(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241001BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
B60K11/04 Z
(21)【出願番号】P 2021003819
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-125629(JP,A)
【文献】特開2001-238406(JP,A)
【文献】特開2016-061327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0334025(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0145615(US,A1)
【文献】米国特許第05217085(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102018128855(DE,A1)
【文献】特開2001-153573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機の温調を行う非導電性温調媒体が循環する温調回路と、を備える車両であって、
前記温調回路は、
前記非導電性温調媒体と導電性温調媒体との間で熱交換が可能な熱交換器と、
前記車両の駆動に伴って駆動し、前記非導電性温調媒体を循環させるポンプと、
を備え、
前記温調回路は、前記熱交換器内における前記非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持する液圧保持手段をさらに備え
、
前記車両は、
前記温調回路において、前記非導電性温調媒体を前記熱交換器に供給する流路における前記非導電性温調媒体の液圧を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された前記非導電性温調媒体の液圧に基づいて、前記液圧保持手段または前記熱交換器から前記非導電性温調媒体のリークを検出する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両の駆動時に検出された前記液圧である駆動時圧力と、前記車両の停止時に検出された前記液圧である停止時圧力と、の差である圧力変動値が第1閾値以上である場合に、前記リークが発生していると判断する、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記電動機と駆動輪との間に設けられ、前記電動機と前記駆動輪との間における動力伝達が可能に構成された動力伝達装置をさらに備え、
前記温調回路は、
前記非導電性温調媒体であるオイルを前記熱交換器及び前記電動機に供給可能な第1流路と、
前記オイルを前記動力伝達装置に供給可能な第2流路と、
前記第1流路、又は前記第2流路に分岐する分岐部と、
を備え、
前記液圧保持手段は、前記第1流路における前記分岐部と前記熱交換器との間に設けられる、車両。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両であって、
前記液圧保持手段は、前記熱交換器の流入側と流出側とのそれぞれに設けられた逆止弁である、車両。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両であって、
前記液圧保持手段は、前記熱交換器の流入側と流出側とのそれぞれに設けられた電磁弁であり
、
前記制御装置は、
前記電磁弁を制御可能に構成され、前記車両の速度が閾値以下である場合に、前記熱交換器からの前記非導電性温調媒体の流出を制限するように前記電磁弁を制御する、車両。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御装置は、
前記車両のイグニッション電源がオンである場合には、前記駆動時圧力と前記停止時圧力との差である圧力変動値が第1閾値以上であることに基づいて前記リークが発生していると判断し、
前記イグニッション電源がオフである場合には、前記車両の停止時における第1タイミングで検出された前記液圧である第1圧力と、前記車両の停止時における前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで検出された前記液圧である第2圧力と、の差である圧力変動値が第1閾値以上である
ことに基づいて前記リークが発生していると判断する、車両。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれか一項に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記圧力変動値が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、前記熱交換器において前記リークが発生していると判断する、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機と、電動機の温調を行う非導電性温調媒体が循環する温調回路と、を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機(例えば回転電機)や電力変換装置を備える車両が知られている。一般的に、電動機や電力変換装置は動作時に発熱するため、電動機や電力変換装置を備える車両には、電動機や電力変換装置を温調する車両用温調システムが搭載されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、オイルが循環し、電動機Mを冷却する循環路Lと、冷却水が循環し、インバータUを冷却する循環路Fと、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換を行う熱交換部(オイルクーラC)と、を備える車両用温調システムが開示されている。循環路FにはラジエータRが設けられており、循環路Fを流れる冷却水は、ラジエータRで冷却される。循環路Lを流れるオイルは、熱交換部(オイルクーラC)で、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換が行われることによって冷却される。したがって、特許文献1の車両用温調システムは、オイルを冷却するためのラジエータが不要となり、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとを1つのラジエータで冷却できるので、車両用温調システムの小型化を図ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、ATF(Automatic Transmission Fluid)と、LLC(Long Life Coolant)との間で熱交換を行う第2の熱交換器50を備えるハイブリッド自動車100が開示されている。