフォーカル顕微鏡等、透過型の撮像を行うものであればその他の撮像手段であってもよい。
【0050】
撮像ユニット4は、2列の改質領域12a,12bのそれぞれ、及び、複数の亀裂14a,14b,14c,14dのそれぞれの先端を撮像することができる(詳細については、後述する)。亀裂14aは、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14bは、改質領域12aから裏面21b側に延びる亀裂である。亀裂14cは、改質領域12bから表面21a側に延びる亀裂である。亀裂14dは、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂である。
【0051】
[アライメント補正用撮像ユニットの構成]
図6に示されるように、撮像ユニット5は、光源51と、ミラー52と、レンズ53と、光検出部54と、を有している。光源51は、半導体基板21に対して透過性を有する光I2を出力する。光源51は、例えば、ハロゲンランプ及びフィルタによって構成されており、近赤外領域の光I2を出力する。光源51は、撮像ユニット4の光源41と共通化されていてもよい。光源51から出力された光I2は、ミラー52によって反射されてレンズ53を通過し、半導体基板21の裏面21b側からウエハ20に照射される。
【0052】
レンズ53は、半導体基板21の表面21aで反射された光I2を通過させる。つまり、レンズ53は、半導体基板21を伝搬した光I2を通過させる。レンズ53の開口数は、0.3以下である。すなわち、撮像ユニット4の対物レンズ43の開口数は、レンズ53の開口数よりも大きい。光検出部54は、レンズ53及びミラー52を通過した光I2を検出する。光検出部55は、例えば、InGaAsカメラによって構成されており、近赤外領域の光I2を検出する。
【0053】
撮像ユニット5は、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、表面21a(機能素子層22)から戻る光I2を検出することにより、機能素子層22を撮像する。また、撮像ユニット5は、同様に、制御部8の制御のもとで、裏面21b側から光I2をウエハ20に照射すると共に、半導体基板21における改質領域12a,12bの形成位置から戻る光I2を検出することにより、改質領域12a,12bを含む領域の画像を取得する。これらの画像は、レーザ光Lの照射位置のアライメントに用いられる。撮像ユニット6は、レンズ53がより低倍率(例えば、撮像ユニット5においては6倍であり、撮像ユニット6においては1.5倍)である点を除いて、撮像ユニット5と同様の構成を備え、撮像ユニット5と同様にアライメントに用いられる。
【0054】
[検査用撮像ユニットによる撮像原理]
図5に示される撮像ユニット4を用い、
図7に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っている半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点F(対物レンズ43の焦点)を移動させる。この場合、改質領域12bから裏面21b側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、当該先端14eを確認することができる(
図7における右側の画像)。しかし、亀裂14そのもの、及び表面21aに至っている亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、それらを確認することができない(
図7における左側の画像)。なお、半導体基板21の表面21aに裏面21b側から焦点Fを合わせると、機能素子層22を確認することができる。
【0055】
また、
図5に示される撮像ユニット4を用い、
図8に示されるように、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が表面21aに至っていない半導体基板21に対して、裏面21b側から表面21a側に向かって焦点Fを移動させる。この場合、改質領域12aから表面21a側に延びる亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせても、当該先端14eを確認することができない(
図8における左側の画像)。しかし、表面21aに対して裏面21bとは反対側の領域(すなわち、表面21aに対して機能素子層22側の領域)に裏面21b側から焦点Fを合わせて、表面21aに関して焦点Fと対称な仮想焦点Fvを当該先端14eに位置させると、当該先端14eを確認することができる(
図8における右側の画像)。なお、仮想焦点Fvは、半導体基板21の屈折率を考慮した焦点Fと表面21aに関して対称な点である。
【0056】
以上のように亀裂14そのものを確認することができないのは、照明光である光I1の波長よりも亀裂14の幅が小さいためと想定される。
図9及び
図10は、シリコン基板である半導体基板21の内部に形成された改質領域12及び亀裂14のSEM(Scanning Electron Microscope)画像である。
図9の(b)は、
図9の(a)に示される領域A1の拡大像、
図10の(a)は、
図9の(b)に示される領域A2の拡大像、
図10の(b)は、
図10の(a)に示される領域A3の拡大像である。このように、亀裂14の幅は、120nm程度であり、近赤外領域の光I1の波長(例えば、1.1~1.2μm)よりも小さい。
【0057】
以上を踏まえて想定される撮像原理は、次のとおりである。
図11の(a)に示されるように、空気中に焦点Fを位置させると、光I1が戻ってこないため、黒っぽい画像が得られる(
図11の(a)における右側の画像)。
図11の(b)に示されるように、半導体基板21の内部に焦点Fを位置させると、表面21aで反射された光I1が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図11の(b)における右側の画像)。
図11の(c)に示されるように、改質領域12に裏面21b側から焦点Fを合わせると、改質領域12によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について吸収、散乱等が生じるため、白っぽい背景の中に改質領域12が黒っぽく映った画像が得られる(
図11の(c)における右側の画像)。
【0058】
図12の(a)及び(b)に示されるように、亀裂14の先端14eに裏面21b側から焦点Fを合わせると、例えば、先端14e近傍に生じた光学的特異性(応力集中、歪、原子密度の不連続性等)、先端14e近傍で生じる光の閉じ込め等によって、表面21aで反射されて戻ってきた光I1の一部について散乱、反射、干渉、吸収等が生じるため、白っぽい背景の中に先端14eが黒っぽく映った画像が得られる(
図12の(a)及び(b)における右側の画像)。
図12の(c)に示されるように、亀裂14の先端14e近傍以外の部分に裏面21b側から焦点Fを合わせると、表面21aで反射された光I1の少なくとも一部が戻ってくるため、白っぽい画像が得られる(
図12の(c)における右側の画像)。
【0059】
[加工条件導出処理]
以下では、ウエハ20の切断等を目的として改質領域を形成する処理の前処理として実施される、加工条件導出処理について説明する。加工条件とは、どのような条件・手順でウエハ20を加工するかを示す、加工に係るレシピである。制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられた情報に基づきレーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだ加工条件を決定すること(加工条件決定処理)と、決定した加工条件でウエハ20にレーザ光が照射されるようにレーザ照射ユニット3を制御することと(加工処理)と、ウエハ20を撮像するように撮像ユニット4を制御することによってレーザ光の照射によるウエハ20のレーザ加工結果を取得することと(加工結果取得処理)と、レーザ加工結果に基づいて加工条件を評価することと(加工条件評価処理)と、を実行するように構成されている。
