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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20241001BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C02F1/00 J
C02F1/00 V
C02F1/00 D
C02F1/00 K
C02F1/00 Z
B01D21/24 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020040313
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021137783
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】新井 康祐
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-059106(JP,U)
【文献】特開平07-031806(JP,A)
【文献】特開2001-286706(JP,A)
【文献】特開2007-222749(JP,A)
【文献】特開2002-239595(JP,A)
【文献】特開2018-143914(JP,A)
【文献】特開2019-198803(JP,A)
【文献】特開2017-170389(JP,A)
【文献】特開2018-167248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00
1/52- 1/56
3/12
11/00-11/20
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽と、
前記反応槽に被処理水を供給する流入トラフと、
前記流入トラフの内部を目視により点検可能に設けられた架台と、を備え、
前記流入トラフは、前記反応槽の前段から前記反応槽に接続され、前記反応槽の外側に、上部が開放された形状を有することを特徴とする、水処理装置。
【請求項2】
前記流入トラフは、前記被処理水が流入する全域にわたって、上部全体が開放された形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記流入トラフは、前記反応槽の内側に延伸して設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水処理装置。
【請求項4】
前記流入トラフを流れる被処理水の流速は、0.6m/s以上であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項5】
前記流入トラフに洗浄液を供給する洗浄液供給部を設けることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理装置に関するものである。特に、反応槽に被処理水を供給する流入トラフを備える水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、排水などの被処理水を処理する水処理手段の一つとして、反応槽内に被処理水を供給した後、反応槽内で処理を行うものが知られている。このような水処理としては、沈殿槽内に被処理水を供給し、被処理水中の固形物などの不純物を除去する固液分離処理が挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、被処理水を沈降分離処理するための沈殿槽に、被処理水を供給するフィードウェルと、フィードウェルの下端に対峙して水の流れ方向を変更するプレートが水平に設けられており、プレート上の堆積物を落下させる手段として回転レーキを設けるとともに、沈殿槽底部に沈殿槽の底面に沿って回転する掻き寄せブレード(集泥用レーキ)を備えた沈殿処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-69189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、フィードウェルに対して被処理水を供給する手段について特に記載されていないが、一般に、フィードウェルへの被処理水の導入は、フィードウェルに対して水平方向に接続された供給管により行われている。
【0006】
被処理水として、スケールや堆積が生じやすい成分を含むものを処理対象とする場合、フィードウェルに供給する前に供給管内でスケールや異物の堆積が生じることがある。このとき、供給管のように管状の部材を用いると、管内部の点検や清掃など、メンテナンスが困難であり、管内の閉塞による処理停止が起こり得るという問題がある。したがって、水処理装置において反応槽に被処理水を供給する手段は、内部点検や清掃などのメンテナンスが容易であることが求められる。
