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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】検出器モジュール及び放射線検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241001BHJP
【FI】
G01T7/00 A
A61B6/42 530R
A61B6/42 530W
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021000580
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2022105936
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高安 正郎
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-254816(JP,A)
【文献】特開2012-047550(JP,A)
【文献】特開2009-028373(JP,A)
【文献】米国特許第10353084(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
A61B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検出器モジュールによって構成される放射線検出器に備えられる検出器モジュールであって、
放射線を検出する複数の検出素子を有
検出器モジュールごとに独立した冷却回路として、内部に冷媒を備える流路と、前記流路内で前記冷媒を循環させる循環部とを備える
出器モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の検出器モジュールを複数備え、
前記複数の検出器モジュール間で前記流路を接続するバイパス流路をさらに備える、
放射線検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の検出器モジュールを複数備え、
前記複数の検出器モジュールそれぞれにおける発熱量を取得する取得部と、
前記発熱量に基づいて、各検出器モジュールの循環部に対する制御量を制御する制御部と
をさらに備える、放射線検出器。
【請求項4】
放射線を検出する複数の検出素子を有する検出器モジュールであって、内部に冷媒を備える流路と、前記流路内で前記冷媒を循環させる循環部とを有する検出器モジュールを複数備え、
前記複数の検出器モジュール間で前記流路を接続するバイパス流路をさらに備える、
放射線検出器。
【請求項5】
放射線を検出する複数の検出素子を有する検出器モジュールであって、内部に冷媒を備える流路と、前記流路内で前記冷媒を循環させる循環部とを有する検出器モジュールを複数備え、
前記複数の検出器モジュールそれぞれにおける発熱量を取得する取得部と、
前記発熱量に基づいて、各検出器モジュールの循環部に対する制御量を制御する制御部と
をさらに備える、放射線検出器。
【請求項6】
前記制御部は、前記複数の検出器モジュール間の温度分布が均一に近付くように、各検出器モジュールの循環部に対する制御量を制御する、
請求項3又は5に記載の放射線検出器。
【請求項7】
前記制御部は、各検出器モジュールの循環部に対する制御量を制御することで、前記検出器モジュールごとに前記冷媒の流量を変化させる、
請求項3、5又はに記載の放射線検出器。
【請求項8】
前記複数の検出器モジュールそれぞれにおける発熱量を取得する取得部と、
前記発熱量に基づいて、前記バイパス流路の接続先を制御する制御部と
をさらに備える、請求項2又は4に記載の放射線検出器。
【請求項9】
前記制御部は、前記複数の検出器モジュール間の温度分布が均一に近付くように、前記バイパス流路の接続先を制御する、
請求項に記載の放射線検出器。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の検出器モジュールの中で最も発熱量が大きい検出器モジュールと最も発熱量が小さい検出器モジュールとの間で前記流路を接続するように、前記バイパス流路の接続先を制御する、
請求項又はに記載の放射線検出器。
【請求項11】
前記取得部は、実測された温度又はカウントレートに基づいて、前記発熱量を取得する、
請求項3、510のいずれか一つに記載の放射線検出器。
【請求項12】
前記取得部は、スキャン条件に基づいて予測された温度又はカウントレートに基づいて、前記発熱量を取得する、
請求項3、510のいずれか一つに記載の放射線検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、検出器モジュール及び放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置やPET(Positron Emission Tomography)装置等の放射線診断装置で用いられる放射線検出器として、複数の検出器モジュールを配列することによって構成された放射線検出器が知られている。このような放射線検出器では、放射線が照射された際に各検出器モジュールに含まれる検出素子や回路基板等が発熱するため、一般的に、検出器モジュールの発熱による撮影画像の画質低下や故障を防ぐ目的で、検出器モジュールの冷却が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-130961号公報
【文献】特開2009-254816号公報
【文献】特開2019-18021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、検出器モジュールの冷却をモジュールごとに制御することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る検出器モジュールは、放射線を検出する複数の検出素子を有する検出器モジュールであって、流路と、循環部とを備える。流路は、内部に冷媒を備える。循環部は、前記流路内で前記冷媒を循環させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線検出器の構成例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係る検出器モジュールの構成例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る処理回路によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施形態に係るバイパス流路及び制御機能による冷却制御の一例を示す図である。
