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特許7563900球形タンク内の足場装置及び球形タンク内の足場装置の組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】球形タンク内の足場装置及び球形タンク内の足場装置の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 3/28 20060101AFI20241001BHJP
   E04G 3/24 20060101ALI20241001BHJP
   E04G 5/14 20060101ALI20241001BHJP
   E04G 5/08 20060101ALI20241001BHJP
   B65D 88/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E04G3/28 305A
E04G3/24 301A
E04G5/14 302A
E04G5/14 301C
E04G5/08 S
B65D88/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020096876
(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公開番号】P2021188441
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日綜産業株式会社は、産業安全Week2019第1回防爆・防災リスク対策展/第2回防寒対策展にて、藤本俊伸、松尾健治が発明した球形タンク内の足場装置及び球形タンク内の足場装置の組み立て方法について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000227146
【氏名又は名称】日綜産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】藤本 俊伸
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健治
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-057799(JP,A)
【文献】特開2003-105966(JP,A)
【文献】特開昭58-216574(JP,A)
【文献】実開昭60-102349(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 3/28
E04G 3/24
E04G 5/14
E04G 5/08
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球形タンクの内部に前記球形タンクの上下方向の中心線に沿って配置されるとともに軸回りに回転可能に支持された柱体と、
前記柱体から前記球形タンクの内壁に向けて水平に延びるとともに前記柱体の軸方向に沿って上下に所定の間隔で配置される複数の足場部材と、
前記足場部材の延長方向に沿って並べて取付けられる複数の手摺枠とを備え、
前記手摺枠は、前記足場部材から前記足場部材の延長方向に沿って所定の間隔で起立する一対の縦支柱と、前記一対の縦支柱間に架け渡される手摺本体とを有し、
前記一対の縦支柱のいずれか一方の縦支柱は、前記手摺本体の任意の位置を下方側から支持可能な上向きのフックを有し、
前記一対の縦支柱のいずれか他方の縦支柱は、前記手摺本体の任意の位置を保持可能なブラケットを有する
ことを特徴とする球形タンク内の足場装置。
【請求項2】
前記手摺本体は、上下に配置される上桟と下桟と、前記上桟及び前記下桟の両端部をそれぞれ接続する左桟及び右桟を有する矩形枠状であって、
前記一方の縦支柱は、前記手摺本体の前記上桟又は前記下桟のいずれか一方を支持する前記フックと、前記手摺本体の前記下桟又は前記上桟のいずれか他方を任意の位置で保持可能な保持金具を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の球形タンク内の足場装置。
【請求項3】
前記足場部材は、前記柱体から前記球形タンクの内壁に向けて水平に延びる一対の水平梁と、前記各水平梁の延長方向で任意の位置にそれぞれ取付けられ前記水平梁の延長方向に沿って延びるビーム材と、対向する前記ビーム材間に架け渡される足場板とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の球形タンク内の足場装置。
【請求項4】
前記ビーム材は、前記ビーム材の延長方向に沿って所定の間隔で3つ以上配置され前記縦支柱を保持可能な支柱ブラケットを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の球形タンク内の足場装置。
【請求項5】
少なくとも一つの前記足場部材に設けられ、前記内壁に対して遠近可能であって、前記内壁に当接した際に、前記柱体の回転を阻止するストッパを備える
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の球形タンク内の足場装置。
【請求項6】
請求項又は請求項を引用する請求項に記載の球形タンク内の足場装置の組み立て方法であって、
下段の前記足場部材上から、前記支柱ブラケットの一つに前記一方の縦支柱を保持させた状態の前記ビーム材を上段の前記水平梁に取付ける工程と、
下段の前記足場部材上から、前記ブラケットを介して前記他方の縦支柱に連結された前記手摺本体を前記一方の縦支柱の前記フックに引っ掛ける工程と、
下段の前記足場部材上から、前記他方の縦支柱を前記支柱ブラケットの一つに取付ける工程とを含む
