(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】無線通信装置、および、無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20241001BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20241001BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241001BHJP
H04W 4/48 20180101ALI20241001BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20241001BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W16/28
H04W84/12
H04W4/48
H04W88/02 140
(21)【出願番号】P 2020196781
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金森 勝美
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10812125(US,B1)
【文献】特開2016-178625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の送受信方向の指向性を規定するセクタを複数設定可能な無線通信装置において、
前記無線通信装置の電波環境に対するあらかじめ定められた条件によって決定された、SLS(Sector Level Sweep)に使用されるセクタ、および、SLSに使用されないセクタを記憶する使用可否セクタ記憶部と、
使用可否セクタ記憶部に記憶された、SLSに使用されるセクタを用いてSLSを実行するSLS制御部と、
前記無線通信装置が設置される移動体における前記無線通信装置の設置位置を示す設置位置情報が記憶される制御情報記憶部と、を含
み、
前記あらかじめ定められた条件は、前記無線通信装置が設置される移動体内の設置位置に対応付けられて、SLSに使用されるセクタ、および、SLSに使用されないセクタがあらかじめ定められて決定されることであり、
前記SLS制御部は、前記制御情報記憶部に記憶された自無線通信装置の設置位置を示す設置位置情報に対応付けられて、使用可否セクタ記憶部に記憶されているSLSに使用されるセクタを用いてSLSを実行する無線通信装置。
【請求項2】
前記SLSに使用されるセクタは、前記無線通信装置が設置される移動体における前記無線通信装置の設置位置から放射される電波の見通し線の少なくとも一部分が、前記移動体の内部空間を通過するセクタである請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記設置位置情報は、前記無線通信装置が設置される前記移動体内のあらかじめ定められた領域を識別するための領域識別情報であり、前記移動体内のすべての前記領域の前記領域識別情報、および、前記移動体内のすべての前記領域の位置関係を示す領域位置関係情報が、前記制御情報記憶部に記憶されている請求項
1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記移動体内のセンサによって検知された、移動体に搭乗する乗員の前記移動体内の位置情報を記憶する乗員乗車状況記憶部と、
前記乗員乗車状況記憶部に記憶された前記乗員の前記移動体内の前記位置情報に対応して、SLSに使用されないセクタが記憶される乗員乗車時除外セクタ記憶部をさらに含み、
前記SLS制御部は、自無線通信装置の設置位置情報に対応付けられた、前記使用可否セクタ記憶部に記憶された、SLSに使用されるセクタから、前記乗員乗車時除外セクタ記憶部に記憶された、SLSに使用されないセクタを除いて、SLSを実行する請求項
1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれかに記載の無線通信装置であって通信データを送信する前記無線通信装置と、
請求項1から
4のいずれかに記載の無線通信装置であって前記通信データを受信する前記無線通信装置と、を含む無線通信システム。
【請求項6】
請求項1から
4のいずれかに記載の無線通信装置であって、通信データを受信可能および/または受信可能な無線通信装置は移動体に搭載される無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、および、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
指向性アンテナを使用した無線通信において、アンテナの指向性を設定するSLS(Sector Level Sweep)が実行される場合があり、SLSに要する時間を短くする手法が従来から提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の無線通信装置は、セクタ数が増加した場合であっても、短時間にSLSを完了させるために、従来から使用されているSSWフレームを短縮したsSSW(short Sector SWeep)フレームを使用する。特許文献1の無線通信装置は、sSSWフレームまたはSSWフレームを使用したPHYフレームを生成するPHY送信回路を含む。また、特許文献1の無線通信装置は、PHYフレームを使用して、複数のセクタからいずれかのセクタを選択し、PHYフレームを送信するアレイアンテナをさらに含む構成を有している。PHY送信回路は、sSSWフレーム内の送信元の無線通信装置のアドレスおよび送信先の無線通信装置のアドレスを、PHYフレームに含まれるいずれかのフィールドに基づいてスクランブルし、さらにハッシュ関数を使用した演算によって、短縮している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、設置環境等により使用する可能性が低いセクタについても、SSWフレーム等の送信対象になる。したがって、セクタ数が増加するとセクタ数の増加に対応してSLSを実行する時間も増加してしまうことになるので、SLSの実行時間を短縮するための方式としては限界がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、セクタ数が増加したとしても、使用する可能性が小さいセクタを、SSWフレームを送信しない除外セクタとすることによって、SLSに関連する遅延時間を短縮可能な無線通信システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る、電波の送受信方向の指向性を規定するセクタを複数設定可能な無線通信装置は、前記無線通信装置の電波環境に対するあらかじめ定められた条件によって決定された、SLS(Sector Level Sweep)に使用されるセクタ、および、SLSに使用されないセクタを記憶する使用可否セクタ記憶部と、使用可否セクタ記憶部に記憶された、SLSに使用されるセクタを用いてSLSを実行するSLS制御部と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、セクタ数が増加したとしても、使用する可能性が小さいセクタを、SSWフレームを送信しない除外セクタとすることによって、SLSに関連する遅延時間を短縮可能な無線通信システム等を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る無線通信装置を含む無線通信システムの実装の一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る指向性を有するアンテナのセクタ分割イメージの一例を示す模式図である。
【
図3】本実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る無線通信装置の指向性を有するアンテナの使用セクタと未使用セクタの設定例を
図1に基づいて示す模式図である。
【
図5】本実施形態に係る
図4の各無線通信装置の指向性を有するアンテナの使用セクタと未使用セクタの一覧を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る無線通信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る無線通信装置に電波環境の変動が発生した場合の指向性を有するアンテナの使用セクタと未使用セクタの設定例を
図1に基づいて示す模式図である。
【
