(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】治療のための薬剤、使用及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20241001BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241001BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241001BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61P25/28
A61P25/00
A61P21/00
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020502415
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2018069460
(87)【国際公開番号】W WO2019016247
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-21
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】ビルマン ロン,ラーズ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】マリク,イブラヒム,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スタヴェンハーゲン,ジェフリー,ビー
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン,セーレン
(72)【発明者】
【氏名】エゲブジャーグ,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】スツマン,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェリッツェン,アーノウト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン ブリンク,エドワード
(72)【発明者】
【氏名】パレン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】トラブジャーグ,エスベン
(72)【発明者】
【氏名】ランド,カスパー ダイアバーグ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/164637(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/009327(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
C12P
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号146によって定義されるソルチリンのE領域内に特異的に結合することが可能であり、かつ、プログラニュリンの細胞外レベルを増加することが可能な抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体又はその抗原結合フラグメントが、抗体又はその抗原結合フラグメント(1)~
(3)、(5)~(8)、(10)~(15)及び(17)からなる群から選択され、前記抗体又はその抗原結合フラグメント(1)~
(3)、(5)~(8)、(10)~(15)及び(17)が以下に示す重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む:
抗体又はその抗原結合フラグメント(1)が、配列番号109を含む重鎖可変領域及び配列番号110を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(2)が、配列番号111を含む重鎖可変領域及び配列番号112を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(3)が、配列番号113を含む重鎖可変領域及び配列番号114を含む軽鎖可変領域を含む
;
抗体又はその抗原結合フラグメント(5)が、配列番号117を含む重鎖可変領域及び配列番号118を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(6)が、配列番号119を含む重鎖可変領域及び配列番号120を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(7)が、配列番号121を含む重鎖可変領域及び配列番号122を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(8)が、配列番号123を含む重鎖可変領域及び配列番号124を含む軽鎖可変領域を含む
;
抗体又はその抗原結合フラグメント(10)が、配列番号127を含む重鎖可変領域及び配列番号128を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(11)が、配列番号129を含む重鎖可変領域及び配列番号130を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(12)が、配列番号131を含む重鎖可変領域及び配列番号132を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(13)が、配列番号133を含む重鎖可変領域及び配列番号134を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(14)が、配列番号135を含む重鎖可変領域及び配列番号136を含む軽鎖可変領域を含む;
抗体又はその抗原結合フラグメント(15)が、配列番号137を含む重鎖可変領域及び配列番号138を含む軽鎖可変領域を含む
;
抗体又はその抗原結合フラグメント(17)が、配列番号141を含む重鎖可変領域及び配列番号142を含む軽鎖可変領域を含む
;
抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記抗原結合フラグメントは、Fvフラグメント及びFab様フラグメントからなる群から選択される、請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
無傷の抗体からなる、請求項
1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体は、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の抗体からなる群から選択される、請求項
1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
以下の特性:
a.0.5~10nMのソルチリンに対する結合親和性(KD)、
b.ソルチリン発現細胞によるPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
c.ソルチリン発現細胞によるPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
d.脳内のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
e.ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力
の1つ又は複数を示す、請求項1~
4のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
PGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する前記抗体又はその抗原結合フラグメントの前記能力は、22nM以下のIC50でPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害することを含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
ヒト、ヒト化、組み換え又はキメラ抗体である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む医薬組成物。
【請求項9】
医薬に使用するための、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を治療するための、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項12】
前記疾患は、FTD、ALS又はタンパク質症である、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記疾患は、FTD、ALS又はタンパク質症である、請求項
11に記載の使用。
【請求項14】
ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母又は細菌細胞株などの細胞株において生産又は製造された、請求項1~
7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株又はHuH-7ヒト細胞株において生産される、請求項
14に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不十分なレベルのプログラニュリン(PGRN)を修正するのに有用なモノクローナル抗ソルチリン抗体に関する。特に、これらの抗体は、前頭側頭型認知症(FTD)及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療に使用され得る。さらに、モノクローナル抗体は、アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患を治療するのに有用であり得ることも予測される。
【0002】
配列表の参照
本出願は、米国特許法施行規則(37 C.F.R.)第1.821条に従う1つ又は複数の配列表(以下を参照されたい)を含み、これは、コンピュータ可読媒体(ファイル名:0993_ST25.txt、2016年6月22日に作成され、144kBのサイズを有する)で開示され、このファイルは、全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
ソルチリンは、プロニューロトロフィンのアポトーシス促進効果を仲介し、ニューロトロフィン受容体の輸送及びソーティングを仲介することが報告されている受容体である(Nykjaer et al,2012,Trends Neurosci.2012;35(4):261-70;Glerup et al,Handb Exp Pharmacol,2014;220:165-89、Carlo et al,J Mol Med(Berl).2014 Sep;92(9):905-11)。ニューロテンシンを含むいくつかのソルチリンリガンドが同定されており、ニューロテンシンに対する高親和性結合部位は、X線結晶構造解析により、ソルチリン分子中のβプロペラトンネルの内部にあることが突き止められた(Quistgaard et al,Nat Struct Mol Biol.2009 Jan;16(1):96-8;Quistgaard et al,Protein Sci.2014,Sep;23(9):1291-300)。さらに最近では、ソルチリンは、成長因子プログラニュリンの高親和性受容体として機能することが示された(PGRN、Hu et al.Neuron.2010 Nov 18;68(4):654-67。
【0004】
PGRN((プロエピセリン、グラニュリン-エピセリン前駆体、PC細胞誘導成長因子、アクログラニン))は、抗炎症性及び神経栄養性作用を有する分泌型グリコシル化タンパク質である(最近の報告については、Nguyen,Trends Endocrinol Metab.2013 Dec;24(12):597-606を参照されたい)。PGRNは、グラニュリンにタンパク質分解的に切断されるが、PGRN及びグラニュリンの生理学的役割並びにそれらの受容体の特性に関して、まだ分かっていないことが多くある。PGRNは、細胞周期調節及び細胞運動性(He,Z.&Bateman,A.,J.MoI.Med.57:600-612(2003);Monami,G.,et al.,Cancer Res.(5(5:7103-7110(2006))、創傷修復、炎症(Zhu,J.,et al.,Cell 777:867-878(2002))、血管内皮成長因子(VEGF)などの成長因子の誘導(Tangkeangsiπsin,W.&Serrero,G,Carcinogenesis 25.1587-1592(2004))及び腫瘍発生(He,Z.&Bateman,A.,J.MoI.Med.81:600-612(2003)、Monami,G.,et al.,Cancer Res(5(5:7103-7110(2006);Serrero,G.,Biochem Biophys.Res.Commun.505-409-413(2003)、Lu,R&Serrero,G.,Proc.Natl Acad Sci U.SA 98 142-147(2001);Liau,L M.,et al.,Cancer Res.60:1353-1360(2000))を含むいくつかの細胞機能に関与している。PGRNは、TNF受容体に結合することが報告されている(Tang W et al.,Science 2011,332(6028):478-84)が、この観察は、他の者によっても試みられた(Chen et al.,J Neurosci.2013,33(21):9202-9213)。
【0005】
ソルチリンへのPGRNの結合は、ニューロテンシン部位にマッピングされ、ニューロテンシンと同様に、PGRNのC末端ドメインのみを介して仲介されることが報告されており(Zheng et al.PLoS One.2011;6(6):e21023;Lee et al.Hum Mol Genet.2013)、したがって、ニューロテンシンは、PGRN及び他のリガンドとのソルチリンの相互作用をブロックすることが示された。結合すると直ちに、ソルチリンは、PGRNのリソソームクリアランスを仲介し、それにより細胞外PGRNレベルを調節する(Hu et al.2010)。したがって、ソルチリンのノックダウン又は過剰発現が細胞培養物中の細胞外PGRNレベルを調節することが示され(Carrasquillo et al.Am J Hum Genet.2010 Dec 10;87(6):890-7)、マウスにおいて、ソルチリン欠乏は、PGRNレベルを増加させ、PGRN+/-マウスにおける血漿及び脳PGRNレベルを回復させることが報告された(Hu et al.2010)。興味深いことに、ソルチリンに近い一塩基ヌクレオチド多型(SNP)が血漿PGRNの減少及びソルチリンmRNAレベルの増加に関連していた(Carrasquillo et al.Am J Hum Genet.2010 Dec 10;87(6):890-7)。これらの観察は、ソルチリンが細胞外PGRNの主要調節因子であることを示唆している。
【0006】
PGRNは、前頭側頭型認知症(FTD)、行動及び意味の変化によって特徴付けられる進行性認知症並びに前頭側頭葉変性症(FTLD)及びTAR DNA結合タンパク質-43(TDP-43)又はタウ封入体を含有する神経封入体に関連付けられている(Baker et al,2006,Nature.2006 Aug 24;442(7105):916-9;Cruts et al,Nature 442:920-924(2006);Am J Hum Genet.2010 Dec 10;87(6):890-7、M et al,Trends in Genetics 24:186-194(2008))。散発性及び家族性FTDの事例の大部分は、ALSと同様にTDP-43病変を示し(約50%)、FTD-TDP43及びALSは、共通の病理及び遺伝因子及び症状のいくらかの重複のため、疾患スペクトラムを成すものと一部の人々に見なされている(Ito D Neurology.2011 Oct 25;77(17):1636-43;Boxer AL et al,Alzheimers Dement.2013 Mar;9(2):176-88;Rademakers et al,Nat Rev Neurol.2012 August;8(8):423-434)。FTDに使用可能な疾患修飾治療選択肢はない。TDP-43病変を有する前頭側頭型認知症患者の一部は、PGRNハプロ不全をもたらすグラニュリン遺伝子(GRN)の機能喪失突然変異を有する。グラニュリン遺伝子の75を超える異なる突然変異(全て、PGRNレベル及び/又は機能の低下をもたらす)がFTDと関連付けられ、血漿及び脳中の増加する細胞外PGRNが疾患過程を抑え得るものと考えられる。
【0007】
PGRN突然変異は、アルツハイマー病(AD)にも関連付けられており(Sheng et al.,2014,Gene.2014 Jun 1;542(2):141-5;Brouwers et al.,2008,Neurology.2008 Aug 26;71(9):656-64)、これは、PGRN欠乏がAD発症に重要な役割を果たし得ることを示唆している。さらに、マウスADモデルにおけるPGRNの神経保護的効果が観察されており(Minami et al,2014,Nat Med.2014 Oct;20(10):1157-64)、これは、PGRNの増強がAD及びおそらく他の神経変性疾患に有益であり得るという考えに裏付けを与える。
【0008】
本出願は、細胞モデル及びマウスにおいてPGRNを調節し得る抗ヒトソルチリン抗体の生成及び同定を記載する。それらの抗体は、ソルチリンにおける、既に報告されたプログラニュリン結合部位、いわゆるニューロテンシン部位と離れた領域に意外にも結合し、細胞外PGRNを増加させることがさらに可能である。
【0009】
本発明者らは、6つのソルチリン結合領域を規定し、ある領域(「領域E」)に結合する有効な抗体を確認した。これらの抗体は、ソルチリンへのPGRNの結合をブロックしないが、PGRNレベルに影響を与え、PGRNレベルを増加させ、これは、これらの抗体の新規な作用機序を示唆している。PGRNは、神経保護及び抗炎症性効果を有するため、本発明者らの発見は、ソルチリンを標的にするこのような抗体が、FTD/FTLDを含む様々な神経変性疾患の治療に有益な効果を有する可能性が高いことを示す。TDP-43病変を有するFTD/FTLD患者のサブグループは、PGRNハプロ不全をもたらす、PGRNをコードする遺伝子の突然変異を有する。ソルチリン抗体は、このPGRN欠損を防ぐことが予想され、PGRNレベルは、TDP43の機能及び病変に影響を与え得る他のTDP-43タンパク質症(ALS及びPGRN機能の増大が神経保護作用を有し得る他の神経変性疾患(ADを含む)におけるものを含む)に罹患している患者に同様の治療効果を与える可能性が高い。
【発明の概要】
【0010】
本発明の発明者らは、配列番号146で定義される「E領域」と示される新規なソルチリン領域に意外にも結合し、患者の脳内のPGRNレベルを調節することができるモノクローナル抗体を生成した。
【0011】
本発明は、患者の脳内の減少したPGRNレベルに関連する疾患を予防又は治療する方法であって、有効投与量の、ソルチリンのE領域に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントを投与する工程を含む方法にも関する。これらの疾患としては、特にFTD、ALS及びタンパク質症、例えばAD、PDが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】抗体の選択における工程を示す。A~Eは、それぞれのソルチリン結合抗体を、実施例1及び配列番号147~155に記載されるようにシャッフル構築物に基づいて割り当てた領域を指す。「その他」は、1つの領域に割り当てることができず、A領域とB領域との間の境界で結合し得る抗体を指す。Tetは、テトラオドン-ソルチリンにも結合する抗体を指す。
【
図2A】ソルチリンシャッフル構築物への結合に基づいた抗体の領域割り当てを示す。 パネルAは、実施例1に記載されているように抗体の領域割り当てに使用されるシャッフル構築物の線形図を示す。アミノ酸残基をテトラオドンソルチリン配列(黒色で示される)(配列番号149)に由来する対応するアミノ酸に交換したヒトソルチリン配列(配列番号145)(灰色で示される部分)に基づいて、ソルチリンシャッフル構築物を生成した(実施例1~3)。 パネルBは、Aにおいて線形に示されるシャッフル構築物の予測される構造を示す。暗色の残基は、シャッフル構築物における対応するテトラオドン配列に変更された残基を示す。 パネルCは、それぞれD領域及びE領域クラスに割り当てられた抗体の結合パターンを示す。「+」は、所与のシャッフル構築物への結合を示し、「-」は、結合がないことを示す。異なるシャッフル構築物への結合パターンに基づいて、抗体を領域に割り当てた。得られる抗体領域クラスは、A~Eによって示される。示されるD及びE領域抗体では、「+」によって示されるように両方がヒト配列に結合し(全て灰色)、「-」によって示されるようにいずれもテトラオドン配列に結合しない(全て黒色)が、E領域抗体は、hB45678シャッフル構築物に結合した一方、D領域抗体は、結合せず、パネルAに示されるように結合の局在化をもたらした。E領域抗体について、以下のシャッフル領域への結合が観察された:hsort、hB06-10、B12390、hB45678。抗体は、hB01-05及びテトラオドン構築物に結合しなかった。抗体は、2つを除いて、完全テトラオドンソルチリンタンパク質に結合しなかった。テトラオドン配列に結合することが可能な2つの抗体が「tet」と示された。「その他」は、1つの領域に割り当てることができなかった抗体を指す。
【
図3-1】ヒトE領域抗体の結合親和性を示す。実施例2に記載されるように、Octet384RED(EC50、ng/ml)を用いたバイオレイヤー干渉法によるソルチリン構築物に対する結合親和性。NBは、結合なしを示す。0.1~10ng/ml及び>10ng/mlの値は、結合を示す。領域割り当ては、様々なソルチリンシャッフル構築物に対する抗体の結合パターンに基づいて行った(
図2)。ソルチリン構築物hB01-05及びTetraによる結合がないことは、これらの抗体がE領域に結合することを示唆する。
【
図4-1】E領域抗体間のクロスブロッキングを示す。各抗体がヒト野生型ソルチリンに結合されて、抗体-ソルチリン複合体が形成された。全ての他のE領域抗体を、予め形成された抗体-ソルチリン複合体への結合について試験した(実施例8)。同じか又は異なる領域からのソルチリン抗体間のクロスブロッキングを、抗体-ソルチリン結合の阻害を分析することによって決定した。ソルチリン-ECD-Hisへの抗体の結合を、上述されるOctet 384REDを用いたバイオレイヤー干渉法によって測定した。左列は、一次(固定化)抗体を示し、上行は、二次抗体(固定化抗体に対して試験される抗体)を示す。ソルチリン-ECD-Hisへの一次及び二次抗体の両方の結合は、0.1より高い反応値をもたらし、両方の抗体がタンパク質の異なる領域に結合していたことを示し得る。0.1未満の反応値は、二次抗体の結合がないこと及び固定化(一次)抗体による有効なクロスブロッキングを示し、これは、両方の抗体がソルチリンの同じ領域に結合することを示唆する。「x」は、結合なしを示し、したがって、抗体は、互いにブロックする。「b」は、ソルチリンへの両方の抗体の結合を示し、したがって互いにクロスブロックしない。E領域からの26のうちの22の抗体は、群からの全ての抗体をクロスブロックし、残りの4つの抗体は、26のうちの20の抗体をクロスブロックし、これは、抗体の大部分がソルチリンにおける同じ領域又は隣接する領域に結合することを示唆する。
【
図5】見掛け上健常な男性(18歳)から生成された神経分化誘導多能性幹細胞(iPSC)における細胞外PGRNに対するソルチリン抗体の効果を示す(実施例9)。
【
図6】ソルチリンヒトE領域結合抗体で処理されたヒトソルチリンノックイン(KI)マウスにおける血漿PGRNレベルを示す(実施例10)。抗体#30は、アイソタイプ対照抗体である抗HELで処理されたマウスと比較して血漿PGRNレベルを増加させる。マウスに皮下投与によって10mg/kgの試験抗体を注入した。マウスを48時間後に殺処分し、血液試料を分析のために採取した。血漿PGRNをELISAによって測定した。データは、平均±SDとして示される。データをt検定によって分析した。
***p<0.001。
【
図7A】
図7AおよびBは、見掛け上健常な個体及びPGRN R493X患者から生成された神経分化誘導多能性幹細胞(iPSC)における細胞外PGRNに対するソルチリン抗体の効果を示す(実施例11)。
【
図8A】
図8(A~F)は、抗体30の立体配座エピトープをカバーする代表的なペプチドを示す。示されるペプチドの全ては、0.5Dより大きい交換からの保護を示す(実施例12)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本明細書において使用される際、「ソルチリン」という用語は、ソルチリンタンパク質(例えば、Q99523、1及び2としてUniProtにおいて同定される)と同義である。ソルチリンのアミノ酸の番号付けは、以下に示されるように配列番号145に対して示され、メチオニン(M)は、アミノ酸1である。
【化1】
【0014】
本明細書において使用される際、「E領域」という用語は、以下に示される配列番号146:
【化2】
におけるアミノ酸からなるソルチリンの領域(配列番号145の残基612~753に対応する)を指すことが意図される。
【0015】
E領域抗体について、以下のシャッフル領域への結合が観察された:hsort、hB06-10、B12390、hB45678。抗体は、hB01-05及びtetraに結合しなかった。
【0016】
PGRN遺伝子(プロエピセリン、グラニュリン-エピセリン前駆体、PC細胞誘導成長因子、アクログラニン)は、前駆体PGRNからタンパク質分解的に切断され得る、6~25kDaの範囲のより小さいグラニュリンモチーフの7.5の反復を有する68.5kDa分泌型糖タンパク質をコードする(He,Z.&Bateman,A.,J.MoI.Med.81:600-6X2(2003))。非神経細胞において、PGRNは、細胞周期調節及び細胞運動性(He,Z.&Bateman,A.,J.MoI.Med.57:600-612(2003);Monami,G.,et ah,Cancer Res.(5(5:7103-7110(2006))、創傷修復、炎症(Zhu,J.,et ah,Cell 777:867-878(2002))、血管内皮成長因子(VEGF)などの成長因子の誘導(Tangkeangsiπsin,W.&Serrero,G,Carcinogenesis 25.1587-1592(2004))及び腫瘍発生(He,Z.&Bateman,A.,J.MoI.Med.81:600-612(2003)、Monami,G.,et al.,Cancer Res(5(5:7103-7110(2006);Serrero,G.,Biochem Biophys.Res.Commun.505-409-413(2003)、Lu,R&Serrero,G.,Proc.Natl Acad Sa U.SA 98 142-147(2001);Liau,L M.,et al.,Cancer Res.60:1353-1360(2000))などの様々な事象に関連付けられている。
