(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】架構形状推定装置、及び架構形状推定方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20241001BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20241001BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20241001BHJP
G06F 30/27 20200101ALI20241001BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241001BHJP
【FI】
G06F30/13
E04B1/18 G ESW
G06F30/10 100
G06F30/27
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021002336
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰志
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179347(JP,A)
【文献】特開2020-187541(JP,A)
【文献】特開2005-173706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0161300(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 - 30/28
E04B 1/18
G06N 20/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す接合情報に基づいて前記建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルであって、前記接合情報と前記建物の架構形状とが対応付けられた組データを複数有する学習データを学習させることによって構築された架構形状推定モデルを示すモデル情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記架構形状推定モデルに、推定対象の対象建物における前記接合情報を入力することによって得られる出力結果に基づいて、前記対象建物の架構形状を推定する架構形状推定部と、
を備えることを特徴とする架構形状推定装置。
【請求項2】
前記接合情報は、前記接合部において建物の水平面と直交する第1方向に柱が接続されているか否かを示す二値の第1情報、前記水平面と平行な第2方向に梁が接続されているか否かを示す二値の第2情報、及び前記水平面と平行かつ前記第1方向と直交する第3方向に梁が接続されているか否かを示す二値の第3情報の各々を含む、
請求項1に記載の架構形状推定装置。
【請求項3】
前記接合情報は、前記第1情報を表す二進数、前記第2情報を表す二進数、及び前記第3情報を表す二進数を並べた数列を三桁の二進数とし、当該三桁の二進数を十進数に変換した数値である、
請求項2に記載の架構形状推定装置。
【請求項4】
前記架構形状推定モデルは、入力された前記接合情報に基づいて、前記組データに用いられた前記架構形状における複数の種別のそれぞれに類似する度合を類似度合として出力し、
前記架構形状推定部は、前記架構形状推定モデルから出力された前記類似度合を取得し、取得した前記類似度合のうち、前記類似度合が最も大きい前記架構形状における種別に属する前記架構形状を、前記対象建物の架構形状として推定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の架構形状推定装置。
【請求項5】
前記対象建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す情報を取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した、前記対象建物の接合部における結合の状態に基づいて、前記対象建物における前記接合情報を生成する接合情報生成部と、
前記架構形状推定部が推定した前記建物の架構形状を示す出力情報を出力部に出力する出力制御部と、
を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の架構形状推定装置。
【請求項6】
前記学習データに基づいて、前記架構形状推定モデルを構築するモデル構築部を更に備える、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の架構形状推定装置。
【請求項7】
建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す接合情報に基づいて前記建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルであって、前記接合情報と前記建物の架構形状とを少なくとも含む組データを複数有する学習データに基づいて構築された架構形状推定モデルを示すモデル情報を記憶する記憶部を備える架構形状推定装置の架構形状推定方法であって、