ことを特徴とする球形タンク内の足場装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、球形タンク内の足場装置及び球形タンク内の足場装置の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
球形タンク内の足場装置は、液化天然ガスなどを貯留する球形タンクの内部で組み立てられて、球形タンクの内壁の塗装作業や検査作業などのメンテナンス作業に利用される。
【0003】
従来の球形タンク内の足場装置は、球形タンクの内部に球形タンクの上下方向の中心線に沿って配置されるとともに軸回りに回転可能に支持された柱体と、柱体から球形タンクの内壁に向けて左右にそれぞれ水平に延びるとともに柱体の軸方向に沿って上下に所定の間隔で配置され足場板を有する複数の足場部材と、足場部材の延長方向に沿って設けられる手摺を備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような球形タンク内の足場装置では、柱体を周方向に回転させることで、足場部材を球形タンクの内壁の任意の位置に対向させることができる。また、手摺は、足場部材の球形タンクの内壁側となる先端側に設けられており、足場部材上で球形タンクのメンテナンス作業を行う作業者の足場装置からの落下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭58-101100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の球形タンク内の足場装置は、球形タンクの上下端に架け渡された柱体に、足場部材を下層から順に取付けていくことで組み立てられる。また、足場装置の組み立て作業者は、手摺の設けられていない足場部材上でその足場部材の先端側に手摺を取付ける作業を行っている。
【0007】
ところが、このように手摺を取付ける場合、作業者は、手摺の設けられていない足場部材上で、手摺の取付作業をしなければならず、安全面での不安があった。
【0008】
そのため、手摺の取付作業は、手摺を同一の幅に設定された複数の手摺枠で構成し、作業者が下層の足場部材上から各手摺枠を持ち上げて上層の足場部材に各手摺枠を足場部材の延長方向に沿って並べて取付ける、いわゆる、先行手摺方式で行われることが望ましい。このように手摺を先行手摺方式で足場部材に取付けると、作業者は常に手摺の設けられた足場部材上で安全に作業できる。
【0009】
ここで、球形タンクは、内壁の断面が円弧状になっており、高さ位置によって、柱体から球形タンクの内壁までの距離が異なるため、足場部材の延長方向の長さも、足場部材の高さ位置によって異なる。
【0010】
そのため、幅が同一の手摺枠を足場部材の延長方向に沿って並べて取付けていった場合、足場部材の高さ位置によっては、足場部材の先端側における足場板が設置されている個所に手摺枠が設置されていない場所が生じてしまう恐れがある。
【0011】
したがって、従来の球形タンク内の足場装置では、球形タンク内の足場装置を組み立てる際に、手摺枠の取付け作業を先行手摺方式で行うことができなかった。
【0012】
そこで、本発明は、組み立て時における手摺枠の取付け作業を先行手摺方式で行うことができる球形タンク内の足場装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成させるため、本発明の球形タンク内の足場装置は、球形タンクの内部に前記球形タンクの上下方向の中心線に沿って配置されるとともに軸回りに回転可能に支持された柱体と、前記柱体から前記球形タンクの内壁に向けて水平に延びるとともに前記柱体の軸方向に沿って上下に所定の間隔で配置される複数の足場部材と、前記足場部材の延長方向に沿って並べて取付けられる複数の手摺枠とを備え、前記手摺枠は、前記足場部材から前記足場部材の延長方向に沿って所定の間隔で起立する一対の縦支柱と、前記一対の縦支柱間に架け渡される手摺本体とを有し、前記一対の縦支柱のいずれか一方の縦支柱は、前記手摺本体の任意の位置を下方側から支持可能な上向きのフックを有し、前記一対の縦支柱のいずれか他方の縦支柱は、前記手摺本体の任意の位置を保持可能なブラケットを有することを特徴とする。この構成によると、縦支柱に対する手摺本体の左右位置を調整できる。
【0014】
また、本発明の球形タンク内の足場装置では、前記手摺本体は、上下に配置される上桟と下桟と、前記上桟及び前記下桟の両端部をそれぞれ接続する左桟及び右桟を有する矩形枠状であって、前記一方の縦支柱は、前記手摺本体の前記上桟又は前記下桟のいずれか一方を支持する前記フックと、前記手摺本体の前記下桟又は前記上桟のいずれか他方を任意の位置で保持可能な保持金具を有するとしてもよい。この構成によると、手摺本体が上桟と下桟を備える二段手摺となるため、安全性が向上する。さらに、手摺本体が、他方の縦支柱だけでなく、一方の縦支柱にも保持されるので、手摺本体の浮き上がりも防止される。
【0015】
また、本発明の球形タンク内の足場装置では、前記足場部材は、前記柱体から前記球形タンクの内壁に向けて水平に延びる一対の水平梁と、前記各水平梁の延長方向で任意の位置にそれぞれ取付けられ前記水平梁の延長方向に沿って延びるビーム材と、対向する前記ビーム材間に架け渡される足場板とを有するとしてもよい。この構成によると、ビーム材の水平梁に対する取付位置を調整することで、ビーム材の水平梁から球形タンクの内壁側に突出する長さを調整できるため、球形タンクの内壁の至近まで足場部材を延長できる。
【0016】
また、本発明の球形タンク内の足場装置では、前記ビーム材は、前記ビーム材の延長方向に沿って所定の間隔で3つ以上配置され前記縦支柱を保持可能な支柱ブラケットを有するとしてもよい。この構成によると、一対の縦支柱間の距離を調整できるので、球形タンクの内壁までの距離に合わせて、任意の幅の手摺本体を選択できる。
【0017】
