(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】自走式溶接ロボット及び溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20241001BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20241001BHJP
B23K 37/02 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B23K9/12 C
B23K9/00 501B
B23K37/02 A
(21)【出願番号】P 2021018818
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】伊早坂 睦
(72)【発明者】
【氏名】似内 寛範
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 徳光
(72)【発明者】
【氏名】坂本 眞一
(72)【発明者】
【氏名】小前 健太郎
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-81484(JP,A)
【文献】特開平4-266496(JP,A)
【文献】特開昭49-37843(JP,A)
【文献】特開昭50-32638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/12
B23K 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向と交差する方向に間隔を空けて並べられた複数の第1建設部材と、前記第1建設部材の上面に前記複数の第1建設部材の並び方向である第1並び方向及び前記鉛直方向と交差する第2並び方向に間隔を空けて並べられた第2建設部材と、を溶接する自走式溶接ロボットであって、
車体と、
前記車体に搭載された溶接機と、
前記車体と連結され、前記第2建設部材の上面に接した状態で前記第1並び方向に走行可能な第1走行部と、
前記車体と連結され、複数の前記第2建設部材の前記上面に接した状態で前記第2並び方向に走行可能な第2走行部と、
前記第1走行部と前記第2走行部とを前記鉛直方向に相対的に移動させることにより、前記第1走行部と前記第2走行部とのうち一方を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし、前記第1走行部と前記第2走行部とのうち他方を前記第2建設部材よりも前記鉛直方向の上方に位置させた状態にする移動部と、
を備えた自走式溶接ロボット。
【請求項2】
前記第2建設部材と前記第2並び方向に並び前記第2建設部材と接触した状態で前記第2建設部材を挟む挟み位置と、前記第2建設部材よりも前記上方に位置する退避位置とに移動可能な一対の回転体を備えた、請求項1に記載の自走式溶接ロボット。
【請求項3】
前記第2建設部材に対して前記第2並び方向の一方側と他方側とに設けられ、前記第2建設部材と間隔を空けて対向する対向位置と、前記第2建設部材よりも前記上方に位置する退避位置とに移動可能な一対の対向部材を備えた請求項1に記載の自走式溶接ロボット。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか一つに記載の自走式溶接ロボットを用いた溶接方法であって、
前記移動部が前記第1走行部を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし前記第2走行部を前記第2建設部材よりも前記上方に位置させた状態で、前記自走式溶接ロボットが前記第1走行部によって前記第1並び方向に走行する工程と、
前記移動部が前記第2走行部を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし前記第1走行部を前記第2建設部材よりも前記上方に位置させた状態で、前記自走式溶接ロボットが前記第2走行部によって前記第2並び方向に走行する工程と、
前記第1走行部が前記第2建設部材の前記上面に接した状態で、前記溶接機が前記第1建設部材と前記第2建設部材とを溶接する工程と、