図6図6は、第2の実施形態に係るバイパス流路及び制御機能による冷却制御の他の例を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る処理回路によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本願が開示する検出器モジュール及び放射線検出器の実施形態について説明する。ここで、各図面に示される構成は模式的なものであり、図示されている各構成要素の寸法や構成要素間の寸法の比率は実物と異なる場合がある。また、図面相互の間でも、同じ構成要素の寸法や構成要素間の寸法の比率が異なって示されている場合がある。
【0008】
なお、以下に示す実施形態では、本願が開示する検出器モジュール及び放射線検出器の構成をX線検出器及びX線CT装置に適用した場合の例を説明する。
【0009】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。なお、図1では説明の便宜上、架台装置10を複数示している。
【0011】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0012】
架台装置10は、被検体P(患者等)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール装置40に出力する装置である。架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、制御装置15と、ウェッジ16と、X線絞り17と、X線高電圧装置14とを有する。
【0013】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0014】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0015】
X線絞り17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等を含み、複数の鉛板等を組み合わせることによってスリットを形成している。
【0016】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出する。具体的には、X線検出器12は、X線管11の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。例えば、X線検出器12は、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0017】
例えば、X線検出器12は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0018】
また、X線検出器12は、各検出素子から出力される電気信号を処理するDAS(Data Acquisition System)基板を有する。DAS基板は、X線検出器12の各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換機とを有し、検出データを生成する。DAS基板が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0019】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線出力に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、後述する回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10において回転フレーム13を回転可能に支持する支持フレーム(図示は省略)に設けられてもよい。
【0020】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14を更に備えて支持する。
【0021】
ここで、回転フレーム13は、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム。図1での図示は省略している)により回転可能に支持される。回転機構は、例えば、回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは、例えば、当該非回転部分に設けられ、ベアリングは、回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレーム13が回転する。
【0022】
また、回転フレーム13及び非回転部分にはそれぞれ、非接触方式又は接触方式の通信回路が設けられ、これにより回転フレーム13に支持されるユニットと当該非回転部分或いは架台装置10の外部装置との通信が行われる。例えば、非接触の通信方式として光通信を採用する場合、DAS基板が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、さらに送信機により当該非回転部からコンソール装置40へ転送される。なお、通信方式としては、この他に容量結合式や電波方式等の非接触型のデータ伝送方式の他、スリップリングと電極ブラシを使った接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0023】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0024】
寝台装置30は、スキャン対象である被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0025】
コンソール装置40は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された検出データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、ここでは、コンソール装置40と架台装置10とが別体である場合の例を説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の構成要素の一部が含まれてもよい。
【0026】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。
【0027】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、例えば、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、例えば、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0028】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際のスキャン条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。なお、例えば、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、例えば、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0029】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、及び画像処理機能444を実行する。
