(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】無線通信装置およびスケジューリング方法
(51)【国際特許分類】
H04W 72/12 20230101AFI20241001BHJP
H04W 72/54 20230101ALI20241001BHJP
【FI】
H04W72/12
H04W72/54
(21)【出願番号】P 2020102510
(22)【出願日】2020-06-12
【審査請求日】2023-05-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、令和2年度における第5世代移動通信システムの更なる高度化に向けた研究開発の委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安木 慎
(72)【発明者】
【氏名】志水 紀之
(72)【発明者】
【氏名】野口 浩
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-282562(JP,A)
【文献】特開2008-199381(JP,A)
【文献】特開2012-195771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末を含む移動物体の位置および大きさを検知するセンシング部と、
前記各移動物体の位置に基づいて、前記各移動物体の移動経路を予測する経路予測部と、
前記各移動物体の予測移動経路と、前記各移動物体の大きさとに基づいて、通信エリアの通信品質分布を予測する通信品質予測部と、
前記通信品質分布に基づいて前記移動端末の予測移動経路における予測通信品質を取得し、前記予測通信品質に基づいて、前記移動端末の通信開始タイミングを決定する判定部と、
を備え、
前記判定部は、第1の通信エリアにおいて通信要求した前記移動端末の前記予測通信品質が、前記第1の通信エリアより高速の第2の通信エリアにおいて所定の品質を満たしている場合、前記移動端末が前記第2の通信エリアに進入するまで、前記移動端末の通信開始の待機を決定する、
無線通信装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記予測通信品質が、前記第2の通信エリアにおいて所定の品質を満たしていない場合、前記第1の通信エリアにおいて、前記移動端末の通信開始を決定する、
請求項
1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記経路予測部は、前記各移動物体の速度に基づいて、前記各移動物体の予測移動経路を補正する、
請求項1
又は2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信品質予測部は、前記通信エリア内の固定構造物に基づいて生成した第1の通信品質マップに、前記各移動物体によって生じる電波の遮蔽領域を重畳し、前記通信品質分布を示す第2の通信品質マップを生成する、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記通信品質予測部は、前記遮蔽領域の当該無線通信装置とは反対側にオフセット領域を加える、
請求項
4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記移動端末の通信開始タイミングより開始される送信期間が他の移動端末における前記送信期間と重複した場合に、前記送信期間が重複している端末数に基づいて前記移動端末のスループットを再計算し、再計算結果に基づいて前記通信開始タイミングの決定を行う、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記移動端末の通信開始タイミングより開始される送信期間が他の移動端末における前記送信期間と重複した場合に、前記送信期間が重複している各端末に対して無線リソースの再割り当てを行い、前記再割り当て結果を用いて前記移動端末のスループットを再計算し、再計算結果に基づいて前記通信開始タイミングの決定を行う、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記判定部は、前記予測通信品質の受信電力が最大となる時点を基準に、前記移動端末に無線リソースを割り当てる、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記移動端末の予測移動経路において、所定の閾値以下となる通信品質が含まれないように前記通信開始タイミングの決定を行う、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
無線通信装置のスケジューリング方法であって、
移動端末を含む移動物体の位置および大きさを検知し、
前記各移動物体の位置に基づいて、前記各移動物体の移動経路を予測し、
前記各移動物体の予測移動経路と、前記各移動物体の大きさとに基づいて、通信エリアの通信品質分布を予測し、
前記通信品質分布に基づいて前記移動端末の予測移動経路における予測通信品質を取得し、
前記予測通信品質に基づいて、前記移動端末の通信開始タイミングを決定
し、
第1の通信エリアにおいて通信要求した前記移動端末の前記予測通信品質が、前記第1の通信エリアより高速の第2の通信エリアにおいて所定の品質を満たしている場合、前記移動端末が前記第2の通信エリアに進入するまで、前記移動端末の通信開始の待機を決定する、
スケジューリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置およびスケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動通信端末間の競合に関して通信品質を向上させる狭域無線通信システムが開示されている。特許文献2には、要求通信品質を満たしつつ、有利な通信特性でデータを送信することができる移動システム通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-39552号公報
【文献】特開2019-140563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、無線通信距離が短いほど無線通信品質はよくなり、無線通信速度を速くできる。そのため、無線通信距離が短いほど、例えば、データのダウンロード等の通信が速く完了し、無線システムの電力効率が向上する。
【0005】
そこで、基地局等の無線通信装置は、無線システムの電力効率を向上させるため、例えば、移動端末が無線通信装置の通信エリアに入っても、直ちに移動端末との通信を開始せず、移動端末と無線通信装置との距離が所定値以下になるのを待って(高速通信エリアに入るのを待って)、移動端末との通信を開始してもよい。
【0006】
しかし、移動端末が高速通信エリアに入ったとき、例えば、大型車両等の移動物体が立ちはだかっていると、移動端末は無線通信装置と通信できない場合がある。
【0007】
本開示の非限定的な実施例は、無線システムの電力効率向上を可能にしつつ、移動端末と適切に無線通信できる無線通信装置の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施例に係る無線通信装置は、移動端末を含む移動物体の位置および大きさを検知するセンシング部と、前記各移動物体の位置に基づいて、前記各移動物体の移動経路を予測する経路予測部と、前記各移動物体の予測移動経路と、前記各移動物体の大きさとに基づいて、通信エリアの通信品質分布を予測する通信品質予測部と、前記通信品質分布に基づいて前記移動端末の予測移動経路における予測通信品質を取得し、前記予測通信品質に基づいて、前記移動端末の通信開始タイミングを決定する判定部と、を備え、前記判定部は、第1の通信エリアにおいて通信要求した前記移動端末の前記予測通信品質が、前記第1の通信エリアより高速の第2の通信エリアにおいて所定の品質を満たしている場合、前記移動端末が前記第2の通信エリアに進入するまで、前記移動端末の通信開始の待機を決定する。
【0009】