第2の熱交換器50は、4隅部に冷媒流通用の流路孔51a~51dを有する伝熱プレート51を複数枚積層するとともに、隣接する2枚の伝熱プレート51間にガスケット54を介挿することによって構成されている。隣接する2枚の伝熱プレート51間に介挿されるガスケット54は、伝熱プレート51の上下一対の流路孔51a~51dを連通状態に囲う流体通路シール部と、他の上下一対の流路孔51a~51dの各々を囲ってシールする孔シール部を有している。このため、各伝熱プレート51を1枚毎に向きを反転させ、1枚毎にガスケット54を介して積層していくことで、各伝熱プレート51間にはLLC及びATFの流路A,Bが交互に形成される。このような第2の熱交換器50では、LLC及びATFが対応する流路A、Bを流れる間に各伝熱プレート51を介して熱交換が行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-238406号公報
【文献】特開2017-087801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術のように、非導電性温調媒体(例えばATF等のオイル)と、導電性温調媒体(例えばLLC等の冷却水)との間で熱交換を行う熱交換器にあっては、非導電性温調媒体が流れる流路(以下「非導電性温調媒体流路」ともいう)と、導電性温調媒体が流れる流路(以下「導電性温調媒体流路」ともいう)との間の隔壁等が破損した場合に、その破損箇所から非導電性温調媒体流路へ導電性温調媒体が流れ込んで、非導電性温調媒体流路を流れる非導電性温調媒体に導電性温調媒体が混入してしまう可能性があった。そして、このように導電性温調媒体が混入した非導電性温調媒体によって電動機の温調を行うと、当該温調媒体が活電部に接して短絡が発生し、車両の故障につながるおそれがあった。
【0007】
一般的に、非導電性温調媒体を循環させるポンプとしては、車両の駆動に伴って駆動するポンプ(例えば、いわゆる機械式ポンプ)が用いられる。したがって、車両の停止時には、非導電性温調媒体を循環させるポンプも停止し、前述した非導電性温調媒体流路内(すなわち熱交換器内)における非導電性温調媒体の液圧が低下し得る。非導電性温調媒体流路と導電性温調媒体流路との間の隔壁等が破損した状態で、このように非導電性温調媒体流路内の液圧が低下してしまうと、破損箇所から非導電性温調媒体流路へ導電性温調媒体が流れ込みやすくなる。このため、導電性温調媒体の非導電性温調媒体への混入を抑制する観点から、車両の停止時であっても、非導電性温調媒体流路内の液圧を保持できることが望まれるが、従来技術にあっては、この点に改善の余地があった。
【0008】
本発明は、非導電性温調媒体と導電性温調媒体との間で熱交換が可能な熱交換器に破損が生じても、非導電性温調媒体に導電性温調媒体が混入するのを抑制できる車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
電動機と、前記電動機の温調を行う非導電性温調媒体が循環する温調回路と、を備える車両であって、
前記温調回路は、
前記非導電性温調媒体と導電性温調媒体との間で熱交換が可能な熱交換器と、
前記車両の駆動に伴って駆動し、前記非導電性温調媒体を循環させるポンプと、
を備え、
前記温調回路は、前記熱交換器内における前記非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持する液圧保持手段をさらに備え、
前記車両は、
前記温調回路において、前記非導電性温調媒体を前記熱交換器に供給する流路における前記非導電性温調媒体の液圧を検出する圧力センサと、
前記圧力センサによって検出された前記非導電性温調媒体の液圧に基づいて、前記液圧保持手段または前記熱交換器から前記非導電性温調媒体のリークを検出する制御装置と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両の駆動時に検出された前記液圧である駆動時圧力と、前記車両の停止時に検出された前記液圧である停止時圧力と、の差である圧力変動値が第1閾値以上である場合に、前記リークが発生していると判断する、車両である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非導電性温調媒体と導電性温調媒体との間で熱交換が可能な熱交換器に破損が生じても、非導電性温調媒体に導電性温調媒体が混入するのを抑制できる車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の車両が備える車両用温調システムのブロック図である。
【
図2】熱交換器又は液圧保持手段からの第1温調媒体のリークと、圧力センサによって検出される第1温調媒体の液圧の変動との関係の一例を示す図である。
【
図3】熱交換器からのリークが発生した場合の第1温調媒体の液圧の変動と、液圧保持手段からのリークが発生した場合の第1温調媒体の液圧の変動との一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の制御装置が行うリーク検出処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。
【0013】
[車両]
まず、本発明の一実施形態の車両Vについて、
図1を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の車両Vは、車両用温調システム10と、内燃機関ICEと、制御装置ECUと、電動機20と、発電機30と、変速装置40と、電力変換装置50と、温調回路60と、を備える。
【0015】
電動機20は、車両Vに搭載された不図示の蓄電装置に蓄電されている電力、又は、発電機30によって発電された電力によって、車両Vを駆動する動力を出力する回転電機である。電動機20は、車両Vの制動時に、車両Vの駆動輪(不図示)の運動エネルギーによって発電し、前述の蓄電装置を充電してもよい。
【0016】
発電機30は、内燃機関ICEの動力によって発電し、前述の蓄電装置を充電し、又は、電動機20に電力を供給する回転電機である。
【0017】
変速装置40は、電動機20と車両Vの駆動輪との間に設けられ、電動機20と駆動輪との間における動力伝達が可能に構成された動力伝達装置である。例えば、変速装置40は、電動機20から出力された動力を減速して駆動輪に伝達する歯車式の動力伝達装置である。