図8】本実施形態に係る無線通信装置の電波環境の変動要因となる乗員乗車状況の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る無線通信装置の電波環境の変動に伴って発生する除外セクタの一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る無線通信装置に電波環境の変動が発生する場合を想定した動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態に係る、移動体に設置された無線通信装置に、乗員の乗車によって電波環境の変動が発生する場合の通信状況の一例を示す図である。
【
図12】本実施形態に係る、移動体に設置された無線通信装置に、乗員の乗車によって電波環境の変動が発生する場合の当該乗員の乗車位置を推定する方法の一例を示す図である。
【
図13】SLSシーケンスの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係わる無線通信装置、および、無線通信システムの一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の設置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
(無線通信システムの概要)
図1~
図13を参照して本実施形態に係る無線通信装置を含む無線通信システム1000の動作例について説明する。なお、以下の説明において無線通信装置をノードと称する場合がある。
【0012】
図1は、無線通信装置であるノードが移動体30としての車両内に設置される場所のイメージを示す模式図である。ノードの設置位置は、伝送されるべき情報の発生源となるECU(Electronic Control Unit)や車両の状態を検知するセンサ、または、伝送された情報を利用するECUに隣接して設置されることを想定している。
【0013】
図1では、各種ECUが搭載される可能性がある、車両の進行方向の前席足元奥に無線通信装置100aおよび無線通信装置100bを設置し、トランクルーム右後方に無線通信装置100gおよびトランクルーム左後方に無線通信装置100hを設置している。また、右前ドアスイッチ搭載場所付近に無線通信装置100c、左前ドアスイッチ搭載場所付近に無線通信装置100d、右後ドアスイッチ搭載場所付近に無線通信装置100e、左後ドアスイッチ搭載場所付近に無線通信装置100fを設置している。さらに、ルーフルームランプ搭載場所付近に無線通信装置100iを設置している。なお、無線通信装置100aから無線通信装置100iを総称して無線通信装置100と称する場合がある。無線通信装置100は、乗員が視認できないように、車両の内部空間に面する内面と車両の外部空間に面するボディとの間に配置されてもよいが、これに限定されるわけではない。例えば、無線通信装置100は、乗員が視認できるように、車両の内部空間に面する内面の内部空間側に配置されてもよい。また、無線通信装置100iは、ルーフルームランプの内部に配置されてもよい。
【0014】
また、無線通信装置100の設置位置は厳密な一点に限定されるわけではなく、ある程度の幅を有する3次元的な領域内に無線通信装置100は設置されることが可能である。例えば、無線通信装置100aの設置位置は
図1の領域1で示される設置が可能な3次元空間で示されてもよい。また、領域1の形状は任意の形状とすることも可能である。領域1の領域識別情報は「1」とすることも可能である。同様に、例えば、無線通信装置100の設置位置は
図1の領域X(X=1~9の自然数)で示される設置が可能な3次元空間で示されてもよい。また、領域Xの形状は任意の形状とすることも可能である。領域Xの領域識別情報は「X」とすることも可能である。
【0015】
図2は、無線通信装置100に取り付けられる、または、無線通信装置100に内蔵される指向性アンテナ部のアンテナ指向性のセクタ分割イメージの一例を示す模式図である。
図2においては、移動体30としての車両の水平面を24個に等角分割したイメージをアンテナ指向性のセクタに対応付けている。
図1に示したすべての無線通信装置100の指向性アンテナ部が、
図2に示すセクタ方向に指向性を有することが可能であり、セクタ方向を任意に選択して電波の送受信方向を決定することが可能である。例えばセクタ1はY軸からX軸の正方向に約15度の指向性を有し、セクタ2はセクタ1から時計方向に隣接して約15度の指向性を有する。そして、セクタ24は、セクタ1から反時計方向に隣接して約15度の指向性を有するセクタとして設定される。なお、セクタが有する角度は、アンテナの半値角で示すことが可能であるが、本実施形態においては、これに限定されなくともよい。なお、上記において説明したセクタを指向性セクタと称する場合がある。また、セクタは2次元に分割されるだけではなく、図示しない3次元方向に分割し、分割されたすべてのセクタを、図示しない中心点から隣接させると360度の全方向をカバーするように、指向性を持たせることが可能である。
【0016】
本実施形態ではビームフォーミング実行時に使用する、上記指向性セクタを、無線通信装置100の設置位置や乗員の乗車状況によって限定し、必要に応じて使用可能とする指向性セクタを動的に更新可能とする。
【0017】
自動車等の車両内に設置される無線通信システムでは、無線通信システムに含まれる無線通信装置は、車両の車体を構成する外板等に近接して設置される可能性が高いので、外板等の方向に指向性を有する指向性セクタの電波は遮蔽される可能性も高くなる。すなわち、外板等の方向に指向性を有する指向性セクタの電波は、外板等の遮蔽効果による電波損失によって、高品質な無線通信を実現することが困難になる可能性が極めて高くなる。
【0018】
また、車両の乗員が電波の遮蔽体となり、乗員の車両内の移動によって、乗員の方向に指向性を有する指向性セクタの電波は遮蔽される可能性も高くなる。すなわち、外板等と同様に、乗員の方向に指向性を有する指向性セクタの電波は、乗員の遮蔽効果による電波損失によって、高品質な無線通信を実現することが困難になる可能性が高くなる。
【0019】
そこで、本実施形態では、乗員や外板等の遮蔽効果を有する物体の方向に指向性を有する指向性セクタをあらかじめ除外して、SLS(Sector Level Sweep)におけるSSWフレームの送信数自体を削減する。そしてこのことによって、通信遅延を抑制することを可能にする。
【0020】
(ビームフォーミングの概要)
続いて、無線通信装置100の間での無線通信を行う際に実行されるビームフォーミングについて、
図13を用いて概説する。なお、IEEE802.11ad規格において規定された手順について説明するが、これ以外の方法でビームフォーミングが実行されてもよい。
【0021】
IEEE802.11ad規格におけるビームフォーミング手順は、大きく2つの段階に分けられる。1段階目は、相手装置を発見するための手順であるセクタレベルスイープ(SLS)であり、2段階目は、ビームの微調整を行う手順であるビームリファインメントである。なお、この手順を開始する装置はイニシエータ(Initiator)と呼ばれ、イニシエータに呼応してこの手順を実行する装置はレスポンダ(Responder)と呼ばれる。本実施形態では、例えば、
図13のSTA1がイニシエータとして動作し、STA2が、レスポンダとして動作するものとするが、この逆であってもよい。
【0022】
図13に示すように、セクタレベルスイープでは、まず、イニシエータが、セクタスイープフレーム(SSW)を送信する。このとき、イニシエータは、アンテナを制御して、メインローブの向きがそれぞれ異なる複数のビームパターンを用いて、その複数のビームパターンのそれぞれにおいてセクタスイープフレームを送信する。1つのビームパターンでフレームが送信される範囲は、セクタと呼ばれる。すなわち、イニシエータは、複数のセクタのそれぞれにおいて、セクタスイープフレームを送信する。なお、レスポンダは、この段階では、アンテナの指向性が擬似無指向性となるようにアンテナを制御して、イニシエータからのセクタスイープフレームの受信を待機する。なお、上記「アンテナの制御」とは、各アンテナ素子で送信される信号に所定のアンテナウェイトを乗じて送信するようにする処理や、各アンテナ素子で受信された信号に所定のアンテナウェイトを乗じて加算する処理等であり得る。
【0023】
次に、レスポンダが、セクタスイープフレームを送信する。このとき、レスポンダは、メインローブの向きがそれぞれ異なる複数のビームパターンを用いて、その複数のビームパターンのそれぞれにおいてセクタスイープフレームを送信する。また、イニシエータは、アンテナの指向性が擬似無指向性となるようにアンテナを制御してこのセクタスイープフレームを受信する。すなわち、送信側と受信側とを入れ替えて同様の処理が実行される。