を含む、溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式溶接ロボット及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、間隔を空けて並べられた複数の第1建設部材と、第1建設部材の上面に第1建設部材の長手方向と交差する方向に間隔を空けて並べられた第2建設部材と、を溶接して、建設構造体を製造する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、作業員が溶接トーチを用いて第1建設部材と第2建設部材との溶接を行うため、溶接に掛かる手間が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、第1建設部材と第2建設部材との溶接に掛かる手間を低減することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる自走式溶接ロボットは、鉛直方向と交差する方向に間隔を空けて並べられた複数の第1建設部材と、前記第1建設部材の上面に前記複数の第1建設部材の並び方向である第1並び方向及び前記鉛直方向と交差する第2並び方向に間隔を空けて並べられた第2建設部材と、を溶接する自走式溶接ロボットであって、車体と、前記車体に搭載された溶接機と、前記車体と連結され、前記第2建設部材の上面に接した状態で前記第1並び方向に走行可能な第1走行部と、前記車体と連結され、複数の前記第2建設部材の前記上面に接した状態で前記第2並び方向に走行可能な第2走行部と、前記第1走行部と前記第2走行部とを前記鉛直方向に相対的に移動させることにより、前記第1走行部と前記第2走行部とのうち一方を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし、前記第1走行部と前記第2走行部とのうち他方を前記第2建設部材よりも前記鉛直方向の上方に位置させた状態にする移動部と、を備える。
【0007】
このような自走式溶接ロボットによれば、自走式溶接ロボットが、第1走行部と第2走行部とを択一的に使用して、第1建設部材と第2建設部材との溶接対象箇所に移動して、溶接することができる。よって、第1建設部材と第2建設部材との溶接に掛かる手間を低減することができる。
【0008】
前記自走式溶接ロボットは、例えば、前記第2建設部材と前記第2並び方向に並び前記第2建設部材と接触した状態で前記第2建設部材を挟む挟み位置と、前記第2建設部材よりも前記上方に位置する退避位置とに移動可能な一対の回転体を備える。
【0009】
前記自走式溶接ロボットは、例えば、前記第2建設部材に対して前記第2並び方向の一方側と他方側とに設けられ、前記第2建設部材と間隔を空けて対向する対向位置と、前記第2建設部材よりも前記上方に位置する退避位置とに移動可能な一対の対向部材を備える。
【0010】
また、本発明にかかる溶接方法は、前記自走式溶接ロボットを用いた溶接方法であって、前記移動部が前記第1走行部を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし前記第2走行部を前記第2建設部材よりも前記上方に位置させた状態で、前記自走式溶接ロボットが前記第1走行部によって前記第1並び方向に走行する工程と、前記移動部が前記第2走行部を前記第2建設部材の前記上面に接した状態にし前記第1走行部を前記第2建設部材よりも前記上方に位置させた状態で、前記自走式溶接ロボットが前記第2走行部によって前記第2並び方向に走行する第2走行工程と、前記第1走行部が前記第2建設部材の前記上面に接した状態で、前記溶接機が前記第1建設部材と前記第2建設部材とを溶接する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる自走式溶接ロボット及び溶接方法は、自走式溶接ロボットが、第1走行部と前記第2走行部とを択一的に使用して、第1建設部材と第2建設部材との溶接対象箇所に移動して、溶接することができる。よって、第1建設部材と第2建設部材との溶接に掛かる手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の自走式溶接ロボット及び溶接対象を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の自走式溶接ロボットを模式的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の自走式溶接ロボットの一部を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の自走式溶接ロボットにおける溶接機を含む部分を模式的に示す正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態の自走式溶接ロボットにおける第2走行部を含む部分を模式的に示す背面図であって、第2走行部が退避位置に位置した状態の図である。
【
図6】
図6は、実施形態の自走式溶接ロボットにおける第2走行部を含む部分を模式的に示す背面図であって、第2走行部が走行位置に位置した状態の図である。
【
図7】
