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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】軸合わせ用治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/053 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B23K37/053 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021019875
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122558
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅也
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-053771(JP,A)
【文献】特開2002-263889(JP,A)
【文献】特開2015-193023(JP,A)
【文献】特開2006-003234(JP,A)
【文献】米国特許第11292104(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを互いに突き合わせた状態で収容する筒状体からなるガイド部品と、
前記ガイド部品と同一軸線上に位置付けられて前記ガイド部品の軸線方向の一端部に嵌合して押し付けられる押し込み部品とからなり、
前記ガイド部品は、
前記軸線方向の中間部分に形成された第1の穴と、
前記第1の穴より前記軸線方向の一端部側に穴径が前記第1の穴の穴径より大きくなるように形成された第2の穴と、
前記第1の穴より前記軸線方向の他端部側に穴径が前記第1の穴の穴径より大きくなるように形成された第3の穴とを有し、
前記ガイド部品の前記軸線方向の他端部を除く他の部分の周壁は、前記筒状体の他端部側から一端部側に向けて延びる凸部と、前記一端部側が開放される切り欠きとを周方向に並べて形成され、
前記押し込み部品は、前記ガイド部品の前記凸部に嵌合する凹部と、前記ガイド部品の前記切り欠きに嵌合する凸部とを有し、
前記ガイド部品と前記押し込み部品との嵌合部は、前記押し込み部品に前記軸線方向の他端部側に向かうように加えられた軸線方向の押圧力を前記ガイド部品の前記周壁が径方向内側に向けて押されるような径方向の押圧力に変換するカム面を有し、
前記ガイド部品の前記周壁に前記径方向の押圧力が加えられることによって、前記周壁が径方向内側に弾性変形し、前記第2の穴の内径が小さくなることを特徴とする軸合わせ用治具。
【請求項2】
請求項1記載の軸合わせ用治具において、
前記複数のワークは、
前記第1の穴に嵌合可能な外周面を有し、前記第1の穴に収容される第1のワークと、
前記第2の穴に嵌合可能な大径部を有しかつ前記大径部の一端に前記第1のワークの外径以下となる小径部が形成され、前記小径部が前記第1のワークと対向する状態で前記第2の穴に収容される第2のワークと、
前記第3の穴に嵌合可能な大径部を有しかつこの大径部の一端に前記第1のワークの外径以下となる小径部が形成され、この小径部が前記第1のワークと対向する状態で前記第3の穴に収容される第3のワークとからなり、
前記第2の穴の穴径は、前記ガイド部品の前記周壁に前記径方向の押圧力が加えられて前記周壁が径方向内側に弾性変形することによって、前記第2の穴の内周面が前記第2のワークの大径部に密着する穴径であることを特徴とする軸合わせ用治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の軸合わせ用治具において、
前記周壁の前記凸部における前記第1の穴と対応する位置には、貫通穴が形成されていることを特徴とする軸合わせ用治具。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れか一つに記載の軸合わせ用治具において、
前記ガイド部品の前記凸部は、前記軸線方向に突出する山形状に形成されているとともに、突出端から前記周方向の一方と他方とに延びる傾斜部を有し、
前記ガイド部品の前記切り欠きは、前記ガイド部品の隣り合う二つの前記凸部の前記傾斜部によってV字状に形成されていることを特徴とする軸合わせ用治具。
【請求項5】