【0007】
本発明の課題は、反応槽に被処理水を供給する手段として、容易に点検や清掃などのメンテナンスを行うことができる流入部材を備え、被処理水を安定して供給することができる水処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、反応槽に被処理水を供給する手段として、流入トラフを設けるとともに、流入トラフの内部を目視可能とすることで、容易に点検や清掃などのメンテナンスが容易となり、反応槽に対して安定した被処理水の供給が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の水処理装置である。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の水処理装置は、反応槽と、反応槽に被処理水を供給する流入トラフと、流入トラフの内部を目視により点検可能に架台が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の水処理装置によれば、反応槽に被処理水を供給する手段として流入トラフを設けるとともに、この流入トラフの内部を目視で点検できるように架台を設けることで、流入トラフ内でスケールや異物の堆積が発生したことを素早く検知することが可能となる。また、流入トラフ内でスケールや異物の堆積などの不具合が発生する前に対応することも容易となる。すなわち、流入トラフのメンテナンスを容易に行うことが可能となる。これにより、被処理水中の成分による流入トラフの閉塞などを抑制し、反応槽に対して安定した被処理水の供給が可能となる。
【0011】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、流入トラフは、反応槽の前段から反応槽の上方に接続され、被処理水が流入する全域にわたって、上部全体が開放された形状を有するという特徴を有する。
この特徴によれば、流入トラフ全体の状況を目視により判断することが可能となる。また、流入トラフの上部全体が開放された形状とすることで、目視による点検が容易になるとともに、流入トラフの清掃も容易に行うことが可能となる。これにより、流入トラフのメンテナンスをより一層効率的に行うことが可能となる。
【0012】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、流入トラフは、反応槽の内側に延伸して設けられるという特徴を有する。
水処理装置の一例として、固液分離装置におけるフィードウェルやミキシングチャンバのように、反応槽の内側に被処理水の供給部を備えるものが知られている。
この特徴によれば、反応槽の内側に被処理水の供給部を備える水処理装置についても、被処理水の供給部まで上記流入トラフを延伸することで、被処理水を安定して供給することが可能となる。
【0013】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、流入トラフを流れる被処理水の流速は、0.6m/s以上であるという特徴を有する。
この特徴によれば、流入トラフ内でスケールや異物の堆積を抑制することが可能となり、流入トラフのメンテナンスを容易に行うことができるとともに、流入トラフの閉塞を大幅に抑制することが可能となる。これにより、被処理水をより一層安定して供給することが可能となる。
【0014】
また、本発明の水処理装置の一実施態様としては、流入トラフに洗浄液を供給する洗浄液供給部を設けるという特徴を有する。
この特徴によれば、流入トラフ内の清掃に係るメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、反応槽に被処理水を供給する手段として、容易に点検や清掃などのメンテナンスを行うことができる流入部材を備え、被処理水を安定して供給することができる水処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施態様の水処理装置を示す概略説明図である。
図2】本発明の第1の実施態様の水処理装置における流入トラフの構造の一態様を示す概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様の水処理装置を示す概略説明図である。
図4】本発明の第3の実施態様の水処理装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る水処理装置の実施態様を詳細に説明する。なお、実施態様に記載する水処理装置の構造については、本発明に係る水処理装置を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0018】
本実施態様に係る水処理装置は、処理対象を含む被処理水を反応槽に供給し、反応槽内で被処理水に対する処理を行い、処理水として排出する水処理に利用されるものである。