本開示の一実施例に係るスケジューリング方法は、無線通信装置のスケジューリング方法であって、移動端末を含む移動物体の位置および大きさを検知し、前記各移動物体の位置に基づいて、前記各移動物体の移動経路を予測し、前記各移動物体の予測移動経路と、前記各移動物体の大きさとに基づいて、通信エリアの通信品質分布を予測し、前記通信品質分布に基づいて前記移動端末の予測移動経路における予測通信品質を取得し、前記予測通信品質に基づいて、前記移動端末の通信開始タイミングを決定し、第1の通信エリアにおいて通信要求した前記移動端末の前記予測通信品質が、前記第1の通信エリアより高速の第2の通信エリアにおいて所定の品質を満たしている場合、前記移動端末が前記第2の通信エリアに進入するまで、前記移動端末の通信開始の待機を決定する。
【0010】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータープログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施例によれば、無線システムの電力効率向上を可能にしつつ、移動端末と適切に無線通信できる。
【0012】
本開示の一実施例における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1B】データのダウンロード時間と、低速通信エリアにおける通信速度との関係の一例を示した図
【
図2B】データのダウンロード時間と、高速通信エリアにおける通信速度との関係の一例を示した図
【
図4】本開示の実施の形態に係る無線システムの構成例を示した図
【
図10】無線システムの動作例を示したシーケンス図
【
図13】テキストデータにおける通信品質マップの一例を示した図
【
図15】スケジューリング部の動作例を示したフローチャート
【
図16A】移動端末の端末予測移動経路における通信品質の一例を示した図
【
図16B】
図16Aに示した通信品質の状態から5秒経過したときの通信品質の一例を示した図
【
図17A】再スケジューリング動作の一例を説明する図
【
図17B】再スケジューリング動作の一例を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を適宜参照して、本開示の実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0015】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0016】
図1Aは、無線システムの一例を説明する図である。
図1Aに示すように、無線システムは、基地局1と、移動端末2と、を有する。
図1Aにおける無線システムにおいては、所定の規格に準拠した無線通信が可能である。所定の規格には、例えば、5G(5th Generation)規格、LTE(Long Term Evolution)規格、またはIEEE802.11ad規格のWiGig(Wireless Gigabit)等がある。
【0017】
基地局1は、通信エリアを形成する。通信エリアは、
図1Aに示すように、例えば、高速通信エリアA1aと、高速通信エリアより低い通信速度の低速通信エリアA1bとに分けられてもよい。例えば、通信エリアは、所定値以上の通信速度を構成する高速通信エリアA1aと、所定値より小さい通信速度を構成する低速通信エリアA1bとに分けられてもよい。通信エリアは、さらに細分化されてもよく、例えば、MCS(Modulation and Coding Scheme)毎の通信速度で分けられてもよい。
【0018】
無線通信品質は、一般的に無線通信間の距離によって低下する。例えば、無線通信間の距離が長いほど、無線システムの通信品質は低下する。このため、低速通信エリアA1bは、高速通信エリアA1aの外側に形成される。
【0019】
図1Aに示すように、移動端末2は、基地局1の通信エリア(低速通信エリアA1b)に進入する。移動端末2は、低速通信エリアA1bに進入すると、データのダウンロードを開始する。別言すれば、基地局1は、移動端末2が低速通信エリアA1bに進入すると、データのダウンロードを許可する。
【0020】
図1Bは、データのダウンロード時間と、低速通信エリアA1bにおける通信速度との関係の一例を示した図である。低速通信エリアA1bは、高速通信エリアA1aより通信速度が遅い。そのため、
図1Bに示すように、移動端末2が、データのダウンロードを開始してから、ダウンロードを完了するまでの時間は、高速通信エリアA1aにおいてデータをダウンロードする場合より長くなる。
【0021】
データのダウンロード時間が長くなると、無線システムの電力効率が低下する。そこで、基地局1は、移動端末2が高速通信エリアA1aに進入するまで、データのダウンロードを待機させる。
【0022】
図2Aは、無線システムの一例を説明する図である。
図2Aにおいて、
図1Aと同じ構成要素には、同じ符号が付してある。
【0023】
図2Aに示すように、移動端末2は、基地局1の高速通信エリアA1aに進入する。移動端末2は、高速通信エリアA1aに進入すると、データのダウンロードを開始する。別言すれば、基地局1は、移動端末2が低速通信エリアA1bに進入しても、データのダウンロードを許可せず、移動端末2が高速通信エリアA1aに進入すると、データのダウンロードを許可する。
【0024】
図2Bは、データのダウンロード時間と、高速通信エリアA1aにおける通信速度との関係の一例を示した図である。高速通信エリアA1aは、低速通信エリアA1bより通信速度が速い。そのため、
図2Bに示すように、移動端末2が、データのダウンロードを開始してから、ダウンロードを完了するまでの時間は、低速通信エリアA1bにおいてデータをダウンロードする場合より短くなる。これにより、
図2Aの無線システムは、
図1Aの無線システムより電力効率が向上する。
【0025】
しかし、移動端末2は、高速通信エリアA1aに進入したとき、データをダウンロードできない場合がある。
【0026】
図3は、無線システムの一例を説明する図である。
図3において、
図1Aと同じ構成要素には、同じ符号が付してある。
【0027】
図3には、移動物体3が示してある。移動物体3は、電波の遮蔽物となる物体であり、例えば、大型車両である。基地局1から見て、移動物体3の背面側には、
図3に示すように、通信不可エリアA2が形成される。
【0028】
図3に示すように、移動端末2は、基地局1の高速通信エリアA1aに進入する。移動端末2が高速通信エリアA1aに進入したとき、通信不可エリアA2に位置していると、移動端末2は、データのダウンロードを開始できない。
【0029】
すなわち、移動端末2は、低速通信エリアA1bに進入したとき、データのダウンロードが可能であったにも関わらず、高速通信エリアA1aに進入するまで、データのダウンロードが待機させられる。そして、移動端末2は、高速通信エリアA1aに進入したときに、移動物体3が移動端末2の前方に立ちはだかることによって基地局1との通信が遮られると、結局、データのダウンロードができなくなってしまう。
【0030】
そこで、本開示の無線通信装置では、通信エリアの将来の通信品質(の分布)を、移動物体の移動を考慮し予測する。また、無線通信装置は、移動端末の将来の移動経路を予測する。そして、無線通信装置は、予測した将来の通信品質と、予測した移動端末の将来の移動経路とに基づいて、データ通信の開始時期を決定する。
【0031】
例えば、移動端末が通信エリア(低速通信エリア)に進入する。無線システムは、将来、高速通信エリアにおいて、移動端末の移動経路における通信品質が低下しないと予測した場合、移動端末が高速通信エリアに進入するまで、データ通信を待機する。
【0032】
一方、無線システムは、将来、高速通信エリアにおいて、移動端末の移動経路における通信品質が低下すると予測した場合、移動端末が低速通信エリアに位置しているときに、データ通信を開始する。
【0033】
これにより、本開示の無線システムでは、電力効率向上を可能にしつつ、移動端末は適切に無線通信を行うことができる。
【0034】
図4は、本開示の実施の形態に係る無線システムの構成例を示した図である。
図4に示すように、無線システムは、基地局10と、移動端末20と、サーバー30と、を有する。基地局10とサーバー30とは、例えば、インターネット等のネットワーク40を介して接続される。ネットワーク40は、有線により構成されてもよく、5Gを含むセルラー電波などによる無線ネットワークであってもよい。
【0035】
基地局10は、移動物体検出センサー11と、無線通信ユニット12と、制御ボード13と、アンテナ14と、を有する。
【0036】
