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  • 特許-粘着シート、及び粘着シートの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】粘着シート、及び粘着シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20241001BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20241001BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20241001BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/29
C09J133/06
C09J11/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020060842
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021161138
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】網野 由美子
(72)【発明者】
【氏名】川田 智史
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-174087(JP,A)
【文献】特開2019-210195(JP,A)
【文献】特開2019-089691(JP,A)
【文献】国際公開第2018/150730(WO,A1)
【文献】特開2012-078312(JP,A)
【文献】特開2006-104269(JP,A)
【文献】特開昭59-104926(JP,A)
【文献】特開2003-073637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、金属膜、及び当該金属膜の表面上に積層した粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層が、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)及びカルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物(ただし、第2級のヒドロキシル基を有するビニルモノマー0.1~2.0重量%を少なくとも含むモノマー混合物を重合して得られる重量平均分子量30万~90万の(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む再剥離用粘着剤組成物、および、酸性リン酸エステル基を含有する、重量平均分子量10万~60万の水分散性アクリル系共重合体を含む感圧接着剤水性組成物を除く)から形成された層であり、
構成単位(a2)の含有量が、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量に対して、0.5質量%以上であり、
前記粘着剤層の厚さが、20μm以下であり、
ソーダガラスへの貼付に用いられる、粘着シート。
【請求項2】
前記金属膜が、有色である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記金属膜が、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、銀、スズ、銅、鉄、パラジウム、酸化チタン、及び窒化チタンから選ばれる金属又は金属化合物を含む、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
構成単位(a2)の含有量が、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量に対して、1.0質量%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤組成物が、さらに架橋剤(B)を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
架橋剤(B)の含有量が、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、0.01~20.0質量部である、請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記粘着剤組成物に含まれる金属不活性化剤の含有量が、アクリル系重合体(A)の全量100質量部に対して、1質量部未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
ソーダガラスの非スズ面への貼付に用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、粘着シートの製造方法。
・工程(1):基材上に設けられた金属膜の表面に、前記粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する工程。
・工程(2):前記塗膜を乾燥させる工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、及び、当該粘着シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム等の金属膜を有する金属膜付き粘着シートは、各種製品の装飾ラベルや表示ラベル、導電性を付与するための導電性シート等の多様な用途に使用されている。
例えば、特許文献1には、支持基材の一方の表面に形成された面方向に導電性を有する金属薄膜から形成された導電層と、当該導電層の表面を覆う、厚さ方向に導電性を有する導電性粘着剤層と、支持基材の他方の表面を覆う絶縁性粘着剤層とを有する導電性粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-216749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような金属膜付き粘着シートは、それぞれの所定の用途に応じて、様々な被着体に貼付される。様々な被着体の貼付に適した粘着シートが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材、金属膜、及び当該金属膜の表面上に積層した粘着剤層を有し、当該粘着剤層が、所定の厚さを有し、且つ、所定の構成単位を有するアクリル系共重合体を含む粘着剤組成物から形成された層である、ソーダガラスへの貼付に用いられる粘着シート、及び当該粘着シートの製造方法を提供する。
具体的な本発明の態様としては、下記[1]~[9]のとおりである。
[1]基材、金属膜、及び当該金属膜の表面上に積層した粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層が、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)及びカルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物から形成された層であり、
前記粘着剤層の厚さが、20μm以下であり、
ソーダガラスへの貼付に用いられる、粘着シート。
[2]前記金属膜が、有色である、上記[1]に記載の粘着シート。
[3]前記金属膜が、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、銀、スズ、銅、鉄、パラジウム、酸化チタン、及び窒化チタンから選ばれる金属又は金属化合物を含む、上記[2]に記載の粘着シート。
[4]構成単位(a2)の含有量が、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量に対して、0.1質量%以上である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[5]前記粘着剤組成物が、さらに架橋剤(B)を含有する、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[6]架橋剤(B)の含有量が、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、0.01~20.0質量部である、上記[5]に記載の粘着シート。
