(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】コンクリート部材製造装置およびコンクリート部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20241001BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241001BHJP
B28B 23/02 20060101ALI20241001BHJP
E04G 21/02 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
B28B1/30
B33Y10/00
B28B23/02
E04G21/02 103Z
(21)【出願番号】P 2020205736
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-199940(JP,A)
【文献】実公平05-041846(JP,Y2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0203468(US,A1)
【文献】特開平01-101110(JP,A)
【文献】特開平11-156842(JP,A)
【文献】特開2020-111941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/30
B28B 23/02
E04G 21/02
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出部と、
前記コンクリート材料吐出部における前記コンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出位置に、金属素線を送り出す金属素線送り出し部と、を有
し、
前記金属素線送り出し部を前記コンクリート材料吐出部に対して変位させて、前記金属素線が前記コンクリート材料吐出位置に送り出される角度を調整する角度調整部を有し、
前記角度調整部は、
前記コンクリート材料吐出部を支持する円柱状のコンクリート材料支持部と、
前記金属素線送り出し部を支持する金属素線支持部と、を有し、
前記金属素線支持部は、前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能であるともに、前記コンクリート材料支持部の中心軸と平行に配置され前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能な回転軸を中心に回転可能であり、
コンクリート部材の曲線部分を製造する際、
走行機構によって前記コンクリート材料支持部を前記曲線部分に沿って移動させ、
前記曲線部分の曲率半径が一定の場合には、前記コンクリート材料支持部と前記金属素線支持部とが前記コンクリート部材の直線部分から曲線部分に移行する場合と同じ位置関係のままとし、
前記曲線部分の曲率半径が変化する場合には、前記金属素線支持部を前記回転軸を中心に回転させて前記曲線部分の角度変化に対応させるように構成されているコンクリート部材製造装置。
【請求項2】
付加製造装置でコンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出工程と、
前記コンクリート材料が吐出されるコンクリート材料吐出位置に、前記付加製造装置で金属素線を送り出す金属素線送り出し工程と、を有
し、
金属素線送り出し部をコンクリート材料吐出部に対して変位させて、前記金属素線がコンクリート材料吐出位置に送り出される角度を調整する角度調整部を有し、
前記角度調整部は、
前記コンクリート材料吐出部を支持する円柱状のコンクリート材料支持部と、
前記金属素線送り出し部を支持する金属素線支持部と、を有し、
前記金属素線支持部は、前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能であるともに、前記コンクリート材料支持部の中心軸と平行に配置され前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能な回転軸を中心に回転可能であり、
前記コンクリート材料吐出工程、および前記金属素線送り出し工程において、
コンクリート部材の曲線部分を製造する際、
走行機構によって前記コンクリート材料支持部を前記曲線部分に沿って移動させ、
前記曲線部分の曲率半径が一定の場合には、前記コンクリート材料支持部と前記金属素線支持部とが前記コンクリート部材の直線部分から曲線部分に移行する場合と同じ位置関係のままとし、