【0024】
その後、
図13に示すように、セクタスイープフィードバックが行われる。イニシエータは、セクタスイープフィードバックフレーム(SSW-FB)を送信し、レスポンダは、このセクタスイープフィードバックフレームを受信すると、セクタスイープACK(SSW-ACK)を返信する。このフィードバック及びACKでは、例えば、少なくとも無線品質が良好だった一部のセクタについて、そのセクタの識別子と無線品質情報が相手装置へ通知される。これにより、イニシエータ及びレスポンダは、フレームを送信した場合に良好な無線品質を得ることができるセクタを特定することができる。このようにして、セクタレベルスイープによって、良好な無線品質を得ることができるセクタを特定することができる。
【0025】
セクタレベルスイープに続いて、ビームリファインメントプロトコルが実行される場合がある。なお、本実施形態においては、ビームリファインメントプロトコルの説明は、省略する。
【0026】
(無線通信装置の構成)
上記概要において説明した機能を有する無線通信装置100の構成の一例について、
図3を参照して説明する。
【0027】
無線通信装置100は、PHY部110、MAC部120、制御部130、記憶部140および外部I/F部150を含む(MAC:Medium Access Control、PHY:PHYsical layer、I/F:InterFace)。アンテナ素子ANT1、アンテナ素子ANT2、アンテナ素子ANTX(Xは3以上の自然数)を含むセクタアンテナを構成する指向性アンテナ部ANTおよび乗員乗車状況検出部500は無線通信装置100に含まれる場合と含まれない場合がある。なお、設置位置情報設定装置300および制御情報設定装置400は、無線通信装置100に情報を設定する付随装置として説明する。
【0028】
無線通信装置100は以上のブロックを含む一般的なコンピュータであり得る。一般的なコンピュータが制御プログラムを実行することにより、
図3に示す機能を実現することが可能となる。以下、本実施形態における特徴に関連する部分についてのみ説明する。従って、無線通信装置100は、本実施形態における特徴に直接関係しない他の機能ブロックを備えることは勿論である。
【0029】
なお、記憶部140は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク等であり得る。記憶部140は、無線通信装置100が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶することも可能である。なお、無線通信装置100の一部の機能は、CPU(Central Processing Unit)で実行されることが可能である。
【0030】
指向性アンテナ部ANTは、複数のセクタを形成可能なアンテナであり、
図3に示すように複数のアンテナ素子によって任意の方向に電波ビームを設定可能なアレイアンテナであってもよい。また、指向性を有する複数のアンテナの集合体であってもよい。アレイアンテナでは、複数のアンテナ素子から電波が同相で加わりあうように各アンテナ素子の電流位相を調整することによって、アンテナを固定した状態で、電波ビームの指向性を任意の方向に向けることが可能になる。
【0031】
PHY部110は、情報を電波に乗せて伝送するための変復調等の処理を実行し、PHYフレームの生成、解析等の処理を実行する。変復調等の処理を実行するためのパラメータは記憶部140の制御情報記憶部141に記憶されることが可能である。なお、PHY部110は、通信プロトコル(通信規約)を階層化したモデルにおける階層の物理層に該当する機能を実行することが可能である。
【0032】
MAC部120は、複数の無線通信装置100間において伝送媒体となる電波を共有するための多元接続制御等の処理を実行する。多元接続制御等の処理を実行するためのパラメータは記憶部140の制御情報記憶部141に記憶されることが可能である。なお、MAC部120は、通信プロトコルを階層化したモデルにおける階層のMAC層に該当する機能を実行することが可能である。
【0033】
制御部130は、SLS制御部131およびデータ通信制御部132を含む。
【0034】
SLS制御部131は、ビームフォーミング動作におけるSLS動作を実行するための機能を有する複数の機能ブロックを含む。SLS制御部131は、自無線通信装置がレスポンダとなった場合の、ノード判定部131a、セクタ判定部131b、信号品質測定部131cおよびセクタ決定部131dを含む。また、SLS制御部131は、自無線通信装置がイニシエータとなった場合のSSWフレーム生成部131e、送信セクタ選択部131fおよび送信セクタ決定部131gが含まれる。
【0035】
SSWフレーム生成部131eは、イニシエータの各セクタから送信されるSSWフレームを生成する動作を実行する。
【0036】
送信セクタ選択部131fは、後述する制御情報記憶部141および使用セクタ選択情報記憶部143を参照して、SLSに使用されるセクタを選択する動作を実行する。具体的には、送信セクタ選択部131fは、自無線通信装置の識別情報を制御情報記憶部141から取得する。次に、送信セクタ選択部131fは、使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置の識別情報に対応する、自無線通信装置が使用可能である使用セクタの識別情報を取得する。すなわち、無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置が使用可能な使用セクタを選択する。次に、送信セクタ選択部131fは、乗員乗車状況記憶部143bを参照して乗員乗車状況情報を抽出する。次に、自無線通信装置の識別情報と乗員乗車状況情報から、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在するか否かを判定する。乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在する場合には、選択されたSLSに使用されるセクタから当該除外セクタを除いて、SLSに使用されるセクタを選択する。
【0037】
送信セクタ選択部131fは、上述のように選択されたSLSに使用されるセクタを順番に選択し、SSWフレームを他の無線通信装置100に送信する。
【0038】
送信セクタ決定部131gは、レスポンダから受信したレスポンダにおける通信品質が最も良好であると決定された送信セクタを、無線通信を実行するための送信セクタとして決定する。なお、送信セクタ決定部131gが決定した送信セクタは、レスポンダからの通信データを受信するための受信セクタとしても使用される。
【0039】
次に、自無線通信装置がレスポンダとなった場合の、ノード判定部131a、セクタ判定部131b、信号品質測定部131c、および、セクタ決定部131dについて説明する。
【0040】
ノード判定部131aは、受信したSSWフレームからSSWフレームを送信したノード情報を抽出し、SSWフレームを送信したノードを判定する。
【0041】
セクタ判定部131bは、受信したSSWフレームからSSWフレームを送信したノードにおいて、SSWフレームを送信したセクタを判定する。
【0042】
信号品質測定部131cは、受信したSSWフレームの信号品質を測定する。また、信号品質測定部131cは、測定された信号品質情報を、ノード判定部131aで判定されたノードの識別情報、および、セクタ判定部131bで判定されたセクタの識別情報と対応付けて他ノードセクタ品質情報記憶部142に記憶する。なお、測定される通信品質情報には、電波強度等のRSSI(Received Signal Strength Indicator)等の情報が含まれてもよい。また、通信品質情報には、BER(bit error rate)、PER(Packet Error Rate)等の情報が含まれてもよい。さらに、通信品質情報には、SNR(Signal to Noise Ration)、RCPI(Received Channel Power Indicator)等の情報が含まれてもよい。さらに、通信品質情報には通信遅延時間情報、遮蔽損失情報が含まれてもよい。また、通信品質情報は上記の各種の通信品質情報のいずれか一つであってもよい。
【0043】
セクタ決定部131dは、他ノードセクタ品質情報記憶部142を参照し、一連のSSWフレームを送信したノードにおいて、最も通信品質情報が良好なSSWフレームを送信したセクタを決定する。決定された最も通信品質情報が良好なセクタのセクタ識別情報は、一連のSSWフレームを送信したイニシエータであるノードに送信される。
【0044】
データ通信制御部132は、送信セクタ決定部131gにおいて決定されたセクタを使用して通信データの制御を実行する。