[7]前記粘着剤組成物に含まれる金属不活性化剤の含有量が、アクリル系重合体(A)の全量100質量部に対して、1質量部未満である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[8]ソーダガラスの非スズ面への貼付に用いられる、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の粘着シート。
[9]上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の粘着シートを製造する方法であって、
下記工程(1)~(2)を有する、粘着シートの製造方法。
・工程(1):基材上に設けられた金属膜の表面に、前記粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する工程。
・工程(2):前記塗膜を乾燥させる工程。
【発明の効果】
【0006】
本発明の好適な一態様の粘着シートは、ソーダガラスへの貼付に適しており、例えば、大気中の水分によって金属膜の少なくとも一部が酸化されて変質してしまう、いわゆる「蒸着飛び」を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一態様の粘着シートの構成の一例を示した、当該粘着シートの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
なお、本明細書において、例えば「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
また、粘着剤組成物の「有効成分」とは、粘着剤組成物に含まれる成分のうち、有機溶媒等の希釈溶媒を除いた成分を意味する。
【0009】
〔粘着シートの構成〕
本発明の粘着シートは、基材、金属膜、及び当該金属膜の表面上に積層した粘着剤層を有する構成であれば特に限定されず、これら以外の層を有していてもよい。
例えば、図1は、本発明の一態様の粘着シートの構成の一例を示した、当該粘着シートの模式断面図である。
【0010】
本発明の一態様の粘着シートの具体的な構成としては、図1(a)の粘着シート1aのように、基材11の一方の表面上に金属膜12が積層し、さらに当該金属膜12上の表面上に粘着剤層13が積層してなる構成があるが、これに限定されない。
例えば、図1(b)の粘着シート1bのように、基材11の双方の表面上にそれぞれ金属膜12a、12bが積層し、さらに金属膜12aの表面上には粘着剤層13aが積層し、金属膜12bの表面上には粘着剤層13bが積層してなる構成であってもよい。
【0011】
また、本発明の一態様の粘着シートは、図1(c)の粘着シート1cのように、図1(a)の粘着シート1aが有する粘着剤層13の表面上に、さらに剥離シート14が積層してなる構成としてもよい。
同様に、図1(d)の粘着シート1dのように、図1(b)の粘着シート1bが有する粘着剤層13aの表面上にはさらに剥離シート14aが積層し、粘着剤層13bの表面上にはさらに剥離シート14bが積層してなる構成としてもよい。
この粘着シート1dが有する2枚の剥離シート14a、14bの素材は、同じものでもよく、互いに異なるものでもよいが、剥離シート14aと剥離シート14bとの剥離力が異なるように調整された素材であることが好ましい。
【0012】
他にも、図1(a)の粘着シート1aの構成において、基材11の金属膜12が積層した面とは反対側の表面に剥離処理が施され、これをロール状に巻いた構成を有する粘着シートであってもよい。
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、基材と金属膜とは、図1に示す粘着シート1a等のように直接積層した構成であってもよく、基材と金属膜との間に他の層を有する構成であってもよい。
【0013】
一般的に、金属膜付き粘着シートは、被着体に貼付した状態で長期間静置すると、大気中の水分によって金属膜の少なくとも一部が酸化されて変質してしまう、いわゆる「蒸着飛び」という問題が生じる場合がある。なお、「蒸着飛び」は、蒸着で形成された金属蒸着膜に限らず、蒸着以外の方法で形成された金属膜に対しても生じ得る現象である。本明細書では、「蒸着飛び」とは、蒸着による方法及び蒸着以外の方法で形成された金属膜において、少なくとも一部が酸化されて変質してしまう現象を意味する。
例えば、金属光沢を有する有色である金属膜の少なくとも一部において蒸着飛びが生じると、蒸着飛びが生じた箇所は変色し、穴が空いたような外観の粘着シートとなってしまう。この場合、当該粘着シートを装飾ラベルや表示ラベルとして用いる場合、これらのラベルの外観を損なうという弊害が生じる。
また、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明の金属膜においても、蒸着飛びが生じると、導電性等の当該金属膜に求められている特性の低下が懸念される。
【0014】
この蒸着飛びの問題は、粘着シートの粘着剤層の厚さが薄くなるほど生じ易く、さらに、ソーダガラスへ貼付した際に(特に、ソーダガラスの非スズ面に貼付した際に)、も生じ易いことが本発明者の検討で分かった。つまり、ソーダガラスに貼付する用途に用いられる粘着剤層の厚さを薄くした粘着シートは、蒸着飛びが生じ易いという問題を有している。
一方で、本発明の一態様の粘着シートでは、後述のとおり、所定の構成単位を有するアクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有するため、蒸着飛びの抑制効果に優れるという特性を有している。そのため、本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層の厚さを20μm以下と薄膜化し、さらにソーダガラスへ貼付した際においても、蒸着飛びの抑制効果が高い。
上記の特性から、本発明の一態様の粘着シートは、クリアランスが狭く、使用する粘着シートの厚さが制限されている箇所であって、例えば、ソーダガラスへ貼付する際にも好適に用いることができ、特に、より蒸着飛びが生じ易い環境下である、ソーダガラスの非スズ面への貼付にも適している。
以下、本発明の一態様の粘着シートの各層の構成について説明する。
【0015】
<基材>
本発明の一態様の粘着シートが有する基材としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、紙基材、不織布等の多孔質基材、樹脂フィルム等が挙げられる。
【0016】
紙基材を構成する紙材としては、例えば、薄葉紙、中質紙、上質紙、含浸紙、コート紙、アート紙、硫酸紙、グラシン紙等が挙げられる。
【0017】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体;三酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリウレタン、アクリル変性ポリウレタン等のウレタン樹脂;ポリメチルペンテン;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルイミド、ポリイミド等のポリイミド系樹脂;ポリアミド系樹脂;アクリル樹脂;フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0018】
これらの樹脂フィルムは、1種の樹脂のみから構成されたものであってもよく、2種以上の樹脂から構成されたものであってもよい。
また、本発明の一態様で用いる樹脂フィルムは、上述の樹脂と共に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0019】
なお、樹脂フィルムは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
また、樹脂フィルムは、内部に空洞を含む空洞含有層を有する樹脂フィルムであってもよい。なお、当該空洞含有層の少なくとも一方の表面側に、さらに空洞を含まない樹脂層が積層した樹脂フィルムとしてもよい。
【0020】
