(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車載電源装置および車載電源制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20241001BHJP
B60R 16/03 20060101ALI20241001BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B60R16/033 B
B60R16/03 A
H02J7/00 302C
(21)【出願番号】P 2021003608
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-062727(JP,A)
【文献】特開2016-128283(JP,A)
【文献】特開2018-192872(JP,A)
【文献】特開2017-061240(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0288746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02 - 16/033
B60W 10/00 - 60/00
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検知する検知部と、
前記電源失陥が検知された後、前記電源失陥が検知された系統の電流が検出されない場合、前記電源失陥が復帰の目途がない電源失陥
と判定し、前記電源失陥が検知された系統の電流が検出された場合、復帰の目途がある電源失陥と判定する判定部と、
前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合に、前記系統間スイッチを遮断して電源失陥が生じていない他方の系統によって車両に退避走行を行わせ、
前記復帰の目途がない電源失陥の場合、前記系統間スイッチの
遮断を継続し、
前記復帰の目途がある電源失陥の場合、前記系統間スイッチ
を再接
続する接続制御部と
を備えることを特徴とする車載電源装置。
【請求項2】
第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統と前記第2系統の間に設けられた系統間スイッチと、
何れかの系統において電源失陥を検出した場合、前記系統間スイッチを遮断し、電源失陥が生じていない系統によって車両に退避走行を行わせ、その後、電源失陥を検出した系統の電圧の復帰時に電流が検出されない場合、前記系統間スイッチの遮断を継続し、前記電流が検出された場合、前記系統間スイッチを再接続する制御部と
を備える車載電源装置。
【請求項3】
第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検知する検知部と、
前記電源失陥が復帰の目途がない電源失陥か否かを判定する判定部と、
前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合に、前記系統間スイッチを遮断して電源失陥が生じていない他方の系統によって車両に退避走行を行わせ、復帰の目途がない電源失陥の場合、前記系統間スイッチの遮断を継続し、復帰の目途がある電源失陥の場合、前記系統間スイッチを再接続する接続制御部と
を備え、
前記第1系統における前記系統間スイッチと前記第1電源との接続点と前記第1負荷との間に第1ヒューズが設けられ、
前記復帰の目途がない電源失陥は、前記第1ヒューズの断線である
ことを特徴とす
る車載電源装置。
【請求項4】
第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検知する検知部と、
前記電源失陥が復帰の目途がない電源失陥か否かを判定する判定部と、
前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合に、前記系統間スイッチを遮断して電源失陥が生じていない他方の系統によって車両に退避走行を行わせ、復帰の目途がない電源失陥の場合、前記系統間スイッチの遮断を継続し、復帰の目途がある電源失陥の場合、前記系統間スイッチを再接続する接続制御部と
を備え、
前記第2系統における前記系統間スイッチと前記第2電源との接続点と前記第2負荷との間に第2ヒューズが設けられ、
前記復帰の目途がない電源失陥は、前記第2ヒューズの断線である
ことを特徴とす
る車載電源装置。
【請求項5】
車載電源装置の接続制御部が実行する車載電源制御方法であって、
前記車載電源装置は、
第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される第1系統と、
第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される第2系統と、
前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能な系統間スイッチと、
前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検知する検知部と、
前記電源失陥が検知された後、前記電源失陥が検知された系統の電流が検出されない場合、前記電源失陥が復帰の目途がない電源失陥
と判定し、前記電源失陥が検知された系統の電流が検出された場合、復帰の目途がある電源失陥と判定する判定部と