【0018】
電力変換装置50は、前述した蓄電装置から出力された電力を直流から交流へと変換して電動機20及び発電機30の入出力電力を制御する不図示のPDU(Power Drive Unit)と、必要に応じて前述した蓄電装置から出力された電力を昇圧する不図示のVCU(Voltage Control Unit)と、を備える。VCUは、車両Vの制動時に電動機20が発電した場合、電動機20が発電した電力を降圧してもよい。
【0019】
温調回路60は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、電動機20、発電機30、及び変速装置40の温調を行う第1温調回路61と、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置50の温調を行う第2温調回路62と、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う熱交換器63と、を有する。非導電性の第1温調媒体TCM1は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、電動機20、発電機30、及び変速装置40の潤滑及び温調を行うことが可能なオイルである。導電性の第2温調媒体TCM2は、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる、冷却水である。
【0020】
第1温調回路61には、第1ポンプ611と、貯留部612と、が設けられている。第1ポンプ611は、内燃機関ICEの動力と、車両Vの不図示の車軸の回転力と、によって駆動する機械式ポンプである。すなわち、第1ポンプ611は、車両Vの駆動に伴って駆動し、第1温調回路61において第1温調媒体TCM1を循環させる。貯留部612は、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1を貯留する。貯留部612は、例えば、電動機20、発電機30、及び変速装置40を収容する不図示のハウジングの底部に設けられたオイルパンである。
【0021】
第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられた圧送流路610aと、電動機20及び発電機30が設けられた第1分岐流路610b1と、変速装置40が設けられた第2分岐流路610b2と、第1分岐流路610b1又は第2分岐流路610b2に分岐する分岐部613と、を有する。
【0022】
具体的に説明すると、圧送流路610aは、上流側の端部が貯留部612に接続され、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続されている。第1分岐流路610b1は、上流側の端部が分岐部613に接続され、電動機20及び発電機30を通って、下流側の端部が貯留部612に接続されている。第2分岐流路610b2は、上流側の端部が分岐部613に接続され、変速装置40を通って、下流側の端部が貯留部612に接続されている。
【0023】
また、第1温調回路61において、第1分岐流路610b1は、第1温調媒体TCM1を、熱交換器50、電動機20及び発電機30に供給可能な流路となっている。具体的に説明すると、第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1の電動機20及び発電機30よりも上流に配置されている。したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が流れる流路として、以下の2つの流路が並列に形成される。
【0024】
1つ目の流路は、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、電動機20及び発電機30に供給されて電動機20及び発電機30を潤滑及び温調した後、貯留部612に到達する流路である。2つ目の流路は、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、変速装置40に供給されて変速装置40を潤滑及び温調した後、貯留部612に到達する流路である。これらいずれかの流路により貯留部612に到達した第1温調媒体TCM1は、圧送流路610aを流れて第1ポンプ611に再び供給され、第1ポンプ611によって再び圧送される。これにより、第1温調媒体TCM1は、第1温調回路61を循環する。
【0025】
本実施形態では、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0026】
第1温調回路61には、第1温調回路61を循環する第1温調媒体TCM1の温度を検出する第1温度センサ61aが設けられている。本実施形態では、第1温度センサ61aは、オイルパンである貯留部612に設けられており、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度を検出し、その検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、第1温度センサ61aからの情報に基づいて、貯留部612に貯留された第1温調媒体TCM1の温度を監視して、例えば、第1温調媒体TCM1の温度が所定の温度以上となった場合に、その旨を車両Vのユーザに対して報知したりすることが可能となる。
【0027】
第1分岐流路610b1には、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を所定圧以上に保持する液圧保持手段614が設けられている。ここで、所定圧は、例えば、熱交換器50内における第2温調媒体TCM2の液圧と同等の圧力である。これにより、熱交換器50において、第1温調媒体TCM1が流れる流路と、第2温調媒体TCM2が流れる流路との間の隔壁にクラックが生じる等の熱交換器50が破損した場合であっても、その破損箇所から第1温調媒体TCM1が流れる流路へ第2温調媒体TCM2が流れ込むことを抑制できる。
【0028】
本実施形態では、液圧保持手段614は、熱交換器63を挟んで上流側(熱交換器63への流入側)と下流側(熱交換器63からの流出側)とに設けられた一対のバルブ装置である。当該一対のバルブ装置は、例えば逆止弁である。
【0029】