本発明の一態様で用いる基材は、上述の紙基材又は樹脂フィルムからなる単層基材であってもよく、紙基材及び樹脂フィルムから選ばれる2種以上を積層してなる複層基材であってもよい。
複層基材としては、例えば、2種以上の樹脂フィルムを積層してなる積層樹脂フィルムや、紙基材をポリエチレン等の熱可塑性樹脂でラミネートしてなるラミネート基材等が挙げられる。
【0021】
なお、本発明の一態様で用いる基材が、樹脂フィルムやラミネート基材である場合、これらの基材の表面に対して、酸化法や凹凸化法等の表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。
凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。
【0022】
本発明の一態様で用いる基材の厚さは、好ましくは1~1000μm、より好ましくは5~500μm、更に好ましくは10~300μm、より更に好ましくは15~150μm、特に好ましくは20~120μmである。
【0023】
<金属膜>
本発明の一態様の粘着シートが有する金属膜は、金属又は金属化合物を含む膜である。
金属膜を構成する金属又は金属化合物としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、銀、スズ、銅、鉄、パラジウム、酸化チタン、窒化チタン、酸化インジウムスズ(ITO)等が挙げられる。
本発明の一態様の粘着シートが有する金属膜は、上記金属から選ばれる1種のみ含む金属膜であってもよく、上記金属から選ばれる2種以上を含む金属膜であってもよい。
【0024】
また、金属膜は、有色であってもよく、透明(無色)であってもよい。
例えば、本発明の一態様の粘着シートを、装飾ラベルや表示ラベルとして用いる場合、金属膜は有色のものとなる。そして、本発明の一態様の粘着シートは、蒸着飛びの抑制効果に優れるという特性を有しており、蒸着飛びの発生に伴う、ラベルの外観が損なわれるという弊害が生じ難い。
なお、金属膜が有色である場合、当該金属膜は、アルミニウム、クロム、ニッケル、金、白金、銀、スズ、銅、鉄、パラジウム、酸化チタン、及び窒化チタンから選ばれる金属又は金属化合物を含むことが好ましい。
【0025】
金属膜の形成方法としては、上述の金属又は金属化合物を、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等のPVD(physical vapor deposition)法等の蒸着による方法や、上記金属又は金属化合物からなる膜(金属箔)を、一般的な粘着剤を用いて貼付する方法等が挙げられる。
なお、金属膜が、蒸着により形成された金属蒸着膜である場合、より蒸着飛びが生じ易くなることが一般的である。しかし、本発明の一態様の粘着シートが有する蒸着飛びの抑制効果に優れるという特性を有する。そのため、本発明の一態様の粘着シートは、金属膜として金属蒸着膜を有する場合であっても、金属蒸着膜に対して生じ得る蒸着飛びを効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明の一態様の粘着シートが有する金属膜の膜厚は、好ましくは1~5000nm、より好ましくは5~1000nm、更に好ましくは10~500nm、より更に好ましくは20~300nmである。
【0027】
<粘着剤層、粘着剤組成物>
本発明の粘着シートが有する粘着剤層は、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a1)及びカルボキシ基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を含む粘着剤組成物から形成された層である。
【0028】
そして、本発明の粘着シートが有する粘着剤層の厚さは、20μm以下であるが、当該粘着シートの用途に応じて、18μm以下、15μm以下、12μm以下、10μm以下、8μm以下、5μm以下、4μm以下、又は3μm以下としてもよい。
また、粘着剤層の厚さは、当該粘着シートの用途に応じて、1μm以上、2μm以上、3μm以上、又は5μm以上としてもよい。
なお、粘着剤層の厚さについて、下限及び上限は任意に選択して組み合わせることができる。
【0029】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、厚さが20μm以下と薄膜化されていることで、剥離時に被着体に残存する糊残りを少なくすることができ、また、粘着シートの端部から粘着剤のはみ出しも生じ難い。また、厚さの絶対値が小さいため、コスト面や生産性の点でも優位性がある。さらに、厚さの精度が高いため、特にクリアランスが狭い貼付箇所においても好適に使用し得る。
ただし、粘着剤層が薄膜化された金属膜付き粘着シートは、上述のとおり、蒸着飛びの問題が生じ易い。しかしながら、本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層は、厚さが20μm以下と薄膜化されているにも関わらず、構成単位(a2)を有するアクリル共重合体(A)を含む粘着剤組成物から形成された層であるため、蒸着飛びの抑制効果を向上させることができる。特に、ソーダガラスへ貼付した際、更には、ソーダガラスの非スズ面に貼付した際において、蒸着飛びの抑制効果をより効果的に発現させることができる。
【0030】
本発明者は、様々な検討の中で、金属膜付き粘着シートを、ソーダガラスへ貼付した際に、特にはソーダガラスの非スズ面に貼付した際に、蒸着飛びが生じ易いことが分かった。また、粘着シートが有する粘着剤層の厚さが薄くなるほど、蒸着飛びが生じ易いことも分かった。その理由としては、以下のように考えられる。
ソーダガラスは、ケイ砂(SiO)と共に、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カルシウム(CaCO)及び炭酸マグネシウム(CaCO)等の金属塩を混合して融解して製造されたものである。そのため、ソーダガラスには、金属塩に由来する金属酸化物である、酸化ナトリウム(NaO)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化マグネシウム(MgO)等が含まれる。これらの金属酸化物に由来する金属イオンが、ソーダガラスの表面に貼付された金属膜付き粘着シートの粘着剤層及び金属膜まで移行して、金属膜の酸化を促進させて、その結果、蒸着飛びが生じてしまうと推測される。この推測からすると、ソーダガラスと金属膜との間に介在する粘着剤層の厚さが薄くなるほど、ソーダガラスから生じる金属イオンが、金属膜により移行し易くなるとは想像し得る。
そして、ソーダガラスの非スズ面に金属膜付き粘着シートを貼付した際に、スズ面に貼付した場合に比べて、蒸着飛びが生じ易いことが本発明者の検討で分かった。そのため、非スズ面の方が、上記の金属酸化物に由来する金属イオンが粘着シートの金属膜へ移行し易いと考えられる。
【0031】
そこで、本発明者は、粘着剤層を形成する粘着剤組成物において、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を含有することで、ソーダガラスに含まれる金属酸化物に由来する金属イオンの金属膜への移行を抑制しようとした。つまり、粘着剤層のソーダガラスとの粘着表面にて、ソーダガラスに含まれる金属酸化物に由来する金属イオンを、アクリル系共重合体(A)の構成単位(a2)が有するカルボキシ基(-COOH)が捕捉して、金属膜への移行を抑えることができると推測した。そして、その推測に基づき、カルボキシ基を含む構成単位(a2)を有するアクリル系共重合体(A)を粘着剤層の形成に用いることで、粘着剤層の厚さを20μm以下と薄膜化しても、蒸着飛びを効果的に抑制し得る粘着シートとなり得ることが分かり、本発明の粘着シートは、その知見により完成したものである。
【0032】
本発明の一態様の粘着シートが有する粘着剤層の形成材料である粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(A)を含むが、さらに架橋剤(B)を含有することが好ましい。
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、成分(A)及び(B)の合計含有量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、更に好ましくは60~100質量%、より更に好ましくは65~100質量%、特に好ましくは70~100質量%である。
