(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】回路基板内に半導体素子を内蔵する半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/12 20060101AFI20241001BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20241001BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20241001BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20241001BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H01L23/12 J
H01L23/12 N
H01L23/46 B
H01L25/04 C
H05K7/20 R
H05K7/20 C
(21)【出願番号】P 2021036074
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長井 彰平
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-038892(JP,A)
【文献】特開2001-308470(JP,A)
【文献】特開2013-131603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/12
H01L 23/427
H01L 25/07
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板本体(12)と、
基板本体内に位置する半導体素子(21-26)と、
前記基板本体内で前記半導体素子が配置されたヒートシンクプレート(31-36)と、
を備え、
前記ヒートシンクプレー
トは、内部に流体(38)が封入され
たヒートパイプ又はベイパーチャンバーであるとともに、長方形状の外形を有し、
前記ヒートシンクプレートの長手方向(Y)における熱伝導率は、前記ヒートシンクプレートの短手方向(X)における熱伝導率よりも高い、半導体モジュール。
【請求項2】
前記基板本体の表面に露出するとともに、前記基板本体内で前記半導体素子へ電気的に接続された複数の端子(40、42、44、46、48)をさらに備え、
前記複数の端子のそれぞれは、前記ヒートシンクプレートに対して、前記ヒートシンクプレートの前記短手方向に位置
しており、
前記ヒートシンクプレートは、金属又はグラファイトを用いて構成されており、
前記複数の端子の少なくとも一つは、前記ヒートシンクプレートを介して、前記半導体素子へ電気的に接続されている、請求項
1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記基板本体(12)の表面に設けられ、前記半導体素子の動作を制御する制御回路(50)をさらに備える、請求項1
または2に記載の電気モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、回路基板内に半導体素子を内蔵する半導体モジュールに関する。
【0002】
特許文献1に、半導体モジュールが開示されている。この半導体モジュールは、基板本体と、基板本体内に位置する半導体素子とを備える。半導体素子は、パワー半導体素子であり、通電に伴って大きく発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した半導体モジュールのように、基板本体内に半導体素子(特に、パワー半導体素子)が配置された構造では、半導体素子で生じた熱を外部へ放散し難く、半導体素子の温度過剰が上昇しやすいという問題がある。
【0005】
上記を鑑み、本明細書は、回路基板内に半導体素子を内蔵する半導体モジュールにおいて、半導体素子の温度上昇を抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する半導体モジュール(10)は、基板本体(12)と、前記基板本体内に位置する半導体素子(21-26)と、前記基板本体内で前記半導体素子が配置されたヒートシンクプレート(31-36)とを備える。前記ヒートシンクプレートには、内部に流体(38)が封入されている。
【0007】
ヒートシンクプレートの内部に、液体が封入された構造を採用することで、例えば、ヒートシンクプレートの熱伝導性を向上させることや、ヒートシンクプレートの熱伝導性に異方性を与えることが可能となる。これにより、半導体素子で生じた熱を、ヒートシンクプレートを介して、基板本体の広範囲へ拡散させることができ、半導体素子の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例の半導体モジュール10を示す平面図。
【
図2】
