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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】計算機及び施策の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0201 20230101AFI20241001BHJP
【FI】
G06Q30/0201
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021006455
(22)【出願日】2021-01-19
(65)【公開番号】P2022110817
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2023-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リョウ ウシン
(72)【発明者】
【氏名】恵木 正史
(72)【発明者】
【氏名】船矢 祐介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正和
【審査官】谷川 智秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-271564(JP,A)
【文献】特開2018-139036(JP,A)
【文献】特開2015-225601(JP,A)
【文献】特開2020-123347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスを利用する顧客に対して行われる施策の効果を評価する計算機であって、
プロセッサ及び前記プロセッサに接続される記憶装置を備え、
前記記憶装置は、顧客の識別情報と、施策が実施された日時と、前記施策の効果の評価指標と、前記顧客を特徴づける属性であって、前記評価指標を算出するために用いる複数の対象属性の属性値と、前記施策の実施対象であるか否かを示す情報と、を対応づけた実績データを格納する実績管理情報を格納し、
前記評価指標は、前記評価指標を目的変数とし、前記複数の対象属性を説明変数とする評価モデルを用いて算出され、
前記対象属性の属性値は、数値であり、
前記プロセッサは、
前記実績管理情報から、対象施策を実施した第1顧客の前記対象施策が実施された日時の前記実績データ及び前記第1顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、前記第1顧客に対して前記対象施策が実施された日時における、前記対象施策が実施されていない第2顧客の前記実績データ及び前記第2顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、を取得する処理と、
複数の前記第1顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第1変化量として算出し、複数の前記第2顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第2変化量として算出する処理と、
前記対象属性毎に、前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1顧客のグループ及び前記第2顧客のグループにおける前記対象属性の属性値の変化量の有意差を検定するp値を算出する処理と、
前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1変化量及び前記第2変化量の差と、前記対象属性毎の前記p値と、を対応づけた検定結果を保存する処理と、
前記対象属性毎に、初めて算出された前記第1変化量及び前記第2変化量の差を第1累積値として設定し、前記対象属性毎に、初めて算出された前記p値を第2累積値として設定し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1累積値を更新し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記p値を用いて、前記第2累積値を更新する処理と、
前記検定結果に含まれる前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1累積値と、前記対象属性毎の前記第2累積値と、を対応づけた経験則履歴を保存する処理と、
前記経験則履歴を表示するための情報を生成する処理と、
を実行することを特徴とする計算機。
【請求項2】
請求項1に記載の計算機であって、
前記プロセッサは、
新たに前記検定結果が保存された場合、
新たに保存された前記検定結果に含まれる前記対象施策の識別情報に対応する前記経験則履歴を取得し、
前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記第1変化量及び前記第2変化量の差と、前記経験則履歴に含まれる前記対象属性の前記第1累積値とを変数とする数式に基づいて、前記対象属性の新たな第1累積値を算出し、
前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記p値と、前記経験則履歴に含まれる前記対象属性の前記第2累積値とを変数とする数式に基づいて、前記対象属性の新たな第2累積値を算出することを特徴とする計算機。
【請求項3】
請求項2に記載の計算機であって、
前記プロセッサは、前記経験則履歴に基づいて、指定された施策における前記対象属性の前記第1累積値及び前記第2累積値の時間推移を示す情報を生成することを特徴とする計算機。
【請求項4】
請求項3に記載の計算機であって、
前記プロセッサは、
前記経験則履歴に基づいて、前記施策の実行に伴う前記複数の対象属性の前記属性値の変化の周期性を分析し、
前記周期性の分析結果を表示するための情報を生成することを特徴する計算機。
【請求項5】
請求項1に記載の計算機であって、
前記複数の顧客の前記属性の属性値を管理するための顧客管理情報を保持し、
前記プロセッサは、
前記検定結果に含まれる前記施策の識別情報に対応する前記経験則履歴に基づいて、前記顧客管理情報を参照し、前記施策の適用条件に合致する前記顧客の数を算出し、
前記複数の対象属性の前記第1累積値と、前記顧客の数とを乗算した値を有効性指標として算出し、
前記有効性指標を表示するための情報を生成することを特徴とする計算機。
【請求項6】
計算機が実行する、サービスを利用する顧客に対して行われる施策の効果の評価方法であって、
前記計算機は、プロセッサ及び前記プロセッサに接続される記憶装置を有し、
前記記憶装置は、顧客の識別情報と、施策が実施された日時と、前記施策の効果の評価指標と、前記顧客を特徴づける属性であって、前記評価指標を算出するために用いる複数の対象属性の属性値と、前記施策の実施対象であるか否かを示す情報と、を対応づけた実績データを格納する実績管理情報を格納し、
前記評価指標は、前記評価指標を目的変数とし、前記複数の対象属性を説明変数とする評価モデルを用いて算出され、
前記対象属性の属性値は、数値であり、
前記施策の効果の評価方法は、