また、本発明の球形タンク内の足場装置は、少なくとも一つの前記足場部材に設けられ、前記内壁に対して遠近可能であって、前記内壁に当接した際に、前記柱体の回転を阻止するストッパを備えてもよい。この構成によると、柱体を回転させて、足場部材を球形タンクの内壁の任意の位置に対向させてから、柱体の回転を止めることで、足場部材を任意の位置で停止させることができる。
【0018】
また、本発明の球形タンク内の足場装置の組み立て方法は、下段の前記足場部材上から、前記支柱ブラケットの一つに前記一方の縦支柱を保持させた状態の前記ビーム材を上段の前記水平梁に取付ける工程と、下段の前記足場部材上から、前記ブラケットを介して前記他方の縦支柱に連結された前記手摺本体を前記一方の縦支柱の前記フックに引っ掛ける工程と、下段の前記足場部材上から、前記他方の縦支柱を前記支柱ブラケットの一つに取付ける工程とを含むことを特徴とする。この構成によると、手摺枠の位置の調整を行いつつ手摺枠を先行手摺方式で足場部材に設置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の球形タンク内の足場装置によれば、手摺枠を先行手摺方式で足場部材に取付けることができるため、球形タンク内の足場装置の組み立て作業時における作業者の安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】球形タンクの内部に組み立てられた本実施の形態の球形タンク内の足場装置の全体を示す正面図である。
図2】本実施の形態の柱体の拡大側面図である。
図3】本実施の形態の足場部材の側面断面図である。
図4】本実施の形態の足場部材の一部拡大斜視図である。
図5】(A)は本実施の形態の足場部材の拡大正面図である。(B)は図5(A)に示す足場部材の支柱ブラケットを拡大して示す一部拡大正面図である。
図6】(A)は本実施の形態の手摺枠の一方の縦支柱の側面図である。(B)は本実施の形態の手摺枠の他方の縦支柱の側面図である。
図7】本実施の形態の1段目の足場部材に設けられたストッパの拡大側面図である。
図8】本実施の形態の球形タンク内の足場装置の組み立て作業時において、一方の縦支柱を保持するビーム材を上段の足場部材の水平梁に取付ける工程を説明する図である。
図9】本実施の形態の球形タンク内の足場装置の組み立て作業時において、手摺本体を保持する他方の縦支柱を上段のビーム材に取付けて、手摺枠を水平梁に設置する工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照しながら本実施の形態について説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は同じ部品を示す。
【0022】
本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、球形タンクTの内部で組み立てられて利用される。球形タンクTは、内部が中空の球形であって、図示しない多数本の脚柱によって支持されており、内部に液化天然ガスなどを貯留できる。また、図1に示すように、球形タンクTの上部と下部には、それぞれ、球形タンクTの内外を連通する上側開口部T1と下側開口部T2が設けられている。
【0023】
球形タンク内の足場装置1は、図1に示すように、球形タンクTの内部に球形タンクTの上下方向の中心線に沿って配置されるとともに軸回りに回転可能に支持された柱体2と、柱体2に連結される足場構造体10とを備える。足場構造体10は、柱体2から球形タンクTの内壁に向けて水平に延びるとともに柱体2の軸方向に沿って上下に所定の間隔で配置される複数層の足場部材3と、足場部材3の延長方向に沿って並べて取付けられる複数の手摺枠6とを有する。
【0024】
そして、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、柱体2を回転させることで、足場構造体10を球形タンクTの内壁の任意の位置に対向させることができる。これにより、作業者は、球形タンクTの内壁の任意の個所に対して、塗装や点検などのメンテナンス作業を行うことができる。
【0025】
つづいて、球形タンク内の足場装置1の各部について詳細に説明する。本実施の形態の柱体2は、図2に示すように、一対の縦材2a,2aと、縦材2a,2a間に所定の間隔で架け渡される複数の横材2bと、対向する縦材2a,2a間に互いに交差するように斜めに架け渡される複数の補強材2cとを有する。また、縦材2aは、複数の縦材分割体(符示せず)と、縦材分割体間に介装されて縦材分割体同士を接続する接続部材2dとを有している。また、詳細には説明しないが、接続部材2dは、縦材分割体を上下にそれぞれ保持する機構と、後述する足場部材3の水平梁を左右にそれぞれ保持する機構と、後述する斜材の端部を保持する機構を備えている。
【0026】
図1に示すように、球形タンクTの上部と下部における球形タンクTの上下方向の中心線に沿う位置には、それぞれ、柱体2の上端を回転自在に支持する上部サポート4と、柱体2の下端を回転自在に支持する下部サポート5が設けられている。
【0027】
これにより、本実施の形態の柱体2は、上部サポート4と下部サポート5を介して、球形タンクTの内部に球形タンクTの上下方向の中心線に沿って配置され、軸回りに回転可能に支持される。
【0028】
本実施の形態の足場構造体10は、図1に示すように、柱体2から球形タンクTの内壁に向けて左右に水平に延びるとともに上下に複数階層にわたって設けられる足場部材3を備えている。また、足場構造体10は、足場部材3に足場部材3の延長方向に沿って並べて取付けられる複数の手摺枠6を有する。さらに、足場構造体10は、上下に対向する足場部材3,3間に垂直に架け渡され上下に対向する足場部材3,3同士を連結する複数の垂直材7と、柱体2と各足場部材3,3間に斜めに架設され足場部材3を吊持する複数の斜材8とを有する。これにより、足場構造体10が、柱体2に吊持される構成となるため、各足場部材3が水平状態に維持される。
【0029】