【0017】
PGRN突然変異は、ハプロ不全をもたらし(Baker,M.,et ah,Nature 442:916-919(2006);Cruts,M.,et ah,Nature 442:920-924(2006))、家族性FTDの事例のほぼ50%に存在することが知られており、PGRN突然変異は、FTDの主な遺伝的要因とされている(Cruts,M.&Van Broeckhoven,C,Trends Genet.24:186-194(2008);Le Ber,I.,et ah,Brain 129:3051-3065(2006))。PGRN突然変異の機能喪失ヘテロ接合特性は、健常個体において、PGRN発現が、FTDの発症から健常個体を保護するのに用量依存的な重要な役割を果たすことを示唆する。
【0018】
本発明に関連して、「抗体」(Ab)という用語は、分子(「抗原」)のエピトープに結合する能力を有する、免疫グロブリン分子又は本発明のある実施形態によれば、免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然抗体は、典型的に、通常、少なくとも2つの重(H)鎖及び少なくとも2つの軽(L)鎖から構成される四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)及び3つの領域(CH1、CH2及びCH3)から構成される重鎖定常領域から構成される。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4サブタイプ)を含む任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)及び軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖は、κ鎖及びλ鎖を含む。重鎖及び軽鎖可変領域は、典型的に、抗原認識に関与する一方、重鎖及び軽鎖定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織又は宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。VH及びVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存される配列の領域が散在する「相補性決定領域」と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置される3つのCDR領域及び4つのFR領域から構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。特に関連があるのは、自然界に存在し得るものと異なる物理的環境中で存在するように「単離され」ているか、又はアミノ酸配列中の天然抗体と異なるように修飾された抗体及びそれらの抗原結合フラグメントである。
【0019】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープ及び線状エピトープは、後者ではなく、前者への結合が変性溶媒の存在下で常に失われる点で区別される。エピトープは、特異的抗原結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)など、結合に直接関与するアミノ酸残基及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0020】
本明細書において使用される際、「抗体の抗原結合フラグメント」という用語は、エピトープに結合することが可能な抗体のフラグメント、部分、領域又はドメイン(それがどのように産生されるかにかかわらず(例えば、切断により、組み換えにより、合成的になど))を意味し、したがって、「抗原結合」という用語は、例えば、「抗体の抗原結合フラグメント」が「抗体のエピトープ結合フラグメント」と同じであることが意図されるように、「エピトープ結合」と同じことを意味することが意図される。抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の1、2、3、4、5又は6つ全てを含有し得、このようなエピトープに結合することが可能であるが、このような抗体のものと異なるこのようなエピトープに対して特異性、親和性又は選択性を示し得る。しかしながら、好ましくは、抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の6つ全てを含有するであろう。抗体の抗原結合フラグメントは、単一のポリペプチド鎖(例えば、scFv)の一部であるか若しくはそれを含み得るか、又はアミノ末端及びカルボキシル末端(例えば、二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fab2フラグメントなど)をそれぞれ有する2つ以上のポリペプチド鎖の一部であるか若しくはそれを含み得る。抗原結合能力を示す抗体のフラグメントは、例えば、無傷の抗体のプロテアーゼ切断によって得られる。より好ましくは、Fvフラグメントの2つの領域、VL及びVHは、別個の遺伝子によって天然にコードされるか、又はこのような遺伝子配列をコードするポリヌクレオチド(例えば、それらのコードcDNA)は、VL及びVH領域が結合して一価抗原結合分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:5879-5883を参照されたい)としてそれらが作製されるのを可能にするフレキシブルリンカーにより、組み換え方法を用いて結合され得る。代わりに、単一のポリペプチド鎖のVL及びVH領域が一緒に結合するのを可能にするには短すぎるフレキシブルリンカー(例えば、約9個未満の残基)を用いることにより、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)又は同様の分子(2つのこのようなポリペプチド鎖が一緒に結合して、二価抗原結合分子を形成する)を形成することができる(二重特異性抗体の説明については、例えば、PNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照されたい)。本発明の範囲内に包含される抗原結合フラグメントの例としては、(i)Fab’又はFabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1領域からなる一価フラグメント又は国際公開第2007059782号パンフレットに記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1領域から本質的になるFdフラグメント;(iv)VL及びVH領域から本質的になるFvフラグメント、(v)VH領域から本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物(camelid)又はナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5_(l):l ll-24)及び(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VL及びVHが別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VL及びVH領域が組み合わされて、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖抗体又は単一鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)及びHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照されたい)としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーにより、組み換え方法を用いて結合され得る。本発明に関連して、これらの及び他の有用な抗体フラグメントは、本明細書においてさらに説明される。抗体という用語は、特に規定されない限り、キメラ抗体及びヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド並びに酵素的切断、ペプチド合成及び組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原(抗原結合フラグメント)に結合する能力を保持する抗体フラグメントも含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用される際、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)を指す。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、所望のエピトープに結合することが可能な好適なフラグメントは、無傷の抗体と同じように有用性について容易にスクリーニングされ得る。
【0021】
「二重特異性抗体」という用語は、それぞれ独立した標的を標的にする2つの独立した抗原結合フラグメントを含有する抗体を指す。これらの標的は、異なるタンパク質上に存在するエピトープ又は同じ標的上に存在する異なるエピトープであり得る。二重特異性抗体分子は、親単一特異性二価抗体分子のHCの定常領域における補償的アミノ酸改変を用いて作製され得る。得られるヘテロ二量体抗体は、2つの異なる親単一特異性抗体から与えられる1つのFabを含有する。Fc領域におけるアミノ酸改変は、時間を経ても安定した二重特異性を有するヘテロ二量体抗体の向上した安定性をもたらす(Ridgway et al.,Protein Engineering 9,617-621(1996)、Gunasekaran et al.,JBC 285,19637-1(2010)、Moore et al.,MAB 3:6 546-557(2011)、Strop et al.,JMB 420,204-219(2012)、Metz et al.,Protein Engineering 25:10 571-580(2012)、Labrijn et al.,PNAS 110:113,5145-5150(2013)、Spreter Von Kreudenstein et al.,MAB 5:5 646-654(2013))。二重特異性抗体は、ScFv融合を用いて生成される分子も含み得る。次に、2つの単一特異性scfvは、独立して、単一の二重特異性分子を生成するために安定したヘテロ二量体を形成することが可能なFc領域に結合される(Mabry et al.,PEDS 23:3 115-127(2010)。二重特異性分子は、二重の結合能を有する。
【0022】
「抗ソルチリン抗体」又は「ソルチリン抗体」(記載される文脈に応じて、本明細書において同義的に使用される)は、ソルチリン、特にソルチリンE領域、配列番号146に特異的に結合する抗体その抗原結合フラグメントである。ソルチリンE領域に結合する抗ソルチリン抗体は、通常、22nM以下、例えば22nM~1nM、10nM~1nM又は5nM~1nM又はさらにそれを超える、例えば約1pM又は1~5pMの親和性(IC50)を有するE領域内の1、2、3、4、5、6又は7連続アミノ酸の立体配座エピトープ又は線状エピトープに結合するであろう。
【0023】
本明細書において使用される際の「ヒト抗体」という用語(「humAb」又は「HuMab」と略記され得る)は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位特異的突然変異により、又は遺伝子再構成中に、又は体細胞突然変異により誘発される突然変異)。
【0024】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。従来のモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、2つ以上のFab領域から構成され得、それにより2つ以上の標的に対する特異性を高める。「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、任意の特定の産生方法(例えば、組み換え、トランスジェニック、ハイブリドーマなど)によって限定されることは意図されていない。「抗体XX」という用語は、そのそれぞれの配列番号によって定義される軽鎖、軽鎖可変領域又は軽鎖可変領域CDR1~3及びそのそれぞれの配列番号によって定義される重鎖、重鎖可変領域又は重鎖可変領域CDR1~3を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメント(例えば、抗体「6003-056」)を示すことが意図される。特定の実施形態において、抗体又はその抗原結合フラグメントは、それらの配列番号によって定義されて含むそれらの全重鎖可変領域及びそれらの配列番号によって定義されるそれらの軽鎖可変領域によって定義される。
【0025】
アミノ酸残基の番号付けは、IMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)又はKabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.&Foeller,C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.91-3242、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services);Chothia,C.&Lesk,A.M.(1987)又はCanonical structures For The Hypervariable domains Of Immunogloblins.J.Mol.Biol.196,901-917によって行われ得る。
【0026】
本明細書において使用される際、抗体又はその抗原結合フラグメントは、別のエピトープと比べてそのエピトープと、より高頻度で、より迅速に、より長い期間及び/又はより高い親和性又は結合活性で反応又は会合する場合、別の分子(すなわちエピトープ)の領域に「特異的に」結合すると言われる。一実施形態において、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、別の分子よりその標的(ソルチリン)に少なくとも10倍強く、好ましくは少なくとも50倍強く、より好ましくは少なくとも100倍強く結合する。好ましくは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、生理学的条件下において、例えば生体内で結合する。したがって、「ソルチリンに特異的に結合する」とは、このような特異性で及び/又はこのような条件下でソルチリンに結合する抗体又はその抗原結合フラグメントの能力を包含する。このような結合を決定するのに好適な方法が当業者に公知であり、例示的な方法が添付の実施例に記載されている。本明細書において使用される際、所定の抗原への抗体の結合に関連して、「結合」という用語は、典型的に、抗原をリガンドとして及び抗体を検体として用いてBIAcore(登録商標)3000又はT200機器のいずれかにおいて例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した際の約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のKDに対応する親和性での結合を指し、所定の抗原又は密接に関連している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低くなる量は、抗体のKDに依存するため、抗体のKDが非常に低い(すなわち抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性より低くなる量は、少なくとも10,000倍であり得る。特に、本発明は、例えば、Octet 384RED(実施例7)を用いたバイオレイヤー干渉法によって決定されるとき、22nM以下、例えば22nM~1nM、10nM~1nM又は5nM~1nMに対応する結合親和性を示す抗ソルチリン抗体に関する。
【0027】
本発明の特定の実施形態において、本発明は、ソルチリンへの結合についてhumAb抗体30又はhumAb抗体900と競合することが可能な抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。別の実施形態において、本発明は、配列番号146に定義されるソルチリンのE領域への結合について抗体30と競合することが可能な抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。このような競合的な結合の阻害は、当該技術分野において周知のアッセイ及び方法を用いて、例えば固定化ヒトソルチリンとともにBIAcore(登録商標)チップを用いて、試験される抗体ポリペプチドを用いて及び用いずに対照抗体(抗体「30」又は「900」など)とともにインキュベートして決定され得る。代わりに、ペアワイズマッピング手法が使用され得、この手法では、対照抗体(抗体「30」又は「900」など)がBIAcore(登録商標)チップの表面に固定され、ヒトソルチリン抗原が固定化抗体に結合され、次に二次抗体がヒトソルチリンに対する同時結合能力について試験される(開示内容が参照により本明細書に援用される‘BIAcore(登録商標)Assay Handbook’,GE Healthcare Life Sciences,29-0194-00 AA 05/2012を参照されたい)。代わりに、Octet 384Red(実施例7及び8)又は競合的な結合を示す同様の手法の使用である。
【0028】
本明細書において使用される際の「kd」(秒-1又は1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0029】
本明細書において使用される際の「ka」(M-1×秒-1又は1/M秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0030】
本明細書において使用される際の「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで除算することによって得られる。
【0031】
本明細書において使用される際の「KA」(M-1又は1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdで除算することによって得られる。
【0032】
一実施形態において、本発明は、以下の特性:
(i)0.5~10nM、例えば1~5nM又は1~2nMの、ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力
の1つ又は複数を示す抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0033】
「ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力」という用語は、実施例9に開示されるELISAアッセイによって測定した際、少なくとも20%、例えば25%~500%、25%~400%又は25%~200%だけ培地中のPGRNの濃度を増加させる能力を含む。
【0034】
「ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力」は、実施例10に開示されるELISAアッセイによって測定した際に少なくとも25%であるが、好ましくは50~500パーセントだけ血漿中のPGRNの濃度を増加させる能力を含む。
【0035】
いくつかの抗体において、CDRのごく一部、すなわちSDRと呼ばれる、結合に必要とされるCDR残基のサブセットは、ヒト化抗体において結合を保持するのに必要とされる。関連するエピトープに接触せず、SDR中にないCDR残基は、過去の研究に基づいて(例えば、CDR H2中の残基H60~H65は、必要とされないことが多い)、Chothia超可変ループの外側にあるKabat CDRの領域から(Kabat et al.(1992)SEQUENCES OF PROTEINS OF IMMUNOLOGICAL INTEREST,National Institutes of Health Publication No.91-3242;Chothia,C.et al.(1987)“Canonical Structures For The Hypervariable Regions Of Immunoglobulins”,J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)、分子モデリングによって及び/又は実験により、又はGonzales,N.R.et al.(2004)“SDR Grafting Of A Murine Antibody Using Multiple Human Germline Templates To Minimize Its Immunogenicity”,Mol.Immunol.41:863-872に記載されるように特定され得る。1つ又は複数のドナーCDR残基が存在しないか又は全ドナーCDRが省略される位置におけるこのようなヒト化抗体において、この位置を占めるアミノ酸は、受容体抗体配列において(Kabat番号付けによって)対応する位置を占めるアミノ酸であり得る。含まれるCDR中のドナーアミノ酸に対する受容体のこのような置換の数は、競合する考慮事項のバランスを反映する。このような置換は、ヒト化抗体中のマウスアミノ酸の数を減少させ、結果として、潜在的な免疫原性を低下させるのに潜在的に有利である。しかしながら、置換は、親和性の変化も引き起こすことがあり、親和性の著しい低下は回避されるのが好ましい。CDR内の置換の位置及び置換するアミノ酸も、実験により選択され得る。
【0036】
CDR残基の単一のアミノ酸改変が機能的結合の喪失をもたらし得るという事実(Rudikoff,S.etc.(1982)“Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-binding Specificity”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79(6):1979-1983)は、別の機能的CDR配列を系統的に同定するための手段を提供する。このような変異体CDRを得るための1つの好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドが突然変異を起こされて(例えば、ランダム突然変異により、又は部位特異的方法(例えば、突然変異遺伝子座をコードするプライマーによるポリメラーゼ連鎖媒介性増幅)により)、置換アミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列中の関連する残基の同一性を、置換される(非機能的)変異体CDR配列の同一性と比較することにより、その置換についてのBLOSUM62.iij置換スコアが特定され得る。BLOSUMシステムは、信頼できるアラインメントについて配列のデータベースを分析することによって作成されるアミノ酸置換のマトリックスを提供する(Eddy,S.R.(2004)“Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?”,Nature Biotech.22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:10915-10919;Karlin,S.et al.(1990)“Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:2264-2268;Altschul,S.F.(1991)“Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective”,J.Mol.Biol.219,555-565。現在、最先端のBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高くなるほど、置換がより保存的になり、ひいては置換が機能に影響を与えない可能性が高くなる)。得られるCDRを含む抗原結合フラグメントがソルチリンに結合できない場合、例えば、BLOSUM62.iij置換スコアは、不十分に保存的であると見なされ、より高い置換スコアを有する新たな置換候補が選択され、生成される。したがって、例えば元の残基がグルタミン酸塩(E)であり、非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは0であり、より保存的な変化(アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン又はリジンなどへの)が好ましい。
【0037】
【0038】
したがって、本発明は、改良されたCDRを同定するためのランダム突然変異の使用を想定している。本発明に関連して、保存的置換は、以下の3つの表の1つ又は複数に反映されているアミノ酸の種類の範囲内の置換によって定義され得る。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
より保存的な置換基としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン及びアスパラギン-グルタミンが挙げられる。
【0043】
アミノ酸のさらなる基は、例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理を用いて配合され得る。
【0044】
ファージディスプレイ技術は、CDR親和性を増加させる(又は低下させる)のに代わりに使用され得る。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異又は「CDRウォーキング」を用い、再選択は、標的抗原又はその抗原性の抗原結合フラグメントを使用して、初期抗体又は親抗体と比較した際、抗原に対するより高い(又はより低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を同定する(例えば、Glaser et al.(1992)J.Immunology 149:3903を参照されたい)。単一のヌクレオチドではなくコドン全体の突然変異誘発は、アミノ酸突然変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異体クローンのプールからなるライブラリーが構築され得、変異体クローンのそれぞれが単一のCDR中の単一のアミノ酸改変により異なり、各CDR残基に対して各可能なアミノ酸置換を提示する変異体を含む。抗原に対する増加した(又は低下した)結合親和性を有する突然変異体は、固定化突然変異体を標識抗原と接触させることによってスクリーニングされ得る。当該技術分野において公知の任意のスクリーニング方法は、抗原に対する増加した又は低下した親和性を有する突然変異体抗体を同定するのに使用され得る(例えば、ELISA)(Wu et al.1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95:6037;Yelton et al.,1995,J.Immunology 155:1994を参照されたい)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングが使用され得る(Schier et al.,1996,J.Mol.Bio.263:551を参照されたい)。