【0045】
記憶部140は、制御情報記憶部141、他ノードセクタ品質情報記憶部142および使用セクタ選択情報記憶部143を含む。
【0046】
制御情報記憶部141には、無線通信に必要な制御パラメータ値、無線通信装置100の識別情報、無線通信装置100の配置番号等の設置位置情報、無線通信装置100が設置されている位置関係を示す領域位置関係情報等の情報が記憶される。設置位置情報および領域位置関係情報については後述する。
【0047】
他ノードセクタ品質情報記憶部142には、信号品質測定部131cによって測定された信号品質情報が、ノード判定部131aで判定されたノードの識別情報、および、セクタ判定部131bで判定されたセクタの識別情報と対応付けて記憶される。すなわち、自無線通信装置がレスポンダとして動作する場合の受信したSSWフレームの信号品質情報、SSWフレームを送信した無線通信装置100のセクタの識別情報、および、SSWフレームを送信した無線通信装置100の識別情報が対応付けて記憶される。
【0048】
使用セクタ選択情報記憶部143には、使用可否セクタ記憶部143a、乗員乗車状況記憶部143bおよび乗員乗車時除外セクタ記憶部143cが含まれる。
【0049】
使用可否セクタ記憶部143aには、
図4および
図5に示すように、無線通信装置100の設置位置情報に対応付けられて、SLSに使用されるセクタおよびSLSに使用されないセクタを示す使用可否セクタ情報が記憶されている。無線通信装置100は、SLSの実行を始める前に、使用可否セクタ記憶部143aを参照し、SLSの実行に使用可能なセクタを判定する。使用可否セクタ記憶部143aに記憶される情報は、移動体の製造時や整備時に外部I/F部150を介して外部の電子機器から設定されることが可能である。当該電子機器の一例には、
図3に示す制御情報設定装置400が挙げられる。制御情報設定装置400はCPUを含む一般的なコンピュータ装置であってもよい。
【0050】
乗員乗車状況記憶部143bには、
図8に示すような車両等の移動体の乗員の乗車状況情報が記憶される。
図8においては、一例として、車両の各座席に乗員が着座しているか否かを示す情報が図示されている。例えば、着座している場合を「1」で表現し、着座していない場合を「0」で表現することも可能であるが、着座情報はこれに限定されるわけではない。また、乗員乗車状況記憶部143bには、移動体の乗員の乗車位置が移動体の座標情報として記憶されることも可能である。この場合には、座標情報は乗員の体格や態勢によって、ある領域を示す情報として表現されることも可能である。なお、移動体の乗員の乗車状況に関する情報が着座情報である場合には、移動体の走行時に乗員へシートベルトの着用を促す、図示しないシートベルトリマインダシステムを利用することが可能である。また、移動体の乗員の乗車状況に関する情報は、交通事故等による衝撃発生時に乗員を保護する、図示しないエアバッグシステムの乗員検知センサ情報を利用することも可能である。さらに、移動体の乗員の乗車状況に関する情報が領域を示す座標情報である場合には、無線通信装置100の電波を利用することが可能である。詳細については後述する。
【0051】
乗員乗車時除外セクタ記憶部143cには、乗員の移動体の乗車位置に応じて、SLSに使用されないセクタがあらかじめ決定されて記憶される。例えば、
図7および
図9に示すように、乗員が運転席に着座している場合には、運転席に最も近い無線通信装置100が設置される設置位置を示す配置番号3において、セクタ8、9、10、11がSLSに使用されないセクタになることが記憶される。すなわち、乗員の移動体の乗車位置に最も近い、あらかじめ定められた配置番号の無線通信装置100において、SLSに使用されないセクタが記憶される。
図9においては、乗車位置が座席に対応付けられているが、上述したように、乗車位置が領域を示す座標情報である場合もあり得る。
【0052】
上述したように、無線通信装置100がSLSを実行する前に、使用可否セクタ記憶部143aを参照し、SLSに使用されるセクタを認識し、乗員の乗車状況に応じて、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cを参照して、さらに、除外セクタを決定可能となる。
【0053】
外部I/F部150は、送受信される通信データおよび各種データの入出力インターフェースであり、無線通信装置100と接続されるセンサ等のデバイス、または、電子装置とのインターフェースである場合がある。なお、外部I/F部150に接続されるデバイス、または、電子装置によって、ECU(Electronic Control Unit)が構成されてもよい。電子装置には、車載機器としての車両制御機器、車両センシング機器、車両周辺情報取得機器、および、エンタテイメント機器等の電子機器が含まれてもよい。なお、車両制御機器にはナビゲーション機器や自動運転制御機器が含まれてもよい。
【0054】
設置位置情報設定装置300は、無線通信装置100が移動体に設置される設置位置情報等の情報を、無線通信装置100の外部I/F部150を介して、制御情報記憶部141に記憶させるように動作することが可能である。制御情報記憶部141に設置位置情報等の情報が記憶されるタイミングは、無線通信装置100が移動体に取り付けられるタイミングであることが好ましいがこれに限定されるわけではない。また、設置位置情報設定装置300にディップスイッチ等のスイッチが使用されてもよい。
【0055】
制御情報設定装置400は、無線通信システム1000において使用される変復調、多元接続制御等の処理を実行するためのパラメータ等の無線通信に必要な制御情報を、制御情報記憶部141に記憶させるように動作することが可能である。制御情報記憶部141に制御情報等の情報が記憶されるタイミングは、無線通信装置100が移動体に取り付けられるタイミングであることが好ましいがこれに限定されるわけではない。
【0056】
乗員乗車状況検出部500は、図示しないシートベルトリマインダシステム、エアバッグシステム、CCDカメラ等の撮像装置を含む撮像システムであってもよい。撮像システムは、乗員の移動体の座席への着座状況ばかりではなく、乗員の移動体における乗車位置を、座標情報として出力することが可能である。乗員乗車状況検出部500が出力した情報は、無線通信装置100の外部I/F部150を介して、乗員乗車状況記憶部143bに記憶される。
【0057】
上記のような構成によれば、すべてのセクタからSSWフレームを送信する必要がなくなるため、セクタ数が多い場合にもSLSに係わる遅延時間を短縮することが可能になる。また、無線通信装置100の設置環境、および、無線通信装置100が設置されている移動体の乗員の乗車状況により使用する可能性が低いセクタでのSSWフレーム送信が実行されないので、SLSに係わる遅延時間を大幅に短縮することが可能になる。
【0058】
(乗員が搭乗していない場合の外板等による除外セクタの一例)
次に、本実施形態についてさらに説明する。
図4は、無線通信装置100の設置位置に応じて、外板等による電波の遮蔽効果が考慮された、使用される指向性セクタの限定イメージの一例を示す模式図である。
【0059】
無線通信装置100a、無線通信装置100b、無線通信装置100g、無線通信装置100hでは、車体を構成するファイアウォールや外板に対向する指向性セクタを除外した8つの指向性セクタを使用可能な指向性セクタとする。具体的には、
図5に示すように、無線通信装置100aにおいては、セクタ1~12だけを使用可能な指向性セクタとする。また、
図5に示すように、無線通信装置100bにおいては、セクタ1~12だけを使用可能な指向性セクタとする。さらに、
図5に示すように、無線通信装置100gにおいては、セクタ13~18だけを使用可能な指向性セクタとする。さらに、
図5に示すように、無線通信装置100hにおいては、セクタ19~24だけを使用可能な指向性セクタとする。
【0060】
また、無線通信装置100c、無線通信装置100d、無線通信装置100e、無線通信装置100fでは、ドアパネルに対向する指向性セクタを除外した12個の指向性セクタを使用可能な指向性セクタとする。一例として、無線通信装置100cについて具体的に示すと、
図5に示すように、無線通信装置100cにおいては、セクタ7~18だけを使用可能な指向性セクタとする。
【0061】
各ノードにおける使用可能な指向性セクタは、使用可否セクタ記憶部143aに記憶される。また、使用可否セクタ記憶部143aには、無線通信システム1000に含まれるすべての無線通信装置100の使用可能な指向性セクタが記憶されている。したがって、送信要求が発生した無線通信装置は、送信要求に係わる自無線通信装置を認識し、自無線通信装置の使用可能な指向性セクタについてだけ、SSWフレームの送信を実行する。すなわち、送信要求が発生した無線通信装置は、使用可否セクタ記憶部143aに記憶されている、送信要求に係わる自無線通信装置の使用可能な指向性セクタを選択し、SSWフレームの送信を実行する。