【0030】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能441は、X線CT装置1において実行されるCTスキャンを制御する。また、システム制御機能441は、前処理機能442、再構成処理機能443、及び画像処理機能444を制御することで、コンソール装置40におけるCT画像データの生成や表示を制御する。
【0031】
前処理機能442は、X線検出器12のDASから出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施した投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0032】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データ(再構成画像データ)を生成する。
【0033】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。なお、3次元画像データの生成は再構成処理機能443が直接行っても構わない。
【0034】
ここで、例えば、処理回路44は、プロセッサにより実現される。この場合に、処理回路44が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41に記憶される。そして、処理回路44は、メモリ41から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、図1の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0035】
なお、ここでは、単一の処理回路44によって、上述した各処理機能が実現されるものとして説明したが、例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路44を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路44が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、複数の記憶回路が分散して配置され、処理回路44が、個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0036】
以上、本実施形態に係るX線CT装置1の全体的な構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態では、X線検出器12が、複数の検出素子を有する検出器モジュールを複数配列することによって構成されている。
【0037】
図2は、第1の実施形態に係るX線検出器12の構成例を示す図である。
【0038】
例えば、図2に示すように、X線検出器12は、全体として略円弧状に形成されており、円弧の中心がX線管11の位置と一致するように位置合わせされて、回転フレーム13に固定される。ここで、X線検出器12の円弧の周方向はチャネル方向に一致し軸方向は列方向に一致し、径方向はX線の照射方向に一致する。
【0039】
そして、X線検出器12は、複数の検出器モジュール121と、処理回路122とを備える。
【0040】
複数の検出器モジュール121は、チャネル方向に配列され、それぞれがX線を検出する複数の検出素子を有する。例えば、検出器モジュール121は、チャネル方向に配列された状態で、X線検出器12に含まれる支持部材に固定される。
【0041】
処理回路122は、各検出器モジュール121から出力される検出データをコンソール装置40へ転送する。例えば、処理回路122は、X線検出器12に含まれる制御基板に実装される。
【0042】
ここで、このような複数の検出器モジュールを配列したX線検出器では、X線が照射された際に各検出器モジュールに含まれる検出素子や回路基板等が発熱することが知られている。そのため、一般的に、X線検出器では、検出器モジュールの発熱による撮影画像の画質低下や故障を防ぐ目的で、検出器モジュールの冷却が行われる。
【0043】
例えば、このような冷却の方法として、各検出器モジュールの回路基板を空冷によって冷却したり、回転フレームに設けられたチラー等の冷却ユニットを用いて液冷によって冷却したりすることで、複数の検出器モジュールを全体的に冷却する方法がある。
【0044】
しかしながら、通常、複数の検出器モジュールを配列したX線検出器では、天板上で被検体が配置される位置やスキャン条件等によって各検出器モジュールに入射するX線の線量が異なるため、検出器モジュールごとに発熱量が変化する。そのため、上述したように複数の検出器モジュールを全体的に冷却する方法では、一部の検出器モジュールが冷却不足となる場合があり、その結果、撮影画像の画質低下や検出器モジュールの故障が生じることがあり得る。また、複数の検出器モジュールを全体的に冷却する方法では、冷却のためのシステムが大規模かつ高額となることもあり得る。
【0045】
このようなことから、本実施形態では、X線検出器12が、検出器モジュール121の冷却をモジュールごとに制御することができるように構成されている。
【0046】
具体的には、本実施形態では、X線検出器12に含まれる各検出器モジュール121が、内部に冷媒を備える流路と、当該流路内で冷媒を循環させるマイクロポンプとを備える。ここで、マイクロポンプは、循環部の一例である。
【0047】
図3は、本実施形態に係る検出器モジュール121の構成例を示す図である。
【0048】
例えば、図3に示すように、検出器モジュール121は、検出部1211と、DAS基板1212と、支持機構部1213と、基板カバー1214と、流路1215と、マイクロポンプ1216とを備える。
【0049】
検出部1211は、X線を検出する複数の検出素子を有し、各検出素子から出力される電気信号をDAS基板1212に出力する。例えば、検出部1211は、チャネル方向及び列方向に沿って二次元に配列された複数の検出素子と、各検出素子から出力される電気信号を処理するASICとを含む。
【0050】
DAS基板1212は、検出部1211から出力される電気信号に基づいて、検出データを生成して出力する。例えば、DAS基板1212は、検出部1211から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、当該増幅器によって増幅された電気信号をデジタル信号に変換して検出データを生成するA/D変換器とを含む。
【0051】
支持機構部1213は、検出部1211、DAS基板1212、マイクロポンプ1216及び基板カバー1214を支持する。例えば、支持機構部1213は、X線の照射方向に伸びる略直方体形状に形成され、X線入射側の面で検出部1211を支持し、チャンネル方向における一方の面でDAS基板1212を支持する。