【0060】
(加工条件決定処理)
図13~
図21を参照して、加工条件決定処理について説明する。加工条件決定処理では、まず、ディスプレイ150が、ウエハ20の情報及びウエハ20に対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報のユーザ入力を受付ける。レーザ加工目標とは、ユーザが希望するレーザ加工の内容を示す情報である。
図13~
図15は、ディスプレイ150に表示されるウエハ加工情報の設定画面(ユーザ入力受付画面)の一例である。
図13は加工方法(上述したレーザ加工目標に含まれる情報)の設定画面であり、
図14はウエハ情報(上述したウエハ20の情報に含まれる情報)の設定画面であり、
図15は加工設定(上述したレーザ加工目標に含まれる情報)の設定画面である。ここででは、加工方法(
図13)、ウエハ情報(
図14)、加工設定(
図15)がこの順序で設定されるとして説明するが、これらの設定順序(画面表示順序)はこれに限定されない。
【0061】
図13に示されるように、ディスプレイ150は最初に加工方法のユーザ入力を受付ける。加工方法として、例えば、大きく、SDAG(Stealth Dicing After Grinding)とSDBG(StealthDicing Before Grinding)とがある。SDAGとは、ステルスダイシングをウエハ20の研削後に行う加工方法である。SDBGとは、ステルスダイシングをウエハ20の研削前に行う加工方法である。SDAGは、詳細には例えば、SDAG(表面入射)、SDAG(裏面入射)、SDAG(Tape越し加工)の3種類に分けられる。SDAG(表面入射)は、ウエハ20の研削後に表面21a側からレーザを照射する加工方法であり、MEMS等の入射面にTEGが無く且つストリート幅の確保が可能である場合に用いられる加工方法である。SDAG(裏面入射)は、表面21aにTEGがある場合やストリート幅を削減したい場合に用いられる加工方法である。SDAG(Tape越し加工)は、テープ転写工程を削減したい場合に用いられる。SDBGは、詳細には例えば、SDBG(表面入射)及びSDBG(裏面入射)の2種類に分けられる。以下では、加工方法としてSDBG(裏面入射)が設定された例で説明する。
【0062】
図14に示されるように、ディスプレイ150はつづいてウエハ情報のユーザ入力を受付ける。ウエハ情報として、例えば、ウエハ厚、仕上げ厚、ウエハ種類、入射面の状態、抵抗値(ドープ量)、Index size(ch1)、Index size(ch2)が設定可能とされている。このうち、例えばウエハ厚及び仕上げ厚の設定は必須とされていてもよい。ウエハ厚は、ウエハ20の厚さを示す情報である。ウエハ厚は、例えば、ウエハ20の半導体基板21(シリコン)及び機能素子層22(パターン)双方を含む厚さである。なお、ウエハ厚は、シリコンウエハ厚とパターン厚とに分けて設定されてもよい。仕上げ厚は、例えば、研削後のウエハ20の厚さを示す情報である。すなわち、仕上げ厚となるまで、グラインダによって研削が実施される。グラインダによって研削が実施された後に、テープ転写工程及びエキスパンド工程が実施される。なお、ステルスダイシング装置と研削装置(グラインダ)とが互いに通信可能である場合には、仕上げ厚の情報を両装置間で共有してもよい。仕上げ厚は、例えば、ウエハ20の半導体基板21(シリコン)及び機能素子層22(パターン)双方を含む厚さである。なお、仕上げ厚は、シリコンウエハ厚とパターン厚とに分けて設定されてもよい。パターン厚の情報及び積層構造の情報等は、例えば、制御部8が亀裂14の長さを推定する際に用いられる。なお、仕上げ厚に替えて、研削量を設定してもよい。
【0063】
ウエハ種類は、例えばノッチの位置に応じた「0°」品、「45°」品等の種類である。例えばウエハ種類として45°が設定された場合には、後述する加工設定のBHC状態においてBHCが推奨される。「BHC(Bottom side half-cut)」とは亀裂14が表面21aにまで到達している状態(すなわち亀裂到達状態)を示す用語である。なお、BHCであるためには、亀裂14が表面21aにまで到達していればよく、パターン面(機能素子層22の表面)にまで到達しているか否かは問われない。ウエハ種類として0°が設定された場合には、後述する加工設定のBHC状態においてST及びBHCの双方が推奨される。「ST(Stealth)」とは亀裂14が裏面21b及び表面21aに到達していない状態を示す用語である。入射面の状態は、入射面の膜種(屈折率)・膜厚等を示す情報である。入射面の状態及びレーザ波長等に基づき、制御部8によって反射率が計算されてレーザ光の出力が決定される。抵抗値(ドープ量)は、抵抗の値(ドープ量の場合はドープ量を抵抗の値に換算した値)である。抵抗値及びレーザ波長等に基づき、制御部8によって到達率が計算されてレーザ光の出力が決定される。Index sizeは、ダイサのインデックス値の決定等に利用される情報である。なお、未知のウエハ20を加工する場合には、ウエハ種類、入射面の状態、抵抗値等は不明であるため設定されなくてもよい。
【0064】
図15に示されるように、ディスプレイ150はつづいて加工設定のユーザ入力を受付ける。なお、加工設定の各種情報の一部については、上述した加工方法及びウエハ情報に基づいて自動的に設定されるものであってもよい。加工設定として、例えば、BHC状態(亀裂到達情報)、Si残し量(亀裂の想定延び量を示す情報)、パス数、速度、仕上げ断面、スプラッシュ範囲が設定可能とされている。このうち、例えばBHC状態の設定が必須とされてもよい。BHC状態は、BHC又はSTのいずれか一方を示す情報である。すなわち、BHC状態は、ウエハ20にレーザ光が照射された際に形成される改質領域から延びる亀裂がウエハ20の表面21aにまで到達した状態とするか又は到達していない状態とするかを示す亀裂到達情報である。BHC状態においてSTが設定されている場合には、上述したSi残し量を設定することができる。Si残し量は、ST加工後の亀裂14の到達位置から表面21aまでの長さ(ST加工後に残るシリコン部分の長さ)である。ST加工を行った場合には、最終的にウエハ20を分割するためには、研削時に亀裂14を伸ばしてエキスパンド工程前までにBHCの状態とする必要がある。ユーザは、研削によって亀裂14がどの程度伸びるかを把握して運用することが一般的である。例えば、レーザ加工を行う際の加工深さ(高さ)を示すZハイトの段数で、グラインダにおける亀裂14の延び量を把握することが考えられる。すなわち、ユーザは、グラインダにおける亀裂14の想定延び量を、例えば「Z1分」(Zハイトの1段の深さ分)、「Z2分」(Zハイトの2段の深さ分)のように、Zハイトの段数で把握することが考えられる。そのため、ST加工時において、グラインダにおける亀裂14の想定延び量(Zハイトの段数)をSi残し量として設定することにより、ST加工を行ってST加工のメリット(加工速度のアップ又はスプラッシュ低減)を享受しつつ、ウエハ20を確実に分割することが可能となる。レーザ加工時においてZハイトが設定される際には、BHCとなる位置から、Si残し量で設定されたZハイト分だけST方向(亀裂14が短くなる方向)にずらされる。後述するデータベース(ウエハ加工情報と加工条件(レシピ)とが対応付けて記憶されたデータベース)において、Si残し量を含めたレシピが記憶されていてもよい。なお、Si残し量は、例えばST状態で亀裂量を測定することによってウエハ厚とZハイトから算出されてもよい。
【0065】
パス数は、パスの数及び焦点の数を示す情報である。パス数には、ユーザが希望する値が設定される。制御部8は、設定されたパス数では加工が不可である場合には、加工条件(レシピ)をユーザに提案する際又は加工条件(レシピ)を補正する際にパス数を増やしてもよい。なお、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられた各種のウエハ加工情報が適切でない場合には、修正を促すメッセージが表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。速度は、レーザ加工速度である。制御部8は、設定された速度を考慮して、レーザ出力、周波数、パルスピッチを決定する。制御部8は、設定された速度では加工が不可である場合には、加工条件(レシピ)をユーザに提案する際又は加工条件(レシピ)を補正する際に、速度を変更してもよい。スプラッシュ範囲は、スプラッシュの幅を示す情報である。制御部8は、スプラッシュ範囲が狭い場合には、ST状態となるZハイト又はパルスピッチに決定したり、黒スジが生じる加工条件に決定してもよい。
