(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】ストライプ塗工装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20241001BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C13/02
(21)【出願番号】P 2020210752
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 克洋
(72)【発明者】
【氏名】中村 行良
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094610(JP,A)
【文献】国際公開第2013/080700(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/073329(WO,A1)
【文献】特開2001-223012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/02
B05C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブを外周面に抱きかかえて上流から下流に走行させるバックアップロールと、
前記バックアップロールによって抱きかかえられた前記ウエブの表面に、幅方向に沿って塗工部と未塗工部と交互に形成してストライプ塗工を行うダイと、
前記バックアップロールの下流側に配され、ストライプ塗工された前記ウエブの裏面と接触して前記ウエブを下流側に案内するガイドロールと、
を有し、
前記ガイドロールは、
前記ウエブが前記ダイによってストライプ塗工された位置から前記バックアップロールの前記外周面より離れる位置までの円弧長さが、前記ウエブにおける2つの前記塗工部に挟まれた前記未塗工部に皺ができる前に、前記未塗工部の前記ウエブと前記外周面の間の隙間部分にある空気が排出される長さになるように配され
、
前記バックアップロールの直径が200~400mmのときに、前記円弧長さLは、0mm<L<=50mmである、
ことを特徴とするストライプ塗工装置。
【請求項2】
ウエブを外周面に抱きかかえて上流から下流に走行させるバックアップロールと、
前記バックアップロールの下方に配されると共に、前記バックアップロールによって抱きかかえられた前記ウエブの表面に、幅方向に沿って塗工部と未塗工部と交互に形成してストライプ塗工を行うダイと、
前記バックアップロールの下流側に配され、ストライプ塗工された前記ウエブの裏面と接触して前記ウエブを下流側に案内するガイドロールと、
を有し、
前記ガイドロールは、
前記ウエブが前記ダイによってストライプ塗工された位置から前記バックアップロールの前記外周面より離れる位置までの円弧長さが、前記ウエブにおける2つの前記塗工部に挟まれた前記未塗工部に皺ができる前に、前記未塗工部の前記ウエブと前記外周面の間の隙間部分にある空気が排出される長さになるように配され
、
前記ウエブを前記バックアップロール側に折り返し、
折り返された前記ウエブのパスラインが、前記バックアップロールの前上部分の外周面にある接点の接線方向と一致している、
ことを特徴とするストライプ塗工装置。
【請求項3】
前記ガイドロールは、前記バックアップロールより小径である、
請求項1
又は2に記載のストライプ塗工装置。
【請求項4】
前記ウエブが前記ダイによってストライプ塗工された位置と前記ウエブが前記バックアップロールの前記外周面より離れる位置がなす円弧角φが、0°<φ°<=30°である、
請求項1
又は2に記載のストライプ塗工装置。
【請求項5】
前記ダイは、
第1本体と、
前記第1本体の先端に設けられた第1塗工刃部と、
前記第1本体の前面に配された第2本体と、
前記第2本体の先端に設けられた第2塗工刃部と、
前記第1本体又は前記第2本体に形成された液溜め部と、
前記第1本体と前記第2本体の間に形成され、かつ、前記液溜め部から伸びた液通路と、
前記第1塗工刃部と前記第2塗工刃部の間に形成され、かつ、前記液通路の先端にあるスリット状の吐出口と、
前記第1本体と前記第2本体の間に挟持され、前記ストライプ塗工の塗工部と未塗工部の位置に合わせて櫛歯状に形成されたシムと、