を備え、
前記接続制御部が、
前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合に、前記系統間スイッチを遮断して電源失陥が生じていない他方の系統によって車両に退避走行を行わせ、
前記復帰の目途がない電源失陥の場合、前記系統間スイッチの
遮断を継続し、
前記復帰の目途がある電源失陥の場合、前記系統間スイッチ
を再接
続する制御工程
を含むことを特徴とする車載電源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、車載電源装置および車載電源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行中に電源失陥が発生しても、安全な場所まで退避走行させて停車させることができるように、第1電源と第2電源とを備え、一方の電源系統に地絡が発生した場合に、他方の電源から車載機器(負荷)へ電力を供給する冗長電源システムがある。
【0003】
例えば、冗長電源システムは、第1電源から第1負荷へ電力を供給する第1系統と、第2電源から第1負荷と同一の機能を備える第2負荷へ電力を供給する第2系統とを備える。そして、冗長電源システムは、第1系統および第2系統のうち一方の系統に地絡が発生した場合に、他方の系統によってフェイルセーフ制御を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に搭載される冗長電源システムは、高い安全性が要求される。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、冗長電源システムの安全性を向上させることができる車載電源装置および車載電源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る車載電源装置は、第1系統と、第2系統と、系統間スイッチと、検知部と、判定部と、接続制御部とを備える。第1系統は、第1電源の電力が自動運転用の第1負荷に供給される。第2系統は、第2電源の電力が自動運転用の第2負荷に供給される。系統間スイッチは、前記第1系統および前記第2系統を接続切断可能である。検知部は、前記第1系統および前記第2系統の電源失陥を検知する。判定部は、前記電源失陥が復帰の目途がない電源失陥か否かを判定する。接続制御部は、前記第1系統および前記第2系統のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合に、前記系統間スイッチを遮断して電源失陥が生じていない他方の系統によって車両に退避走行を行わせ、復帰の目途がない電源失陥の場合、前記系統間スイッチの再接続を禁止し、復帰の目途がある電源失陥の場合、前記系統間スイッチの再接続を許可する。
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様に係る車載電源装置および車載電源制御方法は、冗長電源システムの安全性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車載電源装置の構成例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る制御部が実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る車載電源装置の動作例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、車載電源装置および車載電源制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。以下では、自動運転機能を備える車両に搭載されて負荷へ電力を供給する車載電源装置を例に挙げて説明するが、実施形態に係る車載電源装置は、自動運転機能を備えていない車両に搭載されてもよい。
【0011】
図1は、実施形態に係る車載電源装置の構成例を示す説明図である。
図1に示すように、実施形態に係る車載電源装置1は、第1電源10と、第1負荷101と、第2負荷102と、自動運転制御装置100とに接続される。
【0012】
第1負荷101および第2負荷102は、自動運転用の負荷を含む。例えば、第1負荷101は、自動運転中に動作するステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等を含む。また、第1負荷101は、エアコン、オーディオ、ビデオ、各種ライト等の一般負荷も含む。
【0013】
第2負荷102は、少なくとも、ステアリングモータ、電動ブレーキ装置、車載カメラ、およびレーダ等の自動運転中に動作する装置を含む。第1負荷101および第2負荷102は、車載電源装置1から供給される電力によって動作する。自動運転制御装置100は、第1負荷101および第2負荷102を動作させて、車両を自動運転制御する制御装置である。
【0014】
車載電源装置1は、第2電源20と、制御部3と、系統間スイッチ4とを備える。さらに、車載電源装置1は、電流センサ51,52,53と、電圧センサ54,55とを備える。また、系統間スイッチ4と第1電源10との接続点Pと第1負荷101との間には、第1ヒューズ61が設けられる。第1ヒューズ61は、第1負荷101へ過電流が流れる場合に溶断することによって、第1負荷101を過電流から保護する。