前記曲線部分の曲率半径が変化する場合には、前記金属素線支持部を前記回転軸を中心に回転させて前記曲線部分の角度変化に対応させるコンクリート部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート部材製造装置およびコンクリート部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、製造業において、樹脂部材や金属部材の製作に付加製造装置(3Dプリンター)が多く活用されている。建設業界においても、コンクリート部材を製作する付加製造装置の研究や開発が進められている(例えば、特許文献1、2参照)。このような付加製造装置は、モルタルやコンクリートを吐出し所望の形状となるように積層するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-002744号公報
【文献】特開2020-026686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート部材を製作する付加製造装置は、コンクリート部材の内部に鋼線や鋼棒を埋設する機構を備えていない。しかしながら、建物などに採用される建材として利用できるコンクリート部材は、引張力に対向するため鋼線や鋼棒を埋設する必要がある。このため、建材として利用可能なコンクリート部材を製作する場合には、付加製造装置で製作したコンクリート部材の内部に鋼線や鋼棒を挿入して、鋼線や鋼棒の周囲にモルタルやコンクリートなどを充填する作業が必要となる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、鋼線や鋼棒などの金属素線が埋設されたコンクリート部材を製作することができるコンクリート部材製造装置およびコンクリート部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリート部材製造装置は、コンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出部と、前記コンクリート材料吐出部における前記コンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出位置に、金属素線を送り出す金属素線送り出し部と、を有し、前記金属素線送り出し部を前記コンクリート材料吐出部に対して変位させて、前記金属素線が前記コンクリート材料吐出位置に送り出される角度を調整する角度調整部を有し、前記角度調整部は、前記コンクリート材料吐出部を支持する円柱状のコンクリート材料支持部と、前記金属素線送り出し部を支持する金属素線支持部と、を有し、前記金属素線支持部は、前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能であるともに、前記コンクリート材料支持部の中心軸と平行に配置され前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能な回転軸を中心に回転可能であり、コンクリート部材の曲線部分を製造する際、走行機構によって前記コンクリート材料支持部を前記曲線部分に沿って移動させ、前記曲線部分の曲率半径が一定の場合には、前記コンクリート材料支持部と前記金属素線支持部とが前記コンクリート部材の直線部分から曲線部分に移行する場合と同じ位置関係のままとし、前記曲線部分の曲率半径が変化する場合には、前記金属素線支持部を前記回転軸を中心に回転させて前記曲線部分の角度変化に対応させるように構成されている。
【0007】
本発明に係るコンクリート部材の製造方法は、付加製造装置でコンクリート材料を吐出するコンクリート材料吐出工程と、前記コンクリート材料が吐出されるコンクリート材料吐出位置に、前記付加製造装置で金属素線を送り出す金属素線送り出し工程と、を有し、金属素線送り出し部をコンクリート材料吐出部に対して変位させて、前記金属素線がコンクリート材料吐出位置に送り出される角度を調整する角度調整部を有し、前記角度調整部は、前記コンクリート材料吐出部を支持する円柱状のコンクリート材料支持部と、前記金属素線送り出し部を支持する金属素線支持部と、を有し、前記金属素線支持部は、前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能であるともに、前記コンクリート材料支持部の中心軸と平行に配置され前記コンクリート材料支持部の外周面に沿って移動可能な回転軸を中心に回転可能であり、前記コンクリート材料吐出工程、および前記金属素線送り出し工程において、コンクリート部材の曲線部分を製造する際、走行機構によって前記コンクリート材料支持部を前記曲線部分に沿って移動させ、前記曲線部分の曲率半径が一定の場合には、前記コンクリート材料支持部と前記金属素線支持部とが前記コンクリート部材の直線部分から曲線部分に移行する場合と同じ位置関係のままとし、前記曲線部分の曲率半径が変化する場合には、前記金属素線支持部を前記回転軸を中心に回転させて前記曲線部分の角度変化に対応させる。
【0008】
