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  • 特許-打設前点検システムおよび点検方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】打設前点検システムおよび点検方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/02 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020149079
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043675
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 昌利
(72)【発明者】
【氏名】根本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】中島 航
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 正裕
(72)【発明者】
【氏名】黒田 直樹
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-129919(JP,A)
【文献】特開平04-112193(JP,A)
【文献】特開平08-135191(JP,A)
【文献】特開2020-118013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D1/00-24/00
E02B3/04-3/14
E02D27/00-27/52
E04B1/62-1/99
E04G9/00-21/10
25/00-25/08
E21D1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠内にコンクリートを打設する前に前記型枠内の状況を点検するためのシステムであって、
前記型枠内に架設されるとともに架設方向に移動可能な紐状物と、前記紐状物に設けられるとともに前記型枠内の状況を撮影する撮影手段とを備え、前記紐状物は、鉄筋が配置された前記型枠内に前記鉄筋より下方に設けられることを特徴とする打設前点検システム。
【請求項2】
型枠内にコンクリートを打設する前に前記型枠内の状況を点検するためのシステムであって、
鉄筋が配置された前記型枠内において前記鉄筋より下方に架設された紐状物と、前記紐状物に沿って移動可能に前記紐状物に設けられるとともに前記型枠内の状況を撮影する撮影手段と、前記紐状物に沿って前記撮影手段を移動させる移動手段とを備えることを特徴とする打設前点検システム。
【請求項3】
型枠内にコンクリートを打設する前に前記型枠内の状況を点検するための方法であって、
鉄筋が配置される前記型枠内において前記鉄筋より下方に紐状物を延在方向に移動可能に架設するステップと、撮影手段を前記紐状物に設けるステップと、前記紐状物を架設方向に移動することによって前記撮影手段を移動させるとともに、前記撮影手段で前記型枠内の状況を撮影するステップとを備えることを特徴とする打設前点検方法。
【請求項4】
型枠内にコンクリートを打設する前に前記型枠内の状況を点検するための方法であって、
鉄筋が配置される前記型枠内において前記鉄筋より下方に紐状物を架設するステップと、前記紐状物に沿って移動可能に撮影手段を前記紐状物に設けるステップと、前記紐状物に沿って前記撮影手段を移動させるとともに、前記撮影手段で前記型枠内の状況を撮影するステップとを備えることを特徴とする打設前点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設前の型枠内を点検するのに好適な打設前点検システムおよび点検方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート打設工事において、コンクリート打設前にゴミや落ち葉などの異物を巻き込んで打設するとコンクリートの品質に影響を与えるおそれがある。このため、打設直前にウォータージェットなどで型枠内の異物を清掃排除し、型枠内が綺麗な状態になっていることを目視点検により確認してから打設を行っている(例えば、特許文献1を参照)。型枠内の全面をすべて清掃するため効率が悪く、多くの労力が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-61498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スラブコンクリートの下面側に密集配置される鉄筋の下方や、壁コンクリートの下方などの人の目が届きにくい箇所は、目視点検を行うことが難しいという問題があった。このため、こういった箇所での打設前点検を容易かつ確実に行う方法が求められていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる打設前点検システムおよび点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る打設前点検システムは、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設されるとともに架設方向に移動可能な紐状物と、紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他の打設前点検システムは、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設された紐状物と、紐状物に沿って移動可能に紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段と、紐状物に沿って撮影手段を移動させる移動手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る打設前点検方法は、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を延在方向に移動可能に架設するステップと、撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物を架設方向に移動することによって撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る他の打設前点検方法は、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を架設するステップと、紐状物に沿って移動可能に撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物に沿って撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る打設前点検システムによれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設されるとともに架設方向に移動可能な紐状物と、紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段とを備えるので、紐状物を介して撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の打設前点検システムによれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設された紐状物と、紐状物に沿って移動可能に紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段と、紐状物に沿って撮影手段を移動させる移動手段とを備えるので、紐状物に沿って撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る打設前点検方法によれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を延在方向に移動可能に架設するステップと、撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物を架設方向に移動することによって撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えるので、紐状物を介して撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る他の打設前点検方法によれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を架設するステップと、紐状物に沿って移動可能に撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物に沿って撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えるので、紐状物に沿って撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る打設前点検システムおよび点検方法の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る打設前点検システムおよび点検方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る打設前点検システム10は、スラブコンクリート12の打設工事に適用される。