【0033】
また、本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、さらに粘着付与剤(C)を含有してもよく、成分(A)~(C)以外の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
以下、本発明の一態様で用いる粘着剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0034】
<(A)成分:アクリル系共重合体>
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、アルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)及びカルボキシ基含有モノマー(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を有する。
アクリル系共重合体(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、エマルション型ポリマーであってもよく、非エマルション型ポリマーであってもよいが、非エマルション型ポリマーであることが好ましい。
さらに、アクリル系共重合体(A)の共重合の形態については、特に制限はなく、ランダム共重合体、ブロック共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0035】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万~200万、より好ましくは10万~180万、更に好ましくは20万~150万、より更に好ましくは25万~120万、特に好ましくは30万~100万である。
なお、本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定された値である。
【0036】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、アクリル系共重合体(A)の含有量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
また、アクリル系共重合体(A)の含有量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、100質量%以下であればよいが、架橋剤(B)を含有する場合には、好ましくは99.95質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下、更に好ましくは99.5質量%以下、より更に好ましくは99.0質量%以下、特に好ましくは98.5質量%以下である。
つまり、アクリル系共重合体(A)の含有量は、当該粘着剤組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~99.99質量%、より好ましくは40~99.95質量%、更に好ましくは50~99.90質量%、より更に好ましくは60~99.50質量%、特に好ましくは70~99.00質量%である。
【0037】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基以外の官能基含有モノマー(以下、「モノマー(a3’)」ともいう)に由来する構成単位(a3)を有する共重合体であってもよく、さらにモノマー(a1’)、(a2’)及び(a3’)以外の他のモノマー(以下、「モノマー(a4’)」ともいう)に由来する構成単位(a4)を有する共重合体であってもよい。
【0038】
なお、本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)において、構成単位(a1)及び(a2)の合計含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは45~100質量%、より好ましくは55~100質量%、更に好ましくは65~100質量%、更に好ましくは75~100質量%、より更に好ましくは85~100質量%、特に好ましくは90~100質量%である。
以下、アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー及び構成単位について説明する。
【0039】
[モノマー(a1’)、構成単位(a1)]
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~16、より更に好ましくは1~12、特に好ましくは4~8である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0040】
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート(n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート)、ブチル(メタ)アクリレート(n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート)、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
なお、本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、構成単位(a1)として、炭素数4~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「モノマー(a11’)ともいう」に由来する構成単位(a11)を有することが好ましい。
【0042】
モノマー(a11’)としては、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートを含むことが更に好ましい。
【0043】
構成単位(a11)の含有割合としては、アクリル系共重合体(A)が有する構成単位(a1)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、より更に好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0044】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)において、構成単位(a1)の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99.0質量%以下、より更に好ましくは98.0質量%以下、特に好ましくは97.0質量%以下である。
つまり、構成単位(a1)の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~99.9質量%、より好ましくは40~99.5質量%、更に好ましくは50~99.0質量%、より更に好ましくは60~98.0質量%、特に好ましくは70~97.0質量%である。
【0045】
[モノマー(a2’)、構成単位(a2)]
モノマー(a2’)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;2-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の一態様で用いるモノマー(a2’)としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸を含むことがより好ましい。
なお、構成単位(a2)の含有量は、上記要件(I)を満たすように調整され、また、好適な範囲も上述のとおりである。
【0047】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)において、構成単位(a2)の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上であるが、より好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上、より更に好ましくは2.5質量%以上、特に好ましくは3.0質量%以上である。