車両Vの停止時や低速走行時等、内燃機関ICEが非駆動状態や低出力駆動状態であることに伴って、第1ポンプ611も非駆動状態や低出力駆動状態であるとき、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の液圧が所定圧以下となると一対のバルブ装置は閉状態となる。これにより、車両Vの停止時や低速走行時であっても、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を所定圧以上に保持することができる。
【0030】
また、液圧保持手段614を実現する上記一対のバルブ装置は、例えば、後述の制御装置ECUによって制御されるソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。この場合、制御装置ECUは、車両Vの速度が閾値(例えば10[km/h])以下である場合に、一対のバルブ装置を閉状態として、熱交換器63からの第1温調媒体TCM1の流出を制限するように一対のバルブ装置を制御する。これにより、車両Vの停止時や低速走行時であっても、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を所定圧以上に保持することができる。
【0031】
また、液圧保持手段614は、第1分岐流路610b1における分岐部613と熱交換器63との間に設けられる。これにより、車両Vの低速走行時等、第1ポンプ611が低出力駆動状態であるときであっても、第1温調媒体TCM1は、第2分岐流路610b2を流れることができる。したがって、車両Vの低速走行時等、第1ポンプ611が低出力駆動状態であるときであっても、変速装置40に第1温調媒体TCM1を供給して変速装置40を潤滑することができる。
【0032】
なお、第1ポンプ611として、電動ポンプを採用してもよい。この場合、車両Vの停止時や低速走行時であっても、蓄電装置の電力を第1ポンプ611に供給することで、第1ポンプ611の駆動を維持でき、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を所定圧以上に保持することができる。ただし、この場合、第1ポンプ611を駆動するために車両Vの消費電力が増加したり、車両Vの構成が煩雑になって車両Vの製造コストの増加につながったりする可能性もある。したがって、前述したように、逆止弁や電磁弁等のバルブ装置により実現される液圧保持手段614によって、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を保持するようにするのが好ましい。このようにすれば、簡易な構成で、車両Vの消費電力が増加するのを抑制しながら、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を保持することが可能となる。
【0033】
また、第1分岐流路610b1には、第1分岐流路610b1における第1温調媒体TCM1の液圧を検出する圧力センサ615が設けられている。具体的に説明すると、圧力センサ615は、熱交換器63と同様に、液圧保持手段614を実現する一対のバルブ装置の間に設けられる。これにより、圧力センサ615は、熱交換器63に供給される第1温調媒体TCM1の液圧、すなわち、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧を検出することができる。圧力センサ615は、第1温調媒体TCM1の液圧の検出値を制御装置ECUに出力する。詳細は後述するが、制御装置ECUは、圧力センサ615の検出値に基づいて、熱交換器63又は液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリーク(漏れ)を検出することが可能である。
【0034】
また、第1温調回路61は、上流側の端部が貯留部612に接続され、下流側の端部が第1ポンプ611より下流側で圧送流路610aに接続される調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cには、調圧バルブ619が設けられている。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定の上限圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部612に戻される。これにより、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、上限圧以下に保持される。
【0035】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623と、が設けられている。第2ポンプ621は、例えば、前述した蓄電装置に蓄電された電力によって駆動する電動式ポンプである。ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0036】
第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられた圧送流路620aと、分岐部624と、合流部625と、を有する。具体的に説明すると、圧送流路620aは、上流側の端部が合流部625に接続され、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続されている。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0037】
また、第2温調回路62は、電力変換装置50が設けられた第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられた第2分岐流路620b2と、をさらに有する。具体的に説明すると、第1分岐流路620b1は、上流側の端部が分岐部624に接続され、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続されている。第2分岐流路620b2は、上流側の端部が分岐部624に接続され、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続されている。
【0038】
本実施形態では、第2分岐流路620b2の熱交換器63よりも上流部分に、流量調整弁としてバルブ装置626が設けられている。バルブ装置626は、第2分岐流路620b2を全開状態と全閉状態とのいずれかの状態に切り替えるON-OFFバルブであってもよいし、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。バルブ装置626は、例えば制御装置ECUによって制御される。
【0039】
圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置50を冷却して合流部625で第2分岐流路620b2及び圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1及び圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0040】
本実施形態では、第1分岐流路620b1及び第2分岐流路620b2は、第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2の流量が、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0041】
第2温調回路62には、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2の温度を検出する第2温度センサ62aが設けられている。本実施形態では、第2温度センサ62aは、ラジエータ622と分岐部624との間の圧送流路620aに設けられており、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2の温度を検出し、その検出値を制御装置ECUに出力する。これにより、制御装置ECUは、第2温度センサ62aからの情報に基づいて、ラジエータ622から排出された第2温調媒体TCM2の温度を監視して、例えば、第2温調媒体TCM2の温度が所定の温度以上となった場合に、その旨を車両Vのユーザに対して報知したりすることが可能となる。
【0042】
例えば、第1温調回路61において、電動機20、発電機30、及び変速装置40を冷却した後に貯留部612に貯留される第1温調媒体TCM1の温度は約100[℃]となる。したがって、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0043】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度は約40[℃]となる。熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置50を通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0044】
熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が、第1温調回路61の第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が、第2温調回路62の第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0045】
このようにして、第1温調媒体TCM1は、熱交換器63で冷却されるので、温調回路60は、第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを設けることなく、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化できる。
【0046】
一方、前述したように、熱交換器63が破損した場合、第1温調媒体TCM1及び第2温調媒体TCM2は、熱交換器63内の液圧が低圧の方の流路へと流れ込みやすい。このとき、第1温調回路61の第1分岐流路610b1に設けられた液圧保持手段614によって、熱交換器63内の第1温調媒体TCM1の液圧は所定圧以上に保持されているので、熱交換器63が破損した場合であっても、熱交換器63で第2温調媒体TCM2が第1温調回路61に流れ込み、非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入することを抑制できる。
【0047】
制御装置ECUは、内燃機関ICE、電力変換装置50、第2ポンプ621、バルブ装置626等を制御する。制御装置ECUは、例えば、各種演算を行うプロセッサ、各種情報を記憶する記憶装置、制御装置ECUの内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置等を備えるマイクロコントローラ(以下、マイコンともいう)によって実現することができる。なお、制御装置ECUは、1つのマイコンによって実現されてもよいし、複数のマイコンによって実現されてもよい。
【0048】
第2ポンプ621には、第2ポンプ621の回転速度を検出する回転速度センサ621aが取り付けられている。回転速度センサ621aは、第2ポンプ621の回転速度の検出値を制御装置ECUに出力する。
【0049】
図1に戻って、第1温調媒体TCM1がATFである場合、第1温調媒体TCM1の温度が低くなると、第1温調媒体TCM1の粘度が高くなる。第1温調媒体TCM1は、電動機20及び発電機30を流れるので、粘度が高くなると、電動機20及び発電機30で生じるフリクションロスが増大し、電動機20及び発電機30の出力効率が低下する。したがって、電動機20及び発電機30の始動時等、電動機20及び発電機30が高温となっておらず、第1温調媒体TCM1の温度が所定温度以下である場合、第1温調媒体TCM1は、冷却不要であり冷却されない方が好ましい。
【0050】
制御装置ECUは、第1温度センサ61aから出力された第1温調媒体TCM1の温度の検出値が所定温度以下のとき、バルブ装置626を全閉し、第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断するようにバルブ装置626を制御する。
【0051】
第2分岐流路620b2に第2温調媒体TCM2が流れるのを遮断すると、熱交換器63には第2温調媒体TCM2が供給されないので、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換は行われず、第1温調媒体TCM1は冷却されない。したがって、第1温調媒体TCM1が冷却不要のときに、熱交換器63で第1温調媒体TCM1を冷却しないようにすることができる。これにより、第1温調媒体TCM1の温度低下に伴う電動機20及び発電機30におけるフリクションロスの増大を抑制することができる。
【0052】
[制御装置による第1温調媒体TCM1のリーク検出]
本実施形態では、制御装置ECUは、圧力センサ615の検出値に基づいて、熱交換器63又は液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリークが発生しているか否かを判断し、第1温調媒体TCM1のリークが発生していると判断すると、第1温調媒体TCM1のリークを検出した旨の情報を外部に出力する。これにより、制御装置ECUは、第1温調媒体TCM1のリークが発生していることを車両Vのユーザ等に報知することが可能となる。