請求項4に記載の軸合わせ用治具において、
前記ガイド部品における、前記切り欠きの最奥部と前記筒状体の他端との間の部分は、前記ガイド部品の前記凸部が径方向外側に拡がることを許容するヒンジ部を構成していることを特徴とする軸合わせ用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークの外周面を基準にして軸合わせを行う軸合わせ用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
外周面を有する二つのワークを突き合わせ溶接によって溶接する場合は、例えば特許文献1に記載されているように二つのワークが同一軸線上に位置するように軸合わせが行われる。二つのワークがそれぞれ丸棒状である場合、これらのワークの軸合わせは、筒状に削り出したガイド部品の中に両ワークを挿入し、両ワークの外周面をそれぞれガイド部品の内周面に嵌合させて行われる。この種の削り出しのガイド部品は、ワークとのクリアランスを可及的に小さくする必要があるために、製造時に要求される精度が高いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-267888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、筒状のガイド部品を使用して軸合わせを行う方法は、図9に示すような第1~第3のワーク1~3を1箇所で溶接するような場合には実施することができない。第1のワーク1は円板である。第2のワーク2と第3のワーク3は、第1のワーク1の両側に位置付けられ、第1のワーク1と接する小径部2a,3aと、この小径部2a,3aより外径が大きい大径部2b,3bとを有している。
【0005】
このような第1~第3のワーク1~3の最も外径が大きい部分(大径部2b,3b)より小径な部分(第1のワーク1、小径部2a,3a)を突き合わせ溶接する場合、上述した筒状のガイド部品によって最も外径が大きい大径部2b,3bで第2、第3のワーク2,3の軸合わせを行ったとしても、最も外径が小さい第1のワーク1の軸合わせを行うことができない。なお、筒状のガイド部品で第1のワーク1の軸合わせを行うと、溶接後にガイド部品を取り外すことができなくなる。
【0006】
本発明の目的は、3つのワークの中央に位置するワークの外径が他のワークより小さい場合でもこれらのワークの軸合わせを精度よくかつ簡単に行うことが可能な軸合わせ用治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明に係る軸合わせ用治具は、複数のワークを互いに突き合わせた状態で収容する筒状体からなるガイド部品と、前記ガイド部品と同一軸線上に位置付けられて前記ガイド部品の軸線方向の一端部に嵌合して押し付けられる押し込み部品とからなり、前記ガイド部品は、前記軸線方向の中間部分に形成された第1の穴と、前記第1の穴より前記軸線方向の一端部側に穴径が前記第1の穴の穴径より大きくなるように形成された第2の穴と、前記第1の穴より前記軸線方向の他端部側に穴径が前記第1の穴の穴径より大きくなるように形成された第3の穴とを有し、前記ガイド部品の前記軸線方向の他端部を除く他の部分の周壁は、前記筒状体の他端部側から一端部側に向けて延びる凸部と、前記一端部側が開放される切り欠きとを周方向に並べて形成され、前記押し込み部品は、前記ガイド部品の前記凸部に嵌合する凹部と、前記ガイド部品の前記切り欠きに嵌合する凸部とを有し、前記ガイド部品と前記押し込み部品との嵌合部は、前記押し込み部品に前記軸線方向の他端部側に向かうように加えられた軸線方向の押圧力を前記ガイド部品の前記周壁が径方向内側に向けて押されるような径方向の押圧力に変換するカム面を有し、前記ガイド部品の前記周壁に前記径方向の押圧力が加えられることによって、前記周壁が径方向内側に弾性変形し、前記第2の穴の内径が小さくなるものである。
【0008】
本発明は、前記軸合わせ用治具において、複数のワークは、前記第1の穴に嵌合可能な外周面を有し、前記第1の穴に収容される第1のワークと、前記第2の穴に嵌合可能な大径部を有しかつ前記大径部の一端に前記第1のワークの外径以下となる小径部が形成され、前記小径部が前記第1のワークと対向する状態で前記第2の穴に収容される第2のワークと、前記第3の穴に嵌合可能な大径部を有しかつこの大径部の一端に前記第1のワークの外径以下となる小径部が形成され、この小径部が前記第1のワークと対向する状態で前記第3の穴に収容される第3のワークとからなり、前記第2の穴の穴径は、前記ガイド部品の前記周壁に前記径方向の押圧力が加えられて前記周壁が径方向内側に弾性変形することによって、前記第2の穴の内周面が前記第2のワークの大径部に密着する穴径であってもよい。
