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特許7563929屋根施工用治具及びそれを用いる屋根施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】屋根施工用治具及びそれを用いる屋根施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04D 15/04 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E04D15/04 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020164955
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056944
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 史剛
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061136(JP,A)
【文献】実開昭60-046749(JP,U)
【文献】特開平04-194159(JP,A)
【文献】特開2014-118764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/04
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板部の両側縁に起立部を有する屋根材の位置を矯正する屋根施工用治具であって、
断面が溝型形状を呈し、第1の屋根材の一方の起立部及び前記第1の屋根材の一方の起立部に隣り合う第2の屋根材の起立部を覆い、前記第2の屋根材の起立部に係合される第1フックと、
断面が溝型形状を呈し、前記第1の屋根材の他方の起立部及び前記第1の屋根材の他方の起立部に隣り合う第3の屋根材の起立部を覆い、前記第3の屋根材の起立部に係合される第2フックと、
前記第1フックに一端が連結され、前記第2フックに他端が連結され、前記第1フック及び前記第2フックに対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる張力調整具と、を備え
前記第1フックは、先端が内側に向かって屈曲されて形成された平坦部と、前記平坦部の端部を上方に向けて折り返して形成されると共に、内側に向いた面が前記起立部に当接する当接面になる折返部と、を有し、
前記第2フックは、先端が内側に向かって屈曲されて形成された平坦部と、前記平坦部の端部を上方に向けて折り返して形成されると共に、内側に向いた面が前記起立部に当接する当接面になる折返部と、を有す
ことを特徴とする屋根施工用治具。
【請求項2】
請求項1に記載された屋根施工用治具において、
前記第1フック及び前記第2フックは、前記起立部に接する前記当接面が、長尺な前記屋根材の長手方向に沿って延びている
ことを特徴とする屋根施工用治具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された屋根施工用治具において、
前記第1フック及び前記第2フックは、前記平坦部が前記平板部に接する
ことを特徴とする屋根施工用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載された屋根施工用治具を用いた屋根施工方法であって、
第1の屋根材の一方の起立部と、前記第1の屋根材の一方の起立部に隣り合う第2の屋根材の起立部との間に第1のアンカーフックを挿入し、前記第1の屋根材の他方の起立部と、前記第1の屋根材の他方の起立部に隣り合う第3の屋根材の起立部との間に第2のアンカーフックを挿入し、
前記屋根施工用治具の第1フックを、前記第1の屋根材の一方の起立部及び前記第2の屋根材の起立部に被せ、前記屋根施工用治具の第2フックを、前記第1の屋根材の他方の起立部及び前記第3の屋根材の起立部に被せ、
前記屋根施工用治具の張力調整具により、前記第1フック及び前記第2フックに対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる
ことを特徴とする屋根施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載された屋根施工方法において、
第1の屋根施工用治具の第2フックが被せられた前記第1の屋根材の他方の起立部及び前記第3の屋根材の一方の起立部に、第2の屋根施工用治具の第1フックを被せ、前記第2の屋根施工用治具の第2フックを、前記第3の屋根材の他方の起立部及び前記第3の屋根材の他方の起立部に隣り合う第4の屋根材の起立部に被せる