【0066】
仕上げ断面は、レーザ加工及び仕上げ(研削)加工が完了した後のチップ断面(ウエハ20の仕上げ断面)に、ウエハ20にレーザ光が照射された際に形成される改質領域(SD(Stealth Dicing)層)が表れた状態とするか否かを示す情報である。SDBGでは、レーザ加工後に研削を行うため、条件によってはチップ断面にSD層を残さないように仕上げることが可能である。チップ断面にSD層が残らないことにより、チップの強度を向上させると共にパーティクルを低減することができる。仕上げ断面に「SD層無し」を設定することができる条件について、
図16を参照して説明する。
図16(a)~
図16(d)において、SD1は、改質領域を示している。いま、加工設定においてディスプレイ150の仕上げ断面に「SD層無し」が設定されたとする。この場合、
図16(a)に示されるように、制御部8は、ウエハ情報で設定された仕上げ厚よりも、SD1の下端~表面21aの長さ(SD1下端距離)が長くなるようにSD1が設定されるように、加工条件を決定する。いま、
図16(b)の左図に示されるようにBHCの状態とする場合にSD1下端距離よりも亀裂長さが長いとき、或いは、
図16(b)の右図に示されるようにSTの状態とする場合にSD1下端距離よりも亀裂長さ及びSi残し量の合計が長いときには、制御部8は、仕上げ断面に「SD層無し」を設定することができると判断する。一方で、
図16(c)に示されるように、例えばSTの状態とする場合にSD1下端距離よりも亀裂長さ及びSi残し量の合計が短いときには、制御部8は、仕上げ断面に「SD層無し」を設定することができないと判断する。この場合、制御部8は、仕上げ断面を「SD層有り」に切り替えてもよい。或いは、ユーザの判断によって、仕上げ断面が「SD層有り」に切り替えられてもよい。
【0067】
図15に示されるように、加工設定の入力画面では、「加工前にレシピを表示・確認する」及び「加工結果をレシピ補正前に確認する」の2つの項目を実施するか否かを選択することが可能になっている。レシピとは、加工条件を示す情報である。「加工前にレシピを表示・確認する」が選択された場合には、制御部8によってレシピ(加工条件)が決定されると、レーザ加工を行う前に当該レシピが表示される。「加工前にレシピを表示・確認する」が選択されなかった場合には、制御部8によってレシピ(加工条件)が決定されると、レシピが表示されることなくレーザ加工が開始される。「加工結果をレシピ補正前に確認する」が選択された場合には、実際の加工結果がレシピ補正(又はレシピ確定)前に表示される。「加工結果をレシピ補正前に確認する」が選択されなかった場合には、加工が完了すると、実際の加工結果が表示されることなくレシピ補正(又はレシピ確定)が行われる。
図15に示される、「レシピ作成」が押下されることにより、制御部8によるレシピ決定処理が実行される。
【0068】
制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報(
図13~
図15の設定画面において受付けられた各種情報)に基づき、レーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだレシピ(加工条件)を決定する。制御部8は、ウエハ加工情報とレシピ(加工条件)とが対応付けて記憶されたデータベースを参照することにより、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報に対応するレシピ(加工条件)を決定する。より詳細には、制御部8は、当該データベースから生成したアルゴリズムに基づくコンピュータプログラムや、当該データベースを参照するフィードバック制御プログラムにより、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報に対応するレシピを決定してもよい。データベースは、検査装置1が有していてもよいし、検査装置1と通信可能な外部装置(Webサーバ)が有していてもよい。例えば、検査装置1の設置場所によっては、検査装置1がネットワーク接続不可な場合がある。このような場合であっても、検査装置1において、ネイティブアプリケーション等のデータベースが電子媒体(DVD、CD、USBメモリ、SDカード等)によりインストールされることによって、制御部8はデータベースに係る機能を実行することができる。このような構成では、Webサーバ上で集中管理するデータベースには接続できないものの、検査装置1内でデータベースを個別管理することにより、特定のユーザのみのフィードバック情報を収集してデータベースを更新し続け、重点的且つ継続的に検査の精度を高めていくことが可能になる。また、Webサーバ上にデータベースが存在する場合には、データベースを集中管理しやすくなり、WebアプリケーションやWeb APIの公開、ネイティブアプリケーションの配信によって、データベース(ユーザDB)を活用した検査機能を広く提供することが可能になる。そして、多数のユーザからフィードバック情報を収集してデータベースを更新し続けることにより、網羅的かつ継続的に検査の精度を高めることができる。
図17は、データベースからのレシピ選択を説明する図である。なお、
図17は、あくまでもデータベースを用いた加工条件(レシピ)の決定を説明するための模式図であり、実際にデータベースに記憶されている情報を示しているわけではない。例えば、
図17においては、各レシピに係る推定加工結果イメージ(後述)が示されているが、実際にはデータベースにはイメージが記憶されていなくてもよい。レシピには、レーザ光の照射条件(レーザ条件)であるレーザ光の波長、パルス幅、周波数、速度や、加工点設定/LBA設定に係る情報である焦点数、加工点の集光状態に係る球面収差や非点収差などの補正レベル、改質領域を形成する際のZハイト等が含まれている。
【0069】
図17に示されるように、データベースには、ウエハ加工情報毎に対応するレシピ(加工条件)が記憶されている。制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報(入力情報)とのマッチングを行い、データベースに格納されたウエハ加工情報のうち入力情報と最も近いウエハ加工情報に対応するレシピを、提案レシピとして選択する。なお、マッチング処理は、AI(Artificial Intelligence)を利用して実行されてもよい。いま、
図17に示されるように、入力情報として「ウエハ厚:775μm」「仕上げ厚:50μm」「ウエハ種類:45°」「入射面の状態:SiO2膜50nm」「抵抗値(ドープ量):1Ω・cm」「加工方法:SDBG(裏面)」「BHC状態:BHC」「パス数:2焦点1pass」「速度:800mm/sec」「仕上げ断面:SD層無し」「スプラッシュ範囲:スプラッシュ±30μm」が入力されたとする。この場合、制御部8は、データベースを参照し、ウエハ加工情報として「ウエハ厚t775μm」「仕上げ厚~60μm」「BHC条件」「2焦点1pass」「800mm/sec」「SD層無し」「スプラッシュ±10」が設定されているレシピ(最も左側のレシピ)を提案レシピとして選択する。
【0070】
制御部8は、上述したマッチング処理を行い選択した提案レシピのウエハ加工情報と入力情報のウエハ加工情報との間に差異がある(ずれているパラメータがある)場合には、計算・シミュレーションによってパラメータのずれを補正し、パラメータを補正したレシピを提案レシピに決定してもよい。例えば、制御部8は、互いにウエハ厚が異なる場合にウエハ厚の違いに応じてZハイトを補正してもよいし、互いに抵抗値が異なる場合に抵抗値の違いに応じてレーザ光の出力を補正してもよいし、互いに速度が異なる場合に速度の違いに応じてレーザ光の周波数当を補正してもよいし、互いにパス数が異なる場合にパス数の違いに応じて焦点数を補正してもよい。