【0015】
また、系統間スイッチ4と第2電源20との接続点Qと第2負荷との間には、第2ヒューズ62が設けられる。第2ヒューズ62は、第2負荷102へ過電流が流れる場合に溶断することによって、過電流から第2負荷102を保護する。なお、車載電源装置1は、第1ヒューズ61および第2ヒューズ62のうち、いずれか一方だけが設けられる場合もある。
【0016】
第1電源10は、例えば、鉛バッテリである。第1電源10は、通常時に第1負荷101および第2負荷102に電力を供給する。第1電源10と第1ヒューズ61との間には、電圧センサ54と電流センサ52とが接続される。また、第1電源10と第1ヒューズ61との接続点Pと系統間スイッチ41との間には、電流センサ51が接続される。
【0017】
電圧センサ54は、第1電源10の出力電圧を検出し、検出結果を制御部3へ出力する。電流センサ52は、第1電源10および第1負荷101間を流れる電流を検出し、検出結果を制御部3へ出力する。なお、電流センサ52は、第1ヒューズ61と第1負荷101との間に設けられてもよい。電流センサ51は、系統間スイッチ4を流れる電流を検出して、検出結果を制御部3へ出力する。
【0018】
第2電源20は、例えば、リチウムイオンバッテリである。第2電源20は、第1電源10による電力供給ができなくなった場合のバックアップ用電源である。第2電源20は、通常動作時の放電を抑制するため、第1電源10よりも出力電圧が若干低くなうように充電される。
【0019】
第2電源20と第2ヒューズ62との間には、電圧センサ55と電流センサ53とが接続される。電圧センサ55は、第2電源20の出力電圧を検出し、検出結果を制御部3へ出力する。電流センサ53は、第2電源20および第2負荷102間を流れる電流を検出し、検出結果を制御部3へ出力する。なお、電流センサ53は、第2ヒューズ62と第2負荷102との間に設けられてもよい。
【0020】
かかる車載電源装置1は、第1電源10の電力が自動運転用の第1負荷101に供給される第1系統110と、第2電源20の電力が自動運転用の第2負荷102に供給される第2系統120とを備える。系統間スイッチ4は、第1系統110と第2系統120とを接続切断可能に接続する。
【0021】
これにより、車載電源装置1は、第1系統110および第2系統120のうち、一方の系統に電源失陥が発生しても、系統間スイッチ4を遮断して、他方の系統よって電力を供給することにより、車両を安全な場所まで退避走行させて停車させることができる。
【0022】
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。制御部30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業領域として使用して実行することにより機能する検知部31と、判定部32と、接続制御部33とを備える。
【0023】
なお、制御部3が備える検知部31、判定部32、および接続制御部33は、一部または全部がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成されてもよい。
【0024】
制御部3が備える検知部31、判定部32、および接続制御部33は、それぞれ以下に説明する情報処理の作用を実現または実行する。なお、制御部2の内部構成は、
図1に示した構成に限られず、後述する情報処理を行う構成であれば他の構成であってもよい。
【0025】
検知部31は、第1系統110および第2系統120の電源失陥を検知する。判定部32は、電源失陥が復帰の目途がない電源失陥か否かを判定する。接続制御部33は、電流センサ51,52,53および電圧センサ54,55から入力される検出結果に基づいて、系統間スイッチ4を制御することにより、第1電源10または第2電源20から第1負荷101と第2負荷102とに電力を供給する。
【0026】
以下、
図2~
図8を参照して、車載電源装置1の動作について説明する。
図2に示すように、第1系統110および第2系統120が失陥していない通常動作時の場合、接続制御部33は、系統間スイッチ4を接続する。
【0027】
このとき、第2電源20は、第1電源10よりも出力電圧が若干低くなるように充電されている。このため、通常動作時では、第1電源10から第1負荷101および第2負荷102に電力が供給される。これにより、車載電源装置1は、通常動作時に第2電源20が放電することを抑制することができる。
【0028】
なお、第2電源20の出力にスイッチが設けられる場合、通常動作時に、このスイッチを遮断しておくことで、第1電源10から第1負荷101および第2負荷102に電力を供給することもできる。これにより、車載電源装置1は、通常動作時に第2電源20が放電することを防止することができる。
【0029】
車載電源装置1では、通常時動作中に検知部31によって第1系統110または第2系統120の失陥が検知される場合がある。接続制御部33は、通常時動作中に第1系統110および第2系統120のうち一方の系統の電源失陥が検知される場合、系統間スイッチ4を遮断して電源失陥が生じていない他方の系統を使用して自動運転制御装置100に車両の退避走行を行わせる。
【0030】
接続制御部33は、例えば、第1系統110の電源失陥が検知される場合、系統間スイッチ4を遮断し、