また、構成単位(a2)の含有量は、粘着力に優れた粘着シートとする観点から、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
つまり、本発明の一態様において、構成単位(a2)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量に対して、好ましくは0.1~50質量%、より好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1.0~35質量%、更に好ましくは1.5~30質量%、より更に好ましくは2.0~25質量%、特に好ましくは3.0~20質量%である。
【0048】
[モノマー(a3’)、構成単位(a3)]
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、カルボキシ基以外の官能基含有モノマー(モノマー(a3’))に由来する構成単位(a3)を有する共重合体であってもよい。
モノマー(a3’)としては、例えば、ヒドロキシ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ヒドロキシ含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
なお、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~10、より好ましくは1~8、更に好ましくは1~6、より更に好ましくは2~4であり、当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
【0050】
エポキシ含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0051】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)において、構成単位(a3)の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
また、構成単位(a3)の含有量は、下限値の制限は特に無く、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、0質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上としてもよい。
なお、構成単位(a3)の含有量について、上記の下限及び上限は任意に選択して組み合わせることができる。
【0052】
[モノマー(a4’)、構成単位(a4)]
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)は、モノマー(a1’)、(a2’)及び(a3’)以外の他のモノマー(モノマー(a4’))に由来する構成単位(a4)を有する共重合体であってもよい。
モノマー(a4’)としては、特に制限は無いが、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系モノマー類、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマー(a4’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本発明の一態様で用いるアクリル系共重合体(A)において、構成単位(a4)の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の構成単位の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、更に好ましくは0~20質量%、より更に好ましくは0~10質量%、特に好ましくは0~5質量%である。
【0054】
<他の粘着性樹脂>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに成分(A)以外の他の粘着性樹脂を含有してもよい。
そのような他の粘着性樹脂としては、単独で粘着性を有する樹脂であればよいが、例えば、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、及びこれらの樹脂に重合性可能基を導入した硬化性樹脂等が挙げられる。
これらの他の粘着性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、他の粘着性樹脂は、エマルション型樹脂であってもよく、非エマルション型樹脂であってもよいが、非エマルション型樹脂であることが好ましい。
【0055】
本発明の一態様で用いる他の粘着性樹脂の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~180万、更に好ましくは3万~150万である。
【0056】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、成分(A)以外の他の粘着性樹脂の含有量は、当該粘着剤組成物に含まれる成分(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0~100質量部、より好ましくは0~50質量部、より好ましくは0~30質量部、更に好ましくは0~10質量部、更に好ましくは0~5質量部、より更に好ましくは0~1質量部、特に好ましくは0~0.1質量部である。
【0057】
<成分(B):架橋剤>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、さらに架橋剤(B)を含有することが好ましい。
成分(A)と共に、架橋剤(B)を含有する粘着剤組成物とすることで、粘着剤層内の凝集力を高め、高粘着力を有する粘着シートとすることができる。さらに、蒸着飛びがより生じ易い環境である高温高湿環境下で、ソーダガラスに貼付した状態で長期間静置させた場合においても、より効果的に蒸着飛びを抑制し得るものとなる。
【0058】
本発明の一態様で用いる架橋剤(B)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤(B)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等が挙げられる。
なお、これらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、並びに、これらの有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応して得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等も使用することができる。
【0060】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)トルエン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0061】
イミン系架橋剤としては、例えば、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオナート、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0062】
金属キレート系架橋剤としては、例えば、トリスエチルアセトアセテートアルミニウム、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、トリスアセチルアセトナートアルミニウム等のアルミキレート系化合物等の多価金属の配位化合物が挙げられる。
【0063】
本発明の一態様で用いる架橋剤(B)は、イソシアネート系架橋剤及び金属キレート系架橋剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、イソシアネート系架橋剤を少なくとも含むことがより好ましく、トリレンジイソシアネート系化合物を少なくとも含むことが更に好ましい。