を有した請求項1
又は2に記載のストライプ塗工装置。
【請求項6】
前記円弧長さは、前記第1塗工刃部の前端から、前記ウエブが
前記外周面から離れる位置までの長さである、
請求項5に記載のストライプ塗工装置。
【請求項7】
前記ダイは、前記バックアップロールの側方に配されている、
請求項1に記載のストライプ塗工装置。
【請求項8】
前記ウエブは、金属箔である、
請求項1
又は2に記載のストライプ塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブにストライプ塗工を行うストライプ塗工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属箔、フィルム、布帛、紙などの長尺状のウエブに、幅方向に沿って塗工部と未塗工部とを交互にストライプ塗工を行うストライプ塗工装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、電池の電極材料として金属箔に電極物質である塗工液をストライプ塗工するストライプ塗工装置がある。このストライプ塗工装置において、厚みの薄い金属箔に塗工液をストライプ塗工した場合に、2つの塗工部に挟まれた未塗工部に皺が発生する問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、ウエブにストライプ塗工を行う場合に未塗工部に皺が発生しないストライプ塗工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ウエブを外周面に抱きかかえて上流から下流に走行させるバックアップロールと、前記バックアップロールによって抱きかかえられた前記ウエブの表面に、幅方向に沿って塗工部と未塗工部と交互に形成してストライプ塗工を行うダイと、前記バックアップロールの下流側に配され、ストライプ塗工された前記ウエブの裏面と接触して前記ウエブを下流側に案内するガイドロールと、を有し、前記ガイドロールは、前記ウエブが前記ダイによってストライプ塗工された位置から前記バックアップロールの前記外周面より離れる位置までの円弧長さが、前記ウエブにおける2つの前記塗工部に挟まれた前記未塗工部に皺ができる前に、前記未塗工部の前記ウエブと前記外周面の間の隙間部分にある空気が排出される長さになるように配され、前記バックアップロールの直径が200~400mmのときに、前記円弧長さLは、0mm<L<=50mmである、ことを特徴とするストライプ塗工装置である。また、本発明は、ウエブを外周面に抱きかかえて上流から下流に走行させるバックアップロールと、前記バックアップロールの下方に配されると共に、前記バックアップロールによって抱きかかえられた前記ウエブの表面に、幅方向に沿って塗工部と未塗工部と交互に形成してストライプ塗工を行うダイと、前記バックアップロールの下流側に配され、ストライプ塗工された前記ウエブの裏面と接触して前記ウエブを下流側に案内するガイドロールと、を有し、前記ガイドロールは、前記ウエブが前記ダイによってストライプ塗工された位置から前記バックアップロールの前記外周面より離れる位置までの円弧長さが、前記ウエブにおける2つの前記塗工部に挟まれた前記未塗工部に皺ができる前に、前記未塗工部の前記ウエブと前記外周面の間の隙間部分にある空気が排出される長さになるように配され、前記ウエブを前記バックアップロール側に折り返し、折り返された前記ウエブのパスラインが、前記バックアップロールの前上部分の外周面にある接点の接線方向と一致している、ことを特徴とするストライプ塗工装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ウエブがダイによってストライプ塗工された後にバックアップロールの外周面から離れるまでの円弧長さが、ウエブにおける2つの塗工部に挟まれた未塗工部と外周面の間の隙間部分にある空気が排出される長さになっているため、この未塗工部に溜まった空気が直ちに排出され、ウエブの未塗工部に皺が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の塗工装置の一部縦断面図である。
【
図4】塗工部分の前面から見た拡大縦断面図である。
【
図5】塗工部とダイとの関係を示す拡大縦断面図である。
