(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】細胞培養用足場材及び細胞培養用容器
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
C12M3/00 A ZNA
(21)【出願番号】P 2020548840
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2020029452
(87)【国際公開番号】W WO2021024943
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2019143062
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 悠平
(72)【発明者】
【氏名】乾 延彦
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 聡
(72)【発明者】
【氏名】井口 博貴
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532974(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126589(WO,A1)
【文献】特開2019-041719(JP,A)
【文献】登録実用新案第3139350(JP,U)
【文献】国際公開第2005/080547(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133900(WO,A1)
【文献】特開2015-192640(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131978(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131982(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/036011(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上にドット状又はライン状にパターニングされることにより構成された凸部とを備え、
前記凸部は、合成樹脂を含み、
前記合成樹脂は、
ペプチド部を有する合成樹脂を含み、
前記ペプチド部を有する合成樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂部と、リンカー部と、ペプチド部とを有するペプチド含有ポリビニルアセタール樹脂であり、
前記凸部は、細胞接着性を有し、
前記凸部は、平面視において前記凸部の中央に位置する部分の平均高さが10nm以上、10μm以下である、細胞培養用足場材。
【請求項2】
前記凸部の前記凸部が設けられていない部分に対するタンパク吸着量の比(凸部/凸部が設けられていない部分)が、2以上である、請求項1に記載の細胞培養用足場材。
【請求項3】
前記凸部は、前記基材上にドット状にパターニングされることにより構成されており、
前記凸部は、平均底面積が0.005mm
2以上、5mm
2以下である、請求項1又は2に記載の細胞培養用足場材。
【請求項4】
前記凸部は、周縁部に壁部を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材。
【請求項5】
ナノインデンテーション法により測定した、平面視において前記凸部の中央の位置での前記凸部の25℃における弾性率が1GPa以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材。
【請求項6】
前記合成樹脂は、構成単位中にブレンステッド塩基性基を0.2モル%以上、20モル%以下で含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材。
【請求項7】
前記凸部の水膨潤率が50%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材。
【請求項8】
前記凸部は、表面に
前記ペプチド部を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材。
【請求項9】
細胞の培養領域の少なくとも一部に請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞培養用足場材を備える、細胞培養用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を培養するために用いられる細胞培養用足場材に関する。また、本発明は、上記細胞培養用足場材を用いた細胞培養用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞医薬や幹細胞を用いた次世代医療が注目を集めている。なかでも、ヒト胚性幹細胞(hESC)や、ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)などのヒト多能性幹細胞(hPSC)、あるいはそれらから誘導される分化細胞は、創薬や再生医療への応用が期待されている。このような応用を果たすには、多能性幹細胞や、分化細胞を安全に、かつ再現性よく培養し、増殖させることが必要となる。
【0003】
これらの幹細胞は、幹細胞の集団が凝集・接着することによって、スフェロイドとよばれる細胞塊を形成することができる。スフェロイドは、生体内での三次元構造により近い状態で培養または維持できると考えられており、それが通常の平面接着培養と比べ優れた特性を示すことが知られている。実際に、がん細胞を用いた抗がん剤スクリーニング等にスフェロイドが利用されている。
【0004】
例えば、下記の特許文献1では、1つの培養面に複数のマイクロウェルが形成された培養基材において、マイクロウェルの深さを深くしすぎることなく、マイクロウェルからのスフェロイドの移動を抑制し、均一な大きさのスフェロイドを形成することができる細胞培養基材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の細胞培養基材は、培養面が細胞低接着面(細胞が接着しない又は接着しづらい面)となっていることから、細胞の培養効率が低いという課題がある。また、培地交換等の振動により培養面から細胞塊が剥がれやすく、細胞塊の形状や大きさを制御することが難しいという課題もある。
【0007】
本発明の目的は、容易にかつ効率よく細胞塊を形成させることができる、細胞培養用足場材及び細胞培養用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る細胞培養用足場材は、基材と、前記基材上にドット状又はライン状にパターニングされることにより構成された凸部とを備え、前記凸部は、合成樹脂を含み、前記合成樹脂は、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル樹脂を含み、前記凸部は、細胞接着性を有し、前記凸部は、平面視において前記凸部の中央に位置する部分の平均高さが10nm以上、10μm以下である。
【0009】
本発明に係る細胞培養用足場材のある特定の局面では、前記凸部の前記凸部が設けられていない部分に対するタンパク吸着量の比(凸部/凸部が設けられていない部分)が、2以上である。
【0010】
本発明に係る細胞培養用足場材の他の特定の局面では、前記凸部は、前記基材上にドット状にパターニングされることにより構成されており、前記凸部は、平均底面積が0.005mm2以上、5mm2以下である。
【0011】
本発明に係る細胞培養用足場材のさらに他の特定の局面では、前記凸部は、周縁部に壁部を有する。
【0012】
本発明に係る細胞培養用足場材のさらに他の特定の局面では、ナノインデンテーション法により測定した、平面視において前記凸部の中央の位置での前記凸部の25℃における弾性率が1GPa以上である。
【0013】
本発明に係る細胞培養用足場材のさらに特定の局面では、前記合成樹脂は、構成単位中にブレンステッド塩基性基を0.2モル%以上、20モル%以下で含む。
【0014】
本発明に係る細胞培養用足場材のさらに特定の局面では、前記凸部の水膨潤率が50%以下である。
【0015】
本発明に係る細胞培養用足場材のさらに特定の局面では、前記凸部は、表面にペプチド部を有する。
【0016】
本発明に係る細胞培養用容器は、細胞の培養領域の少なくとも一部に本発明に従って構成される細胞培養用足場材を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、容易にかつ効率よく細胞塊を形成させることができる、細胞培養用足場材及び細胞培養用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用足場材を示す模式的平面図である。
【
図2】
図2(a)は、周縁部に壁部を有する凸部の周辺を拡大して示す模式的平面図であり、
図2(b)は、周縁部に壁部を有する凸部の周辺を拡大して示す模式的正面断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を示す模式的正面断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1で作製した細胞培養用足場材における凸部のパターンを示す写真である。
【
図5】
図5は、実施例2で作製した細胞培養用足場材における凸部のパターンを示す写真である。
【
図6】
図6は、実施例1で作製した細胞培養用容器に細胞を播種したときの顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、実施例1で作製した細胞培養用容器で細胞を5日間培養した後の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