【0071】
制御部8は、データベースを参照することにより、入力を受付けたウエハ加工情報に対応する加工条件(レシピ)の候補である複数のレシピ候補を抽出し、該複数のレシピ候補が表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。
図18に示される例では、制御部8は、3つのレシピ候補を抽出している。いま、入力情報は、上述した
図17の例と同様である。そして、最も推奨するレシピ(
図18中において「提案1 推奨」と記載されたレシピ)、タクト優先のレシピ(
図18中において「提案2 タクト優先」と記載されたレシピ)、分割マージン優先のレシピ(
図18中において「提案3 分割マージン優先」と記載されたレシピ)が抽出されている。最も推奨するレシピは、例えば、入力情報とのマッチ度合い(ウエハ加工情報のマッチ度合い)が最も高いレシピである。タクト優先のレシピは、例えば、入力情報とのマッチ度合い(ウエハ加工情報のマッチ度合い)が比較的高く、且つ、速度が速いレシピである。
図18のタクト優先のレシピは、1000mm/secと他のレシピよりも速度が速い。分割マージン優先のレシピは、例えば、入力情報とのマッチ度合い(ウエハ加工情報のマッチ度合い)が比較的高く、且つ、焦点数が多いレシピである。
図18の分割マージン優先のレシピは、3焦点と他のレシピよりも焦点数が多い。このように複数のレシピ候補が抽出されてディスプレイ150に表示されることにより、ユーザに所望のレシピを選択させることができる。なお、制御部8は、抽出する複数のレシピ候補を、上述した推奨、タクト優先、分割マージン優先以外の観点で抽出してもよく、例えば、品質(蛇行又はパーティクル抑制)優先の観点で抽出してもよい。
【0072】
制御部8は、複数のレシピ候補について、それぞれ入力を受付けたウエハ加工情報(入力情報)とのマッチ度合いを導出し、マッチ度合いを考慮した表示態様で複数のレシピ候補が表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。具体的には、制御部8は、例えば複数のレシピ候補のマッチ度合いが表示されるように、又は、マッチ度合いが高いレシピ候補とマッチ度合いが低いレシピ候補とが区別して表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。また、制御部8は、複数のレシピ候補のマッチ度合いに応じた推奨順番が表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。また、制御部8は、ユーザが複数のレシピ候補の中からレシピを選択する上で判断材料となる各種情報(レシピ特徴)が表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0073】
ディスプレイ150は、複数のレシピ候補が表示された状態において、一のレシピ候補を選択するユーザ入力を受付ける。そして、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたユーザ入力において選択されたレシピ候補を、レシピ(加工条件)に決定してもよい。
【0074】
制御部8は、決定したレシピ(加工条件)が表示されるようにディスプレイ150を制御することを更に実行してもよい。
図19は、推定加工結果イメージ(後述)の表示画面の一例である。
図19に示されるように、提案レシピが決定されると、ディスプレイ150において、受付けられたウエハ加工情報(入力情報)及び推定加工結果イメージ(後述)と共に提案レシピの内容が表示される。表示される提案レシピの内容は、決定したレシピ(加工条件)に含まれる一部の情報であってもよい。すなわち、レシピについてはユーザに表示されずに内部で保持されるパラメータがあってもよい。
図19に示される例では、提案レシピの内容として、レーザ光の照射条件(レーザ条件)である波長(レベル9)、パルス幅(レベル7)、周波数(レベル12)、速度(800mm/sec)や、加工点設定/LBA設定に係る情報である焦点数(2焦点加工)、2列の改質領域SD1,SD2の形成に係るZハイト(Z173、Z155)等が表示されている。
【0075】
制御部8は、決定したレシピ(加工条件)に基づきレーザ照射ユニット3によりウエハ20にレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出し、該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージが表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。より詳細には、制御部8は、設定されたレシピに基づきレーザ照射ユニット3によりウエハ20にレーザ光が照射された場合にウエハ20に形成される改質領域及び改質領域から延びる亀裂の情報を含んだ推定加工結果を導出することと、推定加工結果として導出した改質領域及び亀裂のウエハ20における位置を考慮して、ウエハ20のイメージ図とウエハ20における改質領域及び亀裂のイメージ図とが共に描画された推定加工結果イメージが表示されるように、ディスプレイ150を制御することと、を実行するように構成されている。推定加工結果とは、より詳細には、受付けられたウエハ加工情報(入力情報)及び決定されたレシピに基づいて推定される、改質領域の位置、改質領域から延びる亀裂の延び量、黒スジの有無等である。制御部8は、レシピ(加工条件)と推定加工結果イメージとが関連付けられて共に表示されるように、ディスプレイ150を制御する。
【0076】
図19に示されるように、推定加工結果イメージは、受付けられたウエハ加工情報(入力情報)及びレシピと共にディスプレイ150に表示される。
図19に示される例では、ディスプレイ150に、2列の改質領域12a,12bが描画されると共に、2列の改質領域12a,12bに渡る亀裂14が描画されている。描画される改質領域12a,12b及び亀裂14の位置は、制御部8によってレシピに基づき導出されている。いま、ディスプレイ150の推定加工結果イメージには、A:BHC状態(BHCの状態であること)、B:黒スジ無し(黒スジが発生しないこと)、C:65μm,92μm,140μm,171μm(表面21aを基準とした、改質領域12aの下端目標位置が65μm、改質領域12aの上端目標位置が92μm、改質領域12bの下端目標位置が140μm、改質領域12bの上端目標位置が171μmであること)、D:246μm(表面21aを基準とした、改質領域12bから裏面21bに向かって延びる亀裂14の上端目標位置が246μmであること)、E:ウエハ厚t775μm(ウエハ厚さが775μmであること)、及び、仕上げ厚が50μmであること等が示されている。なお、目標位置等の各目標値については、一点の値ではなく幅を持った範囲で示されてもよい。
【0077】
ディスプレイ150は、推定加工結果イメージが表示された状態において、推定加工結果イメージとして表示された改質領域12a,12b及び亀裂14の位置の補正に係る第1補正情報の入力を受付けてもよい。すなわち、ディスプレイ150は、改質領域12a,12bの目標位置及び亀裂14の目標位置を補正する情報である第1補正情報の入力を受付けてもよい。この場合、制御部8は、第1補正情報(すなわち、改質領域12a,12bの目標位置及び亀裂14の目標位置を補正する情報)に基づいて、推定加工結果を補正すると共に補正後の推定加工結果となるように、レシピの各種パラメータを補正し、補正後のレシピと補正後の推定加工結果に基づく推定加工結果イメージとが関連付けられて共に表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0078】
ディスプレイ150は、加工条件(レシピ)が表示された状態において、レシピの補正に係る第2補正情報の入力を受付けてもよい。この場合、制御部8は、第2補正情報に基づいて、レシピの各種パラメータを補正すると共に、補正後のレシピに基づいて推定加工結果を補正し、補正後のレシピと補正後の推定加工結果に基づく推定加工結果イメージとが関連付けられて共に表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0079】