移動物体検出センサー11は、例えば、車両といった移動物体を検出する。移動物体検出センサー11が検出する移動物体には、移動端末20を含む無線通信機能を有する移動物体および無線通信機能を有さない移動物体が含まれる。
【0037】
移動物体検出センサー11は、例えば、ミリ波レーダー、レーザーレーダー、ステレオカメラ等の物体測位センサーのいずれかであってもよい。また、移動物体検出センサー11は、2以上の物体測位センサーの組み合わせであってもよい。
【0038】
無線通信ユニット12は、アンテナ14を介して、移動端末20と無線通信する。例えば、無線通信ユニット12は、5Gといった無線通信規格に従って、移動端末20と無線通信する。無線通信ユニット12は、無線通信部または通信部と称されてもよい。
【0039】
制御ボード13は、基地局10全体を制御する。制御ボード13は、CPU(Central Processing Unit)13aと、メモリ13bと、を有する。制御ボード13は、制御部または制御ユニットと称されてもよい。
【0040】
CPU13aは、メモリ13bに記憶されているプログラムを実行し、所定の機能を実現する。
【0041】
メモリ13bには、CPU13aが実行するプログラムが記憶される。また、メモリ13bには、CPU13aが所定の機能を実現するための各種データが記憶される。
【0042】
サーバー30には、例えば、移動端末20に提供するコンテンツデータが記憶される。
【0043】
図5は、制御ボード13の機能ブロックの一例を示した図である。
図5に示すように、制御ボード13は、移動物体センシング部51と、移動物体経路予測部52と、通信品質予測部53と、スケジューリング部54と、を有する。
【0044】
移動物体センシング部51は、移動物体検出センサー11から出力されるセンサーデータに基づいて、移動物体センシングデータを生成する。移動物体センシングデータには、移動物体検出センサー11が検出した移動物体の位置情報が含まれる。
【0045】
移動物体経路予測部52は、移動物体センシング部51が生成した移動物体センシングデータに基づいて、移動物体の将来の移動経路を予測する。
【0046】
通信品質予測部53は、基地局10の通信エリアにおける将来の通信品質を予測する。例えば、通信品質予測部53は、基地局10の通信エリアにおける地図情報と、移動物体経路予測部52が予測した移動物体の将来の移動経路とに基づいて、基地局10の通信エリアの将来の通信品質を予測する。より具体的には、通信品質予測部53は、基地局10の通信エリアにおける建物等(固定構造物)の影響に基づく通信品質と、移動する移動物体の影響に基づく通信品質とに基づいて、基地局10の通信エリアの将来の通信品質を予測する。
【0047】
スケジューリング部54は、移動物体経路予測部52が予測した移動端末20の将来の移動経路(端末予測移動経路)と、通信品質予測部53が予測した基地局10の通信エリアにおける将来の通信品質とに基づいて、移動端末20との通信開始時期を決定する。
【0048】
例えば、スケジューリング部54は、移動端末20の端末予測移動経路における通信品質を、通信品質予測部53が予測した通信品質を参照して取得する。スケジューリング部54は、移動端末20の端末予測移動経路における通信品質(高速通信エリアにおける通信品質)が所定の閾値以上であれば、移動端末20が高速通信エリアに進入するまで、移動端末20との通信を待機する。一方、スケジューリング部54は、移動端末20の端末予測移動経路における通信品質が所定の閾値より低ければ、移動端末20との通信を開始する。
【0049】
図6は、サーバー30の機能ブロックの一例を示した図である。
図6に示すように、情報配信部61を有する。情報配信部61は、移動端末20の要求に応じて、コンテンツを移動端末20に送信する。
【0050】
図7、
図8、
図9、および
図10は、無線システムの動作例を示したシーケンス図である。
図7に示すS1~S8は、移動物体センシング処理を示す。無線システムは、移動物体センシング処理を定期的に繰り返し実行する。例えば、無線システムは、移動物体センシング処理を100msに1回実行する。
【0051】
移動物体センシング部51は、移動物体検出センサー11に対し、センサーデータを要求する(S1)。
【0052】
移動物体検出センサー11は、S1の要求に応じて、センサーデータ生成処理を実行する(S2)。
【0053】
[S2:センサーデータ生成処理]
移動物体検出センサー11は、基地局10周辺の移動物体のセンシングデータを生成する。センシングデータは、例えば、点群データであってもよい。点群データには、位置情報(X,Y,Z)と、センサーデバイスに関する情報とが含まれてもよい。
【0054】
例えば、移動物体検出センサー11がミリ波レーダーの場合、センサーデバイスに関する情報として、反射強度情報と、ドップラー速度情報とが含まれてもよい。また、移動物体検出センサー11がステレオカメラの場合、センサーデバイスに関する情報として、輝度情報が含まれてもよい。移動物体検出センサー11がミリ波レーダーの場合、センサーデバイスに関する情報として、レーザーレーダーの強度情報が含まれてもよい。
【0055】
図7のシーケンスの説明に戻る。移動物体検出センサー11は、生成したセンシングデータを、移動物体センシング部51に送信する(S3)。
【0056】
移動物体センシング部51は、S3にて送信されたセンシングデータに基づいて、移動物体検出処理を実行する(S4)。
【0057】
[S4:移動物体検出処理]
移動物体センシング部51は、S3にて送信されたセンシングデータに基づいて、移動物体センシングデータを生成する。移動物体センシングデータは、移動物体検出センサー11が検出した移動物体に関する情報である。移動物体センシングデータは、メモリ13bに記憶される。移動物体センシングデータには、例えば、下記の情報が含まれる。
【0058】
・移動物体のID(識別情報)
・通信端末フラグ
・MACアドレス
・最新情報(位置情報:X,Y、速度情報:vx,vy、加速度情報:ax,ay)
・過去情報(N個)
・移動物体の種別
・移動物体の大きさ
【0059】
移動物体のIDは、移動物体を識別する情報である。
【0060】
通信端末フラグおよびMACアドレスは、後述する移動端末同定処理(S8)において、移動物体センシングデータに含められる。
【0061】
最新情報は、最新(現在)の移動物体の位置、速度、および加速度の情報である。位置は、例えば、移動物体の重心等の代表座標であってもよい。
【0062】
過去情報は、過去の移動物体の位置、速度、および加速度の情報である。過去情報は、例えば、N個保存される。
【0063】
移動物体の種別は、移動物体の種類を示す。例えば、移動物体が大型車両であれば、移動物体の種別は、大型車両となる。移動物体が小型車両であれば、移動物体の種別は、小型車両となる。
【0064】
移動物体の大きさは、移動物体の高さ、長さ、および幅を示す。移動物体の大きさは、移動物体の高さ、長さ、および幅の少なくとも1以上であってもよい。
【0065】
移動物体センシング部51は、前回の移動物体センシング処理において取得したセンシングデータの位置情報と、今回の移動物体センシング処理において取得したセンシングデータの位置情報とに基づいて、移動物体の速度および加速度を算出する。移動物体センシング部51は、算出した速度および加速度と、今回の移動物体センシング処理において取得したセンシングデータの位置情報と、を最新情報として、移動物体センシングデータに含める。移動物体センシングデータの最新情報および過去情報は、移動物体のトラッキング情報と捉えてもよい。
【0066】
移動物体センシング部51は、移動物体検出センサー11から取得したセンサーデータに基づいて、移動物体の大きさを推定する。移動物体センシング部51は、推定した移動物体の大きさと、あらかじめ情報として保有している物体種別の大きさ(例えば、大型車、普通車、小型車、二輪車等の大きさ)とを照らし合わせ、移動物体の種別を推定する。移動物体センシング部51は、推定した移動物体の大きさと、移動物体の種別とを移動物体センシングデータに含める。
【0067】
移動物体センシング部51は、移動物体が人である場合、移動物体検出センサー11から取得したセンシングデータに基づいて、例えば、頭、体、および手足等の位置関係を推定してもよい。さらに、移動物体センシング部51は、推定した頭、体、および手足等の位置関係に基づいて、人の状態(走行、歩行、停止、しゃがんでいる、倒れている)を推定してもよい。移動物体センシング部51は、推定した頭、体、および手足等の位置関係と、人の状態とを移動物体センシングデータに含めてもよい。