図1中のII-II線における断面図。図示明瞭化のために、端子40、42の位置は変更されている。
【
図3】実施例の半導体モジュール10の回路構造を示す回路図。
【
図5】
図5(A)は、ヒートシンクプレート31の平面図を示し、
図5(B)は、
図5(A)中のE-E線における断面図を示す。
【
図6】
図6(A)は、一変形例のヒートシンクプレート131の平面図を示し、
図6(B)は、
図6(A)中のF-F線における断面図を示す。
【
図7】
図7(A)は、ヒートシンクプレート231の平面図を示し、
図7(B)は、
図7(A)中のG-G線における断面図を示す。
【
図8】第1ヒートシンクプレート31に複数の第1半導体素子21を配置した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、前記ヒートシンクプレートの熱伝導率は、平面視において異方性を有してもよい。このような構成によると、ヒートシンクプレートの形状や、基板本体の形状に応じて、半導体素子の熱を効果的に拡散させることができる。
【0010】
本技術の一実施形態において、前記ヒートシンクプレートは、長方形状の外形を有してもよい。この場合、前記ヒートシンクプレートの長手方向(Y)における熱伝導率は、前記ヒートシンクプレートの短手方向(X)における熱伝導率よりも高くてもよい。このような構成によると、半導体素子の熱をヒートシンクプレートの全体へ均等に拡散させることができる。
【0011】
本技術の一実施形態において、前記基板本体の表面に露出するとともに、前記基板本体内で前記半導体素子へ電気的に接続された複数の端子(40、42、44、46、48)をさらに備えてもよい。この場合、前記複数の端子は、前記ヒートシンクプレートに対して、前記ヒートシンクプレートの短手方向に位置してもよい。このような構成によると、複数の端子と半導体素子とを接続する電流経路を短くして、電流経路におけるインピーダンスを低減することができる。電流経路のインピーダンスが低減されることで、電流経路における発熱が抑制されて、半導体素子の温度上昇も抑制される。
【0012】
本技術の一実施形態において、前記ヒートシンクプレートは、ヒートパイプ又はベイパーチャンバーであってよい。ヒートパイプ及びベイパーチャンバーは、内部に流体が封入された伝熱部材の典型例であり、本技術におけるヒートシンクプレートにも、このような伝熱部材を好適に採用することができる。
【0013】
本技術の一実施形態において、前記ヒートシンクプレートは、金属又はグラファイトを用いて構成されていてもよい。金属及びグラファイトは、熱伝導性に優れた材料であり、本技術におけるヒートシンクプレートにも、このような伝熱部材を好適に採用することができる。
【0014】
本技術の一実施形態において、半導体モジュールは、前記半導体素子の動作を制御する制御回路(50)をさらに備えてもよい。本技術に係る構成によると、半導体素子の温度上昇を抑制することができる。従って、基板本体の表面に制御回路を設けたときに、制御回路が過熱されるといった事態を避けることができる。
【0015】
本開示の他の一側面によると、回路基板内に半導体素子を内蔵する半導体モジュールにおいて、電流経路のインピーダンスを低減し得る技術が提供される。この技術の一実施形態では、半導体モジュールが、基板本体と、前記基板本体内に位置する半導体素子と、前記基板本体内で前記半導体素子が配置されたヒートシンクプレートと、前記基板本体の表面に露出するとともに、前記基板本体内で前記半導体素子へ電気的に接続された複数の端子と、を備えてもよい。
【0016】
上記した実施形態において、ヒートシンクプレートは、長方形状の外形を有してもよい。この場合、前記複数の端子は、前記ヒートシンクプレートに対して、前記ヒートシンクプレートの短手方向に位置してもよい。このような構成によると、複数の端子と半導体素子とを接続する電流経路を短くして、電流経路におけるインピーダンスを低減することができる。
【0017】
上記した実施形態において、前記複数の端子の少なくとも一つは、前記ヒートシンクプレートに対して、前記ヒートシンクプレートの短手方向の一方側に位置し、前記複数の端子の他の少なくとも一つは、前記ヒートシンクプレートに対して、前記ヒートシンクプレートの短手方向の他方側に位置してもよい。このような構成によると、複数の端子と半導体素子とを接続する電流経路を効果的に短くして、電流経路におけるインピーダンスをさらに低減することができる。
【実施例】
【0018】
図面を参照して、実施例の半導体モジュール10について説明する。本実施例の半導体モジュール10は、例えば電動車両の電力制御ユニットに採用され、電源と走行用モータとの間で電力変換することができる。ここでいう電動車両とは、車輪を駆動する走行用モータを有する車両を広く意味し、例えば、外部の電力によって充電される電気自動車、走行用モータに加えてエンジンをさらに有するハイブリッド車、及び燃料電池を電源とする燃料電池車等が含まれる。但し、本実施例の半導体モジュール10の用途は、電動車両に限定されず、各種の電気機器に採用することができる。