【0062】
使用可否セクタ記憶部143aには、
図5に示すように、無線通信システム1000に所属するすべての無線通信装置の設置位置に対する指向性セクタの使用可能および使用不可能を示す使用可能・使用不可能情報が記憶されている。例えば、使用可能情報を「1」とし、使用不可能情報を「0」とすることができるが、使用可能・使用不可能情報の認識方法はこれに限定されるわけではない。無線通信装置システムは、任意の情報を使用可能情報に対応付け、その他の任意の情報を使用不可能情報に対応付けることが可能である。例えば、同一の使用可能情報を有する指向性セクタのグループ、同一の使用不可能情報を有する指向性セクタのグループを無線通信装置ごとに設定することも可能である。
【0063】
すべての無線通信装置の設置位置に対する指向性セクタの使用可能および使用不可能を示す使用可能・使用不可能情報は、さまざまな方法で使用可否セクタ記憶部143aに記憶されることが可能である。一例として、記憶部140の使用可否セクタ記憶部143aには、車両を含む移動体の設計時に評価された使用可能・使用不可能情報が移動体の製造時に、外部I/F部150を介して設定されることも可能である。また、自無線通信装置の識別情報も、記憶部140の制御情報記憶部141に移動体の製造時に、外部I/F部150を介して設定されることも可能である。また、電波遮蔽体が新たに移動体内に設置または削除されるような変更が発生した場合には、整備工場等において、使用可否セクタ記憶部143aの使用可能・使用不可能情報が更新されることも可能である。
【0064】
(乗員が搭乗していない場合の無線通信装置の動作例)
図6は、乗員が搭乗していない場合の無線通信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS601において、移動体の電気スイッチがOFF状態からON状態、または、スリープモード等からウェイクアップモード等になり、移動体の無線通信装置100が起動したか否かが判定される。移動体の無線通信装置100が起動した場合(ステップS601:YES)には、無線通信装置100は動作を開始するために、ステップS602に進む。移動体の無線通信装置100が起動していない場合(ステップS601:NO)には、無線通信装置100は、ステップS601を繰り返し、動作の開始を待機する。
【0066】
ステップS602において、無線通信装置100は自無線通信装置の識別情報を取得する。識別情報は制御情報記憶部141にあらかじめ記憶されている。識別情報は移動体内の無線通信装置の配置情報と対応付けられていてもよい。例えば、移動体内において、無線通信装置100が配置されるすべての領域が領域位置関係情報として存在し、無線通信装置100の識別情報は当該領域の領域識別情報と対応付けられてもよい。この場合には、領域位置関係情報も無線通信装置100の記憶部140のいずれかの領域にあらかじめ記憶されていることが可能である。例えば、領域位置関係情報も制御情報記憶部141にあらかじめ記憶されていてもよい。次に、無線通信装置100は、ステップS603に進む。
【0067】
ステップS603において、無線通信装置100は使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置の識別情報を参照して、自無線通信装置が使用可能である使用セクタの識別情報を取得する。すなわち、無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置が使用可能な使用セクタを選択する。なお、ステップS603の動作は、ステップS604とステップS605の間に実行されることも可能である。次に、無線通信装置100は、ステップS604に進む。
【0068】
ステップS604において、無線通信装置100は自無線通信装置に送信要求が発生しているか否かを判定する。自無線通信装置に送信要求が発生している場合(ステップS604:YES)には、無線通信装置100はステップS605に進む。自無線通信装置に送信要求が発生していない場合(ステップS604:NO)には、無線通信装置100はステップS604を繰り返す。なお、自無線通信装置に送信要求が発生していない場合には、無線通信装置100は受信モードになり、他の無線通信装置からの通信データの受信・傍受を実行する場合があってもよい。
【0069】
ステップS605において、無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aにおいて使用可能とされている使用セクタに限定してSLS動作を実行し、自無線通信装置にとって最も通信品質が良好な使用セクタを選択する。また、宛先無線通信装置も、宛先無線通信装置にとって最も通信品質が良好な使用セクタを選択する。次に、無線通信装置100は、ステップS606に進む。
【0070】
ステップS606において、無線通信装置100は、ステップS605において選択された最も通信品質が良好な使用セクタを介して、通信データを送信する。次に、無線通信装置100は、ステップS604に戻る。
【0071】
(乗員が搭乗している場合の乗員等による除外セクタの一例)
図7は、無線通信装置の設置位置に応じて、乗員等による電波の遮蔽効果が考慮された使用される指向性セクタの限定イメージの一例を示す模式図である。
【0072】
図7においては、乗員が右前方の運転席と、左後方の後部座席に着座している場合を想定している。
図7では、
図4における無線通信装置の設置位置に応じた外板等による遮蔽効果が考慮された除外セクタに加えて、乗員に隣接した位置に配置された無線通信装置に対しても、除外セクタを加えて、SLSを実行するための時間を低減している。
【0073】
例えば、運転席に着座した運転者に隣接する無線通信装置100cにおいては、運転者方向に指向性を有するセクタ8、9、10、11を除外セクタとする。同様に、左後方の後部座席に着座した乗員に隣接する無線通信装置100fにおいては、乗員方向に指向性を有するセクタ2、3、4、5を除外セクタとする。なお、除外セクタは乗員1人に対して当該乗員に直近する無線通信装置100の一台に設定されるものとする。ただし、配置番号1である領域1に設置される無線通信装置100a、配置番号2である領域2に設置される無線通信装置100b、配置番号9である領域9に設置される無線通信装置100iには、乗員に対する除外セクタを設定しない。また、配置番号7である領域7に設置される無線通信装置100g、配置番号8である領域8に設置される無線通信装置100hにも、乗員に対する除外セクタを設定しない。
【0074】
図9は、乗員の着座位置に対応して、無線通信装置に設定される除外セクタの一覧を示した表である。
図9の情報は、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに記憶される。例えば上述したように、運転席に着座した運転者に対して最も近くの領域3に設置される無線通信装置100cにおいては、運転者方向に指向性を有するセクタ8、9、10、11を除外セクタとする。また、上述したように、左後方の後部座席に着座した乗員に対して最も近くの領域6に設置される無線通信装置100fにおいては、乗員方向に指向性を有するセクタ2、3、4、5を除外セクタとする。
【0075】
さらに、助手席に着座した乗員に対して最も近くの領域4に設置される無線通信装置100dにおいては、助手席の乗員方向に指向性を有するセクタ2、3、4、5を除外セクタとする。また、右後方の後部座席に着座した乗員に対して最も近くの領域5に設置される無線通信装置100eにおいては、乗員方向に指向性を有するセクタ9、10、11、12を除外セクタとする。これらの乗員乗車時の除外セクタは、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cにあらかじめ記憶されている。例えば、移動体の製造時に、外部I/F部150を介して設定されることも可能である。
【0076】
なお、移動体の乗員の乗車状況に関する情報は、移動体の走行時に乗員へシートベルトの着用を促す、図示しないシートベルトリマインダシステムを利用することが可能である。また、移動体の乗員の乗車状況に関する情報は、交通事故等による衝撃発生時に乗員を保護する、図示しないエアバッグシステムの乗員検知センサ情報を利用することも可能である。乗員検知センサとしては、座席のシート内に電極を内蔵させ、乗員乗車時の静電容量変化によって、乗員の乗車状況に関する情報を取得するセンサがある。また、移動体の乗員が乗車する移動体内空間に設置された撮像装置によって撮像された撮像画像によって、乗員の乗車状況に関する情報を取得することも可能である。また、電波等の無線信号を放射し、無線信号の反射波によって、乗員の乗車状況に関する情報を取得することも可能である。電波等の無線信号は、無線通信装置100の指向性アンテナ部ANTから放射されてもよいし、無線通信装置100の外部I/F部150に接続される電子機器から放射されてもよい。