図7は、実施形態の自走式溶接ロボットにおける挟み部を含む部分を模式的に示す背面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の自走式溶接ロボットにおけるガイド部を含む部分を模式的に示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる自走式溶接ロボット及び溶接方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1は、実施形態の自走式溶接ロボット1及び溶接対象100を模式的に示す平面図である。自走式溶接ロボット1は、当該自走式溶接ロボット1の上下方向が鉛直方向に沿うように溶接対象100上に載せられた状態で、溶接対象100上を移動し、移動の過程で溶接対象100を溶接する。以下の説明では、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は自走式溶接ロボット1の前後方向に沿う。Y方向は自走式溶接ロボット1の幅方向(左右方向)に沿う。Z方向は自走式溶接ロボット1の上下方向(高さ方向)に沿う。
【0015】
溶接対象100は、複数の第1建設部材101及び第2建設部材102を含む。複数の第1建設部材101は、鉛直方向と交差(一例として直交)する第1並び方向D1に間隔を空けて並べられている。第1建設部材101は、例えば鉄骨部材である。複数の第2建設部材102は、第1建設部材101の上面101bに、第1並び方向D1及び鉛直方向と交差(一例として直交)する第2並び方向D2に間隔を空けて並べられている。第2建設部材102は、例えばPC根太部材である。第1建設部材101及び第2建設部材102の詳細は後述する。自走式溶接ロボット1は、前後方向が第1並び方向D1に沿うように、第2建設部材102上に載せられる。第1建設部材101及び第2建設部材102は、溶接対象部材とも称される。
【0016】
図2は、実施形態の自走式溶接ロボット1を模式的に示す側面図である。
図3は、実施形態の自走式溶接ロボット1の一部を模式的に示す平面図である。
図4は、実施形態の自走式溶接ロボット1における溶接機11を含む部分を模式的に示す正面図である。
図2~4に示すように、自走式溶接ロボット1は、車体10、溶接機11、走行部12、挟み部14、ガイド部15、発電機17、シグナルタワー18、制御装置19、及びセンサ群を有する。
【0017】
車体10の内部には、自走式溶接ロボット1の各部が収容されている。車体10は、複数の部材によって構成されうる。車体10には、扉10a(
図4)が設けられている。扉10aが開かれることで、車体10の内部が露出する。車体10はボディとも称される。
【0018】
溶接機11は、車体10に搭載されている。詳細には、溶接機11は、車体10に収容されている。溶接機11は、第1建設部材101と第2建設部材102とを溶接可能である。溶接機11は、具体的に、多関節型のマニピュレータ20及び溶接トーチ21を有する。マニピュレータ20は、車体10の略中央部に設置されている。溶接トーチ21は、マニピュレータ20の先端部20aに固定されている。溶接トーチ21は、少なくとも先端部が車体10の外部に位置した状態で溶接ワイヤ22を用いたアーク溶接を行う。この溶接を行う状態の溶接トーチ21の前方と後方の位置には、風よけスカート25が配置されている。風よけスカート25は、車体10に固定されている。溶接ワイヤ22は、ワイヤ供給装置23から溶接トーチ21へ供給される。また、溶接機11による溶接の際には、ガスボンベ24からシールドガスが溶接対象箇所に供給される。また、自走式溶接ロボット1には、溶接トーチ21の整備を行うワイヤカッター・ノズルクリーナ26(
図4)が設けられている。ワイヤカッター・ノズルクリーナ26は、溶接トーチ21における溶接ワイヤ22の切断と、溶接トーチ21において溶接ワイヤ22が挿通されるノズルの掃除とを行うことができる。
【0019】
図2,3に示すように、走行部12は、第1走行部30、第2走行部31、及び移動部32(
図5)を有する。第1走行部30は、車体10と連結され、第2建設部材102の上面102aに接した状態で第1並び方向D1に走行可能である。すなわち、第1走行部30は、自走式溶接ロボット1を第1並び方向D1に走行させることが可能である。第2走行部31は、車体10と連結され、複数の第2建設部材102の上面102aに接した状態で第2並び方向D2に走行可能である。すなわち、第2走行部31は、自走式溶接ロボット1を第2並び方向D2に走行させることが可能である。
【0020】
第1走行部30は、前後二つの走行機構33を有する。二つの走行機構33は、自走式溶接ロボット1の前後方向すなわち第1並び方向D1に間隔を空けて設けられている。走行機構33は、左右一対の車輪34、モータ35、及び伝達機構36を有する。車輪34は、車体10に回転可能に支持されている。車輪34の回転中心軸(軸心)は、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に沿う。車輪34は、伝達機構36を介して伝達されたモータ35の駆動力によって回転する。左右一対の車輪34は、第2並び方向D2で隣り合う一対の第2建設部材102の上面102aに接触する。