本発明の細胞培養用足場材は、基材と、上記基材上にドット状又はライン状にパターニングされることにより構成された凸部とを備える足場材(scaffold)である。本発明の細胞培養用足場材では、上記凸部は、合成樹脂を含み、該合成樹脂は、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル樹脂を含む。本発明の細胞培養用足場材では、上記凸部は、細胞接着性を有する。本発明の細胞培養用足場材では、上記凸部は、平面視において上記凸部の中央に位置する部分の平均高さが10nm以上、10μm以下である。
【0021】
本発明の細胞培養用足場材は、上記の構成を備えるので、容易にかつ効率よく細胞塊を形成させることができる。
【0022】
従来の微細加工技術によりパターン化された凹部に設けられた細胞培養空間では、細胞の培養効率が低く、容易にかつ効率よく細胞塊を形成させることが難しいという問題がある。
【0023】
本発明者らは、細胞接着性を有する凸部に着目し、特に凸部の特定の位置での平均高さを10nm以上、10μm以下とすることにより、容易にかつ効率よく細胞塊が形成し得ることを見出した。
【0024】
具体的に、本発明の細胞培養用足場材では、播種された細胞が凸部の上に集合し、細胞塊が形成される。この際、凸部の形状に沿って、細胞塊を形成させることができる。従って、凸部の大きさや形状を制御することにより、細胞塊の形状や大きさを容易に制御することができる。
【0025】
また、本発明の細胞培養用足場材では、凸部と凸部が設けられていない部分との双方に細胞を播種することができる。特に、凸部が設けられていない部分に播種された細胞については、遊走性のよい細胞だけを、凸部の上に集合させることができる。そのため、品質のよい細胞だけを選別することができ、品質のよい細胞塊を効率よく得ることができる。また、凸部のみに選択的に細胞を播種しなくてもよいことから、容易にかつ効率よく細胞塊を形成することができる。
【0026】
従って、本発明の細胞培養用足場材によれば、容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさを容易に制御することができる。
【0027】
また、本発明においては、合成樹脂を用いることができるので、天然高分子材料を用いた足場材と比べて、操作性がよく、安価であり、ロット間のばらつきが小さく、かつ安全性に優れている。
【0028】
以下、
図1を参照して、ドット状にパターニングされることにより構成されている凸部を備える、細胞培養用足場材の一例としての模式的平面図について説明する。
【0029】
図1に示す細胞培養用足場材1は、基材2と、基材2上に設けられた複数の凸部3とを備える。複数の凸部3は、合成樹脂を含み、かつ細胞接着性を有している。また、基材2上においては、凸部が設けられていない部分4も設けられている。なお、本実施形態において、凸部が設けられていない部分4と比較して、複数の凸部3は単位面積当たりに接着する細胞数が多くなっている。
【0030】
また、細胞培養用足場材1において、凸部3は、ドット状にパターニングされることにより構成されている。凸部3の平面形状は、略円状である。また、凸部3は、平面視において凸部3の中央に位置する部分の平均高さが、10nm以上、10μm以下である。
【0031】
よって、細胞培養用足場材1では、容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさを容易に制御することができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、凸部の平面形状が略円状であったが、凸部の平面形状は略矩形状や略三角形状であってもよく、特に限定されない。また、複数の凸部のうちの一部又は全部が、隣り合うドットが連なることにより構成されていてもよい。
【0033】
以下、本発明の細胞培養用足場材の詳細を更に説明する。
【0034】
[凸部]
本発明の細胞培養用足場材は、基材上に配置された凸部を備える。本発明の細胞培養用足場材は、基材と、上記基材上に設けられたドット状の凸部又はライン状の凸部とを備える。上記凸部は、基材上にドット状又はライン状にパターニングされることにより構成されている。凸部が基材上にドット状又はライン状に配置されていることにより、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。上記凸部は、基材上にドット状にパターニングされることにより構成されていてもよく、基材上にライン状にパターニングされることにより構成されていてもよく、基材上にドット状とライン状とにパターニングされることにより構成されていてもよい。
【0035】
細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御する観点からは、凸部は、ドット状にパターニングされることにより構成されていることが好ましい。上記細胞培養用足場材は、ドット状にパターニングされることにより構成されている凸部を少なくとも備えることが好ましい。
【0036】
凸部の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。凸部の数は、例えば、1個~1500個とすることができる。凸部がドット状にパターニングされることにより構成されている場合に、凸部の数は、好ましくは1個以上、より好ましくは5個以上、更に好ましくは10個以上、好ましくは1500個以下、より好ましくは1000個以下、更に好ましくは500個以下である。上記凸部の数が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。凸部がライン状にパターニングされることにより構成されている場合に、凸部の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。
【0037】
上記凸部は、平面視において上記凸部の中央に位置する部分の平均高さが、10nm以上、10μm以下である。上記凸部は、平面視において上記凸部の中央に位置する部分の平均高さが、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。上記平均高さが上記範囲内にある場合、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0038】
平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の高さは、ハイブリッドレーザーマイクロスコープ等により測定することができる。平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さは、平面視において凸部の中央の位置での凸部の高さの平均値である。平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さとは、基材の表面(上面)から、平面視において凸部の中央の位置までの平均高さである。上記平均高さは、該凸部がドット状である場合に、ドット状である凸部を平面視したときの平面形状の中央の位置における平均高さである。ドット状である凸部を平面視したときの平面形状が円形状又は楕円形状である場合には、平面視において凸部の中央の位置とは、該円又は該楕円の中心を意味する。ドット状である凸部を平面視したときの平面形状が多角形状等の形状である場合には、平面視において凸部の中央の位置とは、該多角形等の重心を意味する。上記平均高さは、該凸部がライン状である場合に、ライン状である凸部の線幅の中央の位置における平均高さである。なお、凸部がドット状にパターニングされることにより構成された凸部であり、かつ該凸部の数が1個である場合は、上記平均高さは、平面視において該凸部の中央の位置での高さを意味する。凸部がドット状にパターニングされることにより構成された凸部であり、かつ該凸部の数が10個未満である場合は、上記平均高さは、平面視においてこれらの凸部の中央の位置での高さの平均値を意味する。凸部がドット状にパターニングされることにより構成された凸部であり、かつ該凸部の数が10個以上である場合は、上記平均高さは、平面視において任意の10個の凸部の中央の位置での高さの平均値を意味する。また、凸部がライン状にパターニングされることにより構成された凸部である場合は、上記平均高さは、互いに10μm以上離れた任意の10箇所の線幅の中央での高さの平均値を意味する。なお、中央の位置は、完全に中央の位置でなくてもよく、測定誤差の範囲内で中央の位置から離れていてもよく、略中央の位置であってもよい。
【0039】
凸部がドット状にパターニングされることにより構成されている場合は、凸部の平均底面積が、好ましくは0.005mm2以上、より好ましくは0.02mm2以上、さらに好ましくは0.1mm2以上であり、好ましくは5mm2以下、より好ましくは3mm2以下、さらに好ましくは1.5mm2以下である。この場合、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0040】
凸部の平均底面積は、凸部の数が1個である場合は、該凸部の底面積を意味する。凸部の平均底面積は、凸部の数が10個未満である場合は、これらの凸部の底面積の平均値を意味する。凸部の平均底面積は、凸部の数が10個以上である場合は、任意の10個の凸部の底面積の平均値を意味する。
【0041】
また、凸部は、ライン状にパターニングされることにより構成されていてもよい。この場合、凸部は、直線状、折れ線状又は曲線状になるように構成されていてもよく、円状、又は渦巻き状となるように構成されていてもよい。
【0042】
凸部がライン状にパターニングされることにより構成されている場合は、凸部の平均線幅が、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは0.5mm以下である。この場合、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0043】
