(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
(21)【出願番号】P 2021003823
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】本荘 拓也
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-238406(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146433(WO,A1)
【文献】特開2008-017693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転電機と、
前記第1回転電機を収容する回転電機ハウジングと、
前記回転電機ハウジングの内部に設けられ、前記第1回転電機と電気的に接続する活電部と、
前記第1回転電機の温調を行う温調回路と、を備える車両駆動装置であって、
前記温調回路は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、少なくとも一部が前記回転電機ハウジングの内部を通って前記第1回転電機の温調を行う第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環する第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、
前記第1温調回路は、前記回転電機ハウジングの内部において、前記第1回転電機の上方に配置され、前記第1回転電機の軸方向に延び、前記第1温調媒体を前記第1回転電機に滴下する滴下パイプを有し、
前記活電部は、前記第1回転電機の径方向外側で、前記第1回転電機の軸方向において前記第1回転電機とオーバーラップする位置に設けられており、
前記回転電機ハウジングの内部には、前記第1回転電機の径方向外側、且つ、前記第1回転電機と前記活電部との間で前記第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けら
れ、
前記保護カバーには、前記第1保護壁から前記第1回転電機に近づく方向に突出して上下方向及び前記第1回転電機の軸方向に延在する誘導傾斜部が設けられている、車両駆動装置。
【請求項2】
請求
項1に記載の車両駆動装置であって、
前記第1回転電機の軸方向は、水平な第1方向に延びており、
前記第1回転電機は、
略円環形状を有する第1ロータと、
前記第1ロータの外周面から径方向に所定の間隔を隔てて配置された第1ステータと、を有し、
前記第1ステータは、第1ステータコアと、前記第1ステータコアに取り付けられ、前記第1回転電機の軸方向に見て略円環形状を有する第1コイルと、を有し、
前記第1コイルは、前記第1ステータコアにおける前記第1回転電機の軸方向一端側の端面である一端側第1ステータコア端面から前記第1回転電機の軸方向の外側に突出した一端側第1コイルエンド部を有し、
前記第1回転電機には、前記一端側第1コイルエンド部の周方向の少なくとも一部を覆うコイル保護部材が設けられており、
前記誘導傾斜部は、前記第1方向から見て、先端部が、前記コイル保護部材の上方で、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向において前記コイル保護部材の上端部とオーバーラップする位置となるように形成されている、車両駆動装置。
【請求項3】
請求
項1又は2に記載の車両駆動装置であって、
前記回転電機ハウジングには、第2回転電機が収容されており、
前記第1回転電機の軸方向及び前記第2回転電機の軸方向は、いずれも水平な第1方向に延びており、
前記回転電機ハウジングの下部には、前記第1温調媒体が貯留する貯留部が形成されており、
前記第2回転電機は、
前記第1方向から見て、前記活電部の下方に位置し、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向において前記活電部と少なくとも一部がオーバーラップする位置に配置されており、
少なくとも一部が前記貯留部に貯留した前記第1温調媒体に浸漬しており、
前記保護カバーは、上下方向及び前記第2方向に延在して、前記活電部の前記第1方向の一方側の少なくとも一部を覆う第2保護壁を有する、車両駆動装置。
【請求項4】
請求
項3に記載の車両駆動装置であって、
前記第2保護壁には、前記第1方向に向かって開口し、前記活電部と前記第1回転電機とを電気的に接続する第1配線部材が挿通する開口部が形成されており、
前記開口部の下縁部には、前記第1方向において前記活電部から離れる方向に前記第2保護壁から突出する開口部保護壁が設けられている、車両駆動装置。
【請求項5】
第1回転電機と、
前記第1回転電機を収容する回転電機ハウジングと、
前記回転電機ハウジングの内部に設けられ、前記第1回転電機と電気的に接続する活電部と、
前記第1回転電機の温調を行う温調回路と、を備える車両駆動装置であって、
前記温調回路は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、少なくとも一部が前記回転電機ハウジングの内部を通って前記第1回転電機の温調を行う第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環する第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、
前記第1温調回路は、前記回転電機ハウジングの内部において、前記第1回転電機の上方に配置され、前記第1回転電機の軸方向に延び、前記第1温調媒体を前記第1回転電機に滴下する滴下パイプを有し、
前記活電部は、前記第1回転電機の径方向外側で、前記第1回転電機の軸方向において前記第1回転電機とオーバーラップする位置に設けられており、
前記回転電機ハウジングの内部には、前記第1回転電機の径方向外側、且つ、前記第1回転電機と前記活電部との間で前記第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けられ、
前記回転電機ハウジングには、第2回転電機が収容されており、
前記第1回転電機の軸方向及び前記第2回転電機の軸方向は、いずれも水平な第1方向に延びており、
前記回転電機ハウジングの下部には、前記第1温調媒体が貯留する貯留部が形成されており、
前記第2回転電機は、
前記第1方向から見て、前記活電部の下方に位置し、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向において前記活電部と少なくとも一部がオーバーラップする位置に配置されており、
少なくとも一部が前記貯留部に貯留した前記第1温調媒体に浸漬しており、
前記保護カバーは、上下方向及び前記第2方向に延在して、前記活電部の前記第1方向の一方側の少なくとも一部を覆う第2保護壁を有する、車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両駆動装置に関し、特に、温調回路を備える車両駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動車両など、回転電機を備える車両駆動装置が搭載された車両が知られている。一般に、回転電機は駆動すると発熱するため、車両駆動装置は回転電機を温調する温調回路を備える。例えば、特許文献1には、電動機Mと、電動機Mを冷却する循環路Lを有する温調回路と、を備える車両駆動装置が開示されている。
【0003】