足場部材3は、図1図3に示すように、一端が接続部材2dを介して柱体2に連結されて柱体2から球形タンクTの内壁に向けて水平に延びる一対の水平梁11,11と、各水平梁11の延長方向で任意の位置にそれぞれ取付けられ水平梁11の延長方向に沿って延びるビーム材9と、対向するビーム材9,9間に架け渡される足場板19とを有する。また、足場部材3は、水平梁11,11間に一定の間隔で架け渡され水平梁11,11同士を接続するとともに垂直材7の端部と斜材8の端部が連結される複数のタイロッド12を有する。
【0030】
水平梁11は、図3に示すように四角柱状であって、水平梁11の延長方向に所定の間隔で配置されて水平梁11を軸方向から見て横方向に貫通する横孔11aを有する。さらに、水平梁11は、水平梁11の延長方向に所定の間隔で配置されて水平梁11を上下に貫通する複数の縦孔11bを有する。
【0031】
タイロッド12は、図3に示すように、外筒13aと外筒13a内に移動可能に挿入される内筒13bとを有し伸縮可能に構成されるとともに水平梁11の横孔11aよりも径の大きい伸縮部13と、伸縮部13の両端部に設けられて横孔11aに嵌合可能な挿入部14とを有する。挿入部14の先端側にはねじ部14aが形成されている。また、挿入部14の軸方向長さは、水平梁11における軸方向から見て横方向の幅よりも長く形成されている。
【0032】
また、伸縮部13の外筒13aと内筒13bは、それぞれ伸縮部13の最伸長時に対向する孔(図示せず)を有している。図3に示すように、伸縮部13は、当該各孔を対向させた状態で、これらの孔にロックピン15を挿入することで、最伸長状態でロックされる。この際、ロックピン15の一端と他端には、弾性リング16が架け回されている。これにより、ロックピン15が、弾性リング16の弾性力によって径方向に引っ張られるため、ロックピン15の外周と外筒13a及び内筒13bの間で生じる摩擦力が大きくなる。したがって、ロックピン15が外筒13aと内筒13bに形成された孔から抜けることが防止される。
【0033】
垂直材7は、図3に示すように、金属製の棒材であって、両端に取付孔(図示せず)が形成されたプレート(符示せず)を有する。また、斜材8は、図3に示すように、金属製の線材であって、両端にそれぞれ取付孔(図示せず)が形成されたプレート(符示せず)を有する。
【0034】
つづいて、図3に示すように、タイロッド12を水平梁11,11間に連結するとともにタイロッド12に垂直材7の端部及び斜材8の端部を取付ける手順について詳細に説明する。まず、伸縮部13を収縮させた状態で、タイロッド12を水平梁11,11間に配置する。次に、各挿入部14と水平梁11の各横孔11aを対向させた状態で、伸縮部13を伸長させて、各挿入部14を対向する各横孔11aに挿入し、各挿入部14の先端を各水平梁11から突出させる。その後、伸縮部13の外筒13aと内筒13bに設けられた孔にロックピン15を挿入し、伸縮部13をロックする。これにより、タイロッド12が収縮して水平梁11,11間から外れてしまうことが防止される。最後に、複数の斜材8と垂直材7を取付孔を介して挿入部14に嵌合し、ねじ部14aにナット18を螺合して締め付けることで、タイロッド12を水平梁11,11間に連結するとともにタイロッド12に垂直材7の端部及び斜材8の端部を取付けできる。
【0035】
このようにして、垂直材7の各端部を、上段の足場部材3と下段の足場部材3における上下に対向する各タイロッド12に連結することで、上下に対向する足場部材3,3は、図1に示すように、足場部材3の延長方向に沿って配置された複数の垂直材7によって連結される。
【0036】
同様に、斜材8の各端部を、柱体2の各接続部材2dと、各接続部材2dに対して先端側下方に配置される各タイロッド12に連結することで、各足場部材3は、図1に示すように複数の斜材8によって吊持される。
【0037】
戻って、本実施の形態のビーム材9について詳細に説明する。ここでは、説明の便宜上、対向するビーム材9側を「内側」といい、その反対側を「外側」という。ビーム材9は、図3図4図5に示すように、水平梁11の上部に水平梁11の延長方向に沿って並べて複数配置されており、足場部材3上から工具などが落下するのを防止する幅木として機能する。
【0038】
具体的には、本実施の形態のビーム材9は、図3に示すように、水平梁11の上部に固定され内側に突出する架設片9aと、架設片9aの外側端から垂直に起立する垂直片9bと、垂直片9bの上端から内側に向けて水平に延びる水平片9cと、水平片9cの内側端を下向きに折り曲げて形成された折曲げ片9dと、架設片9aの折曲げ片9dと対向する位置から垂直に起立する規制片9eとを有する。
【0039】
また、架設片9aは、延長方向に所定の間隔で配置され、架設片9aを上下に貫通する複数の孔9fを有する。また、水平梁11には延長方向に沿って複数の縦孔11bが設けられている。そして、架設片9aに設けられた孔9fを水平梁11に設けられた任意の縦孔11bに対向させ、対向する孔9fと縦孔11bにボルトB1を挿入し、反対側からナットN1で締め付ける。これにより、ビーム材9を水平梁11の延長方向で任意の位置に取付ける。ただし、ビーム材9を水平梁11に取付ける方法は、ビーム材9を水平梁11の延長方向で任意の位置に着脱自在に連結する方法であれば、上記方法には限定されない。
【0040】
また、水平片9cには、図4図5に示すように、延長方向に所定の間隔で配置され水平片9cを上下に貫通する挿通孔9gが4つ設けられている。そして、ビーム材9の各挿通孔9gに対応する位置には、後述する手摺枠6の縦支柱60,61を保持可能な支柱ブラケット90がそれぞれ設けられている。なお、挿通孔9gと支柱ブラケット90の数は、4つには限定されず、少なくとも2つ設けられていればよい。
【0041】
さらに、図4図5に示すように、ビーム材9の延長方向の各端部には、それぞれ、ボルト孔(図示せず)を有する連結板9hが設けられている。そして、隣り合うビーム材9,9の連結板9hに設けられた各ボルト孔にボルトB2を挿入し、反対側からナットN2で締め付けることで、隣り合うビーム材9,9同士が連結される。