水処理の種類としては、特に限定されないが、例えば、処理対象を含む被処理水に対し、薬品等の水処理用剤を添加する水処理のほか、処理対象として有機物を含む被処理水と微生物とを接触させる生物処理や、処理対象として固形物を含む被処理水を処理水と固形物(沈殿物)に分離する固液分離処理などが挙げられる。
【0019】
本実施態様に係る被処理水は、処理対象を含むものであればよく、特に限定されない。例えば、固液分離処理における被処理水としては、分離処理対象である固形物を含むものであればよく、発生源や固形物の種類は特に限定されない。また、本実施態様における被処理水は、薬品等の添加により固形物が析出するものも含まれる。被処理水としては、例えば、工場排水や生活排水のほか、河川水や他の水処理設備からの一次処理水などが挙げられる。さらに、本実施態様の被処理水としては、スケールの要因となる成分や異物が含まれるものについても用いることができる。
【0020】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における水処理装置100Aの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置100Aは、図1に示すように、反応槽1と、反応槽1に被処理水Wを供給する流入トラフ2Aと、流入トラフ2Aの内部を作業者Aが目視するための架台Tを備えている。
【0021】
本実施態様の水処理装置100Aに係る反応槽1としては、水処理に係る公知のものであればよく、特に限定されない。例えば、下水処理場、廃水処理場、食品工場、製薬工場等の有機性排水処理設備、メッキ工場等の無機性排水処理設備、浄水場等の上水処理設備等に利用される反応槽である。より具体的には、曝気槽、好気反応槽、嫌気反応槽、オキシデーションディッチ槽、凝集槽、沈殿槽、汚泥濃縮槽、汚泥消化槽、貯留タンク、消毒槽などが挙げられる。
なお、本実施態様における反応槽1として、図1に示すように、円筒状のものを示しているが、これに限定されるものではない。反応槽1の形状としては、公知の形状を用いることができ、例えば、有底かつ底面が楕円形あるいは多角形からなる筒体などが挙げられる。
【0022】
架台Tは、作業者Aが流入トラフ2Aの点検を行う作業スペースを形成するものであり、流入トラフ2Aの内部を目視することができる位置に設けられるものである。
架台Tを設け、作業者Aによる目視により流入トラフ2Aの内部を点検することで、監視のための装置の設置及び維持管理を行う必要がなく、メンテナンスを簡便に行うことが可能となる。
【0023】
架台Tとしては、作業者Aが流入トラフ2A内部を目視するための作業スペースを確保することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。架台Tの構造としては、例えば、図1に示すように、流入トラフ2Aの上方に設けられ、手摺のついた足場とすることなどが挙げられる。
【0024】
架台Tの位置は、作業者Aが流入トラフ2Aの内部を目視することに適した箇所であればよく、流入トラフ2Aの上方に限定されない。架台Tの位置については、流入トラフ2A及び反応槽1のサイズや、他の構成との位置関係によって適宜選択することができる。例えば、架台Tを流入トラフ2Aの側面近傍に設けることなどが挙げられる。このとき、架台Tと流入トラフ2Aの間には、作業者Aの視野を遮るような構造物が入り込まないように配置することが好ましい。また、架台T自体が流入トラフ2Aと重ならないように配置することが好ましい。これにより、作業員Aは流入トラフ2A内の目視に係る作業を容易に行うことが可能となる。
【0025】
流入トラフ2Aは、反応槽1内に被処理水Wを供給するためのものである。流入トラフ2Aは、図1に示すように、直線状の側壁21及び底部22を有し、上部開口部20を形成するものが挙げられる。
流入トラフ2Aを形成する材質は特に限定されないが、被処理水Wの流入を行うための十分な強度、及び、被処理水Wに対する安定性を有するものが好ましい。このような材質としては、例えば、樹脂材料からなるものや、耐水性や耐腐食性処理を行った金属材料やコンクリート材料などが挙げられる。
【0026】
流入トラフ2Aは、内部を目視するための上部開口部20を有する形状であればよく、側壁21及び底部22の形状については特に限定されない。図1には、流入トラフ2Aとして、直線状の側壁21及び底部22が直角に交わる形状としているが、これに限定されるものではない。
【0027】
図2は、本実施態様の水処理装置100Aにおける流入トラフ2Aの別の態様を示す概略説明図である。