【0068】
移動物体検出処理で生成された移動物体センシングデータは、例えば、道路空間における見通し外車両の衝突や危険回避などの安全確保に利用されてもよい。また、車両のトラフィック量が、移動物体センシングデータから算出されてもよい。車両のトラフィック量は、渋滞情報生成に利用されてもよい。
【0069】
図7のシーケンスの説明に戻る。移動物体センシング部51は、無線通信ユニット12に対し、移動端末の位置情報を要求する(S5)。
【0070】
無線通信ユニット12は、S5の移動端末の位置情報の要求に応じて、移動端末位置情報生成処理を実行する(S6)。
【0071】
[S6:移動端末位置情報生成処理]
無線通信ユニット12は、S5の要求に応じて、移動端末の位置情報と、移動端末を特定する特定情報とを関連付けた移動端末位置情報を生成する。
【0072】
移動端末の位置情報は、例えば、アンテナ14から移動端末までの距離を示すリンクディスタンス情報であってもよい。移動端末の位置情報は、例えば、アンテナ14から見た移動端末の角度を表すアンテナ14のビームフォーミング情報であってもよい。移動端末の位置情報は、移動端末のGPS(Global Positioning System)情報を移動端末から取得し、無線通信ユニット12のGPS情報と比較した相対位置情報であってもよい。
【0073】
移動端末の特定情報は、例えば、移動端末のMAC(Media Access Control)アドレスであってもよい。
【0074】
図7のシーケンスの説明に戻る。無線通信ユニット12は、S6にて生成した移動端末位置情報を、移動物体センシング部51に送信する(S7)。
【0075】
移動物体センシング部51は、S7にて送信された移動端末位置情報に基づいて、移動端末同定処理を実行する(S8)。
【0076】
[S8:移動端末同定処理]
移動物体センシング部51は、S4にて生成した移動物体センシングデータの中から、S7にて送信された移動端末位置情報の移動端末と相関の高い移動物体センシングデータを同定(推定)する。別言すれば、移動物体センシング部51は、S4にて生成した移動物体センシングデータの中から、基地局10と無線通信する移動端末の移動物体センシングデータを抽出する。
【0077】
移動物体センシング部51は、同定した移動物体センシングデータに、移動端末の特定情報(MACアドレス)を移動物体センシングデータに含める。また、移動物体センシング部51は、同定した移動物体センシングデータが、移動端末の移動物体センシングデータであることを示す通信端末フラグを、移動物体センシングデータに含める。
【0078】
なお、移動物体センシング部51は、S4にて生成した移動物体センシングデータの中から、移動端末の位置情報に最も近い最新情報(位置)を有する移動物体センシングデータを、移動端末の移動物体センシングデータと同定してもよい。
【0079】
また、移動物体センシング部51は、無線通信ユニット12から定期的に取得する移動端末の位置情報に基づいて、移動端末のトラッキング情報を生成してもよい。そして、移動物体センシング部51は、生成した移動端末のトラッキング情報と、移動物体センシングデータのトラッキング情報との相関に基づいて(例えば、相関係数の値で評価し)、移動端末の移動物体センシングデータを同定してもよい。例えば、移動物体センシング部51は、移動端末のトラッキング情報と、最も相関の高いトラッキング情報を有する移動物体センシングデータを、移動端末の移動物体センシングデータと同定してもよい。
【0080】
また、移動物体センシング部51は、移動端末と同定された移動物体センシングデータの位置情報の精度が向上するよう、移動物体検出センサー11を制御してもよい。例えば、移動物体検出センサー11がミリ波レーダーの場合、移動物体センシング部51は、角度方向の刻み幅を通常の1/2に制御してもよい。
【0081】
以上が移動物体センシング処理である。上記した通り、無線システムは、移動物体センシング処理を定期的に繰り返し実行する。
【0082】
図8のシーケンスについて説明する。移動端末20は、基地局10(無線通信ユニット12)に対し、データ(コンテンツデータ)のダウンロードを要求する(S9)。
【0083】
無線通信ユニット12は、S9のダウンロードの要求をスケジューリング部54に通知する(S10)。
【0084】
スケジューリング部54は、S10のダウンロードの要求に応じて、要求元位置情報を移動物体センシング部51に要求する(S11)。すなわち、スケジューリング部54は、ダウンロードを要求した移動端末の移動物体センシングデータを移動物体センシング部51に要求する。
【0085】
移動物体センシング部51は、S11の要求元位置情報の要求に応じて、要求元位置情報調査処理を実行する(S12)。
【0086】
[S12:要求元位置情報調査処理]
移動物体センシング部51は、移動物体センシングデータの中から、S9にてダウンロード要求した移動端末20の移動物体センシングデータを取得する。
【0087】
例えば、S9のダウンロード要求には、移動端末20のMACアドレスが含まれる。スケジューリング部54は、S11の要求元位置情報要求において、S9にて送信されたMACアドレスを移動物体センシング部51に送信する。移動物体センシング部51は、スケジューリング部54から送信されたMACアドレスに基づいて、ダウンロード要求した移動端末20の移動物体センシングデータを取得する。
【0088】
図8のシーケンスの説明に戻る。移動物体センシング部51は、S12にて取得した移動端末20の移動物体センシングデータ(要求元位置情報)をスケジューリング部54に送信する(S13)。
【0089】
スケジューリング部54は、S13にて送信された移動物体センシングデータを受信すると、ダウンロード要求した移動端末20と即時に通信を開始するか否かを判断する即時通信判断処理を実行する(S14)。
【0090】
[S14:即時通信判断処理]
スケジューリング部54は、S13にて送信された移動端末20の移動物体センシングデータに含まれる最新情報に基づいて、基地局10(アンテナ14)と移動端末20との距離を算出する。スケジューリング部54は、算出した基地局10と移動端末20との距離に基づいて、移動端末20との即時通信の可否を判断する。
【0091】
例えば、スケジューリング部54は、基地局10と移動端末20との距離が所定の閾値より短い場合(例えば、移動端末20が高速通信エリア内に位置している場合)、移動端末20との即時通信を判断する。スケジューリング部54は、移動端末20との即時通信を判断した場合、処理をS15に移行する。一方、スケジューリング部54は、基地局10と移動端末20との距離が所定の閾値以上の場合(例えば、移動端末20が低速通信エリア内に位置している場合)、処理を
図9のS16に移行する。
【0092】
なお、スケジューリング部54は、基地局10と移動端末20との距離の他に、移動端末20からの通信要求がストリーミング通信、IP(Internet Protocol)電話、またはテレビ電話等のリアルタイム通信要求である場合にも、移動端末20との即時通信を判断する。スケジューリング部54は、通信プロトコルに基づいて、リアルタイム通信要求か否かを判定できる。
【0093】
図8のシーケンスの説明に戻る。スケジューリング部54は、S14の即時通信判断処理にて、移動端末20と即時通信すると判断した場合、コンテンツ送信処理を実行する(S15)。
【0094】
例えば、スケジューリング部54は、移動端末20がダウンロード要求したコンテンツデータを、サーバー30から取得する。スケジューリング部54は、取得したコンテンツデータを、無線通信ユニット12を介して、移動端末20に送信する。
【0095】
スケジューリング部54は、S14の即時通信判断処理にて、移動端末20と即時通信しないと判断した場合、通信品質予測指示を通信品質予測部53に送信する(
図9のS16)。
【0096】
通信品質予測部53は、S16にて送信された通信品質予測指示に応じて、移動物体経路予測部52に対し、移動物体経路予測指示を送信する(S17)。
【0097】