【0053】
具体的に説明すると、熱交換器63又は液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリークが発生した場合、液圧保持手段614によって保持されるはずの第1温調媒体TCM1の液圧、すなわち圧力センサ615によって検出される液圧が変動する。このため、制御装置ECUは、圧力センサ615の検出値に基づいて、第1温調媒体TCM1の液圧の変動がないかを監視することにより、熱交換器63又は液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリークを検出できる。
【0054】
ここで、
図2を参照しながら、熱交換器63又は液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリークと、圧力センサ615によって検出される第1温調媒体TCM1の液圧の変動との関係の一例について説明する。
【0055】
図2において、縦軸は、熱交換器63又は液圧保持手段614からの単位時間(ここでは1[min])当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量[L(リットル)/min]を示す。また、
図2において、横軸は、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1の液圧の変動値[kPa]を示す。
図2において符号ΔPに示す曲線のように、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量が大きい(多い)ほど、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1の液圧の変動値は大きくなる。
【0056】
次に、熱交換器63からの第1温調媒体TCM1のリークと、液圧保持手段614からの第1温調媒体TCM1のリークとについて、具体的に説明する。
【0057】
熱交換器63は、複数枚の伝熱プレートを積層して構成される。熱交換器63において、隣接する2枚の伝熱プレート間には、第1温調媒体TCM1又は第2温調媒体TCM2が流れる流路が形成される。第1温調媒体TCM1が流れる流路と、第2温調媒体TCM2が流れる流路とは、各伝熱プレート間において交互に形成されており、これによって、熱交換器63は、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間の熱交換を可能にしている。
【0058】
熱交換器63からのリークは、例えば、前述した熱交換器63の伝熱プレートが破断し、その破断箇所から第1温調媒体TCM1が流れ出すことによって発生する。一方、液圧保持手段614からのリークは、閉状態である液圧保持手段614(すなわちバルブ装置)のわずかな隙間から第1温調媒体TCM1が漏れ出すことによって発生する。このため、熱交換器63からのリークは、液圧保持手段614からのリークに比べて、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量が大きくなる傾向がある。
【0059】
ここで、
図3を参照しながら、熱交換器63からのリークが発生した場合の第1温調媒体TCM1の液圧の変動と、液圧保持手段614からのリークが発生した場合の第1温調媒体TCM1の液圧の変動との一例について説明する。
【0060】
図3において、縦軸は、単位時間(ここでは1[min])当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量[L(リットル)/min]を示す。また、
図3において、横軸は、時間[sec]を示す。
【0061】
図3において符号Aに示す曲線は、熱交換器63からのリークが発生した場合の、時間経過に伴う、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量の変化をあらわしている。また、
図3において符号Bに示す曲線は、液圧保持手段614からのリークが発生した場合の、時間経過に伴う、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量の変化をあらわしている。
【0062】
図3において符号A及びBに示す曲線のように、熱交換器63からのリークは、熱交換器63の電熱プレートの破断を主要因として発生するため、液圧保持手段614からのリークに比べて、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量が大きくなる。
【0063】
より具体的には、熱交換器63からのリークが発生すると、大きなリーク量で第1温調媒体TCM1が外部(例えば、第2温調媒体TCM2が流れる流路)に一気に流れ出す。そして、液圧保持手段614を実現する一対のバルブ装置間に保持されていた第1温調媒体TCM1のすべてが外部に流出すると、圧力センサ615によって検出される圧力の変動が収まり、例えば、圧力センサ615によって大気圧が検出されることとなる。
【0064】
[制御装置が行うリーク検出処理]
次に、
図4を参照しながら、第1温調媒体TCM1のリークを検出するために、制御装置ECUが行うリーク検出処理の一例について説明する。制御装置ECUは、例えば、所定のタイミングで
図4に示すリーク検出処理を実行する。なお、このリーク検出処理は、例えば、制御装置ECUのプロセッサが記憶装置等に予め記憶されたプログラムを実行することによって実現できる。
【0065】
まず、制御装置ECUは、車両Vのイグニッション電源がオンであるか否かを判断する(ステップS01)。車両Vのイグニッション電源がオンであれば(ステップS01:YES)、制御装置ECUは、車両Vの駆動時(例えば車両Vの速度が0よりも大きい所定値以上であるとき)に圧力センサ615によって検出された液圧である駆動時圧力を取得する(ステップS02)。
【0066】
次に、制御装置ECUは、車両Vが停止したか(すなわち車両Vの速度が0となったか)否かを判断する(ステップS03)。車両Vが停止していなければ(ステップS03:NO)、制御装置ECUは、ステップS02の処理へ移行する。一方、車両Vが停止すると(ステップS03:YES)、制御装置ECUは、車両Vの停止時(例えば車両Vの速度が0であるとき)に圧力センサ615によって検出された液圧である停止時圧力を取得する(ステップS04)。
【0067】
そして、制御装置ECUは、ステップS02で取得された駆動時圧力と、ステップS04で取得された停止時圧力と、に基づいて、これらの差(すなわち駆動時圧力-停止時圧力)である圧力変動値を取得して(ステップS05)、ステップS10の処理へ移行する。