【
図6】未塗工部とダイとの関係を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のウエブWのストライプ塗工装置10について図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
本発明の実施形態1のウエブWのストライプ塗工装置10について
図1~
図6を参照して説明する。ウエブWは長尺状であり、電池の電極に使用される金属箔であって、金属箔の厚さは6~8μm、塗工厚さは50~200μmである。
【0011】
本実施形態のストライプ塗工装置10は、ウエブWの幅方向に沿って左側の塗工部1と未塗工部3と右側の塗工部2を
図4に示すように形成するものである。なお
図4において、塗工部1、2と未塗工部3の縦断面の状態を分かり易く説明するために、厚みの寸法をウエブWの幅方向の寸法よりも大きく記載している。
【0012】
(1)ストライプ塗工装置10の全体の構成
ストライプ塗工装置10の全体の構成について
図1~
図3を参照して説明する。ストライプ塗工装置10は、バックアップロール12とダイ14とガイドロール6とベンド装置8とを有する。
【0013】
図1に示すように、バックアップロール12は、直径が200~400mm(好適には、250~350mm)であり、水平な回転軸13の中心点Oを中心として、反時計回り方向に回転し、その下周面でウエブWを抱きかかえて、ウエブWを前後方向(
図1における左から右、すなわち、上流から下流)に一定の搬送速度で走行させる。
【0014】
図1と
図2に示すように、ダイ14は、バックアップロール12の下方に設けられている。ダイ14は、
図1と
図2に示すように、第1本体16と第2本体18と基部20と取り付け空間44を有している。
【0015】
基部20は、
図1と
図2に示すように、左右方向に延びた直方体であり、上面前部から第1本体16が一体に立設されている。
【0016】
第1本体16は、
図1~
図3に示すように、左右方向に延びた直方体であり、前面上端部から後面上端部に向かって第1傾斜面22が形成され、上部が断面三角形である。第1本体16の後面は垂直面であり、
図3に示すように、液溜め部24が左右方向に形成されている。第1本体16の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の直方体である第1塗工刃部36が形成されている。
【0017】
第2本体18は、
図1と
図2に示すように、第1本体16の後方、すなわち、基部20の上部に配されるものであって、左右方向に延びた直方体であり、上下寸法が第1本体16よりも小さく形成されている。第2本体18の前面上端部から後面上端部に向かって第2傾斜面26が形成されている。第2本体18の上部の先端部には、左右方向に延び、上面が平面形状の直方体である第2塗工刃部38が形成されている。
【0018】
第2本体18と基部20との間には取り付け空間44が形成されている。この取り付け空間44は、その上面が第2本体18の下面で形成され、下部が基部20の上面で形成され、後面が開口し、前面が第1本体16の後面で形成され、左右両側部が開口した空間である。
【0019】
板状のシム28が、
図1~
図3に示すように、第1本体16の後面と第2本体18の前面との間に挟持されている。シム28は金属板から形成され、
図3に示すように、幅方向に延びた下基部34の左端部から上方に突出した左突片30、中央部分から上方に突出した中央突片31、右端部から上方に突出した右突片32から構成され、全体の形状が櫛歯状となっている。
【0020】
第1本体16と第2本体18とシム28とは、不図示の締結ボルトによって一体に固定されている。一体に固定した場合には、
図1と
図2に示すように、第1傾斜面22と第2傾斜面26とが、三角形に形成される。第1塗工刃部36の上面と第2塗工刃部38の上面とは同じ高さになり、その上方に塗工間隔を開けてバックアップロール12の下周面が位置する。
【0021】