【0077】
また、移動体の乗員の乗車状況に関する情報は、周期的または乗員の乗車状況に変化があった場合に、無線通信装置100に通知されることが可能である。例えば、シートベルトリマインダシステムやエアバッグシステムのECUに接続された無線通信装置100から他の無線通信装置100にユニキャスト、マルチキャストまたはブロードキャストされることが可能である。各無線通信装置100は、移動体の乗員の乗車状況に関する情報を受信すると
図8に示す乗員乗車状況を更新する。
図8に示す乗員乗車状況に関する情報は、各無線通信装置100の乗員乗車状況記憶部143bに記憶される。
【0078】
送信要求が発生した無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aを参照し、自無線通信装置のSLSに使用されるセクタを抽出する。さらに、無線通信装置100は、乗員乗車状況記憶部143bを参照して乗員乗車状況情報を抽出する。次に、自無線通信装置の識別情報と乗員乗車状況情報から、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在するか否かを判定する。乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在する場合には、抽出された当該SLSに使用されるセクタから当該除外セクタを除いて、SLSに使用されるセクタを決定する。無線通信装置100は、決定された当該SLSに使用されるセクタを使用してSLSを実行する。
【0079】
上記の無線通信装置100の動作によれば、移動体のシャーシ等の構造体や乗員による遮蔽効果によって、良好な通信品質が期待できないセクタを除いてSLSを実行できるので、SLSに係わる不必要となる可能性があるサーチ時間を短縮することが可能になる。
【0080】
(乗員が搭乗している場合を考慮した無線通信装置の動作例)
図10は、乗員が搭乗している場合を考慮した無線通信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0081】
ステップS1001において、移動体の電気スイッチがOFF状態からON状態、または、スリープモード等からウェイクアップモード等になり、移動体の無線通信装置100が起動したか否かが判定される。移動体の無線通信装置100が起動した場合(ステップS1001:YES)には、無線通信装置100は動作を開始するために、ステップS1002に進む。移動体の無線通信装置100が起動していない場合(ステップS1001:NO)には、無線通信装置100は、ステップS1001を繰り返し、動作の開始を待機する。
【0082】
ステップS1002において、無線通信装置100は自無線通信装置の識別情報を取得する。識別情報は制御情報記憶部141にあらかじめ記憶されている。識別情報は移動体内の無線通信装置の配置情報と対応付けられていてもよい。例えば、移動体内において、無線通信装置100が配置されるすべての領域が領域位置関係情報として存在し、無線通信装置100の識別情報は当該領域の領域識別情報と対応付けられてもよい。この場合には、領域位置関係情報も無線通信装置100の記憶部140のいずれかの領域にあらかじめ記憶されていることが可能である。例えば、領域位置関係情報も制御情報記憶部141にあらかじめ記憶されていてもよい。次に、無線通信装置100は、ステップS1003に進む。
【0083】
ステップS1003において、無線通信装置100は使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置の識別情報を参照して、自無線通信装置が使用可能である使用セクタの識別情報を取得する。すなわち、無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aから、自無線通信装置が使用可能な使用セクタを選択する。なお、ステップS1003の動作は、ステップS1006とステップS1007の間に実行されることも可能である。次に、無線通信装置100は、ステップS1004に進む。
【0084】
ステップS1004において、無線通信装置100は、乗員乗車状況記憶部143bを参照して乗員乗車状況情報を抽出する。次に、自無線通信装置の識別情報と乗員乗車状況情報から、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在するか否かを判定する。乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに対応する除外セクタが存在する場合には、抽出された当該SLSに使用されるセクタから当該除外セクタを除いて、SLSに使用されるセクタを決定する。なお、ステップS1003の動作が、ステップS1006とステップS1007の間に実行される場合には、ステップS1004の動作は移動したステップS1003の動作のあとに実行される。次に、無線通信装置100は、ステップS1005に進む。
【0085】
ステップS1005において、無線通信装置100は、乗員の乗車状況が変化したか否かを判定する。乗員の乗車状況が変化した場合(ステップS1005:YES)には、再度除外セクタを確認するために、無線通信装置100は、ステップS1003に戻る。乗員の乗車状況が変化していない場合(ステップS1005:NO)には、無線通信装置100は、ステップS1006に進む。
【0086】
ステップS1006において、無線通信装置100は、自無線通信装置に送信要求が発生しているか否かを判定する。自無線通信装置に送信要求が発生している場合(ステップS1006:YES)には、無線通信装置100はステップS1007に進む。自無線通信装置に送信要求が発生していない場合(ステップS1006:NO)には、無線通信装置100はステップS1005に戻る。なお、自無線通信装置に送信要求が発生していない場合には、無線通信装置100は受信モードになり、他の無線通信装置からの通信データの受信・傍受を実行する場合があってもよい。
【0087】
ステップS1007において、無線通信装置100は、ステップS1004において決定されたSLSに使用されるセクタに限定してSLS動作を実行し、自無線通信装置にとって最も通信品質が良好な使用セクタを選択する。また、宛先無線通信装置も、宛先無線通信装置にとって最も通信品質が良好な使用セクタを選択する。次に、無線通信装置100は、ステップS1008に進む。
【0088】
ステップS1008において、無線通信装置100は、ステップS1007において選択された最も通信品質が良好な使用セクタを介して、通信データを送信する。次に、無線通信装置100は、ステップS1005に戻る。
【0089】
上記の無線通信装置100の動作によれば、移動体のシャーシ等の構造体や乗員による遮蔽効果によって、良好な通信品質が期待できないセクタを除いてSLSを実行できるので、SLSに係わる不必要となる可能性があるサーチ時間を短縮することが可能になる。
【0090】
(変形例1)
上記実施形態においては、セクタの分割数は24個を中心に説明したが、セクタの分割数は24個に限定されるわけではなく、24個よりも大きい分割数、24個よりも少ない分割数であってもよい。また、セクタは、等角に分割される必要はなく、分割されたセクタがカバーする角度が相互に異なっていてもよい。また、セクタは2次元に分割されるだけではなく、図示しない3次元方向に分割し、分割されたすべてのセクタを、図示しない中心点から隣接させると360度の全方向をカバーするように、指向性を持たせることが可能である。この場合にも、セクタは、等立体角に分割される必要はなく、分割されたセクタがカバーする立体角が相互に異なっていてもよい。
【0091】
(変形例2)
上記の実施形態において、移動体の乗員の乗車状況に関する情報は、図示しないシートベルトリマインダシステムやエアバッグシステムの乗員検知センサ情報を利用することを中心に説明したが、乗員検知機能を無線通信装置100に持たせることも可能である。
【0092】
例えば、無線通信装置100間で無線通信を周期的、または、あらかじめ定められたタイミングで実行し、無線通信装置100間の通信品質を示す無線通信装置100間の通信状況を移動体内のすべての無線通信装置100で共有する。そして、無線通信装置100間の通信状況から乗員の特定位置に対する有無、または、移動体内の乗員の位置を推定することも可能である。