特許文献1の車両駆動装置が備える温調回路は、オイルが循環し、電動機Mを冷却する循環路Lと、冷却水が循環し、インバータUを冷却する循環路Fと、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換を行う熱交換部(オイルクーラC)と、を有する。循環路FにはラジエータRが設けられており、循環路Fを流れる冷却水は、ラジエータRで冷却される。循環路Lを流れるオイルは、熱交換部(オイルクーラC)で、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとの間で熱交換が行われることによって冷却される。したがって、特許文献1の車両駆動装置は、オイルを冷却するためのラジエータが不要となり、循環路Fを流れる冷却水と循環路Lを流れるオイルとを1つのラジエータで冷却できるので、車両駆動装置を小型化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1の車両駆動装置は、熱交換部(オイルクーラC)が破損すると、循環路Fを流れてインバータUを冷却する冷却水が循環路Lに流れ込み、電動機Mを冷却するオイルに冷却水が混入する場合がある。
【0006】
そして、特許文献1の車両駆動装置では、冷却水が電動機Mを冷却するオイルに混入すると、冷却水を含むオイルが電動機Mに供給されるが、水は導電性を有するので、冷却水を含むオイルが電動機Mに供給されると、電動機Mで短絡が生じる虞がある。
【0007】
本発明は、回転電機の温調を行う非導電性の温調媒体に導電性の温調媒体が混入した場合でも、短絡が生じることを防止できる車両駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は
第1回転電機と、
前記第1回転電機を収容する回転電機ハウジングと、
前記回転電機ハウジングの内部に設けられ、前記第1回転電機と電気的に接続する活電部と、
前記第1回転電機の温調を行う温調回路と、を備える車両駆動装置であって、
前記温調回路は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、少なくとも一部が前記回転電機ハウジングの内部を通って前記第1回転電機の温調を行う第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環する第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、
前記第1温調回路は、前記回転電機ハウジングの内部において、前記第1回転電機の上方に配置され、前記第1回転電機の軸方向に延び、前記第1温調媒体を前記第1回転電機に滴下する滴下パイプを有し、
前記活電部は、前記第1回転電機の径方向外側で、前記第1回転電機の軸方向において前記第1回転電機とオーバーラップする位置に設けられており、
前記回転電機ハウジングの内部には、前記第1回転電機の径方向外側、且つ、前記第1回転電機と前記活電部との間で前記第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けられ、前記保護カバーには、前記第1保護壁から前記第1回転電機に近づく方向に突出して上下方向及び前記第1回転電機の軸方向に延在する誘導傾斜部が設けられている。
また、本発明は、
第1回転電機と、
前記第1回転電機を収容する回転電機ハウジングと、
前記回転電機ハウジングの内部に設けられ、前記第1回転電機と電気的に接続する活電部と、
前記第1回転電機の温調を行う温調回路と、を備える車両駆動装置であって、
前記温調回路は、
非導電性の第1温調媒体が循環し、少なくとも一部が前記回転電機ハウジングの内部を通って前記第1回転電機の温調を行う第1温調回路と、
導電性の第2温調媒体が循環する第2温調回路と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、
前記第1温調回路は、前記回転電機ハウジングの内部において、前記第1回転電機の上方に配置され、前記第1回転電機の軸方向に延び、前記第1温調媒体を前記第1回転電機に滴下する滴下パイプを有し、
前記活電部は、前記第1回転電機の径方向外側で、前記第1回転電機の軸方向において前記第1回転電機とオーバーラップする位置に設けられており、
前記回転電機ハウジングの内部には、前記第1回転電機の径方向外側、且つ、前記第1回転電機と前記活電部との間で前記第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けられ、
前記回転電機ハウジングには、第2回転電機が収容されており、
前記第1回転電機の軸方向及び前記第2回転電機の軸方向は、いずれも水平な第1方向に延びており、
前記回転電機ハウジングの下部には、前記第1温調媒体が貯留する貯留部が形成されており、
前記第2回転電機は、
前記第1方向から見て、前記活電部の下方に位置し、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向において前記活電部と少なくとも一部がオーバーラップする位置に配置されており、
少なくとも一部が前記貯留部に貯留した前記第1温調媒体に浸漬しており、
前記保護カバーは、上下方向及び前記第2方向に延在して、前記活電部の前記第1方向の一方側の少なくとも一部を覆う第2保護壁を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1回転電機の径方向外側、且つ、第1回転電機と活電部との間で第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けられているので、第1回転電機の温調を行う非導電性の第1温調媒体に、導電性の第2温調媒体が混入した場合でも、導電性の第2温調媒体を含む第1温調媒体が第1回転電機から飛散して活電部に付着することを第1保護壁によって防止できる。これにより、第1回転電機の温調を行う非導電性の第1温調媒体に導電性の第2温調媒体が混入した場合でも、短絡が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の車両駆動装置のシステムブロック図である。
【
図2】
図1の車両駆動装置における回転電機ハウジングの内部の要部を、左側から見た図である。
【
図3】
図2の回転電機ハウジングの内部を、回転電機ハウジング及び保護カバーを外した状態で要部のみを示した斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態の車両駆動装置の保護カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の車両駆動装置が搭載された車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面は、符号の向きに見るものとする。また、本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の運転者から見た方向に従って記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の車両駆動装置10は、内燃機関ICEと、電動機20と、発電機30と、変速装置40と、電力変換装置50と、温調回路60と、を備え、車両Vに搭載される。
【0013】
電動機20は、車両Vに搭載された不図示の蓄電装置に蓄電されている電力、又は、発電機30によって発電された電力によって、車両Vを駆動する動力を出力する回転電機である。電動機20は、車両Vの制動時に、車両Vの駆動輪の運動エネルギーによって発電し、前述の蓄電装置を充電してもよい。
【0014】
発電機30は、車両Vに搭載された内燃機関ICEの動力によって発電し、前述の蓄電装置を充電し、又は、電動機20に電力を供給する回転電機である。
【0015】
電動機20及び発電機30の詳細な構成については、後述する。
【0016】
変速装置40は、電動機20から出力された動力を減速して駆動輪に伝達する装置であり、例えば、歯車式の動力伝達装置である。
【0017】
電力変換装置50は、前述した蓄電装置から出力された電力を直流から交流へと変換して電動機20及び発電機30の入出力電力を制御する不図示のPDU(Power Drive Unit)と、必要に応じて前述した蓄電装置から出力された電力を昇圧する不図示のVCU(Voltage Control Unit)と、を備える。VCUは、車両Vの制動時に電動機20が発電した場合、電動機20が発電した電力を降圧してもよい。
【0018】