凸部は、細胞接着性を有する。本発明において、「細胞接着性を有する凸部」とは、凸部が設けられていない部分と比較して、凸部の単位面積当たりに接着する細胞数が多いことを意味する。したがって、凸部は、基材よりも細胞接着性が高いことが好ましい。
【0044】
本発明において、凸部の凸部が設けられていない部分に対するタンパク吸着量の比(凸部/凸部が設けられていない部分)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、好ましくは15以下、より好ましくは10以下である。この場合、凸部の細胞接着性をより一層高めることができ、より一層容易にかつ効率よく細胞塊を形成することができる。
【0045】
上記タンパク吸着量は、例えば、以下の方法により測定することができる。
【0046】
細胞培養用足場材に対し、FITC標識されたウシ血清アルブミン(コスモ・バイオ社製)0.1mg/mLを40μLキャストし37℃で1時間静置した後、細胞培養用足場材を純水で洗浄し、45℃のオーブン内で1時間乾燥する。また、吸着タンパク量の検量用として、ポリスチレン基材にそれぞれ0.005mg/mL、0.02mg/mL、0.05mg/mLのFITC標識されたウシ血清アルブミンを1μLディスペンスし、45℃のオーブン内で1時間乾燥する。細胞培養用足場材を蛍光顕微鏡を用いて撮影し、凸部の蛍光強度と凸部が設けられていない部分の蛍光強度とを求める。検量線用のポリスチレン基材を用いて得られた蛍光強度の直線近似値からタンパク吸着量に換算する。
【0047】
なお、タンパク吸着量の比は、凸部に含まれる合成樹脂において、アミノ基等のカチオン性官能基や、カルボキシル基等のアニオン性官能基の含有量を増やすことにより、高めることができる。
【0048】
本発明において、ナノインデンテーション法により測定した、平面視において凸部の中央の位置での凸部の25℃における弾性率は、好ましくは1GPa以上、より好ましくは2GPa以上、好ましくは8GPa以下、より好ましくは6GPa以下である。凸部の弾性率が上記範囲内にある場合、凸部の細胞接着性をより一層高めることができ、より一層容易にかつ効率よく細胞塊を形成することができる。
【0049】
上記弾性率(表面弾性率)は、例えば、ナノインデンター(Hysitron, Triboindenter、ブルカー社製)を用いて測定することができる。圧子として、先端径R数100nmのBerkovich(三角錐型)圧子を用い、大気下、25℃にて単一押し込み測定をして測定することができる。その押し込み深さは50nmとすることができる。なお、中央の位置は、完全に中央の位置でなくてもよく、測定誤差の範囲内で中央の位置から離れていてもよく、略中央の位置であってもよい。
【0050】
上記表面弾性率は、例えば、凸部に含まれる合成樹脂の分子量を大きくする、凸部に含まれる合成樹脂の架橋度を高める、凸部に含まれる合成樹脂に結晶性の分子構造を導入する等の方法により、大きくすることができる。
【0051】
本発明において、凸部の水膨潤率は、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下である。この場合、凸部の細胞接着性をより一層高めることができ、より一層容易にかつ効率よく細胞塊を形成することができる。なお、水膨潤率の下限値は特に限定されないが、例えば、0.5%とすることができる。また、水膨潤率は、例えば、以下のようにして測定することができる。
【0052】
基材及び細胞培養用足場材をそれぞれ用意し、各重量を測定する。細胞培養用足場材の重量から基材の重量を差し引いて、「浸漬前のサンプル重量」とする。また、基材及び細胞培養用足場材をそれぞれ、25℃の水に24時間浸漬する。浸漬後、基材及び細胞培養用足場材に付着している水を除去し、各重量を測定する。浸漬後の細胞培養用足場材の重量から浸漬後の基材の重量を差し引いて、「浸漬後のサンプル重量」とする。水膨潤率=(浸漬後のサンプル重量-浸漬前のサンプル重量)/(浸漬前のサンプル重量)×100(%)を算出する。
【0053】
上記水膨潤率は、例えば、凸部に含まれる合成樹脂の疎水性官能基を増やすこと、数平均分子量を下げること等により、小さくできる。
【0054】
凸部は、周縁部に壁部を有することが好ましい。この場合には、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。なお、壁部は凸部の一部である。したがって、凸部が壁部を有する場合には、上述した凸部の底面積及び線幅等は、壁部を含む凸部の底面積及び線幅等である。
【0055】
図2(a)は、周縁部に壁部を有する凸部の周辺を拡大して示す模式的平面図であり、
図2(b)は、周縁部に壁部を有する凸部の周辺を拡大して示す模式的正面断面図である。
図2(b)は、
図2(a)中のI-I線に沿う断面図である。
図2では、1個の凸部部分が拡大して示されている。
【0056】
図2では、基材2Aの表面上に、凸部3Aが配置されている。凸部3Aは、周縁部に壁部31Aを有する。凸部3Aは、壁部31Aと、壁部31Aを有さない部分とを有する。凸部3Aは、平面視において、円状である。平面視において凸部3Aの中央の位置は、該円の中心である。壁部31Aの上面と、壁部31Aを有さない部分の上面とにより、凸部3Aの上面が構成されている。壁部31Aの高さHbは、壁部31Aを有さない部分の高さよりも高い。壁部31Aの高さHbは、平面視において凸部3Aの中央の位置での凸部3Aの高さHaよりも高い。壁部の高さHbは、平面視における壁部の幅方向の中央の位置での凸部の高さであり、壁部の厚み方向の中央の位置での凸部の高さである。壁部の高さHbは、基材2Aの表面(上面)から、壁部31Aの上面の幅方向の中央の位置までの距離である。凸部3Aは、厚みTbの壁部31Aを有する。壁部の厚みTbは、平面視における壁部の幅に相当する。壁部31Aと、壁部31Aを有さない部分とは同一の材料により形成されている。壁部31Aを有さない部分は、壁部31Aに囲まれている。
【0057】
壁部の平均高さは、好ましくは100nm以上、より好ましくは300nm以上、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。壁部の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0058】
壁部の平均厚みは、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。上記壁部の平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0059】
壁部の平均高さは、平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さよりも高いことが好ましい。壁部の平均高さの、平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さに対する比(壁部の平均高さ/平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さ)は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、好ましくは100以下、より好ましくは50以下である。上記比が上記下限以上及び上記上限以下であると、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0060】
壁部の平均高さ及び壁部の平均厚みはそれぞれ、壁部を有する凸部の数が1個である場合は、該凸部における壁部の高さ及び壁部の厚みを意味する。壁部の平均高さ及び壁部の平均厚みは、壁部を有する凸部の数が10個未満である場合は、これらの凸部における壁部の高さ及び壁部の厚みの平均値を意味する。壁部の平均高さ及び壁部の平均厚みは、壁部を有する凸部の数が10個以上である場合は、任意の10個の凸部における壁部の高さ及び壁部の厚みの平均値を意味する。
【0061】
壁部の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、モールドを用いた転写成形による方法、精密機械切削による方法、ケミカルエッチングによる方法等が挙げられる。
【0062】
壁部を有する凸部の簡易的な製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、凸部を形成するための合成樹脂を含む溶液を準備する。次に、上記溶液の微小液滴を基材の上に配置し、溶媒を徐々に揮発させる。合成樹脂を低濃度で含有する溶液の微小液滴を徐々に乾燥させると、周縁部に壁部を有する凸部が基材上に形成される。
【0063】
(合成樹脂)
本発明の細胞培養用足場材の凸部は、合成樹脂(以下、合成樹脂Xと記載することがある)を含む。合成樹脂Xは、凸部に含まれる合成樹脂である。なお、本明細書において、「構造単位」とは、合成樹脂を構成するモノマーの繰り返し単位をいう。なお、合成樹脂がグラフト鎖を有する場合は、そのグラフト鎖を構成するモノマーの繰り返し単位を含む。
【0064】
合成樹脂Xは、構成単位中にブレンステッド塩基性基を、0.2モル%以上で含むことが好ましく、2モル%以上で含むことがより好ましく、30モル%以下で含むことが好ましく、20モル%以下で含むことがより好ましく、15モル%以下で含むことがさらに好ましい。この場合には、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。なお、ブレンステッド塩基性基等については、後述する。
【0065】