前記プロセッサが、前記実績管理情報から、対象施策を実施した第1顧客の前記対象施策が実施された日時の前記実績データ及び前記第1顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、前記第1顧客に対して前記対象施策が実施された日時における、前記対象施策が実施されていない第2顧客の前記実績データ及び前記第2顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、を取得する第1のステップと、
前記プロセッサが、複数の前記第1顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第1変化量として算出し、複数の前記第2顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第2変化量として算出する第2のステップと、
前記プロセッサが、前記対象属性毎に、前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1顧客のグループ及び前記第2顧客のグループにおける前記対象属性の属性値の変化量の有意差を検定するp値を算出する第3のステップと、
前記プロセッサが、前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1変化量及び前記第2変化量の差と、前記対象属性毎の前記p値と、を対応づけた検定結果を保存する第4のステップと、
前記プロセッサが、前記対象属性毎に、初めて算出された前記第1変化量及び前記第2変化量の差を第1累積値として設定し、前記対象属性毎に、初めて算出された前記p値を第2累積値として設定し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1累積値を更新し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記p値を用いて、前記第2累積値を更新する第5のステップと、
前記プロセッサが、前記検定結果に含まれる前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1累積値と、前記対象属性毎の前記第2累積値と、を対応づけた経験則履歴を保存する第6のステップと、
前記プロセッサが、前記経験則履歴を表示するための情報を生成する第7のステップと、を含むことを特徴とする施策の効果の評価方法。
【請求項7】
請求項6に記載の施策の効果の評価方法であって、
前記第5のステップは、
新たに前記検定結果が保存された場合、
前記プロセッサが、新たに保存された前記検定結果に含まれる前記対象施策の識別情報に対応する前記経験則履歴を取得するステップと、
前記プロセッサが、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記第1変化量及び前記第2変化量の差と、前記経験則履歴に含まれる前記対象属性の前記第1累積値とを変数とする数式に基づいて、前記対象属性の新たな第1累積値を算出するステップと、
前記プロセッサが、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記p値と、前記経験則履歴に含まれる前記対象属性の前記第2累積値とを変数とする数式に基づいて、前記対象属性の新たな第2累積値を算出するステップと、
を含むことを特徴とする施策の効果の評価方法。
【請求項8】
請求項7に記載の施策の効果の評価方法であって、
前記第7のステップは、前記プロセッサが、前記経験則履歴に基づいて、指定された施策における前記対象属性の前記第1累積値及び前記第2累積値の時間推移を示す情報を生成するステップを含むことを特徴とする施策の効果の評価方法。
【請求項9】
請求項8に記載の施策の効果の評価方法であって、
前記プロセッサが、前記経験則履歴に基づいて、前記施策の実行に伴う前記複数の対象属性の前記属性値の変化の周期性を分析するステップを含み、
前記第7のステップは、前記プロセッサが、前記周期性の分析結果を表示するための情報を生成するステップを含むことを特徴する施策の効果の評価方法。
【請求項10】
請求項6に記載の施策の効果の評価方法であって、
前記記憶装置は、前記複数の顧客の前記属性の属性値を管理するための顧客管理情報を格納し、
前記施策の効果の評価方法は、
前記プロセッサが、前記検定結果に含まれる前記施策の識別情報に対応する前記経験則履歴に基づいて、前記顧客管理情報を参照し、前記施策の適用条件に合致する前記顧客の数を算出するステップと、
前記プロセッサが、前記複数の対象属性の前記第1累積値と、前記顧客の数とを乗算した値を有効性指標として算出するステップと、を含み、
前記第7のステップは、前記プロセッサが、前記有効性指標を表示するための情報を生成するステップを含むことを特徴とする施策の効果の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトに対して実施された施策の評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
業務効率、生産性、及び売上げ等の指標を改善させるために様々な施策が実施される。施策を評価する方法として例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、「KPIを用いて施策の効果を評価する際に、処理量の低減をより抑制する目的で、施策評価システムを、データを施策対象者と施策非対象者にグループ分けし、施策の実施前における施策対象者の基本指標、および、施策の実施前における非施策対象者の基本指標を算出する基本指標算出部と、基本指標毎に、施策対象者の基本指標と非施策対象者の基本指標の関係性を示す推定モデルを作成し、施策の実施後における施策対象者の基本指標、および、推定モデルに基づいて、施策対象者に施策を実施しなかった場合の基本指標である推定基本指標を推定する基本指標指定部と、複数の基本指標の算術演算で構成されるKPI定義を受け付け、KPI定義および推定基本指標を用いて、KPI定義に対応する推定KPI値を算出するKPI評価算出部と、を有する構成とする」ことが記載されている。
【0004】
また、A/Bテストを行って、施策を評価する手法も知られている。A/Bテストでは、A群及びB群の間のKPI等の指標について有意差が検定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2017/72869号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
効果が認められた施策であっても、施策が指標に与える効果は、施策の実施時期及び施策の実施対象であるオブジェクトに影響を与える環境の変化によって変化する。
【0007】