温調回路60は、非導電性の第1温調媒体TCM1が循環し、電動機20、発電機30、及び変速装置40の温調を行う第1温調回路61と、導電性の第2温調媒体TCM2が循環し、電力変換装置50の温調を行う第2温調回路62と、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換を行う熱交換器63と、を有する。非導電性の第1温調媒体TCM1は、例えば、ATF(Automatic Transmission Fluid)と呼ばれる、電動機20、発電機30、及び変速装置40の潤滑及び温調を行うことが可能なオイルである。導電性の第2温調媒体TCM2は、例えば、LLC(Long Life Coolant)と呼ばれる、冷却水である。
【0019】
第1温調回路61には、第1ポンプ611が設けられている。第1ポンプ611は、例えば、内燃機関ICEの動力と、車両Vの不図示の車軸の回転力と、によって駆動する機械式ポンプである。第1温調回路61は、分岐部613を有する。第1温調回路61は、第1ポンプ611が設けられ、上流側の端部が回転電機ハウジング70の貯留部75(
図2参照)に接続し、第1ポンプ611を通って、下流側の端部が分岐部613に接続する圧送流路610aと、電動機20及び発電機30が設けられ、上流側の端部が分岐部613に接続し、電動機20及び発電機30を通って、下流側の端部が回転電機ハウジング70の貯留部75に接続する第1分岐流路610b1と、変速装置40が設けられ、上流側の端部が分岐部613に接続し、変速装置40を通って、下流側の端部が回転電機ハウジング70の貯留部75に接続する第2分岐流路610b2と、を有する。第1温調回路61において、熱交換器63は、第1分岐流路610b1の電動機20及び発電機30よりも上流に配置されている。なお、回転電機ハウジング70の貯留部75の詳細については、後述する。
【0020】
したがって、第1温調回路61には、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第1分岐流路610b1を通って、熱交換器63で第2温調媒体TCM2と熱交換することによって冷却され、電動機20及び発電機30に供給されて電動機20及び発電機30を潤滑及び温調した後、回転電機ハウジング70の貯留部75に貯留する流路と、第1ポンプ611から圧送された第1温調媒体TCM1が、分岐部613から第2分岐流路610b2を通って、変速装置40に供給されて変速装置40を潤滑及び温調した後、回転電機ハウジング70の貯留部75に貯留する流路と、が並列に形成され、回転電機ハウジング70の貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1が圧送流路610aを流れて第1ポンプ611に供給されて、第1温調媒体TCM1が第1温調回路61を循環する。
【0021】
本実施形態では、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2は、第1分岐流路610b1を流れる第1温調媒体TCM1の流量が、第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の流量よりも大きくなるように形成されている。
【0022】
第1温調回路61は、上流側の端部が貯留部75に接続し、下流側の端部が第1ポンプ611より下流側で圧送流路610aに接続する調圧回路610cをさらに有する。調圧回路610cには、調圧バルブ619が設けられている。調圧バルブ619は、逆止弁であってもよいし、ソレノイドバルブ等の電磁弁であってもよい。第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の液圧が所定の上限圧以上となると調圧バルブ619は開状態となり、第1ポンプ611から圧送される第1温調媒体TCM1の一部が貯留部75に戻される。これにより、第1分岐流路610b1及び第2分岐流路610b2を流れる第1温調媒体TCM1の液圧は、上限圧以下に保持される。
【0023】
第2温調回路62には、第2ポンプ621と、ラジエータ622と、貯留タンク623と、が設けられている。第2ポンプ621は、例えば、前述した蓄電装置に蓄電された電力によって駆動する電動式ポンプである。ラジエータ622は、車両Vの前部に配置されており、車両Vの走行時における走行風によって、第2温調媒体TCM2を冷却する放熱装置である。貯留タンク623は、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2を一時的に貯留するタンクである。第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2にキャビテーションが発生した場合でも、第2温調回路62を循環する第2温調媒体TCM2が貯留タンク623で一時的に貯留されることによって、第2温調媒体TCM2に発生したキャビテーションは消滅する。
【0024】
第2温調回路62は、分岐部624及び合流部625を有する。第2温調回路62は、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622が、上流側からこの順に設けられ、上流側の端部が合流部625に接続し、貯留タンク623、第2ポンプ621、及びラジエータ622を通って、下流側の端部が分岐部624に接続する圧送流路620aを有する。貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2は、圧送流路620aを通って第2ポンプ621で圧送され、ラジエータ622で冷却される。
【0025】
第2温調回路62は、電力変換装置50が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、電力変換装置50を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第1分岐流路620b1と、熱交換器63が設けられ、上流側の端部が分岐部624に接続し、熱交換器63を通って、下流側の端部が合流部625に接続する第2分岐流路620b2と、をさらに有する。本実施形態では、第2分岐流路620b2の熱交換器63よりも上流部分に、バルブ装置626が設けられている。本実施形態では、バルブ装置626は、第2分岐流路620b2を全開状態と全閉状態とのいずれかの状態に切り替えるON-OFFバルブであってもよいし、第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2の流量を調節可能な可変流量バルブであってもよい。
【0026】
したがって、圧送流路620aにおいて第2ポンプ621で圧送されてラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2は、分岐部624で第1分岐流路620b1と第2分岐流路620b2とに分岐する。第1分岐流路620b1を流れる第2温調媒体TCM2は、電力変換装置50を冷却して合流部625で第2分岐流路620b2及び圧送流路620aと合流する。第2分岐流路620b2を流れる第2温調媒体TCM2は、熱交換器63で第1温調媒体TCM1と熱交換することによって第1温調媒体TCM1を冷却し、合流部625で第1分岐流路620b1及び圧送流路620aと合流する。第1分岐流路620b1を流れた第2温調媒体TCM2と第2分岐流路620b2を流れた第2温調媒体TCM2とは、合流部625で合流して圧送流路620aを流れて貯留タンク623に一時的に貯留される。そして、貯留タンク623に貯留された第2温調媒体TCM2が圧送流路620aを通って第2ポンプ621に再び供給されて、第2温調媒体TCM2が第2温調回路62を循環する。
【0027】
第1温調回路61において、電動機20、発電機30、及び変速装置40を冷却した後、回転電機ハウジング70の貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1の温度は約120[℃]である。したがって、熱交換器63には、約100[℃]の第1温調媒体TCM1が供給される。