本発明では、付加製造装置が、コンクリート材料を吐出可能であるとともに、コンクリート材料が吐出されるコンクリート材料吐出位置に金属素線を送り出し可能である。このため、金属素線が埋設されたコンクリート部材を付加製造装置で製作することができる。
【0010】
このような構成とすることにより、金属素線の角度を調整することができ、所望の形状のコンクリート部材を製作することができる。
【0012】
このような構成とすることにより、金属素線の角度調整を精度よく行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、鋼線や鋼棒などの金属素線が埋設されたコンクリート部材を製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態によるコンクリート部材製造装置の側面図である。
【
図2】本発明の実施形態によるコンクリート部材製造装置を下方から見た図である。
【
図3】直線部分を製作するコンクリート部材製造装置を示す図である。
【
図4】曲線部分に移行するコンクリート部材製造装置を示す図である。
【
図5】曲線部分を製作するコンクリート部材製造装置を示す図である。
【
図6】角度調整を行うコンクリート部材製造装置を示す図である。
【
図7】コンクリート部材の角度変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態によるコンクリート部材製造装置およびコンクリート部材の製造方法について、
図1-
図7に基づいて説明する。
【0016】
(コンクリート部材製造装置)
図1に示すように、本実施形態によるコンクリート部材製造装置1は、コンクリート21の内部に鋼線や鋼棒などの金属素線22が設けられたコンクリート部材2を製造する付加製造装置である。コンクリート部材2を形成するコンクリートやモルタルを「コンクリート材料23」と表記する。
【0017】
図1および
図2に示すように、コンクリート部材製造装置1は、コンクリート材料吐出部3と、金属素線送り出し部4と、角度調整部5と、走行機構(不図示)と、制御部(不図示)と、金属素線切断部6と、を有している。コンクリート材料吐出部3は、コンクリート部材2を形成する領域に、コンクリート材料23を吐出して積層する。金属素線送り出し部4は、コンクリート材料吐出部3がコンクリート材料23を吐出するコンクリート材料吐出位置31に、金属素線22を送り出す。角度調整部5は、金属素線送り出し部4をコンクリート材料吐出部3に対して回転させて、金属素線22がコンクリート材料吐出位置31に送り出される角度を調整する。走行機構は、コンクリート材料吐出部3、金属素線送り出し部4、角度調整部5を一体に走行させる。制御部は、コンクリート材料吐出部3のコンクリート材料23の吐出量、金属素線送り出し部4の金属素線22の送り出す速度、角度調整部5が調整する角度、走行機構による走行速度などを制御する。金属素線切断部6は、金属素線22を切断可能に構成されている。
【0018】
コンクリート部材製造装置1は、コンクリート部材2を形成する領域を走行しながらコンクリート材料23を吐出するとともに、金属素線22を送り出している。コンクリート部材製造装置1は、形成されるコンクリート部材2の形状に沿って走行している。コンクリート部材製造装置1が走行する方向を走行方向とする。走行方向は、形成するコンクリート部材2の形状に沿った方向である。本実施形態の走行方向は水平面に沿って方向である。金属素線送り出し部4は、コンクリート材料吐出位置31よりも走行方向の前側に位置している。コンクリート材料吐出部3は、金属素線送り出し部4から送り出された金属素線22に向かってコンクリート材料23を吐出している。
【0019】
コンクリート材料吐出部3は、コンクリート材料23を吐出するノズル32と、ノズル32に接続されたコンクリート材料供給管33と、を有している。コンクリート材料供給管33には、コンクリート材料23を収容するタンク(不図示)からコンクリート材料23が圧送される。本実施形態では、ノズル32およびコンクリート材料供給管33は、軸線が鉛直方向となるように配置されている。ノズル32は下方を向いている。ノズル32から吐出されたコンクリート材料23は、ノズル32の下方に積層される。
【0020】
金属素線送り出し部4は、金属素線22が巻かれた金属素線ドラム41と、金属素線ドラム41から送り出された金属素線22を直線状になるように伸ばす整直部42と、整直部42によって直線状となった金属素線22が水平方向に延びるように金属素線22の向きを変換する水平調整部43と、を有している。
【0021】