従来は、実施された施策について検証が行われ、施策の効果の時間変化は考慮されていない。本発明は時間変化を反映した施策の評価情報を提示する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、サービスを利用する顧客に対して行われる施策の効果を評価する計算機であって、プロセッサ及び前記プロセッサに接続される記憶装置を備え、前記記憶装置は、顧客の識別情報と、施策が実施された日時と、前記施策の効果の評価指標と、前記顧客を特徴づける属性であって、前記評価指標を算出するために用いる複数の対象属性の属性値と、前記施策の実施対象であるか否かを示す情報と、を対応づけた実績データを格納する実績管理情報を格納し、前記評価指標は、前記評価指標を目的変数とし、前記複数の対象属性を説明変数とする評価モデルを用いて算出され、前記対象属性の属性値は、数値であり、前記プロセッサは、前記実績管理情報から、対象施策を実施した第1顧客の前記対象施策が実施された日時の前記実績データ及び前記第1顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、前記第1顧客に対して前記対象施策が実施された日時における、前記対象施策が実施されていない第2顧客の前記実績データ及び前記第2顧客の前記対象施策が実施される前の前記実績データと、を取得する処理と、複数の前記第1顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第1変化量として算出し、複数の前記第2顧客の前記実績データを用いて、前記対象属性毎に、前記対象属性の属性値の変化量の統計値を第2変化量として算出する処理と、前記対象属性毎に、前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1顧客のグループ及び前記第2顧客のグループにおける前記対象属性の属性値の変化量の有意差を検定するp値を算出する処理と、前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1変化量及び前記第2変化量の差と、前記対象属性毎の前記p値と、を対応づけた検定結果を保存する処理と、前記対象属性毎に、初めて算出された前記第1変化量及び前記第2変化量の差を第1累積値として設定し、前記対象属性毎に、初めて算出された前記p値を第2累積値として設定し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記第1変化量及び前記第2変化量の差を用いて、前記第1累積値を更新し、前記対象属性毎に、前記検定結果に含まれる前記対象属性の前記p値を用いて、前記第2累積値を更新する処理と、前記検定結果に含まれる前記対象施策の識別情報及び実施日時と、前記対象属性毎の前記第1累積値と、前記対象属性毎の前記第2累積値と、を対応づけた経験則履歴を保存する処理と、前記経験則履歴を表示するための情報を生成する処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、計算機は時間変化を反映した施策の評価情報を提示できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の計算機の機能構成の一例を示す図である。
図2】実施例1の計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】実施例1の施策管理情報の一例を示す図である。
図4A】実施例1のオブジェクト管理情報の一例を示す図である。
図4B】実施例1のオブジェクト管理情報の一例を示す図である。
図5】実施例1の実績管理情報の一例を示す図である。
図6】実施例1の検定履歴の一例を示す図である。
図7】実施例1の計画部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図8】実施例1の検定部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図9】実施例1の経験則更新部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図10】実施例1の表示部によって表示される画面の一例を示す図である。
図11】実施例2の計算機の機能構成の一例を示す図である。
図12】実施例2の経験則履歴の一例を示す図である。
図13】実施例2の経験則更新部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図14】実施例2の表示部によって表示される画面の一例を示す図である。
図15】実施例3の計算機の機能構成の一例を示す図である。
図16】実施例3の周期性分析情報の一例を示す図である。
図17】実施例3の経験則更新部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図18】実施例4の経験則更新部が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0012】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1の計算機100の機能構成の一例を示す図である。図2は、実施例1の計算機のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0015】
計算機100は、施策の選択、施策の実施計画の生成、施策の実績の蓄積、及び施策の評価を行う。計算機100は対象システム101と接続する。計算機100及び対象システム101の間は、LAN(Local Area Network)及びWAN(Wide Area Network)等のネットワークを介して接続される。
【0016】
対象システム101は、施策の実施対象となるオブジェクトの管理、制御、又は監視を行うシステムである。例えば、対象システム101は、コンビニエンスストアを管理するシステムである。当該システムのオブジェクトは、例えば、コンビニエンスストア及び顧客である。本発明は、対象システム101の種別に限定されない。対象システム101は、オブジェクトを特徴付ける属性の値(属性値)を取得し、計算機100に送信する。
【0017】
計算機100は、例えば、図2に示すようなハードウェア構成であり、プロセッサ201、主記憶装置202、副記憶装置203、及びネットワークインタフェース204を有する。各ハードウェア要素はバスを介して互いに接続される。なお、計算機100は、キーボード、マウス、及びタッチパネル等の入力装置を有してもよいし、ディスプレイ及びプリンタ等の出力装置を有してもよい。
【0018】
プロセッサ201は、主記憶装置202に格納されるプログラムを実行する。プロセッサ201がプログラムにしたがって処理を実行することによって、特定の機能を実現する機能部(モジュール)として動作する。以下の説明では、機能部を主語に処理を説明する場合、プロセッサ201が当該機能部を実現するプログラムを実行していることを示す。
【0019】
主記憶装置202は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の記憶装置であり、プロセッサ201が実行するプログラム及びプログラム使用するデータを格納する。主記憶装置202はワークエリアとしても用いられる。副記憶装置203は、HDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、データを永続的に格納する。
【0020】
なお、主記憶装置202に格納されるプログラム及びデータは、副記憶装置203に格納されてもよい。この場合、プロセッサ201は、副記憶装置203からプログラム及びデータを読み出し、主記憶装置202にロードする。
【0021】