ことを特徴とする屋根施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平板部の両側縁に有する起立部を隣接させて複数の屋根材を固定するときに、屋根材の位置を矯正する屋根施工用治具及びそれを用いる屋根施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、平板部の両側縁に起立部を有する屋根材を、起立部を突き合わせて隣り合わせ、アンカーフックを介して隣り合う一対の屋根材を固定する屋根の施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-118764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一対の屋根材と、その間に配置されるアンカーフックとは、固定する際に予め互いの長手方向が平行になるように位置を調整する必要がある。これに対し、従来の屋根施工方法では、作業者が手や足を使って力を加えることで屋根材やアンカーフックの位置を矯正していた。そのため、力が不足して屋根材等の位置を矯正しきれない場合や、力不足を補うために複数の作業者が必要となる等の問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、屋根施工時の屋根材の位置出しや位置矯正時の労力を軽減し、屋根材の位置を容易に矯正できる屋根施工用治具及びそれを用いる屋根施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の屋根施工用治具は、平板部の両側縁に起立部を有する屋根材の位置を矯正する屋根施工用治具であって、断面が溝型形状を呈し、第1屋根材の一方の起立部と、前記第1屋根材の一方の起立部に隣り合う第2屋根材の起立部を覆い、前記第2屋根材の起立部に係合される第1フックと、断面が溝型形状を呈し、前記第1屋根材の他方の起立部と、前記第1の屋根材の他方の起立部に隣り合う第3屋根材の起立部を覆い、前記第3屋根材の起立部に係合される第2フックと、前記第1フックに一端が連結され、前記第2フックに他端が連結され、前記第1フック及び前記第2フックに対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる張力調整具と、を備え、前記第1フックは、先端が内側に向かって屈曲されて形成された平坦部と、前記平坦部の端部を上方に向けて折り返して形成されると共に、内側に向いた面が前記起立部に当接する当接面になる折返部と、を有し、前記第2フックは、先端が内側に向かって屈曲されて形成された平坦部と、前記平坦部の端部を上方に向けて折り返して形成されると共に、内側に向いた面が前記起立部に当接する当接面になる折返部と、を有する。

【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の屋根施工方法は、第1の屋根材の一方の起立部と、前記第1の屋根材の一方の起立部に隣り合う第2の屋根材の起立部との間に第1のアンカーフックを挿入し、前記第1の屋根材の他方の起立部と、前記第1の屋根材の他方の起立部に隣り合う第3の屋根材の起立部との間に第2のアンカーフックを挿入し、屋根施工用治具の第1フックを、前記第1の屋根材の一方の起立部及び前記第2の屋根材の起立部に被せ、前記屋根施工用治具の第2フックを、前記第1の屋根材の他方の起立部及び前記第3の屋根材の起立部に被せ、前記屋根施工用治具の張力調整具により前記第1フック及び前記第2フックに対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる。
【発明の効果】
【0008】
よって、本発明の屋根施工用治具及び屋根施工方法では、屋根施工時の屋根材の位置出しや位置矯正時の労力を軽減し、屋根材の位置を容易に矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1の屋根施工用治具を用いて施工される屋根を示す分解斜視図である。
図2】(a)は図1におけるA部の拡大図であり、(b)は図1におけるB部の拡大図である。
図3】施工後の屋根を示す断面図である。
図4】実施例1の屋根施工用治具を示す斜視図である。
図5】実施例1の屋根施工用治具の設置状態を示す説明図である。
図6A】実施例1の屋根施工方法の屋根材の配置工程説明図である。
図6B】実施例1の屋根施工方法の治具の設置工程を示す説明図である。
図6C】実施例1の屋根施工方法の屋根材の位置矯正工程を示す説明図である。
図7】複数の屋根施工用治具を連続して設置した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の屋根施工用治具及び屋根施工方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
実施例1の屋根施工用治具10を使用して施工される屋根は、ユニット建物等の建物の屋根であり、図1に示すように、アンカーフック30を介して縦葺き材である多数の屋根材20を野地板40に固定することで施工される。なお、縦葺き材とは、屋根勾配に対して長手方向が並行になるように施工される長尺屋根材である。
【0012】