【0093】
無線通信装置100間の通信状況の一例を
図11に示す。
図11の横方向は、
図1等における無線通信装置100が配置される領域を示す配置番号であり、
図11の縦方向も、
図1等における無線通信装置100が配置される領域を示す配置番号である。
図11の配置番号1と配置番号2との交点には記号「〇」が記載されている。これは、配置番号1に取り付けられた無線通信装置100aと配置番号2に取り付けられた無線通信装置100bとの無線通信の品質が良好であることを示している。無線通信の品質は、送受信方向とは無関係に決定されるものとしている。すなわち、無線通信装置100aが送信装置となり無線通信装置100bが受信装置になった場合の無線通信の品質と、無線通信装置100aが受信装置となり無線通信装置100bが送信装置になった場合の無線通信の品質は同じものとする。
【0094】
通信品質を示す情報には、電波強度等のRSSI等の情報が含まれてもよい。また、通信品質を示す情報には、BER、PER等の情報が含まれてもよい。さらに、通信品質を示す情報には、SNR、RCPI等の情報が含まれてもよい。さらに、通信品質を示す情報には通信遅延時間情報、遮断損失等の情報が含まれてもよい。
【0095】
図11において、記号「〇」は、無線通信装置100間の通信が良好であることを示し、通信品質を示す情報があらかじめ定められた第1の閾値を通信品質が良好な方向に超えていることを示している。また、記号「×」は、無線通信装置100間の通信が不可能であることを示し、通信品質を示す情報があらかじめ定められた第2の閾値を通信品質が悪くなる方向に超えていることを示している。さらに、記号「△」は、通信品質を示す情報があらかじめ定められた第1の閾値と第2の閾値との間にあり、無線通信装置100間の通信が可能である状態を示している。第1の閾値および第2の閾値は無線通信システム1000において任意の値に設定されることが可能である。
【0096】
図12は、
図11に示す無線通信装置100間の通信状況から乗員位置を判定する判定表の一例であり、無線通信システム内のすべての無線通信装置100の記憶部140に記憶されている。
【0097】
例えば、配置番号1に取り付けられた無線通信装置100aと配置番号5に取り付けられた無線通信装置100eとの無線通信の品質が「×」である場合には、
図12から運転席に乗員が着座していると、無線通信装置100は推定可能である。同様に、無線通信装置100が運転席に乗員が着座していると推定する場合は、配置番号3に取り付けられた無線通信装置100cと配置番号6に取り付けられた無線通信装置100fとの無線通信の品質が「×」である場合である。このように、単一通信経路が通信不可となるによって、対応する乗車位置に乗員が存在すると推定可能な場合がある。なお、乗車位置の推定確度を向上させるために、配置番号1と配置番号5の無線通信、および、配置番号3と配置番号6の無線通信が同時に通信不可となった場合に、無線通信装置100は運転席に乗員が着座していると推定することも可能である。
【0098】
以下、同様に、配置番号4に取り付けられた無線通信装置100dと配置番号5に取り付けられた無線通信装置100eとの無線通信が不可能の場合には、
図12から助手席に乗員が着座していると、無線通信装置100は推定可能である。また、配置番号2に取り付けられた無線通信装置100bと配置番号6に取り付けられた無線通信装置100fとの無線通信が不可能の場合には、
図12から助手席に乗員が着座していると、無線通信装置100は推定可能である。
【0099】
また、配置番号5に取り付けられた無線通信装置100eと配置番号8に取り付けられた無線通信装置100hとの無線通信が不可能の場合には、
図12から後席右側に乗員が着座していると、無線通信装置100は推定可能である。また、配置番号6に取り付けられた無線通信装置100fと配置番号7に取り付けられた無線通信装置100gとの無線通信が不可能の場合には、
図12から後席左側に乗員が着座していると、無線通信装置100は推定可能である。
【0100】
また、以下に説明するように、単一の通信経路では推定できないが、複数の通信経路が同時に通信不可となる場合に、対応する乗車位置に乗員が存在すると推定可能な場合がある。
【0101】
例えば、無線通信装置100が後席中央に乗員が着座していると推定する場合は、配置番号3と配置番号8との無線通信、および、配置番号4と配置番号7との無線通信が同時に通信不可となる場合である。すなわち、配置番号3の無線通信装置100cと配置番号8の無線通信装置100hとの無線通信、および、配置番号4の無線通信装置100dと配置番号7の無線通信装置100gとの無線通信が同時に通信不可となる場合である。
【0102】
上述の構成によれば、無線通信装置100に追加の部材を必要とせず、また、他の乗員検知システムとも連携させずに、乗員の乗車状況を検知できるので、システム構成が簡易かつ安価に実現することが可能になる。
(変形例3)
上記実施形態における説明では、自動車内に設置された無線通信システム1000によって構築されるネットワークを一例として説明している。しかし、実施形態は自動車内に限定されるものではなく、変形例2と組み合わせて、列車、飛行機、船舶等の移動体の内部、家屋、工場等の構造体の内部などに構築されたメッシュネットワーク全般に適用することが可能である。
【0103】
(変形例4)
以上の実施形態の説明では、通信データとして特定のデータについて説明していないが、アプリケーションについては限定されるわけではない。例えば、通信データは移動体の状況を検知するセンサの情報、移動体を制御する情報、移動体に搭載された電子機器の情報等の情報である場合がある。センサには、ドアの開閉検知センサ、シートベルトのセンサ、エンジンの回転センサ、車両の速度センサ、ブレーキやアクセルのセンサ等の各種のセンサが一例として挙げられる。また、電子機器には、ナビゲーション機器、ラジオやテレビ等のエンタテイメント機器が一例として挙げられる。
【0104】
以下に、本実施形態の無線通信装置100および無線通信システム1000の特徴について記載する。
【0105】
本開示の第1の態様に係る、電波の送受信方向の指向性を規定するセクタを複数設定可能な無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aを含むことが好ましい。使用可否セクタ記憶部143aには、無線通信装置の電波環境に対するあらかじめ定められた条件によって決定された、SLSに使用されるセクタ、および、SLSに使用されないセクタが記憶されていることが好ましい。また、無線通信装置100は、使用可否セクタ記憶部143aに記憶された、SLSに使用されるセクタを用いてSLSを実行するSLS制御部131を含むことが好ましい。
【0106】
上記構成によれば、セクタ数が増加したとしても、使用する可能性が小さいセクタを、SSWフレームを送信しない除外セクタとすることによって、セクタ数が多くてもSLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0107】
本開示の第2の態様に係る無線通信装置100は、無線通信装置が設置される移動体における無線通信装置の設置位置を示す設置位置情報が記憶される制御情報記憶部141をさらに含むことが好ましい。また、あらかじめ定められた条件は、無線通信装置が設置される移動体内の設置位置に対応付けられて、SLSに使用されるセクタ、および、SLSに使用されないセクタがあらかじめ定められて決定されることであることが好ましい。さらに、SLS制御部131は、制御情報記憶部141に記憶された自無線通信装置の設置位置を示す設置位置情報に対応付けられて、使用可否セクタ記憶部に記憶されているSLSに使用されるセクタを用いてSLSを実行することが好ましい。
【0108】
上記構成によれば、無線通信装置の設置位置ごとに決定されている、SLSに使用されるべきセクタを用いてSLSを実行するので、SLSに関連する遅延時間を効率よく短縮することが可能となる。
【0109】
本開示の第3の態様に係る無線通信装置100のSLSに使用されるセクタは、無線通信装置が設置される移動体における無線通信装置の設置位置から放射される電波の見通し線の少なくとも一部分が、移動体の内部空間を通過するセクタであることが好ましい。
【0110】
上記構成によれば、電波の見通し線が確保されているセクタであれば、無線通信装置100間における無線通信が可能になる場合があり得る。このような、無線通信の可能性があるセクタだけを使用することによって、SLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0111】