制御部8は、推定加工結果イメージと共に、検査条件提案結果(
図19参照)が表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。検査条件提案結果には、レシピ及び推定加工結果イメージに基づいて、推奨する検査条件が示される。
図19の検査条件提案結果に示されたA~Eのアルファベット付きの検査は、上述した推定加工結果イメージのA~Eの内容に対応する検査である。すなわち、
図19の検査条件提案結果では、A:BHC状態の検査としてA:BHC検査及びA:BHCマージン検査が推奨されており、B:黒スジの検査としてB:黒スジ検査が推奨されており、C:改質領域(SD層)の位置の検査としてC:SD層位置検査が推奨されており、D:亀裂14の上端の位置の検査としてD:上亀裂位置検査が推奨されており、E:ウエハ厚の検査としてE:ウエハ厚さ検査が推奨されている。BHCマージン検査では、各Zハイトにおける裏面状態(ST又はBHC)、上亀裂の先端の位置、上亀裂の先端の位置の変化量、下端亀裂長さ等が示される。そして、
図19に示されるように、検査条件提案結果に示された各検査については、実行要否をユーザが選択可能とされている。実行する検査が選択された後に、
図19に示される、「加工開始」が押下されることにより、加工処理が開始され、加工処理が完了した後に選択した各検査が実行される。
【0080】
上述した推定加工結果イメージの表示について、
図20及び
図21を参照してより詳細に説明する。ここでは、実際の断面状態に対して、推定加工結果イメージではどのように模式的に示すかの一例を説明する。
図20(a)は様々な断面の実際の状態を示しており、
図20(b)は
図20(a)に示す断面となる場合の加工ラインに対して垂直な断面の推定加工結果イメージを示している。
図20(a),(b)は上下で対応する状態を示している。
図20(b)に示されるように、加工ラインに対して垂直な断面の推定加工結果イメージでは、改質領域(SD層)を楕円形状(又は円)で表示すると共に、亀裂を線で表示しており、改質領域に渡る亀裂の繋がりが模式的に示される。このような推定加工結果イメージによれば、BHC状態であること(
図20(b)の一番左)、ST状態であり亀裂が途中で途切れていること(
図20(b)の左から2番目)、BHC状態であり亀裂が途中で途切れていること(
図20(b)の右から2番目)、BHC状態であり端面凸凹が生じていること(
図20(b)の一番右)等を視覚的に表現することができる。また、端面凸凹については亀裂の蛇行具合によって凸凹レベルを表現することもできる(
図20(b)の一番右)。このように、制御部8は、レーザ光が照射される加工ラインに対して垂直な断面の推定加工結果イメージが表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0081】
図21(a)は様々な断面の実際の状態を示しており、
図21(b)は
図21(a)に示す断面となる場合の加工ラインに対して水平な断面の推定加工結果イメージを示している。
図21(a),(b)は上下で対応する状態を示している。
図21(b)に示されるように、加工ラインに対して水平な断面の推定加工結果イメージでは、改質領域(SD層)を例えば帯状で表示する。加工ラインに対して水平な断面のイメージにおいては、改質領域をパルスごとに表現することができるため、パルスピッチのイメージを表示することが可能である。亀裂については線ではなく面で表示されるため、色の違い等によって区別される。このような推定加工結果イメージによれば、BHC状態であること(
図21(b)の一番左)、ST状態であり亀裂が途中で途切れていること(
図21(b)の左から2番目)、BHC状態であり亀裂が途中で途切れていること(
図21(b)の右から2番目)、BHC状態であり端面凸凹が生じていること(
図21(b)の一番右)等を視覚的に表現することができる。端面凸凹については亀裂の蛇行領域によって表現することができる(
図20(b)の一番右)。このように、制御部8は、レーザ光が照射される加工ラインに対して水平な断面の推定加工結果イメージが表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0082】
(加工処理)
加工処理では、制御部8が、決定した加工条件(レシピ)でウエハ20にレーザ光が照射されるようにレーザ照射ユニット3を制御する。制御部8は、詳細には、ウエハ20にレーザ光を照射してウエハ20に改質領域及び改質領域から延びる亀裂が形成されるようにレーザ照射ユニット3を制御する。制御部8は、ディスプレイ150において「加工開始」(
図19参照)が押下されることに応じて、加工処理を開始する。
【0083】
(加工結果取得処理)
加工結果取得処理では、制御部8が、加工されたウエハ20を撮像するように撮像ユニット4を制御することによって、レーザ光の照射によるウエハ20のレーザ加工結果を取得する。制御部8は、詳細には、ウエハ20に対して透過性を有する光を出力してウエハ20を撮像するように撮像ユニット4を制御することによって、レーザ光の照射によりウエハ20に形成された改質領域及び改質領域から延びる亀裂の情報を含んだレーザ加工結果を取得する。
【0084】
上述したように、レーザ加工後、ユーザによって選択された各検査(
図19参照)が実行される。各検査のうち、E:ウエハ厚さ検査(ウエハ厚さの導出)について、
図22及び
図23を参照して説明する。検査装置1では、レーザ照射ユニット3によるレーザ加工と撮像ユニット4による内部観察のプロセスによって得られた情報に基づき、ウエハ20の厚さを測定することができる。具体的には、制御部8は、ウエハ20にレーザ光が照射されることによりウエハ20の内部に改質領域が形成されるようにレーザ照射ユニット3を制御する第一処理と、ウエハ20を伝搬した光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて改質領域の位置を導出し、導出した改質領域の位置及び設定されたレシピ(加工条件)に基づいて、ウエハ20の厚さを導出する第二処理と、を実行する。
【0085】
図22は、ウエハ厚さの導出を説明する図である。
図22においては、ウエハ20の裏面21b側からレーザ光が照射され改質領域12aが形成されていることが示されている。制御部8は、撮像ユニット4を制御することにより深さ方向(Z方向)に焦点Fを移動させて複数の画像を取得し、該画像から、a:改質領域12a(SD1)の上端のZ位置、及び、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置を導出する。すなわち、制御部8は、上述した第二処理において、光を検出した撮像ユニット4から出力される信号に基づいて、改質領域12aの裏面21b側の端部のZ位置(位置a)、及び、改質領域12aの表面21a側の端部の虚像のZ位置(位置c)を導出する。また、ウエハ20が機能素子層22(パターン)を有するウエハである場合においては、制御部8は、撮像ユニット4を制御することにより深さ方向(Z方向)に焦点Fを移動させて、b:パターン面のZ位置を導出することができる。これらのZ位置は、以下ではウエハ20の裏面21bを基準点とした位置であるとする。基準点であるウエハ20のZ位置は、例えば、裏面21b側に伸展した亀裂を撮像ユニット4(内部観察用の検出器)またはハイトセット用の可視カメラにて認識することにより導出してもよいし、レーザ加工前にZハイトをセットする際にハイトセット用の可視カメラで認識することにより導出してもよいし、パターン面からレーザ光を入射させる場合にはレーザ加工前のアライメント時またはレーザ加工後の内部観察時にパターンのピント位置を測定することによって導出してもよい。
【0086】