金属素線ドラム41は、円柱状の芯材44の周囲に金属素線22が巻き付けられている。金属素線ドラム41は、芯材44の軸線が水平方向となる向きに配置され、金属素線22が下方かつ走行方向の後方となる斜め下方向に送り出される。金属素線ドラム41から送り出された金属素線22は、芯材44に巻き付けられていた際の癖により湾曲している。金属素線22が金属素線ドラム41から離れて送り出される位置を金属素線送り出し位置45とする。本実施形態の金属素線送り出し部4は、金属素線ドラム41から送り出される金属素線22に一定の張力を付与するように構成されている。
【0022】
整直部42は、金属素線ドラム41の下方に位置している。整直部42は、金属素線22をローラ46で挟んで直線状になるように伸ばす。整直部42を通過する金属素線22は、金属素線ドラム41から送り出される向き、すなわち斜め方向に延びる向きとなっている。本実施形態では、整直部42は、第1整直部421と、第2整直部422と、を有している。第1整直部421は、第2整直部422の上側に配置されている。金属素線ドラム41から送り出された金属素線22は、まず第1整直部421を通過し、その後に第2整直部422を通過する。第1整直部421は、走行方向に直交する方向の両側からローラ46で金属素線22を挟んで金属素線22を伸ばす。第1整直部421は、走行方向の両側からローラ46で金属素線22を挟んで金属素線22を伸ばす。
【0023】
水平調整部43は、金属素線22をローラ47で挟んで、水平方向に延びるように向きを変換させている。水平調整部43は、金属素線22を上下からローラ47で挟み、ローラ47を通過させることで水平方向に延びる向きとしている。水平調整部43を通過した金属素線22は、走行方向に延びて、コンクリート材料吐出位置31に導かれる。図示していないが、金属素線送り出し部4には、水平調整部43を通過した金属素線22を、コンクリート材料吐出位置31にガイドするガイド機構が設けられていてもよい。
【0024】
角度調整部5は、コンクリート材料吐出部3を支持する円柱状のコンクリート材料支持部51と、金属素線送り出し部4を支持する金属素線支持部52と、コンクリート材料支持部51に対して金属素線支持部52を回転させるモータ53(
図1参照)と、を有している。
【0025】
コンクリート材料支持部51は、軸線が上下方向に延びる向きとなる円柱状に形成されている。コンクリート材料支持部51の中央にコンクリート材料供給管33が挿通され、下端にノズル32が設けられている。すなわち、コンクリート材料支持部51と、コンクリート材料供給管33およびノズル32とは、同軸に設けられている。
【0026】
金属素線支持部52は、鉛直方向に延びる回転軸521を中心に回転可能に構成されている。本実施形態では、金属素線支持部52は、回転軸521を中心に
図2に示す矢印Aの範囲において回転可能である。また、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿ってコンクリート材料支持部51の周方向に回転可能に構成されている。すなわち、金属素線支持部52は、回転軸521を中心に回転可能であるとともに、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能である。金属素線支持部52の回転軸521を中心とする回転と、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿った回転とは、同時に行われてもよいし、いずれか一方のみ行われてもよい。コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って回転する金属素線支持部52は、回転軸521が常にコンクリート材料支持部51の外周面511と接触している。
【0027】
金属素線支持部52は、水平調整部43の走行方向の後側に配置されて、水平調整部43から送り出された金属素線22が通過する曲線形成部54を有している。曲線形成部54は、水平調整部43と水平方向に離れた位置に配置されている。曲線形成部54は、金属素線22を走行方向に直交する水平方向から挟む一対のローラ55を有している。一対のローラ55の間で金属素線22が挟まれる部分をとする。金属素線挟持部56は、金属素線支持部52の回転軸521の直下に設けられている。金属素線挟持部56は、水平調整部43と、コンクリート材料吐出位置31、すなわちノズル32の下方の位置との間に設けられている。
【0028】
水平調整部43から送り出されて、コンクリート材料吐出位置31に導かれる金属素線22は、金属素線挟持部56を通過する。このとき、金属素線支持部52が回転軸521を中心に
図2の矢印Aの範囲において回転したり、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動したりすることで、金属素線挟持部56を水平調整部43とコンクリート材料吐出位置31とを結ぶ直線上に配置したり、この直線と離れた位置に配置したりすることができる。金属素線挟持部56を水平調整部43とコンクリート材料吐出位置31とを結ぶ直線上に配置すれば、金属素線22が直線の形状となる。金属素線挟持部56を水平調整部43とコンクリート材料吐出位置31とを結ぶ直線と離れた位置に配置すれば、金属素線22が曲線の形状となる。