【0009】
本発明は、前記軸合わせ用治具において、前記周壁の前記凸部における前記第1の穴と対応する位置には、貫通穴が形成されていてもよい。
【0010】
本発明は、前記軸合わせ用治具において、前記ガイド部品の前記凸部は、前記軸線方向に突出する山形状に形成されているとともに、突出端から前記周方向の一方と他方とに延びる傾斜部を有し、前記ガイド部品の前記切り欠きは、前記ガイド部品の隣り合う二つの前記凸部の前記傾斜部によってV字状に形成されていてもよい。
【0011】
本発明は、前記軸合わせ用治具において、前記ガイド部品における、前記切り欠きの最奥部と前記筒状体の他端との間の部分は、前記ガイド部品の前記凸部が径方向外側に拡がることを許容するヒンジ部を構成していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、第1の穴に外径が最も小さいワークを嵌合させ、第2、第3の穴に他の2つのワークを嵌合させ、ガイド部品に押し込む部品を押し付けることによって、ガイド部品の周壁が径方向内側に弾性変形し、第1~第3の穴の内周面が第1~第3のワークに押し付けられる。また、この軸合わせ用治具は、周壁の凸部をガイド部品の外径が拡がる方向に弾性変形させることにより、第1~第3のワークを取外すことができる。
【0013】
したがって、本発明によれば、3つのワークの中央に位置するワークの外径が他のワークより小さい場合でもこれらのワークの軸合わせを精度よくかつ簡単に行うことが可能な軸合わせ用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る軸合わせ用治具の使用状態を示す断面図である。
図2図2は、軸合わせ用治具とワークを分解して示す断面図である。
図3図3は、ガイド部品の押し込み部品側から見た背面図である。
図4図4は、ガイド部品の側面図である。
図5図5は、押し込み部品のガイド部品側から見た正面図である。
図6図6は、押し込み部品の側面図である。
図7図7は、軸合わせ用治具の斜視図である。
図8図8は、押し込み部品の一部とワークの一部を示す断面図である。
図9図9は、突き合わせ溶接用のワークを示す側面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る軸合わせ用治具の一実施の形態を図1図8を参照して詳細に説明する。図1図2の破断位置は、図4中にI-I線によって示す位置である。
図1に示す軸合わせ用治具11は、図1の中央部分に描かれている複数のワーク12~14の軸合わせを行うためのもので、図1において左側に描かれている筒状体からなるガイド部品15と、このガイド部品15と同一軸線上に位置付けられてガイド部品15の軸線方向の一端部15a(図1においては右側の端部)に嵌合して押し付けられる押し込み部品16とによって構成されている。以下においては、ガイド部品15に対して押し込み部品16が位置する方向を単に「軸線方向の一端側」とし、これとは反対の方向を「軸線方向の他端側」として説明する。
【0016】
ガイド部品15に収容される複数のワーク12~14は、図示していないセンサの部品である。これらのワーク12~14は、図2に示すように、ガイド部品15の軸線方向(図2においては左右方向)の長さが最も短い第1のワーク12と、この第1のワーク12をガイド部品15の軸線方向の両側から挟む第2、第3のワーク13,14である。第2のワーク13は、第1のワーク12より軸線方向の一端側に位置し、第3のワーク14は、第1のワーク12より軸線方向の他端側に位置している。
これらの第1~第3のワーク12~14は、それぞれ金属材料によって形成され、軸合わせが行われた後に互いに連結されるように第1のワーク12が位置する1箇所で溶接される。
【0017】
第1のワーク12は、円板によって形成されている。以下においては、第1のワーク12の外径を単に「第1の外径」という。
第2のワーク13は、円筒状に形成されている。この実施の形態で用いる第2のワーク13は、軸線方向の一端部に蓋体17が予め溶接されているものである。蓋体17には複数の電極用のピン18が貫通している。蓋体17のピン18が貫通する分部は、ハーメチックシール19によって封止されている。
