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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】排水配管継手
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20241001BHJP
   F16L 41/03 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L41/03
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020169147
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061254
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147903(JP,A)
【文献】特開2016-069922(JP,A)
【文献】特開2016-069982(JP,A)
【文献】特開2004-278099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12- 1/33
F16L 41/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸心を有する筒状の胴部の側面に側部開口部を有し、前記側部開口部に横枝管接続部が設けられ、前記胴部の上下開口部に上立管接続部と下立管接続部とがそれぞれ設けられた排水配管継手であって、
前記排水配管継手は、前記横枝管接続部が、前記横枝管接続部の横軸心を中心とした円形断面を備え、横枝管から前記側部開口部に流入する排水を左右のいずれかに偏流させるために前記円形断面の左側の一部または右側の一部を閉鎖する壁面を含んで構成された偏流板を備え
前記偏流板は、前記横枝管接続部から前記縦軸心の方向を見た場合に、前記横軸心に対して上下非対称で、前記排水が流通可能な断面積は上側よりも下側が大きいことを特徴とする排水配管継手。
【請求項2】
前記横枝管接続部は、前記胴部の上下開口部の開口側から見て前記偏流板に対向する位置に、前記縦軸心から離隔する方向に膨らんだ膨出部を備えないことを特徴とする、請求項1に記載の排水配管継手。
【請求項3】
前記胴部の上下開口部の開口側から見て前記壁面が前記胴部内に突出しないことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の排水配管継手。
【請求項4】
前記偏流板は、前記排水を遮断することにより前記偏流を発生するための遮断部と、前記排水の流れを阻害する物体の詰りを防止するための詰り防止部とからなることを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項5】
前記遮断部は、前記詰り防止部より高い位置にある上部遮断部と、低い位置にある下部遮断部とからなることを特徴とする、請求項4に記載の排水配管継手。
【請求項6】
前記下部遮断部は、前記排水の流量が多いときに前記物体を浮遊させることにより前記物体を前記胴部内へ排水する機能、および、前記排水の流量が少ないときに前記排水を偏流させる機能の少なくともいずれかの機能を備えることを特徴とする、請求項5に記載の排水配管継手。
【請求項7】
前記偏流板は、前記遮断部の一部が上下方向に非対称に切り欠かれることにより、前記排水が流通可能な断面積は、上側よりも下側が大きいことを特徴とする、請求項4~請求項6のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項8】
前記詰り防止部は、前記遮断部の壁面の一部が切り欠かれた形状によって形成されることを特徴とする、請求項4~請求項7のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項9】
前記詰り防止部は、前記遮断部の壁面の一部が円弧状の切欠円弧で切り欠かれた形状によって形成されることを特徴とする、請求項4~請求項7のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項10】
前記遮断部における前記側部開口部基端部から前記詰り防止部に至る距離は、上側よりも下側が短いことを特徴とする、請求項4~請求項9のいずれかに記載の排水配管継手。
【請求項11】
前記切欠円弧の半径は、前記横枝管接続部の内径に対して15%以上200%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の排水配管継手。
【請求項12】
前記縦軸心から前記切欠円弧までの水平方向最大長さは、前記横枝管接続部の内径に対して3%以上40%以下であることを特徴とする、請求項9に記載の排水配管継手。
【請求項13】