【0028】
一方、第2温調回路62において、ラジエータ622で冷却された第2温調媒体TCM2の温度は約40[℃]である。熱交換器63に供給される第2温調媒体TCM2は、被温調装置である電力変換装置50を通らないため、熱交換器63には、約40[℃]の第2温調媒体TCM2が供給される。
【0029】
熱交換器63は、熱交換器63に供給された約100[℃]の第1温調媒体TCM1と約40[℃]の第2温調媒体TCM2との間で、熱交換を行う。そして、熱交換器63からは、約80[℃]の第1温調媒体TCM1が、第1温調回路61の第1分岐流路610b1の下流側に排出され、約70[℃]の第2温調媒体TCM2が、第2温調回路62の第2分岐流路620b2の下流側に排出される。
【0030】
このようにして、第1温調媒体TCM1は、熱交換器63で冷却されるので、温調回路60は、第1温調媒体TCM1を冷却するためのラジエータを設けることなく、第1温調媒体TCM1を冷却することができる。したがって、温調回路60は、1つのラジエータ622で、第1温調回路61を流れる第1温調媒体TCM1と第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2とを冷却することができるので、温調回路60を小型化できる。
【0031】
なお、第1温調媒体TCM1がATFである場合、第1温調媒体TCM1の温度が低くなると、第1温調媒体TCM1の粘度が高くなる。第1温調媒体TCM1は、電動機20及び発電機30を流れるので、粘度が高くなると、電動機20及び発電機30で生じるフリクションロスが増大し、電動機20及び発電機30の出力効率が低下する。したがって、車両Vの始動時等、電動機20及び発電機30が高温となっておらず、第1温調媒体TCM1の温度が所定温度以下である場合、第1温調媒体TCM1は、冷却不要であり冷却されない方が好ましい。
【0032】
このとき、第2温調回路62の第2分岐流路620b2には、熱交換器63よりも上流側にバルブ装置626が設けられているので、バルブ装置626を全閉し、第2温調媒体TCM2が第2分岐流路620b2を流れるのを遮断することができる。第2分岐流路620b2に第2温調媒体TCM2が流れるのを遮断すると、熱交換器63には第2温調媒体TCM2が供給されないので、第1温調媒体TCM1と第2温調媒体TCM2との間で熱交換は行われず、第1温調媒体TCM1は冷却されない。したがって、第1温調媒体TCM1が冷却不要のときに、熱交換器63で第1温調媒体TCM1を冷却しないようにすることができる。これにより、第1温調媒体TCM1が冷却不要の場合に、熱交換器63で第1温調媒体TCM1が冷却されてしまうことを防止できる。
【0033】
図2~
図4に示すように、車両駆動装置10は、電動機20、発電機30、及び変速装置40を収容する回転電機ハウジング70をさらに備える。
【0034】
電動機20は、車両Vの車幅方向に水平に延びる第1回転軸RC1を中心に回転する略円環形状を有する電動機ロータ21と、電動機ロータ21の外周面から径方向に所定の間隔を隔てて配置された電動機ステータ22と、を有する。電動機ステータ22は、電動機ロータ21の外周面から径方向に所定の間隔を隔てた円筒状の内周面を有する略円環形状の電動機ステータコア221と、電動機ステータコア221に取り付けられ、第1回転軸RC1の軸方向、すなわち車両Vの車幅方向から見て、略円環形状を有する電動機コイル222と、を有する。電動機ステータコア221は、電動機ステータコア221に形成された第1回転軸RC1の軸方向に貫通する貫通孔を挿通する締結ボルト23によって回転電機ハウジング70に固定されている。電動機コイル222は、U相、V相、W相の3相の巻線を構成する。電動機コイル222は、電動機ステータコア221における第1回転軸RC1の軸方向の一端側の端面、本実施形態では車両Vの車幅方向の左端側の端面である左端側電動機ステータコア端面221aから第1回転軸RC1の軸方向の外側、すなわち車幅方向の左側に突出した左端側電動機コイルエンド部222aを有する。同様に、電動機コイル222は、電動機ステータコア221における第1回転軸RC1の軸方向の他端側、本実施形態では車両Vの車幅方向の右端側の端面である右端側電動機ステータコア端面221bから第1回転軸RC1の軸方向の外側、すなわち車幅方向の右側に突出した右端側電動機コイルエンド部222bを有する。
【0035】
発電機30は、第1回転軸RC1と平行に車両Vの車幅方向に水平に延びる第2回転軸RC2を中心に回転する略円環形状を有する発電機ロータ31と、発電機ロータ31の外周面から径方向に所定の間隔を隔てて配置された発電機ステータ32と、を有する。第2回転軸RC2は、第1回転軸RC1よりも前方且つ下方で、第1回転軸RC1と平行に車両Vの車幅方向に水平に延びている。発電機30は、第1回転軸RC1及び第2回転軸RC2の軸方向、すなわち車両Vの車幅方向において、少なくとも一部が電動機20とオーバーラップするように配置されている。発電機ステータ32は、発電機ロータ31の外周面から径方向に所定の間隔を隔てた円筒状の内周面を有する略円環形状の発電機ステータコア321と、発電機ステータコア321に取り付けられ、第2回転軸RC2の軸方向、すなわち車両Vの車幅方向から見て、略円環形状を有する発電機コイル322と、を有する。発電機ステータコア321は、発電機ステータコア321に形成された第2回転軸RC2の軸方向に貫通する貫通孔を挿通する締結ボルト33によって回転電機ハウジング70に固定されている。発電機コイル322は、U相、V相、W相の3相の巻線を構成する。発電機コイル322は、発電機ステータコア321における第2回転軸RC2の軸方向の一端側の端面、本実施形態では車両Vの車幅方向の左端側の端面である左端側発電機ステータコア端面321aから第2回転軸RC2の軸方向の外側、すなわち車幅方向の左側に突出した左端側発電機コイルエンド部322aを有する。同様に、発電機コイル322は、発電機ステータコア321における第2回転軸RC2の軸方向の他端側、本実施形態では車両Vの車幅方向の右端側の端面である右端側発電機ステータコア端面321bから第2回転軸RC2の軸方向の外側、すなわち車幅方向の右側に突出した右端側発電機コイルエンド部322bを有する。
【0036】
電動機20には、左端側電動機コイルエンド部222aの周方向の少なくとも一部を覆う電動機コイル保護部材24が設けられている。電動機コイル保護部材24は、周方向において、前下部分の左端側電動機コイルエンド部222aを覆っている。
【0037】
電動機コイル保護部材24は、電動機ステータコア221に固定され、左端側電動機ステータコア端面221aから第1回転軸RC1の軸方向の外側、すなわち車幅方向の左側に突出し、第1回転軸RC1の軸方向、すなわち車幅方向から見て略円弧形状を有し、前下部分の左端側電動機コイルエンド部222aの外周面を覆う第1保護部材241と、第1保護部材241に固定され、第1回転軸RC1の軸方向、すなわち車幅方向から見て、第1回転軸RC1の径方向及び周方向に延びる略円弧形状を有し、前下部分の左端側電動機コイルエンド部222aの軸方向における左側端面を覆う第2保護部材242と、を有する。
【0038】
第1保護部材241は、例えば、ダイキャスト成型された合金等によって形成されている。第1保護部材241は、前下部分の左端側電動機コイルエンド部222aの外周面を覆っているので、左端側電動機コイルエンド部222aと、電動機20の前下方に配置される発電機30の左端側発電機コイルエンド部322aと、の間に配置される。したがって、第1保護部材241は、車両Vの前突時等、回転電機ハウジング70に前方から荷重が入力されて、発電機30が後方に変位した場合に、左端側発電機コイルエンド部322aが左端側電動機コイルエンド部222aに直接接触することを防止する。これにより、車両Vの前突時等、回転電機ハウジング70に前方から荷重が入力されて、発電機30が後方に変位した場合であっても、左端側発電機コイルエンド部322aが左端側電動機コイルエンド部222aに直接接触して短絡等が生じることを防止できる。