【0018】
第2のワーク13は、軸線方向の他端に位置する小径部13aと、この小径部13aから軸線方向の一端側に延びる大径部13bとを有している。小径部13aは、外径が第1の外径以下となるように形成され、第1のワーク12に軸線方向の一端側から接触する。
大径部13bの外径は、第1の外径より大きい第2の外径である。大径部13bの軸線方向の一端部の外径は、第2の外径より小さく、蓋体17の外径と同一となるような外径である。
【0019】
第3のワーク14は、円筒状に形成され、軸線方向の一端に位置する小径部14aと、この小径部から軸線方向の他端側に延びる大径部14bとを有している。小径部14aは、外径が第1の外径以下となるように形成され、第1のワーク12に軸線方向の他端側から接触する。
大径部14bの外径は、第1の外径より大きい第3の外径である。この実施の形態においては、第3の外径は第2の外径と同一である。
【0020】
ガイド部品15は、第1~第3のワーク12~14を互いに突き合わせた状態で収容している。この実施の形態によるガイド部品15と押し込み部品16は、それぞれプラスチック材料によって形成されている。ガイド部品15を形成するプラスチック材料は、一定のしなやかさを有するような、可撓性を有する材料である。この実施の形態によるガイド部品15は、引張強度が36MPa、曲げ強度が81MPaとなるようなプラスチック材料によって形成されている。このような特性を有するプラスチック材料としては、例えばナイロン系樹脂を挙げることができる。
【0021】
ガイド部品15は、図2に示すように、軸線方向の中間部分に内径が他の部分より小さくなるように形成された第1の穴21と、この第1の穴21の両側に形成された第2、第3の穴22,23とを有している。第1~第3の穴21~23の開口形状は円形である。また、第1~第3の穴21~23は、同一軸線上に形成されている。
【0022】
第1の穴21は、軸線方向の一端から他端まで穴径が一定となるように形成されている。第1の穴21の穴径は、第1のワーク12の外周面12aが嵌合可能な穴径である。第1の穴21の軸線方向の長さは、第1のワーク12の軸線方向の長さと、第2および第3のワーク13,14の小径部13a,14aの軸線方向の長さとを合わせた長さより短い。
【0023】
第2の穴22は、第1の穴21より軸線方向の一端側に形成されている。この第2の穴22には、第2のワーク13が挿入される。第2のワーク13は、小径部13aが第1のワーク12と対向するように第2の穴22に軸線方向の一端側から挿入される。第2の穴22の穴径は、第1の穴21の穴径より大きく、第2のワーク13の大径部13bが嵌合可能な穴径である。
【0024】
この実施の形態による第2の穴22の穴径は、第2のワーク13の大径部13bとの間に予め定めた寸法のクリアランスdが形成されるように設定されている。このクリアランスdは、第2の穴22に第2のワーク13が遊嵌状態で嵌合するようなクリアランスで、0.1mm~0.2mmとすることができる。
【0025】
第3の穴23は、第1の穴21より軸線方向の他端側に形成されている。第3の穴23には、第3のワーク14が挿入される。第3のワーク14は、小径部14aが第1のワーク12と対向するように第3の穴23に軸線方向の他端側から挿入される。第3の穴23の穴径は、第1の穴21の穴径より大きく、第3のワーク14の大径部14bが嵌合可能な穴径である。
【0026】
第1~第3の穴21~23を形成するガイド部品15の周壁24は、軸線方向の他端部15bに位置するリング状の第1の周壁24aと、軸線方向の他端部15bを除く他の部分となる第2の周壁24bとによって構成されている。第2の周壁24bは、図7に示すように、ガイド部品15の軸線方向の他端部側から一端部側に向けて延びる凸部31と、軸線方向の一端部側が開放される切り欠き32とを周方向に並べて形成されている。この実施の形態による凸部31と切り欠き32は、周壁24を周方向に4等分する位置にそれぞれ設けられている。
【0027】
凸部31は、図4に示すように、ガイド部品15の軸線方向に突出する山形状に形成されている。この実施の形態による凸部31は、突出端から周壁24の周方向の一方と他方とに延びる傾斜部31a,31bを有している。凸部31における第1の穴21と対応する位置には、貫通穴33が形成されている。貫通穴33の開口形状は、凸部31の傾斜部31a,31bに倣って延びる2辺を有する四角形である。