【0045】
このような親和性成熟を達成するための方法は、例えば、Krause,J.C.et al.(2011)“An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody”,MBio.2(1)pii:e00345-10.doi:10.1128/mBio.00345-10;Kuan,C.T.et al.(2010)“Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas”,Int.J.Cancer 10.1002/ijc.25645;Hackel,B.J.et al.(2010)“Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes”,J.Mol.Biol.401(1):84-96;Montgomery,D.L.et al.(2009)“Affinity Maturation and Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41”,MAntibodies 1(5):462-474;Gustchina,E.et al.(2009)“Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fantibodies With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth”,Virology 393(1):112-119;最後にW.J.et al.(2009)“Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy:Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions”,J.Mol.Biol.388(3):541-558;Bostrom,J.et al.(2009)“Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development”,Methods Mol.Biol.525:353-376;Steidl,S.et al.(2008)“In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification”,Mol.Immunol.46(1):135-144;及びBarderas,R.et al.(2008)“Affinity Maturation Of Antibodies Assisted By In Silico Modeling”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(26):9029-9034に記載されている。
【0046】
したがって、包含される抗体又はそれらの抗原結合フラグメントのCDR変異体の配列は、置換により、例えば置換される4つのアミノ酸残基、3つのアミノ酸残基、2つのアミノ酸残基又は1つのアミノ酸残基により、親抗体のCDRの配列と異なり得る。本発明の一実施形態によれば、CDR領域中のアミノ酸は、上記の3つの表において定義されるように、保存的置換で置換され得ることがさらに想定される。
【0047】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、1つ又は複数のヒト重鎖及び/又は軽鎖導入遺伝子又は導入染色体(動物の天然ゲノムDNAに統合されるか又は非統合のいずれか)を含み、完全ヒト抗体を発現することが可能なゲノムを有する非ヒト動物を指す。例えば、トランスジェニックマウスは、マウスが、ソルチリン抗原及び/又はソルチリンを発現する細胞で免疫されるときにヒト抗ソルチリン抗体を産生するように、ヒト軽鎖導入遺伝子及びヒト重鎖導入遺伝子又はヒト重鎖導入染色体のいずれかを有し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、トランスジェニックマウス、例えばHuMAbマウス(HCo7又はHCo12マウスなど)の場合と同様に、マウスの染色体DNAに統合され得るか、又はヒト重鎖導入遺伝子は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されるように、導入染色体KMマウスの場合と同様に染色体過剰に維持され得る。このようなトランスジェニック及び導入染色体マウス(本明細書においてまとめて「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組み換え及びアイソタイプスイッチングを行うことにより、所与の抗原(IgG、IgA、IgM、IgD及び/又はIgEなど)に対するヒトモノクローナル抗体の複数のアイソタイプを産生することが可能である。
【0048】
トランスジェニック、非ヒト動物も、特定の抗体をコードする遺伝子を導入することにより、例えば動物の乳汁中で発現される、タンパク質をコードする遺伝子に抗体遺伝子を作動可能に連結することにより、特定の抗原に対する抗体の産生に使用され得る。
【0049】
本明細書において使用される際の「治療」又は「治療すること」という用語は、疾患又は障害の進行又は重症度を改善するか、遅らせるか、軽減するか、又は抑制すること、又はこのような疾患又は障害の1つ又は複数の症状又は副作用を改善するか、遅らせるか、軽減するか、又は抑制することを意味する。本発明の趣旨では、「治療」又は「治療すること」は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法をさらに意味し、ここで、「有益な又は所望の臨床結果」としては、限定はされないが、部分的であるか又は全体的であるか、検出可能か又は検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、障害又は疾患の程度の減少、安定した(すなわち悪化していない)疾患又は障害状態、疾患又は障害状態の進行の遅延又は緩徐化、疾患又は障害状態の改善又は緩和及び疾患又は障害の寛解が挙げられる。
【0050】
「有効量」は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに適用される場合、意図される生物学的効果又は所望の治療結果(限定はされないが臨床結果を含む)を達成するのに必要な投与量及び期間にわたる十分な量を指す。「治療的に有効な量」という語句は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに適用される場合、障害若しくは疾患の状態の進行又は障害若しくは疾患の症状の進行を改善するか、緩和するか、安定させるか、抑制するか、遅らせるか、軽減するか、又は遅延させるのに十分な抗体又はその抗原結合フラグメントの量を表すことが意図される。一実施形態において、本発明の方法は、他の化合物と組み合わせた、抗体又はその抗原結合フラグメントの投与を提供する。このような場合、「有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組合せの量である。
【0051】
本発明の抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントの治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別及び体重並びに抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントが個体における所望の応答を引き起こす能力などの要因に応じて変化し得る。治療的に有効な量は、抗体又は抗体部分の何らかの毒性又は有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0052】
本発明の抗体は、好ましくは、ヒト又はヒト化抗体である。
【0053】
この領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、例えば、IMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)又はKabat,E.A.,Wu,T.T.,Perry,H.M.,Gottesmann,K.S.&Foeller,C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edit.,NIH Publication no.91-3242、米国保健福祉省(U.S.Department of Health and Human Services);Chothia,C.&Lesk,A.M.(1987)又はCanonical structures For The Hyperrvariable domains Of Immunogloblins.J.Mol.Biol.196,901-917を使用して行われ得る。
【0054】
抗体6003-028:
したがって、本発明は、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、
(b)配列番号2のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、
(c)配列番号3のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3、
(d)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、
(e)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、及び
(f)配列番号6のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0055】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号109の重鎖可変領域及び配列番号110の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0056】
抗体6003-056:
したがって、本発明は、
a.配列番号7を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号8を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号9を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号10を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号11を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号12を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0057】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号111の重鎖可変領域及び配列番号112の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0058】
抗体6003-1286:
したがって、本発明は、
a.配列番号13を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号14を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号15を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号16を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号17を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号18を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0059】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号113の重鎖可変領域及び配列番号114の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0060】
抗体6003-030:
したがって、本発明は、
a.配列番号19を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号20を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号21を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号22を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号23を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号24を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0061】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号115の重鎖可変領域及び配列番号116の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0062】
抗体6003-1277:
したがって、本発明は、
a.配列番号25を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号26を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号27を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号28を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号29を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号30を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0063】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号117の重鎖可変領域及び配列番号118の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0064】
抗体6003-381:
したがって、本発明は、
a.配列番号31を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号32を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号33を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号34を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0065】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号119の重鎖可変領域及び配列番号120の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0066】
抗体6003-083:
したがって、本発明は、
a.配列番号37を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号38を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号39を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号40を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号41を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号42を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0067】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号121の重鎖可変領域及び配列番号122の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0068】
抗体6003-799:
したがって、本発明は、
a.配列番号43を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号44を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号45を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号46を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号48を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0069】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号123の重鎖可変領域及び配列番号124の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0070】
抗体6003-910:
したがって、本発明は、
a.配列番号49を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号50を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号51を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号52を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号53を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号54を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0071】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号125の重鎖可変領域及び配列番号126の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0072】
抗体6003-423:
したがって、本発明は、
a.配列番号55を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号56を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号57を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号58を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号59を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号60を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0073】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号127の重鎖可変領域及び配列番号128の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0074】
抗体6003-822:
したがって、本発明は、
a.配列番号61を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号62を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号63を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号64を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号65を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号66を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0075】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号129の重鎖可変領域及び配列番号130の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0076】
抗体6003-886:
したがって、本発明は、
a.配列番号67を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号68を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号69を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号70を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号71を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号72を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0077】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号131の重鎖可変領域及び配列番号132の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0078】
抗体6003-072:
したがって、本発明は、
a.配列番号73を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号74を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号75を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号76を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号77を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号78を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0079】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号133の重鎖可変領域及び配列番号134の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0080】
抗体6003-900:
したがって、本発明は、
a.配列番号79を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号80を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号81を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号82を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号83を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号84を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0081】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号135の重鎖可変領域及び配列番号136の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0082】
抗体6003-936:
したがって、本発明は、
a.配列番号85を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号86を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号87を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号88を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号89を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号90を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0083】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号137の重鎖可変領域及び配列番号138の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0084】
抗体6003-408:
したがって、本発明は、
a.配列番号91を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号92を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号93を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号94を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号95を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号96を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0085】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号139の重鎖可変領域及び配列番号140の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0086】