前記切欠円弧の中心は、前記横枝管接続部の内径に対して前記内径中心から1%以上30%以下の範囲の下方に位置することを特徴とする、請求項9に記載の排水配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層集合住宅等の排水配管に用いられる排水配管継手に関し、特に、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(汚物やトイレットペーパー等であって固形物と記載する場合がある)による詰りを防止することのできる排水配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。これらのうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管と、各階層内に設置される横管と、これらを接続する排水配管継手とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。
これらの縦管と横管とを接続する排水配管継手として、縦軸心を有する筒状の胴部の側面に側部開口部を有し、側部開口部に横枝管接続部が設けられ、胴部の上下開口部に上部立管接続部と下部立管接続部とが設けられたものが一般的である。このような排水配管継手を高層集合住宅等の排水配管に用いるとき、排水能力以外で要求される諸条件として、枝管流入部の通過球径が所定以上であって汚物を含む排水の流れを阻害する物体(固形物)が詰まることがないこと、洗濯排水性能が優れていること等が挙げられる。
【0003】
本願出願人による他の出願に係る特開2004-092226号公報(特許文献1)には、このような諸条件を満足する排水集合管を開示する。この特許文献1に開示された排水集合管は、縦軸心を有する筒状の胴部の側面に側部開口部を有し、該側部開口部に横枝管接続部が設けられ、前記胴部の上下開口部に上部立管接続部と下部立管接続部が設けられた排水集合管において、前記側部開口部の上方の胴部内面に、上方から流下する排水が前記側部開口部に逆流しないようにする逆流防止部が、胴部径内方向に突出成形され、前記逆流防止部の上方の胴部内面に、該胴部の軸中心より前記側部開口部を見たとき左側に、上方から流下する排水を胴部軸心側へ偏流させる軸心偏流部が、胴部の径内方向に突出成形され、該軸心偏流部の突出量は、前記逆流防止部の突出量よりも大きくされていることを特徴とする(特許文献1の請求項1)。さらに、この排水集合管において、前記横枝管接続部には、横枝管から側部開口部に流入する排水を、前記胴部の軸中心より前記側部開口部を見たとき、左側に偏流させる側部偏流部が設けられていることを特徴とする(特許文献1の請求項2)。また、この排水集合管において、前記胴部の軸中心より前記側部開口部を見たとき、前記横枝管接続部の左側側面は、左側方へ膨らまされた膨出部を備えることを特徴とする(特許文献1の請求項6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-092226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された排水集合管においては、側部偏流部を設けて横枝管から流入する排水を、横向きに指向させているので、便器などからの大量の排水に対しても、立管から流下する排水とスムーズに合流させることができるとともに、胴部の軸中心より側部開口部を見たとき、横枝管接続部の左側側面は左側方へ膨らまされた膨出部とされているために、枝管流入部の通過球径が所定以上であって汚物を含む排水の流れを阻害する物体(固形物)が詰まることがないようにしている。
【0006】
このように、この特許文献1に開示された排水集合管は、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することができて高機能な排水性能を備えるために好評を得ているのであるが、横枝管から流入する排水を横向きに指向させるための側部偏流部を設けて便器などからの大量の排水に対しても立管から流下する排水とスムーズに合流させるようにできている反面、その側辺偏流部に対向する位置である枝管接続部の左側側面は左側方へ膨らまされた膨出部を備えさせて固形物による詰りを
防止している。このため、この膨出部を設ける必要があるために特許文献1に開示された排水集合管の構造が(膨出部がない断面略円形構造に比較して)複雑になり製造コストが上昇するおそれが指摘され得る。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、高層集合住宅等の排水配管に用いられる排水配管継手であって、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することのできる排水配管継手を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る排水配管継手は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る排水配管継手は、縦軸心を有する筒状の胴部の側面に側部開口部を有し、前記側部開口部に横枝管接続部が設けられ、前記胴部の上下開口部に上立管接続部と下立管接続部とがそれぞれ設けられた排水配管継手であって、前記排水配管継手は、前記横枝管接続部が、前記横枝管接続部の横軸心を中心とした円形断面を備え、横枝管から前記側部開口部に流入する排水を左右のいずれかに偏流させるために前記円形断面の左側の一部または右側の一部を閉鎖する壁面を含んで構成された偏流板を備えることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記横枝管接続部は、前記胴部の上下開口部の開口側から見て前記偏流板に対向する位置に、前記縦軸心から離隔する方向に膨らんだ膨出部を備えないように構成することができる。