移動物体経路予測部52は、S17にて送信された移動物体経路予測指示に応じて、移動物体センシング部51に対し、移動物体センシングデータを要求する(S18)。
【0098】
移動物体センシング部51は、S18の移動物体センシングデータ要求に応じて、移動物体センシングデータ提供処理を実行する(S19)。例えば、移動物体センシング部51は、移動物体センシングデータの全てを提供する(移動物体経路予測部52が参照できるようにする)。
【0099】
移動物体経路予測部52は、S19にて提供された移動物体センシングデータに基づいて、移動物体経路予測処理を実行する(S20)。
【0100】
[S20:移動物体経路予測処理]
移動物体経路予測部52は、移動物体センシング部51にて提供される移動物体センシングデータに基づいて、各移動物体の将来の移動経路を予測する。例えば、移動物体経路予測部52は、移動物体センシングデータに含まれる移動物体の最新情報および過去情報(トラッキング情報)から、各移動物体の将来の位置を推定し、移動経路を予測する。
【0101】
移動物体経路予測部52は、例えば、1秒刻みで各移動物体の将来の位置を推定し、移動経路を予測してもよい。より具体的には、移動物体経路予測部52は、1秒先、2秒先、…の位置を10秒程度先まで推定し、移動経路を予測してもよい。
【0102】
なお、移動物体経路予測部52は、予測した移動物体の移動経路(移動物体経路予測情報)に、移動物体の大きさを含めてもよい。また、移動物体経路予測部52は、移動物体の種別および移動物体の状態情報も移動物体経路予測情報に含めてもよい。
【0103】
また、移動物体経路予測部52は、移動物体の現在の位置と過去の位置とから得られる速度の大きさ、方向、および加速度から、移動物体の将来位置を推定してもよい。
【0104】
また、移動物体経路予測部52は、あらかじめ地図情報を取得し、予測した移動物体の移動経路が地図のルート上に乗るよう、予測した移動経路を補正してもよい。
【0105】
また、移動物体経路予測部52は、例えば、予測した移動経路範囲に信号機が存在し、その信号機情報が取得できる場合、取得した信号機情報を踏まえて、移動物体の減速や停止イベントを予測してもよい。そして、移動物体経路予測部52は、予測した移動物体の減速や停止イベントに基づいて、予測した移動物体の移動経路を補正してもよい。
【0106】
また、移動物体経路予測部52は、機械学習した判別器またはネットワークを利用して、各移動物体の将来の移動経路を推定してもよい。判別機またはネットワークは、上記のすべての情報、または、その一部を特徴量として機械学習してもよい。
【0107】
また、移動物体経路予測部52は、経路予測範囲に存在する各移動物体の相互位置を加味して、移動経路を推定(補正)してもよい。例えば、移動物体経路予測部52は、“移動物体が接近する場合は減速する”などのルールに基づいて、将来の移動経路を補正してもよい。
【0108】
図11Aは、予測した移動経路の補正を説明する図である。
図11Aに示すように、車両(移動物体)の相対速度ごとに、車両間の安全距離があらかじめ定義されてもよい。
【0109】
移動物体経路予測部52は、移動物体センシングデータに基づいて、車両の相対速度と、車両間の距離とを算出し、算出した車両間の距離と、算出した相対速度に対応する安全距離とに基づいて、車両の移動経路を補正してもよい。例えば、2台の車両が或る相対速度において走行する。その2台の車両が、安全距離より短い距離で走行した場合、後続の車両は速度を低下すると予測される。この場合、移動物体経路予測部52は、後続の車両の速度を低く補正する。
【0110】
また、移動物体経路予測部52は、次の式(1)に基づいて、安全相対速度v_safeを算出してもよい。
【0111】
v_safe=a*(前方車両との距離r_diff-r_min) …(1)
【0112】
なお、式(1)の「a」は、所定の係数である。「r_min」は、相対速度が0のときの安全距離である。r_diff<r_minの場合、v_safe=0である。
【0113】
移動物体経路予測部52は、算出した安全相対速度に基づいて、車両の移動経路を補正してもよい。例えば、2台の車両の相対速度が、安全相対速度を超えていた場合、後続の車両は速度を低下すると予測される。この場合、移動物体経路予測部52は、後続の車両の速度を低く補正する。
【0114】
図11Bは、予測した移動経路の補正を説明する図である。移動物体経路予測部52は、移動物体の速度ベクトルから、移動物体の存在領域と、回避判断領域とを生成してもよい。例えば、
図11Bの破線X1aは、移動物体71の存在領域を示す。破線X1bは、移動物体71の回避判断領域を示す。破線X2aは、移動物体72の存在領域を示す。破線X2bは、移動物体72の回避判断領域を示す。
【0115】
移動物体経路予測部52は、生成した移動物体の回避判断領域が重なる場合、移動物体の移動経路を補正する。例えば、
図11Bの例の場合、移動物体71は、移動物体72との衝突を回避するため、速度を低下すると予測される。この場合、移動物体経路予測部52は、移動物体71の速度を低く補正する。または、移動物体71は、移動物体72との衝突を回避するため、移動方向を変更すると予測される。この場合、移動物体経路予測部52は、移動物体71,72のトラッキング情報に基づいて、移動物体71の方向を変更する。すなわち、移動物体経路予測部52は、移動物体の速度(速さと方向)に基づいて、将来の移動経路を補正してもよい。
【0116】
図9のシーケンスの説明に戻る。移動物体経路予測部52は、S20にて予測した移動物体の将来の移動経路(移動物体経路予測情報)を通信品質予測部53に送信する(S21)。
【0117】
通信品質予測部53は、S21にて送信された移動物体経路予測情報に基づいて、通信品質予測処理を実行する(S22)。
【0118】
[S22:通信品質予測処理]
通信品質予測部53は、S21にて送信された移動物体経路予測情報に基づいて、基地局10の通信エリアにおける将来の通信品質の分布を予測した、通信品質マップを生成する。
【0119】
例えば、通信品質予測部53は、基地局10周辺の地図情報(建物等の固定構造物の形状等の情報)を用いて、基地局10が送信する電波の通信品質を示す基本通信品質マップをあらかじめ生成する。通信品質予測部53は、あらかじめ生成した基準通信品質マップを、S21にて送信された移動物体経路予測情報から得られる1秒後、2秒後、…、N秒後の移動物体の位置に基づいて補正し、通信品質マップを生成する。
【0120】
なお、通信品質予測部53は、基本通信品質マップを補正するとき、1秒刻みで電波の伝搬シミュレーションを計算しなくてもよい。通信品質予測部53は、移動物体の位置と大きさとに基づいて、電波の遮蔽領域(電波が遮蔽される領域)を算出し、算出した遮蔽領域を基本通信品質マップに重ね合わせて通信品質マップを生成してもよい。これにより、通信品質予測部53は、通信品質予測に関する計算量を削減する。上記では、通信品質予測部53は、1秒刻みでN秒後までの通信品質マップを生成したがこれに限られない。
【0121】
また、通信品質予測部53は、移動物体検出センサー11のデバイス特性を考慮して通信品質マップを生成してもよい。例えば、ミリ波レーダーは、測距性能は高いが、方位方向の誤差が比較的大きい。そこで、移動物体検出センサー11がミリ波レーダーの場合、通信品質予測部53は、移動物体の位置と大きさとから推定した遮蔽領域に対し、移動物体検出センサー11から見たときの方位方向に尤度を付与して基本通信品質マップを補正してもよい。また、ステレオカメラは、方位方向の精度は高いが、遠方の測距性能が比較的低い。そこで、移動物体検出センサー11がステレオカメラの場合、通信品質予測部53は、移動物体検出センサー11から見たときの距離方向に尤度を付与して基本通信品質マップを補正してもよい。
【0122】
また、通信品質予測部53は、例えば、路面上の通信品質を予測してもよいし、高さ別に通信品質予測を行ってもよい。この場合、通信品質予測部53は、アンテナ14の位置制御や移動端末20のアンテナの高さ制御を行って通信品質を予測してもよい。
【0123】
また、遮蔽領域を形成する移動物体の予測位置の誤差が、基地局10側に生じた場合、通信品質予測部53は、実際には遮蔽領域であっても、遮蔽領域でない(通信可能領域)と捉える。そこで、通信品質予測部53は、遮蔽領域の基地局10(アンテナ14)とは反対側に、オフセット領域を加えてもよい。これにより、通信品質予測部53は、移動物体検出センサー11が検出した移動物体の測位結果において、アンテナ14側に誤差が含まれる場合でも、本来の通信不可能領域を通信可能領域とみなすことを防ぐ。