抗体6003-471:
したがって、本発明は、
a.配列番号97を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号98を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号99を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号100を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号101を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号102を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0087】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号141の重鎖可変領域及び配列番号142の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0088】
抗体6003-972:
したがって、本発明は、
a.配列番号103を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号104を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号105を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号106を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号107を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号108を含む軽鎖可変領域CDR3
を含むか又はそれからなる抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0089】
好ましくは、モノクローナル抗体は、配列番号143の重鎖可変領域及び配列番号144の軽鎖可変領域を含むか又はそれからなり得る。
【0090】
上述される抗体は、一実施形態によれば、前記CDR1、CDR2及び/又はCDR3(HC及び/又はVC)配列からの、4つ以下のアミノ酸差、又は3つ以下のアミノ酸差、又は2つ以下のアミノ酸差、又は1つ以下のアミノ酸差を有する変異体をさらに含み得る。
【0091】
さらに、抗体は、薬学的に許容できる担体と一緒に組成物中にあり得る。本発明の抗体は、治療に使用され得る。特に、本発明の抗体は、FTD又はALS又はタンパク質症(アルツハイマー病(AD)など)を治療するのに使用され得る。
【0092】
本発明によって想定される治療は、長期であり得、患者は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間又はそれを超えて治療され得る。
【0093】
本発明の抗体は、例えば、Kohler et al.,Nature 256,495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ方法によって産生されるモノクローナル抗体であり得るか、又は組み換えDNA若しくは他の方法によって産生されるモノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、例えば、Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)及びMarks et al.,J.MoI.Biol.222,581-597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーからも単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の好適な源から得られる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば、表面において抗原を発現する細胞又は該当する抗原をコードする核酸の形態において、該当する抗原で免疫されたマウスから得られるマウス脾臓Bリンパ球細胞から調製されるハイブリドーマから得られる。モノクローナル抗体は、免疫されたヒト又は非ヒト哺乳動物(ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、霊長類など)の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマからも得られる。
【0094】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。ソルチリンに対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の部分を有するトランスジェニック又は染色体導入マウスを用いて生成され得る。このようなトランスジェニック及び染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウス及びKMマウスと呼ばれるマウスを含む。
【0095】
HuMAbマウスは、内因性μ及びK鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されていないヒト重鎖可変及び定常(μ及びY)並びに軽鎖可変及び定常(κ)鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座を含む(Lonberg,N.et al.,Nature 368,856-859(1994))。したがって、マウスは、マウスIgM又はKの減少した発現を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖及び軽鎖導入遺伝子がクラススイッチ及び体細胞突然変異を起こして、高親和性ヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.et al.(1994)、上記を参照されたい;Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113,49-101(1994)、Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.Vol.13 65-93(1995)及びHarding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci 764 536-546(1995)に概説されている)。HuMAbマウスの作製は、Taylor,L.et al.,Nucleic Acids Research 20,6287-6295(1992)、Chen,J.et al.,International Immunology 5,647-656(1993)、Tuaillon et al.,J.Immunol.152,2912-2920(1994)、Taylor,L.et al.,International Immunology 6,579-591(1994)、Fishwild,D.et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に詳細に記載されている。米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレット及び国際公開第01/09187号パンフレットも参照されたい。
【0096】
HCo7、HCo12、HCo17及びHCo20マウスは、それらの内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているように)、それらの内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例1に記載されているように)及びKCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように)を有する。さらに、HCo7マウスは、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子(米国特許第5,770,429号明細書に記載されているように)を有し、HCo12マウスは、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo17マウスは、HCo17ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/09187号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性マウス重鎖及びκ軽鎖遺伝子座の破壊のためにバックグラウンドのホモ接合体においてヒト免疫グロブリン重鎖及びκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0097】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。HCo12-Balb/c、HCo17-Balb/c及びHCo20-Balb/cマウスは、国際公開第09/097006号パンフレットに記載されているように、HCo12、HCo17及びHCo20をKCo5[J/K](Balb)に交差させることによって生成され得る。
【0098】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14抗原結合フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。
【0099】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞は、周知の技術に従って、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するのに使用され得る。本発明のヒトモノクローナル若しくはポリクローナル抗体又は他の種に由来する本発明の抗体は、該当する免疫グロブリン重鎖及び軽鎖配列についてトランスジェニックな別の非ヒト哺乳動物又は植物の生成及び回収可能な形態での抗体の産生によって遺伝子導入的にも生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ又は他の哺乳動物の乳汁中で産生され、それから回収され得る。例えば、米国特許第5,827,690号明細書、米国特許第5,756,687号明細書、米国特許第5,750,172号明細書及び米国特許第5,741,957号明細書を参照されたい。
【0100】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。アイソタイプの選択は、典型的に、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κ又はλのいずれかが使用され得る。必要に応じて、本発明の抗ソルチリン抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、元はIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgGlからIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4抗体へのアイソタイプスイッチによって変更され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1、κである。抗体は、そのアミノ酸配列が、他のアイソタイプと比べてそのアイソタイプに最も相同性が高い場合、特定のアイソタイプのものであると言われる。
【0101】
一実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくはIgG抗体、特にIgG1、κ抗体である。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗体抗原結合フラグメント又は一本鎖抗体である。
【0102】
抗体及びその抗原結合フラグメントは、例えば、従来の技術を用いた抗原結合断片化によって得られ、抗原結合フラグメントは、全抗体について本明細書に記載されるのと同じように有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2抗原結合フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab’)2抗原結合フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するように処理されて、Fab’抗原結合フラグメントを生成し得る。Fab抗原結合フラグメントはIgG抗体をパパインで処理することによって得られ、Fab’抗原結合フラグメントは、IgG抗体のペプシン消化により得られる。F(ab’)抗原結合フラグメントは、チオエーテル結合又はジスルフィド結合により、以下に記載されるFab’を結合することによっても生成され得る。Fab’抗原結合フラグメントは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体抗原結合フラグメントである。Fab’-抗原結合フラグメントは、F(ab’)2抗原結合フラグメントをジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得られる。抗体抗原結合フラグメントは、組み換え細胞におけるこのような抗原結合フラグメントをコードする核酸の発現によっても生成され得る(例えば、Evans et al.,J.Immunol.Meth.184、123-38(1995)を参照されたい)。例えば、F(ab’)2抗原結合フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子は、このような切断された抗体抗原結合フラグメント分子を生成するために、H鎖のCH1領域及びヒンジ領域をコードするDNA配列、続いて翻訳停止コドンを含み得る。
【0103】
一実施形態において、抗ソルチリン抗体は、一価抗体、好ましくはヒンジ領域の欠失を有する国際公開第2007059782号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている一価抗体である。したがって、一実施形態において、抗体は、一価抗体であり、前記抗ソルチリン抗体は、i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物は、選択された抗原特異的抗ソルチリン抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列及びIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列及びIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、作動可能に一緒に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物若しくはヒトに投与されるとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともにジスルフィド結合又は共有結合を形成することが可能なアミノ酸をCL領域が含まないように修飾されている、工程と、ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物は、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列及びヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、ヒンジ領域に対応する領域及びIgサブタイプによって必要とされるようにCH3領域などのCH領域の他の領域がポリクローナルヒトIgGの存在下で又は動物ヒトに投与されるとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともに、ジスルフィド結合、又は共有結合、又は安定した非共有重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列及び前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列は、作動可能に一緒に連結される、工程と、iii)前記一価抗体を生成するために細胞発現系を提供する工程と、iv)(iii)の細胞発現系の細胞内で(i)及び(ii)の核酸構築物を共発現することにより、前記一価抗体を生成する工程とを含む方法によって構築される。
【0104】
同様に、一実施形態において、抗ソルチリン抗体は、
(i)本明細書に記載される本発明の抗体の可変領域又は前記領域の抗原結合部分、及び
(ii)免疫グロブリンのCH領域又はCH2及びCH3領域を含むその領域
を含む一価抗体であり、ここで、CH領域又はその領域は、ヒンジ領域に対応する領域及び免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合、CH3領域などのCH領域の他の領域がポリクローナルヒトIgGの存在下で同一のCH領域とともにジスルフィド結合を形成するか、又は同一のCH領域とともに他の共有結合又は安定した非共有重鎖間結合を形成することが可能なアミノ酸残基を含まないように修飾されている。
【0105】
さらなる実施形態において、一価抗体の重鎖は、ヒンジ領域全体が欠失しているように修飾されている。
【0106】
別のさらなる実施形態において、前記一価抗体の配列は、それがN結合型グリコシル化のための受容体部位を含まないように修飾されている。
【0107】
本発明は、抗ソルチリン結合領域(例えば、抗ソルチリンモノクローナル抗体のソルチリン結合領域)が、2つ以上のエピトープを標的にする二価又は多価二重特異性骨格の一部である「二重特異性抗体」も含む(例えば、第2のエピトープは、二重特異性抗体が、血液脳関門などの生物学的障壁を越える改良されたトランスサイトーシスを示し得るように、活性な輸送受容体のエピトープを含み得る)。したがって、別のさらなる実施形態において、抗ソルチリン抗体の一価Fabは、異なるタンパク質を標的にするさらなるFab又はscfvに結合されて、二重特異性抗体を生成し得る。二重特異性抗体は、二重機能、例えば抗ソルチリン結合領域によって与えられる治療機能及び血液脳関門などの生物学的障壁を越える輸送を促進するために受容体分子に結合し得る輸送機能を有し得る。
【0108】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、一本鎖抗体も含む。一本鎖抗体は、重鎖及び軽鎖Fv領域が結合されたペプチドである。一実施形態において、本発明は、本発明の抗ソルチリン抗体のFvにおける重鎖及び軽鎖がペプチド一本鎖において(典型的に、約10、12、15つ又はそれを超えるアミノ酸残基の)フレキシブルペプチドリンカーと結合される一本鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を産生する方法は、例えば、米国特許第4,946,778号明細書、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)、Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)及びMcCafferty et al.,Nature 348,552-554(1990)に記載されている。一本鎖抗体は、単一のVH及びVLのみが使用される場合、一価であり、2つのVH及びVLが使用される場合、二価であるか、又は3つ以上のVH及びVLが使用される場合、多価であり得る。
【0109】
本明細書に記載される抗体及びその抗原結合フラグメントは、任意の好適な数の修飾アミノ酸の包含及び/又はこのような共役置換基との結合によって修飾され得る。これに関連する適合性は、一般に、非誘導体化親抗ソルチリン抗体に関連するソルチリン選択性及び/又はソルチリン特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決定される。1つ又は複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増加させ、ポリペプチド抗原性を低下させるか、又はポリペプチド貯蔵安定性を増加させるのに有利であり得る。アミノ酸は、例えば、組み換え産生の際に翻訳と同時に若しくは翻訳後に修飾されるか(例えば、哺乳類細胞における発現の際のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)又は合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが挙げられる。アミノ酸の修飾の当業者の指針となるのに十分な言及は、文献全体を通して十分にある。例のプロトコルは、Walker(1998)Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸又は有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択され得る。
【0110】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、例えば、それらの血中半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によっても化学修飾され得る。例示的なポリマー及びそれらをペプチドに結合するための方法は、例えば、米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書及び米国特許第4,609,546号明細書に示されている。さらなる例示的なポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオール及びポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000、例えば約3,000~12,000g/molの分子量を有するPEG)が挙げられる。
【0111】
本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントは、診断法において又は画像診断用リガンドとしてさらに使用され得る。
【0112】
一実施形態において、1つ又は複数の放射性標識アミノ酸を含む本発明の抗体及びその抗原結合フラグメントが提供される。放射性標識抗ソルチリン抗体は、診断及び治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子への結合は、別の考えられる特徴である)。このような標識の非限定的な例としては、限定はされないが、ビスマス(213Bi)、炭素(11C、13C、14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co、60Co)、銅(64Cu)、ジスプロシウム(165Dy)、エルビウム(169Er)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、金(198Au)、ホルミウム(166Ho)、水素(3H)、インジウム(111In、112In、113In、115In)、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、イリジウム(192Ir)、鉄(59Fe)、クリプトン(81mKr)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、窒素(13N、15N)、酸素(15O)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、カリウム(42K)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルビジウム(81Rb、82Rb)、ルテニウム(82Ru、97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ナトリウム(24Na)、ストロンチウム(85Sr、89Sr、92Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb、177Yb)、イットリウム(90Y)及び亜鉛(65Zn)が挙げられる。放射性標識アミノ酸及び関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えば、Junghans et al.,Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd edition,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))並びに米国特許第4,681,581号明細書、米国特許第4,735,210号明細書、米国特許第5,101,827号明細書、米国特許第5,102,990号明細書(米国再発行特許第35,500号明細書)、米国特許第5,648,471号明細書及び米国特許第5,697,902号明細書を参照されたい。例えば、放射性同位体がクロラミンT法によって結合され得る(Lindegren,S.et al.(1998)“Chloramine-T In High-Specific-Activity Radioiodination Of Antibodies Using N-Succinimidyl-3-(Trimethylstannyl)Benzoate As An Intermediate”,Nucl.Med.Biol.25(7):659-665;Kurth,M.et al.(1993)“Site-Specific Conjugation Of A Radioiodinated Phenethylamine Derivative To A Monoclonal Antibody Results In Increased Radioactivity Localization In Tumor”,J.Med.Chem.36(9):1255-1261;Rea,D.W.et al.(1990)“Site-specifically radioiodinated antibody for targeting tumors”,Cancer Res.50(3 Suppl):857s-861s)。
【0113】