液溜め部24の上方であって、第1本体16と第2本体18との間には、液通路40が垂直に形成され、その上端部にはスリット状の吐出口42が形成されている。すなわち、スリット状の吐出口42は、第1塗工刃部36と第2塗工刃部38の上端部の間に位置している。また、スリット状の吐出口42の左右両端部は、ダイ14とバックアップロール12との間に配された左右一対の隔壁43,43に閉塞されている。さらに、液通路40の両側部は、シム28の左右両突片30,32によって閉塞され、中央部分は中央突片31によって閉塞されている。なお、液溜め部24の下部は、シム28の下基部34で閉塞されている。そして、左突片30の左端部から中央突片31の右端部まで開口した吐出口42から吐出される塗工液で、ウエブWの表面に左側の塗工部1が形成され、中央突片31の左端部から右端部までは吐出口42が閉塞されているためウエブWの表面に未塗工部3が形成され、中央突片31の右端部から右突片32の左端部まで開口した吐出口42から吐出される塗工液で、ウエブWの表面に右側の塗工部2が形成される。
【0022】
第1本体16に設けられた液溜め部24の後面の左右方向の中心には、
図2と
図3に示すように、塗工液の供給口46が貫通し、この供給口46にはホース48の一端が接続されている。ホース48の他端は、塗工液を単位時間当たりの一定の塗工液を供給する不図示の定量ポンプが接続されている。
【0023】
ベンド装置8は、
図3に示すように、ダイ14の下方に設けられ、ほぼ直方体であり、上面の左右両側部から左右一対の腕部52,52が立設されている。一方、第1本体16の両側面からは左右一対の支持軸54,54が突出し、左右一対の腕部52,52に回転自在に支持されている。これにより、ベンド装置8のベンド本体50の上方にダイ14が回転自在に配され、特定の位置で固定される。
【0024】
ベンド本体50の内部には上下動部56が設けられ、この上下動部56の上端部には、円柱型のダイ押圧部58が設けられている。上下動部56が有するコッターが水平に移動して、この移動量に対応してダイ押圧部58が上下動する。
【0025】
ガイドロール6は、直径が200~400mm(好適には、250~350mm)のバックアップロール12よりも小径であり、
図1に示すように、バックアップロール12の下流側である前方に配されている。このガイドロール6の配置位置については後から詳しく説明する。
【0026】
(2)バックアップロール12とダイ14の位置関係
バックアップロール12とダイ14の位置関係について説明する。
図1と
図2に示すように、バックアップロール12の回転軸13の中心点Oから垂線Sを降ろした場合に、その垂線Sは、ダイ14の第1本体16の第1塗工刃部36の前面を通過する。これにより、第1塗工刃部36の上面がバックアップロール12の下周面と最も近接した位置となる。
図2に示すように、吐出口42から吐出した塗工液は、反時計回りの方向に回転するバックアップロール12によってウエブWの表面にストライプ塗工される。そして、第1塗工刃部36とバックアップロール12を走行するウエブWまでの間隔が塗工隙間となる。
【0027】
次に、吐出口42とダイ押圧部58の位置関係について説明する。バックアップロール12の回転軸13の中心点Oから降ろした垂線Sが、円柱型のダイ押圧部58の中心を通過するように、ダイ押圧部58を基部20の下面に配している。
【0028】
(3)ガイドロール6とバックアップロール12とダイ14の位置関係
ガイドロール6とバックアップロール12とダイ14の位置関係について説明する。電池の材料である電極部材を製造する場合には、ウエブWである金属箔に電極材料である塗工液をストライプ塗工する。
【0029】
しかし、例えば、
図4に示すようにウエブWの幅方向に沿って左側の塗工部1、未塗工部3、右側の塗工部2を形成する場合に、未塗工部3に皺が発生し、ウエブWの商品価値がなくなることが従来あった。この皺が発生する理由について本出願人が検討を行い、下記の結果を得た。
【0030】
まず、
図4に示すように、未塗工部3は、左側の塗工部1と右側の塗工部2に挟まれた状態となっているため、バックアップロール12の外周面と未塗工部3を形成するウエブWとの間の隙間部分4に空気が溜まる現象が発生する。この空気が溜まる理由は、左側の塗工部1と右側の塗工部2を形成するときに、バックアップロール12の外周面とウエブWとの間に存在していた空気が、塗工液をダイ14によって塗工するときに内側に押し出され、左右両側の塗工部1,2に挟まれた未塗工部3に集まり、空気が溜まった隙間部分4を形成するからである。