本実施態様における流入トラフ2Aは、例えば、図2Aのように、直線状の側壁21及び底部22の間に、傾斜した壁面からなる傾斜部21aを設けるものとしてもよい。図1に示すように、直線状の側壁21及び底部22を直角に交差させた場合、この交差した箇所にスケールや異物の堆積が生じると、清掃が困難になることがある。したがって、図2Aのように、傾斜部21aを設けることで、流入トラフ2Aの清掃に係るメンテナンスを容易にすることができる。また、他の例としては、図2Bに示すように、底部22の形状を曲線状とし、流入トラフ2Aの断面を略U字型にするものとしてもよい。これにより、流入トラフ2A内の被処理水Wの流速において、底部22側における流速を相対的に速めることができ、異物の堆積を抑制することができる。また、異物の堆積が生じた場合、生じた堆積物を底部22側に集めることが可能となり、清掃に係るメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0028】
本実施態様における流入トラフ2Aとしては、流入トラフ2Aの一部に上部開口部20を有し、流入トラフ2A内の状況を目視することができるものであればよい。より好ましくは、流入トラフ2A反応槽1の前段から反応槽1に至るまで、被処理水Wが流入する全域にわたって上部開口部20を有する形状とすることが挙げられる。
一般的に、反応槽1に被処理水Wを供給するために用いられている供給管は、管状部材であるため、作業者Aは内部の状態を直接目視することができず、点検が困難であった。また、管状部材内の清掃を効率よく行うことが難しいこと等から、供給管に対する適切なメンテナンスを行うことが困難であった。
一方、本実施態様における流入トラフ2Aとして、被処理水Wが流入する全域にわたって上部開口部20を有する形状とすることで、上部から流入トラフ2Aの内部を容易に目視することが可能である。また、上部開口部20側から作業者Aが清掃に必要な作業を容易に実施することができる。これにより、流入トラフ2Aのメンテナンスを適切に行うことができ、流入トラフ2A内の閉塞を抑制し、被処理水Wを安定して供給することが可能となる。
【0029】
流入トラフ2Aの清掃に係る一例としては、例えば、作業者Aがブラシやスクレーパなど、流入トラフ2A内の表面を機械的に擦る部材を用いて、流入トラフ2A内のスケールや異物などによる堆積物を除去することが挙げられる。このとき、作業者Aは架台Tから上部開口部20を介して流入トラフ2A内にブラシなどの部材を延伸させて清掃を行うものとしてもよく、作業者A自身が上部開口部20から流入トラフ2A内に入って清掃を行うものとしてもよい。
また、流入トラフ2Aの清掃に係る他の例としては、高圧流体(気体又は液体)を用いることや、清掃に係る部材を備えた機械(ロボット)を用いること等が挙げられる。
【0030】
なお、流入トラフ2Aの清掃を行うタイミングや清掃箇所の決定については、特に限定されない。例えば、架台Tからの目視により、流入トラフ2A内にスケールや異物の堆積が生じていることが検知された時点及び箇所について清掃を行うことや、流入トラフ2A内にスケールや異物の堆積が生じることを抑制するために、予防的に清掃を行うことなどが挙げられる。
【0031】
本実施態様の水処理装置100Aは、流入トラフ2A内を流れる被処理水Wの流速を規定することが好ましい。例えば、流入トラフ2A内を流れる被処理水Wの流速は、0.6m/s以上とすることが好ましく、0.8m/s以上とすることがより好ましい。これにより、流入トラフ2A内でスケールや異物の堆積が生じることを抑制することが可能となる。
なお、流入トラフ2A内を流れる被処理水Wの流速の制御手段は特に限定されない。例えば、供給ポンプなどを用いた制御や流入トラフ2Aの構造設計による制御などが挙げられる。
【0032】
以上のように、本実施態様の水処理装置100Aにおいて、反応槽に被処理水を供給する手段として流入トラフを設けるとともに、この流入トラフの内部を目視で点検できるように架台を設けることで、流入トラフ内でスケールや異物の堆積が発生したことを素早く検知することが可能となる。また、流入トラフ内でスケールや異物の堆積などの不具合が発生する前に対応することも容易となる。すなわち、流入トラフのメンテナンスを容易に行うことが可能となる。これにより、被処理水中の成分による流入トラフの閉塞などを抑制し、反応槽に対して安定した被処理水の供給が可能となる。
【0033】
また、本実施態様における流入トラフとして、被処理水が流入する全域にわたって、上部全体が開放された形状を有することで、流入トラフ全体の状況を目視により判断することが可能となる。また、流入トラフの上部全体が開放された形状とすることで、目視による点検が容易になるとともに、流入トラフの清掃も容易に行うことが可能となる。これにより、流入トラフのメンテナンスをより一層効率的に行うことが可能となる。
【0034】
以下、本発明の水処理装置に係る具体的な実施態様として、固液分離処理に係る水処理装置について説明する。一般に、固液分離処理に供する被処理水W中には、スケールの要因となる成分や異物が含まれていることが多い。したがって、本発明の水処理装置を好適に利用することができる。