前記記憶部に記憶された前記架構形状推定モデルと、推定対象の対象建物における前記接合情報とから前記対象建物の架構形状を推定する推定ステップを含むことを特徴とする架構形状推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架構形状推定装置、及び架構形状推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の構造設計において、建物における架構形状が似ている既存の建物の設計データを参考にして工学的判断を盛り込みながら、建物の断面設定や概略歩掛り等を決定する場合があった。建物設計を支援する技術としては、特許文献1に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、架構形状が似ているか否かの類似判定においては、例えば、部材データ等を基に作成した建物の三次元図面を、既存の建物の三次元図面と見比べて、視覚的に似ているか否かを判断することにより行われていた。このため、類似判定を行うために計画中の建物の三次元図面を作成する必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、建物の三次元図面を作成することなく、建物における架構形状が似ているか否かを判定することができる架構形状推定装置、及び架構形状推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す接合情報に基づいて前記建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルであって、前記接合情報と前記建物の架構形状とが対応付けられた組データを複数有する学習データに基づいて構築された架構形状推定モデルを示すモデル情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記架構形状推定モデルに、推定対象の対象建物における前記接合情報を入力することによって得られる出力結果に基づいて、前記対象建物の架構形状を推定する架構形状推定部と、を備えることを特徴とする架構形状推定装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す接合情報に基づいて前記建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルであって、前記接合情報と前記建物の架構形状とを少なくとも含む組データを複数有する学習データに基づいて構築された架構形状推定モデルを示すモデル情報を記憶する記憶部を備える架構形状推定装置の架構形状推定方法であって、前記記憶部に記憶された前記架構形状推定モデルに、推定対象の対象建物における前記接合情報を入力することによって得られる出力結果に基づいて、前記対象建物の架構形状を推定する推定ステップを含むことを特徴とする架構形状推定方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、建物の三次元図面を作成することなく、建物における架構形状が似ているか否かを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態による架構形状推定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2A】実施形態における接合情報を説明する図である。
【
図2B】実施形態における接合情報を説明する図である。
【
図2C】実施形態における接合情報を説明する図である。
【
図2D】実施形態における接合情報を説明する図である。
【
図3A】実施形態における建物の接合情報を説明する図である。
【
図3B】実施形態における建物の接合情報を説明する図である。
【
図4】実施形態による学習データを説明する図である。
【
図5】実施形態における接合情報134をNNへの学習データとして応用する例を説明する図である。
【
図6】実施形態における架構形状推定モデルを説明する図である。
【
図7】実施形態における架構形状推定モデルを説明する図である。
【
図8】実施形態における架構形状を推定する処理を説明する図である。
【
図9】実施形態における架構形状を推定する処理を説明する図である。
【
図10】実施形態による架構形状推定装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】実施形態による架構形状推定装置が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による架構形状推定装置、及び架構形状推定方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、実施形態による架構形状推定装置1の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、架構形状推定装置1は、例えば、パーソナルコンピュータやサーバ装置などのコンピュータ装置である。架構形状推定装置1は、建物における骨格の形態、例えば、柱と梁との接合部における接合の状態を入力データとして取得し、当該入力データに対して、最も類似する建物の架構形状を推定して、当該架構形状を出力する。架構形状推定装置1は、例えば、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを備える。
【0012】
入力部11は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置であり、例えば、入力データなどの各種情報を受け付けて、制御部14に出力する。表示部12は、例えば、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、例えば、出力データ(出力情報)である建物の架構形状などの各種情報を表示する。なお、表示部12は、出力情報を出力する出力部の一例である。
【0013】
記憶部13は、架構形状推定装置1が利用する各種情報を記憶する。記憶部13は、学習データ131と、モデル情報132と、入力情報133と、接合情報134と、架構形状種別135とを記憶する。
【0014】
学習データ131は、後述する架構形状推定モデルを構築するための学習データである。学習データ131は、例えば、過去に建設された建物における接合情報134と架構形状種別135とを対応付けた組データを複数有する学習データである。