【0031】
なお、左側の塗工部1の左側に逃れた空気は、ウエブWの左側の耳部から排出され、右側の塗工部2の右側に逃れた空気は、ウエブWの右側の耳部から排出され、このような隙間部分を形成することはない。
【0032】
次に、この空気を含んだ隙間部分4が形成されたままウエブWが、バックアップロール12によって抱きかかえられ搬送されると、この隙間部分4の膨らみによって厚みの薄い金属箔よりなるウエブWの未塗工部3が、バックアップロール12に密着せず、浮いたまま搬送され、そのままバックアップロール12と共に回転していると、ウエブWにかかる搬送方向の張力によってこの隙間部分4の膨らみが凹み始めて未塗工部3の中央部分に皺が発生するという結果を本出願人が発見した。
【0033】
このため本出願人は、バックアップロール12と共に回転しているとウエブWにかかる搬送方向の張力によってこの隙間部分4の膨らみが凹み始める前に、空気を隙間部分4から排出すれば皺が発生しないことに気づいた。すなわち、本出願人は、
図1と
図5と
図6に示すように、ウエブWがダイ14によってストライプ塗工された位置(X点)からバックアップロールの外周面より離れる位置(Y点)までの円弧長さLを短く設定する必要に気づいた。
【0034】
本出願人は、
図1に示すように、この円弧長さLを短くするために、バックアップロール12の下流側である前方にガイドロール6を配置し、ウエブWがダイ14によってストライプ塗工された位置からバックアップロール12の外周面から離れる位置までの円弧長さLを出来るだけ短くするようにした。ここで、ダイ14によってストライプ塗工された後の位置とは、
図2に示すように、第1塗工刃部36の前端部のX点を意味する。このX点において、ウエブWへの塗工が終了するからである。また、ウエブWがバックアップロール12から離れる位置をY点という。したがって、円弧長さLはX点からY点までのバックアップロール12の円弧の長さとなる。
【0035】
本出願人は、この円弧長さLがどの程度の長さより長くなれば皺が発生するかを実験によって確かめるため、バックアップロール12の直径、ウエブWの搬送速度、ガイドロール6の直径などをそれぞれ変更して実験を行った。
【0036】
すると、バックアップロール12の直径が200~400mmとすると、ガイドロール6の直径、ウエブWの搬送速度、ウエブWの厚みに関わらず、円弧長さLが50mm以下であるならば皺が発生しないことを突き止めた。但し、円弧長さLは0mmにはできないため、0mm<L<=50mmとなる。
【0037】
また、X点とバックアップロール12の回転の中心点OとY点のなす円弧角φが0°<φ°<=30°であることも突き止めた。この理由は、円弧角φが30°より大きくなるとウエブWがバックアップロール12に抱きかかえる長さが長くなり、その間に皺が発生するからである。
【0038】
一方、このガイドロール6については、今までのストライプ塗工装置には存在しないロールであるため、ストライプ塗工装置10の全体の構造を考慮すると、なるべく小さい方がスペースを取らない。また、バックアップロール12を通過したウエブWの搬送路(パスライン)を変更しない方が、ストライプ塗工装置より後の行程の装置(例えば、乾燥装置など)を改良する必要がない。
【0039】
そこで、本出願人は、
図1に示すように、ガイドロール6をバックアップロール12よりも小径にし、このガイドロール6において、ウエブWの裏面(ストライプ塗工されていない方の面)を抱きかえてバックアップロール12側に折り返し、この折り返されたウエブWの方向を、バックアップロール12の上前部分の外周面の接点(以下、「Z点」という)の接線方向とほぼ一致させるようにした。これによって、ウエブWは、
図1に示すように、X点からZ点までバックアップロール12に抱きかかえられた状態と同じになり、ガイドロール6が存在しないストライプ塗工装置のパスラインと同じパスラインでウエブWを搬出できる。なお、バックアップロール12の上前部分の接点(Z点)とは、
図1において、バックアップロール12の回転の中心点Oよりも上方で、かつ、中心点Oよりも前方に位置するθ°の範囲の外周面の接点を意味する。
【0040】