実施例1の主記憶装置202は、施策選択部110、計画部111、実行部112、検定部113、経験則更新部114、及び表示部115を実現するプログラムを格納する。また、実施例1の副記憶装置203は、施策管理情報120、オブジェクト管理情報121、実績管理情報122、及び検定履歴123を格納する。なお、副記憶装置203に格納される各情報は、主記憶装置202に格納されてもよい。
【0022】
施策管理情報120は、施策を管理する情報である。後述するように、施策は、各属性の累積変化量及び累積検定指標が対応付けられた状態で管理される。累積変化量及び累積検定指標は実測値を用いた統計処理等によって算出されてもよいし、人的に定めた予測アルゴリズムを用いて算出されてもよい。施策管理情報120の詳細は図3を用いて説明する。
【0023】
ここで、累積変化量は経時的な属性値の変化量(施策の効果)を表し、累積検定指標は、経時的な検定指標を表す。検定指標は、属性値の変化量の有意差を検定するための指標である。
【0024】
オブジェクト管理情報121は、オブジェクトを特徴付ける属性の最新の属性値を管理する情報である。オブジェクト管理情報121の詳細は図4A及び図4Bを用いて説明する。
【0025】
実績管理情報122は、施策の実施に伴ってオブジェクトから取得された属性値と、取得した属性値から算出される評価指標とを管理する情報である。実績管理情報122の詳細は図5を用いて説明する。
【0026】
ここで、評価指標は属性の一種であり、任意の属性を変数とする評価モデルから算出される。評価指標は例えばKPI(Key Performance Indicator)である。評価モデルは、評価指標を目的変数とし、属性を説明変数とする数理モデルである。実施例1では、一つの評価モデルが設定されているものとする。なお、評価モデルは施策毎に設定されてもよい。
【0027】
検定履歴123は、施策に対する有意差検定の結果を管理する情報である。検定履歴123の詳細は図6を用いて説明する。
【0028】
施策選択部110は、施策管理情報120にて管理される施策の中から実施する施策を選択し、当該施策に関する情報を含む施策データ130を出力する。
【0029】
計画部111は、施策データ130及びオブジェクト管理情報121に基づいて、施策の実施計画131を生成し、実施計画131を出力する。計画部111は、A/Bテストを行うために、施策を実施するオブジェクトからなるA群と、施策を実施しないオブジェクトからなるB群とを選択する。
【0030】
実行部112は、入力された実施計画131に基づいて、対象システム101に対して施策を実施する。実行部112は、対象システム101のオブジェクトに直接施策を実施してもよいし、対象システム101にオブジェクトの識別情報及び施策の内容を含む実施要求を送信してもよい。
【0031】
実行部112は、対象システム101からA群及びB群の各々のオブジェクトの属性値を取得した場合、オブジェクト管理情報121を更新する。オブジェクト管理情報121の更新は、レコードの追加、レコードの削除、レコードの更新を含む概念である。また、実行部112は、評価モデルに基づいて、評価指標を算出し、評価指標及び評価指標以外の属性の属性値を含むレコードを実績管理情報122に登録する。
【0032】
検定部113は、実績管理情報122に基づいて、各属性の属性値の変化量及び検定指標を算出する。なお、評価モデルの目的変数として設定された属性だけではなく、説明変数として設定された属性についても属性値の変化量及び検定指標が算出される。
【0033】
経験則更新部114は、検定結果132が入力された場合、検定履歴123に検定結果132を登録し、また、累積変化量及び累積検定指標を更新する。
【0034】
表示部115は、各種情報を表示する。
【0035】
なお、計算機100が有する各機能部については、複数の機能部を一つの機能部にまとめてもよいし、一つの機能部を機能毎に複数の機能部に分けてもよい。例えば、検定部113が実行部112を含む構成でもよい。
【0036】
なお、計算機100が有する機能部は、複数の計算機から構成される計算機システムを用いて実現してもよい。この場合、各機能部を分散配置してもよい。
【0037】
図3から図6を用いて、計算機100が保持する情報の詳細を説明する。
【0038】
図3は、実施例1の施策管理情報120の一例を示す図である。
【0039】
施策管理情報120は、施策ID301、内容302、条件303、累積変化量304、及び累積検定指標305を含むレコードを格納する。一つの施策に対して一つのレコードが存在する。
【0040】
施策ID301は、施策を一意に識別するための識別情報を格納するフィールドである。内容302は、施策の内容を格納するフィールドである。条件303は、施策を実施するオブジェクトを選択するための適用条件を格納するフィールドである。
【0041】
累積変化量304は、各属性の累積変化量を格納するフィールド群である。累積変化量304には、評価モデルの説明変数及び目的変数に対応する属性の累積変化量が格納される。文字0、1及びM等は属性を識別する添字である。本実施例では、0は目的変数を表し、1からMは説明変数を表すものとする。
【0042】
なお、一度も実施されたことのない施策に対応するレコードの累積変化量304には「null」が格納される。
【0043】
累積検定指標305は、各属性の累積検定指標を格納するフィールド群である。累積検定指標305には、評価モデルの説明変数及び目的変数に対応する属性の累積検定指標が格納される。文字0、1及びM等は属性を識別する添字である。本実施例では、0は目的変数を表し、1からMは説明変数を表すものとする。
【0044】
なお、一度も実施されたことのない施策に対応するレコードの累積検定指標305には「null」が格納される。
【0045】
図4A及び図4Bは、実施例1のオブジェクト管理情報121の一例を示す図である。
【0046】
オブジェクト管理情報121は、例えば、図4A及び図4Bに示すように、オブジェクトの種別毎にテーブル400、410を格納する。
【0047】
テーブル400は、コンビニエンスストアを管理するテーブルであり、店舗ID401、属性値402、及び条件合致403を含むレコードを格納する。一つのコンビニエンスストアに対して一つのレコードが存在する。
【0048】
店舗ID401は、コンビニエンスストアを一意に識別するための識別情報を格納するフィールドである。
【0049】
属性値402は、コンビニエンスストアを特徴付ける属性の属性値を格納するフィールド群である。属性値402には、店舗面積及び月売上げ等の属性の属性値が格納される。条件合致403は、施策の適用条件に合致するか否かを示す判定値を格納するフィールド群である。条件合致403は施策の数だけフィールドを含む。フィールドには、施策の適用条件に合致することを示す「True」及び施策の適用条件に合致しないことを示す「False」のいずれかが格納される。なお、各フィールドの初期値として「False」が設定されている。
【0050】
テーブル410は、コンビニエンスストアを利用する顧客を管理するテーブルであり、顧客ID411、属性値412、及び条件合致413を含むレコードを格納する。一人の顧客に対して一つのレコードが存在する。
【0051】
顧客ID411は、顧客を一意に識別するための識別情報を格納するフィールドである。
【0052】