【0015】
モデル情報132は、建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルを示す情報である。架構形状推定モデルは、建物の接合情報134から、架構形状の種別を推定するモデルである。モデル情報132は、上述した記憶部13に記憶された学習データ131に基づいて、建物の接合情報134と架構形状種別135との関係を学習したモデルである。架構形状推定モデルは、推定対象とする建物の接合情報134から建物における架構形状の種別を推定し、推定した種別を示すラベル(種別情報)を出力する。
【0016】
入力情報133は、架構形状を推定する際に、架構形状推定モデルに入力される情報であり、ここでは、推定対象とする建物における各接合部について、柱及び梁の接合の有無が示された情報である。
【0017】
接合情報134は、建物の接合部における柱や梁の接合の有無を示す情報である。接合情報134の具体的な内容は後で詳しく説明する。
【0018】
架構形状種別135は建物における架構形状の種別を示す情報である。架構形状種別135は、例えば、架構形状のデータベースであり、上述したラベル(種別情報)と架構形状とが対応付けられた情報である。架構形状種別135における架構形状は、例えば、架構形状推定モデルを構築するのに用いた架構形状や、過去に設計した建物の架構形状などである。架構形状種別135は、過去に設計した建物の架構形状が随時追加されるように構成でされてもよい。
【0019】
ここで、接合情報134について、
図2A~
図2Dを用いて説明する。
図2A~
図2Dは、実施形態における接合情報134を説明する図である。
図2A~
図2Dには、建物の接合部における接合の状態と接合情報134との関係が示されている。なお、
図2A~
図2Dにおいて、建物の底面(水平面)に平行な方向を、X方向及びY方向とし、X方向とY方向とは、互いに直交するものとする。また、建物の底面(水平面)に直交する方向を、Z方向とする。なお、ここでの架構形状は、接合部において柱と梁とがXYZ方向のいずれかの方向に接合されているものを対象とする。
【0020】
図2A~
図2Dの例に示すように、例えば、接合情報134は、接合部におけるXYZ方向のいずれかの方向に、柱又は梁が接合されているか否かを示す情報である。この図の例では、接合情報134は、+Z方向に柱又は梁が接合されているか否かを示す二値(第1情報)、+Y方向に柱又は梁が接合されているか否かを示す二値(第2情報)、及び+X方向に柱又は梁が接合されているか否かを示す二値(第3情報)のそれぞれを順に並べた数列を二進数とした場合に当該二進数を十進数に変換した値である。以下の説明では、「柱又は梁が接合されているか否かを示す二値」として、柱又は梁が接合されている場合に「1」、柱及び梁が接合されていない場合に「0(ゼロ)」が設定されるものとする。しかしながらこれに限定されることはない。「柱又は梁が接合されているか否かを示す二値」には、任意に決定された二つ値が設定されてよい。
【0021】
図2Aでは、建物の1階部分などの接合部の例が示されている。この接合部では、+Z方向に柱が接合されており、+Y方向及び+Z方向に梁が接合されていない。この場合、接合情報134における第1情報は「1」、第2情報は「0」、そして第3情報は「0」となる。したがって、接合情報134は、第1情報~第3情報を並べた数列「100」を二進数とした場合に、その二進数「100」を十進数に変換した値、すなわち「4」である。
【0022】
図2Bでは、建物の屋上階部分などの接合部の例が示されている。この接合部では、+Z方向に柱が接合されておらず、+Y方向及び+X方向に梁が接合されている。この場合、接合情報134における第1情報は「0」、第2情報は「1」、そして第3情報は「1」となる。したがって、接合情報134は、第1情報~第3情報を並べた数列「011」を二進数とした場合に、その二進数「011」を十進数に変換した値、すなわち「3」である。
【0023】
図2Cでは、建物の中間階のX方向における外周架構部分などの接合部の例が示されている。この接合部では、+Z方向に柱が接合されており、+Y方向に梁が接合されておらず、+X方向に梁が接合されている。この場合、接合情報134における第1情報は「1」、第2情報は「1」、そして第3情報は「0」となる。したがって、接合情報134は、第1情報~第3情報を並べた数列「110」を二進数とした場合に、その二進数「110」を十進数に変換した値、すなわち「6」である。
【0024】
図2Dでは、建物の中間階のY方向の外周架構部分などの接合部の例が示されている。この接合部では、+Z方向に柱が接合されており、+Y方向に梁が接合されており、+X方向に梁が接合されていない。この場合、接合情報134における第1情報は「1」、第2情報は「0」、そして第3情報は「1」となる。したがって、接合情報134は、第1情報~第3情報を並べた数列「101」を二進数とした場合に、その二進数「101」を十進数に変換した値、すなわち「5」である。
【0025】
図2A~
図2Dで示したように、接合情報134は、建物の接合部における接合の状態を000~111の八つの二進数にて表現した情報であり。ここで、二進数にて表現された値は、十進数にて表現される値と一意に対応付けることができる。このため、接合情報134は、0~7の八つの十進数にて表現することが可能である。本実施形態では、建物における接合部のそれぞれに0~7の八つの十進数のうちのいずれかの数を接合情報134として割当て、その接合部のそれぞれに割当てられた数(接合情報134)の組合せによって建物の架構形状を表現することができる。
【0026】
ここで、建物の接合情報134について、
図3A、
図3Bを用いて説明する。
図3A、
図3Bでは、右側に示される建物に対応する接合情報134が左側に示されている。具体的には、