本発明は、蛍光標識(希土類キレート(例えば、ユウロピウムキレート)など)、フルオレセイン型標識(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン)、ローダミン型標識(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen)、TAMRA(登録商標)又はダンシルクロリド)、VIVOTAG 680 XL FLUOROCHROME(商標)(Perkin Elmer)、フィコエリトリン;ウンベリフェロン、Lissamine;シアニン;フィコエリトリン、Texas Red、BODIPY FL-SE(登録商標)(Invitrogen)又はそれらの類似体(これらは全て、光学的検出に好適である)を用いて検出可能に標識される抗ソルチリン抗体及びその抗原結合フラグメントも提供する。化学発光標識が用いられ得る(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びイクオリン)。このような診断及び検出は、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質又は限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによっても行われ得る。
【0114】
化学発光標識が用いられ得る(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びイクオリン)。このような診断及び検出は、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質又は限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによっても行われ得る。常磁性標識も用いられ得、好ましくはポジトロン放出型断層撮影法(PET)又は単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)を用いて検出される。このような常磁性標識としては、限定はされないが、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(M)、ネオジム(Nd)、オスミウム(Os)、酸素(O)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、サマリウム(Sm)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)及びジルコニウム(Zi)、特にCo+2、CR+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、Fe+3、Ga+3、Mn+3、Ni+2、Ti+3、V+3及びV+4の常磁性イオン、様々なポジトロン放出型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属及び非放射性常磁性金属イオンを含有する化合物が挙げられる。
【0115】
したがって、一実施形態において、本発明の抗ソルチリン抗体又はそのソルチリン結合フラグメントは、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識又は酵素標識で標識され得る。フラグメントの標識抗体は、被験体の脳における前記ソルチリンの存在又は量を検出又は測定するのに使用され得る。この方法は、前記ソルチリンに結合された抗ソルチリン抗体又はソルチリン結合フラグメントのインビボイメージングの検出又は測定を含み得、このようなソルチリンに結合された前記抗ソルチリン抗体又はソルチリン結合フラグメントのエクスビボイメージングを含み得る。
【0116】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの1つ又は複数のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントの組み換え産生に使用され得る。
【0117】
本発明に関連して、発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター及び合成核酸ベクター(好適な組の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の好適なDNA又はRNAベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミド及びファージDNAの組合せに由来するベクター及びウイルス核酸(RNA又はDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態において、抗ソルチリン抗体コード核酸は、例えば、線形発現要素(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮核酸ベクター(例えば、米国特許第6,077,835号明細書及び/又は国際公開第00/70087号パンフレットに記載されているように)、pBR322、pUC 19/18又はpUC 118/119、「ミッジ」最小サイズ核酸ベクターなどのプラスミドベクター(例えば、Schakowski et al.,MoI Ther 3,793-800(2001)に記載されているように)を含む裸のDNA又はRNAベクターにおいて、又はCaPO4沈殿構築物などの沈殿核酸ベクター構築物(例えば、国際公開第00/46147号パンフレット、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)及びCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 2,603(1981)に記載されているように)として含まれる。このような核酸ベクター及びその使用法は、当該技術分野において周知である(例えば、米国特許第5,589,466号明細書及び米国特許第5,973,972号明細書を参照されたい)。
【0118】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞における抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントの発現に好適である。このようなベクターの例としては、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke&Schuster,J Biol Chem 264,5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen,Madison,WI)など)などの発現ベクターが挙げられる。
【0119】
発現ベクターは、さらに又は代わりに、酵母系における発現に好適なベクターであり得る。酵母系における発現に好適な任意のベクターが用いられ得る。好適なベクターとしては、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ及びPGHなどの構成的又は誘導性プロモータを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、Grant et al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)、Mattanovich,D.et al.Methods Mol.Biol.824,329-358(2012)、Celik,E.et al.Biotechnol.Adv.30(5),1108-1118(2012)、Li,P.et al.Appl.Biochem.Biotechnol.142(2),105-124(2007)、Boeer,E.et al.Appl.Microbiol.Biotechnol.77(3),513-523(2007)、van der Vaart,J.M.Methods Mol.Biol.178,359-366(2002)及びHolliger,P.Methods Mol.Biol.178,349-357(2002)に概説されている)。
【0120】
本発明の発現ベクターにおいて、抗ソルチリン抗体コード核酸は、任意の好適なプロモータ、エンハンサー及び他の発現促進要素を含むか又はそれらと結合され得る。このような要素の例としては、強力な発現プロモータ(例えば、ヒトCMV IEプロモータ/エンハンサー並びにRSV、SV40、SL3-3、MMTV及びHIV LTRプロモータ)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質抵抗性遺伝子及び/又は好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモータとは対照的に誘導性プロモータも含み得る(当業者は、このような用語が、実際に、特定の条件下における遺伝子発現の程度の記述語であることを認識するであろう)。
【0121】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に定義される本発明の抗体又はその抗原結合フラグメント又は本明細書に定義される本発明の二重特異性分子を産生するトランスフェクトーマなど、組み換え真核生物又は原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌及び哺乳類細胞(CHO又はHEK細胞など)が挙げられる。例えば、一実施形態において、本発明は、本発明の抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントの発現のための配列コードを含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントの発現のための配列コードを含む、プラスミド、コスミド、ファージミド又は線形発現要素など、融合されていない核酸を含む細胞を提供する。
【0122】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗ソルチリン抗体を産生するための方法であって、a)本明細書において上述されるように本発明のハイブリドーマ又は宿主細胞を培養する工程と、b)培地から本発明の抗体を精製する工程とを含む方法に関する。
【0123】
一実施形態において、本発明は、調製物であって、このような用語が本明細書において使用される際、本明細書に定義される抗ソルチリン抗体を含み、ソルチリンに結合することが可能でないか又は調製物の抗ソルチリン機能性を実質的に変更しないかのいずれかである、自然発生する抗体を実質的に含まない調製物に関する。したがって、このような調製物は、自然発生する血清又はこのような血清の精製誘導体を包含せず、抗ソルチリン抗体と、調製物の抗ソルチリン抗体の機能性を変更しない別の抗体との混合物を含み、ここで、このような機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)a、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(v)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、脳内のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
(vi)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)及び/又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を提供する能力
である。
【0124】
本発明は、特に、天然抗ソルチリン抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を(そのCDR、可変領域、フレームワーク残基及び/又は定常領域のいずれかに)有するこのような抗ソルチリン抗体の調製物であって、前記構造変化は、抗ソルチリン抗体モノクローナル抗体が、前記天然抗ソルチリン抗体によって示される機能性と比べて著しく変化した機能性(すなわち機能性の20%超の相違、40%超の相違、60%超の相違、80%超の相違、100%超の相違、150%超の相違、2倍超の相違、4倍超の相違、5倍超の相違又は10倍超の相違)を示すことを引き起こし、このような機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、
(v)脳内のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
(vi)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はアルツハイマー病(AD)の治療を提供する能力
であり、特に、このような変化した機能性は、構造変化の結果であり、したがってそれと切り離すことができない、調製物に関する。
【0125】
自然発生する抗体を「実質的に含まない」という用語は、このような調製物におけるこのような自然発生する抗体の、又は調製物のソルチリン結合特性を実質的に変更しないこのような調製物におけるある濃度のこのような自然発生する抗体の包含の完全な非存在を指す。抗体は、それが自然発生する対応物を有さないか、又はそれを自然に伴う成分から分離若しくは精製されている場合、「単離」されていると言われる。
【0126】
「自然発生する抗体」という用語は、それがこのような調製物に関する場合、生きたヒト又は他の動物内でそれらの免疫系の機能の自然な結果として誘発される抗体(自然発生する自己抗体を含む)を指す。
【0127】
したがって、本発明の調製物は、抗ソルチリン抗体及びソルチリンによって保有されないエピトープに結合することが可能な意図的に加えられるさらなる抗体を含有するこのような調製物を除外せず、実際は明確にそれを包含する。このような調製物は、特に、調製物が、前頭側頭型認知症(FTD)及び/又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療する際に向上した有効性を示すその実施形態を含む。
【0128】
本発明のその抗原結合フラグメントの抗体は、様々な細胞株、例えばヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株及び昆虫細胞株、例えばCHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(ミエローマ細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株及びHuH-7ヒト細胞株において生産され得る(内容が参照により本明細書に援用される、Dumont et al,2015,Crit Rev Biotechnol.Sep 18:1-13.)。
【0129】
さらに他の態様において、本発明は、
(i)本明細書に定義される抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメント又は調製物であって、このような用語が本明細書において定義される際、このような抗ソルチリン抗体又はその抗原結合フラグメントを含む調製物、及び
(ii)薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物に関する。
【0130】
医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技術に従って、薬学的に許容できる担体又は希釈剤並びに任意の他の公知の補助剤及び賦形剤とともに製剤化され得る。
【0131】
薬学的に許容できる担体又は希釈剤並びに任意の他の公知の補助剤及び賦形剤は、本発明の選択された化合物及び選択された投与方法に好適であるべきである。医薬組成物の担体及び他の成分のための適合性は、エピトープ結合に対する(例えば、それほど大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))、本発明の選択された化合物又は医薬組成物の所望の生物学的特性に対する大きい悪影響がないことに基づいて決定される。
【0132】
本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗浄剤(例えば、Tween-20又はTween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定剤(例えば、糖又はタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤及び/又は医薬組成物に含めるのに好適な他の材料も含み得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液及びハンクス溶液である。さらに、医薬組成物又は製剤は、他の担体又は非毒性の、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びコポリマー(例えば、ラテックス機能化セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び脂質凝集体(例えば、油滴又はリポソーム)など、大型のゆっくりと代謝される高分子も含み得る。
【0133】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物及び投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性又はそのアミド、投与経路、投与時期、用いられる特定の化合物の排せつ速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全体的な健康及び過去の病歴並びに医療分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて決まる。
【0134】
医薬組成物は、予防的及び/又は治療的処置のための非経口、局所、経口又は経鼻手段を含む、任意の好適な経路及び方法によって投与され得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される際の「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸内及び局所投与以外の投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入を含む。インビボ及びインビトロで本発明の化合物を投与するさらなる好適な経路が当該技術分野において周知であり、当業者によって選択され得る。一実施形態において、その医薬組成物は、静脈内又は皮下注射又は注入によって投与される。
【0135】
薬学的に許容できる担体としては、本発明の化合物と生理学的に適合性の、あらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。
【0136】
本発明の医薬組成物に用いられ得る好適な水性及び非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油及びゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガム及び注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)及び/又は様々な緩衝液が挙げられる。他の担体が医薬品分野において周知である。
【0137】
薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製用の滅菌水溶液又は分散体及び滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。
【0138】
適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散体の場合、所要の粒度の維持及び界面活性剤の使用によって維持され得る。
【0139】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど)、(2)油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど)、及び(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)も含み得る。
【0140】
本発明の医薬組成物は、組成物中に糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)又は塩化ナトリウムなどの等張剤も含み得る。
【0141】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の保存可能期間又は有効性を向上させ得る、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤又は緩衝液など、選択された投与経路に適切な1つ又は複数の補助剤も含有し得る。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ及びマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの速放性から化合物を保護する担体とともに調製され得る。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸など)を単独で又はワックス又は当該技術分野において周知の他の材料とともに含み得る。このような製剤の調製のための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0142】
一実施形態において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分配を確実にするように製剤化され得る。非経口投与用の薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液又は分散体の即時調製用の滅菌水溶液又は分散体及び滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。
【0143】
注射用の医薬組成物は、典型的に、製造及び貯蔵の条件下で滅菌性且つ安定性でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム又は高い薬剤濃度に好適な他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)及び注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)を含有する、水性又は非水性溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散体の場合、所要の粒度の維持及び界面活性剤の使用により維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、ポリアルコール(グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、抗体の吸収を遅らせる物質、例えば一ステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、例えば、上に列挙されるような成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒及び例えば上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0144】
滅菌注射用溶液は、上に列挙されるような成分の1つ又は組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒及び上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0145】
治療の上記の方法及び本明細書に記載される使用における投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与され得、いくつかの分割量は、時間をかけて投与され得るか、又は用量は、治療状況の要件によって示されるように比例的に減少又は増加され得る。非経口組成物は、投与のしやすさ及び投与の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される被験体のための統一された投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、所要の医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性及び得られる具体的な治療効果、並びに(b)個体における敏感性の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0146】
抗ソルチリン抗体の有効投与量及び投与計画は、治療される疾患又は病態に応じて決まり、当業者によって決定され得る。治療的に有効な量の本発明の抗体の例示的な非限定的な範囲は、約0.1~10mg/kg/体重、例えば約0.1~5mg/kg/体重、例えば約0.1~2mg/kg/体重、例えば約0.1~1mg/kg/体重、例えば約0.15、約0.2、約0.5、約1、約1.5又は約2mg/kg/体重である。
【0147】
当該技術分野において通常の技能を有する医師又は獣医は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定及び処方することができる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物に用いられる抗ソルチリン抗体の用量を、所望の治療効果を得るために必要とされるより少ないレベルから開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加し得る。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、上述される要因に応じて決まる。投与は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下であり得、例えば標的の部位の近位で投与され得る。必要に応じて、医薬組成物の有効1日用量は、任意選択的に単位剤形において、1日を通して適切な間隔で別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回又はそれを超える分割用量として投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、上述されるように医薬組成物として化合物を投与するのが好ましい。
【0148】
本発明の標識抗体又はその抗原結合フラグメントは、疾患又は障害を検出、診断又は監視するために診断目的で使用され得る。本発明は、限定はされないが、FTD、ALS又はタンパク質症(アルツハイマー病(AD)などの)を含む、神経変性又は認知疾患又は障害の検出又は診断を提供し、(a)ソルチリンに特異的に結合する1つ又は複数の抗体を用いて、被験体の細胞又は組織試料内のピログルタミルAβフラグメントの存在を測定する工程と、(b)抗原のレベルを制御レベル、例えば正常な組織試料におけるレベルと比較し、それにより、抗原の制御レベルと比較した、抗原の測定レベルの増加が疾患又は障害を示すか、又は疾患又は障害の重症度を示す工程とを含む。
【0149】