また、本実施態様に係る固液分離処理における処理水と固形物の分離手段は、特に限定されない。例えば、被処理水に薬品を添加して化学反応させ、被処理水中から結晶を析出させる反応晶析によって、処理水と固形物に分離するものや、被処理水に凝集剤を添加して被処理水中の固形物を凝集させ、処理水と凝集した固形物に分離するものが挙げられる。また、反応晶析と凝集処理の組み合わせによるものなどが挙げられる。
なお、以下の実施態様においては、被処理水に凝集剤を添加して、固形物を凝集沈殿させて分離する固液分離処理について主に説明するが、これに限定されるものではない。
【0035】
〔第2の実施態様〕
図3は、本発明の第2の実施態様における水処理装置の構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置100Bは、図3に示すように、反応槽1として沈殿槽10を備え、沈殿槽10内に被処理水W中の固形物を凝集してフロック化するミキシングチャンバ30とを備えた凝集沈殿処理装置である。ここで、ミキシングチャンバ30を通過することにより凝集したフロックFを含む被処理水Wが、ディストリビュータ33を介して沈殿槽10内に吐出され、沈殿槽10の下方にフロックFが沈殿する一方、沈殿槽10の上方には上澄みである清澄層Cが形成され、清澄された処理水W1は、沈殿槽10の上部側に設けた処理水排出部40により排出される。また、沈殿槽10の底部に沈殿したフロックF(沈殿物P)は、沈殿槽10の底部中央から汚泥排出部50を介して排出される。さらに、水処理装置100Bには、沈殿槽10の底部に沈殿した沈殿物Pを汚泥排出部50側へ掻き寄せる掻き寄せ部60を備えている。
【0036】
以下、各構成について説明する。
【0037】
沈殿槽10は、被処理水Wを貯留することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、有底かつ底面が円形あるいは多角形からなる筒体などが挙げられる。また、図3に示すように、沈殿槽10の底部は、沈殿槽10の中心に向かって傾斜した構造を有し、沈殿槽10の底部中央には、後述する汚泥引抜用凹部51を設けるものとすることが挙げられる。これにより、フロックF(沈殿物P)の回収及び排出を容易に行うことが可能となる。
【0038】
また、沈殿槽10の最上部には、架台Tが設けられている。このとき、架台Tは、流入トラフ2Bと略平行となるように、沈殿槽10の直径方向に架け渡して配置することが好ましい。これにより、沈殿槽10における他の構成に阻害されることなく、流入トラフ2Bの全長にわたって内部を目視することが可能となる。
【0039】
ミキシングチャンバ30は、沈殿槽10の中央に直立状態で配設された筒状の中空部材であり、その内部に被処理水Wが流入して流れる流路30aが形成されている。また、ミキシングチャンバ30には、ミキシングチャンバ30内に被処理水Wを供給するために、流入トラフ2Bが接続されている。流入トラフ2Bは、ミキシングチャンバ30内に被処理水Wを供給することができるものであればよく、例えば図3に示すように、沈殿槽10に対し水平方向に延びた流入トラフ2Bを、沈殿槽10の周壁10aを貫通して沈殿槽10内側に延伸させ、ミキシングチャンバ30と接続されるものが挙げられる。
【0040】
ミキシングチャンバ30内には、流入トラフ2Bから供給される被処理水Wに対し、被処理水W中の固形物を凝集しフロック化するために、凝集剤を添加するための凝集剤添加手段を備えている。
本実施態様の凝集剤添加手段としては、ミキシングチャンバ30内の流路30aを流れる被処理水Wに対して凝集剤を添加する凝集剤添加部31を設けることが挙げられる。より具体的には、流路30a内に凝集剤添加用ノズル31が添加されるものを図3に例示しているが、これに限定されるものではない。他の例としては、例えば、流入トラフ2Bの上流に凝集剤添加部を別途設け、この凝集剤添加部より被処理水Wに凝集剤が添加されるものとすることが挙げられる。
【0041】
被処理水Wに混合される凝集剤としては、無機凝集剤及び高分子凝集剤が挙げられる。凝集剤は、無機凝集剤あるいは高分子凝集剤のみを用いるものであってもよく、無機凝集剤と高分子凝集剤を併用するものであってもよい。なお、無機凝集剤及び高分子凝集剤を併用する場合、無機凝集剤、高分子凝集体の順に被処理水Wに添加することが好ましい。これにより、安定したフロック形成が可能となる。