図3Aには、右側に示される建物G-1における接合情報134-1が左側に示されている。
図3Bには、右側に示される建物G-2における接合情報134-2が左側に示されている。
図3Aでは2階と3階に同数の柱及び梁が設けられた建物G-1の例が示されている。
図3Bでは2階と比較して3階に少ない数の柱及び梁が設けられた建物G-2の例が示されている。
【0027】
図3A、
図3Bに示すように、接合情報134は、1階部分におけるY軸方向に沿った3か所の接合点(接合部の一例)のそれぞれにおける接合情報を行列要素として、12行×3列の行列形式(マトリックス形式)にて示されている。
【0028】
図3Aの例では、接合点G-1A、G-1B、G-1Cのそれぞれにおける接合情報134-1A、134-1B、134-1Cに対応する数列{4、4、4}を要素とする12行×3列の行列形式にて接合情報134-1が示されている。この図の例では、接合点G-1A、G-1B、G-1Cのそれぞれと+Z方向に隣り合う接合点群G-1Dにおける接合情報134-1Dが{6、6、4}であることが示されている。また、接合点群G-1Dと、-(マイナス)X方向に隣り合う接合点群G-1Eにおける接合情報134-1Eが{7、7、5}であることが示されている。また、接合点群G-1Eと+Z方向に隣り合う接合点群G-1Fにおける接合情報134-1Fが{7、7、5}であることが示されている。また、接合点群G-1Fと+Z方向に隣り合う接合点群G-1Hにおける接合情報134-1Hが{3、3、1}であることが示されている。
【0029】
図3Bの例では、なお、
図3Aに存在するが、
図3Bにおいて存在しない接合点については、接合情報を0(ゼロ)として、
図3Aと同様に、12行×3列の行列形式にて接合情報134-1を示している。この図の例では、接合点群G-2Aにおける接合情報134-2Aが{6、4、0}であることが示されている。また、接合点群G-2Aと、-(マイナス)X方向に隣り合う接合点群G-2Bにおける接合情報134-2Bが{7、7、4}であることが示されている。また、接合点群G-2Bと+Z方向に隣り合う接合点群G-2Cにおける接合情報134-2Cが{7、7、0}であることが示されている。また、接合点群G-2Cと+Z方向に隣り合う接合点群G-2Dにおける接合情報134-2Dが{2、0、0}であることが示されている。
【0030】
ここで、学習データ131について、
図4を用いて説明する。
図4には、建物における架構形状を分類した場合における、それぞれの種別に対応する建物の架構形状と、その接合情報の例が示されている。なお、架構形状の分類には、任意の手法が用いられてよく、例えば、クラスタリング処理などを用いて架構形状の分類が行われる。この図の例では、建物をその架構形状に応じて10種類の種別に分類した場合の例が示されている。また、10種類のそれぞれの種別に対応する建物G-T1~G-T10と、その接合情報134-T1~134-T10が示されている。
【0031】
学習データ131は、複数の建物における接合情報134のそれぞれに、架構形状種別135が対応付けられた組データである。この図の例では、学習データ131は、接合情報134-T1に、建物G-T1の種別に対応するラベル(例えば、ラベルAなど)が対応付けられた情報である。学習データ131は、接合情報134-T2に、建物G-T2の種別に対応するラベル(例えば、ラベルBなど)が対応付けられた情報である。学習データ131は、接合情報134-T3に建物G-T3の種別に対応するラベル(例えばラベルCなど)が対応付けられた情報である。同様にして、10種類それぞれの種別に応じた接合情報134に、その種別に対応するラベルを対応づけられた情報が、学習データ131となる。
【0032】
図1の説明に戻り、制御部14は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含むプロセッサであり、架構形状推定装置1を統括的に制御する。制御部14は、主に、架構形状推定モデルの構築処理と、架構形状の推定処理とを実行する。制御部14は、モデル構築部141と、データ取得部142と、接合情報生成部143と、架構形状推定部144と、表示制御部145とを備える。
【0033】
モデル構築部141は、記憶部13に記憶された学習データ131に基づいて、機械学習を行い、架構形状推定モデルを構築する。モデル構築部141は、構築した架構形状推定モデルを、モデル情報132として記憶部13に記憶させる。
【0034】
ここで、モデル構築部141による架構形状推定モデルの構築処理について説明する。モデル構築部141は、例えば、ニューラルネットワーク(以下、NN)を用いて、架構形状推定モデルを構築する。
【0035】
機械学習の分野においては、NNを用いた画像認識技術が発展している。このようなNNを用いた画像認識においては、画像における画素毎の色彩情報(例えば画素毎のRGB値)に、画像の種別、例えば、猫の画像か犬の画像か等の種別、を対応付けた組データを学習データとする。NNに、このような学習データを用いた学習を行うことによって、画像における色彩情報と、その画像の種別との関係を学習した学習済モデルを構築することができる。このように構築された学習済モデルは、推定対象とする画像における色彩情報から、その画像の種別を推定することが可能となる。
【0036】
本実施形態では、このような、先行して発展しているNNを用いた画像認識技術を応用する。具体的には、上述したように、建物の各接合点における接合情報134を、画像の各画素点における色彩情報のように表現する。
【0037】