【0052】
基板カバー1214は、DAS基板1212を保護する。例えば、基板カバー1214は、X線の照射方向に沿ってDAS基板1212を覆うように配置され、X線の照射方向における一方の端部が支持機構部1213に固定される。
【0053】
流路1215は、支持機構部1213の内部に形成されており、内部に冷却水等の冷媒を備える。例えば、流路1215は、支持機構部1213の内部で冷媒が連続して回流できるように、支持機構部1213の内部を周回するように形成される。
【0054】
マイクロポンプ1216は、流路1215内で冷媒を循環させる。例えば、マイクロポンプ1216は、DAS基板1212に実装され、DAS基板1212からの給電によって動作する。
【0055】
また、本実施形態では、処理回路122が、取得機能1221と、制御機能1222とを有する。ここで、取得機能1221は、取得部の一例である。また、制御機能1222は、制御部の一例である。
【0056】
取得機能1221は、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する。
【0057】
例えば、取得機能1221は、実測された温度又はカウントレート(入射光子数)に基づいて、複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する。
【0058】
例えば、取得機能1221は、本スキャンが行われる前に、又は、本スキャンが行われる前に被検体Pが天板33に載置された状態でX線を照射することによって、検出器モジュール121ごとに温度又はカウントレートを実測する。そして、取得機能1221は、検出器モジュール121ごとに、実測された温度又はカウントレートから発熱量を導出することで、発熱量を取得する。
【0059】
このとき、例えば、取得機能1221は、各検出器モジュール121に個別に取り付けられた温度センサを用いて、検出器モジュール121ごとに温度を実測する。または、例えば、取得機能1221は、X線が照射された際に各検出器モジュール121から出力される電気信号に基づいて、検出器モジュール121ごとにカウントレートを実測する。
【0060】
また、例えば、取得機能1221は、スキャン条件に基づいて予測された温度又はカウントレートに基づいて、複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得してもよい。ここで、例えば、スキャン条件は、管電圧、管電流、スキャン部位、被検体Pの体厚等を含む。
【0061】
例えば、取得機能1221は、本スキャンが行われる前に、本スキャン用に設定されたスキャン条件に基づいて、本スキャンを実行した場合の各検出器モジュール121の温度又はカウントレートを予測する。そして、取得機能1221は、検出器モジュール121ごとに、予測された温度又はカウントレートから発熱量を導出することで、発熱量を取得する。
【0062】
このとき、例えば、取得機能1221は、本スキャン用のスキャン条件が設定された後に、予めメモリ等に記憶された、スキャン条件と、当該スキャン条件でスキャンを実行した場合の各検出器モジュール121の温度との対応関係を示す情報を参照して、本スキャン用のスキャン条件に対応する温度を取得することで、検出器モジュール121ごとに温度を予測する。または、取得機能1221は、予め定義された、スキャン条件と、当該スキャン条件でスキャンを実行した場合の各検出器モジュール121の温度との関係を表す関係式に従って、本スキャン用のスキャン条件から温度を導出することで、検出器モジュール121ごとに温度を予測してもよい。
【0063】
または、例えば、取得機能1221は、本スキャン用のスキャン条件が設定された後に、予めメモリ等に記憶された、スキャン条件と、当該スキャン条件でスキャンを実行した場合の各検出器モジュール121のカウントレートとの対応関係を示す情報を参照して、本スキャン用のスキャン条件に対応するカウントレートを取得することで、検出器モジュール121ごとにカウントレートを予測する。または、取得機能1221は、予め定義された、スキャン条件と、当該スキャン条件でスキャンを実行した場合の各検出器モジュール121のカウントレートとの関係を表す関係式に従って、本スキャン用のスキャン条件からカウントレートを導出することで、検出器モジュール121ごとにカウントレートを予測してもよい。
【0064】
制御機能1222は、取得機能1221によって取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、各検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御する。
【0065】
具体的には、制御機能1222は、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121間の温度分布が均一に近付くように、各検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御する。
【0066】
例えば、制御機能1222は、検出器モジュール121ごとに、取得機能1221によって取得された発熱量を予め設定された上限値と比較する。そして、制御機能1222は、発熱量が上限値を超えた検出器モジュール121があった場合に、当該検出器モジュール121に対する冷却が強められるように、当該検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御する。
【0067】
このとき、例えば、制御機能1222は、各検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御することで、検出器モジュール121ごとに冷媒の流量を変化させる。または、制御機能1222は、検出器モジュール121ごとに冷媒の温度や流速を変化させてもよい。
【0068】
このような構成によれば、例えば、本スキャンが行われている間に取得機能1221によって各検出器モジュール121における発熱量が取得される場合には、制御機能1222によって、フィードバック方式で各検出器モジュール121に対する冷却が行われるようになる。なお、このとき、取得機能1221によって、実測されたカウントレートが用いられる場合には、カウントレートが変化してから検出器モジュール121の温度が変化するまでの間にタイムラグがあるため、実測された温度が用いられる場合と比べて、早めに冷却が制御されることになる。一方、例えば、本スキャンが行われる前に取得機能1221によって各検出器モジュール121における発熱量が取得される場合には、制御機能1222によって、フィードフォワード方式で各検出器モジュール121に対する冷却が行われるようになる。
【0069】