さらに好ましくは、前記胴部の上下開口部の開口側から見て前記壁面が前記胴部内に突出しないように構成することができる。
【0010】
さらに好ましくは、前記偏流板は、前記排水を遮断することにより前記偏流を発生するための遮断部と、前記排水の流れを阻害する物体の詰りを防止するための詰り防止部とからなるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮断部は、前記詰り防止部より高い位置にある上部遮断部と、低い位置にある下部遮断部とからなるように構成することができる。
【0011】
さらに好ましくは、前記下部遮断部は、前記排水の流量が多いときに前記物体を浮遊させることにより前記物体を前記胴部内へ排水する機能、および、前記排水の流量が少ないときに前記排水を偏流させる機能の少なくともいずれかの機能を備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記排水が流通可能な断面積は、上側よりも下側が大きいように構成することができる。
【0012】
さらに好ましくは、前記詰り防止部は、前記遮断部の壁面の一部が切り欠かれた形状によって形成されるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記詰り防止部は、前記遮断部の壁面の一部が円弧状の切欠円弧で切り欠かれた形状によって形成されるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記遮断部における前記側部開口部基端部から前記詰り防止部に至る距離は、上側よりも下側が短いように構成することができる。
【0013】
さらに好ましくは、前記切欠円弧の半径は、前記横枝管接続部の内径に対して15%以上200%以下であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記縦軸心から前記切欠円弧までの水平方向最大長さは、前記横枝管接続部の内径に対して3%以上40%以下であるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記切欠円弧の中心は、前記横枝管接続部の内径に対して前記内径中心から1%以上30%以下の範囲の下方に位置するように構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、高層集合住宅等の排水配管に用いられる排水配管継手であって、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することのできる排水配管継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100が採用された排水配管構造を示す(A)上面図、(B)側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100が採用された排水配管構造を示す分解斜視図である。
図3】排水配管継手100の側面図である。
図4】(A)排水配管継手100の外観斜視図(側方)、(B)排水配管継手100の外観斜視図(下方から上方)である。
図5】胴部110から側部開口部112を見た排水配管継手の断面図であって(A)偏流板200を備える排水配管継手100において横枝管から側部開口部へ流入可能な仮想通過球体を示す図、(B)偏流板200とは異なる偏流板202を備える排水配管継手102おいて横枝管から側部開口部へ流入可能な仮想通過球体を示す図である。
図6】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100と共通する技術的特徴を備える排水配管継手400の(A)側面図、(B)図6(A)における6B断面図、(C)偏流板拡大図、(D)図6(B)における6D拡大図である。
図7】本発明の実施の形態の変形例に係る排水配管継手500の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明の実施の形態に係る排水配管継手100について図1図5を参照して、本発明の実施の形態に係る排水配管継手100と共通する技術的特徴を備える排水配管継手400について図6を参照して、本発明の実施の形態の変形例に係る排水配管継手500について図7を参照して、詳しく説明する。共通する技術的特徴を備える排水配管継手100と排水配管継手400とでは、その共通する技術的特徴についての図面における符号について同じ符号を付しており、共通する技術的特徴については、排水配管継手100および排水配管継手400のいずれか一方を用いて説明する場合がある。
【0017】
ここで、排水配管継手100は3方向に横枝管接続部120を備えるのに対して、排水配管継手400および排水配管継手500は1方向にしか横枝管接続部120を備えない。本発明に係る排水配管継手は、上立管接続部と下立管接続部とを備えることに加えて1以上の横枝管接続部を備えるものであれば特に限定されない。なお、横枝管接続部の個数に起因して、1の横枝管から他の横枝管への逆流を防止するための逆流防止リブ300の有無(そもそも1方向にしか横枝管接続部120を備えない排水配管継手400および排水配管継手500には逆流防止リブ300が不要)および逆流防止リブ300の個数が異なるが、これについては後述する。ここで、逆流防止リブ(逆流防止部、逆流防止板)が上方から流下する排水が側部開口部に逆流しない機能を備えるものである場合にはこの限りではなく、1方向にしか横枝管接続部120を備えない排水配管継手400および排水配管継手500であっても逆流防止リブを備える場合がある。本実施の形態における逆流防止リブ300は、1の横枝管から他の横枝管への逆流を防止するものであって、本発明の技術的特徴との関連性が低いために、排水配管継手100が備える逆流防止リブ300を排水配管継手400および排水配管継手500は備えないものとして説明する。