【0019】
図1-
図3に示すように、半導体モジュール10は、基板本体12と、複数の半導体素子21-26と、複数のヒートシンクプレート31-36とを備える。基板本体12は、板状の形状を有しており、上面12aと、上面12aの反対側に位置する下面12bとを有する。基板本体12は、例えばエポキシ樹脂又はその他の樹脂材料といった、絶縁体で構成されている。
【0020】
ここで、図面におけるX方向及びY方向は、基板本体12の上面12a及び下面12bに平行な方向であって、互いに垂直な方向である。Z方向は、基板本体12の上面12a及び下面12bに垂直な方向であって、X方向及びY方向のそれぞれに垂直な方向である。
【0021】
複数の半導体素子21-26は、基板本体12内に位置しており、基板本体12によって密封されている。各々の半導体素子21、22は、パワー半導体素子であって、特に、スイッチング素子である。このスイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であってよい。各々の半導体素子21-26は、上面電極21a-26aと下面電極21b-26bとを有しており、上面電極21a-26aと下面電極21b-26bとの間を電気的に導通したり、遮断したりすることができる。
【0022】
一例ではあるが、本実施例の半導体モジュール10では、複数の半導体素子21-26に、第1半導体素子21、第2半導体素子22、第3半導体素子23、第4半導体素子24、第5半導体素子25及び第6半導体素子26が含まれる。第1半導体素子21と第2半導体素子22とは、基板本体12の内部において、電気的に直列に接続されている。第3半導体素子23と第4半導体素子24とは、基板本体12の内部において、電気的に直列に接続されている。第5半導体素子25と第6半導体素子26とは、基板本体12の内部において、電気的に直列に接続されている。
【0023】
複数のヒートシンクプレート31-36は、基板本体12内に位置しており、基板本体12によって密封されている。各々のヒートシンクプレート31-36は、それぞれ板状の形状を有しており、基板本体12と平行な同一平面上に配置されている。即ち、各々のヒートシンクプレート31-36は、Z方向に垂直である。各々のヒートシンクプレート31-36は、例えば銅又はその他の金属若しくはグラファイトといった導体で構成されている。ヒートシンクプレート31-36の構造については、後段において詳細に説明する。
【0024】
一例ではあるが、本実施例の半導体モジュール10では、複数のヒートシンクプレート31-36に、第1ヒートシンクプレート31、第2ヒートシンクプレート32、第3ヒートシンクプレート33、第4ヒートシンクプレート34、第5ヒートシンクプレート35及び第6ヒートシンクプレート36が含まれる。第1ヒートシンクプレート31と第2ヒートシンクプレート32とは、X方向に沿って配列されており、第3ヒートシンクプレート33と第4ヒートシンクプレート34とは、X方向に沿って配列されており、第5ヒートシンクプレート35と第6ヒートシンクプレート36とは、X方向に沿って配列されている。また、第1ヒートシンクプレート31と第3ヒートシンクプレート33と第5ヒートシンクプレート35とは、Y方向に沿って配列されており、第2ヒートシンクプレート32と第4ヒートシンクプレート34と第6ヒートシンクプレート36とは、Y方向に沿って配列されている。
【0025】
第1ヒートシンクプレート31には、第1半導体素子21が配置されており、第1半導体素子21の下面電極21bが、第1ヒートシンクプレート31と電気的に接続されている。同様に、第2ヒートシンクプレート32から第6ヒートシンクプレート36には、それぞれ第2半導体素子22から第6半導体素子26が配置されている。そして、第2半導体素子22から第6半導体素子26の下面電極22b-26bが、それぞれ第2ヒートシンクプレート32から第6ヒートシンクプレート36と電気的に接続されている。
【0026】
半導体モジュール10は、複数の端子40、42、44、46、48を備える。これらの端子40-48は、外部の回路と接続するための外部接続端子である。複数の端子40-48は、例えば銅又はその他の金属といった導体で構成されている。一例ではあるが、複数の端子40-48には、P端子40、N端子42、U端子44、V端子46及びW端子48が含まれる。P端子40及びN端子42は、複数のヒートシンクプレート31-36に対して、X方向の一方側に位置している。U端子44、V端子46及びW端子48は、複数のヒートシンクプレート31-36に対して、X方向の他方側に位置している。複数の端子40-48は、基板本体12の下面12bに設けられている。他の実施形態として、複数の端子40-48の一部又は全部が、基板本体12の上面12aに設けられてもよい。
【0027】