【0042】
また、本実施の形態では、図4に示すように、球形タンクTの内壁側である先端側に配置される互いに対向するビーム材9,9の連結板9h,9h間には幅木91が連結されており、足場部材3と球形タンクTの内壁の間から工具などが落下するのを防止している。
【0043】
具体的には、本実施の形態の幅木91は、矩形板状の幅木本体91aと、幅木本体91aの短手側端をそれぞれ短手方向に切り欠いて形成されたフック部91b,91bとを有する。そして、各ビーム材9の連結板9hに形成されたボルト孔にボルトB3を挿通して連結板9hからボルトB3を突出させた状態で、当該ボルトB3に幅木91のフック部91bを引っ掛けてから、ナットN3で締め付けることで、幅木91は、足場部材3の先端側に連結されている。
【0044】
本実施の形態の足場板19は、図4に示すように、複数の矩形の板材19aで構成されている。足場板19は、図3図4に示すように、複数の板材19aを長手側を横にして、ビーム材9の延長方向に並べられ、短手方向に対向するビーム材9の架設片9a,9a間に隙間なく架け渡されて、ビーム材9,9間に設置される。この際、板材19aの長手方向の幅は、ビーム材9の規制片9e,9e間の幅と略等しくなっている。そのため、板材19aは、ビーム材9の規制片9e,9e間に嵌合される。これにより、各板材19aは、ビーム材9を軸方向から見て横方向への移動が規制されるので、作業者が足場部材3上を移動する際に、足場板19がガタつかないようになっている。
【0045】
本実施の形態の手摺枠6は、図5に示すように、足場部材3から足場部材3の延長方向に沿って所定の間隔で起立する一対の縦支柱60,61と、一対の縦支柱60,61間に架け渡される手摺本体62とを有し、支柱ブラケット90を介して、ビーム材9に取付けられている。また、一対の縦支柱60,61のいずれか一方の縦支柱60は、手摺本体62の任意の位置を支持可能なフック63を有し、一対の縦支柱60,61のいずれか他方の縦支柱61は、手摺本体62の任意の位置を保持可能なブラケット64を有している。
【0046】
具体的には、手摺本体62は、図5に示すように、上下に配置される上桟62aと下桟62bと、上桟62a及び下桟62bの両端部をそれぞれ接続する左桟62c及び右桟62dを有して、矩形枠状に形成されている。縦支柱60(61)は、中空筒状であって、図6に示すように、下端にU字状に切り欠かれ互いに対向する一対の溝60a(61a)を有する。さらに、縦支柱60(61)の溝60a(61a)の上方には、縦支柱60(61)を径方向に貫通するピン孔60b(61b)と、ピン孔60b(61b)の上方に間隔をあけて縦支柱60(61)を貫通する支持孔60c(61c)とが設けられている。
【0047】
ここで、ビーム材9に設けられた支柱ブラケット90は、図5に示すように、ビーム材9の水平片9cに設けられた挿通孔9gを左右に挟んで水平片9cと架設片9aの間に架設され互いに対向する一対の支持板90a,90aと、各支持板90a,90aの下端部に架け渡される軸90bとを有する。さらに、各支持板90aの軸90bの上方には、互いに対向する連通孔(図示せず)が形成されている。
【0048】
つづいて、縦支柱60(61)を支柱ブラケット90を介してビーム材9に取付ける手順について説明する。まず、縦支柱60(61)を挿通孔9gを介して、一対の支持板90a,90a間に挿入し、縦支柱60(61)の下端に形成された溝60a(6a)に軸90bを嵌合させる。すると、縦支柱60(61)は、軸90bによって回り止めがされ、周方向に回転不能となる。次に、縦支柱60(61)のピン孔60b(61b)と支柱ブラケット90の連通孔を対向させた状態で、固定ピン92を挿入する。このようにすると、縦支柱60(61)は、支柱ブラケット90からの抜けが防止されて、支柱ブラケット90を介して、ビーム材9に取付けられる。なお、縦支柱60(61)のピン孔60b(61b)は、縦支柱60(61)の溝60a(61a)が軸90bに嵌合された際に、支持板90a,90aに形成された連通孔と対向する位置に設けられているため、自動的に位置決めがなされる。また、本実施の形態では、固定ピン92として、抜け止めの機構を有するトグルピンが利用されているが、固定ピン92の種類は特に限定されない。
【0049】
戻って、一対の縦支柱60,61のうち一方の縦支柱60(図5中右側)は、図5図6(A)に示すように、手摺本体62の上桟62aの任意の位置を支持可能なフック63と、フック63の下側に配置され手摺本体62の下桟62bを任意の位置で保持可能な保持金具65とを有する。
【0050】
本実施の形態のフック63は、一方の縦支柱60の外周に嵌合される筒部63aと、筒部63aに先端が上を向くように固定されるL字状のフック部63bとを有する。筒部63aと一方の縦支柱60には、互いに対向する孔(図示せず)が形成されており、これらの孔にロックピン63cが挿入されることで、フック63は、一方の縦支柱60の外周に連結されている。なお、フック部63bの形状は一例であって、上桟62aの任意の位置を支持できるようになっていれば、特に限定されない。
【0051】
本実施の形態の保持金具65は、一方の縦支柱60の外周に軸方向移動可能に嵌合される筒部66と、筒部66に固定されるクランプ部67とを有する。保持金具65の筒部66には、一方の縦支柱60の軸方向に沿う長孔66aが形成されており、一方の縦支柱60には、長孔66aに対向可能な孔(図示せず)が形成されている。そして、筒部66の長孔66aを一方の縦支柱60の孔に対向させた状態で、これらの孔にロックピン66bを挿入することで、保持金具65は、一方の縦支柱60に対して軸方向に移動可能に装着されている。
【0052】