【0029】
(コンクリート部材の製造方法)
本実施形態のコンクリート部材製造装置1を用いたコンクリート部材の製造方法について説明する。以下では、線状で直線部分24と曲線部分25とを有するコンクリート部材2を製造する方法について説明する。
図3-
図5では、上側にコンクリート部材製造装置1を下方から見た様子を表記し、下側に、上側のコンクリート部材製造装置1に対応するノズル32およびコンクリート部材2を表記している。
【0030】
図3に示すように、コンクリート部材2の直線部分24を製造する場合には、走行機構でコンクリート部材製造装置1を直線状に走行させながら、金属素線送り出し部4で金属素線22を送り出す(金属素線送り出し工程)とともに、コンクリート材料吐出部3でコンクリート材料23を吐出し、金属素線22を埋設するようにコンクリート材料23を積層する(コンクリート材料吐出工程)。このとき、上方から見た平面視において、ノズル32と、金属素線支持部52の回転軸521、曲線形成部54の金属素線挟持部56、および金属素線送り出し位置45は、走行方向に延びる同一直線(
図3では横方向に延びる直線11)上に配置されている。このため、金属素線22は、曲線形成部54に入る角度と曲線形成部54から出る角度とが同じであり、湾曲したり屈曲したりせずに直線状に延びている。
【0031】
続いて、
図4に示すように、コンクリート部材2の直線部分24から曲線部分25に移行する場合には、まず、コンクリート材料支持部51よりも先に曲線部分25に入り込む金属素線支持部52を回転軸521を中心に回転させ(
図4では矢印Bの方向に回転させ)、軌道に沿った向きにする。このとき、上方から見た平面視において、ノズル32と金属素線送り出し位置45とを結ぶ直線(
図4では直線12)と外れた位置に、回転軸521および曲線形成部54の金属素線挟持部56が配置される。これにより、金属素線22が湾曲する。
【0032】
続いて、
図5に示すように、コンクリート材料支持部51も直線部分24から曲線部分25に移行し、コンクリート部材製造装置1が曲線部分25を移動する際には、走行機構によってコンクリート材料支持部51を曲線部分25に沿って方向に移動させる。このとき、曲線部分25の接線の角度変化が一定で変化しない場合(曲率半径が一定の場合)には、
図4に示すように、コンクリート材料支持部51と金属素線支持部52とが上記のコンクリート部材2の直線部分24から曲線部分25に移行する場合と同じ位置関係のままコンクリート部材製造装置1を走行させる。
【0033】
曲線部分25の接線の角度変化が変化する場合(曲率半径が変化する場合)には、金属素線支持部52を回転軸521を中心に回転させて曲線部分25の角度変化に対応させる。または、金属素線支持部52をコンクリート材料支持部51の周面に沿って回転させてコンクリート材料支持部51に対する金属素線支持部52の角度を調整して曲線部分25の角度変化に対応させる。または、
図5に示すように、金属素線支持部52を回転軸521を中心に矢印Cの範囲において回転させるとともに、コンクリート材料支持部51の周面に沿って矢印Dの方向に回転させてコンクリート材料支持部51に対する金属素線支持部52の角度を調整して曲線部分25の角度変化に対応させる。
【0034】
いずれの場合も、上方から見た平面視において、ノズル32と金属素線送り出し位置45とを結ぶ直線12と外れた位置に、金属素線支持部52の回転軸521および曲線形成部54の金属素線挟持部56が配置される。これにより、金属素線22が湾曲する。
【0035】
このようにして、コンクリート部材2のコンクリート材料23が金属素線22を埋設しながら所定の形状に積層されたら、コンクリート材料23の吐出を停止し、金属素線22を金属素線切断部6で切断する。これにより、コンクリート部材2が製造される。
【0036】
曲線部分25の曲率半径が一定で、曲線部分25が同一円周上に沿った形状である場合は、
図6に示すように、コンクリート材料支持部51に対する金属素線支持部52の角度θが一定となり、この角度θのままコンクリート部材製造装置1を走行させる。曲線部分25の曲率半径が一定でない場合は、コンクリート材料支持部51に対する金属素線支持部52の角度θを、
図7に示すようにθ
1からθ
2に変化させながらコンクリート部材製造装置1を走行させる。
【0037】
上記の本実施形態によるコンクリート部材製造装置1およびコンクリート部材の製造方法では、付加製造装置であるコンクリート部材製造装置1が、コンクリート材料23を吐出可能であるとともに、コンクリート材料23が吐出されるコンクリート材料吐出位置31に金属素線22を送り出し可能である。このため、金属素線22が埋設されたコンクリート部材2を付加製造装置で製作することができる。製作されたコンクリート部材2は、金属素線22が埋設されていることにより、引張力に対向することができ、建物などの建材として使用することができる。