【0039】
第2保護部材242は、例えば、樹脂等によって形成されている。第2保護部材242は、前下部分の左端側電動機コイルエンド部222aの軸方向における左側端面を覆っており、車両Vの衝突時等、回転電機ハウジング70に荷重が入力されて、回転電機ハウジング70が変形又は破損した場合に、変形した回転電機ハウジング70や、破損した回転電機ハウジング70の破片が、左端側発電機コイルエンド部322aに接触することを防止する。これにより、車両Vの衝突時等、回転電機ハウジング70に荷重が入力されて、回転電機ハウジング70が変形又は破損した場合であっても、左端側電動機コイルエンド部222aが損傷することを抑制でき、リンプホームモード等によって、最低限の機能で電動機20を駆動して、例えば近くの修理工場や自宅までの短距離を車両Vが移動可能とすることができる。
【0040】
回転電機ハウジング70の内部には、電動機20の上方に配置され、第1回転軸RC1の軸方向に延びる第1滴下パイプ71と、発電機30の上方に配置され、第2回転軸RC2の軸方向に延びる第2滴下パイプ72と、が設けられている。本実施形態では、第1滴下パイプ71は、第1回転軸RC1よりも前方で第1回転軸RC1の軸方向に延びる前側第1滴下パイプ711と、第1回転軸RC1よりも後方で第1回転軸RC1の軸方向に延びる後側第1滴下パイプ712と、の2本の滴下パイプを備える。第2滴下パイプ72は、第2回転軸RC2よりも前方で第2回転軸RC2の軸方向に延びる前側第2滴下パイプ721と、第2回転軸RC2よりも後方で第2回転軸RC2の軸方向に延びる後側第2滴下パイプ722と、の2本の滴下パイプを備える。
【0041】
本実施形態では、回転電機ハウジング70の内部に、電動機20の中空のロータシャフト(不図示)の中空内部で第1回転軸RC1の軸方向に延びる第1軸心パイプ731と、発電機30の中空のロータシャフト(不図示)の中空内部で第2回転軸RC2の軸方向に延びる第2軸心パイプ732と、が設けられている。
【0042】
さらに、本実施形態では、回転電機ハウジング70の外部から回転電機ハウジング70の内部に第1温調媒体TCM1を導入し、第1滴下パイプ71及び第2滴下パイプ72、並びに、第1軸心パイプ731及び第2軸心パイプ732と連通する導入パイプ74が設けられている。したがって、導入パイプ74によって、回転電機ハウジング70の外部から回転電機ハウジング70の内部に第1温調媒体TCM1が導入されて、第1滴下パイプ71及び第2滴下パイプ72、並びに、第1軸心パイプ731及び第2軸心パイプ732に第1温調媒体TCM1が供給される。
【0043】
したがって、第1滴下パイプ71及び第2滴下パイプ72、並びに、第1軸心パイプ731及び第2軸心パイプ732には、前述した非導電性の第1温調媒体TCM1が流れる。このようにして、第1滴下パイプ71及び第2滴下パイプ72、並びに、第1軸心パイプ731及び第2軸心パイプ732は、回転電機ハウジング70の内部において、前述した第1温調回路61の第1分岐流路610b1を構成する。
【0044】
第1滴下パイプ71の外周面には、下方に開口した滴下孔71aが第1回転軸RC1に沿って複数形成されており、第1滴下パイプ71は、第1滴下パイプ71を流れる第1温調媒体TCM1を滴下孔71aから電動機20に滴下する。第1滴下パイプ71の滴下孔71aから電動機20に滴下された第1温調媒体TCM1は、電動機20と接触して電動機20を冷却した後、重力によって電動機20の下方に流下する。
【0045】
第2滴下パイプ72の外周面には、下方に開口した滴下孔72aが第2回転軸RC2に沿って複数形成されており、第2滴下パイプ72は、第2滴下パイプ72を流れる第1温調媒体TCM1を滴下孔72aから発電機30に滴下する。第2滴下パイプ72の滴下孔72aから発電機30に滴下された第1温調媒体TCM1は、発電機30と接触して発電機30を冷却した後、重力によって発電機30の下方に流下する。
【0046】
第1軸心パイプ731の外周面には、供給孔が第1回転軸RC1に沿って複数形成されており、第1軸心パイプ731は、第1軸心パイプ731を流れる第1温調媒体TCM1を供給孔から電動機20のロータシャフトの中空内部に供給する。第1軸心パイプ731の供給孔から電動機20のロータシャフトの中空内部に供給された第1温調媒体TCM1は、電動機ロータ21及び電動機ステータ22に供給されて電動機ロータ21及び電動機ステータ22を冷却した後、重力によって電動機20の下方に流下する。
【0047】
第2軸心パイプ732の外周面には、不図示の供給孔が第2回転軸RC2に沿って複数形成されており、第2軸心パイプ732は、第2軸心パイプ732を流れる第1温調媒体TCM1を供給孔から発電機30のロータシャフトの中空内部に供給する。第2軸心パイプ732の供給孔から発電機30のロータシャフトの中空内部に供給された第1温調媒体TCM1は、発電機ロータ31及び発電機ステータ32に供給されて発電機ロータ31及び発電機ステータ32を冷却した後、重力によって発電機30の下方に流下する。
【0048】
回転電機ハウジング70の下部には貯留部75が形成されている。貯留部75は、車幅方向から見て、発電機30の下方に形成されており、前後方向において、少なくとも一部が発電機30とオーバーラップするように形成されている。貯留部75には、第1温調媒体TCM1が貯留している。第1滴下パイプ71から滴下され、電動機20を冷却した後、重力によって電動機20の下方に流下した第1温調媒体TCM1、第2滴下パイプ72から滴下され、発電機30と接触して発電機30を冷却した後、重力によって発電機30の下方に流下した第1温調媒体TCM1、第1軸心パイプ731から供給され、電動機20を冷却した後、重力によって電動機20の下方に流下した第1温調媒体TCM1、及び、第2軸心パイプ732から供給され、発電機30と接触して発電機30を冷却した後、重力によって発電機30の下方に流下した第1温調媒体TCM1は、貯留部75に貯留する。
【0049】
発電機30は、少なくとも一部が貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1に浸漬している。より詳細には、発電機30は、発電機ロータ31の少なくとも一部が貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1に浸漬している。したがって、発電機30の駆動時、回転する発電機ロータ31によって貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1が掻き上げられ、発電機ロータ31によって掻き上げられた第1温調媒体TCM1は、回転電機ハウジング70の内部を飛散して、電動機20、発電機30、変速装置40等を温調する。これにより、車両駆動装置10の温調性能が向上する。
【0050】
このように、第1温調回路61は、少なくとも第1滴下パイプ71及び第2滴下パイプ72、第1軸心パイプ731及び第2軸心パイプ732、並びに、導入パイプ74が回転電機ハウジング70の内部を通っており、電動機20、発電機30、及び変速装置40の温調を行う。
【0051】
回転電機ハウジング70の内部には、活電部80が設けられている。活電部80は、コネクタユニット81と、発電機端子台82と、発電機バスバーユニット83と、を有する。活電部80は、電動機20の径方向外側且つ発電機30の径方向外側で、第1回転軸RC1及び第2回転軸RC2の軸方向、すなわち車幅方向において電動機20及び発電機30とオーバーラップする位置に設けられている。活電部80は、電動機20の前方且つ発電機30の上方に配置されている。活電部80は、電動機20の前方で、上下方向において少なくとも一部が電動機20とオーバーラップするように配置されている。活電部80は、発電機30の上方で、前後方向において少なくとも一部が発電機30とオーバーラップするように配置されている。すなわち、発電機30は、車幅方向から見て、活電部80の下方に位置し、前後方向において活電部80と少なくとも一部がオーバーラップする位置に配置されている。