本開示の第4の態様に係る無線通信装置100の設置位置情報は、無線通信装置が設置される移動体内のあらかじめ定められた領域を識別するための領域識別情報であることが好ましい。また、無線通信装置100は、移動体内のすべての領域の領域識別情報、および、移動体内のすべての領域の位置関係を示す領域位置関係情報が、制御情報記憶部141に記憶されていることが好ましい。
【0112】
上記構成によれば、無線通信装置100の設置位置に幅を持たせることが可能となる。また、無線通信装置100は、自無線通信装置と他の無線通信装置の位置関係を判別可能となるので、適切な通信経路によって通信データの送受信を実行することが可能となる。
【0113】
本開示の第5の態様に係る無線通信装置100は、移動体内のセンサによって検知された、移動体に搭乗する乗員の移動体内の位置情報を記憶する乗員乗車状況記憶部143bを含むことが好ましい。また、無線通信装置100は、乗員乗車状況記憶部143bに記憶された乗員の移動体内の位置情報に対応して、SLSに使用されないセクタが記憶される乗員乗車時除外セクタ記憶部143cをさらに含むことが好ましい。SLS制御部131は、自無線通信装置の設置位置情報に対応付けられた、使用可否セクタ記憶部143aのSLSに使用されるセクタから、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cのSLSに使用されないセクタを除いて、SLSを実行することが好ましい。
【0114】
上記構成によれば、乗員が乗車した場合には、乗員の電波遮蔽によって、無線通信装置100間の通信が不良または通信不可能となるセクタが発生する可能性がある。この場合に、通信データの送信前またはSLSの実行前に、乗員の電波遮蔽によって影響が大きく受けるセクタを除外することによって、SLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0115】
本開示の態様に係る無線通信装置100の乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに記憶された、SLSに使用されないセクタは、以下のセクタを含むことが好ましい。すなわち、当該SLSに使用されないセクタは、乗員が移動体内部において着座する着座位置に最も近い位置に配置される無線通信装置によって設定されるセクタの中から、着座位置に着座した乗員に対向する少なくとも一部のセクタを含むことが好ましい。
【0116】
上記構成によれば、着座位置に着座した乗員に対向する、無線通信装置100のセクタは、乗員の電波遮蔽によって、無線通信装置100間の通信が不良または通信不可能となる可能性がある。この場合に、通信データの送信前またはSLSの実行前に、乗員の電波遮蔽によって影響が大きく受けるセクタを除外することによって、SLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0117】
本開示の態様に係る無線通信装置100は、移動体に設置された他の無線通信装置から受信した電波の信号品質に基づいて、移動体に搭乗する乗員の移動体内の位置情報を記憶する乗員乗車状況記憶部143bを含むことが好ましい。また、無線通信装置100は、乗員乗車状況記憶部143bに記憶された乗員の移動体内の位置情報に対応して、SLSに使用されないセクタが記憶される乗員乗車時除外セクタ記憶部143cをさらに含むことが好ましい。SLS制御部131は、自無線通信装置の設置位置情報に対応付けられた、使用可否セクタ記憶部143aのSLSに使用されるセクタから、乗員乗車時除外セクタ記憶部143cのSLSに使用されないセクタを除いて、SLSを実行することが好ましい。
【0118】
上記構成によれば、乗員が乗車した場合には、乗員の電波遮蔽によって、無線通信装置100間の通信が不良または通信不可能となるセクタが発生する可能性がある。この場合に、通信データの送信前またはSLSの実行前に、乗員の電波遮蔽によって影響が大きく受けるセクタを除外することによって、SLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0119】
本開示の態様に係る無線通信装置100の乗員乗車時除外セクタ記憶部143cに記憶される、SLSに使用されないセクタは以下のセクタであることが好ましい。すなわち、当該SLSに使用されないセクタは、無線通信装置と通信する他の無線通信装置との間の空間において、無線通信装置100の設置位置から放射される電波の遮蔽損失の値が、あらかじめ定められた遮蔽損失の値を超えるセクタであることが好ましい。
【0120】
上記構成によれば、乗員が乗車した場合には、乗員の遮蔽損失によって、無線通信装置100間の通信が不良または通信不可能となるセクタが発生する可能性がある。この場合に、通信データの送信前またはSLSの実行前に、乗員の遮蔽損失によって影響が大きく受けるセクタを除外することによって、SLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0121】
本開示の第6の態様に係る無線通信システム1000は、第1の態様から第8の態様のいずれかの通信データを送信可能な無線通信装置100と、第1の態様から第8の態様のいずれかの通信データを受信可能な無線通信装置100と、を含むことが好ましい。
【0122】
上記構成によれば、セクタ数が増加したとしても、使用する可能性が小さいセクタを、SSWフレームを送信しない除外セクタとすることによって、セクタ数が多くてもSLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0123】
本開示の第7の態様に係る無線通信システム1000は、第1の態様から第8の態様のいずれかの通信データを受信可能および/または受信可能な無線通信装置100は移動体30に搭載されることが好ましい。
【0124】
上記構成によれば、セクタ数が増加したとしても、使用する可能性が小さいセクタを、SSWフレームを送信しない除外セクタとすることによって、セクタ数が多くてもSLSに関連する遅延時間を短縮することが可能となる。
【0125】
上述した実施形態の説明に用いた
図3のブロック構成図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの少なくとも一方の任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックを実現する方法は、特に限定されない。例えば、各機能ブロックは、物理的または論理的に結合した1つの装置を用いて実現されてもよいし、物理的または論理的に分離した2つ以上の装置を直接的または間接的に接続し、これら複数の装置を用いて実現されてもよい。機能ブロックは、1つの装置または複数の装置に、ソフトウェアを組み合わせて実現されてもよい。
【0126】
無線通信装置100が、複数のハードウェア要素で構成される場合、各機能ブロックは、何れかのハードウェア要素、又は当該ハードウェア要素の組み合わせによって実現される。ハードウェア要素として、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置、バスなどが挙げられる。
【0127】
また、この場合、無線通信装置100の各機能は、プロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェアまたはプログラムを読み込ませることによって実現される。具体的には、各機能は、ハードウェア上に所定のソフトウェアを読み込ませることにより、プロセッサが演算を行い、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みを制御することによって実現される。
【0128】
実施形態につき、図面を参照して詳細に説明したが、以上の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、上記に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、上記に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0129】
100 無線通信装置
110 PHY部
120 MAC部
130 制御部
131 SLS制御部
132 データ通信制御部
140 記憶部
141 制御情報記憶部
142 他ノードセクタ品質情報記憶部
143 使用セクタ選択情報記憶部
143a 使用可否セクタ記憶部
143b 乗員乗車状況記憶部
143c 乗員乗車時除外セクタ記憶部
150 外部I/F部
1000 無線通信システム