【0028】
凸部31および切り欠き32における、軸線方向の一端側の端面は、ガイド部品15の軸線方向に傾斜する第1のカム面34を構成している。第1のカム面34は、図2に示すように、ガイド部品15の径方向の外側に向かうにしたがって次第に軸線方向の他端側に位置するように傾斜している。
【0029】
切り欠き32は、隣り合う二つの凸部31の傾斜部31a,31bによってV字状に形成されている。V字が開く方向は、ガイド部品15の軸線方向において一端部に向かう方向である。この切り欠き32は、最奥部32aが上述した第1の周壁24aまで延びるように形成されている。切り欠き32の最奥部32aと、ガイド部品15の他端(図4においては左端)との間は、第1の周壁24aの一部であり、互いに隣り合う二つの凸部31,31どうしを接続するヒンジ部35を構成している。詳述すると、凸部31は、このヒンジ部35が弾性変形により捻れることによって、図8に示すように、突出端が第2のワーク13の大径部13bとの距離が増大するように、あるいは減少するように、ガイド部品15の径方向に揺動することができる。
【0030】
押し込み部品16は、図7に示すように、ガイド部品15の凸部31に嵌合する凹部41と、ガイド部品15の切り欠き32に嵌合する凸部42とを有する筒状に形成されている。これらの凹部41と凸部42は、ガイド部品15の凸部31および切り欠き32と同様に周方向に交互に並んでいる。
【0031】
押し込み部品16の凹部41と凸部42における、軸線方向の他端側の端面は、軸線方向に傾斜する第2のカム面43を構成している。第2のカム面43は、図2に示すように、押し込み部品16の径方向の外側に向かうにしたがって次第に軸線方向の他端部側に位置するように傾斜している。この第2のカム面43の軸線方向に対して傾斜する角度は、図1に示すようにガイド部品15の軸線方向の一端部に押し込み部品16の軸線方向の他端部を嵌合させた状態で、ガイド部品15の第1のカム面34と押し込み部品16の第2のカム面43とが重なるような角度である。この実施の形態においては、第1のカム面34と第2のカム面43とが本発明でいう「カム面」に相当する。
【0032】
第1のカム面34と第2のカム面43とが重なる状態で押し込み部品16がガイド部品15に対して軸線方向の他端側に押されると、第2のカム面43が第1のカム面34を押し、第1のカム面34と第2のカム面43とが互いに滑るようになって第1のカム面34が径方向内側に押される。すなわち、ガイド部品15と押し込み部品16との嵌合部44(図1参照)に形成された第1および第2のカム面34,43は、押し込み部品16に軸線方向の他端部側に向かうように加えられた軸線方向の押圧力を、ガイド部品15の第2の周壁24bが径方向内側に向けて押されるような径方向の押圧力に変換する。
【0033】
ガイド部品15の第2の周壁24bに径方向内側に向けて押圧力が加えられることによって、第2の周壁24bが径方向内側に弾性変形し、第2の穴22の内径が小さくなる。このように第2の穴22の内径が小さくなることによって、第2の穴22の内周面が第2のワーク13の大径部13bに密着し、第1~第3のワーク12~14が同一軸線上に位置付けられる。
【0034】
したがって、この実施の形態によれば、第1~第3のワーク12~14の中央に位置する第1のワーク12の外径が他の第2、第3のワーク13,14より小さい場合でもこれらのワークの軸合わせを精度よくかつ簡単に行うことが可能な軸合わせ用治具を提供することができる。
【0035】
このように軸合わせが行われた後、この状態が保たれるように仮止め溶接が行われる。この仮止め溶接は、ガイド部品15の凸部31に形成されている貫通穴33に図示していない溶接棒あるいは溶接ツールを挿入して行われ、第1のワーク12の外周面12aと、第2および第3のワーク13,14の小径部13a,14aとが周方向の複数の位置で互いに溶接されるように行う。
【0036】