【0124】
また、通信品質予測部53は、機械学習した判別器またはネットワークを利用して、通信品質マップを生成してもよい。判別機またはネットワークは、移動端末および移動物体の位置、大きさ、および移動速度等を特徴量として機械学習してもよい。
【0125】
図12Aは、基本通信品質マップの一例を示した図である。
図12Bは、通信品質マップの一例を示した図である。
図12Aおよび
図12Bに示す白丸は、基地局10の位置を示す。
図12Aおよび
図12Bに示す破線で囲まれるエリアは、通信品質が一定以上の領域であり、高速通信エリアを示す。
【0126】
上記したように、通信品質予測部53は、移動物体の位置と大きさとに基づいて、電波の遮蔽領域を算出してもよい。そして、通信品質予測部53は、あらかじめ生成した
図12Aに示す基本通信品質マップに、算出した遮蔽領域を重畳し、
図12Bに示す通信品質マップを生成してもよい。
図12Bに示す黒い長方形は、遮蔽領域を示す。
【0127】
図13は、テキストデータにおける通信品質マップの一例を示した図である。
図13に示すX,Y,Zは、基地局10の通信エリア内の位置(座標)を示す。Powerは、位置X,Y,ZにおけるRSSI(Received Signal Strength Indication)を示す。基地局10は、テキストデータの通信品質マップをメモリ13bに記憶してもよい。
【0128】
図14は、遮蔽領域の算出の一例を説明する図である。
図14には、移動物体A11が示してある。移動物体A11の高さは「h」である。移動物体A11の長さは「d」である。アンテナ14(基地局10)から移動物体A11までの距離は「L」である。
【0129】
図14に示す「hTx」は、アンテナ14の高さを示す。「hrx」は、移動端末のアンテナの高さを示す。アンテナ14から見て、移動物体A11の影となる部分の長さ、すなわち、遮蔽領域の長さ「L’」は、次の式(2)で示される。
【0130】
L’={(h-hrx)*(L+d)}/(hTx-h) …(2)
【0131】
遮蔽領域の幅は、移動物体A11の幅とする。通信品質予測部53は、式(2)を用いて算出した遮蔽領域の長さと、移動物体A11の幅とに基づいて、基本通信品質マップに長方形状の遮蔽領域を重畳し、通信品質マップを生成する。
【0132】
通信品質予測部53は、上記したように、遮蔽領域のアンテナ14とは反対側に、オフセット領域を加えてもよい。例えば、通信品質予測部53は、
図14の両矢印A12に示すように、遮蔽領域のアンテナ14とは反対側にオフセット領域を加えてもよい。
【0133】
例えば、移動物体検出センサー11が検出する移動物体の位置には、誤差が含まれる場合がある。例えば、移動物体A11は、実際、
図14の矢印A13に示す位置に存在しているにも関わらず、移動物体検出センサー11は、
図14の矢印A14に示す位置において移動物体A11を検出する場合がある。すなわち、移動物体検出センサー11は、誤って、実際の位置より基地局10側において移動物体A11を検出する場合がある。この場合、移動端末は、
図14の両矢印A12に示す領域では、基地局10と通信できない。そこで、通信品質予測部53は、本来の通信不可能領域を通信可能領域とみなすことを防ぐために、遮蔽領域の長さにオフセットを加える。
【0134】
図10のシーケンスの説明に戻る。通信品質予測部53は、S22にて生成した通信品質マップと、ダウンロード要求した移動端末20の予測移動経路である端末予測移動経路とを含む通信品質予測情報を、スケジューリング部54に送信する(S23)。なお、端末予測移動経路は、S20にて生成される。
【0135】
スケジューリング部54は、S23にて送信された通信品質予測情報を受信すると、サーバー30に対し、S9にて移動端末20がダウンロード要求したコンテンツのサイズ情報を要求する(S24)。
【0136】
サーバー30の情報配信部61は、S24のコンテンツサイズ情報の要求に応じて、コンテンツサイズ情報をスケジューリング部54に送信する(S25)。
【0137】
スケジューリング部54は、S25にて送信されたコンテンツサイズ情報を受信すると、スケジューリング生成処理を実行する(S26)。
【0138】
[S26:スケジューリング生成処理]
スケジューリング部54は、移動端末20が要求したコンテンツデータのサイズと、高速通信エリアのビットレートとから、移動端末20へのコンテンツデータの送信時間を算出する。
【0139】
スケジューリング部54は、送信時間を算出すると、通信品質予測情報を参照し、移動端末20が高速通信エリアに到達した時刻から、算出した送信時間が経過するまで、移動端末20の端末予測移動経路における通信品質が良好な状態を保ち続けているか否かを判定する。例えば、スケジューリング部54は、通信品質マップを参照し、移動端末20の端末予測移動経路における通信品質が、所定の閾値以上を保ち続けているか否かを判定する。
【0140】
スケジューリング部54は、移動端末20の通信品質が良好な状態を保ち続けている場合、移動端末20へのコンテンツデータの送信処理を、移動端末20が高速通信エリアに到達する時間まで待機する。移動端末20が高速通信エリアに到達する時間は、移動端末20の端末予測移動経路から算出されてもよい。また、移動端末20が高速通信エリアに到達する時間は、移動端末20の予測された通信品質が所定値以上になった場合、移動端末20は高速通信エリアに到達したと判断できるため、移動端末20の予測された通信品質から算出されてもよい。
【0141】
一方、スケジューリング部54は、移動端末20の通信品質が良好な状態を保ち続けていない場合、移動端末20へのコンテンツデータの送信処理を開始する(コンテンツデータの送信処理を待機しないで通信処理を開始する)。
【0142】
なお、スケジューリング部54は、移動端末20がダウンロード要求したコンテンツデータのサイズが小さく、ビットレートに関わらずコンテンツデータの送信が即座(例えば、一定時間内)に完了する場合も、コンテンツデータの送信処理を待機しなくてもよい。
【0143】
また、スケジューリング部54は、通信品質予測情報をもとに、SINR(周辺セル干渉を考慮した受信信号電力対干渉および雑音電力比)が高い時刻順に、当該移動端末20をスケジューリングしてもよい。LTEやNR(New Radio)等、ユーザ多重が可能なシステムにおいては、ユーザ間の切り替えに基づくオーバヘッドがないためこのような割当が有効である。
【0144】
また、スケジューリング部54は、通信品質予測情報をもとに、一定区間の平均SINRが高い時刻区間順に、当該移動端末20をスケジューリングしてもよい。WiGig等、ユーザ間で時分割に送信するシステムにおいては、送受信宛てのユーザ切り替え時のオーバヘッドが高いため、ある程度連続した時間で送信スケジューリングを行うことが有効である。
【0145】
また、スケジューリング部54は、通信品質予測情報または他の移動端末のスケジューリング状況をもとに、新たな移動端末に対してコンテンツデータの送信に必要な時間が確保できないと判断した場合、他の無線システム(LTEやNR)へオフロードするよう移動端末およびネットワークに指示してもよい。予測情報をもとに迅速にオフロード処理を行うことで、コンテンツデータの送受信を確実に行うことができる。
【0146】
図15は、スケジューリング部54の動作例を示したフローチャートである。スケジューリング部54は、移動端末20の端末予測移動経路において、所定の閾値(接続断閾値Th0)以下となる通信品質(RSSI)が含まれる場合、そのRSSI以降において、移動端末20に無線リソースを割り当てないよう、移動端末20を無線リソースの割り当て候補から除外する(S50)。これは、接続断閾値以下のRSSIのタイミングをまたいでデータの送受信を行う場合、リンクの再接続時間が必要となり、ダウンロードが予定通り完了しない可能性があるためである。なお、無線リソースとは、時間に関するリソースまたは周波数帯域に関するリソースのいずれか一方または両方を指す。
【0147】
スケジューリング部54は、通信品質マップを参照し、移動端末20の端末予測移動経路において、RSSIが最大となるタイミング(時間)を取得する。スケジューリング部54は、取得した時間を変数Timeに格納する(S51)。