【0018】
また、排水配管継手100と排水配管継手400とで共通する技術的特徴とは、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することのできる構造であって、図6を主に参照して詳しく説明する。ここでは、共通する技術的特徴についてはその概要を以下に示すに留める。共通する技術的特徴の概要は、この排水配管継手100および排水配管継手400は、横枝管接続部120が、横枝管接続部120の横軸心を中心とした円形断面(ここで円形断面とは一例として円形断面から膨らんだ特許文献1に開示されたような膨出部を備えないことを意味する)を備え、横枝管から側部開口部112に流入する排水を左右のいずれかに偏流させるためにこの円形断面の左側の一部または右側の一部を閉鎖する壁面を含んで構成された偏流板200を備え、さらに限定的には、この偏流板200が排水を遮断することにより偏流を発生するための遮断部210と排水の流れを阻害する物体の詰りを防止するための詰り防止部220とを備え、この詰り防止部220が遮断部210の壁面の一部を円弧状の切欠円弧222で切り欠かれた形状によって形成されている点である。
【0019】
ここで、図1図7に示す図は、本発明に関連の低い構成等を省略した場合を含んで模式的に記載されたものであって、図の間での整合性が完全には一致していない場合がある。
図1図2に示すように、本発明の実施の形態に係る排水配管継手100を用いた排水配管構造は、建築物における床スラブSを上下に貫通する貫通孔にその一部が設けられる排水配管継手100と、床スラブSの上方でこの排水配管継手100の上立管接続部140に(上立管接続部材を介して)接続され上階からの排水を流入させる上階側の上立管と、床スラブSの上方でこの排水配管継手100の横枝管接続部120に(横立管接続部材を介して)接続される(ここではそれぞれ3本ずつの)横枝管と、床スラブSの下方でこの排水配管継手100の下立管接続部160に接続され下階に排水を流出させる下階側の下立管(旋回羽根付き縮径管および直管)とを有している。このような排水配管継手100を用いた排水配管構造は最下階以外で採用されたものを示しているが、本実施の形態に係る排水配管継手100を用いた排水配管構造は最下階でも採用でき最下階の場合には下立管は下立管(直管)と90度ベンド管とで構成される場合が一例として挙げられる。なお、これらの排水配管構造は一例であって、例示した排水配管構造に限定して本発明に係る排水配管継手100が採用されるものではない。ここで、本発明の技術的特徴との関連性が低いために、本発明との関連性が低い、下立管(旋回羽根付き縮径管)に設けられる制振材、振動絶縁体、遮音カバー等については説明しない。
【0020】
図1図5に示すように、排水配管継手100は、縦軸心を有する筒状の胴部110(以下において筒状の胴部110を単に胴部110と記載する場合がある)の側面に側部開口部112を有し、側部開口部112に横枝管接続部120が設けられ、胴部110の上下開口部(上部開口部114および下部開口部116)に上立管接続部140と下立管接続部160とがそれぞれ設けられている。なお、上述の通り、図1図5に示す排水配管継手100は、側部開口部112およびそれに設けられる横枝管接続部120は平面視で90°間隔の3箇所に設けられ、図6に示す排水配管継手400(図7に示す変形例に係る排水配管継手500も同じ)は、側部開口部112およびそれに設けられる横枝管接続部120は1箇所しかに設けられていない。
【0021】
そして、この排水配管継手100は、横枝管接続部120が、横枝管接続部120の横軸心を中心とした円形断面を備え、横枝管から側部開口部112に流入する排水を左右のいずれかに偏流させるために円形断面の左側の一部または右側の一部を閉鎖する壁面を含んで構成された偏流板200を備える。なお、本実施の形態においては、図5および図6に示すように、偏流板200は、横枝管接続部120の円形断面における左側の一部を閉鎖する壁面(より詳しくは遮断部210と詰り防止部220)を含んで構成されている。これは、この排水配管継手100は、たとえば各階の排水配管継手100において図2に示すような旋回羽根が設けられ、鉛直上方から上立管または下立管を見た場合に反時計回りの旋回流を発生させており(図4(B)および図6(B)においては下から排水配管継手100を見上げているために旋回流は時計回りで表現される)、横枝管からの排水を右側に偏流させることにより(左側の流れを止めたり弱めたりすることにより)、上方から反時計回りに旋回して流下する排水に横枝管からの排水を抵抗少なく合流させることができる。
【0022】