属性値412は、顧客を特徴付ける属性の属性値を格納するフィールド群である。属性値412には、年齢、性別、来店頻度等の属性の属性値が格納される。条件合致413は、施策の適用条件に合致するか否かを示す判定値を格納するフィールド群である。条件合致413は施策の数だけフィールドを含む。フィールドには「True」及び「False」のいずれかが格納される。なお、各フィールドの初期値として「False」が設定されている。
【0053】
図5は、実施例1の実績管理情報122の一例を示す図である。
【0054】
実績管理情報122は、日付501、オブジェクトID502、属性値503、及び施策グループ504を含むレコードを格納する。日付及びオブジェクトの組み合わせに対して一つのレコードが存在する。
【0055】
日付501は、施策の実施日を格納するフィールドである。オブジェクトID502は、オブジェクトの識別情報を格納するフィールドである。
【0056】
属性値503は、評価モデルの説明変数及び目的変数に対応する属性の属性値を格納するフィールド群である。図5では、yは評価モデルの目的変数を表し、xは説明変数を表す。iは説明変数の添字であり、1からMの範囲の整数である。
【0057】
施策グループ504は、施策のA群及びB群のいずれに該当するかを示す判定値を格納するフィールド群である。施策グループ504は施策の数だけフィールドを含む。フィールドには、A群に属することを示す「A」、B群に属することを示す「B」、及び施策のいずれのグループにも分類されていないことを示す「null」のいずれかが格納される。
【0058】
図6は、実施例1の検定履歴123の一例を示す図である。
【0059】
検定履歴123は、日付601、施策ID602、変化量603、及び検定指標604を含むレコードを格納する。日付及び施策の組み合わせに対して一つのレコードが存在する。
【0060】
日付601は、施策の実施日を格納するフィールドである。施策ID602は、施策の識別情報を格納するフィールドである。
【0061】
変化量603は、検定部113によって算出された、属性の属性値の変化量を格納するフィールド群である。変化量603には、評価モデルの説明変数及び目的変数に対応する属性の属性値の変化量が格納される。
【0062】
検定指標604は、検定部113によって算出された、属性の検定指標を格納するフィールド群である。検定指標604には、評価モデルの説明変数及び目的変数に対応する属性の検定指標が格納される。
【0063】
次に、計算機100が有する各機能部が実行する処理について説明する。
【0064】
まず、施策選択部110が実行する処理について説明する。
【0065】
施策選択部110は、計算機100を利用するユーザから実行要求又は施策情報を受け付けた場合、処理を開始する。なお、実行要求には施策の実施時期が含まれ、施策情報には施策の識別情報及び施策の実施時期が含まれるものとする。
【0066】
施策選択部110は、実行要求を受け付けた場合、割合αで最良施策を、割合(1-α)でランダムに施策を選択する。なお、最良施策は目的変数の変化量及び検定指標の積が最大となる施策とする。施策選択部110は、施策の実施時期と、選択された施策に対応するレコードの施策ID301、内容302、及び条件303の値とを含む施策データ130を出力する。
【0067】
施策選択部110は、施策情報を受け付けた場合、施策管理情報120を参照して、ユーザが指定した施策に対応するレコードを検索する。施策選択部110は、施策の実施時期と、検索されたレコードの施策ID301、内容302、及び条件303の値とを含む施策データ130を出力する。
【0068】
計画部111が実行する処理について説明する。
【0069】
図7は、実施例1の計画部111が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0070】
計画部111は、施策選択部110から施策データ130が入力された場合、処理を開始する。
【0071】
計画部111は、施策データ130に含まれる施策の適用条件に基づいてオブジェクト管理情報121を参照し、施策の適用条件に合致するオブジェクトを特定する(ステップS101)。
【0072】
このとき、計画部111は、施策の適用条件に合致するオブジェクトのレコードに、施策に合致したことを示す情報を付加する。例えば、コンビニエンスストアを管理するシステムの場合、コンビニエンスストア及び顧客の少なくともいずれかがオブジェクトとして特定される。また、テーブル400のレコードの条件合致403の指定された施策のフィールド、及びテーブル410のレコードの条件合致413の指定された施策のフィールドの少なくともいずれかに「True」が格納される。
【0073】
次に、計画部111は、特定されたオブジェクトをA群及びB群に分類する(ステップS102)。
【0074】
次に、計画部111は、施策の実施時期、施策の内容、A群に属するオブジェクト、及びB群に属するオブジェクトから構成される実施計画131を生成し、実行部112に実施計画131を出力する(ステップS103)。
【0075】
実行部112が実行する処理について説明する。
【0076】
実行部112は、実施計画131に基づいて、A群のオブジェクトに対して施策を実施する。実行部112は、対象システム101からA群のオブジェクトに関する属性値及びB群のオブジェクトに関する属性値を取得した場合、オブジェクト管理情報121のレコードに属性値を上書きし、また、施策の適用条件の成否を判定する。また、実行部112は、実績管理情報122にレコードを追加し、追加されたレコードの日付501に施策の実施日を格納し、オブジェクトID502にオブジェクトの識別情報を格納し、属性値503に評価モデルの変数として設定された属性の属性値を格納する。実行部112は、実施計画131に基づいて、属性値の取得先のオブジェクトがA群及びB群のいずれであるかを判定し、追加されたレコードの施策グループ504の実施した施策のフィールドに判定結果を格納する。施策グループ504の他の施策のフィールドには「null」が格納される。
【0077】
なお、属性値は、対象システム101に設置されたセンサを用いて取得してもよいし、対象システム101からの入力に基づいて取得してもよい。
【0078】
検定部113が実行する処理について説明する。
【0079】
図8は、実施例1の検定部113が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0080】
検定部113は、実績管理情報122が更新された場合、又は、ユーザから実行要求を受け付けた場合、処理を開始する。実行要求には、施策の識別情報及び施策の実施時期が含まれる。以下では、ユーザから実行要求を受け付けた場合の処理について説明する。
【0081】
検定部113は、実績管理情報122から検定対象の施策に対応するレコードを取得する(ステップS201)。
【0082】
具体的には、検定部113は、日付501に、指定された施策の実施時期が格納されるレコードを検索する。検定部113は、検索されたレコードの施策グループ504を参照し、指定された施策のフィールドに「A」及び「B」のいずれかが格納されるレコードを取得する。
【0083】