また、保持金具65は、手摺本体62の下桟62bを保持する際には、図6(A)に示すように、長孔66aの下端にロックピン66bが当接する位置に配置されている。対して、保持金具65は、手摺本体62の下桟62bを保持していない自然状態では、自重により長孔66aの上端にロックピン66bが当接する位置まで移動するので、フック63から遠ざかるようになっている。ただし、保持金具65は、一方の縦支柱60に対して軸方向に移動できないように固定されていてもよい。
【0053】
クランプ部67は、筒部66に固定されるL字状の基部67aと、基部67aの一端に回転可能に連結された半円状の開閉部67bと、基部67aの他端に起伏可能に連結されたボルト67cと、開閉部67bの他端部に設けられボルト67cが嵌合される溝を有する嵌合部67dと、ボルト67cの先端に螺合されるナット67eとを有する。クランプ部67は、基部67aと開閉部67bの間に手摺本体62の下桟62bを配置した状態で、嵌合部67dにボルト67cを挿入して下桟62bをクランプ部67で抱持状態とした上で、ナット67eを締め付けると、下桟62bを基部67aと開閉部67bによって挟持して保持できるようになっている。なお、保持金具65の構成は一例であって、下桟62bを任意の位置で保持できる構成になっていれば、特に限定されない。
【0054】
他方、一対の縦支柱60,61のいずれか他方の縦支柱61(図5中左側)は、図5図6(B)に示すように、上下に並べて配置され、手摺本体62の上桟62aと下桟62bの任意の位置をそれぞれ保持可能な2つのブラケット64,68を有する。本実施の形態のブラケット64(68)は、他方の縦支柱61にボルトナット連結されるL字状の基部64a(68a)と、基部64a(68a)の一端に回転可能に連結された半円状の開閉部64b(68b)と、基部64a(68a)の他端に起伏可能に連結されたボルト64c(68c)と、開閉部64b(68b)の他端部に設けられボルト64c(68c)が嵌合される溝を有する嵌合部64d(68d)と、ボルト64c(68c)の先端に螺合されるナット64e(68e)とを有する。各ブラケット64,68は、基部64a(68a)と開閉部64b(68b)の間に手摺本体62の上桟62a又は下桟62bを配置した状態で、、嵌合部64d(68d)にボルト64c(68c)を挿入して上桟62a又は下桟62bをブラケット64(68)で抱持状態とした上で、ナット64e(68e)を締め付けると、上桟62a又は下桟62bを基部64a(68a)と開閉部64b(68b)によって挟持して保持できるようになっている。なお、本実施の形態の各ブラケット64,68の構成は一例であって、下桟62bを任意の位置で保持できる構成になっていれば、特に限定されない。
【0055】
また、本実施の形態では、図1に示すように、1段目の足場部材3には、球形タンクTの内壁に対して遠近可能であって、球形タンクTの内壁に当接した際に、柱体2の回転を阻止するストッパ70が設けられている。具体的には、本実施の形態のストッパ70は、図7に示すように、ビーム材9の垂直片9bの外側に固定される基部71と、基部71に対して周方向に回転自在に連結される回転軸72と、筒状であって回転軸72の反基部側端に回転軸72の軸方向に対して直交する向きで連結されるナット部73と、ナット部73に螺合されてナット部73に対して回転させると軸方向へ移動する螺子軸74と、螺子軸74の一端に設けられるゴム製の摩擦材75と、螺子軸74の他端に設けられるL字状の操作部76とを有する。また、ストッパ70は、回転軸72の周方向の回転を阻止可能なロック機構を有している。この際、螺子軸74は、ナット部73に螺合されているため、螺子軸74を周方向に回転させると、送り螺子機構により、螺子軸74が軸方向に移動するようになっている。
【0056】
基部71は、ビーム材9の内側に固定される有頂筒状の筒部71aと、筒部71aの内部を軸方向で仕切る仕切板71bとを有する。筒部の頂部71cと仕切板71bには回転軸72が挿通される孔(図示せず)が設けられており、回転軸72は、筒部71aの頂部71cと仕切板71bを貫通して、筒部71a内に挿入される。回転軸72は、外周にねじ溝を備えており、先端側と基端側の頂部71cと仕切板71bを挟む位置に第一ナット77と第二ナット78が螺合される。そして、回転軸72の先端側から螺合された第一ナット77を仕切板71bに当接するまで締め付けた状態で、回転軸72の基端側から螺合された第二ナット78を締め付けると、第一ナット77と第二ナット78によって筒部71aの頂部71cと仕切板71bが挟持される。これにより、回転軸72の周方向の回転がロックされる。なお、筒部71aには、図示しない切欠きが設けられており、外部から第一ナット77の締め付け操作が可能となっている。つまり、本実施の形態では、ロック機構は、仕切板71b、頂部71c、第一ナット77、第二ナット78によって構成されている。なお、仕切板71bを省略して第一ナット77と第二ナット78で頂部71cを挟持してもよいが、仕切板71bを設けると、回転軸72を水平姿勢で安定的に支持できる。
【0057】
つづいて、ストッパ70の操作方法について説明する。まず、作業者は、回転軸72を回転させ、摩擦材75を球形タンクTの内壁の任意の位置に向けた状態で、第二ナット78を締め付けて回転軸72の周方向の回転をロックする。次に、作業者は、操作部76を握って螺子軸74を周方向に回転させ、摩擦材75が球形タンクTの内壁に当接するまで螺子軸74を球形タンクTの内壁側に向けて移動させる。すると、摩擦材75が球形タンクTの内壁に押し付けられるので、摩擦材75と球形タンクTの間に摩擦が生じて、柱体2の回転が阻止される。ただし、本実施の形態のストッパ70の構成は、一例であって、上記構成には限定されない。
【0058】
また、図示しないが、各足場部材3には、下段の足場部材3に向けて開口する開口部(図示せず)が設けられている。そして、図1に示すように、上下に対向する足場部材3,3間には、上記開口部を通じて上下の足場部材3,3間を移動可能な昇降梯子40が架け渡されている。