図1に示す第2系統120によって第2電源20から第2負荷102に電力を供給して、車両に退避走行を行わせる。
【0031】
また、接続制御部33は、例えば、第2系統120の電源失陥が検知される場合、系統間スイッチ4を遮断し、
図1に示す第1系統110によって第1電源10から第1負荷101に電力を供給して、車両に退避走行を行わせる。これにより、第1系統110および第2系統120のうち一方の系統の電源失陥が検知されても、車両を安全に退避走行させることができる。このように、車載電源装置1によれば、冗長電源システムの安全性を向上させることができる。
【0032】
ここで、第1系統110または第2系統120に生じる電源失陥には、復帰の目途がある電源失陥と、復帰の目途がない電源失陥とがある。例えば、
図3に示すように、第1系統110では、第1ヒューズ61よりも上流、つまり、第1電源10と第1ヒューズ61との間で地絡200という電源失陥が生じる場合がある。
【0033】
このとき、第1ヒューズ61には過電流が流れないため、第1ヒューズ61は、切断されない。そして、かかる電源失陥は、例えば、配線に付着した水滴とアースとのショートによる地絡200であった場合、水滴が蒸発すれば復帰するため、復帰の目途がある電源失陥である。
【0034】
なお、第2系統120においても、第2ヒューズ62よりも上流、つまり、第2電源20と第2ヒューズ62との間で地絡が生じる場合がある。このとき、第2ヒューズ62には過電流が流れないため、第2ヒューズ62は、切断されない。そして、かかる電源失陥は、例えば、配線に付着した水滴とアースとのショートによる地絡であった場合、水滴が蒸発すれば復帰するため、復帰の目途がある電源失陥である。
【0035】
これに対して、
図4に示すように、第1系統110では、第1ヒューズ61よりも下流、つまり、第1ヒューズ61と第1負荷101との間で地絡201が生じる場合がある。このとき、第1ヒューズ61には過電流が流れるため、第1ヒューズ61は、切断される。このため、かかる電源失陥は、復帰の目途がない電源失陥である。
【0036】
なお、第2系統120においても、第2ヒューズ62よりも下流、つまり、第2ヒューズ62と第2負荷102との間で地絡が生じる場合がある。このとき、第2ヒューズ62には過電流が流れるため、第2ヒューズ62は、切断される。このため、かかる電源失陥は、復帰の目途がない電源失陥である。
【0037】
このように、第1系統110または第2系統120に生じる電源失陥には、復帰の目途がある電源失陥と、復帰の目途がない電源失陥とがある。そこで、接続制御部33は、電源失陥が検知されて系統間スイッチ4を遮断した後、第1系統110または第2系統120に生じる電源失陥が復帰のある電源失陥か、復帰の目途がない電源失陥かに応じて、系統間スイッチ4の制御を変更する。
【0038】
図5は、実施形態に係る制御部が実行する処理の一例を示すフローチャートである。制御部3は、通常動作時に
図5に示す処理を所定周期で繰り返し実行する。
図5に示すように、まず、検知部31は、地絡を検知したか否かを判定する(ステップS101)。このとき、検知部31は、電流センサ51によって検出される電流が地絡閾値を超える過電流であった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したことを検知する。
【0039】
さらに、検知部31は、過電流が第2系統120から第1系統110へ流れる場合に、第1系統110の地絡と判定する。また、検知部31は、過電流が第1系統110から第2系統へ流れる場合に、第2系統120の地絡と判定する。制御部3は、検知部31によって地絡が検知されない場合(ステップS101,No)、処理を終了して再度、ステップS101から処理を開始する。
【0040】
接続制御部33は、検知部31によって地絡が検知された場合(ステップS101,Yes)、地絡が発生していない方の電源から地絡が発生している方の電源への放電を阻止するため、系統間スイッチ4を遮断する(ステップS102)。その後、接続制御部33は、自動運転制御装置100に車両の退避走行指示を行う(ステップS103)。
【0041】
その後、接続制御部33は、電源失陥が検知された系統の電源電圧が復帰したか否かを判定する(ステップS104)。このとき、接続制御部33は、第1系統110に電源失陥が発生していた場合、電圧センサ54から入力される検出結果に基づいて、第1電源10の電圧が復帰したか否かを判定する。また、接続制御部33は、第2系統120に電源失陥が発生していた場合、電圧センサ55から入力される検出結果に基づいて、第2電源20の電圧が復帰したか否かを判定する。
【0042】
制御部3は、電源電圧が復帰しないと接続制御部33によって判定された場合(ステップS104,No)、処理を終了して再度、ステップS101から処理を開始する。判定部32は、電源電圧が復帰したと接続制御部33によって判定された場合(ステップS104,Yes)、復帰の目途がない電源失陥か否かを判定する(ステップS105)。
【0043】
このとき、判定部32は、第1系統110に電源失陥が発生していた場合、電流センサ52によって電流が検出されなければ、第1ヒューズ61が断線したことを示すため、復帰の目途がない電源失陥と判定し、電流が検出されれば、第1ヒューズ61が切断していないことを示すため、復帰の目途がある電源失陥と判定する。
【0044】