このスラブコンクリート12は、鉄筋14が配置された型枠16内にコンクリートを打設して施工される鉄筋コンクリート構造物である。型枠16は、打設領域の周囲に壁状に立設される。鉄筋14は、上下複数段において格子状に配置される。
【0017】
打設前点検システム10は、コンクリートを打設する前に型枠16内の状況を点検するためのものであり、型枠16内において架設方向Xに移動可能に架設された紐18(紐状物)と、紐18に固定されたカメラ20(撮影手段)とを備える。
【0018】
紐18は、型枠16の内側を直線状に水平に架設されており、その両端は、両側の型枠16に移動可能に通されて型枠16の外側に出ている。紐18は、点検対象領域Aに配置される。本実施の形態の点検対象領域Aは、スラブの下面側に配置される鉄筋14の下方の領域である。この領域は鉄筋14に隠れるため、型枠16の上から人の目で点検することは難しい。この領域を確実に点検するために、紐18は鉄筋14の下方に配置される。紐18の位置は、点検対象領域Aに対応して設定する。点検対象領域Aが、水平に対して斜め方向や鉛直方向の場合には、これらの方向に沿って紐18を配置してもよい。紐18は、カメラ20を移動操縦できるものであれば、いかなる材質で構成してもよい。
【0019】
カメラ20は、型枠16内の点検対象領域Aの状況を撮影するものであり、紐18に固定される。カメラ20は、点検対象領域Aを撮影可能なものであれば、いかなるタイプでもよいが、望ましくは全天球カメラなどの自身の周囲360°の角度を撮影可能なカメラがよい。このようなカメラであれば、周囲の画像を一度に取得することができるので、効率的である。カメラ20は、暗所でのフラッシュ撮影が可能なように発光体を備えてもよい。紐18へのカメラ20の固定方法は周知の固定方法を用いることができる。例えば、治具を介してカメラ本体を紐18に着脱自在に固定してもよい。
【0020】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、型枠16を設置する際に、型枠16に紐18を通しておく。型枠16は、点検対象領域Aに紐18を架設可能な位置のものを選定する。また、型枠16内の紐18にカメラ20を固定しておく。
【0021】
型枠16の設置、鉄筋14の配筋が済んだ後、打設前点検を行う。まず、型枠16の外側から紐18の両端を引張って紐18を直線状に張設する。続いて、紐18の一端18Aを引張るとともに他端18Bを緩めて紐18を延在方向に動かす。これにより、紐18に固定されたカメラ20が紐18の架設方向Xに移動する。カメラ20を点検対象領域Aの一方側から他方側に向けてゆっくりと移動させながら、カメラ20で周囲を撮影することで、撮影画像を取得する。カメラ20に備わる発光体でフラッシュ撮影を行えば、暗い箇所でも鮮明な撮影画像が得られる。カメラ20を回収し、または遠隔操作して撮影画像を型枠16の外で見ることにより、点検対象領域Aの状況を容易かつ確実に確認することができる。このため、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。また、撮影位置についても紐18を動かした長さと画像を対応させることで容易に把握が可能である。
【0022】
上記の実施の形態においては、紐18が架設方向Xに移動可能な場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、紐18の両端を型枠16に対して移動不能に固定して点検対象領域Aに張設し、カメラ20を紐18に沿って移動可能に固定してもよい。紐18へのカメラ20の固定方法は、例えばカメラ本体にガイド溝または孔を設け、このガイド溝または孔に紐18を移動可能に係合または挿通する方法などを用いることができる。カメラ20を紐18に沿って移動させる移動手段としては、例えば、カメラ20に操縦索を取付けるとともに紐18に沿って配置し、一方側から操縦索を引張り操作する手段を挙げることができる。紐18に沿ってカメラ20を移動させながら撮影することで、点検対象領域Aの撮影画像を取得することができる。このため、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。また、紐18およびカメラ20を鉄筋14の配筋前に設置する際に配筋の支障になる場合は、可能であれば配筋後に紐18およびカメラ20を設置しても構わない。また、配筋前には紐18のみを設置して、カメラ20を配筋後に設置する等設置の順序は適宜変更してもよい。
【0023】
以上説明したように、本発明に係る打設前点検システムによれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設されるとともに架設方向に移動可能な紐状物と、紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段とを備えるので、紐状物を介して撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。
【0024】
また、本発明に係る他の打設前点検システムによれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するためのシステムであって、型枠内に架設された紐状物と、紐状物に沿って移動可能に紐状物に設けられるとともに型枠内の状況を撮影する撮影手段と、紐状物に沿って撮影手段を移動させる移動手段とを備えるので、紐状物に沿って撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る打設前点検方法によれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を延在方向に移動可能に架設するステップと、撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物を架設方向に移動することによって撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えるので、紐状物を介して撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。
【0026】
また、本発明に係る他の打設前点検方法によれば、型枠内にコンクリートを打設する前に型枠内の状況を点検するための方法であって、型枠内に紐状物を架設するステップと、紐状物に沿って移動可能に撮影手段を紐状物に設けるステップと、紐状物に沿って撮影手段を移動させるとともに、撮影手段で型枠内の状況を撮影するステップとを備えるので、紐状物に沿って撮影手段を移動させながら撮影することで、型枠内の状況の撮影画像を取得することができる。撮影画像を型枠の外で見ることにより、型枠内の状況を容易かつ確実に確認することができる。したがって、打設前点検を容易かつ確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上のように、本発明に係る打設前点検システムおよび点検方法は、コンクリートの打設前の型枠内の点検に有用であり、特に、打設前点検を容易かつ確実に行うのに適している。
【符号の説明】
【0028】
10 打設前点検システム
12 スラブコンクリート
14 鉄筋
16 型枠
18 紐(紐状物)
18A 一端
18B 他端
20 カメラ(撮影手段)
A 点検対象領域
X 架設方向
図1