ここで、屋根材20は、図2(a)に示すように、帯状の鋼板からなる平板部21と、平板部21の両側縁にそれぞれ形成された一対の起立部22と、を有する。起立部22は、平板部21の長手方向に沿った両側縁を上方に向けて折り曲げることで形成され、先端には平板部21の中央部に向かって折り込まれた折込部23を有している。
【0013】
アンカーフック30は、上方に開放した溝型形状の長尺部材である。アンカーフック30は、図2(b)に示すように、上方に向いた両端部が外側に折り返されて、長手方向に延びる一対の係止片31が形成されている。
【0014】
そして、屋根施工時、まず、複数の屋根材20は、起立部22を突き合せた状態で野地板40上に並べられる。次に、隣り合う一対の屋根材20、20の対向する起立部22、22の間にアンカーフック30が挿入される。このとき、図3に示すように、各起立部22の先端に有する折込部23に係止片31が差し込まれ、一対の屋根材20、20は、アンカーフック30を介して緩くつながる。
【0015】
また、アンカーフック30の底部32には、ビス33が挿入されるビス孔(不図示)が形成されている。ビス33は、アンカーフック30及び屋根材20が載置された野地板40を貫通し、野地板40を支持する垂木(不図示)に捩じ込まれる。これにより、アンカーフック30は野地板40に圧着され、一対の屋根材20、20が野地板40に固定される。なお、アンカーフック30には、ビス33によって固定された後、図3に示すように目地カバー41が装着される。
【0016】
実施例1の屋根施工用治具10は、アンカーフック30をビス33で固定する前に、屋根材20及びアンカーフック30の長手方向が平行になるように屋根材20の位置を矯正するために使用される。
【0017】
屋根施工用治具10は、図4に示すように、第1フック11と、第2フック12と、ターンバックル13(張力調整具)と、を備えている。
【0018】
第1フック11は、下方に開放した溝型形状を呈し、下方に向いた両端に平坦部11aと、平坦部11aに連続した折返部11bと、をそれぞれ有している。平坦部11aは、第1フック11の先端が内側に向かって屈曲されて形成されており、上面11cとほぼ平行になっている。折返部11bは、平坦部11aの端部を上方に向けて折り返して形成される。また、第1フック11は、第2フック12に対向する側面に貫通孔11dが形成されている。貫通孔11dは、内周面にネジ溝が形成されており、後述するターンバックル13の第1ロッド13aを捩じ込み可能になっている。さらに、貫通孔11dが形成されていない側面の先端に有する折返部11bは、第1フック11の内側に向いた面が屋根材20の起立部22に当接する当接面11eになる。
【0019】
そして、第1フック11は、屋根施工用治具10の使用時、図5に示すように、予め第1のアンカーフック30Aに係合されて隣り合う第1の屋根材20Aの一方の起立部22α及び第2の屋根材20Bの一方の起立部22βに被せられる。これにより、第1フック11は、二つの起立部22α、22βを覆う。また、このとき、平坦部11aは、第1の屋根材20Aの平板部21と、第2の屋根材20Bの平板部21に接する。
【0020】
第2フック12は、下方に開放した溝型形状を呈し、下方に向いた先端に平坦部12aと、平坦部12aに連続した折返部12bと、を有している。平坦部12aは、第2フック12の先端が内側に向かって屈曲されて形成されており、上面12cとほぼ平行になっている。折返部12bは、平坦部12aの端部を上方に向けて折り返して形成される。また、第2フック12は、第1フック11に対向する側面に貫通孔12dが形成されている。貫通孔12dは、内周面にネジ溝が形成されており、後述するターンバックル13の第2ロッド13bを捩じ込み可能になっている。さらに、貫通孔12dが形成されていない側面の先端に有する折返部12bは、第2フック12の内側に向いた面が屋根材20の起立部22に当接する当接面12eとなる。
【0021】
そして、第2フック12は、屋根施工用治具10の使用時、図5に示すように、予め第2のアンカーフック30Bに係合されて隣り合う第1の屋根材20Aの他方の起立部22x及び第3の屋根材20Cの一方の起立部22yに被せられる。これにより、第2フック12は、二つの起立部22x、22yを覆う。また、このとき、平坦部12aは、第1の屋根材20Aの平板部21と、第3の屋根材20Cの平板部21に接する。
【0022】
さらに、実施例1では、第1フック11及び第2フック12は、いずれもリップ溝形鋼によって形成された長尺部材である。そのため、第1フック11及び第2フック12の平坦部11a、12aと、折返部11b、12bと、当接面11e、12eとは、いずれも長尺部材である屋根材20の長手方向に沿って延びることとなる。
【0023】
ターンバックル13は、軸方向に沿って作用する張力を調整する張力調整具であり、第1ロッド13aと、第2ロッド13bと、胴部13cと、を有している。
【0024】
第1ロッド13a及び第2ロッド13bは、それぞれ周面にネジ溝が形成された金属棒である。そして、第1ロッド13aの一方の端部が第1フック11の貫通孔11dに捩じ込まれ、第1フック11とターンバックル13とが連結される。また、第2ロッド13bの一方の端部が第2フック12の貫通孔12dに捩じ込まれ、第2フック12とターンバックル13とが連結される。