P端子40は、基板本体12の内部において、第1ヒートシンクプレート31、第3ヒートシンクプレート33及び第5ヒートシンクプレート35と電気的に接続されている。これにより、P端子40は、いずれか一つのヒートシンクプレート31、33、35を介して、第1半導体素子21、第3半導体素子23及び第5半導体素子25の下面電極21b、23b、25bと電気的に接続されている。N端子42は、基板本体12の内部において、第2半導体素子22、第4半導体素子24及び第6半導体素子26の上面電極22a、24a、26aと電気的に接続されている。
【0028】
U端子44は、基板本体12の内部において、第1半導体素子21の上面電極21aと電気的に接続されている。U端子44は、第2ヒートシンクプレート32とも電気的に接続されており、第2ヒートシンクプレート32を介して、第2半導体素子22の下面電極22bと電気的に接続されている。同様に、V端子46は、第3半導体素子23の上面電極23aと、第4ヒートシンクプレート34とに電気的に接続されており、第4ヒートシンクプレート34を介して、第4半導体素子24の下面電極24bと電気的に接続されている。W端子48は、第5半導体素子25の上面電極25aと、第6ヒートシンクプレート36とに電気的に接続されており、第6ヒートシンクプレート36を介して、第6半導体素子26の下面電極26bと電気的に接続されている。
【0029】
上記した構成により、本実施例の半導体モジュール10は、直流回路と三相交流回路との間に配置され、三相インバータ回路として機能することができる。この場合、P端子40及びN端子42は、直流回路に接続され、U端子44、V端子46及びW端子48は、三相交流回路に接続される。そして、複数の半導体素子21-26が選択的にターンオン及びターンオフされることにより、U端子44、V端子46及びW端子48のそれぞれは、P端子40又はN端子42のいずれかへ電気的に接続される。これにより、半導体モジュール10は、直流回路から直流電力を交流電力に変換して、三相交流回路へ供給する動作や、三相交流回路から交流電力を直流電力に変換して、直流回路へ供給する動作を実行することができる。前述したように、本実施例の半導体モジュール10は、例えば電動車両に採用することができる。この場合、半導体モジュール10は、直流回路である電源装置と、三相交流回路である走行用モータとの間に配置され、電源装置と走行用モータとの間で電力変換を行うことができる。
【0030】
半導体モジュール10は、制御回路50をさらに備える。制御回路50は、基板本体12の上面12aに設けられている。制御回路50は、複数の表面電気部品52を有する。複数の表面電気部品52には、例えば、複数の半導体素子21-26のスイッチングを制御するゲート駆動回路が含まれる。このように、本実施例の半導体モジュール10は、制御回路50を有する回路基板内に、複数の半導体素子21-26及び複数のヒートシンクプレート31-36が内蔵された構造を有する。なお、半導体素子21-26及び複数のヒートシンクプレート31-36の数については、特に限定されない。半導体モジュール10は、少なくとも一つの半導体素子とヒートシンクプレートを備えればよい。その場合、半導体素子は、スイッチング素子に限定されず、例えばダイオードといった他の種類の半導体素子であってもよい。
【0031】
次に、
図4、
図5を参照して、ヒートシンクプレート31-36について説明する。ここで、本実施例における複数のヒートシンクプレート31-36は、互いに同一の構成を有している。従って、
図4、
図5では、第1ヒートシンクプレート31のみが図示されており、他のヒートシンクプレート32-36についての図示は省略する。但し、他の実施形態として、複数のヒートシンクプレート31-36の一部又は全部が、互いに異なる構成を有してもよい。
【0032】
図4に示すように、ヒートシンクプレート31-36は、長方形状の外形を有する。ヒートシンクプレート31-36の長手方向は、Y方向に平行であり、ヒートシンクプレート31-36の短手方向は、X方向に平行である。この点に関して、本実施例の半導体モジュール10では、ヒートシンクプレート31-36に対して、複数の端子40-48が、X方向に配置されている。即ち、複数の端子40-48は、ヒートシンクプレート31-36に対して、ヒートシンクプレート31-36の短手方向に位置している。このような構成によると、ヒートシンクプレート31-36のサイズを大きくしながら、複数の端子40-48とヒートシンクプレート31-36との間の距離を短くすることができる。
【0033】
ヒートシンクプレート31-36のサイズが大きくなると、半導体素子21-26で生じた熱が、基板本体12内で広範囲に拡散される。これにより、半導体素子21-26の温度上昇が効果的に抑制される。一方、複数の端子40-48とヒートシンクプレート31-36との間の距離を短くなると、基板本体12内で電流が流れる電流経路を短くすることができ、当該電流経路におけるインピーダンスを低減することができる。このように、ヒートシンクプレート31-36を一方向へ長方形状となるように拡大し、当該長方形状の短手方向に端子40-48を配置することによって、冷却性能の向上とインピーダンスの低減とを両立させることができる。