ここで、横枝管接続部120は、胴部110の上下開口部(上部開口部114および下部開口部116)の開口側から見て偏流板200に対向する位置に、筒状の胴部110の縦軸心から離隔する方向に膨らんだ膨出部を備えない。すなわち、この排水配管継手100においては、横枝管接続部120が、横枝管接続部120の横軸心を中心とした円形断面を備え、円形断面から膨らんだ(一例として特許文献1に開示されたような)膨出部を備えないことを意味するものである。このため、このような膨出部を設ける必要がないために排水配管継手100の胴部100の断面構造が略円形構造となり簡略化できて製造コストが上昇するおそれを抑制することができる。なお、このような膨出部を備えなくても排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止できる点については後述する。
【0023】
また、胴部110の上下開口部(上部開口部114および下部開口部116)の開口側
から見て偏流板200を構成する壁面が胴部110内に突出しない。すなわち、この排水配管継手100においては、横枝管接続部120が、横枝管接続部120の横軸心を中心とした円形断面を備え、偏流板200を構成する壁面が、図3または図4に示す逆流防止リブ300のように胴部110内に突出するものではないことを意味するものである。このため、このような胴部110内に突出して偏流板200を設ける必要がないために排水配管継手100の胴部100の断面構造が略円形構造となり簡略化できて製造コストが上昇するおそれを抑制することができるとともに、胴部110内に偏流板200が突出していないために胴部110を上から下へ流下する排水の流れの障害となることを抑制することができる。このように、横枝管から側部開口部112に流入する排水を左右のいずれかに偏流させるための偏流板200が、胴部110内に突出しておらず、偏流板200の壁面は胴部の円形断面に沿って延設されたような形状となっている点は、上述した逆流防止リブとも従来の偏流板とも大きく異なる特徴である。
【0024】
さらに詳しくは、この偏流板200は、(横枝管からの排水配管継手100の胴部110への)排水を遮断することにより偏流を発生するための遮断部210(より詳しくは上部遮断部210Uおよび下部遮断部210D)と、(横枝管からの排水配管継手100の胴部110への)排水の流れを阻害する物体(汚物やトイレットペーパー等の固形物)の詰りを防止するための詰り防止部220とからなる。偏流板200がこのような詰まり防止部220を備えるために、上述したように特許文献1に開示されたような膨出部を備えなくても排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止できる。
【0025】
より具体的に、排水配管継手100において胴部110から側部開口部112を見た(排水配管継手100において縦軸中心から外側を見た)断面図である図5を参照して説明する。図5(A)は詰まり防止部220を有する偏流板200を備える排水配管継手100において横枝管から側部開口部へ流入可能な仮想通過球体(直径PB(1))を示し、図5(B)は偏流板200とは異なる偏流板202であって詰まり防止部220を有しない偏流板202を備える排水配管継手102おいて横枝管から側部開口部へ流入可能な仮想通過球体(直径PB(2))を示す。横枝管接続部120の内径φdが102.8mmである場合に(横枝管接続部120側が呼び径100の横枝管接続部材を横枝管接続部120に接続する場合に)、仮想通過球体の直径PB(1)が68mmに対してPB(2)が60mmと13.3%向上している。
【0026】
さらに詳しくは、図6に示すように、この遮断部210は、詰り防止部220より高い位置にある上部遮断部210Uと、詰り防止部220より低い位置にある下部遮断部210Dとからなる。当然であるが、上部遮断部210Uは下部遮断部210Dよりも(詰まり防止部220よりも)上方に位置する。
下部遮断部210Uは、(横枝管から排水配管継手100への)排水の流量が多いときに物体(固形物)を浮遊させることにより物体を胴部110内へ排水する機能、および、(横枝管から排水配管継手100への)排水の流量が少ないときに排水を偏流させる機能の少なくともいずれかの機能を備える。これにより、横枝管から排水配管継手100への排水の流量が少ない場合であっても充分な偏流機能を有しながら、横枝管から排水配管継手100への排水の流量が多い場合には排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することができる。
【0027】
図3図6に示すように(横枝管から排水配管継手100への)排水が流通可能な断面積は、上側よりも下側が大きい。さらに、詰り防止部210は、遮断部220の壁面の一部が切り欠かれた形状によって形成される。さらに、詰り防止部210は、遮断部220の壁面の一部が円弧状の切欠円弧222で切り欠かれた形状によって形成される。また、遮断部210における側部開口部基端部BCから詰り防止部220に至る距離は、上側よりも下側が短い(LU>LC)。
【0028】
なお、図7に示す変形例に係る排水配管継手500のように、詰り防止部610は、遮断部620の壁面の一部が円弧状の切欠円弧622で切り欠かれた形状によって形成されていても構わない。この排水配管継手500においても、(横枝管から排水配管継手100への)排水が流通可能な断面積は、上側よりも下側が大きく、さらに、詰り防止部61