検定部113は、取得したレコードを用いて、各属性について、属性値の変化量を算出し、また、属性値の変化量の有意差を検定する(ステップS202)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0084】
(S202-1)検定部113は、評価モデルの変数として設定された属性の中から一つの属性を選択する。
【0085】
(S202-2)検定部113は、取得したレコードを用いて、施策の実施による、選択された属性の属性値の変化量を算出する。例えば、施策の実施日をt+1、施策の効果を検証するための日付をtとして場合、検定部113は、式(1)を用いて、属性iの属性値xの変化量を算出する。
【0086】
【数1】
【0087】
δ はA群における属性iの属性値xの変化量を表し、式(2)で与えられる。δ はB群における属性iの属性値xの変化量を表し、式(3)で与えられる。ここで、Gの絶対値はA群のオブジェクト数を表し、Gの絶対値はB群のオブジェクト数を表す。
【0088】
【数2】
【0089】
【数3】
【0090】
なお、iは0からMの範囲の整数であり、iが0の属性は評価モデルの目的変数に対応し、iが0以外の属性は評価モデルの説明変数に対応する。
【0091】
(S202-3)検定部113は、取得したレコードを用いて、施策の実施による、選択された属性の属性値の変化の確からしさを表す検定指標を算出する。例えば、施策の実施日をt+1とした場合、検定部113は、式(4)に示すように、属性iの属性値xの変化量のp値を検定指標として算出する。
【0092】
【数4】
【0093】
(S202-4)検定部113は、属性、変化量、及び検定指標を含む中間データをワークエリアに格納する。
【0094】
(S202-5)検定部113は、評価モデルの変数として設定された全ての属性について処理が完了したか否かを判定する。全ての属性について処理が完了していない場合、検定部113はS202-1に戻る。
【0095】
(S202-5)全ての属性について処理が完了した場合、検定部113はステップS202の処理を終了する。
【0096】
実施例1では、全ての属性について有意差を検定することによって、オブジェクトの各属性に対する施策の影響を網羅的に評価することができる。
【0097】
以上がステップS202の処理の説明である。
【0098】
検定部113は、指定された施策の識別情報及び実施日と、各属性の中間データとを含む検定結果132を生成し、経験則更新部114に検定結果132を出力する(ステップS203)。
【0099】
経験則更新部114が実行する処理について説明する。
【0100】
図9は、実施例1の経験則更新部114が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0101】
経験則更新部114は、検定部113から検定結果132が入力された場合、処理を開始する。
【0102】
経験則更新部114は、検定履歴123に検定結果132を保存する(ステップS301)。
【0103】
具体的には、経験則更新部114は、検定履歴123にレコードを追加し、検定結果132に基づいて、追加されたレコードの各フィールドに値を格納する。
【0104】
経験則更新部114は、検定対象の施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を更新する(ステップS302)。累積変化量及び累積検定指標の更新方法は、例えば、以下のようなものが考えられる。
【0105】
(更新方法1)経験則更新部114は、式(5)に示すように、低減率(1-γ)を用いて累積変化量の累積加算平均を算出することによって、各属性の累積変化量を更新する。また、経験則更新部114は、式(6)に示すように、低減率(1-γ)を用いて累積検定指標の累積加算平均を算出することによって、累積検定指標を更新する。バー付きのξ は属性iの更新前の累積変化量を表し、バー付きのΨ は属性iの更新前の累積検定指標を表す。また、低減率は0より大きく、かつ、1より小さい値である。
【0106】
【数5】
【0107】
【数6】
【0108】
(更新方法2)経験則更新部114は、任意の期間内の施策の実績を用いた統計処理を実行することによって、各属性の属性値の変化量に関する統計値(例えば、平均値)を算出し、当該統計値を新たな累積変化量として設定する。また、経験則更新部114は、任意の期間内の施策の実績を用いた統計処理を実行することによって検定指標(例えば、p値)を算出し、当該検定指標を新たな累積検定指標として設定する。
【0109】
(更新方法3)経験則更新部114は、検定履歴123に基づいて、変化量及び検定指標の出現頻度の分布を生成し、25パーセンタイルに位置する変化量及び検定指標を新たな累積変化量及び累積検定指標として設定する。
【0110】
(更新方法4)経験則更新部114は、更新方法1から更新方法3のいずれかの方法で累積変化量を算出する。経験則更新部114は、補正係数εを用いた式(7)を用いて、累積検定指標を更新する。(1-g)は低減率を表す。
【0111】
【数7】
【0112】
補正係数εは式(8)で与えられる。σは、任意期間における変化量の標準偏差を表し、ηは任意期間における変化量の平均値を表す。(σ/η)は変動係数である。
【0113】
【数8】
【0114】
なお、上述した更新方法は一例であってこれに限定されない。なお、初めて実施された施策の場合、累積変化量及び累積検定指標は存在しない。この場合、属性の属性値の変化量が累積変化量として設定され、また、検定指標が累積検定指標として設定される。
【0115】
表示部115は、施策管理情報120に基づいて、施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を示す画面を表示する。
【0116】
図10は、実施例1の表示部115によって表示される画面の一例を示す図である。
【0117】
画面1000は、施策選択欄1001、ソート項目選択欄1002、表示ボタン1003、及び経験則表示欄1004を含む。
【0118】
施策選択欄1001は、施策を選択する欄である。施策選択欄1001には、選択可能な施策の内容がプルダウンメニューとして表示される。ソート項目選択欄1002は、表示順を決定する項目を選択する欄である。ソート項目選択欄1002には「変化量」及び「検定指標」がプルダウンメニューとして表示される。
【0119】
表示ボタン1003は、施策選択欄1001にて選択された施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を表示するためのボタンである。ユーザが表示ボタン1003を操作した場合、施策の識別情報及び項目を含む経験則表示要求が表示部115に出力される。
【0120】
表示部115は、経験則表示要求を受け付けた場合、施策管理情報120を参照し、施策ID301に、当該要求に含まれる施策の識別情報が設定されるレコードを検索する。表示部115は、検索されたレコードの累積変化量304及び累積検定指標305の値を取得する。表示部115は、経験則表示要求に含まれる項目に基づいて、各属性の累積変化量及び累積検定指標をソートし、経験則表示欄1004にソート結果を表示する。
【0121】