そして、接続制御部33は、判定部によって復帰の目途がない電源失陥と判定された場合(ステップS105,Yes)、自動運転に支障をきたすため、系統間スイッチ4の再接続を禁止し(ステップS106)、処理を終了する。
【0045】
これにより、車載電源装置1は、例えば、
図6に示すように、地絡201によって第1ヒューズ61が切断された場合に、第2系統120によって第2電源20から第2負荷102へ電力を供給することによって、車両に退避走行を行わせることができる。このように、車載電源装置1は、冗長電源システムの安全性を向上させることができる。
【0046】
また、車載電源装置1は、第2ヒューズ62と第2負荷102との間で地絡が発生し、第2ヒューズ62が切断された場合には、
図1に示す第1系統110によって、第1電源10から第1負荷101へ電力を供給し、車両に退避走行を行わせることができる。このように、車載電源装置1は、冗長電源システムの安全性を向上させることができる。
【0047】
また、接続制御部33は、判定部によって復帰の目途がある電源失陥と判定された場合(ステップS105,No)、系統間スイッチ4の再接続を許可して再接続し(ステップS107)、処理を終了する。
【0048】
これにより、車載電源装置1は、第1ヒューズ61または第2ヒューズ62の上流で生じた地絡が復帰した場合、第1ヒューズ61および第2ヒューズ62が共に切断されておらず、自動運転に支障をきたすことがないため、
図2に示す給電状態に復帰させることができる。このように、車載電源装置1は、電源失陥が検知されても、第1ヒューズ61および第2ヒューズ62が切断されていなければ、自動運転に復帰させることができる。
【0049】
なお、
図5に示す処理は一例であり、制御部3が実行する処理は種々の変形が可能である。
図7は、実施形態に係る制御部が実行する処理の変形例を示すフローチャートである。
図7に示すように、まず、検知部31は、地絡を検知したか否かを判定する(ステップS201)。このとき、検知部31は、電流センサ51によって検出される電流が地絡閾値を超える過電流であった場合に、第1系統110または第2系統120に地絡が発生したことを検知する。
【0050】
さらに、検知部31は、過電流が第2系統120から第1系統110へ流れる場合に、第1系統110の地絡と判定する。また、検知部31は、過電流が第1系統110から第2系統へ流れる場合に、第2系統120の地絡と判定する。制御部3は、検知部31によって地絡が検知されない場合(ステップS201,No)、処理を終了して再度、ステップS201から処理を開始する。
【0051】
接続制御部33は、検知部31によって地絡が検知された場合(ステップS201,Yes)、地絡が発生していない方の電源から地絡が発生している方の電源への放電を阻止するため、系統間スイッチ4を遮断する(ステップS202)。その後、接続制御部33は、自動運転制御装置100に車両の退避走行指示を行う(ステップS203)。
【0052】
その後、接続制御部33は、第1ヒューズ61または第2ヒューズ62の上流、つまり、第1ヒューズ61と第1電源10との間または第2ヒューズ62と第2電源20との間に地絡がないか否かを判定する(ステップS204)。
【0053】
接続制御部33は、第1電源10の電圧が復帰していた場合、第1ヒューズ61の上流に地絡がないと判定し、第1電源10の電圧が復帰していない場合、第1ヒューズ61の上流に地絡があると判定する。また、接続制御部33は、第2電源20の電圧が復帰していた場合、第2ヒューズ62の上流に地絡がないと判定し、第2電源20の電圧が復帰していない場合、第2ヒューズ62の上流に地絡があると判定する。
【0054】
接続制御部33は、第1ヒューズ61または第2ヒューズ62の上流に地絡があると判定した場合(ステップS204,No)、処理を終了して再度、ステップS201から処理を開始する。接続制御部33は、第1ヒューズ61または第2ヒューズ62の上流に地絡がないと判定した場合(ステップS204,Yes)、系統間スイッチ4の再接続を許可して再接続し(ステップS205)、処理を終了する。
【0055】
図7に示す処理では、車載電源装置1は、例えば、
図8に示すように、第1ヒューズ61の下流、つまり第1ヒューズ61と第1負荷101との間に地絡201が発生して第1ヒューズ61が切断していても、第1ヒューズ61の上流に地絡が発生していなければ、系統間スイッチ4を接続する。
【0056】
このため、車載電源装置1は、第1ヒューズ61が切断されていても、第1電源10および第2電源20から第2負荷102に電力を供給して、車両に退避走行を行わせることができる。これにより、車載電源装置1は、第1電源10または第2電源20のいずれか一方によって退避走行を行わせる場合に比べて、退避走行可能な時間を延長することができる。このように、車載電源装置1は、冗長電源システムの安全性を向上させることができる。
【0057】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車載電源装置
10 第1電源
20 第2電源
3 制御部
31 検知部
32 判定部
33 接続制御部
4 系統間スイッチ
51,52,53 電流センサ
54,55 電圧センサ
61 第1ヒューズ
62 第2ヒューズ
100 自動運転制御装置
101 第1負荷
102 第2負荷
110 第1系統
120 第2系統