0は、遮断部620の壁面の一部が切り欠かれた形状によって形成され遮断部610がより詳しくは上部遮断部610Uおよび下部遮断部610Dで形成され、また、詰り防止部610は、遮断部620の壁面の一部が円弧状の切欠円弧622で切り欠かれた形状によって形成されている。
【0029】
これらの特徴は、以下のようにも説明できる。
図6(C)に示すように、偏流板200の壁面は、一例ではあるが、横枝管接続部120の内径(φd)を半径とした円弧とその円弧の弦とで形成され、その弦の一部または全部が(ここでは一部が円弧状の切欠円弧222により、図7においては弦の全部が円弧状の切欠円弧622により)切り欠かれた形状を備えるように構成することができる。なお、図6においては弦と胴部110の縦軸心とが側面視において平行であるが、図7においては弦と胴部110の縦軸心とが側面視において平行ではない。
【0030】
図6に示す排水配管継手100においては、この弦の一部が切り欠かれた壁面(すなわち遮断部210)において、残された弦の長さは上側よりも下側が短い(LU>LC)。これは、この弦の一部が切り欠かれた壁面において、残された弦の長さは上側(上側の弦の長さLC)よりも下側(下側の弦の長さLD)が短いことを意味する。ここで、図6においては切欠円弧222において切り欠かれて残された弦の長さをLCで示している。
【0031】
次に、図6を参照して、膨出部等を備えることないために製造コストが上昇することを抑制しつつ、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することのできる排水配管継手100および排水配管継手400に共通する技術的特徴について詳しく説明する。なお、以下の説明においては、排水配管継手400を代表させて説明する。
【0032】
図6に示すように、切欠円弧222の半径Rは、横枝管接続部120の内径φdに対して15%以上200%以下であることが好ましい。
なお、切欠円弧222の半径Rは横枝管接続部120の内径φdに対して(横枝管接続部120の内径φdを基準として)15%以上200%以下が好ましく、19%以上195%以下が特に好ましい。
【0033】
また、図6に示すように、縦軸心から切欠円弧222までの水平方向最大長さLは、横枝管接続部120の内径φdに対して3%以上40%以下であることが好ましい。
なお、縦軸心から切欠円弧222までの水平方向最大長さLは横枝管接続部120の内径φdに対して(横枝管接続部120の内径φdを基準として)3%以上40%以下が好ましく、4.8%以上35%以下が特に好ましい。
【0034】
また、図6に示すように、切欠円弧222の中心CCは、横枝管接続部120の内径φdに対して内径中心Cから1%以上30%以下の範囲の下方に位置する。すなわち、切欠円弧222の中心CCは、内径中心Cから下方へ内径φdに対して1%以上30%以下の長さDYの範囲で下方に位置する。
なお、切欠円弧222の中心CCは、横枝管接続部120の内径φdに対して(横枝管接続部120の内径φdを基準として)内径中心Cから上述の通り1%以上30%以下の範囲の下方に位置することが好ましく、6%以上10%以下の範囲の下方に位置することが特に好ましい。
【0035】
また、図6に示すように、切欠円弧222の中心CCは、横枝管接続部120の内径φdに対して内径中心Cから1%以上170%以下の範囲の側方(偏流板200の逆側)に位置する。すなわち、切欠円弧222の中心CCは、内径中心Cから側方(偏流板200の逆側)へ内径φdに対して1%以上170%以下の長さDXの範囲で側方(偏流板200の逆側)に位置する。
【0036】
なお、切欠円弧222の中心CCは、横枝管接続部120の内径φdに対して(横枝管接続部120の内径φdを基準として)内径中心Cから上述の通り1%以上170%以下の範囲の側方(偏流板200の逆側)に位置することが好ましく、3%以上20%以下の範囲の側方(偏流板200の逆側)に位置することが特に好ましい。
また、図6(D)に示す偏流板200の断面において表される切欠円弧222の断面形状にはR(丸み)加工されていて、範囲LCD(横枝管接続部120の内径中心Cから切
欠円弧222と下部遮断部210Dとの接合点までの範囲)において、そのRが横枝管接続部120の内径中心Cから下方へ向けて徐々に大きくなる(たとえばR2からR3へ徐変させている)。
【0037】
以上のようにして、本実施の形態に係る排水配管継手100および排水配管継手400ならびに排水配管継手500によると、膨出部等を備えることないために製造コストが上昇することを抑制しつつ、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することができる。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、高層集合住宅等の排水配管に用いられる排水配管継手に好ましく、充分な偏流機能を有しながら、排水の流れを阻害する物体(固形物)による詰りを防止することのできる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0039】
100、400、500 排水配管継手
112 側部開口部
114 上部開口部
116 下部開口部
120 横枝管接続部
140 上立管接続部
160 下立管接続部
200 偏流板
210 遮断部
220 詰まり防止部
300 逆流防止リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7