【0025】
胴部13cは、金属製の枠形状を呈し、両端にそれぞれ雌ネジ溝が形成され、第1ロッド13a及び第2ロッド13bの他方の端部をそれぞれ捩じ込み可能となっている。ここで、胴部13cの一端に形成された雌ネジ溝と、胴部13cの他端に形成された雌ネジ溝とは逆ネジの関係になっている。これにより、胴部13cを回転させることで両端に捩じ込まれた第1ロッド13a及び第2ロッド13bが同時に締め込まれたり、同時に緩められたりして軸方向の張力が調整される。
【0026】
つまり、ターンバックル13は、胴部13cを回転させて第1ロッド13a及び第2ロッド13bを同時に締め込むことで軸方向に縮小し、第1フック11及び第2フック12に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させる。
【0027】
以下、実施例1の屋根施工用治具10を使用した屋根施工方法の手順を、図6A図6Cに基づいて説明する。
【0028】
屋根施工時、最初に、三枚の屋根材20A~20Cと二つのアンカーフック30A、30Bを、野地板40の上に交互に並べて配置する。そして、まず、第1の屋根材20Aの一方の起立部22αと、第1の屋根材20Aの一方の起立部22αに隣り合う第2の屋根材20Bの起立部22βとの間に第1のアンカーフック30Aを挿入する。このとき、第1のアンカーフック30Aの一方の係止片31を起立部22αの折込部23に差し込み、第1のアンカーフック30Aの他方の係止片31を起立部22βの折込部23に差し込む。これにより、第1の屋根材20Aと第2の屋根材20Bは、図6Aに示すように、第1のアンカーフック30Aを介して緩くつながる。
【0029】
続いて、第1の屋根材20Aの他方の起立部22xと、第1の屋根材20Aの他方の起立部22xに隣り合う第3の屋根材20Cの起立部22yとの間に第2のアンカーフック30Bを挿入する。このとき、第2のアンカーフック30Bの一方の係止片31を起立部22xの折込部23に差し込み、第2のアンカーフック30Bの他方の係止片31を起立部22yの折込部23に差し込む。これにより、第1の屋根材20Aと第3の屋根材20Cは、図6Aに示すように、第2のアンカーフック30Bを介して緩くつながる。
【0030】
三枚の屋根材20A~20C及び二つのアンカーフック30A、30Bを野地板40の上に配置したら、図6Bに示すように、屋根施工用治具10の第1フック11を、第1の屋根材20Aの一方の起立部22α及び第2の屋根材20Bの一方の起立部22βに被せる。同時に、屋根施工用治具10の第2フック12を、第1の屋根材20Aの他方の起立部22x及び第3の屋根材20Cの一方の起立部22yに被せる。
【0031】
なお、このとき、ターンバックル13は、第1ロッド13aを第1フック11に連結し、第2ロッド13bを第2フック12に連結しておく。そして、第1ロッド13a及び第2ロッド13bを胴部13cから突出させ、第1フック11と第2フック12とを離間させておく。
【0032】
第1フック11及び第2フック12を配置したら、図6Cに示すように、ターンバックル13の胴部13cを回転させ、第1ロッド13a及び第2ロッド13bを同時に締め込む。これにより、第1ロッド13a及び第2ロッド13bがそれぞれ胴部13c内に入り込み、ターンバックル13が軸方向に縮小して、第1フック11及び第2フック12に対して互いに引き寄せる向きの力が作用する。
【0033】
このため、第1フック11が第2の屋根材20Bの起立部22βに係合し、当接面11eがこの起立部22βに接触する。そして、第1フック11は、第1の屋根材20Aに向けて第2の屋根材20Bを押圧する。また、第2フック12が第3の屋根材20Cの起立部22yに係合し、当接面12eがこの起立部22yに接触する。そして、第2フック12は、第1の屋根材20Aに向けて第3の屋根材20Cを押圧する。この結果、第1の屋根材20Aに対し、第2の屋根材20B及び第3の屋根材20Cが引き寄せられ、互いの長手方向が平行になるようにそれぞれの位置が矯正される。そして、屋根施工時の屋根材20A~20Cの位置出しや位置矯正時の労力を軽減し、屋根材20A~20Cの位置を容易に矯正することができる。
【0034】
なお、屋根材20A~20Cの位置を矯正したら、第1のアンカーフック30A及び第2のアンカーフック30Bをそれぞれビス33で野地板40に固定する。このとき、屋根施工用治具10を装着したままにしておくことで、屋根材20A~20Cの位置を保持することができ、作業者が屋根材20A~20Cを押さえておく必要がなくなる。
【0035】
このように、実施例1の屋根施工用治具10は、断面が溝型形状を呈し、第1の屋根材20Aの一方の起立部22α及びこの起立部22αに隣り合う第2の屋根材20Bの一方の起立部22βを覆い、起立部22βに係合される第1フック11と、断面が溝型形状を呈し、第1の屋根材20Aの他方の起立部22x及びこの起立部22xに隣り合う第3の屋根材20Cの一方の起立部22yを覆い、起立部22yに係合される第2フック12と、第1フック11に一端が連結され、第2フック12に他端が連結され、第1フック11及び第2フック12に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させるターンバックル13と、を備えている。