本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントは、当該技術分野において周知の免疫組織化学法を用いて、生物学的試料内のソルチリン又はソルチリンの抗原結合フラグメントを測定するのに使用され得る。タンパク質を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)及び放射免疫測定法アッセイ(RIA)及びメソスケールディスカバリープラットフォームベースのアッセイ(MSD)などの免疫測定法が挙げられる。好適な抗体標識がこのようなキット及び方法に使用され得、当該技術分野において公知の標識としては、酵素標識(アルカリホスファターゼ及びグルコースオキシダーゼなど)、放射性同位体標識(ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)及びテクネチウム(99mTc)など)、及び発光標識(ルミノール及びルシフェラーゼなど)、及び蛍光標識(フルオレセイン及びローダミンなど)が挙げられる。
【0150】
標識抗ソルチリン抗体又はそれらのソルチリン結合フラグメントの存在は、診断目的のためにインビボで検出され得る。一実施形態において、診断は、a)有効量のこのような標識分子を被験体に投与する工程、b)投与後、所定の時間間隔にわたって待機して、標識分子をAβ堆積の部位(存在する場合)で濃縮させ、非結合標識分子がバックグラウンドレベルになるまで除去されるのを可能にする工程、c)バックグラウンドレベルを決定する工程、及びd)バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出が、被験体が疾患又は障害に罹患していることを示すか、又は疾患又は障害の重症度を示すように、被験体中の標識分子を検出する工程を含む。このような実施形態によれば、分子は、当業者に公知の特定のイメージングシステムを用いた検出に好適なイメージング部分で標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識抗体の量を、特定のイメージングシステムのために予め決定された標準値と比較することを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によって決定され得る。本発明の診断法に使用され得る方法及びシステムとしては、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)及び超音波検査法が挙げられる。
【0151】
さらなる態様において、本発明は、医薬に使用するための、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0152】
さらなる態様において、本発明は、患者の脳内の減少したPGRNレベルに関連する疾患を治療するのに使用するための、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0153】
さらなる態様において、本発明は、患者の脳内の減少したPGRNレベルに関連する疾患を治療するための薬剤の製造における、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントの使用に関する。
【0154】
さらなる態様において、本発明は、患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を予防又は治療する方法であって、有効投与量の、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを投与する工程を含む方法に関する。
【0155】
本発明のそれらの態様の使用及び方法において、疾患は、FTD、ALS又はタンパク質症(ADなど)であるのが好ましい。
【0156】
好ましくは、本発明のそれらの態様の使用及び方法において、治療は、長期であり、好ましくは少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間又はそれを超える期間にわたる。
【0157】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合フラグメントを含むキットを提供する。
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
以前に公開されたようである文献の本明細書における列挙又は説明は、文献が従来技術の一部であるか又は普通の一般知識であることの確認として必ずしも解釈されるものではない。
【0165】
実施形態
本文及び実施例から明らかであろうように、本発明は、以下の実施形態にさらに関する。
【0166】
1.ソルチリンに特異的に結合し、ソルチリンへのPGRNの結合を阻害することが可能な抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0167】
2.抗体は、無傷の(intact)抗体を含むか又はそれからなる、実施形態1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0168】
3.抗原結合フラグメントは、Fvフラグメント(例えば、一本鎖Fv又はジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント又はF(ab’)2フラグメント)及びドメイン抗体(例えば、単一のVH可変領域又はVL可変領域)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含むか又はそれからなる、実施形態1又は2に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0169】
4.抗体は、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の抗体からなる群から選択される、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0170】
5.配列番号146に定義されるソルチリンのE領域に特異的に結合する、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0171】
6.配列番号146に定義されるソルチリンのE領域の少なくとも3連続アミノ酸、例えば4、5、6又は7連続アミノ酸に特異的に結合する、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0172】
7.以下の特性:
(i)0.5~10nM、例えば1~5nM又は1~2nM又はさらにそれを超える、例えば0.5pM~500pMの、ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力
の1つ又は複数を示す、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0173】
8.ヒト又はヒト化抗体である、実施形態5に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0174】
9.ヒト又はヒト化抗体である、実施形態6に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0175】
10.ヒト又はヒト化抗体である、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0176】
11.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるCDR1~3軽鎖の1つ又は複数を含む軽鎖可変領域、又は4つ以下のアミノ酸差、又は3つ以下のアミノ酸差、又は2つ以下のアミノ酸差、又は1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0177】
12.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるCDR1~3軽鎖を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態11に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0178】
13.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるアミノ酸配列VLを含むか又はそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態11又は12に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0179】
14.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVLのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖を含む、実施形態11~13のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0180】
15.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙される1つ又は複数のCDR1~3重鎖、又は4つ以下のアミノ酸差、又は3つ以下のアミノ酸差、又は2つ以下のアミノ酸差、又は1つ以下のアミノ酸差を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0181】
16.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるCDR1~3重鎖を含む重鎖可変領域を含む、実施形態15に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0182】
17.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVHのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態15又は16に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0183】
18.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるアミノ酸配列VLを含むか又はそれからなる重鎖を含む、実施形態15~17のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0184】
19.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVLのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖可変領域及び表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVHのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖可変領域を含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0185】
20.表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVLのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる軽鎖及び表5に定義される抗体のそれぞれについて列挙されるVHのアミノ酸配列を含むか又はそれからなる重鎖を含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0186】
21.ソルチリンへの結合について、実施形態20に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントと競合する、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0187】
22.Fc領域を含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0188】
23.生体内半減期を増加させるための部分をさらに含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0189】
24.生体内半減期を増加させるための部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸及びデキストランからなる群から選択される、実施形態22に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0190】
25.検出可能な部分をさらに含む、いずれかの先行する実施形態に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0191】
26.検出可能な部分は、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識又は酵素標識からなる群から選択される、実施形態25に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0192】
27.検出可能な部分は、放射性同位体を含むか又はそれからなる、実施形態25又は26に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0193】
28.放射性同位体は、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As,89Zr、123I及び201Tlからなる群から選択される、実施形態26又は27に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0194】
29.検出可能な部分は、常磁性同位体を含むか又はそれからなる、実施形態25に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0195】
30.常磁性同位体は、157Gd、55Mn、162Dy、52Cr及び56Feからなる群から選択される、実施形態29に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0196】
31.検出可能な部分は、SPECT、PET、MRI、光学又は超音波イメージングなどのイメージング技術によって検出可能である、実施形態25~30のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0197】
32.検出可能な部分は、結合部分を介して間接的に抗体又はその抗原結合フラグメントに結合される、実施形態25~31のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0198】
33.結合部分は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体及び1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、実施形態32に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【0199】
34.実施形態1~33のいずれかに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸分子。
【0200】
35.cDNA分子である、実施形態34に記載の核酸分子。
【0201】
36.実施形態34又は35に記載の核酸分子を含むベクター。
【0202】
37.実施形態34~36のいずれかに記載の核酸分子を含む組み換え宿主細胞。
【0203】
38.実施形態1~33のいずれかに記載の抗体又は抗原結合フラグメントを産生するための方法であって、コードされた抗体又はその抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下において、実施形態37に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【0204】
39.先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む調製物であって、ソルチリンに結合することが可能でないか又は調製物の抗ソルチリン機能性を実質的に変更しないかのいずれかである、自然発生する抗体を実質的に含まず、前記機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
(v)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)及び/又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を提供する能力
からなる群から選択される、調製物。
【0205】
40.先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む調製物であって、前記モノクローナル抗体は、天然抗ソルチリン抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を有し、前記構造変化は、前記モノクローナル抗体が、前記天然抗ソルチリン抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示すことを引き起こし、前記機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
(v)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)及び/又は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療を提供する能力
である、調製物。
【0206】
41.実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【0207】
42.医療に使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物。
【0208】
43.患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を予防及び/又は治療するのに使用するための、実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物。
【0209】
44.患者の脳内の減少したPGRNレベルに関連する疾患を予防及び/又は治療するための薬剤の製造における、実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物の使用。
【0210】
45.疾患は、FTD、ALS、タンパク質症、例えばAD、PDからなる群から選択される、実施形態43に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は実施形態44に記載の使用。
【0211】
46.患者の脳内の減少したPGRNレベルに関連する疾患を予防又は治療する方法であって、有効投与量の、実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはそのフラグメント、実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物又は実施形態41に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【0212】
47.疾患は、FTD、ALS又はタンパク質症、例えばAD、PDからなる群から選択される、実施形態43に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は実施形態44に記載の使用、又は実施形態46に記載の方法。
【0213】
48.治療は、長期である、実施形態46又は47に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は使用、又は方法。
【0214】
49.長期治療は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間又はそれを超える期間にわたる、実施形態48に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は使用、又は方法。
【0215】
50.ソルチリンに特異的に結合することが可能であるが、結合は、ソルチリンへのニューロテンシン又はAF38469(Schroeder TJ et al.,Bioorg Med Chem Lett.2014 Jan 1;24(1):177-80)の結合を阻害しないか又は実質的に阻害しない、実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物又は実施形態41に記載の医薬組成物。
【0216】
51.実施形態1~33のいずれかに記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、実施形態39~40のいずれか1つに記載の調製物又は実施形態41に記載の医薬組成物を含むキット。
【0217】
ここで、本発明の特定の態様を実施する好ましい非限定的な実施例が添付の図を参照して説明される。
【実施例】
【0218】
実施例1~3は、ソルチリン構築物の生成を説明する
実施例1は、シャッフル構築物を開示する。実施例2は、ソルチリン構築物の発現を開示する。実施例3は、ソルチリン構築物の精製を開示する。
【0219】
実施例4~6は、ソルチリン抗体の生成を説明する
実施例4は、免疫化及びハイブリドーマを開示する。実施例5は、配列分析を開示する。実施例6は、抗体の精製を開示する。
【0220】
実施例7~11は、ソルチリン抗体の特性評価を説明する
実施例7は、ソルチリンへの結合を開示する。実施例8は、ソルチリン抗体のクロスブロッキング能力を開示する。実施例9は、iPSC中の細胞外PGRNレベルを開示し、実施例10は、血漿PGRNレベルを開示する。
【0221】
実施例1
ハイブリドーマスクリーニングプロセス及び抗体のパネルの多様化の両方に使用するために、いわゆる「シャッフル構築物」を設計し、構築し、産生し、ヒトソルチリン及び著しく低い配列相同性を有する遠縁の種(テトラオドン)の両方に由来するアミノ酸配列を含有する一連のキメラソルチリン分子を作製した。特定のキメラ構築物への抗体の結合の喪失を除いて、これらのキメラ構築物のソルチリン構造全体及び機能性が保持され得るという原理は、特定の交換された領域の結合の改善を示すであろう。可溶性細胞外領域(ECD、aa 1-755)構築物をBAPタグ(ビオチンアクセプタペプチド)のいずれかで標識し、ビオチンリガーゼ又はHisタグの共発現によってタンパク質の「インビトロ」ビオチン化を可能にして、容易な精製を可能にした。以下のタンパク質をコードする発現ベクターを調製した:SORT-ECDBAP、SORT-ECDBAP-hB01-05、SORT-ECDBAP-hB06-10、SORT-ECDBAP-hB12390、SORT-ECDBAP-hB45678、SORT-ECDBAP-tetra、SORT、SORT-tetra。
【0222】
ソルチリン配列は、配列番号147~155において見られ、
図2は、ソルチリンシャッフル構築物への結合に基づいた抗体の領域割り当ての概略図を示す。
【0223】
実施例2
抗体の発現の場合、実施例4、5及び6に記載されるような、適切な重鎖及び軽鎖ベクターをHEK-293F細胞において共発現させた。
【0224】
実施例3:Hisタグ化ソルチリンの精製
SORTECDHisをHEK-293F細胞において発現させた。タンパク質中のHis-タグは、固定化金属親和性クロマトグラフィーによる精製を可能にする。このプロセスにおいて、NiNTA Superflow Cartridge(Qiagen)を50mMのNAH2PO4、300mMのNaCl及び10mMのイミダゾールpH8.0で平衡化する。カラムに1分間の滞留時間でHisタグ化タンパク質を充填する。カラムを50mMのNAH2PO4、300mMのNaCl及び20mMのイミダゾールpH8.0で洗浄する。タンパク質を50mMのNAH2PO4、300mMのNaCl及び250mMのイミダゾールpH8.0で溶離する。続いて、タンパク質を、10.000mwcoのカットオフを有するSlide-A-Lyzer(Thermo Scientific)を用いてPBSに透析する。透析後、タンパク質を、0.2ミクロンのSFCAフィルタ(Thermo Scientific)を用いて滅菌ろ過する。
【0225】
クローンを、QPCRを用いて、ソルチリンmRNA発現について特性評価した。次に、最も高い発現クローンを、抗ソルチリンポリクローナル抗体(ポリクローナルヤギソルチリンビオチン化Ab、Cat.No:BAF2934(R&D Systems))を用いてFACS(Guava,Millipore)によって分析して、ソルチリンの表面発現レベルを決定した。
【0226】
実施例4
A - トランスジェニックマウスの免疫化手順
抗体HuMabソルチリンは、HuMAbマウス株HCo12、HCo17、HCo20、HCo12-BALB/c、HCo17-BALB/c及びHCo20-BALB/c(ヒトモノクローナル抗体;Medarex Inc.,San Jose,CA,USA)の免疫化から得られた。これらのマウスは、マウス免疫グロブリン(Ig)重鎖及びマウスκ軽鎖をダブルノックアウトされ、これは、完全マウスの抗体の発現を実質的に不活性化する。様々なマウス株をヒトIg重鎖及びヒトIgκ軽鎖遺伝子座の挿入によってトランスジェニックにし、これは、ヒトVH(重鎖の可変領域)及びVL(軽鎖の可変領域)遺伝子の数が異なる。HCo12-BALB/cマウスは、KCo5-BALB/c(κ軽鎖トランスジェニック)マウスとの異種交配によって得られた。
【0227】
48匹のマウスを、14日間の間隔を空けて、20μgのSORTECDHis(配列番号155)で腹腔内に(IP)及び同じタンパク質で皮下に(SC、尾基底に)交互に免疫した。4回のIP及び4回のSCで最大8回の免疫化を行った。
【0228】
1つのプロトコルにおいて、第1の免疫化を完全フロイントアジュバント(CFA;Difco Laboratories,Detroit,MI,USA)中のSORTECDHisで行い、次の免疫化を不完全フロイントアジュバント(IFA)中で行った。第2のプロトコルは、全ての免疫化工程における補助剤としてSASを使用した。血清抗体価が十分であることが分かった(1/50以下の血清の希釈物は、少なくとも2回連続の、隔週のスクリーニング事象において、抗原特異的スクリーニングアッセイにおいて陽性であることが分かった)とき、マウスに対し、融合の4及び3日前に100μLのPBS中の10μgのSORTECDHisタンパク質を静脈内に(IV)2回さらに投与した(boost)。
【0229】
B - HuMabハイブリドーマ-生成