凝集剤の具体例としては、例えば、無機凝集剤としては、硫酸バンドやPAC等のAl系無機凝集剤や、ポリ硫酸鉄等のFe系無機凝集剤が挙げられる。あるいは、NaOH、Ca(OH)等のアルカリ又はHSO、HCl等の酸によるpH調整剤や、Ca、Al、Fe系化合物の添加や、酸化剤・還元剤の添加等により結晶を析出させるものとしてもよい。また、高分子凝集剤としては、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサン、尿素-ホルマリン樹脂等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2-アクリルアミド)-2-メチルプロパン硫酸塩等のアニオン性高分子凝集剤、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミドとアミノアルキルメタクリレートとアクリル酸ナトリウムの共重合体等の両性高分子凝集剤が挙げられる。
【0042】
また、ミキシングチャンバ30内には、被処理水Wと凝集剤を混合し撹拌するための円筒状の回転ミキサ32が配設されている。この回転ミキサ32内に、沈殿槽10に沿った高さ方向に延在するシャフト70が配置されており、シャフト70は上端に取り付けられたモータ等の駆動装置80によって軸心周りに回転可能となっている。ミキシングチャンバ30とシャフト70とは互いに接しておらず、ミキシングチャンバ30内をシャフト70が貫通している。
【0043】
シャフト70の下部には、ミキシングチャンバ30内の被処理水Wを沈殿槽10に供給するためのディストリビュータ33が固定されている。このディストリビュータ33は、ミキシングチャンバ30内に連通した複数本の管が、水平かつ放射状に延びるように設けられている。また、ミキシングチャンバ30内で形成されたフロックFを含む被処理水Wを吐出するための吐出孔33aが、沈殿槽10底部に向けた状態で複数設けられている。
シャフト70が回転駆動することで、シャフト70と共にディストリビュータ33が回転し、ミキシングチャンバ30内のフロックFを含む被処理水Wは、沈殿槽10内に均等に分配供給される。
【0044】
また、シャフト70には、ミキシングチャンバ30及びディストリビュータ33よりもさらに下方側に、掻き寄せ部60が取り付けられている。この掻き寄せ部60により、ディストリビュータ33から供給されて沈殿槽10底部に沈殿したフロックF(沈殿物P)を汚泥排出部50側に掻き寄せることができる。
【0045】
汚泥排出部50は、沈殿槽10の底部に沈殿した沈殿物Pを水処理装置100B外に排出することができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。汚泥排出部5としては、例えば、図3に示すように、沈殿槽10の底部に設けられた汚泥引抜用凹部51、汚泥引抜管52、汚泥引抜ポンプ(不図示)などからなるものが挙げられる。また、図3に示すように、汚泥引抜用凹部51内の沈殿物Pを掻き落とすためのスクレーパ53をシャフト70に取り付けるものとすること等が挙げられる。
【0046】
掻き寄せ部60は、沈殿槽10の底部に沈殿した沈殿物Pを掻き寄せ、汚泥排出部50側に掻き寄せることができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。掻き寄せ部60としては、例えば、図3に示すように、旋回シャフト61、支持ロッド62、掻き寄せブレード63などからなるものが挙げられる。
【0047】
本実施態様における流入トラフ2Bの構造は、反応槽1(沈殿槽10)の内側に延伸し、ミキシングチャンバ30と接続されていること以外は、第1の実施態様における流入トラフ2Aと同様の構造を用いることが挙げられる。すなわち、上部開口部20を有する側壁21及び底部22の組み合わせからなるものが挙げられる。
また、本実施態様における架台Tは、沈殿槽10の上部において、流入トラフ2B内の目視及び清掃が可能な位置に配置されるものであればよく、第1の実施態様における架台Tと同様の構成を備えるものが挙げられる。
【0048】
以上のように、本実施態様の水処理装置100Bにより、流入トラフ内のメンテナンスを容易に行うことが可能となり、反応槽(沈殿槽)内に設けられた被処理水の供給部であるミキシングチャンバに対し、被処理水を安定して供給することが可能となる。
【0049】
〔第3の実施態様〕
図4は、本発明の第3の実施態様における水処理装置100Cの構造を示す概略説明図である。
本実施態様に係る水処理装置100Cは、図4に示すように、流入トラフ2B内に洗浄液を供給する洗浄液供給部23を設けるものである。なお、本実施態様における水処理装置100Cは、第2の実施態様における水処理装置100Bに対し、洗浄液供給部23を設けるものについて示しているが、これに限定されるものではない。例えば、第1の実施態様における水処理装置100Aにおいて洗浄液供給部を設けるものとしてもよい。また、第2の実施態様の水処理装置100Bの構成と同じものについては、説明を省略する。
【0050】
洗浄液供給部23は、流入トラフ2B内を清掃するための洗浄液を供給するためのものである。洗浄液供給部23としては、図4に示すように、流入トラフ2B内に向かって洗浄液を供給することができる洗浄液供給用ノズル23aを備えるものが挙げられる。