経験則表示欄1004は、施策選択欄1001にて選択された施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を表示する欄である。経験則表示欄1004には、累積変化量及び累積検定指標を示すグラフが表示される。累積変化量を示すグラフには、ソート項目選択欄1002にて選択された項目にしたがってソートされた累積変化量が表示される。累積検定指標を示すグラフには、ソート項目選択欄1002にて選択された項目にしたがってソートされた累積検定指標が表示される。
【0122】
図10では、目的変数に対応する属性の累積変化量及び累積検定指標は、ソート項目選択欄1002の設定にかかわらず一番上に表示されている。
【0123】
属性の累積変化量及び累積検定指標は、施策の実績を反映した値、すなわち、時間変化を反映した値であるため、施策の効果を検証する情報として有用である。ユーザは、属性の累積変化量及び累積検定指標を参照することによって、効果的な施策を選択できる。また、ユーザは、効果が低い施策の見直し及び削除等を行うことができる。
【0124】
施策に対する全ての属性への影響(変化量)及び有意差を示す情報を提示することによって、ユーザは属性間の因果を検証することができる。また、ユーザは因果の検証結果に基づいて、施策を提供する対象及び範囲を広げることができる。
【実施例2】
【0125】
実施例2では、計算機100は、属性の累積変化量及び累積検定指標の更新履歴を保存する。以下、実施例1との差異を中心に実施例2について説明する。
【0126】
図11は、実施例2の計算機100の機能構成の一例を示す図である。
【0127】
実施例2の計算機100のハードウェア構成は実施例1と同一である。実施例2の施策管理情報120、オブジェクト管理情報121、実績管理情報122、及び検定履歴123は実施例1と同一である。
【0128】
実施例2の計算機100の副記憶装置203は経験則履歴124を格納する。図12は、実施例2の経験則履歴124の一例を示す図である。
【0129】
経験則履歴124は、日付1201、施策ID1202、累積変化量1203、及び累積検定指標1204を含むレコードを格納する。日付及び施策の組み合わせに対して一つのレコードが存在する。
【0130】
日付1201は、施策の実施日を格納するフィールドである。施策ID1202は、施策の識別情報を格納するフィールドである。
【0131】
累積変化量1203は、経験則更新部114によって算出された累積変化量を格納するフィールド群である。累積検定指標1204は、経験則更新部114によって算出された累積検定指標を格納するフィールド群である。
【0132】
実施例2の施策選択部110、計画部111、実行部112、及び検定部113が実行する処理は実施例1と同一である。
【0133】
図13は、実施例2の経験則更新部114が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0134】
経験則更新部114は、検定部113から検定結果132が入力された場合、処理を開始する。
【0135】
経験則更新部114は、検定履歴123に検定結果132を保存する(ステップS301)。
【0136】
経験則更新部114は、検定対象の施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を更新する(ステップS302)。
【0137】
経験則更新部114は、経験則履歴124を更新する(ステップS321)。
【0138】
具体的には、経験則更新部114は、経験則履歴124にレコードを追加し、追加されたレコードの日付1201及び施策ID1202に、検定結果132に含まれる施策の実施日及び識別情報を設定する。経験則更新部114は、追加されたレコードの累積変化量1203及び累積検定指標1204に、ステップS302において算出された累積変化量及び累積検定指標を設定する。
【0139】
実施例2の表示部115は、施策管理情報120に基づいて、施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を示す画面1000を表示する。また、表示部115は、経験則履歴124に基づいて、施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標のトレンド(時間推移)を示す画面を表示する。
【0140】
図14は、実施例2の表示部115によって表示される画面の一例を示す図である。
【0141】
画面1400は、施策選択欄1401、表示属性選択欄1402、表示ボタン1403、及びトレンド表示欄1404を含む。
【0142】
施策選択欄1401は、施策を選択する欄である。施策選択欄1401には、選択可能な施策の内容がプルダウンメニューとして表示される。表示属性選択欄1402は、指標のトレンドを表示する属性を選択する欄である。表示属性選択欄1402には、選択可能な属性がプルダウンメニューとして表示される。
【0143】
表示ボタン1403は、施策選択欄1401にて選択された施策における、表示属性選択欄1402にて選択された属性の累積変化量及び累積検定指標のトレンドを表示するためのボタンである。ユーザが当該ボタンを操作した場合、施策の識別情報及び属性の識別情報を含むトレンド表示要求が表示部115に出力される。
【0144】
表示部115は、トレンド表示要求を受け付けた場合、経験則履歴124を参照し、施策ID1202に、当該要求に含まれる施策の識別情報が設定されるレコードを検索する。表示部115は、検索されたレコードの累積変化量1203及び累積検定指標1204から、トレンド表示要求に含まれる属性の累積変化量及び累積検定指標を取得する。表示部115は、時系列順に累積変化量及び累積検定指標を表示する。
【0145】
トレンド表示欄1404は、施策における属性の累積変化量及び累積検定指標のトレンドを表示する欄である。トレンド表示欄1404には、累積変化量及び累積検定指標のトレンドを示すグラフが表示される。
【0146】
累積検定指標等のトレンドを提示することによって、ユーザは、属性値の変化量の有意差があるとはいえない施策の見直し及び削除等を行うことができる。
【実施例3】
【0147】
実施例3では、計算機100は、属性の累積変化量及び累積検定指標の周期性を分析する。以下、実施例1及び実施例2との差異を中心に実施例3について説明する。
【0148】
図15は、実施例3の計算機100の機能構成の一例を示す図である。
【0149】
実施例3の計算機100のハードウェア構成は実施例1と同一である。実施例3の施策管理情報120、オブジェクト管理情報121、実績管理情報122、及び検定履歴123は実施例1と同一である。
【0150】
実施例3の計算機100の副記憶装置203は、経験則履歴124及び周期性分析情報125を格納する。実施例3の経験則履歴124は実施例2と同一である。
【0151】
図16は、実施例3の周期性分析情報125の一例を示す図である。
【0152】
周期性分析情報125は、日付1601、施策ID1602、周期1603、及びフェーズ1604を含むレコードを格納する。日付及び施策の組み合わせに対して一つのレコードが存在する。
【0153】
日付1601は、施策の実施日を格納するフィールドである。施策ID1602は、施策の識別情報を格納するフィールドである。
【0154】