【0148】
スケジューリング部54は、変数Dataに残留データサイズを格納する(S52)。残留データサイズとは、例えば、移動端末20に送信する残りのコンテンツデータのサイズである。
【0149】
スケジューリング部54は、変数Dataが0より大きいか否かを判定する(S53)。すなわち、スケジューリング部54は、移動端末20に送信するコンテンツデータが残っているか否かを判定する。
【0150】
スケジューリング部54は、移動端末20に送信するコンテンツデータが残っていないと判定した場合(S53のN)、すなわち、コンテンツデータを全て移動端末20に送信した場合、フローチャートの処理は終了する。
【0151】
スケジューリング部54は、移動端末20に送信するコンテンツデータが残っていると判定した場合(S53のY)、変数Timeの時間(変数Timeの時間における無線リソース)に、コンテンツデータを送信する空きがあるか否かを判定する(S54)。
【0152】
スケジューリング部54が、変数Timeの時間に、コンテンツデータを送信する空きがないと判定した場合(S54のN)、フローチャートの処理はS57に移行する。
【0153】
スケジューリング部54は、変数Timeの時間に、コンテンツデータを送信する空きがあると判定した場合(S54のY)、コンテンツデータを変数Timeの時間に割り当てる(S55)。
【0154】
スケジューリング部54は、変数Dataから、S55にて割り当てたコンテンツデータのサイズを減算する(S56)。なお、割り当てられた時間において送信されるコンテンツデータサイズはTh(RSSI)と表される。これは、コンテンツデータサイズが割り当てられた時間のRSSIの大きさに基づいて決定されることを示す。
【0155】
スケジューリング部54は、変数Timeを減算する(S57)。例えば、スケジューリング部54は、通信品質マップが作成される秒刻みの時間(例えば、1秒)を、変数Timeから減算する。フローチャートの処理はS53に移行する。
【0156】
図16Aは、移動端末の端末予測移動経路における通信品質の一例を示した図である。
図16Aに示すように、移動端末UE#1の端末予測移動経路における通信品質は、1秒刻みで10秒先まで算出されている。移動端末UE#1の通信品質は、8秒後に最大となっている。
図15のS51で説明したように、スケジューリング部54は、RSSIが最大となるタイミング(
図16Aの例では8秒)を取得し、変数Timeに格納する。スケジューリング部54は、通信品質が最大となる時点を基準に、移動端末UE#1に無線リソースを割り当てる(
図16Aの例では、8秒から2秒さかのぼった6秒から、最大通信品質の8秒まで、移動端末UE#1に無線リソースを割り当てる)。
【0157】
なお、
図15のS50で説明したように、スケジューリング部54は、移動端末UE#1の端末予測移動経路において、接続断閾値以下となる通信品質が含まれる場合、その通信品質以降において、移動端末UE#1に無線リソースを割り当てないよう、移動端末UE#1を割り当て候補から除外する。別言すれば、スケジューリング部54は、移動端末の予測移動経路において、所定の閾値以下となる通信品質が含まれないように通信開始タイミングの決定を行う。
【0158】
スケジューリング部54は、
図15のS53-S57で説明したように、移動端末UE#1に送信するデータがなくなるまで、時間を減算する。
図16Aの例では、6秒まで減算している。別言すれば、スケジューリング部54は、6~8秒の3秒間の時間を、UE#1に割り当てている。そして、移動端末UE#1へのデータ送信は、3秒間の時間の割り当てで完了する。
【0159】
図16Bは、
図16Aに示した通信品質の状態から5秒経過したときの通信品質の一例を示した図である。5秒後の
図16Bでは、移動端末UE#2のデータ送信が発生している。移動端末UE#2の通信品質は、8秒後に最大となっている。
図16Aの説明と同様に、スケジューリング部54は、移動端末UE#2に対し、データを送信する時間(3秒間)を割り当てる。
【0160】
図10のシーケンスの説明に戻る。スケジューリング部54は、S26のスケジューリング生成処理にて、コンテンツデータの送信処理を待機すると判定した場合、通信スケジュール待ち処理を実行する(S27)。
【0161】
[S27:通信スケジュール待ち処理]
スケジューリング部54は、S26にて決定した待機時間(移動端末20が高速通信エリアに到達する時間まで)、ウェイト処理を実行する。
【0162】
なお、スケジューリング部54は、ウェイト処理中(例えば、ウェイト処理開始してから1秒後)、通信品質予測部53に対して、再度、通信品質予測処理を要求してもよい。スケジューリング部54は、新たに取得した通信品質予測情報に基づいて、新たなスケジューリングを実行してもよい。
【0163】
図10のシーケンスの説明に戻る。スケジューリング部54は、S26にて即時通信を判定した場合、または、S27にてウェイト処理を実行した後、サーバー30に対し、コンテンツデータを要求する(S28)。
【0164】
サーバー30の情報配信部61は、S28のコンテンツデータの要求に応じて、コンテンツデータをスケジューリング部54に送信する(S29)。
【0165】
スケジューリング部54は、S29にて送信されたコンテンツデータを受信し、無線通信ユニット12に送信する(S30)。
【0166】
無線通信ユニット12は、S30にて送信されたコンテンツデータを受信し、移動端末20に送信する(S31)。
【0167】
以上説明したように、移動物体センシング部51は、移動端末20を含む移動物体の位置および大きさを取得する。移動物体経路予測部52は、移動物体センシング部51が取得した位置に基づいて、移動物体の将来の移動経路を予測する。通信品質予測部53は、移動物体の将来の移動経路と、移動物体の大きさとに基づいて、通信エリアの将来の通信品質の分布を示す通信品質マップを生成する。スケジューリング部54は、通信品質マップを参照して、移動端末20の将来の移動経路における予測通信品質を取得し、取得した予測通信品質に基づいて、移動端末20の通信開始タイミングを決定する。
【0168】
これにより、基地局10は、無線システムの電力効率向上を可能にしつつ、移動端末と適切に無線通信できる。
【0169】
例えば、スケジューリング部54は、低速通信エリアにおいて通信要求した移動端末20の予測通信品質が、高速通信エリアにおいて所定の品質を満たしている場合、移動端末20が高速通信エリアに進入するまで、移動端末20の通信を待機させる。これにより、基地局10は、無線システムの電力効率を向上できる。
【0170】
また、スケジューリング部54は、移動端末20の予測通信品質が、高速通信エリアにおいて所定の品質を満たしていない場合、低速通信エリアにおいて、移動端末20の通信を開始させる。これにより、移動端末20は、高速通信エリアに進入するまで通信が待たされ、その後高速通信エリアに進入したにも関わらず、基地局10と通信できなくなるという状況を回避できる。
【0171】
なお、無線通信ユニット12が、移動物体を検知してもよい。例えば、無線通信ユニット12は、WiGig通信ユニットであってもよい。この場合、無線通信ユニット12は、WiGigのビームフォーミングトレーニングプロトコルを用いて、移動端末20の位置を把握できる。
【0172】
制御ボード13は、移動端末20から通信リクエストを受信するたびに、スケジューリング部54の処理を担うスレッドを起動する。そのため、スケジューリング部54は、複数の移動端末20から通信要求を受けた場合、それぞれ独立して送信タイミングを算出し、通信スケジュール待ち処理を実行する。起動されたスケジューリングスレッドが無線通信ユニット12の送信リソース数の上限に達した場合、その後の通信リクエストは待たされる。
【0173】
複数の移動端末20に対して、基地局10が同時に通信を実行した場合、各移動端末20のスループットは低下する。そこで、スケジューリング部54は、スケジューリング生成処理の後段処理として「複数スケジュール間調整処理」を実行し、複数の移動端末20のスケジュール間で重なりが無いか調整してもよい。スケジューリング部54は、スケジュールに重なりがある場合、各移動端末20のスループット低下を踏まえて、通信開始時間を早める制御を行ってもよい。