洗浄液供給部23として設けられる洗浄液供給用ノズル23aは、高圧流体を放出可能な構成を有するものとしてもよい。これにより、流入トラフ2B内の清掃効率を高めることが可能となる。
【0051】
洗浄液供給部23から供給される洗浄液は、流入トラフ2B内の清掃に用いることができるものであればよく、特に限定されない。洗浄液としては、例えば、処理水W1等の水のほか、スケール等の堆積物の溶解や剥離を促進する薬品及び薬品を添加した溶液などが挙げられる。
【0052】
また、洗浄液供給部23は、図4に示すように、洗浄液供給用ノズル23aを独立して設けるものに限定されない。例えば、洗浄液供給部23及び洗浄液供給用ノズル23aを、凝集剤添加部31における凝集剤添加用ノズル31aと兼用するものとしてもよい。これにより、装置構造を簡略化することが可能となる。このとき、凝集剤添加のタイミングと洗浄液供給のタイミングを完全に分離し、一つのノズルで凝集剤添加と洗浄液供給を行うものとすることや、凝集剤添加用ノズル31aとして複数本のノズルを設け、流入トラフ2B内の清掃を実施する際において、一部のノズル31aに洗浄液を供給することで、ノズル31aを主として凝集剤添加を行うノズルとするとともに、必要に応じて凝集剤添加と洗浄液供給を同時並行で実施できるようにすることなどが挙げられる。
【0053】
以上のように、本実施態様の水処理装置100Cにより、流入トラフ内の清掃に係るメンテナンスを容易に行うことが可能となる。これにより、被処理水をより一層安定して供給することが可能となる。
【0054】
なお、上述した実施態様は水処理装置の一例を示すものである。本発明に係る水処理装置は、上述した実施態様に限られるものではなく、要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る水処理装置を変形してもよい。
【0055】
例えば、本実施態様における水処理装置は、ミキシングチャンバを備える沈殿槽を用いた凝集沈殿処理装置に限定されるものではない。水処理装置としては、流入トラフを介して被処理水が供給される反応槽を備えるものであればどのようなものであってもよく、本実施態様に記載されたものに限定されない。他の例としては、例えば、センターウェルを備える沈殿槽やスラッジブランケットを形成する凝集沈殿槽を備える凝集沈殿処理装置等が挙げられる。なお、スラッジブランケットを形成する凝集沈殿処理装置の例としては、外壁部及び内壁部による二重構造式の凝集沈殿槽を用い、凝集剤を添加した被処理水が上昇するに伴ってフロックが成長するブランケット状のフロック成長ゾーンを形成するスラッジブランケット部と、スラッジブランケット部において発生した余剰スラッジを濃縮する濃縮部とを備えた凝集沈殿槽を有する凝集沈殿処理装置などが挙げられる。このような水処理装置に対し、本実施態様における流入トラフの構造及び架台を設けることで、被処理水の供給における流入トラフのメンテナンスを容易に行うことができ、被処理水を安定して供給することができる水処理装置とすることが可能となる。
【0056】
また、本実施態様における流入トラフの上面開口部に対し、網体(ネット)や蓋体などの被覆体を設け、外部からの異物(植物片(落ち葉、枝など)、作業者からの落下物等)が被処理水に混入することを抑制するものとしてもよい。このとき、流入トラフ内部の目視点検が阻害されないよう、被覆体(網体や蓋体等)の構造及び材質を選択することが好ましい。例えば、細く強度のある材質により網体を形成することや、透明度の高い材質により蓋体を形成することなどが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の水処理装置は、反応槽内に被処理水を供給する水処理全般に利用することができる。より具体的な例としては、例えば、本発明の水処理装置は、反応槽内に被処理水の供給部を有し、被処理水に凝集剤を添加してフロックを形成させる凝集沈殿処理において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
100A,100B,100C 水処理装置、1 反応槽、10 沈殿槽、10a 周壁、2A,2B 流入トラフ、20 上部開口部、21 側壁、21a 傾斜部、22 底部、23 洗浄液供給部、23a 洗浄液供給用ノズル、30 ミキシングチャンバ、30a 流路、31 凝集剤供給部、31a 凝集剤添加用ノズル、32 回転ミキサ、33 ディストリビュータ、33a 吐出孔、40 処理水排出部、50 汚泥排出部、51 汚泥引抜用凹部、52 汚泥引抜管、53 スクレーパ、60 掻き寄せ部、61 旋回シャフト、62 支持ロッド、63 掻き寄せブレード、70 シャフト、80 駆動装置、A 作業者、C 清澄層、F フロック、P 沈殿物、T 架台、W 被処理水、W1 処理水
図1
図2
図3
図4