制御部8は、3パターンの導出手法により、ウエハ20の厚さを導出することができる。第1の手法では、制御部8は、b:パターン面のZ位置に基づいてウエハ20の厚さを導出する。第1の手法は、上述したようにウエハ20が機能素子層22(パターン)を有するウエハである場合にのみ用いることができる。第2の手法及び第3の手法では、制御部8は、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置、及びレシピに基づいてウエハ20の厚さを導出する。
【0087】
第2の手法では、制御部8は、まず、レシピに基づいて改質領域12aの幅を導出する。具体的には、制御部8は、例えば
図23に示されるような、ウエハ厚さの導出に係るデータベース(加工条件と改質領域の幅とが対応付けられたデータベース)を記憶しており、該データベースを参照することにより、レシピ(加工条件)に示された、レーザ光のエネルギー、パルス波形、パルスピッチ、及び集光状態に対応する改質領域12aの幅(SD層幅)を導出する。そして、制御部8は、導出した改質領域12aの幅と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置と、a:改質領域12a(SD1)の上端のZ位置とに基づいて、ウエハ20の厚さを導出する。
図22に示されるように、導出した改質領域12の幅と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置と、a:改質領域12a(SD1)の上端のZ位置とを足し合わせると、ウエハ20の厚さの2倍になる。このため、制御部8は、改質領域12の幅と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置と、a:改質領域12a(SD1)の上端のZ位置とを足し合わせた値を2で割ることにより、ウエハ20の厚さを導出することができる。
【0088】
第3の手法では、制御部8は、まず、レシピに基づいて、ウエハ20に対するレーザ光の加工深さであるZハイトから推定される改質領域12aの表面21a側の端部の位置である推定端部位置を導出する。制御部8は、推定端部位置と、ウエハ20のシリコンの屈折率を考慮した定数(DZレート)とに基づき、DZレートを考慮した端部位置(DZレートを考慮した改質領域12aの表面21a側の端部の位置)を導出し、該DZレートを考慮した端部位置と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置とに基づいて、ウエハ20の厚さを導出する。
図22に示されるように、上述したDZレートを考慮した端部位置と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置とを足し合わせると、ウエハ20の厚さの2倍になる。このため、制御部8は、上述したDZレートを考慮した端部位置と、c:改質領域12a(SD1)の表面21a側の端部の虚像のZ位置とを足し合わせた値を2で割ることにより、ウエハ20の厚さを導出することができる。
【0089】
各検査の判定結果には、制御部8が取得したレーザ加工結果の情報が含まれている。以下では、「検査判定結果」には「レーザ加工結果」の情報が含まれているとして説明する。
図24は、検査判定結果(NG)の表示画面の一例である。
図24に示されるように、制御部8は、レーザ加工結果の情報が含まれた検査判定結果が表示されるようにディスプレイ150を制御する。制御部8は、
図24に示されるように、推定加工結果イメージと、レーザ加工結果の情報を含む検査判定結果とが関連付けられて共に表示されるように、ディスプレイ150を制御してもよい。
【0090】
図24に示されるように、ディスプレイ150の推定加工結果イメージには、A:BHC状態(BHCの状態であること)、B:黒スジ無し(黒スジが発生しないこと)、C:65μm,92μm,140μm,171μm(表面21aを基準とした、改質領域12aの下端目標位置が65μm、改質領域12aの上端目標位置が92μm、改質領域12bの下端目標位置が140μm、改質領域12bの上端目標位置が171μmであること)、D:246μm(表面21aを基準とした、改質領域12bから裏面21bに向かって延びる亀裂14の上端目標位置が246μmであること)、E:ウエハ厚t775μm(ウエハ厚さが775μmであること)、及び、仕上げ厚が50μmであることが示されている。レシピに応じてレーザ加工が行われると、当該推定加工結果イメージの状態となると想定されていた。しかしながら、検査判定結果には、A:ST(STの状態であること)、B:黒スジ無し、C:74μm,99μm,148μm,174μm(表面21aを基準とした、改質領域12aの下端位置が74μm、改質領域12aの上端位置が99μm、改質領域12bの下端位置が148μm、改質領域12bの上端位置が174μmであること)、D:211μm(表面21aを基準とした、改質領域12bから裏面21bに向かって延びる亀裂14の上端位置が211μmであること)、E:ウエハ厚t783μm(ウエハ厚さが783μmであること)、及び、仕上げ厚が50μmであることが示されている。
【0091】
(加工条件評価処理)
制御部8は、レーザ加工結果の情報が含まれた検査判定結果(
図24参照)に基づいて、レシピ(加工条件)を評価する。具体的には、制御部8は、レーザ加工結果の情報が含まれた検査判定結果と、ウエハ加工情報に基づき決定されたレシピを考慮した推定加工結果とを比較することにより、レシピの妥当性を評価する。いま、
図24に示されるように、推定加工結果イメージの目標値と検査判定結果の値とは乖離があり、ユーザによって選択された各検査(
図19参照)のうち、少なくとも、A:BHC検査、C:SD層位置検査、D:上亀裂位置検査、及びE:ウエハ厚さ検査でNGとなっている。BHCとならずSTとなった要因としては、検査判定結果においてE:ウエハ厚t783μmとなっているように、ユーザが設定したウエハ厚(775μm)が正しくなく、想定よりもウエハ20が厚かったことによって、改質領域の形成位置が浅い方向にシフトしていること、改質領域が想定よりも細くなっていること等が考えられる。このような場合、制御部8は、レシピ(加工条件)が適切でないと評価する。なお、制御部8は、AF追従性等の他のデータに基づいて、改質領域(SD層)の位置ずれ要因がハード起因かレシピ起因かを判定してもよい。ここでは、検査NGとなった要因がウエハ厚の例を説明したが、ハード機差、データベース上のレシピのマージン不足、ウエハのドープ等、様々な要因で検査NGとなることが考えられる。
【0092】
制御部8は、レシピ(加工条件)が適切でないと評価した場合に、レーザ加工結果の情報が含まれた検査判定結果に基づいて、レシピ(加工条件)を補正することを更に実行してもよい。例えば、上述したようにウエハ20が想定よりも厚かったことが検査NGの要因として考えられる場合には、制御部8は、Zハイト補正、出力補正、集光補正量補正を行い、BHCマージン検査をしながらレシピを補正することを補正内容として決定する。制御部8は、
図24に示されるように、検査判定結果と共に推奨する補正内容が表示されるようにディスプレイ150を制御する。制御部8は、各補正内容の優先順位が表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。ディスプレイ150は、優先順位の変更及び補正内容の一部削除等のユーザ入力を受付けてもよい。制御部8は、ディスプレイ150において「補正開始」(
図24参照)が押下されることに応じて、ディスプレイ150に表示されている補正の処理を開始する。上述した状況(ウエハ20が想定よりも厚かった)の場合、例えば、ウエハ厚分だけZハイトを深い位置へ下げる変更、出力を0.1W上げる変更等の補正が実施されて、改質領域の幅を確保する。そして、例えばBHCマージン検査の結果、マージンが少ない場合には、集光補正量を調整し集光性を上げる。このような処理により、制御部8は、最終的な(補正後の)レシピを導出する。
【0093】
図25は、検査判定結果(OK)の表示画面の一例である。
図25に示されるように、制御部8は、補正実施後において、推定加工結果イメージと、検査判定結果と、補正後のレシピ(加工条件)とが共に表示されるようにディスプレイ150を制御する。