周期1603は、属性の累積変化量の変化の周期を格納するフィールドである。フェーズ1604は、周期における属性の累積変化量のフェーズを格納するフィールドである。
【0155】
なお、周期性分析情報125には、累積検定指標の変化の周期が含まれてもよい。
【0156】
実施例3の施策選択部110、計画部111、実行部112、及び検定部113が実行する処理は実施例1と同一である。
【0157】
図17は、実施例3の経験則更新部114が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0158】
経験則更新部114は、検定部113から検定結果132が入力された場合、処理を開始する。
【0159】
経験則更新部114は、検定履歴123に検定結果132を保存する(ステップS301)。
【0160】
経験則更新部114は、検定対象の施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を更新する(ステップS302)。
【0161】
経験則更新部114は、経験則履歴124を更新する(ステップS321)。
【0162】
経験則更新部114は、経験則履歴124に基づいて、検定対象の施策について各属性の累積変化量の周期性を分析する(ステップS331)。具体的には、以下のような処理が実行される。
【0163】
(S331-1)経験則更新部114は、周期性分析情報125にレコードを追加する。経験則更新部114は、追加されたレコードの日付1601に検定結果132に含まれる実施日を設定し、追加されたレコードの施策ID1602に検定結果132に含まれる識別情報を設定する。
【0164】
(S331-2)経験則更新部114は評価モデルの変数として設定された属性の中から一つの属性を選択する。
【0165】
(S331-3)経験則更新部114は、経験則履歴124から施策ID1202に選択された施策の識別情報を含むレコードを検索する。
【0166】
(S331-4)経験則更新部114は、検索されたレコードの累積変化量1203から、選択された属性の累積変化量を取得し、選択された属性の累積変化量の時系列データを生成する。
【0167】
(S331-5)経験則更新部114は、属性の累積変化量の時系列データに対するスペクトル解析を実行することによって周期を算出する。経験則更新部114は、周期性分析情報125に追加されたレコードの周期1603の選択された属性に対応するフィールドに、算出された周期を設定する。
【0168】
(S331-6)経験則更新部114は、検定結果132に含まれる変化量のフェーズを算出する。経験則更新部114は、周期性分析情報125に追加されたレコードのフェーズ1604の選択された属性に対応するフィールドに、算出されたフェーズを設定する。
【0169】
(S331-7)経験則更新部114は、評価モデルの変数として設定された全ての属性について処理が完了したか否かを判定する。全ての属性について処理が完了していない場合、経験則更新部114はS331-2に戻る。全ての属性について処理が完了した場合、経験則更新部114はステップS331の処理を終了する。
【0170】
以上がステップS331の処理の説明である。
【0171】
なお、各属性の累積検定指標の周期性についても同様に分析してもよい。
【0172】
実施例3の表示部115は、施策管理情報120に基づいて画面1000を表示し、経験則履歴124に基づいて画面1400を表示する。また、表示部115は、周期性分析情報125に基づいて、任意の施策の各属性の属性値の変化量の周期性を示す画面を表示する。
【0173】
属性値の変化量の周期性を提示することによって、ユーザは、現在において効果が高い施策を選択することができる。
【実施例4】
【0174】
実施例4では、計算機100は、施策の有効性を示す指標(有効性指標)を算出する。以下、実施例1及び実施例2との差異を中心に実施例4について説明する。
【0175】
実施例4の計算機100のハードウェア構成は実施例1と同一である。実施例4の計算機100の機能構成は実施例2と同一である。
【0176】
実施例4の施策選択部110、計画部111、実行部112、及び検定部113が実行する処理は実施例1と同一である。
【0177】
図18は、実施例4の経験則更新部114が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0178】
経験則更新部114は、検定部113から検定結果132が入力された場合、処理を開始する。
【0179】
経験則更新部114は、検定履歴123に検定結果132を保存する(ステップS301)。
【0180】
経験則更新部114は、検定対象の施策における各属性の累積変化量及び累積検定指標を更新する(ステップS302)。
【0181】
経験則更新部114は、経験則履歴124を更新する(ステップS321)。
【0182】
経験則更新部114は、施策の有効性指標を算出する(ステップS341)。具体的には以下のような処理が実行される。
【0183】
(S341-1)経験則更新部114は、オブジェクト管理情報121を参照し、検定結果132に対応する施策の適用条件に合致するオブジェクトの数を算出する。
【0184】
(S341-2)経験則更新部114は、施策管理情報120を参照し、検定結果132に対応する施策のレコードの累積変化量304の値を取得する。経験則更新部114は、各属性について、累積変化量及びオブジェクト数を乗算した演算値を算出する。
【0185】
(S341-3)経験則更新部114は、各属性の演算値を、施策の有効性指標として表示部115に出力する。
【0186】
以上がステップS341の処理の説明である。
【0187】
ユーザは、有効性指標を参照することによって、実施した施策そのものの有効性を確かめることができる。
【0188】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0189】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0190】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Python、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0191】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0192】
上述の実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0193】
100 計算機
101 対象システム
110 施策選択部
111 計画部
112 実行部
113 検定部
114 経験則更新部
115 表示部
120 施策管理情報
121 オブジェクト管理情報
122 実績管理情報
123 検定履歴
124 経験則履歴
125 周期性分析情報
130 施策データ
131 実施計画
132 検定結果
201 プロセッサ
202 主記憶装置
203 副記憶装置
204 ネットワークインタフェース
1000、1400 画面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18