【0174】
移動端末20の移動物体センシングデータには、移動端末20の通信品質情報が含まれてもよい。例えば、無線通信ユニット12は、移動端末20との間のRSSIを取得する。移動物体センシング部51は、S8の移動端末同定処理において、移動端末20の移動物体センシングデータに、無線通信ユニット12が取得した通信品質情報を含めてもよい。移動物体センシング部51は、通信品質情報を含む移動物体センシングデータを複数フレームにわたって記憶してもよい。これにより、通信品質予測部53は、移動物体センシングデータに含まれる通信品質情報に基づいて、実環境にあった基本通信品質マップを生成できる。例えば、通信品質予測部53は、降雨や降雪、基地局10周辺の設置環境や設置状況の変化に対応した基本通信品質マップを生成できる。
【0175】
基地局10は、固定されてもよいし、移動してもよい。基地局10は、無線通信装置と称されてもよい。
【0176】
通信開始タイミングには、連続通信(送信)における通信開始タイミングが含まれてもよいし、間欠通信(送信)における通信開始タイミングが含まれてもよい。
【0177】
移動端末間で通信期間が重複した場合、スケジューリング部54は、再度スケジューリングを行ってもよい。
【0178】
図17Aおよび
図17Bは、再スケジューリング動作の一例を説明する図である。
図17Aの例では、移動端末UE#1をスケジューリングした後、移動端末UE#2をスケジューリングした結果、移動端末UE#1と、移動端末UE#2との送信期間が重複している。この場合、スケジューリング部54は、送信期間が重複した移動端末UE#1,UE#2に対し、再スケジューリングを行う。
【0179】
例えば、WiGigの場合、スケジューリング部54は、無線品質からスループットを算出する処理(例えば、
図15のS56)において、送信期間が重複している移動端末があれば、重複する移動端末数でスループット値の除算を行う。この場合、スケジューリング部54は、
図15のS56で説明した変数Dataの算出を、次の式(3)に基づいて算出してもよい。
【0180】
Data=Data-(Th(RSSI)/重複UE数) …(3)
【0181】
また、例えば、NRやLTEの場合、スケジューリング部54は、無線品質からスループットを算出する処理(例えば、
図15のS56)において、送信期間が重複している移動端末があれば、全移動端末に対し無線リソースの割り当てを再度行い、割当量と無線品質に応じたスループット値を算出した処理を行う。
【0182】
図17Bには、再スケジューリング後の様子が示してある。
図17Bでは、移動端末UE#1,UE#2の無線リソースの割り当て時間が、
図17Aに対し、長くなるよう変更されている。
【0183】
すなわち、スケジューリング部54は、移動端末の通信開始タイミングより開始される送信期間が、他の移動端末における送信期間と重複した場合に、送信期間が重複している端末数に基づいて移動端末のスループットを再計算し、再計算結果に基づいて通信開始タイミングの決定を行ってもよい。
【0184】
また、スケジューリング部54は、移動端末の通信開始タイミングより開始される送信期間が、他の移動端末における送信期間と重複した場合に、送信期間が重複している各端末に対して無線リソースの再割り当てを行い、再割り当て結果を用いて移動端末のスループットを再計算し、再計算結果に基づいて通信開始タイミングの決定を行ってもよい。
【0185】
上述の実施の形態においては、各構成要素に用いる「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
【0186】
以上、図面を参照しながら実施の形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかである。そのような変更例または修正例についても、本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、実施の形態における各構成要素は任意に組み合わされてよい。
【0187】
本開示はソフトウェア、ハードウェア、又は、ハードウェアと連携したソフトウェアで実現することが可能である。上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックは、部分的に又は全体的に、集積回路であるLSIとして実現され、上記実施の形態で説明した各プロセスは、部分的に又は全体的に、一つのLSI又はLSIの組み合わせによって制御されてもよい。LSIは個々のチップから構成されてもよいし、機能ブロックの一部または全てを含むように一つのチップから構成されてもよい。LSIはデータの入力と出力を備えてもよい。LSIは、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
【0188】
集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路、汎用プロセッサ又は専用プロセッサで実現してもよい。また、LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。本開示は、デジタル処理又はアナログ処理として実現されてもよい。
【0189】
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0190】
本開示は、通信機能を持つあらゆる種類の装置、デバイス、システム(通信装置と総称)において実施可能である。通信装置は無線送受信機(トランシーバー)と処理/制御回路を含んでもよい。無線送受信機は受信部と送信部、またはそれらを機能として、含んでもよい。無線送受信機(送信部、受信部)は、RF(Radio Frequency)モジュールと1または複数のアンテナを含んでもよい。RFモジュールは、増幅器、RF変調器/復調器、またはそれらに類するものを含んでもよい。通信装置の、非限定的な例としては、電話機(携帯電話、スマートフォン等)、タブレット、パーソナル・コンピューター(PC)(ラップトップ、デスクトップ、ノートブック等)、カメラ(デジタル・スチル/ビデオ・カメラ等)、デジタル・プレーヤー(デジタル・オーディオ/ビデオ・プレーヤー等)、着用可能なデバイス(ウェアラブル・カメラ、スマートウオッチ、トラッキングデバイス等)、ゲーム・コンソール、デジタル・ブック・リーダー、テレヘルス・テレメディシン(遠隔ヘルスケア・メディシン処方)デバイス、通信機能付きの乗り物又は移動輸送機関(自動車、飛行機、船等)、及び上述の各種装置の組み合わせがあげられる。
【0191】
通信装置は、持ち運び可能又は移動可能なものに限定されず、持ち運びできない又は固定されている、あらゆる種類の装置、デバイス、システム、例えば、スマート・ホーム・デバイス(家電機器、照明機器、スマートメーター又は計測機器、コントロール・パネル等)、自動販売機、その他IoT(Internet of Things)ネットワーク上に存在し得るあらゆる「モノ(Things)」をも含む。
【0192】
通信には、セルラーシステム、無線LANシステム、通信衛星システム等によるデータ通信に加え、これらの組み合わせによるデータ通信も含まれる。
【0193】
また、通信装置には、本開示に記載される通信機能を実行する通信デバイスに接続又は連結される、コントローラやセンサー等のデバイスも含まれる。例えば、通信装置の通信機能を実行する通信デバイスが使用する制御信号やデータ信号を生成するような、コントローラやセンサーが含まれる。
【0194】
また、通信装置には、上記の非限定的な各種装置と通信を行う、あるいはこれら各種装置を制御する、インフラストラクチャ設備、例えば、基地局、アクセスポイント、その他あらゆる装置、デバイス、システムが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本開示は、移動端末と基地局とを有する無線システムに有用である。
【符号の説明】
【0196】
1 基地局
2 移動端末
3 移動物体
10 基地局
11 移動物体検出センサー
12 無線通信ユニット
13 制御ボード
13a CPU
13b メモリ
20 移動端末
30 サーバー
40 ネットワーク
51 移動物体センシング部
52 移動物体経路予測部
53 通信品質予測部
54 スケジューリング部
61 情報配信部
A1a 高速通信エリア
A1b 低速通信エリア
A2 通信不可エリア