ここで、上述した処理回路122は、例えば、プロセッサにより実現される。この場合に、処理回路122が有する取得機能1221及び制御機能1222は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で、X線検出器12に実装されたメモリに記憶される。そして、処理回路122は、メモリから各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、図2の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0070】
図4は、第1の実施形態に係る処理回路122によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0071】
例えば、図4に示すように、処理回路122は、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する(ステップS11)。このステップは、取得機能1221に対応するステップである。例えば、処理回路122は、取得機能1221に対応するプログラムをメモリから読み出して実行することで、このステップを実行する。
【0072】
続いて、処理回路122は、取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、各検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御する(ステップS12)。このステップは、制御機能1222に対応するステップである。例えば、処理回路122は、制御機能1222に対応するプログラムをメモリから読み出して実行することで、このステップを実行する。
【0073】
上述したように、第1の実施形態では、X線検出器12に含まれる各検出器モジュール121が、内部に冷媒を備える流路1215と、当該流路1215内で冷媒を循環させるマイクロポンプ1216とを備える。
【0074】
この構成によれば、検出器モジュール121ごとに独立した冷却回路が設けられることになり、検出器モジュール121の冷却をモジュールごとに制御することができるようになる。
【0075】
また、第1の実施形態では、処理回路122が有する取得機能1221が、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する。そして、処理回路122が有する制御機能1222が、取得機能1221によって取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、各検出器モジュール121のマイクロポンプ1216に対する制御量を制御する。
【0076】
この構成によれば、各検出器モジュール121に対する冷却を適宜に制御することで、複数の検出器モジュール121間の温度分布を最適化することができるようになる。
【0077】
したがって、第1の実施形態によれば、一部の検出器モジュール121が冷却不足となることによって生じる撮影画像の画質低下や検出器モジュール121の故障を防ぐことができる。また、検出器モジュール121の冷却のための大規模なシステムを設けることが不要になり、X線検出器12のコストを低減することができる。
【0078】
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、各検出器モジュール121内で冷媒を循環させる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、検出器モジュール121間でも冷媒を流通させることで、各検出器モジュール121をより効率よく冷却できるようにしてもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については詳細な説明を省略する。
【0079】
本実施形態では、X線検出器12は、複数の検出器モジュール121間で流路1215を接続するバイパス流路をさらに備える。
【0080】
また、取得機能1221は、第1の実施形態と同様に、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する。
【0081】
また、制御機能1222は、取得機能1221によって取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、バイパス流路の接続先を制御する。
【0082】
具体的には、制御機能1222は、複数の検出器モジュール121間の温度分布が均一に近付くように、バイパス流路の接続先を制御する。
【0083】
例えば、制御機能1222は、複数の検出器モジュール121の中で最も発熱量が大きい検出器モジュール121と最も発熱量が小さい検出器モジュール121との間で流路1215を接続するように、バイパス流路の接続先を制御する。
【0084】
図5は、第2の実施形態に係るバイパス流路及び制御機能1222による冷却制御の一例を示す図である。
【0085】
例えば、図5に示すように、予め決められた検出器モジュール121の組ごとに、各検出器モジュール121の流路1215を接続する固定のバイパス流路123が設けられる。この場合、例えば、制御機能1222は、バイパス流路123で接続された検出器モジュール121の組ごとに、各検出器モジュール121の発熱量を上限値と比較する。そして、制御機能1222は、バイパス流路123で接続された検出器モジュール121の組のうち、一方の検出器モジュール121の発熱量が上限値を超えた場合に、当該検出器モジュール121の流路1215と、他方の検出器モジュール121の流路1215とを接続するようにバイパス流路の接続先を制御する。
【0086】
この場合に、例えば、バイパス流路123によって接続される検出器モジュール121の組は、各検出器モジュール121の温度上昇の傾向に応じて予め固定で設定される。
【0087】
または、例えば、制御機能1222が、本スキャン用のスキャン条件に応じて、バイパス流路123によって接続される検出器モジュール121の組み合わせを動的に設定してもよい。例えば、スキャン部位が心臓である場合、心臓がFOV(Field Of View)の中心付近に配置されるため、X線検出器12に対して、チャネル方向のいずれか一方に被検体Pが偏って配置されることになる。そこで、例えば、スキャン部位が心臓である場合には、制御機能1222は、X線検出器12においてチャネル方向の一方側に配置されている検出器モジュール121と他方側に配置されている検出器モジュール121とを接続するように、バイパス流路123を設定する。一方、X線検出器12に対してチャネル方向の中央付近に被検体Pを配置してスキャンが行われるスキャン部位の場合には、制御機能1222は、X線検出器12においてチャネル方向の中央付近に配置されている検出器モジュール121と外側に配置されている検出器モジュール121とを接続するように、バイパス流路123を設定する。
【0088】