【0021】
第2走行部31は、走行機構40A,40Bの組を二組有し、これらの二組は、自走式溶接ロボット1の前後方向に互いに離間して設けられている。各組の走行機構40A,40Bは、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に互いに離間して設けられている。以後、走行機構40A,40Bの総称として走行機構40を用いる場合がある。第2走行部31は、横行部とも称される。
【0022】
図5は、実施形態の自走式溶接ロボット1における第2走行部31を含む部分を模式的に示す背面図であって、第2走行部31が退避位置に位置した状態の図である。
図6は、実施形態の自走式溶接ロボット1における第2走行部31を含む部分を模式的に示す背面図であって、第2走行部31が走行位置に位置した状態の図である。
図3~6に示すように、走行機構40は、ベース41(
図5,6)、複数の車輪42、及びチェーン43(
図3)を有する。ベース41は、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に移動可能にレール44に支持されている。また、ベース41は、駆動シリンダ45(
図3)によって自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に移動される。なお、
図3ではベース41の図示が省略されている。駆動シリンダ45は、例えば油圧シリンダである。駆動シリンダ45は、油圧回路を構成する油圧ユニット88(
図4)によって制御される。
【0023】
複数の車輪42は、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に互いに間隔を空けて並べられている。車輪42は、ベース41に回転可能に支持されている。車輪34の回転中心軸(軸心)は、自走式溶接ロボット1の前後方向すなわち第1並び方向D1に沿う。車輪42は、伝達機構を介して伝達されたモータ46の駆動力によって回転する。車輪42及びモータ46は、ベース41と一体に第2並び方向D2に移動する。また、モータ46に電気を供給する電線は、チェーン47に支持されている。電線及びチェーン47は、モータ46の移動に応じて変形可能である。
【0024】
図5,6に示される移動部32は、第1走行部30と第2走行部31とを鉛直方向に相対的に移動させることにより、第1走行部30と第2走行部31とのうち一方を第2建設部材102の上面102aに接した状態にする。このとき、移動部32は、第1走行部30と第2走行部31とのうち他方を第2建設部材102よりも鉛直方向の上方に位置させた状態にする。一例として、移動部32は、車体10に対して第2走行部31を鉛直方向に相対移動させることにより、第1走行部30と第2走行部31とを鉛直方向に相対的に移動させる。なお、移動部32は、車体10に対して第1走行部30を鉛直方向に相対移動させることにより、第1走行部30と第2走行部31とを鉛直方向に相対的に移動させてもよい。
【0025】
移動部32は、各走行機構40に対して設けられた移動機構50を備える。移動機構50は、可動部材51、ガイド52、及び駆動シリンダ53を有する。可動部材51には、レール44が固定されている。可動部材51は、自走式溶接ロボット1の上下方向すなわち鉛直方向に移動可能にガイド52によって支持されている。また、可動部材51は、駆動シリンダ53によって鉛直方向に移動される。駆動シリンダ53は、例えば油圧シリンダである。駆動シリンダ53は、油圧ユニット88によって制御される。
【0026】
駆動シリンダ53が可動部材51を鉛直方向に移動させることにより、走行機構40が可動部材51と一体に鉛直方向に移動する。
【0027】
上記構成の走行部12は、第1走行部30が第2建設部材102の上面102aに接して第1走行部30による走行が可能な第1状態(
図5)と、第2走行部31が第2建設部材102の上面102aに接して第2走行部31による走行が可能な第2状態(
図6)とに変化可能である。第1状態から第2状態への移行は、一例として、次のように行われる。すなわち、まず、
図5の位置(格納位置)に位置する走行機構40が、駆動シリンダ45によって車体10の外方へ向けて移動され、張出位置で停止される。次に、張出位置に位置された走行機構40が、駆動シリンダ53によって車体10に対して相対的に下方に移動される。これにより、第2走行部31が第2建設部材102の上面102aに接し、第1走行部30が第2建設部材102の上面102aに対して上方に離間する(
図6)。すなわち、第1走行部30は、車体10と一体に持ち上げられる。
【0028】
一方、第2状態(
図6)から第1状態(
図5)への移行は、一例として、次のように行われる。すなわち、まず、