【0068】
ここで、ステップS05の処理により取得される圧力変動値について補足説明する。駆動時圧力は、内燃機関ICEの回転数や車軸の回転数(すなわち車両Vの速度)によって変動するものの、前述した所定圧から、予め定められた上限値までの間の値をとる。また、停止時圧力は、第1温調媒体TCM1のリークが発生していなければ、液圧保持手段614があるために前述した所定圧となる。したがって、第1温調媒体TCM1のリークが発生していなければ、駆動時圧力と停止時圧力との差である圧力変動値は所定の範囲内の値をとる。一方、第1温調媒体TCM1のリークが発生していれば、停止時圧力は、前述した所定圧を下回り、例えば大気圧となる。このため、第1温調媒体TCM1のリークが発生していれば、駆動時圧力と停止時圧力との差である圧力変動値は、第1温調媒体TCM1のリークが発生していない場合よりも、大きくなる傾向がある。このような傾向を利用して、制御装置ECUは、後述するように、駆動時圧力と停止時圧力との差である圧力変動値に基づいて第1温調媒体TCM1のリークを検出することが可能である。
【0069】
一方、車両Vのイグニッション電源がオフであれば(ステップS01:NO)、制御装置ECUは、その時(以下「第1タイミング」ともいう)に圧力センサ615によって検出された液圧である第1圧力を取得する(ステップS06)。そして、制御装置ECUは、第1タイミングから所定期間が経過するのを待ち(ステップS07:NO)、第1タイミングから所定期間が経過した第2タイミングとなると(ステップS07:YES)、第2タイミングに圧力センサ615によって検出された液圧である第2圧力を取得する(ステップS08)。なお、第2タイミングにおいても、第1タイミングと同様に車両Vのイグニッション電源はオフであるものとする。
【0070】
そして、制御装置ECUは、ステップS06で取得された第1圧力と、ステップS08で取得された第2圧力と、に基づいて、これらの差(すなわち第1圧力-第2圧力)である圧力変動値を取得して(ステップS09)、ステップS10の処理へ移行する。前述したように、第1温調媒体TCM1のリークが発生していれば、圧力センサ615によって検出される液圧は、時間経過に伴って低下する。このため、第1温調媒体TCM1のリークが発生していなければ、第1圧力と第2圧力との差である圧力変動値は略0となるのに対し、第1温調媒体TCM1のリークが発生していれば、第1圧力と第2圧力との差である圧力変動値は0よりも大きくなる。このような傾向を利用して、制御装置ECUは、後述するように、第1圧力と第2圧力との差である圧力変動値に基づいて第1温調媒体TCM1のリークを検出することが可能である。
【0071】
次に、制御装置ECUは、ステップS05又はステップS09で取得した圧力変動値と、0よりも大きい所定の第1閾値Th1とに基づいて、圧力変動値が第1閾値Th1以上であるか否かを判断する(ステップS10)。なお、ステップS05の処理を行った場合(すなわち駆動時圧力と停止時圧力との差である圧力変動値を取得した場合)にステップS10の処理で用いる第1閾値Th1と、ステップS09の処理を行った場合(すなわち第1圧力と第2圧力との差である圧力変動値を取得した場合)にステップS10の処理で用いる第1閾値Th1と、は異なる値であってもよい。
【0072】
圧力変動値が第1閾値Th1未満であれば(ステップS10:NO)、制御装置ECUは、液圧保持手段614又は熱交換器63からの第1温調媒体TCM1のリークがない正常な状態であると判断して(ステップS11)、今回のリーク検出処理を終了する。
【0073】
一方、圧力変動値が第1閾値Th1以上であれば(ステップS10:YES)、制御装置ECUは、圧力変動値が第1閾値Th1よりもさらに大きい第2閾値Th2以上であるか否かを判定する(ステップS12)。前述したように、熱交換器63からのリークは、液圧保持手段614からのリークに比べて、単位時間当たりの第1温調媒体TCM1のリーク量が大きくなる。このため、熱交換器63からのリークが発生すると、液圧保持手段614からのリークが発生した場合よりも、第1温調媒体TCM1の液圧の変動が大きくなる。第2閾値Th2は、このような特性を利用して、熱交換器63からのリークなのか液圧保持手段614からのリークなのかを判断するために、制御装置ECUの製造者等により予め定められた所定値である。なお、ステップS05の処理を行った場合(すなわち駆動時圧力と停止時圧力との差である圧力変動値を取得した場合)にステップS12の処理で用いる第2閾値Th2と、ステップS09の処理を行った場合(すなわち第1圧力と第2圧力との差である圧力変動値を取得した場合)にステップS12の処理で用いる第2閾値Th2と、は異なる値であってもよい。
【0074】
圧力変動値が第2閾値Th2以上であれば(ステップS12:YES)、制御装置ECUは、熱交換器63において第1温調媒体TCM1のリークが発生していると判断して(ステップS13)、ステップS15の処理へ移行する。一方、圧力変動値が第2閾値Th2未満であれば(ステップS12:NO)、制御装置ECUは、熱交換器63又は液圧保持手段614において第1温調媒体TCM1のリークが発生していると判断して(ステップS14)、ステップS15の処理へ移行する。
【0075】
制御装置ECUは、ステップS13又はステップS14でリークが発生していると判断すると、車両Vのユーザ等に対し、第1温調媒体TCM1のリークが発生していることを報知して(ステップS15)、今回のリーク検出処理を終了する。
【0076】
例えば、熱交換器63において第1温調媒体TCM1のリークが発生していると判断した場合、制御装置ECUは、ステップS15において、熱交換器63において第1温調媒体TCM1のリークが発生している旨をユーザに報知する。また、熱交換器63又は液圧保持手段614において第1温調媒体TCM1のリークが発生していると判断した場合、制御装置ECUは、ステップS14において、熱交換器63と液圧保持手段614とのどちらかにおいて第1温調媒体TCM1のリークが発生している旨をユーザに報知する。
【0077】
また、制御装置ECUは、ステップS15において、例えば、車両Vが備えるディスプレイや警告灯等を用いてユーザに対する報知を行う。また、車両Vのイグニッション電源がオフである場合には、車両Vの車内にユーザがいない可能性が高い。このため、車両Vのイグニッション電源がオフである場合(すなわちステップS06~S09の処理を行った場合)には、制御装置ECUは、予め登録されたユーザの端末装置(例えばスマートフォン)に所定のメッセージ等を送信することによりユーザに対する報知を行ってもよい。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0079】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0080】