合成樹脂Xは、少なくともポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル樹脂を含む。合成樹脂Xが、ポリビニルアルコール誘導体又はポリ(メタ)アクリル樹脂を含むことにより、細胞との接着性を高めることができ、また、液体培地中において細胞培養用足場材の膨潤がより抑えられる。合成樹脂Xは、ポリビニルアルコール誘導体を含んでいてもよく、ポリ(メタ)アクリル樹脂を含んでいてもよく、ポリビニルアルコール誘導体とポリ(メタ)アクリル樹脂との双方を含んでいてもよい。上記ポリビニルアルコール誘導体及びポリ(メタ)アクリル樹脂は、それぞれ1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記ポリビニルアルコール誘導体は、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂であることが好ましい。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂であることが好ましい。
【0067】
<ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂>
細胞培養用足場材の凸部は、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましい。上記合成樹脂Xは、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましい。
【0068】
本明細書において、「ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂」を、「ポリビニルアセタール樹脂X」と記載することがある。
【0069】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、側鎖にアセタール基と、アセチル基と、水酸基とを有することが好ましい。ただし、ポリビニルアセタール樹脂Xは、例えば、アセチル基を有しなくてもよい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂Xのアセチル基の全てが、後述するリンカーと結合することによって、ポリビニルアセタール樹脂Xがアセチル基を有していなくてもよい。
【0070】
ポリビニルアセタール樹脂Xを合成する際には、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化する工程を少なくとも備える。
【0071】
ポリビニルアセタール樹脂Xを得るためのポリビニルアルコールのアセタール化に用いられるアルデヒドは、特に限定されない。アルデヒドとしては、例えば、炭素数が1~10のアルデヒドが挙げられる。アルデヒドは、鎖状脂肪族基、環状脂肪族基又は芳香族基を有していてもよい。アルデヒドは、鎖状アルデヒドであってもよく、環状アルデヒドであってもよい。
【0072】
上記アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、アクロレイン、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、ペリルアルデヒド、ホルミルピリジン、ホルミルイミダゾール、ホルミルピロール、ホルミルピペリジン、ホルミルトリアゾール、ホルミルテトラゾール、ホルミルインドール、ホルミルイソインドール、ホルミルプリン、ホルミルベンゾイミダゾール、ホルミルベンゾトリアゾール、ホルミルキノリン、ホルミルイソキノリン、ホルミルキノキサリン、ホルミルシンノリン、ホルミルプテリジン、ホルミルフラン、ホルミルオキソラン、ホルミルオキサン、ホルミルチオフェン、ホルミルチオラン、ホルミルチアン、ホルミルアデニン、ホルミルグアニン、ホルミルシトシン、ホルミルチミン、及びホルミルウラシル等が挙げられる。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0073】
アルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、又はペンタナールであることが好ましく、ブチルアルデヒドであることがより好ましい。したがって、ポリビニルアセタール骨格は、ポリビニルブチラール骨格であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂Xは、ポリビニルブチラール骨格を有する合成樹脂であることが好ましく、ポリビニルブチラール樹脂であることがより好ましい。
【0074】
ポリビニルアセタール樹脂Xには、ビニル化合物が共重合されていてもよい。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂Xは、ポリビニルアセタール樹脂の構造単位とビニル化合物との共重合体であってもよい。本発明では、ビニル化合物と共重合したポリビニルアセタール樹脂も、ポリビニルアセタール樹脂というものとする。
【0075】
ビニル化合物は、ビニル基(H2C=CH-)を有する化合物である。ビニル化合物は、ビニル基を有する構造単位を有する重合体であってもよい。
【0076】
上記共重合体は、ポリビニルアセタール樹脂とビニル化合物とのブロック共重合体であってもよく、ポリビニルアセタール樹脂にビニル化合物がグラフトしたグラフト共重合体であってもよい。上記共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましい。
【0077】
上記共重合体は、例えば、以下の(1)~(3)の方法により合成することができる。(1)ビニル化合物が共重合されたポリビニルアルコールを用いてポリビニルアセタール樹脂を合成する方法。(2)ポリビニルアルコールと、ビニル化合物が共重合されたポリビニルアルコールとを用いてポリビニルアセタール樹脂を合成する方法。(3)グラフト共重合させる前のポリビニルアセタール樹脂にビニル化合物をグラフト共重合させる方法。
【0078】
ビニル化合物としては、エチレン、アリルアミン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、無水マレイン酸、マレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、ビニルアミン及、又は(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。これらのビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0079】
細胞の接着性をより一層高める観点からは、ポリビニルアセタール樹脂Xは、ブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基を有することが好ましく、ブレンステッド塩基性基を有することがより好ましい。すなわち、ポリビニルアセタール樹脂Xの一部がブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基により変性されていることが好ましく、ポリビニルアセタール樹脂Xの一部がブレンステッド塩基性基で変性されていることがより好ましい。
【0080】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、一部にブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基を有することが好ましく、ブレンステッド塩基性基を有することがより好ましい。その場合には、細胞の接着性をより一層高めることができる。その場合、ブレンステッド塩基性基又はブレンステッド酸性基を有するモノマーが共重合されていてもよく、グラフト共重合されていてもよい。上記ブレンステッド塩基性基における変性度は、好ましくは、0.2モル%以上、より好ましくは2モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。ブレンステッド塩基性基による変性度が上記特定の範囲内であれば、細胞の接着性をより一層高めることができる。
【0081】
ブレンステッド塩基性基は、水素イオンH+を他の物質から受け取ることができる官能基の総称である。上記ブレンステッド塩基性基としては、イミン構造を有する置換基、イミド構造を有する置換基、アミン構造を有する置換基、及びアミド構造を有する置換基等のアミン系塩基性基が挙げられる。ブレンステッド塩基性基としては、特に限定されないが、ヒドロキシアミノ基、ウレア基、グアニジン、ビグアニド等の共役アミン系官能基、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ヘキサメチレンテトラアミン、モルホリン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピロール、アザトロピリデン、ピリドン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ピラゾール、オキサゾール、イミダゾリン、トリアゾール、チアゾール、チアジン、テトラゾール、インドール、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、アクリジン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、メラミン等のヘテロ環アミノ系官能基、ポルフィリン、クロリン、コリン等の環状ピロール系官能基およびそれらの誘導体等が挙げられる。
【0082】
ブレンステッド酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、マレイン酸基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、又はこれらの塩等が挙げられる。ブレンステッド酸性基は、カルボキシル基であることが好ましい。