または、例えば、制御機能1222は、被検体Pが天板33に載置された後に、X線CT装置1又は撮影室内に設置されたカメラやX線CT装置1によって撮影された被検体Pの画像を取得し、取得した画像に基づいてバイパス流路123を設定してもよい。例えば、制御機能1222は、被検体Pの画像を用いて、X線検出器12に対する被検体Pのチャネル方向の位置を特定し、被検体Pと重なる位置に配置されている検出器モジュール121と、被検対Pと重ならない位置に配置されている検出器モジュール121とを接続するように、バイパス流路123を設定する。
【0089】
図6は、第2の実施形態に係るバイパス流路及び制御機能1222による冷却制御の他の例を示す図である。
【0090】
または、例えば、図6に示すように、X線検出器12に含まれる全ての検出器モジュール121に対して、任意の組み合わせで検出器モジュール121の流路1215を接続できるように可変のバイパス流路123が設けられる。この場合、例えば、制御機能1222は、X線検出器12に含まれる全ての検出器モジュール121について、検出器モジュール121ごとに発熱量を上限値と比較する。そして、制御機能1222は、発熱量が上限値を超えた検出器モジュール121があった場合に、当該検出器モジュール121の流路1215と、その時点で発熱量が最も小さい検出器モジュール121の流路1215とを接続するように、バイパス流路の接続先を制御する。
【0091】
ここで、第1の実施形態と同様に、処理回路122は、例えば、プロセッサにより実現される。この場合に、処理回路122が有する取得機能1221及び制御機能1222は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で、X線検出器12に実装されたメモリに記憶される。そして、処理回路122は、メモリから各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、図2の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0092】
図7は、第2の実施形態に係る処理回路122によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0093】
例えば、図7に示すように、処理回路122は、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する(ステップS21)。このステップは、取得機能1221に対応するステップである。例えば、処理回路122は、取得機能1221に対応するプログラムをメモリから読み出して実行することで、このステップを実行する。
【0094】
続いて、処理回路122は、取得機能1221によって取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、バイパス流路123の接続先を制御する(ステップS22)。このステップは、制御機能1222に対応するステップである。例えば、処理回路122は、制御機能1222に対応するプログラムをメモリから読み出して実行することで、このステップを実行する。
【0095】
上述したように、第2の実施形態では、X線検出器12が、複数の検出器モジュール121間で流路1215を接続するバイパス流路をさらに備える。
【0096】
この構成によれば、第1の実施形態と同様に、検出器モジュール121の冷却をモジュールごとに制御することができるとともに、検出器モジュール121間でも冷媒を流通させることで、各検出器モジュール121をより効率よく冷却することができる。
【0097】
また、第2の実施形態では、処理回路122の取得機能1221が、X線検出器12に含まれる複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量を取得する。そして、処理回路122の制御機能1222が、取得機能1221によって取得された複数の検出器モジュール121それぞれにおける発熱量に基づいて、バイパス流路123の接続先を制御する。
【0098】
この構成によれば、各検出器モジュール121の発熱の状態に応じて、適宜にバイパス流路123の接続先を制御することで、高温となっている検出器モジュール121の放熱面積を拡大させることができる。これにより、各検出器モジュール121の温度上昇を抑制、又は、高温となった検出器モジュール121の冷却を加速させることができる。
【0099】
なお、制御機能1222は、第1の実施形態で説明した冷却制御に加えて、第2の実施形態で説明した冷却制御を行ってもよい。その場合、第1の実施形態で用いられる発熱量の上限値と、第2の実施形態で用いられる発熱量の上限値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。例えば、上限値を同じ値とした場合は、第1の実施形態で説明した冷却制御と第2の実施形態で説明した冷却制御とが同時に開始されることになる。一方、上限値を異なる値とした場合は、第1の実施形態及び第2の実施形態のうちの一方の冷却方法で冷却が不足する場合に、他方の冷却方法が実行されることになる。
【0100】
また、上述した各実施形態では、本願が開示する検出器モジュール及び放射線検出器の構成をX線検出器及びX線CT装置に適用した場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本願が開示する検出器モジュール及び放射線検出器の構成は、γ線検出器及びPET装置等のように、他の放射線検出器及び放射線診断装置にも同様に適用することが可能である。
【0101】
また、上述した各実施形態では、本明細書における取得部及び制御部を処理回路122の取得機能1221及び制御機能1222によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における取得部及び制御部は、実施形態で述べた取得機能1221及び制御機能1222によって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0102】
なお、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0103】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0104】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0105】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、検出器モジュールの冷却をモジュールごとに制御することができる。
【0106】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
1 X線CT装置
12 X線検出器
121 検出器モジュール
1215 流路
1216 マイクロポンプ
122 処理回路
1221 取得機能
1222 制御機能
123 バイパス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7