【0064】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物が架橋剤(B)を含有する場合、架橋剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であるが、より好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.50質量部以上、より更に好ましくは0.70質量部以上、特に好ましくは1.00質量部以上であり、また、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは15.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは8.0質量部以下、より更に好ましくは6.0質量部以下、特に好ましくは4.5質量部以下である。
つまり、本発明の一態様において、架橋剤(B)の含有量は、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~20.0質量部、より好ましくは0.05~15.0質量部、より好ましくは0.10~10.0質量部、更に好ましくは0.50~8.0質量部、より更に好ましくは0.70~6.0質量部、特に好ましくは1.00~4.5質量%である。
【0065】
<粘着付与剤(C)>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、さらに粘着付与剤(C)を含有してもよい。
なお、本明細書において、粘着付与剤とは、粘着性樹脂であるアクリル系共重合体(A)の粘着性を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が通常1万未満のオリゴマーであり、上述のアクリル系共重合体(A)を含む粘着性樹脂とは区別されるものである。
本発明の一態様で用いる粘着付与剤(C)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~4000、より好ましくは800~1500である。
【0066】
本発明の一態様で用いる粘着付与剤(C)としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、炭化水素系樹脂、及びこれらの樹脂を水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
これらの粘着付与剤(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
ロジン系樹脂としては、例えば、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、及びロジンフェノール樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を水素化した水素化ロジン系樹脂であってもよい。
テルペン系樹脂としては、イソプレンに由来する構成単位を有する化合物であればよく、例えば、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びテルペンフェノール系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂を水素化した水素化テルペン系樹脂であってもよい。
スチレン系樹脂としては、例えば、α-メチルスチレン又はβ-メチルスチレン等のスチレン系モノマーと脂肪族系モノマーとを共重合して得られる樹脂等が挙げられ、当該樹脂を水素化した水素化スチレン系樹脂であってもよい。
炭化水素系樹脂としては、例えば、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系炭化水素樹脂;石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系炭化水素樹脂;及び、これらを水素化した水素化炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0068】
本発明の一態様で用いる粘着付与剤(C)の軟化点は、好ましくは70~170℃、より好ましくは80~160℃、更に好ましくは85~150℃、より更に好ましくは90~140℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤(C)の軟化点は、JIS K2531に準拠して測定した値を意味する。
また、2種以上の粘着付与剤を併用している場合、各粘着付与剤の軟化点と配合量比から算出した加重平均の値が上記範囲であることが好ましい。
【0069】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物が粘着付与剤(C)を含有する場合、粘着付与剤(C)の含有量は、当該粘着剤組成物に含まれるアクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、好ましくは5~300質量部、より好ましくは10~200質量部、更に好ましくは20~180質量部、より更に好ましくは30~150質量部である。
【0070】
<粘着剤用添加剤>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに架橋剤(B)及び粘着付与剤(C)以外の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、可塑剤(液体樹脂、流動パラフィン等)、相溶化剤、濡れ剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、充填剤、防錆剤、抗菌剤、防虫剤、香料、顔料、染料、硬化剤、硬化助剤、触媒等が挙げられる。
これらのそれぞれの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物において、これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、粘着剤用添加剤のそれぞれの含有量は、添加剤の種類に応じて適宜設定されるが、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、好ましくは0.01~40質量部、より好ましくは0.05~30質量部、更に好ましくは0.1~20質量部、より更に好ましくは0.2~10質量部である。
【0072】
なお、本発明の一態様の粘着剤組成物は、金属不活性化剤を含有してもよいが、それ自体が難分解性物質であるため環境面の観点から、金属不活性化剤の含有量は少ないほど好ましい。
具体的な金属不活性化剤の含有量としては、アクリル系共重合体(A)の全量100質量部に対して、好ましくは1質量部未満、より好ましくは0.1質量部未満、更に好ましくは0.01質量部未満、より更に好ましくは0.001質量部未満、特に好ましくは0.0001質量部未満又は0質量部(すなわち、金属不活性化剤を含有しない)である。
【0073】
上記の金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-クロルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールのカリウム塩、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0074】
<有機溶媒>
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物は、塗膜を形成し易くし、作業性を向上させる観点から、更に有機溶媒で希釈して、溶液の形態としてもよい。
有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、トルエン、キシレン、n-プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、これらの有機溶媒は、アクリル系共重合体(A)の合成時に使用された有機溶媒をそのまま用いてもよいし、アクリル系共重合体(A)の合成時に使用された有機溶媒以外の1種以上の有機溶媒を加えてもよい。
【0075】
本発明の一態様で用いる粘着剤組成物の有効成分濃度としては、当該粘着剤組成物の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~70質量%、更に好ましくは15~60質量%である。
【0076】