上に定義されるような十分な抗原特異的抗体価発現を有するHuMAbマウスを殺処分し、腹部大動脈及び大静脈に隣接する脾臓及びリンパ節を採取した。マウスミエローマ細胞株との脾細胞及びリンパ節細胞の融合は、基本的に製造業者の指示に従って、CEEF 50 Electrofusion System(Cyto Pulse Sciences,Glen Burnie,MD,USA)を用いた電気融合によって行った。融合細胞を、HyQ mADCF-Mab(Perbio)中の10%のFetal Clone I Bovine血清(Perbio)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Cambrex)、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン(Cambrex)、50μMの2-メルカプトエタノール(Invitrogen)、600ng/mLのインターロイキン6(IL-6)(Strathmann)、1×HAT(Sigma)及び0.5mg/mLのカナマイシン(Invitrogen)を含有する融合培地に播種した。10日後、上清を収集し、細胞を、HyQ mADCF-Mab中の10%のFetal Clone I Bovine血清、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン、600ng/mLのIL-6及び1×proHT(Cambrex)を含有する収集培地で洗浄した。ハイブリドーマ培養物の上清を、一次スクリーニングアッセイ及びSORTECDBAP(配列番号147)、SORTECDBAPhB06-10(配列番号152)、SORTECDBAPhB12390(配列番号153)に結合されたストレプトアビジンビーズによってスクリーニングして、ハイブリドーマ産生ヒト(又はキメラ)抗ソルチリン抗体を検出した。最も良好な一次ウェルからのハイブリドーマ細胞を、40%のCloneMedia(Genetix,Hampshire,UK)及び60%のHyQ 2×完全培地(Hyclone,Waltham,USA)から作製された半固形培地に播種した。各一次ウェルについて、Genetix黒色6ウェルプレートのウェルを播種した。各ウェルから、ClonePix system(Genetix)を用いて25個のサブクローンを採取した。サブクローンを収集培地中に採取した。7日後、サブクローンの上清をソルチリン特異的ヒトIgG結合について再度スクリーニングし、ヒトIgG濃度を、Octet 384red(Fortebio,Menlo Park,USA)を用いて測定した。各一次ウェルから最も良好なサブクローンを選択し、600ng/mLのIL-6、0.5U/mLのペニシリン、0.5U/mLのストレプトマイシン及び1×proHTのみを含有する展開培地中で展開させた。このサブクローンを1つの96ウェルプレートウェルから1つの24ウェルプレートウェル、4つの24ウェルプレートウェル、6つの6ウェルプレートウェルに展開させた。このプロセスによって得られたクローンを初代クローン(PC)と表した。
【0230】
本発明の抗ソルチリンHuMab抗体を同定し、配列分析を行った。
【0231】
実施例5:ソルチリン特異的HuMab可変領域の配列分析及び発現ベクターにおけるクローニング
製造業者の指示に従って、SMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を用いて、全RNAを0.2~5×106個のハイブリドーマ細胞から調製し、5’-RACE-相補的DNA(cDNA)を100ngの全RNAから調製した。VH及びVLコード領域をPCRによって増幅させ、ライゲーション非依存クローニング(Aslanidis,C.and P.J.de Jong,Nucleic Acids Res 1990;18(20):6069-74)により、p33G1f及びp33κ発現ベクター(ヒトIgG1/κ定常領域コード配列を含む)中において、フレーム内で直接クローニングした。各抗体について、16個のVLクローン及び16個のVHクローンをシークエンシングした。適切なオープンリーディングフレーム(ORF)を有するクローンをさらなる研究及び発現のために選択した。重鎖及び軽鎖の全ての組合せのベクターを、293fectinを用いて、FreestyleTM 293-F細胞中で一時的に共発現させた。
【0232】
得られた配列は、本明細書において配列表(配列番号1~144)に示される。CDR配列は、公開されている指針に従って定義された。
【0233】
実施例6:抗体の精製
培養物の上清を0.2μmのデッドエンドフィルタ上でろ過し、5mLのタンパク質Aカラム(rProtein A FF,Amersham Bioscience)に充填し、0.1Mのクエン酸-NaOH、pH3で溶離した。溶出液を2Mのトリス-HCl、pH9で直ちに中和し、12.6mMのNaH2PO4、140mMのNaCl、pH7.4(B.Braun)に対してO/N(一晩)透析した。透析後、試料を0.2μmのデッドエンドフィルタ上で滅菌ろ過した。純度をSDS-PAGEによって決定し、濃度を比濁法及び280nmでの吸光度によって測定した。精製された抗体を分割し、-80℃で貯蔵した。解凍してから、精製された抗体アリコートを4℃に保持した。質量分析法を行って、ハイブリドーマによって発現される抗体重鎖及び軽鎖の分子量を特定した。
【0234】
実施例7:ソルチリンの組み換え細胞外領域に対するソルチリン特異的HuMabの親和性
ソルチリンへの抗ソルチリンHuMab抗体の結合反応速度を、Octet 384RED(Fortebio,Menlo Park,USA)を用いて決定した。2μg/mlのHuMab溶液を試料希釈剤(ForteBio,art.No.18-5028)中での希釈によって作製した。Prot Aセンサー(ForteBio,art.no.18-0004)を少なくとも600秒間にわたってキネティクス緩衝液(PBS中1:10の試料希釈剤)で予め湿らせた。続いて、センサーを600秒間にわたってHuMab溶液で固定した。ベースライン反応は、120秒間にわたってキネティクス緩衝液に浸漬することによって得られた。SORTECD構築物の会合が1000秒間のインキュベーション中に行われた。この後、100秒間にわたるキネティクス緩衝液中での解離が続いた。解離後、センサーを再生し(10mMのグリシンpH1.0)、5秒間にわたって3回中和した(キネティクス緩衝液)。全てのHuMabを、4つの濃度のSORTECD構築物(10、5、2.5及び1.25μg/ml)を用いて分析した。76.8kDAの分子量をSORTECDHisに使用した。データを、グローバルフルフィットを用いて、ForteBio Analysis 6.4ソフトウェアと適合させた。結果が
図3に示される。
【0235】
実施例8:抗ソルチリンHuM抗体の抗体クロスブロック
抗体クロスブロック試験を、Octet 384RED(Fortebio,Menlo Park,USA)を用いて行った。2μg/mlのHuMab抗体溶液を試料希釈剤(ForteBio,art.No.18-5028)中での希釈によって作製した。アミン反応性センサー(ForteBio,art.no.18-0008)をHuMantibodyの固定化に使用した。アミン反応性センサーへのカップリング前にHuMantibodyをMES pH6.0緩衝液(18-5027)中で希釈した。カップリングを30℃及び1000rpmで以下の通りに行った:アミン反応性センサーをPBS中で予め湿らせ、続いて、300秒間にわたって(製造業者の指示に従って)EDC/NHS(ForteBio.Art.no.18-1033/18-1034)活性化溶液で活性化した。活性化センサーを600秒間にわたりHuMantibodyで固定化した。固定化センサーをエタノールアミンとの残っているアミン反応性のためにクエンチした(ForteBio,cat no.18-1039)。クエンチ後、センサーを、使用するまでPBS中に入れた。クロスブロック分析は、30℃及び1000rpmでベースライン反応を設定することから開始する。ベースライン反応は、120秒間にわたって試料希釈剤に浸漬することによって得られた。SORTECDHisの会合は、300秒間にわたって行われ、その直後に300秒間にわたってHuMabの会合が行われた。HuMabの会合後、センサーを再生し(10mMのグリシンpH1.0)、5秒間にわたって3回中和した(試料希釈剤)。データを、ForteBio Analysis 6.4ソフトウェアを用いて処理した。
【0236】
抗体を異なるソルチリンシャッフル構築物(
図2及び
図3)についてのそれらの結合プロファイルに基づいて分類した。領域Eからの全ての抗体がヒト野生型ソルチリンECDにおける同じ領域に結合することを確認するために、野生型ヒトソルチリンECDへの互いの結合をブロックするそれらの能力を、Octet384 redを用いたクロスブロッキング試験において特性評価した。例えば、同じ領域からの抗体を試験したとき、一次抗体は、二次抗体の結合をブロックし、逆も同様であった。一方、異なる領域からの抗体を試験したとき、1つのみの領域が一次抗体によってブロックされ、残りの領域は、二次抗体が結合するのに利用されるため、クロスブロッキングはなかった。
図4は、E領域からの26のうちの22の抗体が群からの全ての抗体をクロスブロックし、残りの4つの抗体が26のうちの20の抗体をクロスブロックすることを示し、これは、これらの抗体の大部分がソルチリンにおける同じ領域に結合し、それらの残りが重複する結合部位を有し、且つ/又はE領域に近接して結合することを裏付ける。これは、シャッフル構築物に基づいた領域Eに対する抗体の分類を裏付ける。さらに、これらのデータは、キメラソルチリン構築物が天然のヒト野生型ソルチリンECDとの類似性を保持することも裏付ける。
【0237】
実施例9:
iPSC中の細胞外PGRNについてのELISAアッセイ
ソルチリンE領域抗体900は、PGRNレベルを増加させた一方、対照抗体B12は、細胞外プログラニュリンレベルに影響を与えなかった。アッセイを、96ウェルプレートに平板培養された成長因子成熟iPSCニューロンを用いて行った。抗体を細胞培地に加えた。培養培地を72時間の曝露後に収集し、ヒトPGRN ELISA(Biovendor)によって分析し、製造業者の指示に従って試料を分析した。ソルチリンヒト抗体900は、iPSCニューロンから収集された培地におけるPGRNレベルを増加させた一方、対照抗体B12の効果は、見られなかった(
図5)。細胞に曝されていない抗体を含む培地は、PGRN ELISAにおいてシグナルを示さなかった。CellTiter-Glo Luminescent細胞生存率アッセイ(Promega)は、抗体適用の生存率に対する効果を示さなかった。データは、平均±SDとして示される。データを一元配置Anova、続いてダネットの分析によって分析した。
***p<0.001。
【0238】
Rasmussen et al.(Stem Cell Reports.2014 Sep 9;3(3):404-13.)に記載されるような非統合的方法による再プログラミングにより、見掛け上健常な男性(18歳)から採取されたヒト線維芽細胞からiPSC系統を生成した。NHDF K1_shp53と命名されたクローン(BIONi010-Aとして、誘導された多能性幹細胞のEuropean Bankに寄託された)を使用した。iPSCをマトリゲル(BD Biosciences)上のmTeSR1培地(Stemcell Technologies)において単層中で培養した。二重SMAD阻害(高密度で平板培養されたiPSCのN3培地(RA、0.5mMのGlutaMAX-I、0.5%のNEA、50μMの2-メルカプトエタノール及び2.5μg/mLのインスリンとともに0.5%のN2、1%のB27が補充された、50%のDMEM/F12+50%のNeurobasal培地)中における100nMのLDN及び10μMのSB431542により、神経分化を0日目に開始させた。細胞を12日目に分割し、以後、ポリ-L-オルニチン/ラミニンにおいて平板培養した。LDN及びSB431542を13日目から取り出した。この時点から、神経前駆細胞(NPC)が21日目に凍結されて、NPCバンクが生成されるまで細胞をほぼ5日ごとに分割した。これらのNPCを解凍し、約4日間増殖させてから、25日目に再度平板培養し、26日目から最終的な成熟培地(20ng/mLのBDNF、10ng/mLのGDNF、500μMのdb-cAMP、200μMのアスコルビン酸を含むN3)に供した。32日目に細胞を成熟培地中のアッセイプレートへの日の最終的な再度の平板培養に供した。FACS試験により、同様に生成された他の系統からのiPSCニューロンにおけるソルチリン受容体の表面発現を確認した。抗体を56日目に適用し、試料を59日目に収集した。
【0239】
実施例10 マウスにおける血漿PGRNレベルに対する抗体の効果
血漿中のPGRNレベルに対する抗体の効果を分析するために、ヒト化ソルチリンKIマウスに単回注入(10mg/kg)のソルチリン抗体又はアイソタイプ対照を皮下注入によって与えた。動物に麻酔をかけ、投与後48時間の時点で殺処分し、血漿PGRNレベルをELISAによって決定した。
【0240】
マウスに0.4mlのAvertin IPで麻酔をかけ、心臓の血液を収集し、500ulのkEDTAバイアルに移した。試料を、4Cで15分間にわたって3600Gで遠心分離するまで氷上に保持した。血漿をmicronicバイアルにピペットで取り、-20Cで凍結させた。試料中のPGRNを製造業者の指示に従ってPGRN ELISAキット(Adipogen)を用いて測定した。
【0241】
ソルチリンhumab、#30で処理されたマウスは、抗HEL、アイソタイプ対照抗体と比較して48時間後の血漿PGRNレベルの増加を示した。結果が
図6に見られる。
【0242】
実施例11
図7A及びBは、見掛け上健常な個体及びPGRN R493X患者から生成された神経分化誘導多能性幹細胞(iPSC)中の細胞外PGRNに対するソルチリン抗体の効果を示す。
【0243】
抗ソルチリンヒト抗体#72、#1277、#83、#900、#799、#886、#28、#471、#1286、#822、#423、#56、#381、#936は、細胞外PGRNレベルを増加させた一方、対照抗体B12は、増加させなかった。アッセイを、96ウェルプレートに平板培養された成長因子成熟iPSCニューロンを用いて行った。抗体を細胞培地に加えた。iPSCニューロンからの培養培地を72時間の曝露後に収集し、製造業者の指示に従ってヒトPGRN ELISA(Biovendor)によって分析した。細胞に曝されていない抗体を含む培地は、PGRN ELISAにおいてシグナルを示さなかった。CellTiter-Glo Luminescent細胞生存率アッセイ(Promega)は、抗体適用の生存率(細胞内ATPレベルの定量)に対する効果を示さなかった。データは、各実行において6通りで3つの実験実行の平均±SEMとして示される。データを一元配置Anova、続いてダネットの分析によって分析した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0244】
見掛け上健常な個体(18歳の男性)及びPGRN R493X患者(65歳の男性)から採取されたヒト線維芽細胞からのiPSC系統を非統合的方法に従って再プログラミングした。使用されるクローンは、BIONi010-A(見掛け上健常な個体)及びLUBi001-A(PGRN R493X患者)と名付けられた。それらは、誘導された多能性幹細胞のEuropean Bankに寄託され、European Collection of Authenticated Cell Culturesによって分配される。iPSCをそれぞれmTeSR1培地(Stemcell Technologies)及びEssential 8培地(Gibco)中のマトリゲル(BD Biosciences)において単層中で培養した。高密度で平板培養されたiPSCのN3培地(RA、0.5mMのGlutaMAX-I、0.5%のNEA、50μMの2-メルカプトエタノール及び2.5μg/mLのインスリンとともに0.5%のN2、1%のB27が補充された50%のDMEM/F12+50%のNeurobasal培地)中において、二重SMAD阻害(100nMのLDN及び10μMのSB431542)により、神経分化を0日目に開始した。細胞を12日目に分割し、以後、ポリ-L-オルニチン/ラミニンにおいて平板培養した。LDN及びSB431542を13日目から20ng/mlのFGF2と交換した。この時点から、神経前駆細胞(NPC)が21日目に凍結されて、NPCバンクが生成されるまで細胞をほぼ5日ごとに分割した。これらのNPCを解凍し、増殖させてから、25日目に再度平板培養し、26日目から成熟培地(20ng/mLのBDNF、10ng/mLのGDNF、500μMのdb-cAMP、200μMのアスコルビン酸を含むN3)に供した。32日目に細胞を成熟培地中のアッセイプレートに最終的に再度平板培養した。BIONi010-A iPSCニューロンにおけるFACS試験により、ソルチリン受容体の表面発現を確認した。抗体を57日目に適用し、試料を72時間後、すなわち60日目に収集した。
【0245】
実施例12:水素/重水素交換、続いて質量分析法によるプログラニュリン-ソルチリン相互作用を標的にする抗体のエピトープマッピング
水素/重水素交換、続いて質量分析法(HDX-MS)において、タンパク質中の骨格アミド水素の交換速度が測定される。これにより、プロリン残基を除く全タンパク質骨格の立体配座動態を調べることが可能である。交換反応の速度は、骨格アミドの水素結合状態及びより低い程度に溶媒露出度によって決定される。例えば、リガンドの存在によって引き起こされるこれらの2つのパラメータのわずかな変化が重水素取り込みの変化として観察され得る。
【0246】
重水素取り込みの変化を亜局在化するために、タンパク質は、酸安定性プロテアーゼ(例えば、ペプシン)で処理され、これは、典型的に10~15のアミノ酸の局所領域を生成する。リガンドの存在下で摂動を示す領域が結合界面に直接関与されるか、又は結合事象によってアロステリックに影響される。
【0247】
抗体のエピトープマッピング
ソルチリン(配列番号156)の細胞外領域の重水素取り込みを、E領域に結合するmAb30の非存在下及び存在下で測定した。測定を定常状態条件下で行うのを確実にするために、複合体を25℃で15分間平衡化してから交換反応を開始させた。交換反応を重水素化緩衝液(99%のD2O、20mMのトリス、150mMのNaCl、pDread=7.6)中へのタンパク質試料の1:9(v/v)の希釈によって開始させた。様々な時点(15秒、1分、10分、1時間及び8時間)後、交換反応を氷冷クエンチ緩衝液(2Mのグリシン、0.8Mのトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、pH=2.3)による1:1(v/v)の希釈によってクエンチし、それによりpHを2.46に低下させた。クエンチされた試料を直ちに-80°の冷凍庫内に入れ、分析するまで貯蔵した。完全に重水素化された対照試料を重水素化変性緩衝液(6Mの塩化グアニジウム、99%のD2O、20mMのトリス、150mMのNaCl、pDread=7.6)中へのソルチリン試料の1:9(v/v)の希釈によって調製し、続いて、25℃で16時間インキュベートしてからそれらをクエンチし、上述されるように処理した。
【0248】
クエンチされた試料を解凍し、家庭で充填されるペプシンカラム(60μLの内部体積、Thermo Scientific Inc.から入手したペプシンビーズ)を備えた冷却された(0℃)逆相UPLC-HDX-システム(Waters Inc.,USA)に注入した。ここで、重水素化タンパク質試料を20℃でオンラインペプシン消化に供し、得られた消化性ペプチドを逆相UPLCによって分離した。ペプチドを質量分析計(Synapt G2質量分析計、Waters Inc,UK)中へのエレクトロスプレーイオン化によってイオン化し、ここで、ペプチドを最終的な質量決定前にイオン移動度によってさらに分離した。
【0249】
データ非依存(MSe)及びデータ依存収集の組合せを用いたタンデム質量分析法により、完全に還元された非重水素化試料においてペプチドの同定を行った。
【0250】
データ分析
ペプチドの同定
収集された質量スペクトルは、GFPに対して補正されたロックマスであり、前駆体及びフラグメントイオンを局所タンパク質データベースに適合させるPLGS 3.0において分析された。全てのペプチドの同定を手動で慎重に評価した。
【0251】
重水素取り込みの決定:収集された質量スペクトルは、GFPに対して補正されたロックマスであり、ソフトウェアDynamX 3.0(Waters Inc.,USA)を用いて、抗体の非存在下又は存在下でソルチリンの全てのペプチドについての重水素取り込みを決定した。
【0252】
0.5Dより大きい交換からの保護が抗体の存在下で観察された場合、ペプチドは、結合エピトープの一部であるとみなされた。
【0253】
【表6】
本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
配列番号146によって定義されるソルチリンのE領域内に特異的に結合することが可能な抗体又はその抗原結合フラグメント。
[2]
前記抗原結合フラグメントは、Fvフラグメント(例えば、一本鎖Fv又はジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント又はF(ab)2フラグメント)及びドメイン抗体(例えば、単一のVH可変領域又はVL可変領域)からなる群から選択される、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[3]
無傷の抗体からなる、先行請求項に記載の抗体。
[4]
前記抗体は、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の抗体からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[5]
配列番号146によって定義されるソルチリンのE領域に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[6]
配列番号146で定義されるソルチリンのE領域内の少なくとも1または複数の連続アミノ酸、例えば1、2、3、4、5、6又は7連続アミノ酸に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[7]
以下の特性:
a.0.5~10nM、例えば1~5nM若しくは1~2nM又はさらにそれを超える、例えば0.5pM~500pMの、ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
b.ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
c.ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
d.脳内のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
e.ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力
の1つ又は複数を示す、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[8]
PGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する前記抗体又はその抗原結合フラグメントの前記能力は、22nM以下、例えば22nM~1nM、又は10nM~1nM、又は5nM~1nMのIC50でPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害することを含む、先行請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[9]
ヒト、ヒト化、組み換え又はキメラ抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[10]
a.配列番号1を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号2を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号3を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号4を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号5を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号6を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[11]
配列番号109を含む重鎖可変領域を含む、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[12]
配列番号110を含む軽鎖可変領域を含む、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[13]
請求項11及び12に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項10に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[14]
a.配列番号7を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号8を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号9を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号10を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号11を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号12を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[15]
配列番号111を含む重鎖可変領域を含む、請求項14に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[16]
配列番号112を含む軽鎖可変領域を含む、請求項14に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[17]
請求項15及び16に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項14に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[18]
a.配列番号13を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号14を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号15を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号16を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号17を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号18を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[19]