図6の位置に位置する走行機構40が、駆動シリンダ53によって車体10に対して相対的に上方に移動される。これにより、第1走行部30が第2建設部材102の上面102aに接し、第2走行部31が第2建設部材102の上面102aに対して上方に離間する(
図6)。次に、走行機構40が、駆動シリンダ45によって車体10の内方へ向けて移動され、格納位置で停止される(
図5)。
【0029】
図3に示すように、挟み部14は、自走式溶接ロボット1の前後方向すなわち第1並び方向D1に互い間隔を空けて複数(一例として二つ)設けられている。
【0030】
図7は、実施形態の自走式溶接ロボット1における挟み部14を含む部分を模式的に示す背面図である。
図7に示すように、挟み部14は、一対の押圧機構59A,59Bを有する。押圧機構59Aは第2建設部材102に対して第2並び方向D2の一方側に位置し、押圧機構59Bは第2建設部材102に対して第2並び方向D2の他方側に位置する。以後、押圧機構59A,59Bの総称として押圧機構59を用いる場合がある。
【0031】
押圧機構59は、回転体60、駆動シリンダ61、連結部材62、及びレール64を有する。回転体60は、連結部材62を介して駆動シリンダ61に連結されている。回転体60は、駆動シリンダ61によって、車体10に対して相対的に鉛直方向に移動される。回転体60は、連結部材62に回転可能に支持されている。回転体60の回転中心軸は、鉛直方向に沿う。
【0032】
駆動シリンダ61は、レール64によって、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に移動可能に支持されている。また、駆動シリンダ61は、連結部材65を介してスライダー66に連結されている。スライダー66は、レール67によって、自走式溶接ロボット1の幅方向すなわち第2並び方向D2に移動可能に支持されている。また、スライダー66は、駆動部を内蔵しており、この駆動部の動作によって、第2並び方向D2に移動する。駆動部は、例えば駆動シリンダやばね等を含み、駆動シリンダの力によって第2並び方向D2の一方側へ移動し、ばねの力によって第2並び方向D2の一方側へ移動することが可能である。
【0033】
上記構成の挟み部14では、第2建設部材102を間にして配置された一対の回転体60は、第2建設部材102と第2並び方向D2に並び第2建設部材102と接触した状態で第2建設部材102を挟む挟み位置(
図7の一点鎖線の回転体60の位置)と、第2建設部材102よりも上方に位置する退避位置(
図7の実線の回転体60の位置)とに移動可能である。挟み位置から退避位置への移動は、一例として、次のように行われる。すなわち、まず、回転体60がスライダー66の駆動シリンダによって、第2並び方向D2に沿って第2建設部材102から離間する方向に移動される。次に、回転体60が駆動シリンダ61によって、車体10に対して相対的に上方へ移動される。
【0034】
一方、退避位置から挟み位置への移動は、一例として、次のように行われる。回転体60が駆動シリンダ61によって、車体10に対して相対的に下方へ移動される。次に、スライダー66の駆動シリンダが開放され、スライダー66のばねの力によって回転体60が第2並び方向D2に沿って第2建設部材102に向かう方向に移動される。これにより、回転体60が第2建設部材102と接触して第2建設部材102を押圧する。
【0035】
図3に示すように、ガイド部15は、自走式溶接ロボット1の前部に設けられている。ガイド部15は、一対のガイド機構69A,69Bを有する。ガイド機構69Aは、第2建設部材102に対して第2並び方向D2の一方側に位置し、ガイド機構69Bは、第2建設部材102に対して第2並び方向D2の他方側に位置する。以後、ガイド機構69A,69Bの総称としてガイド機構69を用いる場合がある。
【0036】
図8は、実施形態の自走式溶接ロボット1におけるガイド部15を含む部分を模式的に示す背面図である。ガイド機構69は、対向部材70、ガイド71、及び駆動シリンダ72を有する。対向部材70は、第2建設部材102と第2並び方向D2に対向可能な対向面70aを有する。対向部材70は、ガイド71によって、自走式溶接ロボット1の上下方向すなわち鉛直方向に移動可能に支持されている。また、対向部材70は、駆動シリンダ72によって、鉛直方向に移動される。駆動シリンダ72は、例えば油圧シリンダである。駆動シリンダ72は、油圧ユニット88によって制御される。
【0037】
上記構成のガイド部15では、一対の対向部材70は、対向面70aが第2建設部材102と間隔を空けて対向する対向位置(
図8においてガイド機構69Aの対向部材70の位置)と、第2建設部材102よりも上方に位置する退避位置(
図8においてガイド機構69Bの対向部材70の位置)とに移動可能である。対向部材70は、駆動シリンダ72によって、対向位置と退避位置との間を移動される。