このようにしてガイドロール6を配置することにより、ウエブWとバックアップロールの外周面が接する円弧長さLが短くなり、未塗工部3における隙間部分4から空気が直ぐに排出され、未塗工部3を形成しているウエブWに皺が生じない。
【0041】
(4)ストライプ塗工装置10の動作状態
次に、ストライプ塗工装置10の動作状態について
図1~
図6を参照して説明する。
図1に示すように、バックアップロール12を反時計回りの方向に回転させ、下周面にあるウエブWを上流から下流に走行させる。
【0042】
バックアップロール12の下方に配されたダイ14の液溜め部24には、不図示の定量ポンプからホース48、供給口46を経て塗工液が供給される。液溜め部24に供給された塗工液は液通路40から上昇し、吐出口42から吐出される。吐出された塗工液は、バックアップロール12の下周面を走行するウエブWの表面にストライプ塗工される。このときの状態についてさらに詳しく説明する。
【0043】
(4-1)ウエブWの塗工部1,2
まず、ウエブWの塗工部1,2について
図5を参照して説明する。ダイ14の第1傾斜面22と第2傾斜面26とが、三角形に形成され、その上端部が第1塗工刃部36と第2塗工刃部38となっている。この第1塗工刃部36と第2塗工刃部38の部分がまるで、唇が上方に突き出た状態のようになっているため、いわゆるリップ型となる。そして、そのリップ型の上端で塗工を行うことができる。しかし、ここで問題なのは、バックアップロール12の下周面は円弧であり、第1塗工刃部36の上面と第2塗工刃部38の上面は、平面形状であるので、たとえ同じ高さでも第1塗工刃部36の上面と第2塗工刃部38の上面の全てで同じ塗工圧、塗工厚で塗工を行うことができないことである。
【0044】
そのため本実施形態では、
図5に示すように、第2塗工刃部38の下流にある第1塗工刃部36の上面の前端部を、回転軸13の中心点Oの真下に位置させている。このようにすると、第1塗工刃部36の上面の前端部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかることになる。そのため、この最も塗工圧の高い位置で塗工できる。すなわち、第1塗工刃部36の上面の前端部とバックアップロール12の下周面との間隔が、塗工間隔となり、塗工厚が決定される。特に、第1塗工刃部36の上面と第2塗工刃部38の上面を同じ高さに設定されているため、
図5に示すように、ウエブWがスムーズに走行でき、かつ、第2塗工刃部38の上面の後端部とバックアップロール12の下周面との間隔をA、第2塗工刃部38の上面の前端部と下周面との間隔をB、第1塗工刃部36の上面の後端部と下周面との間隔をC、第1塗工刃部36の上面の前端部と下周面との間隔をDとすると、A>B>C>Dとなり、ウエブWにかかる塗工圧が次第に上昇し、最も塗工圧が高い位置Dで塗工ができる。
【0045】
一方、吐出口42から吐出される塗工液の圧力によって、ダイ14の上端部が、左右方向の中央ほど下方に湾曲する。この湾曲を防止するため、ベンド装置8のダイ押圧部58によって、ダイ14の基部20の下面を押圧する。本実施形態では、
図2に示すように、このダイ押圧部58の押圧位置は、左右方向の中央であって、かつ、前後方向においてはバックアップロール12の回転軸13の中心点Oの真下の位置としている。なぜ、バックアップロール12の回転軸13の中心点Oの真下の位置を押圧するかを説明する。上記したように、バックアップロール12の回転軸13の中心点Oの真下の位置に対応する第1塗工刃部36の上面の前端部とバックアップロール12の下周面との間隔が最も接近し、この接近した位置が最も塗工圧がかかる。そのため、前後方向においてはこの部分で湾曲が最も発生しやすくなる。そこで本実施形態では、前後方向においてバックアップロール12の回転軸13の中心点O(第1塗工刃部36の上面の前端部)の真下の位置を押圧して、湾曲を防止している。
【0046】
また、基部20と第1本体16をベンドさせると、第1本体16に固定された第2本体18も同時にベンドさせることができる。
【0047】
(4-2)ウエブWの未塗工部3
次に、ウエブWの未塗工部3の形成状態について説明する。ウエブWの未塗工部3に対応するダイ14の位置には、シム28の中央突片31が存在するため、ダイ14から塗工液が吐出されず、ウエブWの表面には未塗工部3が形成される。
【0048】