【0083】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を有する構造単位、イミド構造を有する構造単位、アミン構造を有する構造単位、又はアミド構造を有する構造単位を有することが好ましい。この場合、これらの構造単位のうちの1種のみを有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0084】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を有する構造単位を有していてもよい。イミン構造とは、C=N結合を有する構造をいう。特に、ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミン構造を側鎖に有することが好ましい。
【0085】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミド構造を有する構造単位を有していてもよい。イミド構造を有する構造単位は、イミノ基(=NH)を有する構造単位であることが好ましい。
【0086】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、イミノ基を側鎖に有することが好ましい。この場合、イミノ基は、ポリビニルアセタール樹脂Xの主鎖を構成する炭素原子に直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0087】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、アミン構造を有する構造単位を有していてもよい。上記アミン構造におけるアミン基は、第一級アミン基であってもよく、第二級アミン基であってもよく、第三級アミン基であってもよく、第四級アミン基であってもよい。
【0088】
アミン構造を有する構造単位は、アミド構造を有する構造単位であってもよい。上記アミド構造とは、-C(=O)-NH-を有する構造をいう。
【0089】
ポリビニルアセタール樹脂Xは、アミン構造又はアミド構造を側鎖に有することが好ましい。この場合、アミン構造又はアミド構造は、ポリビニルアセタール樹脂Xの主鎖を構成する炭素原子に直接結合していてもよく、アルキレン基等の連結基を介して主鎖に結合していてもよい。
【0090】
なお、イミン構造を有する構造単位の含有率、イミド構造を有する構造単位の含有率、アミン構造を有する構造単位の含有率、アミド構造を有する構造単位の含有率は、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定することができる。
【0091】
<ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂>
本発明の細胞培養用足場材の凸部は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましい。上記合成樹脂Xは、ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂を含むことが好ましい。
【0092】
本明細書において、「ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する合成樹脂」を、「ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂X」と記載することがある。
【0093】
従って、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル骨格を有する樹脂である。
【0094】
ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xは、(メタ)アクリル酸エステルの重合により、あるいは、(メタ)アクリル酸エステルと、他のモノマーとの共重合により得られる。
【0095】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類、(メタ)アクリル酸ホスホリルコリン等が挙げられる。
【0096】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0097】
なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数1~3のアルコキシ基及びテトラヒドロフルフリル基等の置換基で置換されていてもよい。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルの例としては、メトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等が挙げられる。
【0098】
(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、フェニル(メタ)アクリレート、及びベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0100】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(3-(メタ)アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、3-(メタ)アクリロイル-2-オキサゾリジノン、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、及び6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸等が挙げられる。
【0101】
(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール類としては、例えば、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヒドロキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングルコール(メタ)アクリレート、エトキシ-トリエチレングルコール(メタ)アクリレート、及びヒドロキシ-トリエチレングルコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0102】
(メタ)アクリル酸ホスホリルコリンとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
【0103】
(メタ)アクリル酸エステルと共重合される他のモノマーとしては、ビニル化合物が好適に用いられる。ビニル化合物としては、エチレン、アリルアミン、ビニルピロリドン、無水マレイン酸、マレイミド、イタコン酸、(メタ)アクリル酸、ビニルアミン、又は(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ビニル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0104】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」又は「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を意味する。
【0105】
上記ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xは、ポリビニルアセタール樹脂Xと同様に、一部にブレンステッド塩基性基、またはブレンステッド酸性基を有することが好ましい。その場合には、細胞の接着性をより一層高めることができる。このブレンステッド塩基性基は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂Xの一部に有されていればよく、その場合、ブレンステッド塩基性基を有するモノマーが共重合されていてもよく、グラフト共重合されていてもよい。上記ブレンステッド塩基性基における変性度は、好ましくは、0.2モル%以上、より好ましくは2モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは15モル%以下である。ブレンステッド塩基性基による変性度が上記特定の範囲内であれば、細胞の接着性より一層高めることができる。
【0106】
<ペプチド部を有する合成樹脂>
本発明の細胞培養用足場材の凸部は、ペプチド部を有する合成樹脂を含むことが好ましい。上記合成樹脂Xは、ペプチド部を有する合成樹脂を含むことが好ましい。ペプチド部を有する合成樹脂を細胞培養用足場材の凸部の材料として用いることにより、表面にペプチド部を有する凸部を得ることができる。すなわち、凸部は、表面にペプチド部を有することが好ましい。この場合には、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができ、細胞の増殖率をより一層高めることができる。また、この場合には、より一層容易にかつ効率よく品質のよい細胞塊を形成させることができ、しかも細胞塊の形状や大きさをより一層容易に制御することができる。
【0107】
ペプチド部を有する合成樹脂は、合成樹脂と、リンカーと、ペプチドとを反応させて得ることができる。ペプチド部を有する合成樹脂は、ポリビニルアセタール樹脂部と、リンカー部と、ペプチド部とを有するペプチド含有ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましく、ポリビニルブチラール樹脂部と、リンカー部と、ペプチド部とを有するペプチド含有ポリビニルブチラール樹脂であることがより好ましい。したがって、上記ポリビニルアセタール骨格を有する合成樹脂(ポリビニルアセタール樹脂X)は、ペプチド含有ポリビニルアセタール樹脂であることが好ましく、ペプチド含有ポリビニルブチラール樹脂であることがより好ましい。ペプチド部を有する合成樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0108】