<剥離シート>
本発明の一態様の粘着シートは、粘着剤層の表面上に、さらに剥離シートを有してもよい。
本発明の一態様で用いる剥離シートとしては、例えば、剥離シート用基材の片面又は両面に、剥離剤から形成した剥離剤層を有するシートが挙げられる。
【0077】
剥離シート用基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等が挙げられる。
【0078】
剥離剤層を形成する剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、イソプレン系樹脂やブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー等が挙げられる。
【0079】
剥離シートの厚さは、特に制限は無いが、好ましくは5~300μm、より好ましくは7~200μm、更に好ましくは10~150μmである。なお、剥離シート用基材として、樹脂フィルムを用いる場合は、より更に好ましくは10~100μmである。
【0080】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の一態様の粘着シートの製造方法としては、特に制限は無いが、蒸着飛びの抑制効果により優れた粘着シートを製造する観点から、下記工程(1)~(2)を有する方法が好ましい。
・工程(1):基材上に設けられた金属膜の表面に、前記粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成する工程。
・工程(2):前記塗膜を乾燥させる工程。
【0081】
工程(1)のとおり、金属膜の表面に、直接粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成することで、形成される粘着剤層の金属膜側の表面に、当該粘着剤層内のアクリル共重合体(A)が有するカルボキシ基(-COOH)をより偏在化させた粘着シートを得ることができる。その結果、得られた粘着シートをソーダガラスに貼付した際に、当該ソーダガラスに含まれる金属酸化物から生じ得る金属イオンは、金属膜へ移行する前に、粘着剤層内の当該カルボキシ基(-COOH)を反応し、金属イオンの金属膜への移行を抑制し得るものとなる。そして、粘着剤層の厚さを20μm以下と薄膜化した場合においても、金属イオンの金属膜への移行を十分に抑制し得る。
【0082】
なお、工程(1)では、予め基材上に金属膜を形成しておく必要がある。
金属膜の形成方法としては、基材上に蒸着により形成してもよく、基材と金属膜とを接着剤を介して貼付して形成してもよい。また、市販の金属膜が形成された金属膜付き基材を用いてもよい。
【0083】
工程(1)における、粘着剤組成物を金属膜の表面上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0084】
工程(2)は、工程(1)で形成した塗膜を乾燥させる工程であるが、乾燥条件としては、80℃~150℃の温度で、30秒~5分間(好ましくは40秒~3分間、より好ましくは45秒~2分間)加熱し、乾燥させることが好ましい。
工程(2)を経て、金属膜の表面上に粘着剤層を形成することができる。
なお、粘着剤層内の架橋を完了させるために、一定期間(例えば、1日~14日程度)保持するシーズニング工程を経ることが好ましい。
【0085】
以上の過程を経て、図1(a)に示す粘着シート1aのような構成を有する粘着シートを製造することができる。
また、この後、形成した粘着剤層の表面上に、さらに剥離シートの剥離処理面を積層して、図1(c)に示す粘着シート1cのような構成を有する粘着シートとしてもよい。
【0086】
なお、図1(b)に示す粘着シート1bのような構成を有する両面粘着シートは、一方の金属膜に対して、上記工程(1)~(2)を経て粘着剤層を形成した上で、他方の金属膜に対しても同様にして粘着剤層を形成することで製造することができる。金属膜に対して粘着剤層を形成した際に、当該粘着剤層の表面上に、さらに剥離シートの剥離処理面を積層することで、図1(d)に示す粘着シート1dのような構成を有する両面粘着シートも製造することができる。
【0087】
なお、本発明の一態様の粘着シートは、上述の工程(1)~(2)を有する方法以外にも製造することができる。
例えば、剥離シートの剥離処理面上に、粘着剤組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させて粘着剤層を形成した上で、当該粘着剤層の表面を、金属膜が形成された基材の当該金属膜に貼付することによっても製造することができる。
この製造方法において、塗布する方法や、塗膜の乾燥条件は、上述のとおりである。
【0088】
〔粘着シートの特性、用途〕
本発明の一態様の粘着シートは、ソーダガラスへの貼付に適しており、大気中の水分によって金属膜の少なくとも一部が酸化されて変質してしまう、いわゆる「蒸着飛び」を効果的に抑制することができる。この特性は、粘着剤層の厚さを20μm以下と薄膜化しても十分に発現し得る。
本発明の一態様の粘着シートをJIS R3202:2011に規格に該当するフロートガラス板の非スズ面もしくはスズ面に貼付して、85℃、相対湿度85%の高温高湿の環境下で静置した際に、96時間経過しても蒸着飛びが生じないことが好ましく、168時間経過しても蒸着飛びが生じないことがより好ましい。
【0089】
本発明の粘着シートは、ソーダガラスへの貼付に用いられるものであるが、本発明が有する上記特性を鑑みると、ソーダガラスの非スズ面への貼付に用いられることが好ましい。また、本発明の一態様の粘着シートは、クリアランスが狭い貼付箇所においても使用することができる。
本発明の一態様の粘着シートは、用途の限定は特になく、例えば、ソーダガラスの表面に貼付される装飾ラベル又は表示ラベル、改ざん防止シート、導電性を付与するための導電性シート等の用途に適用し得る。
【実施例
【0090】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
また、各物性値については、以下に示す方法で測定した値である。
【0091】
[質量平均分子量(Mw)]
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」、「TSK gel G2500HXL」、「TSK gel G2000HXL」及び「TSK gel G1000HXL」を順次連結したもの(いずれも東ソー株式会社製)
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0092】
[軟化点]
JIS K2531に準拠して測定した。
【0093】
製造例1
(粘着剤組成物(1)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度30質量%の粘着剤組成物(1)を調製した。
・「アクリル系共重合体(A-i)」(構成単位の含有量比が、n-ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AAc)=90.0/10.0(質量%)である共重合体、Mw=47万):100質量部(有効成分比)
・「トリレンジイソシアネート(TDI)」(製品名「コロネートL」、東ソー株式会社製):2.0質量部(有効成分比)
【0094】
製造例2
(粘着剤組成物(2)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度35質量%の粘着剤組成物(2)を調製した。
・「アクリル系共重合体(A-ii)」(構成単位の含有量比が、n-ブチルアクリレート(BA)/酢酸ビニル(VAc)/アクリル酸(AAc)=90.0/5.0/5.0(質量%)である共重合体、Mw=35万):100質量部(有効成分比)
・「トリレンジイソシアネート(TDI)」(製品名「コロネートL」、東ソー株式会社製):1.0質量部(有効成分比)
【0095】
製造例3
(粘着剤組成物(3)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度35質量%の粘着剤組成物(3)を調製した。