【0052】
コネクタユニット81は、U相、V相、W相の3つの端子811U、811V、811Wを備える第1端子部811と、U相、V相、W相の3つの端子812U、812V、812Wを備える第2端子部812と、を有する。コネクタユニット81は、第1端子部811の3つの端子811U、811V、811W、及び第2端子部812の3つの端子812U、812V、812Wの計6つの端子と電気的に接続する6相コネクタ部813をさらに有する。6相コネクタ部813は、第1端子部811の3つの端子811U、811V、811W、及び第2端子部812の3つの端子812U、812V、812Wの計6つの端子とそれぞれ不図示のバスバーによって電気的に接続されている。6相コネクタ部813は、ハーネスやバスバー等によって、電力変換装置50と電気的に接続される。
【0053】
本実施形態では、第1端子部811は、第2端子部812よりも車幅方向左側に配置され、U相、V相、W相の3つの端子811U、811V、811Wが車両Vの前後方向に並んで配置されている。第2端子部812は、第1端子部811よりも車幅方向右側で、前後方向において第1端子部811と略同位置に配置され、U相、V相、W相の3つの端子812U、812V、812Wが車両Vの前後方向に並んで配置されている。第2端子部812は、第1端子部811よりも下方に位置している。
【0054】
発電機端子台82は、U相、V相、W相の3つの端子821U、821V、821Wを備える。
【0055】
発電機バスバーユニット83は、U相バスバー83U、V相バスバー83V、及びW相バスバー83Wの3本のバスバーを備える。U相バスバー83Uは、コネクタユニット81の第2端子部812のU相の端子812Uと、発電機端子台82のU相の端子821Uと、を接続する。V相バスバー83Vは、コネクタユニット81の第2端子部812のV相の端子812Vと、発電機端子台82のV相の端子821Vと、を接続する。W相バスバー83Wは、コネクタユニット81の第2端子部812のW相の端子812Wと、発電機端子台82のW相の端子821Wと、を接続する。
【0056】
回転電機ハウジング70の内部には、第1端子部811のU相、V相、W相の各相の端子811U、811V、811Wと、電動機コイル222のU相、V相、W相の各相の巻線とを電気的に接続するU相、V相、W相の第1配線部材761U、761V、761Wが設けられている。U相、V相、W相の第1配線部材761U、761V、761Wは、一端部が第1端子部811のU相、V相、W相の3つの端子811U、811V、811Wにそれぞれ接続されており、他端部が電動機コイル222のU相、V相、W相の各相の巻線にそれぞれ接続されている。
【0057】
回転電機ハウジング70の内部には、発電機端子台82のU相、V相、W相の3つの端子821U、821V、821Wと、発電機コイル322のU相、V相、W相の各相の巻線とを電気的に接続するU相、V相、W相の第2配線部材762U、762V、762Wが設けられている。U相、V相、W相の第2配線部材762U、762V、762Wは、一端部が発電機端子台82のU相、V相、W相の3つの端子821U、821V、821Wにそれぞれ接続されており、他端部が発電機コイル322のU相、V相、W相の各相の巻線にそれぞれ接続されている。
【0058】
したがって、電動機コイル222のU相、V相、W相の各相の巻線は、第1配線部材761U、761V、761W、及び、活電部80のコネクタユニット81を介して、電力変換装置50と電気的に接続される。発電機コイル322のU相、V相、W相の各相の巻線は、第2配線部材762U、762V、762W、並びに、活電部80の発電機バスバーユニット83及びコネクタユニット81を介して、電力変換装置50と電気的に接続される。そして、電動機20及び発電機30は、電力変換装置50によって、入出力電力が制御される。
【0059】
回転電機ハウジング70の内部には、さらに、活電部80を覆う保護カバー90が設けられている。保護カバー90は、非導電性の材料によって形成されており、例えば、樹脂によって形成されている。
【0060】
図4及び
図5に示すように、保護カバー90は、電動機20の径方向外側、且つ、電動機20と活電部80との間で第1回転軸RC1の軸方向及び上下方向に延在して、活電部80の後側を覆う第1保護壁91と、上下方向及び前後方向に延在して、活電部80の車幅方向の左側を覆う第2保護壁92と、活電部80前方で第1回転軸RC1の軸方向及び上下方向に延在して、活電部80の後側を覆う第3保護壁93と、を有する。保護カバー90は、第1保護壁91、第2保護壁92、及び第3保護壁93が一体に形成されている。第1保護壁91は、第2保護壁92の後端部と接続して車幅方向の右側に向かって延在しており、第3保護壁93は、第2保護壁92の前端部と接続して車幅方向の右側に延在している。
【0061】
本実施形態では、第1保護壁91は、第1回転軸RC1の軸方向及び上下方向に延在しており、車幅方向から見て、第1保護壁91の上下方向の中腹部は、電動機ステータコア221に沿って前方に湾曲して抉れた形状を有している。第2保護壁92は、上下方向及び前後方向に延在しており、第2保護壁の上下方向の中腹部は、車幅方向外側、すなわち左側に突出した形状を有している。
【0062】
温調回路60において、熱交換器63が破損した場合、第1温調媒体TCM1が流れる第1温調回路61に第2温調回路62を流れる第2温調媒体TCM2の一部が流れ込み、非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入する場合がある。非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入し、第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が電動機20から飛散して活電部80に付着すると、第2温調媒体TCM2は導電性を有するので、例えば、第1端子部811のU相、V相、W相の各相の端子811U、811V、811W間などで、短絡が生じる虞がある。
【0063】
本実施形態では、保護カバー90は、電動機20の径方向外側、且つ、電動機20と活電部80との間で第1回転軸RC1の軸方向及び上下方向に延在して、活電部80の後側を覆う第1保護壁91を有するので、電動機20の温調を行う非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入した場合でも、導電性の第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が電動機20から飛散して活電部80に付着することを第1保護壁91によって防止できる。これにより、電動機20の温調を行う非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入した場合でも、短絡が生じることを防止できる。
【0064】
第2保護壁92の上部には、車幅方向に向かって開口する開口部921が形成されている。開口部921には、活電部80の第1端子部811のU相、V相、W相の各相の端子811U、811V、811Wと、電動機20の電動機コイル222のU相、V相、W相の各相の巻線とを電気的に接続している第1配線部材761U、761V、761Wが挿通している。
【0065】
なお、活電部80の下側は、保護カバー90によって覆われていない。そして、第2配線部材762U、762V、762Wは、発電機30の発電機コイル322から上方に向かって延び、保護カバー90の下部から、保護カバー90によって覆われていない活電部80の下側を通って、活電部80の発電機端子台82のU相、V相、W相の各相の端子821U、821V、821Wと接続している。
【0066】