上記ペプチド部は、3個以上のアミノ酸により構成されることが好ましく、4個以上のアミノ酸により構成されることがより好ましく、5個以上のアミノ酸により構成されることが更に好ましく、10個以下のアミノ酸により構成されることが好ましく、6個以下のアミノ酸により構成されることがより好ましい。上記ペプチド部を構成するアミノ酸の個数が上記下限以上及び上記上限以下であると、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができ、細胞の増殖率をより一層高めることができる。
【0109】
上記ペプチド部は、細胞接着性のアミノ酸配列を有することが好ましい。なお、細胞接着性のアミノ酸配列とは、ファージディスプレイ法、セファローズビーズ法、又はプレートコート法によって細胞接着活性が確認されているアミノ酸配列をいう。上記ファージディスプレイ法としては、例えば、「The Journal of Cell Biology, Volume 130, Number 5, September 1995 1189-1196」に記載の方法を用いることができる。上記セファローズビーズ法としては、例えば「蛋白質 核酸 酵素 Vol.45 No.15 (2000) 2477」に記載の方法を用いることができる。上記プレートコート法としては、例えば「蛋白質 核酸 酵素 Vol.45 No.15 (2000) 2477」に記載の方法を用いることができる。
【0110】
上記細胞接着性のアミノ酸配列としては、例えば、RGD配列(Arg-Gly-Asp)、YIGSR配列(Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg)、PDSGR配列(Pro-Asp-Ser-Gly-Arg)、HAV配列(His-Ala-Val)、ADT配列(Ala-Asp-Thr)、QAV配列(Gln-Ala-Val)、LDV配列(Leu-Asp-Val)、IDS配列(Ile-Asp-Ser)、REDV配列(Arg-Glu-Asp-Val)、IDAPS配列(Ile-Asp-Ala-Pro-Ser)、KQAGDV配列(Lys-Gln-Ala-Gly-Asp-Val)、及びTDE配列(Thr-Asp-Glu)等が挙げられる。また、上記細胞接着性のアミノ酸配列としては、「病態生理、第9巻 第7号、527~535頁、1990年」、及び「大阪府立母子医療センター雑誌、第8巻 第1号、58~66頁、1992年」に記載されている配列等も挙げられる。上記ペプチド部は、上記細胞接着性のアミノ酸配列を1種のみ有していてもよく、2種以上を有してもよい。
【0111】
上記細胞接着性のアミノ酸配列は、上述した細胞接着性のアミノ酸配列の内の少なくともいずれかを有することが好ましく、RGD配列、YIGSR配列、又はPDSGR配列を少なくとも有することがより好ましく、下記式(1)で表されるRGD配列を少なくとも有することが更に好ましい。この場合には、播種後の細胞との接着性をより一層高め、細胞の増殖率をより一層高めることができる。
【0112】
Arg-Gly-Asp-X ・・・式(1)
【0113】
上記式(1)中、Xは、Gly、Ala、Val、Ser、Thr、Phe、Met、Pro、又はAsnを表す。
【0114】
上記ペプチド部は、直鎖状であってもよく、環状ペプチド骨格を有していてもよい。上記環状ペプチド骨格とは、複数個のアミノ酸より構成された環状骨格である。本発明の効果を一層効果的に発揮させる観点からは、上記環状ペプチド骨格は、4個以上のアミノ酸により構成されることが好ましく、5個以上のアミノ酸により構成されることが好ましく、10個以下のアミノ酸により構成されることが好ましい。
【0115】
ペプチド部を有する合成樹脂において、上記ペプチド部の含有率は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上、さらに好ましくは5モル%以上、特に好ましくは10モル%以上である。ペプチド部を有する合成樹脂において、上記ペプチド部の含有率は、好ましくは60モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下、特に好ましくは25モル%以下である。上記ペプチド部の含有率が上記下限以上であると、相分離構造をより一層容易に形成することができる。上記ペプチド部の含有率が上記下限以上であると、播種後の細胞との接着性をより一層高めることができ、細胞の増殖率をより一層高めることができる。また、上記ペプチド部の含有率が上記上限以下であると、製造コストを抑えることができる。なお、上記ペプチド部の含有率(モル%)は、ペプチド部を有する合成樹脂を構成する各構造単位の物質量の総和に対する上記ペプチド部の物質量である。
【0116】
上記ペプチド部の含有率は、FT-IR又はLC-MSにより測定することができる。
【0117】
ペプチド部を有する合成樹脂において、合成樹脂部分とペプチド部とは、リンカーを介して結合していることが好ましい。すなわち、ペプチド部を有する合成樹脂は、ペプチド部とリンカー部とを有する合成樹脂であることが好ましい。上記リンカーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
上記リンカーは、上記ペプチドのカルボキシル基又はアミノ基と縮合可能な官能基を有する化合物であることが好ましい。上記ペプチドのカルボキシル基又はアミノ基と縮合可能な官能基としては、カルボキシル基、チオール基及びアミノ基等が挙げられる。ペプチドと良好に反応させる観点からは、上記リンカーは、カルボキシル基を有する化合物であることが好ましい。上記リンカーとして、上述したビニル化合物を用いることもできる。
【0119】
上記カルボキシル基を有するリンカーとしては、(メタ)アクリル酸及びカルボキシル基含有アクリルアミド等が挙げられる。上記カルボキシル基を有するリンカーとして重合性不飽和基を有するカルボン酸(カルボン酸モノマー)を用いることにより、リンカーと合成樹脂とを反応させる際に、グラフト重合により該カルボン酸モノマーを重合させることができるため、ペプチドと反応させることができるカルボキシル基の個数を増やすことができる。
【0120】
<その他の樹脂>
細胞培養用足場材の凸部は、上述した合成樹脂以外のポリマーを含んでいてもよい。該ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0121】
[基材]
本発明の細胞培養用足場材は、基材を備える。基材の表面の一部は、凸部が設けられていない部分を構成する。従って、基材は凸部よりも単位面積当たりに接着する細胞数が少ない材料により構成されていることが好ましい。
【0122】
基材の材料としては、樹脂、金属及び無機材料が挙げられる。上記樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイソプレン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン等が挙げられる。上記金属としては、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、アルミ、チタン、金、銀、白金等が挙げられる。上記無機材料としては、酸化ケイ素(ガラス)、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、窒化ケイ素等が挙げられる。
【0123】
[細胞培養用足場材の他の詳細]
本発明に係る細胞培養用足場材の凸部は、上記合成樹脂Xを含む。本発明の効果を効果的に発揮させる観点及び生産性を高める観点からは、上記細胞培養用足場材の凸部100重量%中、上記合成樹脂Xの含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97.5重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、上記細胞培養用足場材の凸部は、上記合成樹脂Xであることが最も好ましい。上記合成樹脂Xの含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0124】
凸部に含まれる合成樹脂Xがポリビニルアルコール誘導体を含む場合に、合成樹脂X100重量%中、ポリビニルアルコール誘導体の含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97.5重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、凸部に含まれる合成樹脂Xは、ポリビニルアルコール誘導体であることが最も好ましい。上記ポリビニルアルコール誘導体の含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0125】
凸部に含まれる合成樹脂Xがポリ(メタ)アクリル樹脂を含む場合に、合成樹脂X100重量%中、ポリ(メタ)アクリル樹脂の含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは97.5重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、凸部に含まれる合成樹脂Xは、ポリ(メタ)アクリル樹脂であることが最も好ましい。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂の含有量が上記下限以上であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮させることができる。
【0126】
上記細胞培養用足場材の凸部は、上記合成樹脂X以外の成分を含んでいてもよい。上記合成樹脂X以外の成分としては、多糖類、セルロース、合成ペプチド等が挙げられる。
【0127】
本発明の効果を効果的に発揮させる観点から、上記合成樹脂X以外の成分の含有量は少ないほどよい。上記細胞培養用足場材の凸部100重量%中、該成分の含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは2.5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0重量%(未含有)である。したがって、細胞培養用足場材の凸部は、合成樹脂X以外の成分を含まないことが最も好ましい。