図25の例では、検査判定結果には、A:BHC(BHCの状態であること)、B:黒スジ無し、C:64μm,93μm,142μm,173μm(表面21aを基準とした、改質領域12aの下端位置が64μm、改質領域12aの上端位置が93μm、改質領域12bの下端位置が142μm、改質領域12bの上端位置が173μmであること)、D:244μm(表面21aを基準とした、改質領域12bから裏面21bに向かって延びる亀裂14の上端位置が244μmであること)、E:ウエハ厚t783μm(ウエハ厚さが783μmであること)、及び、仕上げ厚が50μmであることが示されている。このように、想定と異なっていたウエハ厚を考慮した補正を実施することによって、各検査の判定結果がOKとなっている。そして、制御部8は、レシピ(加工条件)を補正した場合に、補正後のレシピを含む情報に基づき、上述した、ウエハ加工情報と加工条件(レシピ)とが対応付けて記憶されたデータベースを更新する。例えば、データベース上に、検査判定結果に示されたウエハ厚(783μm)のレシピが存在しない場合には、制御部8は、ウエハ厚(783μm)のレシピとして補正後のレシピをデータベースに新規登録する。データベースにレシピを新規登録する場合には、ユーザのオリジナルのウエハや加工条件の名称を登録することができ、これによって、同様のウエハを加工する場合にはその名称からデータベース上のレシピを呼び出すことが可能になる。また、制御部8は、検査NGとなった結果についてもデータベースに蓄積することによって、次回以降のレシピ決定精度を向上させる。
【0094】
[検査方法]
本実施形態の検査方法について、
図26を参照して説明する。
図26は、検査方法のフローチャートである。
図26は、検査装置1が実行する検査方法のうち、ウエハ20に改質領域を形成する処理の前処理として実施される加工条件導出処理を示すフローチャートである。
【0095】
図26に示されるように、加工条件導出処理では、最初に、ディスプレイ150が、ウエハ20の情報及びウエハ20に対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報のユーザ入力を受付ける(ステップS1,第1工程)。具体的には、ディスプレイ150は、
図13に示される加工方法、
図14に示されるウエハ情報、及び
図15に示される加工設定のユーザ入力を受付ける。
【0096】
つづいて、制御部8は、データベースを参照することにより、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報(
図13~
図15の設定画面において受付けられた各種情報)に対応するレシピ(加工条件)を決定(自動選択)し、自動選択したレシピが表示(提案)されるようにディスプレイ150を制御する(ステップS2、第2工程)。ディスプレイ150には、レシピ、推定加工結果イメージ、検査条件等が表示される(
図19参照)。そして、ユーザによってディスプレイ150の「加工開始」が押下されることにより、レシピが決定され(ステップS3)、決定されたレシピに基づきウエハ20にレーザ光を照射する加工処理が開始される(ステップS4,第3工程)。
【0097】
つづいて、制御部8は、レーザ加工結果の情報が含まれた検査判定結果(
図24参照)に基づいて、レシピ(加工条件)を評価し(第4工程)、レシピが適切であるか(評価OKか)否かが判定される(ステップS5)。ステップS5においてレシピが適切ではない(評価NG)と判定された場合には、検査判定結果に基づいて、レシピが自動補正される(ステップS6)。例えば、ウエハ20が想定よりも厚かったことがNGの要因として考えられる場合には、制御部8は、Zハイト補正、出力補正、集光補正量補正等を実施する。その後、再度ステップS4の加工処理から実施される。
【0098】
一方で、ステップS5においてレシピが適切である(評価OK)と判定された場合には、レシピを一度も変更していないか(ステップS6の補正処理を一度も実施していないか)否かが判定され(ステップS7)、レシピの変更をしている場合にはデータベースに変更後のレシピ(新たなレシピ)が登録されて(ステップS8)、処理が終了する。
【0099】
[作用効果]
次に、本実施形態に係る検査装置1の作用効果について説明する。
【0100】
本実施形態の検査装置1は、ウエハ20にレーザ光を照射するレーザ照射ユニット3と、ウエハ20を撮像する撮像ユニット4と、情報の入力を受付けるディスプレイ150と、制御部8と、を備え、ディスプレイ150は、ウエハ20の情報及び該ウエハ20に対するレーザ加工目標を含むウエハ加工情報の入力を受付け、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報に基づきレーザ照射ユニット3によるレーザ光の照射条件を含んだレシピ(加工条件)を決定することと、決定したレシピでウエハ20にレーザ光が照射されるようにレーザ照射ユニット3を制御することと、ウエハ20を撮像するように撮像ユニット4を制御することによってレーザ光の照射によるウエハ20のレーザ加工結果を取得することと、レーザ加工結果に基づいて、レシピを評価することと、を実行するように構成されている。
【0101】
本実施形態に係る検査装置1では、ウエハ加工情報が入力されると、該ウエハ加工情報に応じたレシピが決定される。このように、ウエハ加工情報を入力することによってレシピが自動的に決定されることにより、例えば加工条件をユーザが調整しながらレーザ加工処理を繰り返し行って適切なレシピを導出するような場合と比べて、容易にレシピ(加工条件)を決定することができる。そして、検査装置1では、決定されたレシピで実施されたレーザ加工結果に基づき、該レシピが評価される。これにより、例えば評価結果に基づき必要に応じてレシピの変更を行う等、レシピ(加工条件)の適正化を適切に実行することができる。以上のように、検査装置1によれば、適切なレシピ(加工条件)を容易に決定することができる。
【0102】
制御部8は、ウエハ加工情報と加工条件とが対応付けて記憶されたデータベースを参照することにより、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報に対応するレシピを決定してもよい。データベースの情報に基づきレシピを決定することにより、レシピの決定処理を簡易化することができる。
【0103】
制御部8は、レーザ加工結果及びウエハ加工情報に基づいて、レシピを評価してもよい。これにより、例えばウエハ20に対するレーザ加工目標が達成されるように実際のレーザ加工が行われていたか否かに基づきレシピを評価することができ、レシピを適切に評価することができる。
【0104】
制御部8は、レシピが適切でないと評価した場合に、レーザ加工結果に基づいてレシピを補正することを更に実行するように構成されていてもよい。これにより、レシピが適切ではない場合に、レーザ加工結果に基づいてレシピを自動で変更することができ、レシピの適正化をより容易に行うことができる。
【0105】
制御部8は、レシピを補正した場合に、補正後のレシピを含む情報に基づきデータベースを更新することを更に実行するように構成されていてもよい。このように補正後のレシピがデータベースに登録されることによって、それ以降に、ウエハ加工情報の入力に基づき加工条件を決定する際に、より適切なレシピを決定することが可能になる。
【0106】
制御部8は、決定したレシピが表示されるようにディスプレイ150を制御することを更に実行するように構成されていてもよい。レシピが表示(ユーザに提案)されることにより、どのようなレシピで加工されるのかをユーザに知らせることができると共に、必要に応じてユーザ指示に基づきレシピの変更等を行うことが可能となる。
【0107】
制御部8は、データベースを参照することにより、入力を受付けたウエハ加工情報に対応するレシピの候補である複数のレシピ候補を抽出し、該複数のレシピ候補が表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。これにより、ウエハ20の加工情報に応じた(適した)レシピが複数ある場合に、それぞれをレシピ候補として表示(ユーザに提案)することができる。
【0108】