【0038】
図3に示すように、センサ群は、センサ80~84を含む。センサ80は、自走式溶接ロボット1が載っている第2建設部材102の長手方向の端を検知可能である。センサ81は、自走式溶接ロボット1が載っている第2建設部材102に対して第1並び方向で隣りの第2建設部材102を検知可能である。センサ82は、自走式溶接ロボット1が載っている第2建設部材102の上面102aを検知可能である。センサ83は、溶接対象箇所(溶接対象位置)を検知可能である。溶接対象箇所は、第1建設部材101の上面101bと第2建設部材102の側面102cとの境界部(接触部)である。センサ84は、障害物を検知可能である。センサ80~83は、例えばレーザーセンサである。センサ84は、例えば接触センサである。
【0039】
図2に戻って、発電機17は、発電した電力を自走式溶接ロボット1の各部に供給する。シグナルタワー18は、自走式溶接ロボット1における溶接動作中等の各種の状態に応じて発光する。また、自走式溶接ロボット1は、空気圧回路90を有する。空気圧回路90は、エアコンプレッサー91及びエアタンク92を含む。空気圧回路90は、自走式溶接ロボット1の不図示のアクチュエータを制御する。
【0040】
制御装置19は、自走式溶接ロボット1の各部を制御する。制御装置19は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を有する。すなわち、制御装置19は、コンピュータである。CPUは、ROM等に記憶されたプログラムを読み出して実行する。RAMは、CPUがプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。また、制御装置19には、センサ80~83の検出結果が入力される。
【0041】
次に、第1建設部材101及び第2建設部材102の詳細を説明する。
図2及び
図4に示すように、第1建設部材101は、例えば、H形鋼やI型鋼のような部材であり、一対のフランジ101a(図面では一方だけが示されている)。一方のフランジ101aは、上面101bを含む。第2建設部材102は、断面が四角形に形成されており、上面102aと、下面102bと、二つの側面102cと、を有する。また、第2建設部材102は、複数の部材によって構成されている。具体的には、第2建設部材102は、上面102aと、側面102cの一部とを含むベース103と、下面102bと、側面102cの一部とを含む型鋼104と、を有する。
【0042】
次に、自走式溶接ロボット1を用いた溶接方法を
図1等を参照して説明する。当該溶接方法における自走式溶接ロボット1の各部の動作は、制御装置19の制御によってなされる。溶接方法の前提として、一例として、自走式溶接ロボット1は、隣り合う二つの第2建設部材102の組105の一端部に置かれる。このとき、第1走行部30の車輪34が第2建設部材102の上面102aに接触し、第2走行部31の車輪42は第2建設部材102の上面102aよりも上方に位置している。
【0043】
自走式溶接ロボット1は、上記状態から第2建設部材102の組105上を第1走行部30することにより、当該組105の一端部から他端部へ移動する。この移動の過程で、自走式溶接ロボット1は、第1建設部材101と第2建設部材102とを溶接する。溶接対象箇所は、上述のとおり、第1建設部材101の上面101bと第2建設部材102の型鋼104の側面102cとの境界部である。この境界部は、一つの組105と一つの第1建設部材101とにおいて、四つある。自走式溶接ロボット1は、溶接実行時には、走行を停止して、上記四つの境界部(接触部)を溶接する。この溶接により、溶接部110(
図5)が形成される。自走式溶接ロボット1の制御装置19は、例えば、溶接対象箇所を、各センサ83等の検出結果を用いて把握してもよいし、予め設定された座標位置に自走式溶接ロボット1が到達したことにより把握してもよい。
図1の矢印E1は、上記移動における自走式溶接ロボット1の走行方向を示している。
【0044】
自走式溶接ロボット1は、一つの組105の全ての溶接対象箇所に対する溶接を完了すると、当該組105の隣の組105に移動する。この移動において、自走式溶接ロボット1は、移動部32によって、第2走行部31の車輪42が第2建設部材102の上面102aに接触させ、第1走行部30の車輪34を第2建設部材102の上面102aよりも上方に位置させる。ここで、自走式溶接ロボット1の制御装置19は、例えば、荒予め設定された数の溶接対象箇所に対する溶接が完了したことにより、一つの組105の全ての溶接対象箇所に対する溶接を完了したと判定する。
図1の矢印E2は、上記移動における自走式溶接ロボット1の走行方向を示している。
【0045】