この場合に、左側の塗工部1と右側の塗工部2からの空気が、塗工時に未塗工部3に押し出され、
図4に示すように、空気による隙間部分4を形成する。しかし、
図6に示すように、第1塗工刃部36の前端部(X点)からウエブWがバックアップロール12より離れる点(Y点)までの円弧長さLが50mm以下であるので、このY点において隙間部分4から空気が直ぐに排出される。そのため、従来、未塗工部3で発生していた皺が発生しない。
【0049】
(5)効果
本実施形態によれば、ウエブWがダイ14によってストライプ塗工された後にバックアップロール12の外周面から離れるまでの円弧長さLが、ウエブWにおける左右両側の塗工部1,2に挟まれた未塗工部3と外周面との間の隙間部分4にある空気が直ちに排出される長さになるように、すなわち、50mm以下に設定されているためウエブWの未塗工部3に皺が発生しない。
【0050】
また、ガイドロール6は、バックアップロール12より小径であり、ウエブWをバックアップロール12側に折り返し、その折り返されたウエブWの方向をバックアップロール12の外周面の接点(Z点)の接線方向とほぼ一致させるため、従来存在しなかったガイドロール6を設けても、ウエブWのパスラインが変わることなく、かつ、ガイドロール6がバックアップロール12よりも小径であるため、ガイドロール6を設けるスペースを最小限にできる。
【実施形態2】
【0051】
実施形態2のストライプ塗工装置10について
図7を参照して説明する。実施形態1では、ダイ14をバックアップロール12の下方に配置したが、これに代えて、本実施形態では、
図7に示すようにストライプ塗工可能なダイ114をバックアップロール12の側方に配置し、ガイドロール11をバックアップロール12の上方で、かつ、バックアップロール12の中心点Oよりも
図7において左側に配置している。また、ガイドロール11は、直径が200~400mm(好適には、250~350mm)のバックアップロール12より小径である。
【0052】
ダイ114は、上ダイ116と下ダイ118より形成され、上ダイ116と下ダイ118の間には櫛歯状のシム128が挟持されている。また、下ダイ118の上面には液溜め部124が形成され、塗工液が供給口146から供給される。
【0053】
このダイ114は、供給口146から供給された塗工液が液溜め部124に溜められ、液通路140を通り、スリット状の吐出口142から吐出され、金属箔などのウエブWにストライプ塗工を行う。
【0054】
本実施形態においても、ダイ114によってウエブWがストライプ塗工された後にバックアップロール12の外周面から離れるまでの円弧長さLが、0mm<L<=50mmになるように設定されている。また、ウエブWがストライプ塗工された位置とバックアップロール12の回転の中心点OとウエブWがバックアップロール12の外周面から離れる位置がなす円弧角φが0°<φ°<=30°である。これにより、従来発生していたウエブWの未塗工部3に皺が発生しない。
【変更例】
【0055】
実施形態1のストライプ塗工装置10のダイ14は、第1本体16の下部に基部20が設けられ、基部20と第2本体18との間には空間44が存在したが、これに代えて、第1本体16と第2本体18の縦方向の寸法を同じにして、基部20と空間44を設けない構造であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、左側の塗工部1、未塗工部3、右側の塗工部2を幅方向に沿って形成したが、これに限らず塗工部、未塗工部、塗工部、未塗工部、塗工部のように3つの塗工部を形成し、2つの未塗工部を形成するストライプ塗工であってもよく、さらに4個以上の塗工部を幅方向に未塗工部を介して形成するストライプ塗工であってもよい。
【0057】
また、上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
W・・・ウエブ、1・・・左側の塗工部1、2・・・右側の塗工部、3・・・未塗工部、4・・・隙間部分、6・・・ガイドロール、10・・・塗工装置、12・・・バックアップロール、14・・・ダイ、16・・・第1本体、18・・・第2本体、20・・・基部、28・・・シム、36・・・第1塗工刃部、38・・・第2塗工刃部、40・・・液通路、42・・・吐出口