(1) 電動機(電動機20)と、前記電動機の温調を行う非導電性温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環する温調回路(第1温調回路61)と、を備える車両(車両V)であって、
前記温調回路は、
前記非導電性温調媒体と導電性温調媒体(第2温調回路62)との間で熱交換が可能な熱交換器(熱交換器63)と、
前記車両の駆動に伴って駆動し、前記非導電性温調媒体を循環させるポンプ(第1ポンプ611)と、
を備え、
前記温調回路は、前記熱交換器内における前記非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持する液圧保持手段(液圧保持手段614)をさらに備える、車両。
【0081】
(1)によれば、非導電性温調媒体が循環する温調回路が、熱交換器内における非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持する液圧保持手段を備えているので、熱交換器が破損したとしても非導電性温調媒体に導電性温調媒体が混入するのを抑制できる。
【0082】
(2) (1)に記載の車両であって、
前記電動機と駆動輪との間に設けられ、前記電動機と前記駆動輪との間における動力伝達が可能に構成された動力伝達装置(変速装置40)をさらに備え、
前記温調回路は、
前記非導電性温調媒体であるオイル(第1温調媒体TCM1)を前記熱交換器及び前記電動機に供給可能な第1流路(第1分岐流路610b1)と、
前記オイルを前記動力伝達装置に供給可能な第2流路(第2分岐流路610b2)と、
前記第1流路、又は前記第2流路に分岐する分岐部(分岐部613)と、
を備え、
前記液圧保持手段は、前記第1流路における前記分岐部と前記熱交換器との間に設けられる、車両。
【0083】
(2)によれば、ポンプが低出力駆動状態であるときであっても、動力伝達装置にオイルを供給して動力伝達装置を潤滑することができる。
【0084】
(3) (1)または(2)に記載の車両であって、
前記液圧保持手段は、前記熱交換器の流入側と流出側とのそれぞれに設けられた逆止弁である、車両。
【0085】
(3)によれば、車両の停止時や低速走行時等、ポンプが非駆動状態や低出力駆動状態であるときであっても、熱交換器内の非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持することができる。
【0086】
(4) (1)または(2)に記載の車両であって、
前記液圧保持手段は、前記熱交換器の流入側と流出側とのそれぞれに設けられた電磁弁であり、
前記車両は、前記電磁弁を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記車両の速度が閾値以下である場合に、前記熱交換器からの前記非導電性温調媒体の流出を制限するように前記電磁弁を制御する、車両。
【0087】
(4)によれば、車両の停止時や低速走行時等、ポンプが非駆動状態や低出力駆動状態であるときであっても、熱交換器内の非導電性温調媒体の液圧を所定圧以上に保持することができる。
【0088】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の車両であって、
前記車両は、
前記温調回路において、前記非導電性温調媒体を前記熱交換器に供給する流路における前記非導電性温調媒体の液圧を検出する圧力センサ(圧力センサ615)と、
前記圧力センサによって検出された前記非導電性温調媒体の液圧に基づいて、前記液圧保持手段または前記熱交換器から前記非導電性温調媒体のリークを検出する制御装置(制御装置ECU)と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両の駆動時に検出された前記液圧である駆動時圧力と、前記車両の停止時に検出された前記液圧である停止時圧力と、の差である圧力変動値が第1閾値以上である場合に、前記リークが発生していると判断する、車両。
【0089】
(5)によれば、圧力センサの検出値に基づいて、制御装置が熱交換器又は液圧保持手段からの非導電性温調媒体のリークを検出できるので、当該リークが発生していることを車両のユーザに報知したりすることが可能となる。
【0090】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の車両であって、
前記車両は、
前記温調回路において、前記非導電性温調媒体を前記熱交換器に供給する流路における前記非導電性温調媒体の液圧を検出する圧力センサ(圧力センサ615)と、
前記圧力センサによって検出された前記非導電性温調媒体の液圧に基づいて、前記液圧保持手段または前記熱交換器から前記非導電性温調媒体のリークを検出する制御装置(制御装置ECU)と、
をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両の停止時における第1タイミングで検出された前記液圧である第1圧力と、前記車両の停止時における前記第1タイミングよりも後の第2タイミングで検出された前記液圧である第2圧力と、の差である圧力変動値が第1閾値以上である場合に、前記リークが発生していると判断する、車両。
【0091】
(6)によれば、圧力センサの検出値に基づいて、制御装置が熱交換器又は液圧保持手段からの非導電性温調媒体のリークを検出できるので、当該リークが発生していることを車両のユーザ等に報知することが可能となる。
【0092】
(7) (5)または(6)に記載の車両であって、
前記制御装置は、前記圧力変動値が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上である場合に、前記熱交換器において前記リークが発生していると判断する、車両。
【0093】
(7)によれば、熱交換器からのリークを検出できるため、当該リークが発生していることを車両のユーザに報知したりすることが可能となる。
【符号の説明】
【0094】
10 車両用温調システム
20 電動機
61 第1温調回路(温調回路)
610b1 第1分岐流路(第1流路)
610b2 第2分岐流路(第2流路)
611 第1ポンプ(ポンプ)
613 分岐部
615 圧力センサ
63 熱交換器
ECU 制御装置
TCM1 第1温調媒体(非導電性温調媒体)
TCM2 第2温調媒体(導電性温調媒体)
V 車両