【0059】
また、詳細には説明しないが、図1に示すように、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、球形タンクTの底部から1段目の足場部材3上へ作業者が移動するための梯子50を備える。この梯子50は、球形タンクTの底部から2段目の足場部材3の水平梁11に掛けられている。
【0060】
つづいて、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1の組み立て方法について説明する。まず、球形タンクTの上端に、上側開口部T1を通じて球形タンクT内の頂部にワイヤーを繰り出し及び巻き取り可能な図示しないウィンチを設置する。次に、ワイヤーの先端を球形タンクTの底部まで下した状態で、ワイヤーの先端に上部サポート4を連結し、上部サポート4を吊持する。さらに、当該ウィンチでワイヤーを巻き上げながら、上部サポート4に柱体2、水平梁11、垂直材7、斜材8を組み付けていく。そして、上部サポート4が上側開口部T1まで吊り上げられたところで、上部サポート4を球形タンクTの上側開口部T1に連結する。その後、柱体2の下端に下部サポート5を連結し、下部サポート5を球形タンクTの底部に固定する。
【0061】
次に足場部材3を下段から順に組み立てる。まず、最下段である1段目については、作業者は、球形タンクTの底部上から、水平梁11にビーム材9を取付け、ビーム材9,9間に足場板19を架け渡していく。その後、ビーム材9に手摺枠6とストッパ70を設置する。
【0062】
1段目の足場部材3の上段である2段目の足場部材3については、作業者は、図8に示すように、下段である1段目の足場部材3上から、支柱ブラケット90の一つに一方の縦支柱60を保持させた状態のビーム材9を上段の水平梁11に取付ける。次に、作業者は、図9に示すように、下段の足場部材3上から、上側のブラケット64を介して手摺本体62の上桟62aの一端側が連結された他方の縦支柱61を治具Jを使って持ち上げて、手摺本体62の上桟62aの他端側を一方の縦支柱61のフック63に引っ掛ける。なお、詳細には説明しないが、本実施の形態の治具Jは、各縦支柱60,61に形成された支持孔60c(61c)に挿入可能なピン部(図示せず)を有し、支持孔60c(61c)にピン部を挿入することで、縦支柱60(61)を支持できるようになっている。ただし、治具Jは、縦支柱60(61)を支持できるようになっていればよく、上記構成には限定されない。
【0063】
その後、作業者は、他方の縦支柱61を支柱ブラケット90の一つに取付ける。これにより、上段の足場部材3に手摺枠6が設置される。この作業を足場部材3に設置する手摺枠6の数だけ繰り返す。
【0064】
この際、フック63の上桟62aの支持位置と上側のブラケット64の上桟62aの保持位置を調整することで、手摺本体62が一対の縦支柱60,61の間から左右方向に突出する長さを調整できる。これにより、球形タンク内の足場装置1は、隣り合う手摺枠6,6の手摺本体62,62間に生じる隙間を小さくしつつ、手摺枠6を足場部材3の先端側まで設置できる。したがって、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1では、足場部材3上に手摺枠6が設置されない場所ができないようになっている。
【0065】
また、この際、手摺本体62は、上側のブラケット64のみで保持されており、下側のブラケット68には保持されていない。このようにすると、他方の縦支柱61を持ち上げた際に、手摺本体62が、図9に示すように、上側のブラケット64を支点にして斜めに傾くため、フック63に手摺本体62を引っ掛けやすくなっている。また、前述したように、一方の縦支柱60の保持金具65は、一方の縦支柱60に対して軸方向に移動可能に連結されており、自然状態では、フックから遠ざかるようになっている。これにより、手摺本体62の上桟62aをフック63に引っ掛ける際に、手摺本体62の下桟62bが保持金具65に干渉しないようになっている。
【0066】
次に、作業者は、下段の足場部材3上から、上段のビーム材9,9間に足場板19を架け渡す。最後に、作業者は、上段の足場部材3上から、手摺本体62の下桟62bの一端側を下側のブラケット68を介して他方の縦支柱61に連結するとともに、手摺本体62の下桟62bの他端側を保持金具65を介して一方の縦支柱60に連結する。これにより、手摺本体62が一対の縦支柱60,61により強固に固定される。また、3段目以降の足場部材3は、上記作業を繰り返すことで、組み立てられる。
【0067】
この方法によると、作業者は、2段目以降の足場部材3上では、常に手摺枠6が設置された状態で作業ができるため、安全に足場部材の組み立て作業をすることができる。
【0068】
前述したように、本実施の形態に係る球形タンク内の足場装置1は、球形タンクTの内部に球形タンクTの上下方向の中心線に沿って配置されるとともに軸回りに回転可能に支持された柱体2と、柱体2から球形タンクTの内壁に向けて水平に延びるとともに柱体2の軸方向に沿って上下に所定の間隔で配置される複数の足場部材3と、足場部材3の延長方向に沿って並べて取付けられる複数の手摺枠6とを備え、手摺枠6は、足場部材3から足場部材3の延長方向に沿って所定の間隔で起立する一対の縦支柱60,61と、一対の縦支柱60,61間に架け渡される手摺本体62とを有し、一対の縦支柱60,61のいずれか一方の縦支柱60は、手摺本体62の任意の位置を支持可能なフック63を有し、一対の縦支柱60,61のいずれか他方の縦支柱61は、手摺本体62の任意の位置を保持可能なブラケット64を有している。
【0069】