【0038】
上記の本実施形態によるコンクリート部材製造装置1では、金属素線送り出し部4をコンクリート材料吐出部3に対して変位させて、金属素線22がコンクリート材料吐出位置31に送り出される角度を調整する角度調整部5を有している。このような構成とすることにより、金属素線22の角度を調整することができ、所望の形状のコンクリート部材2を製作することができる。
【0039】
上記の本実施形態によるコンクリート部材製造装置1では、角度調整部5は、コンクリート材料吐出部3を支持する円柱状のコンクリート材料支持部51と、金属素線送り出し部4を支持する金属素線支持部52と、を有し、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能であるともに、コンクリート材料支持部51の中心軸と平行に配置されコンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能な回転軸521を中心に回転可能である。このような構成とすることにより、金属素線22の角度調整を精度よく行うことができる。
【0040】
以上、本発明によるコンクリート部材製造装置およびコンクリート部材の製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態では、金属素線送り出し部4をコンクリート材料吐出部3に対して変位させて、金属素線22がコンクリート材料吐出位置31に送り出される角度を調整している。これに対し、金属素線22がコンクリート材料吐出位置31に送り出される角度が一定の角度であってもよい。また、金属素線22がコンクリート材料吐出位置31に送り出される角度の調整機構は、上記以外であってもよい。
【0041】
上記の実施形態では、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能であるともに、コンクリート材料支持部51の中心軸と平行に配置されコンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能な回転軸521を中心に回転可能である。これに対し、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能であるが、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能な回転軸521を中心に回転しない構成であってもよい。また、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動せず、コンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能な回転軸521を中心に回転可能に構成されていてもよい。
【0042】
上記の実施形態では、コンクリート材料支持部51は円柱状あり、金属素線支持部52がコンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動するように構成されている。これに対し、コンクリート材料支持部51は円柱状以外の形状(例えば角柱状、断面形状が多角形の柱状)であり、このような形状のコンクリート材料支持部51の外周面511に沿って金属素線支持部52が移動するように構成されていてもよい。
【0043】
上記の実施形態では、金属素線支持部52は、コンクリート材料支持部51の中心軸と平行に配置されコンクリート材料支持部51の外周面511に沿って移動可能な回転軸521を中心に回転可能である。これに対し、金属素線支持部52が回転する際の回転軸は、上記以外の向きに配置された回転軸であってもよい。
【0044】
上記の実施形態では、ノズルが下方を向き、ノズルの下方にコンクリート材料が吐出されるように構成されているが、ノズルが水平方向を向き、ノズルの側方にコンクリート材料が吐出されるように構成されていてもよい。
【0045】
上記の実施形態では、金属素線送り出し部から1本の金属素線がコンクリート材料吐出位置に送り出されているが、金属素線送り出し部から複数の金属素線がコンクリート材料吐出位置に送り出されていてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 コンクリート部材製造装置(付加製造装置)
2 コンクリート部材
3 コンクリート材料吐出部
4 金属素線送り出し部
5 角度調整部
21 コンクリート
22 金属素線
23 コンクリート材料
24 直線部分
25 曲線部分
31 コンクリート材料吐出位置
45 位置
51 コンクリート材料支持部
52 金属素線支持部
511 外周面
521 回転軸
θ 角度