前述したように、発電機30の駆動時、回転する発電機ロータ31によって貯留部75に貯留した第1温調媒体TCM1が掻き上げられ、発電機ロータ31によって掻き上げられた第1温調媒体TCM1は、回転電機ハウジング70の内部を飛散する。このとき、発電機ロータ31の外周面は、発電機ステータ32に覆われているので、発電機ロータ31によって掻き上げられた第1温調媒体TCM1は、主に、発電機ロータ31の軸方向両端面から飛散する。
【0067】
本実施形態では、保護カバー90は、上下方向及び前後方向に延在して、活電部80の車幅方向の左側を覆う第2保護壁92を有するので、発電機ロータ31によって掻き上げられて発電機ロータ31の車幅方向左側の軸方向端面から飛散する第1温調媒体TCM1が、車幅方向の左側から活電部80に付着することを第2保護壁92によって防止できる。
【0068】
したがって、非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入し、発電機30の駆動時に、貯留部75に貯留した第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が回転する発電機ロータ31によって掻き上げられて回転電機ハウジング70の内部を飛散する場合であっても、発電機ロータ31によって掻き上げられて回転電機ハウジング70の内部を飛散する導電性の第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が活電部80に付着して短絡が生じることを防止できる。
【0069】
保護カバー90には、第1保護壁91から電動機20に近づく方向に突出して上下方向及び車幅方向(第1回転軸RC1の軸方向)に延在する誘導傾斜部911が設けられている。本実施形態では、誘導傾斜部911は、車幅方向から見て、第1保護壁91から後方に突出し、後方に向かうにしたがって下方に傾斜して、上下方向及び車幅方向(第1回転軸RC1の軸方向)に延在している。
【0070】
したがって、電動機20から飛散して保護カバー90の誘導傾斜部911より上方の第1保護壁91に付着した第1温調媒体TCM1は、重力によって第1保護壁91を伝って下方に流れ、誘導傾斜部911を伝って誘導傾斜部911の先端部911aから電動機20に向かって排出される。これにより、電動機20から飛散して保護カバー90の誘導傾斜部911より上方の第1保護壁91に付着した第1温調媒体TCM1を誘導傾斜部911の先端部911aから再び電動機20に供給して、電動機20を温調することができるので、電動機20をより効率的に温調できる。
【0071】
第1滴下パイプ71から滴下された第1温調媒体TCM1は、多くが略円環形状の左端側電動機コイルエンド部222aの外周面に沿って流れる。前側第1滴下パイプ711から滴下され、左端側電動機コイルエンド部222aの前上部の外周面に沿って流れる第1温調媒体TCM1は、左端側電動機コイルエンド部222aの前端面に達すると、重力によって鉛直下方に流下してしまう。そのため、左端側電動機コイルエンド部222aの前下部には第1温調媒体TCM1が供給されにくく、左端側電動機コイルエンド部222aの前下部は適切に温調することが難しい。
【0072】
本実施形態では、誘導傾斜部911は、車幅方向から見て、先端部911aが、電動機コイル保護部材24の上方で、前後方向において電動機コイル保護部材24の上端部24aとオーバーラップする位置となるように形成されている。
【0073】
したがって、誘導傾斜部911の先端部911aから電動機20に向かって供給された第1温調媒体TCM1は、電動機コイル保護部材24の上端部24aから、電動機コイル保護部材24と、電動機ステータコア221の左端側電動機ステータコア端面221aと、によって囲まれた空間に供給される。そして、当該空間に供給された第1温調媒体TCM1は、当該空間の内部を左端側電動機コイルエンド部222aに沿って流れ、左端側電動機コイルエンド部222aの前下部を温調して、電動機コイル保護部材24の下端部から当該空間の外部へ排出される。これにより、左端側電動機コイルエンド部222aをより効率的に温調できる。特に、左端側電動機コイルエンド部222aの前下部に第1温調媒体TCM1を供給でき、適切に温調することが難しい左端側電動機コイルエンド部222aの前下部を効率的に温調できる。
【0074】
第1保護壁91は、車幅方向から見て、下端部91aが、前後方向において発電機30とオーバーラップする位置となるように形成されている。
【0075】
したがって、誘導傾斜部911の先端部911aから誘導傾斜部911より下方の第1保護壁91へ戻った第1温調媒体TCM1、及び、電動機20から飛散して保護カバー90の誘導傾斜部911より下方の第1保護壁91に付着した第1温調媒体TCM1は、重力によって第1保護壁91を伝って下方に流れ、第1保護壁91の下端部91aから流下して発電機30に供給される。これにより、より多くの第1温調媒体TCM1で発電機30を温調できるので、発電機30を効率的に温調できる。
【0076】
第2保護壁92に形成された開口部921の下縁部921aには、車幅方向において活電部80から離れる方向である左側に第2保護壁92から突出する開口部保護壁922が設けられている。本実施形態では、開口部保護壁922は、開口部921の下縁部921aの前端から上方に屈曲して開口部921の前縁部921bまで延び、開口部921の下縁部921aの後端から上方に屈曲して開口部921の後縁部921cまで延びている。したがって、開口部保護壁922は、開口部921の下縁部921a、前縁部921b、及び後縁部921cで、車幅方向の左側に第2保護壁92から突出しており、車幅方向から見て、略U字形状となっている。
【0077】
したがって、発電機ロータ31によって掻き上げられ、発電機ロータ31の車幅方向左側の軸方向端面から飛散する第1温調媒体TCM1が、開口部921から活電部80が配置されている空間へ侵入することを、開口部保護壁922によって防止できる。これにより、非導電性の第1温調媒体TCM1に導電性の第2温調媒体TCM2が混入し、発電機30の駆動時に、貯留部75に貯留した第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が回転する発電機ロータ31によって掻き上げられて回転電機ハウジング70の内部を飛散する場合であっても、発電機ロータ31によって掻き上げられて飛散した導電性の第2温調媒体TCM2を含む第1温調媒体TCM1が開口部921から侵入して活電部80に付着して短絡が生じることを防止できる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0079】
例えば、本実施形態では、電動機20が第1回転軸RC1を有し、発電機30が第1回転軸RC1よりも前方且つ下方で、第1回転軸RC1と平行に車両Vの車幅方向に水平に延びる第2回転軸RC2を有するものとしたが、電動機20と発電機30との位置が逆であってもよい。すなわち、発電機30が第1回転軸RC1を有し、電動機20が第1回転軸RC1よりも前方且つ下方で、第1回転軸RC1と平行に車両Vの車幅方向に水平に延びる第2回転軸RC2を有するものであってもよい。
【0080】
また、例えば、本実施形態では、第1回転軸RC1及び第2回転軸RC2は、車幅方向に水平に延びるものとしたが、第1回転軸RC1及び第2回転軸RC2は、車両Vの前後方向に水平に延びるものとしてもよい。
【0081】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0082】
(1) 第1回転電機(電動機20)と、
前記第1回転電機を収容する回転電機ハウジング(回転電機ハウジング70)と、
前記回転電機ハウジングの内部に設けられ、前記第1回転電機と電気的に接続する活電部(活電部80)と、
前記第1回転電機の温調を行う温調回路(温調回路60)と、を備える車両駆動装置(車両駆動装置10)であって、
前記温調回路は、
非導電性の第1温調媒体(第1温調媒体TCM1)が循環し、少なくとも一部が前記回転電機ハウジングの内部を通って前記第1回転電機の温調を行う第1温調回路(第1温調回路61)と、
導電性の第2温調媒体(第2温調媒体TCM2)が循環する第2温調回路(第2温調回路62)と、