そして、本実施形態では、このベクトルに変換した接合情報134に架構形状の種別を対応付けた情報を学習データとする。このような学習データを用いることによって、建物の接合情報134とその架構形状の種別との関係を、あたかも画像における色彩情報とその種別との関係のように、NNに学習させることができる。画像認識技術において、画像の各画素点における色彩情報とその画像の種別との関係を学習した学習済モデルが、画像の種別を精度よく推定することができれば、本実施形態において建物の接合情報134とその架構形状の種別との関係を学習した架構形状推定モデルが、架構形状の種別を精度よく推定するモデルとなることが期待できる。
【0038】
例えば、接合情報134をRGBとして画像を作成することを考える。この場合、例えば、第1情報における二進数をRGBのR値、第2情報における二進数をRGBのG値、及び第3情報における二進数をRGBのB値とする。また、二進数における「1」をRGBにおける「255」とし、二進数における「0」をRGBにおける「0」に対応させる。このようにして画像を作成すると、単純な色彩を持つ画像を作成することができる。画像認識技術の分野においては、このような、単純な色彩を持つ画像同士の類似性を推定することはさほど難しいことではないと考えられる、このため、本実施形態のように、接合情報134を、色彩情報であるかのように用いてNNに学習させる手法を用いれば、既存のAI技術が、架構形状の認識においても応用できることを示唆しているものと考えられる。
【0039】
モデル構築部141は、学習データにおける建物の接合情報134と、その建物を架構形状に応じて分類した各種別(種別情報)との関係を、NNに学習させる。モデル構築部141は、学習データにおける建物の接合情報134から出力される種別が、学習データにおけるその建物の種別に近づくように、NNの内部パラメータ(ウエイト値やバイアス値)を調整する。モデル構築部141は、全ての学習データのそれぞれについて、NNから出力される種別が、学習データにおけるその建物の種別に近づくように、NNの内部パラメータを繰り返し調整することによって、推定対象とする建物の接合情報134から、その建物の種別を推定する架構形状推定モデルを構築する。モデル構築部141は、構築した架構形状推定モデルを示す情報をモデル情報132として記憶部13に記憶させる。
【0040】
図5は、実施形態における接合情報134をNNへの学習データとして応用する例を説明する図である。
図5に示すように、モデル構築部141は、例えば、
図3A、
図3Bに示したような12行×3列の行列形式で示した接合情報134を、36行×1列のベクトル形式に変換した表現とする。これにより、建物の各接合点における接合情報134を、あたかも画像の各画素点における色彩情報のように表現することができる。
【0041】
ここで、架構形状推定モデルの構築に用いたNNの構成例について説明する。例えば、NNの入力層には36個のノードを設定し、学習データにおいて入力となる36行×1列のベクトル形式に変換した接合情報134がNNの入力層に入力されるようにした。NNの第2層には、3個のノードを設定し、入力層における36個のノードから第2層における3個のノードに至る演算に、(3×36)のウエイト(重みづけ)マトリックス、(3×1)のバイアスベクトル、及びシグモイド関数による活性化関数が用いられるように設定した。NNの第3層には、3個のノードを設定し、第2層における3個のノードから第3層における3個のノードに至る演算に、(3×3)のウエイトマトリックス、(3×1)のバイアスベクトル、及びシグモイド関数による活性化関数が用いられるように設定した。NNの出力層には、10個のノードを設定し、第3層における3個のノードから出力層における10個のノードに至る演算に、(10×3)のウエイトマトリックス、(10×1)のバイアスベクトル、及びシグモイド関数による活性化関数が用いられるように設定した。また、ウエイトマトリックス、及びバイアスベクトルの各々を最適化するためにAdam法を採用し、出力層の値と、学習データにおける正解値(架構形状の種別に対応するラベル)との二乗誤差が最小となるようにした。
【0042】
また、NNに学習させる学習データは、
図4にて示した2×2スパンの三階建ての建物を対象とし、建物の接合情報134に、10種類に分類した架構形状の種別の何れかを示す架構形状種別を対応付けた組データを用いた。また、オープンソースのソフトウェアライブラリであるChainerを用いて学習プログラムを作成し、NNに学習データを学習させた。学習の繰返し回数は10万回とし、学習時間は数分であった。学習後のNNを架構形状推定モデルとした。
【0043】
図6、及び
図7は、実施形態における架構形状推定モデルを説明する図である。
図6には、学習データにおける接合情報を入力させた場合に架構形状推定モデルから出力された出力値が示されている。
図7には学習データにおける接合情報に対応付けられた正解値(架構形状の種別に対応するラベル)が示されている。
図6には、10種類の架構形状の種別のそれぞれに対応する接合情報134を架構形状推定モデルに入力させた場合に出力層から出力された10行×1列の出力ベクトルが示されている。
図7には、
図6に対応する正解ベクトルが示されている。
【0044】
図6、及び
図7に示すように、架構形状推定モデルは、正解ベクトルにおいて正解値として示されている1又は0(ゼロ)に対する誤差が0.001前後となる精度にて、出力ベクトルを出力する。これにより、架構形状推定モデルは、正解値に近づくように内部パラメータが調整されており、接合情報134からその建物の架構形状を精度よく推定できると考えられる。
【0045】
図1の説明に戻り、データ取得部142は、架構形状を推定する際の入力データ(入力情報)を取得する。データ取得部142は、例えば、入力部11を介して、建物における各接合部について、柱及び梁の接合の有無が示された情報を入力データとして取得する。データ取得部142は、取得した入力データを、入力情報133として記憶部13に記憶させる。
【0046】