自走式溶接ロボット1は、上記隣の組105に移動すると、移動部32によって、第1走行部30の車輪34を第2建設部材102の上面102aに接触させ、第2走行部31の車輪42を第2建設部材102の上面102aよりも上方に位置させる。そして、上記状態から第2建設部材102の組105上を第1走行部30することにより、当該組105の他端部から一端部へ移動する。この移動の過程で、自走式溶接ロボット1は、第1建設部材101と第2建設部材102とを溶接する。
図1の矢印E3は、上記移動における自走式溶接ロボット1の走行方向を示している。自走式溶接ロボット1は、当該組105の全ての溶接対象箇所に対する溶接を完了すると、当該組105の隣の組105(
図1のY方向側の組105)に移動する。
図1の矢印E4は、上記移動における自走式溶接ロボット1の走行方向を示している。このようにして、自走式溶接ロボット1は、一つの組105に対する溶接が完了すると、隣の組105へ移動して、当該隣の組105の溶接を行う。すなわち、複数の第2建設部材102に対する溶接を順次行う。
【0046】
このように、溶接方法は、移動部32が第1走行部30を第2建設部材102の前記上面102aに接した状態にし第2走行部31を第2建設部材102よりも上方に位置させた状態で、自走式溶接ロボット1が第1走行部30によって第1並び方向D1に走行する工程を含む。また、溶接方法は、移動部32が第2走行部31を第2建設部材102の前記上面102aに接した状態にし第1走行部30を第2建設部材102よりも上方に位置させた状態で、自走式溶接ロボット1が第2走行部31によって第2並び方向D2に走行する工程を含む。また、溶接方法は、第1走行部30が第2建設部材102の前記上面102aに接した状態で、溶接機11が第1建設部材101と第2建設部材102とを溶接する工程を含む。
【0047】
以上のように、本実施形態では、自走式溶接ロボット1は、車体10、溶接機11、第1走行部30、第2走行部31、及び移動部32を備える。第1走行部30は、車体10と連結され、第2建設部材102の上面102aに接した状態で第1並び方向D1に走行可能である。第2走行部31は、車体10と連結され、複数の第2建設部材102の上面102aに接した状態で第2並び方向D2に走行可能である。移動部32は、第1走行部30と第2走行部31とを鉛直方向に相対的に移動させることにより、第1走行部30と第2走行部31とのうち一方を第2建設部材102の前記上面102aに接した状態にし、第1走行部30と第2走行部31とのうち他方を第2建設部材102よりも鉛直方向の上方に位置させた状態にする。このような構成によれば、自走式溶接ロボット1が、第1走行部30と第2走行部31とを択一的に使用して、第1建設部材101と第2建設部材102との溶接対象箇所に移動して、溶接することができる。よって、第1建設部材101と第2建設部材102との溶接に掛かる手間を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態では、自走式溶接ロボット1は、一対の回転体60を備える。一対の回転体60は、第2建設部材102と第2並び方向D2に並び第2建設部材102と接触した状態で第2建設部材102を挟む挟み位置と、第2建設部材102よりも上方に位置する退避位置とに移動可能である。このような構成によれば、第1走行部30による走行時には、一対の回転体60を挟み位置に位置させることで、自走式溶接ロボット1のふらつきが抑制される。また、第2走行部31による走行時には、一対の回転体60を退避位置に位置させることで、第2走行部31による走行が可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、自走式溶接ロボット1は、一対の対向部材70を備える。一対の対向部材70は、第2建設部材102に対して第2並び方向D2の一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、第2建設部材102と間隔を空けて対向する対向位置と、第2建設部材102よりも上方に位置する退避位置とに移動可能である。このような構成によれば、第1走行部30による走行時には、対向部材70を対向位置に位置させることで、自走式溶接ロボット1が左右方向に蛇行しそうになった場合、他対向部材70が第2建設部材102に接触することにより、自走式溶接ロボット1を第1並び方向に沿って案内することができる。また、第2走行部31による走行時には、一対の対向部材70を退避位置に位置させることで、第2走行部31による走行が可能となる。
【0050】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
1…自走式溶接ロボット、10…車体、11…溶接機、30…第1走行部、31…第2走行部、32…移動部、60…回転体、70…対向部材、101…第1建設部材、101b…上面、102…第2建設部材、D1…第1並び方向、D2…第2並び方向。