仮止め溶接が行われた後、押し込み部品16をガイド部品15から外す。そして、図8に示すように、ガイド部品15の凸部31を突出端が第2のワーク13から離れるように押し、ヒンジ部35を中心にして径方向外側に拡がるように揺動させる。凸部31が大きく揺動することにより、ガイド部品15の第1の穴21の穴径が拡がり、第3のワーク14が第1の穴21を通過できるようになるから、第1~第3のワーク12~14をガイド部品15の軸線方向の一端側から外すことができる。なお、第1~第3のワーク12~14をガイド部品15から外すに当たっては、ヒンジ部35を切断してガイド部品15を展開させて行うことができる。この場合、ガイド部品15は使い捨てになるから、第1~第3のワーク12~14からなる組立体を複数作るときには常に新品のガイド部品15を使用できるようになる。すなわち、ガイド部品15の使用回数が増えて劣化し、軸合わせの精度が低下してしまうようなことがない。
【0037】
この実施の形態による複数のワークは、第1~第3のワーク12~14によって構成されている。第1のワーク12は、第1の穴21に嵌合可能な外周面12aを有し、第1の穴21に収容される。第2のワーク13は、第2の穴22に嵌合可能な大径部13bを有しかつ大径部13bの一端に第1のワーク12の外径以下となる小径部13aが形成され、小径部13aが第1のワーク12と対向する状態で第2の穴22に収容される。
【0038】
第3のワーク14は、第3の穴23に嵌合可能な大径部14bを有しかつ大径部14bの一端に第1のワーク12の外径以下となる小径部14aが形成され、小径部14aが第1のワーク12と対向する状態で第3の穴23に収容される。
第2の穴22の穴径は、ガイド部品15の周壁に径方向の押圧力が加えられて周壁が径方向内側に弾性変形することによって、第2の穴22の内周面が第2のワーク13の大径部13bに密着する穴径である。
このため、第2の穴22の穴径を第2のワーク13が容易に挿入できる穴径に形成できるから、第2のワーク13を第2の穴22に挿入する作業を簡単に行うことができる。
【0039】
この実施の形態によるガイド部品15の凸部31の第1の穴21と対応する位置には、貫通穴33が形成されている。このため、第1のワーク12の外周部が貫通穴33を通して露出するから、第1のワーク12の外周部を第2、第3のワーク13,14に溶接によって仮止めすることができる。
【0040】
この実施の形態によるガイド部品15の凸部31は、軸線方向に突出する山形状に形成されているとともに、突出端から周方向の一方と他方とに延びる傾斜部31a,31bを有している。ガイド部品15の切り欠き32は、ガイド部品15の隣り合う二つの凸部31の傾斜部31a,31bによってV字状に形成されている。このため、ガイド部品15と押し込み部品16との嵌合部44がガイド部品15の軸線方向と周方向とに延びるようになり、この嵌合部44の第1および第2のカム面34,43を周方向の全域に形成することができる。したがって、ガイド部品15に押し込み部品16を押し付けたときに第2の周壁24bが全域にわたって略均等に弾性変形するようになる。
【0041】
この実施の形態によるガイド部品15における、切り欠き32の最奥部32aとガイド部品15(筒状体)の他端との間の部分は、ガイド部品15の凸部31が径方向外側に拡がることを許容するヒンジ部35を構成している。このため、ガイド部品15の凸部31を径方向外側に拡げ、ガイド部品15内の第1~第3のワーク12~14を簡単に取り外すことができる。
【0042】
上述した実施の形態においては、第1~第3のワーク12~14の軸合わせを行った後に仮止め溶接を行う例を説明した。しかし、軸合わせが行われた第1~第3のワーク12~14を保持装置(図示せず)によって軸線方向の両側から挟んでクランプすることにより、仮止めを行うことなく第1~第3のワーク12~14からガイド部品15と押し込み部品16とを外すことができる。この場合、仮止めを行うことなく、第1のワーク12の外周部と第2、第3のワーク13,14の小径部13a,14aとを全周にわたって溶接する(本溶接を行う)ことができる。
【符号の説明】
【0043】
11…軸合わせ用治具、12…第1のワーク、12a…外周面、13…第2のワーク、13a,14a…小径部、13b,14b…大径部、14…第3のワーク、15…ガイド部品、16…押し込み部品、21…第1の穴、22…第2の穴、23…第3の穴、24b…第2の周壁、31…凸部、31a,31b…傾斜部、32…切り欠き、33…貫通穴、34…第1のカム面、35…ヒンジ部、41…凹部、43…第2のカム面、44…嵌合部。
図1
図2
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図9