接合情報生成部143は、データ取得部142が取得した入力データに基づいて、接合情報134を生成する。接合情報生成部143、記憶部13に記憶された入力情報133を基に、接合部における接合の状態、すなわち接合部に柱及び梁が接合されているか否かを判定し、判定結果を用いて、接合情報を生成する。接合情報生成部143は、生成した接合情報を、接合情報134として記憶部13に記憶させる。
【0047】
架構形状推定部144は、モデル情報132として記憶部13に記憶された架構形状推定モデルと、推定対象とする建物の接合情報134とに基づいて、建物の架構形状を推定する。架構形状推定部144は、例えば、推定対象とする建物の接合情報134を架構形状推定モデルに入力して得られた出力に基づいて、建物の架構形状を推定する。
【0048】
具体的に、架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから、想定される架構形状の種別のそれぞれに応じた出力値を種別情報として取得する。例えば、想定される架構形状の種別が10種類である場合には、架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから出力される10行×1列の出力ベクトルを取得する。10行×1列の出力ベクトルには、10種類の架構形状の種別のそれぞれの、正解値に近い値、すなわち、その架構形状の種別に類似する度合(類似度合)が示されている。
【0049】
架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから出力された架構形状の種別のそれぞれに応じた出力値に基づいて、推定対象とする建物の架構形状に最も類似する架構形状の種別を推定する。例えば、架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから出力された架構形状の種別のそれぞれに応じた出力値のうち、出力値が最も大きい値、すなわち、その架構形状の種別に類似する度合(類似度合)が大きいものに対応する架構形状の種別を、推定対象とする建物の架構形状に最も類似する架構形状の種別として推定する。架構形状推定部144は、例えば、推定した種別に対する架構形状を、架構形状種別135から取得して、取得した架構形状を、推定対象とする建物における架構形状として出力する。
【0050】
図8、及び
図9は、実施形態における架構形状を推定する処理を説明する図である。
図8、及び
図9には、左側に推定対象とする建物の接合情報134及び架構形状が示されており、右側に架構形状推定モデルの出力に基づいて推定された建物の接合情報134及び架構形状が示されている。
【0051】
図8、及び
図9に示すように、学習させたデータとは異なる未学習の接合情報134を、架構形状推定モデルに入力させた場合であっても、比較的類似する架構形状が、推定対象とする建物の架構形状として推定されていることが判る。架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから出力された出力ベクトルのうち、類似度合が最も大きい種別を、推定対象とする建物の架構形状として推定する。このことから、未学習の接合情報134を架構形状推定モデルに入力させた場合に、比較的類似する架構形状の種別に対応する出力値が大きい値となるように出力ベクトルが出力されていることが判る。
【0052】
図1の説明に戻り、表示制御部145(出力制御部の一例)は、架構形状推定部144が推定した建物の架構形状を示す出力情報を表示部12(出力部)に出力する。すなわち、表示制御部145は、例えば、架構形状の3次元画像を、表示部12に表示させる。なお、表示制御部145は、架構形状推定部144が推定したラベル(種別情報)に対応する種別に属する複数の架構形状を表示部12に表示させる。この場合、表示制御部145は、例えば、推定された種別において基準となる架構形状(例えば、学習データとして用いた種別ごとの架構形状)に近い架構形状を優先して、表示部12に表示させるようにしてもよい。
【0053】
次に、
図10、及び
図11を参照して、本実施形態による架構形状推定装置1の動作について説明する。
図10は、本実施形態による架構形状推定装置1が行う処理(架構形状推定モデルを構築する処理)の流れを示すフローチャートである。
図11は、本実施形態による架構形状推定装置1が行う処理(推定対象とする建物の架構形状を推定する処理)の流れを示すフローチャートである。
【0054】
図10に示すように、架構形状推定装置1は、架構形状推定モデルの構築処理において、まず、学習データを取得する(ステップS10)。架構形状推定装置1のモデル構築部141は、記憶部13に記憶された学習データ131を取得する。
【0055】
次に、モデル構築部141は、学習データから架構形状推定モデルを構築する(ステップS12)。モデル構築部141は、機械学習により、例えば、NNに学習データにおける接合情報を入力させた場合の出力が、その学習データにおける架構形状の種別に対応するラベルに近づくように、内部パラメータを調整することにより架構形状推定モデルを構築する。
【0056】
次に、モデル構築部141は、構築したモデルを示す情報をモデル情報132として記憶部13に記憶させる(ステップS13)。ステップS13の処理後に、モデル構築部141は、処理(架構形状推定モデルを構築する処理)を終了する。
【0057】
図11に示すように、架構形状推定装置1は、架構形状を推定する処理において、まず、入力データを取得する(ステップS20)。架構形状推定装置1のデータ取得部142は、例えば、入力部11を介して、推定対象とする建物の各接合部における接合の状態を示す情報を入力データとして取得する。データ取得部142は、取得した入力データを、入力情報133として記憶部13に記憶させる。
【0058】