・「アクリル系共重合体(A-iii)」(構成単位の含有量比が、n-ブチルアクリレート(BA)/2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/アクリル酸(AAc)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)=56.0/40.0/3.5/0.5(質量%)である共重合体、Mw=48万):100質量部(有効成分比)
・「トリレンジイソシアネート(TDI)」(製品名「コロネートL」、東ソー株式会社製):1.0質量部(有効成分比)
【0096】
製造例4
(粘着剤組成物(4)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度40質量%の粘着剤組成物(4)を調製した。
・「アクリル系共重合体(A-iv)」(構成単位の含有量比が、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/n-ブチルアクリレート(BA)/エチルアクリレート(EA)/アクリル酸(AAc)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)=60.0/22.5/15.0/2.0/0.5(質量%)である共重合体、Mw=68万):100質量部(有効成分比)
・「トリレンジイソシアネート(TDI)」(製品名「コロネートL」、東ソー株式会社製):0.75質量部(有効成分比)
・「水素化ロジン系樹脂」(製品名「KE-359」、荒川化学工業株式会社製、軟化点=94~104℃):25質量部(有効成分比)
・「芳香族テルペン系樹脂」(製品名「YSレジンTO105」、ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点=100~110℃):15質量部(有効成分比)
【0097】
製造例5
(粘着剤組成物(5)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度30質量%の粘着剤組成物(5)を調製した。
・「アクリル系共重合体(A-v)」2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/メチルアクリレート(MA)/グリシジルメタクリレート(GMA)/アクリル酸(AAc)=60.0/38.0/0.5/1.5(質量%)である共重合体、Mw=58万):100質量部(有効成分比)
・「アジリジン系架橋剤(アジリジン)」(製品名「BXX5134」、トーヨーケム株式会社製):0.24質量部(有効成分比)
【0098】
製造例6
(1)直鎖ウレタンプレポリマー(Ure)の合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、質量平均分子量(Mw)1,000のポリカーボネートジオール100質量部(有効成分比)に対して、イソホロンジイソシアネートを、ポリカーボネートジオールの水酸基とイソホロンジイソシアネートのイソシアネート基との当量比が1/1となるように配合し、更にトルエン160質量部を加え、窒素雰囲気下にて、混合物を撹拌しながら、イソシアネート基濃度が理論量に到達するまで、80℃で6時間以上反応させた。
次いで、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.44質量部(有効成分比)をトルエン30質量部に希釈した溶液を添加して、両末端のイソシアネート基が消滅するまで、更に80℃で6時間反応させ、質量平均分子量(Mw)2.9万の直鎖ウレタンプレポリマー(Ure)を得た。
(2)アクリルウレタン系樹脂(i)の合成
窒素雰囲気下の反応容器内に、上記(1)で得た直鎖ウレタンプレポリマー(Ure)45.0質量部(有効成分比)、メチルメタクリレート(MMA)53.2質量部(有効成分比)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)1.8質量部(有効成分比)及びトルエン22.5質量部を加え、撹拌しながら、105℃まで昇温した。そして、前記反応容器内に、更にラジカル開始剤(株式会社日本ファインケム製、製品名「ABN-E」)1.0質量部(有効成分比)をトルエン94.5質量部で希釈した溶液を、105℃に維持したまま4時間かけて滴下した。前記溶液の滴下終了後、105℃で6時間反応させ、質量平均分子量(Mw)10.5万のアクリルウレタン系樹脂(i)の溶液を得た。
(3)粘着剤組成物(6)の調製
下記に示す成分及び配合量にて添加して、トルエンで希釈し、有効成分濃度25質量%の粘着剤組成物(6)を調製した。
・「アクリルウレタン系樹脂(i)」(上記(1)及び(2)を経て得た樹脂、構成単位の含有量比が、Ure/MMA/HEMA=45.0/53.2/1.8(質量%)である共重合体、Mw=10.5万):100質量部(有効成分比)
・「ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)」(製品名「コロネートHL」、東ソー株式会社製):2.0質量部(有効成分比)
【0099】
製造例7
(粘着剤組成物(7)の調製)
下記に示す成分及び配合量にて添加して、酢酸エチルで希釈し、有効成分濃度30質量%の粘着剤組成物(7)を調製した。
・アクリル系共重合体(ii)(構成単位の含有量比が、n-ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/酢酸ビニル(VAc)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)=80.0/10.0/9.0/1.0(質量%)である共重合体、Mw=60万):100質量部(有効成分比)
・「トリメチロールプロパンキシレンジイソシアネート(XDI)」(製品名「タケネート D-110N」、三井化学株式会社製):1.6質量部(有効成分比)
・「水素化ロジン系樹脂」(製品名「KE-359」、荒川化学工業株式会社製、軟化点=94~104℃):25質量部(有効成分比)
【0100】
実施例1~5、比較例1~2
(粘着シートの作製)
アルミニウム蒸着膜付きPETフィルム(東レフィルム加工株式会社製、製品名「メタルミー」、厚さ:50μm、基材であるPETフィルム上に、金属膜であるアルミニウム膜を蒸着により厚さ30~50nmで形成した積層体)のアルミニウム蒸着面の表面上に、表1に示す種類の粘着剤組成物を、塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を100℃(比較例1のみ110℃)で2分間乾燥させて、厚さ10μmの粘着剤層を形成した。
そして、形成した粘着剤層の表出している表面に、剥離シート(リンテック株式会社製、製品名「SP-PET381031」、厚さ:38μm、表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)の剥離処理面を積層して、図1(c)に示す粘着シート1cと同じ構成を有する、粘着シートを作製した。
【0101】
【表1】
【0102】
実施例及び比較例で作製した粘着シートについて、以下の方法に基づき、蒸着飛びの抑制効果の評価を行った。評価結果を表2に示す。
〔蒸着飛びの抑制効果の評価〕
実施例及び比較例で作製した粘着シートを一辺25mmの正方形の大きさに裁断したものを試験サンプルとした。当該試験サンプルの剥離シートを除去し、表出した粘着剤層の表面を、JIS R3202:2011に規格に該当するフロートガラス板の非スズ面もしくはスズ面に貼付して、85℃、相対湿度85%の高温高湿の環境下で、24時間後、96時間後、及び168時間後の試験サンプルのアルミニウム膜の状態を、フロートガラス板を介して目視で観察し、以下の基準で蒸着飛びの有無を評価した。
・A:蒸着飛びが観察されなかった。
・F:蒸着飛びが観察された。
【0103】
【表2】
【0104】
表2より、実施例1~5で作製した粘着シートは、高温高湿の環境下で168時間以静置した場合においても蒸着飛びの抑制効果が高い結果となった。一方で、比較例1~2で作製した粘着シートは、高温高湿の環境下で96時間静置した時点で、蒸着飛びが生じる結果となった。
【符号の説明】
【0105】
1a、1b、1c、1d 粘着シート
11 基材
12、12a、12b 金属膜
13、13a、13b 粘着剤層
14、14a、14b 剥離シート
図1