【0034】
図5に示すように、ヒートシンクプレート31-36の内部には、複数の空間31aが形成されており、その空間31aの内部に流体38が封入されている。流体38は、ヒートシンクプレート31-36の高温部分では加熱されて気化し、ヒートシンクプレート31-36の低温部分では凝縮して液化する。このサイクルが繰り返されることで、空間31aでは流体38の対流が形成され、ヒートシンクプレート31-36における熱伝導が促進される。これにより、半導体素子21-26で生じた熱が、基板本体12内で広範囲に拡散され、半導体素子21-26の温度上昇が効果的に抑制される。
【0035】
特に限定されないが、本実施例におけるヒートシンクプレート31-36は、いわゆるヒートパイプの構造を有する。即ち、ヒートシンクプレート31-36内の各空間31aは、パイプ状に延びており、各空間31aの流体38は、そのパイプ状の長手方向に沿って対流する。即ち、流体38は、ヒートシンクプレート31-36の長手方向(Y方向)に沿って対流する。ここで、パイプ状の各空間31aは、ヒートシンクプレート31-36の長手方向に沿って延びている。従って、ヒートシンクプレート31-36の熱伝導率は、平面視において異方性を有する。特に、ヒートシンクプレート31-36の長手方向における熱伝導率は、ヒートシンクプレート31-36の短手方向における熱伝導率よりも高くなっている。このような構成によると、長方形状のヒートシンクプレート31-36において、半導体素子21-26の熱を、ヒートシンクプレート31-36の全体へ均等に拡散させることができる。
【0036】
図6は、一変形例のヒートシンクプレート131を示す。このヒートシンクプレート131は、上述した半導体モジュール10において、第1ヒートシンクプレート31から第6ヒートシンクプレート36のいずれにも採用することができる。本変形例のヒートシンクプレート131は、いわゆるヒートスプレッダの構造を有する。従って、このヒートシンクプレート131の内部にも空間131aが形成されており、その空間131aの内部には流体38が封入されている。このような構成によっても、ヒートシンクプレート131の熱伝導率に異方性を与えることができる。この場合、ヒートシンクプレート31-36の長手方向における熱伝導率を、ヒートシンクプレート31-36の短手方向における熱伝導率よりも高くしてもよい。
【0037】
図7は、他の一変形例のヒートシンクプレート231を示す。このヒートシンクプレート231についても、上述した半導体モジュール10において、第1ヒートシンクプレート31から第6ヒートシンクプレート36のいずれに採用されてもよい。本変形例のヒートシンクプレート231は、銅又はその他の金属、若しくはグラファイトといった導体で構成された中実構造を有している。即ち、本変形例のヒートシンクプレート231では、その内部に流体は封入されていない。前述したように、本実施例の半導体モジュール10では、ヒートシンクプレート31-36が長方形状の外形を有し、その短手方向に端子40-48が配置されることによって、冷却性能の向上とインピーダンスの低減とが両立されている。このような効果は、
図7に示すヒートシンクプレート231を採用した場合でも、同様に得ることができる。
【0038】
本実施例の半導体モジュール10では、各々のヒートシンクプレート31-36に、単一の半導体素子21-26が配置されている。これに対して、
図8に示すように、第1ヒートシンクプレート31には、複数の第1半導体素子21が配置されてもよい。この場合、複数の第1半導体素子21は、ヒートシンクプレート31-36の長手方向に沿って配列されるとよい。このような配列によると、複数の第1半導体素子21の間で生じる電流経路の差を抑制することでき、複数の第1半導体素子21に流れる電流の均一化を図ることができる。同様に、他のヒートシンクプレート32-36についても、複数の半導体素子21-26がそれぞれ配置されてもよい。
【0039】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書、又は、図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書又は図面に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0040】
10:半導体モジュール
12:基板本体
12a:上面
12b:下面
21、22、23、24、25、26:半導体素子
31、32、33、34、35、36、131、231:ヒートシンクプレート
38:流体
40、42、44、46、48:端子
50:制御回路
52:表面電気部品