次に、架構形状推定装置1の接合情報生成部143は、入力データから、推定対象とする建物の接合情報134を生成する(ステップS21)。接合情報生成部143は、入力情報133として記憶部13に記憶された入力データを基に、接合部における接合の状態を判定し、判定した結果を用いて、推定対象とする建物の接合情報を生成する接合情報生成部143は、生成した接合情報を、接合情報134として、記憶部13に記憶させる。
【0059】
次に、架構形状推定装置1の架構形状推定部144は、架構形状推定モデルと、推定対象とする建物の接合情報134とからグループのラベルを推定する(ステップS22)。架構形状推定部144は、記憶部13に記憶された接合情報134を、架構形状推定モデルに入力することにより得られる出力に基づいて、推定対象とする建物の架構形状の種別に対応するラベルを推定する。
【0060】
次に、架構形状推定装置1は、架構形状推定モデルから出力されたラベルに対応する種別の架構形状を出力する(ステップS23)。架構形状推定部144は、推定したラベルに対応する架構形状を、記憶部13に記憶させた架構形状種別135から取得する。架構形状推定装置1の表示制御部145は、例えば、取得した架構形状の模式図や3次元画像を、表示部12に表示させる。ステップS23の処理後に、架構形状推定装置1は、処理(架構形状を推定する処理)を終了する。
【0061】
以上説明したように、実施形態による架構形状推定装置1は、記憶部13と、架構形状推定部144とを備える。記憶部13は、架構形状推定モデルを示すモデル情報132記憶する。架構形状推定モデルは、接合情報134に基づいて建物における架構形状を推定するモデルである。接合情報134は、建物の柱と梁とを接合する接合部における接合の状態を示す情報である。架構形状推定部144は、架構形状推定モデルと、推定対象とする建物(対象建物)における接合情報134とに基づいて、推定対象とする建物の架構形状を推定する。これにより、実施形態による架構形状推定装置1では、建物の接合情報から、架構形状を推定することができる。このため、建物の三次元図面を作成することなく、推定された架構形状を用いて計画中の建物が、既存の建物と架構形状が似ているか否かを判定することができる。
【0062】
また、実施形態の架構形状推定装置1では、接合情報は、第1情報、第2情報、及び第3情報を含む。第1情報は、接合部において+Z方向(建物の水平面と直交する第1方向の一例)に柱が接続されているか否かを示す二値の情報である。第2情報は、接合部において+Y方向(建物の水平面と平行な第2方向の一例)に梁が接続されているか否かを示す二値の情報である。第3情報は、接合部において+X方向(建物の水平面と平行かつ第2方向と直交する第3方向の一例)に梁が接続されているか否かを示す二値の情報である。これにより、実施形態による架構形状推定装置1では、接合情報を、第1情報、第2情報、及び第3情報のそれぞれを含む3つの情報の組合せにて表現することができる。このため、接合点における柱及び梁が接合された状態を、簡潔かつ適切に表現することができる。
【0063】
また、実施形態の架構形状推定装置1では、接合情報は、第1情報を表す二進数、第2情報を表す二進数、及び第3情報を表す二進数のそれぞれを並べた数列を三桁の二進数とし、当該三桁の二進数十進数に変換した数値である。これにより、実施形態の架構形状推定装置1では、建物の各接合点における接合情報134を、あたかも画像の各画素点における色彩情報のように表現することができる。このため、先行して発展しているNNを用いた画像認識技術を応用して、架構形状推定モデルを構築することができ、尚且つ、構築したモデルによる推定精度を向上させることが可能となる。
【0064】
また、実施形態の架構形状推定装置1では、架構形状推定モデルは、入力された接合情報に基づいて、建物の架構形状における複数の種別のそれぞれに類似する度合を示す類似度合を出力する。架構形状推定部144は、架構形状推定モデルから出力された類似度合を取得し、取得した類似度合のうち、類似度合が最も大きい種別に属する架構形状を、推定対象とする建物の架構形状として推定する。これにより、実施形態による架構形状推定装置1では、類似度合が最も大きい種別に属する架構形状を、推定対象とする建物の架構形状として推定することができる。このため、架構形状推定部144は、モデルから出力された出力ベクトルから最も大きな値を選択するという簡単な処理にて、推定対象とする建物に最も類似する架構形状を推定することができる。
【0065】
また、実施形態による架構形状推定装置1は、データ取得部142と、接合情報生成部143と、表示制御部145(出力制御部)とを備える。データ取得部142は、推定対象とする建物の接合点のそれぞれの接合の状態を示す入力データを取得する。接合情報生成部143は、データ取得部142が取得した、入力データに基づいて、推定対象とする建物の接合情報134を生成する。表示制御部145は、架構形状推定部144が推定した建物の架構形状を示す出力情報を表示部12(出力部)に出力する。これにより、実施形態による架構形状推定装置1では、入力データから接合情報を生成することができる。このため、利用者が接合情報を生成する必要がなく、利便性を向上させることができる。また、表示制御部145が、推定した建物の架構形状を示す出力情報を表示部12(出力部)に出力することができる。このため、利用者は、例えば、架構形状を視覚的に確認することができ、利用者がより適切に架構形状を選択し易くすることができる。
【0066】
また、本実施形態による架構形状推定装置1は、学習データに基づいて、架構形状推定モデルを構築するモデル構築部141を備える。これにより、本実施形態による架構形状推定装置1では、例えば、定期的になど、学習データを更新した架構形状推定モデルを再構築することができる。
【0067】