【0036】
これにより、ターンバックル13の胴部13cを回転させ、ターンバックル13の軸方向の長さを縮小することで、第1の屋根材20Aに対して、その両隣に配置された第2の屋根材20B及び第3の屋根材20Cを引き寄せることができる。また、胴部13cの回転回数や方向を調整することで、第1フック11及び第2フック12に作用する互いに引き寄せる向きの力を加減することができる。そのため、屋根施工時の屋根材20A~20Cの位置出しや位置矯正時の労力を軽減し、屋根材20A~20Cの位置を容易に矯正することができる。
【0037】
さらに、屋根施工用治具10を設置したことで、屋根材20A~20Cの位置が保持される。これにより、アンカーフック30A、30Bをビス33で固定する際、屋根材20A~20Cを作業者が手や足で押さえる必要がなくなり、手離れすることができる。
【0038】
また、実施例1の屋根施工用治具10は、前記第1フック11及び第2フック12が、リップ溝形鋼によって形成された長尺部材であり、起立部22βや起立部22yに当接する当接面11e、12eは、長尺な屋根材20A~20Cの長手方向に沿って延びている。
【0039】
これにより、起立部22βと当接面11eとの接触面積や、起立部22yと当接面12eとの接触面積を、屋根材20A~20Cの長手方向に沿った長尺形状とすることができ、屋根材20A~20Cの位置を矯正する際、起立部22βや起立部22yに作用する力を分散し、局所的に力が掛かることを防止できる。そのため、起立部22βや起立部22yが局所的に変形することを防ぐことができる。
【0040】
さらに、実施例1の屋根施工用治具10では、第1フック11及び第2フック12が、いずれも、屋根材20A~20Cの平板部21に接する平坦部11a、12aを有している。
【0041】
これにより、第1フック11及び第2フック12を屋根材20A~20C上に安定して配置することができ、第1フック11及び第2フック12に互いに引き寄せる向きの力が作用したときに傾くことを防止できる。この結果、起立部22βや起立部22yの撓みを抑制し、屋根材20A~20Cの位置を適切に矯正することができる。
【0042】
また、図5に示す例では、一つの屋根施工用治具10を使用して、第1の屋根材20Aに対して、その両隣に配置された第2の屋根材20B及び第3の屋根材20Cを引き寄せる施工方法を説明したが、これに限らない。
【0043】
例えば、図7に示すように、第1の屋根施工用治具10αの第2フック12αが被せられた第1の屋根材20Aの他方の起立部22x及び第3の屋根材20Cの一方の起立部22yに、第2の屋根施工用治具10βの第1フック11βを被せる。さらに、第2の屋根施工用治具10βの第2フック12βを、第3の屋根材20Cの他方の起立部221及びこの起立部221に隣り合う第4の屋根材20Dの一方の起立部222に被せる。
【0044】
これにより、第1の屋根施工用治具10αと、第2の屋根施工用治具10βとを連続して設置することができ、複数(四枚)の屋根材20A~20Dの位置を同時に矯正しながら固定することができる。
【0045】
以上、本発明の屋根施工用治具及び屋根施工方法を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0046】
実施例1における屋根施工用治具10では、第1フック11及び第2フック12をリップ溝形鋼によって形成した例を示したがこれに限らない。例えば、溝形鋼によって形成してもよい。
【0047】
また、実施例1の屋根施工用治具10では、張力調整具としてターンバックル13を用いる例を示したが、両端が第1フック11と第2フック12とに連結され、第1フック11及び第2フック12に対して互いに引き寄せる向きの力を作用させることができれば、張力調整具として適用することできる。すなわち、張力調整具は、例えば、DCバックル、ラチェットギヤ、ラチェットバックル、スプリング等の弾性体であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 屋根施工用治具
11 第1フック
12 第2フック
11a、12a 平坦部
11b、12b 折返部
11e、12e 当接面
13 ターンバックル(張力調整具)
20 屋根材
21 平板部
22 起立部
20A 第1の屋根材
20B 第2の屋根材
20C 第3の屋根材
22α 第1の屋根材の一方の起立部
22β 第2の屋根材の一方の起立部
22x 第1の屋根材の他方の起立部
22y 第3の屋根材の一方の起立部
30 アンカーフック
31 係止部
40 野地板
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7