前記第1温調媒体と前記第2温調媒体との間で熱交換を行う熱交換器(熱交換器63)と、を有し、
前記第1温調回路は、前記回転電機ハウジングの内部において、前記第1回転電機の上方に配置され、前記第1回転電機の軸方向に延び、前記第1温調媒体を前記第1回転電機に滴下する滴下パイプ(第1滴下パイプ71)を有し、
前記活電部は、前記第1回転電機の径方向外側で、前記第1回転電機の軸方向において前記第1回転電機とオーバーラップする位置に設けられており、
前記回転電機ハウジングの内部には、前記第1回転電機の径方向外側、且つ、前記第1回転電機と前記活電部との間で前記第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁(第1保護壁91)を有する保護カバー(保護カバー90)が設けられている、車両駆動装置。
【0083】
(1)によれば、第1回転電機の径方向外側、且つ、第1回転電機と活電部との間で第1回転電機の軸方向に延在する第1保護壁を有する保護カバーが設けられているので、第1回転電機の温調を行う非導電性の第1温調媒体に、導電性の第2温調媒体が混入した場合でも、導電性の第2温調媒体を含む第1温調媒体が第1回転電機から飛散して活電部に付着することを第1保護壁によって防止できる。これにより、第1回転電機の温調を行う非導電性の第1温調媒体に導電性の第2温調媒体が混入した場合でも、短絡が生じることを防止できる。
【0084】
(2) (1)に記載の車両駆動装置であって、
前記保護カバーには、前記第1保護壁から前記第1回転電機に近づく方向に突出して上下方向及び前記第1回転電機の軸方向に延在する誘導傾斜部(誘導傾斜部911)が設けられている、車両駆動装置。
【0085】
(2)によれば、保護カバーには、第1保護壁から第1回転電機に近づく方向に突出して上下方向及び第1回転電機の軸方向に延在する誘導傾斜部が設けられているので、第1回転電機から飛散して保護カバーの誘導傾斜部より上方の第1保護壁に付着した第1温調媒体を誘導傾斜部の先端部から再び第1回転電機に供給して、第1回転電機を温調することができる。これにより、第1回転電機をより効率的に温調できる。
【0086】
(3) (2)に記載の車両駆動装置であって、
前記第1回転電機の軸方向は、水平な第1方向(車幅方向)に延びており、
前記第1回転電機は、
略円環形状を有する第1ロータ(電動機ロータ21)と、
前記第1ロータの外周面から径方向に所定の間隔を隔てて配置された第1ステータ(電動機ステータ22)と、を有し、
前記第1ステータは、第1ステータコア(電動機ステータコア221)と、前記第1ステータコアに取り付けられ、前記第1回転電機の軸方向に見て略円環形状を有する第1コイル(電動機コイル222)と、を有し、
前記第1コイルは、前記第1ステータコアにおける前記第1回転電機の軸方向一端側の端面である一端側第1ステータコア端面(左端側電動機ステータコア端面221a)から前記第1回転電機の軸方向の外側に突出した一端側第1コイルエンド部(左端側電動機コイルエンド部222a)を有し、
前記第1回転電機には、前記一端側第1コイルエンド部の周方向の少なくとも一部を覆うコイル保護部材(電動機コイル保護部材24)が設けられており、
前記誘導傾斜部は、前記第1方向から見て、先端部(先端部911a)が、前記コイル保護部材の上方で、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向(前後方向)において前記コイル保護部材の上端部(上端部24a)とオーバーラップする位置となるように形成されている、車両駆動装置。
【0087】
(3)によれば、誘導傾斜部は、第1方向から見て、先端部が、コイル保護部材の上方で、第2方向においてコイル保護部材の上端部とオーバーラップする位置となるように形成されているので、誘導傾斜部の先端部から第1回転電機に向かって供給された第1温調媒体は、コイル保護部材の上端部から、コイル保護部材と一端側第1ステータコア端面とによって囲まれた空間に供給される。そして、当該空間に供給された第1温調媒体は、当該空間の内部を一端側第1コイルエンド部に沿って流れ、一端側第1コイルエンド部を温調する。これにより、一端側第1コイルエンド部をより効率的に温調できる。
【0088】
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の車両駆動装置であって、
前記回転電機ハウジングには、第2回転電機(発電機30)が収容されており、
前記第1回転電機の軸方向及び前記第2回転電機の軸方向は、いずれも水平な第1方向(車幅方向)に延びており、
前記回転電機ハウジングの下部には、前記第1温調媒体が貯留する貯留部(貯留部75)が形成されており、
前記第2回転電機は、
前記第1方向から見て、前記活電部の下方に位置し、上下方向及び前記第1方向の双方と直交する第2方向(前後方向)において前記活電部と少なくとも一部がオーバーラップする位置に配置されており、
少なくとも一部が前記貯留部に貯留した前記第1温調媒体に浸漬しており、
前記保護カバーは、上下方向及び前記第2方向に延在して、前記活電部の前記第1方向の一方側の少なくとも一部を覆う第2保護壁(第2保護壁92)を有する、車両駆動装置。
【0089】
(4)によれば、保護カバーは、上下方向及び第2方向に延在して、活電部の第1方向の一方側の少なくとも一部を覆う第2保護壁を有するので、第2回転電機によって貯留部から掻き上げられて飛散する第1温調媒体が、活電部に付着することを第2保護壁によって防止できる。これにより、非導電性の第1温調媒体に導電性の第2温調媒体が混入した場合であっても、第2回転電機によって掻き上げられて回転電機ハウジングの内部を飛散する導電性の第2温調媒体を含む第1温調媒体が活電部に付着して短絡が生じることを防止できる。
【0090】
(5) (4)に記載の車両駆動装置であって、
前記第2保護壁には、前記第1方向に向かって開口し、前記活電部と前記第1回転電機とを電気的に接続する第1配線部材(第1配線部材761U、761V、761W)が挿通する開口部(開口部921)が形成されており、
前記開口部の下縁部(下縁部921a)には、前記第1方向において前記活電部から離れる方向に前記第2保護壁から突出する開口部保護壁(開口部保護壁922)が設けられている、車両駆動装置。
【0091】
(5)によれば、開口部の下縁部には、第1方向において活電部から離れる方向に第2保護壁から突出する開口部保護壁が設けられているので、第2回転電機によって貯留部から掻き上げられて飛散する第1温調媒体が、開口部から活電部が配置されている空間へ侵入することを、開口部保護壁によって防止できる。これにより、非導電性の第1温調媒体に導電性の第2温調媒体が混入し、貯留部に貯留した第2温調媒体を含む第1温調媒体が回転する第2回転電機によって掻き上げられて回転電機ハウジングの内部を飛散する場合であっても、第2回転電機によって掻き上げられて飛散した導電性の第2温調媒体を含む第1温調媒体が開口部から侵入し、活電部に付着して短絡が生じることを防止できる。
【符号の説明】
【0092】
10 車両駆動装置
20 電動機(第1回転電機)
21 電動機ロータ(第1ロータ)
22 電動機ステータ(第1ステータ)
221 電動機ステータコア(第1ステータコア)
221a 左端側電動機ステータコア端面(一端側第1ステータコア端面)
222 電動機コイル(第1コイル)
222a 左端側電動機コイルエンド部(一端側第1コイルエンド部)
24 電動機コイル保護部材(コイル保護部材)
24a 上端部
30 発電機(第2回転電機)
60 温調回路
61 第1温調回路
62 第2温調回路
63 熱交換器
70 回転電機ハウジング
71 第1滴下パイプ(滴下パイプ)
75 貯留部
761U、761V、761W 第1配線部材
80 活電部
90 保護カバー
91 第1保護壁
911 誘導傾斜部
911a 先端部
92 第2保護壁
921 開口部
921a 下縁部
922 開口部保護壁
TCM1 第1温調媒体
TCM2 第2温調媒体