【0128】
上記細胞培養用足場材は、動物由来の原料を含まないことが好ましい。動物由来の原料を含まないことにより、安全性が高く、かつ、製造時に品質のばらつきが少ない細胞培養用足場材を提供することができる。なお、「動物由来の原料を実質的に含まない」とは、細胞培養用足場材中における動物由来の原料が、3重量%以下であることをいう。上記細胞培養用足場材は、細胞培養用足場材中における動物由来の原料が、1重量%以下であることが好ましく、0重量%であることが最も好ましい。すなわち、本発明の細胞培養用足場材は、動物由来の原料を全く含まないことが最も好ましい。
【0129】
上記細胞培養用足場材の凸部は、凸部中における動物由来の原料が、3重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましく、0重量%であることが最も好ましい。すなわち、細胞培養用足場材の凸部は、動物由来の原料を全く含まないことが最も好ましい。
【0130】
(細胞培養用足場材を用いた細胞培養)
本発明に係る細胞培養用足場材は、細胞を培養するために用いられる。本発明に係る細胞培養用足場材は、細胞を培養する際の該細胞の足場として用いられる。
【0131】
上記細胞としては、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ及びサル等の動物細胞が挙げられる。また、上記細胞としては、体細胞等が挙げられ、例えば、幹細胞、前駆細胞及び成熟細胞等が挙げられる。上記体細胞は、癌細胞であってもよい。
【0132】
上記幹細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)、iPS細胞、ES細胞、Muse細胞、胚性がん細胞、胚性生殖幹細胞、及びmGS細胞等が挙げられる。
【0133】
上記成熟細胞としては、神経細胞、心筋細胞、網膜細胞及び肝細胞等が挙げられる。
【0134】
[細胞培養用容器]
本発明は、細胞の培養領域の少なくとも一部に上記細胞培養用足場材を備える、細胞培養用容器にも関する。
図3は、本発明の一実施形態に係る細胞培養用容器を示す模式的正面断面図である。
【0135】
細胞培養用容器11は、容器本体12を備える。容器本体12の底部が細胞培養用足場材1の基材2とされている。従って、凸部3は、容器本体12の表面12a上に設けられている。
【0136】
細胞培養用容器11に液体培地を添加し、また、細胞を細胞培養用足場材1の表面に播種することで、細胞を平面培養することができる。
【0137】
なお、容器本体は、第1の容器本体の底面上にカバーガラス等の第2の容器本体を備えていてもよい。第1の容器本体と第2の容器本体とは分離可能であってもよい。この場合、第2の容器本体の少なくとも一部が上記細胞培養用足場材の基材であってもよい。
【0138】
上記容器本体として、従来公知の容器本体(容器)を用いることができる。上記容器本体の形状および大きさは特に限定されない。
【0139】
上記容器本体としては、1個又は複数個のウェル(穴)を備える細胞培養用プレート、及び細胞培養用フラスコ等が挙げられる。上記プレートのウェル数は特に限定されない。該ウェル数としては、特に限定されないが、例えば、2、4、6、12、24、48、96、384等が挙げられる。上記ウェルの形状としては、特に限定されないが、真円、楕円、三角形、正方形、長方形、五角形等が挙げられる。上記ウェル底面の形状としては、特に限定されないが、平底、丸底等が挙げられる。
【0140】
上記容器本体の材質は特に限定されないが、樹脂、金属及び無機材料が挙げられる。上記樹脂としては、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイソプレン、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン等が挙げられる。上記金属としては、ステンレス、銅、鉄、ニッケル、アルミ、チタン、金、銀、白金等が挙げられる。上記無機材料としては、酸化ケイ素(ガラス)、酸化アルミ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、窒化ケイ素等が挙げられる。なお、この場合、細胞培養用足場材の基材も容器本体の一部となるため、容器本体を構成する材料と同じ材料を用いることができる。
【実施例】
【0141】
次に、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例1~10,13は参考例である。
【0142】
細胞培養用足場材の原料として、以下の合成樹脂X1~X9を合成した。なお、得られた合成樹脂における構造単位の含有率は、合成樹脂をDMSO-D6(ジメチルスルホキサイド)に溶解した後、1H-NMR(核磁気共鳴スペクトル)により測定した。
【0143】
<合成樹脂X1>
攪拌装置を備えた反応機に、イオン交換水2700mL、平均重合度800、アミン変性度1モル%、鹸化度99モル%のアミン変性ポリビニルアルコールを300重量部投入し、攪拌しながら加熱溶解し、溶液を得た。得られた溶液に、触媒として、塩酸濃度が0.2重量%となるように35重量%塩酸を添加した。次いで、温度を15℃に調整し、攪拌しながらn-ブチルアルデヒド22重量部を添加した。次いで、n-ブチルアルデヒド148重量部を添加し、白色粒子状のポリビニルブチラール樹脂を析出させた。析出してから15分後に、塩酸濃度が1.8重量%となるように35重量%塩酸を添加した後、50℃に加熱し、50℃で2時間保持した。次いで、溶液を冷却し、中和した後、ポリビニルブチラール樹脂を水洗し、乾燥させて、ポリビニルブチラール樹脂である合成樹脂X1を得た。
【0144】
得られたポリビニルブチラール樹脂(合成樹脂X1)は、平均重合度800、水酸基量20モル%、アミン基量1モル%、アセチル化度1モル%、アセタール化度(ブチラール化度)78モル%であった。
【0145】
<合成樹脂X2>
アミン変性ポリビニルアルコールに代えて平均重合度300、鹸化度99モル%のポリビニルアルコールを用いたこと以外は合成樹脂X1と同様にして、ポリビニルブチラール樹脂を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂20重量部をテトラヒドロフラン(THF)80重量部に溶解させ、ジメチルアミノアクリルアミドを2重量部添加した。次いで、開始剤としてIrgacure184(IGM Resins B.V.社製)を0.1重量部溶解させ、UV重合試験機にて20分間UV照射し、表1に示す構成を備える合成樹脂X2を得た。
【0146】
<合成樹脂X3>
ジメチルアミノアクリルアミドの添加量を2重量部から8重量部としたことを除いては、合成樹脂X2と同様にして、表1に示す構成を備えるポリビニルブチラール樹脂(合成樹脂X3)を得た。
【0147】
<合成樹脂X4>
平均重合度250、鹸化度99モル%のポリビニルアルコールを用いたこと、ジメチルアミノアクリルアミドに代えてジエチルアミノアクリルアミド10重量部を用いたことを除いては、合成樹脂X2と同様にして、表1に示す構成を備えるポリビニルブチラール樹脂(合成樹脂X4)を得た。
【0148】
<合成樹脂X5>
ジエチルアミノアクリルアミドに代えてビニルイミダゾール5重量部を用いたこと、その含有割合を13モル%としたことを除いては、合成樹脂X4と同様にして、表1に示す構成を備えるポリビニルブチラール樹脂(合成樹脂X5)を得た。
【0149】
<合成樹脂X6>
表1に示す構成を備えるポリビニルブチラール樹脂を用いた。
【0150】
<合成樹脂X7>
アミン変性ポリビニルアルコールに代えて平均重合度250、鹸化度98モル%のポリビニルアルコールを用いたこと以外は合成樹脂X1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂(ポリビニルブチラール樹脂)を得た。
【0151】
リンカーの導入:
得られたポリビニルアセタール樹脂90重量部と、アクリル酸(リンカー)15重量部とをTHF300重量部に溶解し、光ラジカル重合開始剤の存在下で、紫外線照射下で20分間反応させ、ポリビニルアセタール樹脂とアクリル酸とをグラフト共重合させることにより、リンカーを導入した。
【0152】
ペプチド部の形成:
ペプチドとしてGly-Arg-Gly-Asp-Serのアミノ酸配列を有する直鎖状のペプチド(アミノ酸残基数5個、表ではGRGDSと記載)を用意した。このペプチド10重量部と、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(縮合剤)10重量部とを、カルシウム及びマグネシウムの双方を含まないメタノール80重量部に添加し、ペプチド含有液を作製した。このペプチド含有液100重量部と、リンカーを導入したポリビニルアセタール樹脂80重量部とをメタノール300重量部に添加し、反応させて、リンカー部のカルボキシル基と、ペプチドのアミノ基とを脱水縮合した。反応終了後、60℃で真空乾燥を1時間行い、メタノールを揮発させた。このようにして、ポリビニルアセタール樹脂部と、リンカー部と、ペプチド部とを有するペプチド含有ポリビニルアセタール樹脂(合成樹脂X7)を作製した。
【0153】
<合成樹脂X8>
合成樹脂X7と同様にして、リンカーが導入されたポリビニルブチラール樹脂を得た。この樹脂を用いて、以下のペプチド部の形成を行った。
【0154】
ペプチド部の形成:
Arg-Gly-Asp-Phe-Lysのアミノ酸配列を有する環状のペプチド(アミノ酸残基数5個、ArgとLysとが結合することにより環状骨格を形成、PheはD体、表ではc-RGDfKと記載)を用意した。このペプチド10重量部と、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(縮合剤)10重量部とを、カルシウム及びマグネシウムの双方を含まないメタノール80重量部に添加し、ペプチド含有液を作製した。このペプチド含有液100重量部と、リンカーを導入したポリビニルアセタール樹脂80重量部とをメタノール300重量部に添加し、反応させて、リンカー部のカルボキシル基と、ペプチドのアミノ基とを脱水縮合した。反応終了後、60℃で真空乾燥を1時間行い、メタノールを揮発させた。このようにして、ポリビニルアセタール樹脂部と、リンカー部と、環状のペプチド部とを有するペプチド含有ポリビニルアセタール樹脂(合成樹脂X8)を作製した。
【0155】
<合成樹脂X9>
ブチルメタクリレート23.4重量部及びメトキシメチルアクリレート76.6重量部を混合し、(メタ)アクリルモノマー溶液を得た。次に、得られた(メタ)アクリルモノマー溶液にIrgacure184(BASF社製)0.5重量部を溶解させ、PETフィルム上に塗布した。塗布物を25℃にてアイグラフィックス社製、UVコンベア装置「ECS301G1」を用い、365nmの波長の光を積算光量2000mJ/cm2で照射することでポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂(合成樹脂X9)を得た。
【0156】
(実施例1~13及び比較例1~2)
実施例1,2,8~10及び比較例2では合成樹脂X1を用いた。実施例3~7では合成樹脂X2~X6をそれぞれ用いた。実施例11~13では、合成樹脂X7~9をそれぞれ用いた。
【0157】
細胞培養用容器の作製;
実施例1~7,13では、ブタノールに対して各合成樹脂を5wt%の濃度で溶解させた。得られた溶液を、ディスペンサーを用いて直径35mmのポリスチレンディッシュにドット状またはライン状にパターニングした後、45℃のオーブン内で6時間乾燥して、複数の凸部を有する細胞培養用足場材により底部が構成されている細胞培養用容器を作製した。なお、
図4に示すように、実施例1で作製した細胞培養用足場材では、ドット状のパターンを作製した。実施例3~7においても同様にドット状のパターンを作製した。また、
図5に示すように、実施例2で作製した細胞培養用足場材では、ライン状のパターンとして渦巻き状のパターンを作製した。
【0158】
実施例8~12では、ブタノールに各合成樹脂を0.5wt%の濃度で溶解させた。得られた溶液を、ディスペンサーを用いて直径35mmのポリスチレンディッシュにドット状にパターニングした後、常温で30分間静置し、45℃のオーブン内で6時間乾燥して、複数の凸部を有する細胞培養用足場材により底部が構成されている細胞培養用容器を作製した。なお、実施例8~12では、周縁部に壁部を有する凸部が得られた。
【0159】
比較例1では、ポリスチレンディッシュ自体を細胞培養用容器として用いた。
【0160】
比較例2では、ブタノールに合成樹脂X1を5wt%の濃度で溶解させた。得られた40μLをポリスチレンディッシュにキャスト後、45℃のオーブン内で6時間乾燥して平面な膜を形成させた。
【0161】
(評価)
(1)パターン形状;
ハイブリッドレーザーマイクロスコープOPTELICS HYBRID(レーザーテック社製、凸部の平均高さ測定時の対物レンズ:CFI T Plan EPI SLWD 20x、測定モード:表面形状、分解能:0.45μm)を用いた画像観察を行い、以下を測定した。
【0162】
ドット状である場合は凸部の平均底面積
ライン状である場合は凸部の平均線幅
平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さ
壁部の平均高さ
【0163】
なお、凸部の平均底面積は、任意の10個の凸部の底面積の平均値である。凸部の平均線幅は、互いに10μm以上離れた任意の10箇所の線幅の平均値である。平面視において凸部の中央に位置する部分の凸部の平均高さは、該凸部がドット状である場合に、平面視において任意の10個の凸部の中央の位置での凸部の高さの平均値であり、該凸部がライン状である場合に、互いに10μm以上離れた10箇所の線幅の中央の位置での凸部の高さの平均値である。壁部の平均高さは、任意の10個の凸部の壁部の高さの平均値である。
【0164】
(2)タンパク吸着量の比;
各細胞培養用容器に対し、FITC標識されたウシ血清アルブミン(コスモ・バイオ社製)0.1mg/mLを40μLキャストし37℃で1時間静置した後、ポリスチレンディッシュを純水で洗浄し、45℃のオーブン内で1時間乾燥した。また、吸着タンパク量の検量用にポリスチレンディッシュにそれぞれ0.005mg/mL、0.02mg/mL、0.05mg/mLのFITC標識されたウシ血清アルブミンを1μLディスペンスし、45℃のオーブン内で1時間乾燥した。各細胞培養用容器を蛍光顕微鏡を用いて撮影し、上記凸部と凸部が設けられていない部分の蛍光強度を求めた。検量線用のポリスチレンディッシュを用いて得られた蛍光強度の直線近似値からタンパク吸着量に換算した。得られた凸部のタンパク吸着量と、凸部が設けられていない部分のタンパク吸着量とから、凸部のタンパク吸着量の、凸部が設けられていない部分のタンパク吸着量に対する比(凸部/凸部が設けられていない部分)を算出した。
【0165】
凸部の水膨潤率;
各細胞培養用容器を25℃の水に24時間浸漬した。浸漬後の細胞培養用容器の開口部を下にして細胞培養用容器をキムタオル上に10分間静置し、細胞培養用容器に付着している水を除去した。次に、浸漬前の細胞培養用容器の重さからポリスチレンディッシュの重さを差し引いて、浸漬前のサンプルの重量とした。浸漬後の細胞培養用容器の重さからポリスチレンディッシュの重さを差し引いて、浸漬後のサンプルの重量とした。浸漬前のサンプルの重量と浸漬後のサンプルの重量とから、水膨潤率=(浸漬後のサンプル重量-浸漬前のサンプル重量)/(浸漬前のサンプル重量)×100(%)を算出した。なお、ポリスチレンディッシュ自体は、浸漬前後で重量は変化しない。
【0166】
(3)平面視において凸部の中央の位置での凸部の弾性率;
ナノインデンター(Hysitron,Triboindenter、ブルカー社製)を用いて各細胞培養用足場材の凸部の上面の中央の位置での25℃における表面弾性率を求めた。圧子は、先端径R数100nmのBerkovich(三角錐型)圧子を用い、大気下、25℃にて単一押し込み測定をした。その押し込み深さは50nmとした。なお、比較例2については、平面な膜の表面弾性率を測定した。
【0167】
(4)細胞の播種及び培養;
以下の液体培地及びROCK(Rho結合キナーゼ)特異的阻害剤を用意した。
【0168】
TeSR E8培地(STEM CELL社製)
ROCK-Inhibitor(Y27632)
【0169】
得られた細胞培養用容器にリン酸緩衝生理食塩水1mLを加えて37℃のインキュベーター内で1時間静置後、細胞培養用容器からリン酸緩衝生理食塩水を除去した。
【0170】
φ35mmのディッシュにコンフルエント状態になったh-iPS細胞253G1のコロニーを配置し、0.5mMエチレンジアミン/リン酸緩衝溶液1mLを加え、室温で2分静置した。エチレンジアミン/リン酸緩衝溶液を除去した後、TeSR E8培地1mLでピペッティングすることにより50μm~200μmの大きさに砕かれた細胞塊を得た。得られた細胞塊(細胞数0.2×105cells)を上記の細胞培養用容器にクランプ播種した。
【0171】
播種時は1.5mLの液体培地と、終濃度が10μMとなるようにROCK特異的阻害剤とを細胞培養用容器に添加した、37℃及びCO2濃度5%のインキュベーター内で培養を行った。その後、24時間ごとに細胞培養用容器内の液体を新鮮な液体培地1.5mLと交換する作業を繰り返し5日間培養を行った。その際、足場から遊離、浮遊している細胞はピペッティングにて回収、廃棄した。
【0172】
細胞培養後の細胞培養用容器をハイブリット顕微鏡を用いて観察し、足場材上に形成された細胞塊の均一性を評価した。また、細胞接着性は細胞塊の接着の有無を位相差顕微鏡にて観察評価した。
【0173】
図6は、実施例1で作製した細胞培養用容器に細胞を播種したときの顕微鏡写真を示す図である。また、
図7は、実施例1で作製した細胞培養用容器で細胞を5日間培養した後の顕微鏡写真を示す図である。
【0174】
図7から明らかなように、実施例1では、足場のパターンに応じた細胞塊を容易にかつ効率よく形成できていることがわかる。同様にして、実施例2~13についても観察を行い、足場のパターンに応じた細胞塊を容易にかつ効率よく形成できていることが確認できた。
【0175】
また、実施例1~13及び比較例1~2について観察を行い、以下の評価基準により評価した。
【0176】
[評価基準]
(細胞塊の均一性)
5日間培養後に位相差顕微鏡を用いてウェル内の細胞を観察し、任意の細胞塊10個を選択した。顕微鏡で平面視したときの細胞塊の面積(平面積)を算出し、細胞塊の平面積の分散度を下記式(A)により算出した。
【0177】
【0178】
D:細胞塊の平面積の分散度
n:データの個数
Xi:細胞塊の平面積
X:細胞塊の平面積の平均値
【0179】
[細胞塊の均一性の判定基準]
A…分散度が0.001未満
B…分散度が0.001以上、0.002未満
C…分散度が0.002以上、0.003未満
D…分散度が0.003以上
【0180】
(細胞塊の接着性)
5日間培養後に位相差顕微鏡を用いてウェル内の細胞塊を観察し、以下の基準で形成された細胞塊の接着性を評価した。
【0181】
[細胞塊の接着性の判定基準]
A…全ての細胞塊が接着している
B…一部の細胞塊が剥離している
C…全ての細胞塊が剥離している
【0182】
結果を下記の表1,2に示す。
【0183】
【0184】
【符号の説明】
【0185】
1…細胞培養用足場材
2,2A…基材
3,3A…凸部
4…凸部が設けられていない部分
11…細胞培養用容器
12…容器本体
12a…表面
31A…壁部
Ha…平面視において凸部の中央の位置での凸部の高さ
Hb…壁部の高さ
Tb…壁部の厚み
【配列表】