ディスプレイ150は、複数のレシピ候補が表示された状態において、一のレシピ候補を選択するユーザ入力を受付け、制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたユーザ入力において選択されたレシピ候補を、レシピに決定してもよい。これにより、ユーザ指示に基づき、複数のレシピ候補の中からユーザが希望するレシピに決定することができる。
【0109】
制御部8は、データベースを参照し、複数のレシピ候補について、それぞれウエハ加工情報とのマッチ度合いを導出し、マッチ度合いを考慮した表示態様で複数のレシピ候補が表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。これにより、例えばマッチ度合いをユーザに示したり、マッチ度合いが高いレシピ候補とマッチ度合いが低いレシピ候補とを区別して表示する等が可能になり、複数のレシピ候補の中から適切なレシピをユーザに選択させやすくすることができる。
【0110】
制御部8は、レシピに基づきレーザ照射ユニット3によりウエハ20にレーザ光が照射された場合の推定加工結果を導出し、該推定加工結果のイメージである推定加工結果イメージが表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。レシピに基づきレーザ加工が行われた場合の加工イメージを表示することによって、レシピの妥当性をユーザに示し、レシピの変更要否等をユーザに判断させやすくすることができる。
【0111】
ディスプレイ150は、推定加工結果イメージが表示された状態において、推定加工結果イメージにおける加工位置の補正に係る第1補正情報の入力を受付け、制御部8は、第1補正情報に基づいて、推定加工結果を補正すると共に、補正後の推定加工結果となるようにレシピを補正してもよい。これにより、推定加工結果イメージを確認したユーザからの推定加工結果イメージの補正指示に基づいて、レシピを容易に補正することができる。ユーザにとっては、希望する加工結果となるように推定加工結果イメージの補正指示を出すと、それに合ったレシピに自動で補正されるため、希望する加工を容易に行うことができる。
【0112】
ディスプレイ150は、レシピが表示された状態において、レシピの補正に係る第2補正情報の入力を受付け、制御部8は、第2補正情報に基づいて、レシピを補正すると共に、補正後のレシピに基づいて推定加工結果を補正してもよい。これにより、ユーザからの補正指示に基づいてレシピを容易に補正すると共に、補正後のレシピとした場合の推定加工結果イメージを適切に表示することができる。
【0113】
制御部8は、レーザ加工結果が表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。これにより、レシピに応じたレーザ加工結果をユーザに示すことができる。
【0114】
制御部8は、ディスプレイ150によって受付けられたウエハ加工情報が適切でない場合に、修正を促すメッセージが表示されるようにディスプレイ150を制御してもよい。これにより、適切でないウエハ加工情報が入力されている場合にユーザに修正を促すことができる。
【0115】
ウエハ加工情報には、ウエハ20の仕上げ厚さを示す情報が含まれていてもよい。これにより、例えばステルスダイシング後に研削を行うような場合のウエハ20の仕上げ厚さを考慮してレシピを適切に決定することができる。
【0116】
ウエハ加工情報には、ウエハ20にレーザ光が照射された際に形成される改質領域から延びる亀裂がウエハ20の表面にまで到達した状態とするか又は到達していない状態とするかを示す亀裂到達情報と、亀裂到達情報において亀裂がウエハ20の表面にまで到達していない状態とすることが示されている場合におけるレーザ光の照射後の研削による亀裂の想定延び量を示す情報とが含まれていてもよい。これにより、例えばステルスダイシング後に研削を行って亀裂を伸ばすことによって亀裂をウエハ20の表面に到達させる場合に、研削による亀裂の延び量を適切に考慮してレシピを決定することができる。
【0117】
ウエハ加工情報には、レーザ加工及び研削加工が完了した後のウエハ20の仕上げ断面に、ウエハ20にレーザ光が照射された際に形成される改質領域が現れた状態とするか否かを示す仕上げ断面情報が含まれていてもよい。これにより、例えばチップの強度アップ又はパーティクル低減等を目的として仕上げ断面に改質領域を残さないことをユーザが希望する場合等において、このような仕上げ断面の情報を適切に考慮してレシピを決定することができる。
【0118】
以上、本実施形態について説明したが本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、
図1に示されるように検査装置1が推定加工結果イメージ等を表示するディスプレイ150を有しているとして説明したがこれに限定されず、
図27に示される検査装置1Aのように、ディスプレイを有していなくてもよい。検査装置1Aは、ディスプレイを有していない以外は、検査装置1と同様の構成を備えている。この場合、検査装置1Aの制御部8は、例えば推定加工結果として導出した改質領域及び亀裂のウエハにおける位置を考慮してウエハのイメージ図と該ウエハにおける改質領域及び亀裂のイメージ図とが共に描画された推定加工結果イメージを外部装置等に出力(送信)する。そして、推定加工結果イメージ等は、検査装置1Aではなく外部装置において表示されてもよい。すなわち、推定加工結果イメージ等は、検査装置1Aと通信可能な他の装置(PC等)上で表示されてもよい。これにより、検査装置1Aがディスプレイを有していないような場合においても、検査装置1Aと通信可能な他の装置等で推定加工結果イメージ等を表示することが可能になる。
【0119】
また、
図28に示されるように、上述した検査装置1Aと、専用の表示装置550とを有する処理システム600において、推定加工結果イメージの生成及び表示が行われてもよい。この場合、検査装置1Aの制御部8は、例えば推定加工結果として導出した改質領域及び亀裂のウエハにおける位置を考慮してウエハのイメージ図と該ウエハにおける改質領域及び亀裂のイメージ図とが共に描画された推定加工結果イメージ等を表示装置550に送信する。表示装置550は、検査装置1Aから受信した推定加工結果イメージ等を表示する。このような処理システム600によれば、検査装置1Aが送信した推定加工結果イメージ等を外部装置である表示装置550によって適切に表示することができる。
【0120】
また、実施形態では、ディスプレイが、ウエハのイメージ図と該ウエハにおける改質領域及び亀裂のイメージ図とが共に描画された推定加工結果イメージを表示するとして説明したがこれに限定されない。すなわち、制御部は、必ずしも上述した推定加工結果イメージをディスプレイに表示させなくてもよく、例えば、ウエハに形成される改質領域及び改質領域から延びる亀裂の情報を含んだ推定加工結果を導出し、該推定加工結果に係る情報が表示されるようにディスプレイを制御してもよい。推定加工結果に係る情報とは、ウエハ、改質領域、及び亀裂等のイメージ図でなくてもよく、単に、改質領域及び亀裂の位置を示す情報等であってもよい(すなわち、イメージ図を含んでいなくてもよい)。
【0121】
また、加工条件導出処理において、上述した推定加工結果イメージの表示処理やウエハ厚さの導出処理を実施するとして説明したが、推定加工結果イメージの表示処理やウエハ厚さの導出処理は、加工条件導出処理以外の処理、例えば加工条件を導出した後の各種処理において実施されてもよい。
【0122】
また、実施形態では、検査装置1が、ウエハ加工情報に基づいてレシピ(加工条件)を決定し、推定加工結果を導出するとして説明したがこれに限定されない。すなわち、検査装置の制御部は、ウエハ加工情報に基づき推定加工結果を導出し、推定加工結果に基づきレシピ(加工条件)を決定してもよい。このように、ウエハ加工情報を入力することによって加工条件が自動的に決定されることにより、例えば加工条件をユーザが調整しながらレーザ加工処理を繰り返し行って適切な加工条件を導出するような場合と比べて、容易に加工条件を決定することができる。
【符号の説明】
【0123】
1,1A…検査装置、3…レーザ照射ユニット、4…撮像ユニット、8…制御部、20…ウエハ、150…ディスプレイ。