配列番号113を含む重鎖可変領域を含む、請求項18に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[20]
配列番号114を含む軽鎖可変領域を含む、請求項18に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[21]
請求項19及び20に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項18に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[22]
a.配列番号19を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号20を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号21を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号22を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号23を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号24を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[23]
配列番号115を含む重鎖可変領域を含む、請求項22に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[24]
配列番号116を含む軽鎖可変領域を含む、請求項22に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[25]
請求項23及び24に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項22に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[26]
a.配列番号25を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号26を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号27を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号28を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号29を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号30を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[27]
配列番号117を含む重鎖可変領域を含む、請求項26に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[28]
配列番号118を含む軽鎖可変領域を含む、請求項26に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[29]
請求項27及び28に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項26に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[30]
a.配列番号31を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号32を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号33を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号34を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号35を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号36を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[31]
配列番号119を含む重鎖可変領域を含む、請求項30に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[32]
配列番号120を含む軽鎖可変領域を含む、請求項30に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[33]
請求項31及び32に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項30に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[34]
a.配列番号37を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号38を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号39を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号40を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号41を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号42を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[35]
配列番号121を含む重鎖可変領域を含む、請求項34に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[36]
配列番号122を含む軽鎖可変領域を含む、請求項34に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[37]
請求項35及び36に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項34に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[38]
a.配列番号43を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号44を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号45を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号46を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号47を含む軽鎖可変領域CDR、2及び
f.配列番号48を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[39]
配列番号123を含む重鎖可変領域を含む、請求項38に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[40]
配列番号124を含む軽鎖可変領域を含む、請求項38に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[41]
請求項39及び40に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項38に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[42]
a.配列番号49を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号50を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号51を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号52を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号53を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号54を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[43]
配列番号125を含む重鎖可変領域を含む、請求項42に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[44]
配列番号126を含む軽鎖可変領域を含む、請求項42に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[45]
請求項43及び44に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項42に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[46]
a.配列番号55を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号56を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号57を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号58を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号59を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号60を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[47]
配列番号127を含む重鎖可変領域を含む、請求項46に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[48]
配列番号128を含む軽鎖可変領域を含む、請求項46に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[49]
請求項47及び48に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項46に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[50]
a.配列番号61を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号62を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号63を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号64を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号65を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号66を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[51]
配列番号129を含む重鎖可変領域を含む、請求項50に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[52]
配列番号130を含む軽鎖可変領域を含む、請求項50に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[53]
請求項51及び52に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項50に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[54]
a.配列番号67を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号68を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号69を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号70を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号71を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号72を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[55]
配列番号131を含む重鎖可変領域を含む、請求項54に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[56]
配列番号132を含む軽鎖可変領域を含む、請求項54に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[57]
請求項55及び56に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項54に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[58]
a.配列番号73を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号74を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号75を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号76を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号77を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号78を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[59]
配列番号133を含む重鎖可変領域を含む、請求項58に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[60]
配列番号134を含む軽鎖可変領域を含む、請求項58に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[61]
請求項59及び60に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項58に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[62]
a.配列番号79を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号80を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号81を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号82を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号83を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号84を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[63]
配列番号135を含む重鎖可変領域を含む、請求項62に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[64]
配列番号136を含む軽鎖可変領域を含む、請求項62に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[65]
請求項63及び64に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項62に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[66]
a.配列番号85を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号86を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号87を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号88を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号89を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号90を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[67]
配列番号137を含む重鎖可変領域を含む、請求項66に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[68]
配列番号138を含む軽鎖可変領域を含む、請求項66に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[69]
請求項67及び68に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項66に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[70]
a.配列番号91を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号92を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号93を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号94を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号95を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号96を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[71]
配列番号139を含む重鎖可変領域を含む、請求項70に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[72]
配列番号140を含む軽鎖可変領域を含む、請求項70に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[73]
請求項71及び72に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項70に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[74]
a.配列番号97を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号98を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号99を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号100を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号101を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号102を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[75]
配列番号141を含む重鎖可変領域を含む、請求項74に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[76]
配列番号142を含む軽鎖可変領域を含む、請求項74に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[77]
請求項75及び76に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項74に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[78]
a.配列番号103を含む重鎖可変領域CDR1、
b.配列番号104を含む重鎖可変領域CDR2、
c.配列番号105を含む重鎖可変領域CDR3、
d.配列番号106を含む軽鎖可変領域CDR1、
e.配列番号107を含む軽鎖可変領域CDR2、及び
f.配列番号108を含む軽鎖可変領域CDR3
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[79]
配列番号143を含む重鎖可変領域を含む、請求項78に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[80]
配列番号144を含む軽鎖可変領域を含む、請求項78に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[81]
請求項79及び80に記載の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方を含む、請求項78に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[82]
先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメントを含む調製物であって、ソルチリンに結合することが可能でないか又は前記調製物の抗ソルチリン機能性を実質的に変更しないかのいずれかである、自然発生する抗体を実質的に含まず、前記機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、及び/又は
(v)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はアルツハイマー病(AD)の治療を提供する能力
からなる群から選択される、調製物。
[83]
先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合フラグメントを含む調製物であって、前記モノクローナル抗体は、自然発生抗ソルチリン抗体の構造と比べてそのアミノ酸配列の構造変化を有し、前記構造変化は、前記モノクローナル抗体が、前記自然発生抗ソルチリン抗体によって示される機能性と比べて変化した機能性を示すことを引き起こし、前記機能性は、
(i)ソルチリンに対する結合親和性(KD)、
(ii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのクリアランスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iii)ソルチリン発現細胞によってPGRNのエンドサイトーシスを減少させ且つ/又は阻害する能力、
(iv)ヒト-ソルチリン発現ノックインマウスにおいて血漿中のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、
(v)脳内のPGRNの量及び/又は濃度を増加させる能力、又は
(vi)慢性的に投与されるときの、前頭側頭型認知症(FTD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び/又はアルツハイマー病(AD)の治療を提供する能力
からなる群から選択される、調製物。
[84]
請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
[85]
医薬に使用するための、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物、又は請求項84に記載の医薬組成物。
[86]
患者の脳内の減少したPGRNレベル又は減少した機能的PGRNに関連する疾患を治療するのに使用するための、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物、又は請求項84に記載の医薬組成物。
[87]
患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を治療するための薬剤の製造における、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物、又は請求項84に記載の医薬組成物の使用。
[88]
患者の脳内の減少したPGRN又は減少した機能的PGRNレベルに関連する疾患を予防又は治療する方法であって、有効投与量の、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物、又は請求項84に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
[89]
前記疾患は、FTD、ALS又はタンパク質症、例えばADである、請求項86に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項87に記載の使用、又は請求項88に記載の方法。
[90]
前記治療は、長期であり、好ましくは少なくとも2週間、例えば少なくとも1か月間、又は少なくとも6か月間、又は少なくとも1年間にわたる、請求項86に記載の使用のための抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項87に記載の使用、又は請求項88に記載の方法。
[91]
請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合フラグメント、又は請求項82および83のいずれか一項に記載の調製物、又は請求項84に記載の医薬組成物を含むキット。
[92]
ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、昆虫、酵母又は細菌細胞株などの細胞株において生産又は製造された、請求項1~81のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
[93]
CHO細胞株、HEK細胞株、BHK-21細胞株、マウス細胞株(ミエローマ細胞株など)、線維肉腫細胞株、PER.C6細胞株、HKB-11細胞株、CAP細胞株及びHuH-7ヒト細胞株において生産される、請求項92に記載の抗体又はその抗原結合フラグメント。
【配列表】