この構成によると、フック63は、手摺本体62の任意の位置を支持でき、ブラケット64は、手摺本体62の任意の位置を保持できるようになっているため、手摺本体62の取付け位置を任意の位置に設定できる。これにより、手摺本体62における、一対の縦支柱60,61の間から左右方向に突出する長さを調整できる。つまり、縦支柱60,61に対する手摺本体62の左右位置を調整できる。そのため、隣り合う手摺枠6,6の手摺本体62,62間に生じる隙間を小さくしつつ、手摺枠6を足場部材3の先端側まで設置できる。したがって、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1では、足場部材3の足場板19が設置されている個所には常に手摺枠6を設置できるようになっている。すなわち、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、手摺枠6を先行手摺方式で足場部材3に取付けても、足場部材3の足場板19が設置されている個所には常に手摺枠6を設置できる。
【0070】
以上より、本実施の形態では、手摺枠6を先行手摺方式で足場部材3に取付けることができるので、球形タンク内の足場装置1の組み立て作業時における作業者の安全性が向上する。
【0071】
また、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、手摺本体62は、上下に配置される上桟62aと下桟62bと、上桟62a及び下桟62bの両端部をそれぞれ接続する左桟62c及び右桟62dを有する矩形枠状であって、一方の縦支柱60は、手摺本体62の上桟62aを支持するフック63と、手摺本体62の下桟62bを任意の位置で保持可能な保持金具65を有している。
【0072】
この構成によると、手摺本体62が、上桟62aと下桟62bを備える二段手摺となるため、安全性が向上する。さらに、手摺本体62が、他方の縦支柱61だけでなく、一方の縦支柱60にも保持されるので、手摺本体62の浮き上がりも防止される。
【0073】
なお、本実施の形態では、フック63が上桟62aを支持し、保持金具65が下桟62bを保持しているが、フック63が下桟62bを支持し、保持金具65が上桟62aを保持するようにしてもよい。また、本実施の形態では、手摺本体62は、矩形枠状に形成されているが、これに限られず、例えば、棒状に形成されてもよい。手摺本体62を棒状とした場合には、手摺本体62の下桟62bを保持していた保持金具65と下側のブラケット68を省略することができる。
【0074】
また、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、足場部材3は、柱体2から球形タンクTの内壁に向けて水平に延びる一対の水平梁11,11と、各水平梁11の延長方向で任意の位置にそれぞれ取付けられ水平梁11の延長方向に沿って延びるビーム材9と、対向するビーム材9,9間に架け渡される足場板19とを有する。
【0075】
この構成によると、ビーム材9の水平梁11に対する取付位置を調整することで、ビーム材9の水平梁11から球形タンクTの内壁側に突出する長さを調整できるため、球形タンクTの内壁の至近まで足場部材3を延長できる。
【0076】
また、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1では、ビーム材9は、ビーム材9の延長方向に沿って所定の間隔で3つ以上配置され縦支柱60,61を保持可能な支柱ブラケット90を有している。この構成によると、一対の縦支柱60,61間の距離を調整できるので、球形タンクTの内壁までの距離に合わせて、任意の幅の手摺本体62を選択できる。ただし、各手摺枠6の手摺本体62の幅がすべて一定である場合には、支柱ブラケット90は、ビーム材9に対して少なくとも2つ設けられていればよい。
【0077】
また、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1は、少なくとも一つの足場部材3に設けられ、球形タンクTの内壁に対して遠近可能であって、球形タンクTの内壁に当接した際に、柱体2の回転を阻止するストッパ70を備えている。
【0078】
この構成によると、柱体2を回転させて、足場部材3を球形タンクTの内壁の任意の位置に対向させてから、柱体2の回転を止めることで、足場部材3を任意の位置で停止させることができる。なお、本実施の形態では、ストッパ70は、1段目の足場部材3に設けられているが、2段目以降の足場部材3に設けられてもよい。ただし、1段目の足場部材3に設けた方が、ストッパ70を球形タンクTの内壁に対して遠近させる操作を、球形タンクTの底部上から行うことができるので、作業者の落下の心配がなく、安全に操作を行うことができる。
【0079】
また、本実施の形態の球形タンク内の足場装置1の組み立て方法は、下段の足場部材3上から、支柱ブラケット90の一つに一方の縦支柱60を保持させた状態のビーム材9を上段の水平梁11に取付ける工程と、下段の足場部材3上から、ブラケット64を介して他方の縦支柱61に連結された手摺本体62を一方の縦支柱60のフック63に引っ掛ける工程と、下段の足場部材3上から、他方の縦支柱61を支柱ブラケット90の一つに取付ける工程とを含んでいる。
【0080】
この構成によると、手摺枠6の位置の調整を行いつつ手摺枠6を先行手摺方式で足場部材3に設置することができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0082】
1・・・球形タンク内の足場装置、2・・・柱体、3・・・足場部材、6・・・手摺枠、9・・・ビーム材、11・・・水平梁、19・・・足場板、60,61・・・縦支柱、62・・・手摺本体、62a・・・上桟、62b・・・下桟、62c・・・左桟、62d・・・右桟、63・・・フック、64・・・ブラケット、65・・・保持金具、70・・・ストッパ、90・・・支柱ブラケット、T・・・球形タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9