また、本実施形態による架構形状推定方法は、モデル情報132を記憶する記憶部13を備える架構形状推定装置1の架構形状推定方法であって、建物架構推定ステップを含む。モデル情報132は、接合情報から建物の架構形状を推定する架構形状推定モデルであって、学習データに基づいて構築された架構形状推定モデルを示す情報である。学習データは、建物の接合情報134に、建物の架構形状の種別を示す情報が対応付けられた組データを複数有する。建物架構推定ステップにおいて、架構形状推定装置1では、架構形状推定部144が、架構形状推定モデルと、推定対象とする建物の接合情報134とから建物の架構形状を推定する。これにより、本実施形態による架構形状推定方法は、上述した架構形状推定装置1と同様の効果を奏し、例えば、建物の三次元図面を作成することなく、推定された架構形状を用いて計画中の建物が、既存の建物と架構形状が似ているか否かを判定することができる。
【0068】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、上記の実施形態において、架構形状推定装置1が、モデル構築部141を備える構成例を説明したが、これに限定されるものではなく、架構形状推定モデルは、架構形状推定装置1の外部で構築されるようにしてもよい。この場合、例えば、モデル構築装置が、モデル構築部141を備えて、架構形状推定モデルを構築するようにしてもよい。
【0069】
また、上記の実施形態において、架構形状推定装置1は、1台の装置で構成する例を説明したが、これに限定されるものではなく、複数の装置(例えば、複数のサーバ装置など)で構成されるようにしてもよい。また、架構形状推定装置1は、記憶部13の一部、又は全部を外部に備えるようにしてもよい。
【0070】
また、上記の実施形態において、出力部が、表示部12である例を説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、プリンタや、ファイルサーバなどの記憶装置など他の出力部であってもよい。
【0071】
このように、上記の実施形態では、接合点における接合の状態を、一旦、二進数にて表現し、その二進数を十進数に変換した値である0~7の数字を接合点に割り当てた接合情報134の組合せにより、架構形状を表現する手法を提案した。また、このようにして得られる接合情報134をベクトル化し、これと架構形状との関連付けを組データとした学習データを用いて、NNに学習させることにより、合理的に類似する架構形状の種別を抽出できる可能性を示した。上記の実施形態において、接合情報134を架構形状推定モデルに入力する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、X方向、及びY方向のスパン長データ、階高データ、及び建物ボリュームデータ等を、架構形状推定モデルに入力するようにしてもよい。スパン長データ、階高データ、又は建物ボリュームデータ等を併用することにより、より類似する架構形状を推定できるようになることが期待される。この場合、学習データは、建物の接合情報に加えて、その建物のX方向、及びY方向のスパン長、階高分布等の情報に、その建物の架構形状の種別が対応付けられた組データを複数有する。このような学習データをNNに学習させたものを架構形状推定モデルとする。
【0072】
また、上記の実施形態において、NNに学習データを学習させる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、NNの代わりにCNN(Convolutional CNN)を使用してもよく、CNNを用いた場合にはCNNに設けられるフィルターやプーリングの操作によって、上記0~7の数値における平面的、或いは立面的なパターンを把握したネットワークが組める可能性がある。また、NNやCNNに代えて、例えば、決定木、階層ベイズ、SVM(Support Vector Machine)など、既存の機械学習に適用されるモデルが用いられてよい。
【0073】
なお、上述した架構形状推定装置1が備える各構成は、内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述した架構形状推定装置1が備える各構成の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述した架構形状推定装置1が備える各構成における処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0074】
また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0075】
また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部又は外部に設けられた記録媒体も含まれる。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に架構形状推定装置1が備える各構成で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0076】
また、上述した機能の一部又は全部を、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路として実現してもよい。上述した各機能は個別にプロセッサ化してもよいし、一部、又は全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、又は汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…架構形状推定装置、11…入力部、12…表示部、13…記憶部、14…制御部、131…学習データ、132…モデル情報、133…入力情報、134…接合情報、135…架構形状種別、141…モデル構築部、142…データ取得部、143…接合情報生成部、144…架構形状推定部、145…表示制御部