(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/05 20060101AFI20241001BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20241001BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20241001BHJP
C25D 11/00 20060101ALI20241001BHJP
C25D 11/18 20060101ALI20241001BHJP
C25D 11/24 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
H05K1/05 A
H05K1/05 B
H01L23/12 J
H01L23/14 M
C25D11/00 308
C25D11/18 311
C25D11/18 312
C25D11/24 302
(21)【出願番号】P 2021040129
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】牛田 貴久
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 直樹
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-527120(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2008-0067853(KR,A)
【文献】特開2008-187144(JP,A)
【文献】特開2006-228907(JP,A)
【文献】特開2004-259745(JP,A)
【文献】特開2012-023180(JP,A)
【文献】特開2013-135010(JP,A)
【文献】特開2007-243194(JP,A)
【文献】特開2010-278309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/05
H05K 3/00
H01L 23/12
H01L 23/14
C25D 11/00
C25D 11/18
C25D 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板であって、
第1主面を備え、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、
前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材の前記第1主面上に形成された酸化被膜層と、
導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、
を備え、
前記第1主面の平面視で、前記酸化被膜層は、前記第1主面の周縁から距離を空けて前記周縁の内側に形成されて
おり、
前記第1主面の平面視で、前記酸化被膜層は角が面取りされた矩形であることを特徴とする、
配線基板。
【請求項2】
請求項
1に記載の配線基板であって、
前記基材は、板状をなし、
前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面と、を備え、
前記側面は、前記酸化被膜層が形成されていないことを特徴とする、
配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LED(発光ダイオード:light emitting diode)やパワー半導体などの熱を多く発生する素子が搭載される配線基板としては、高放熱性の配線基板が用いられている。高放熱性の配線基板として、アルミニウム基板にアルマイト被膜を施して電子基板(以下、アルマイト基板とも呼ぶ)として扱う技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。アルマイト基板は、絶縁性を備えつつ、アルミニウム基板の熱伝導率、および熱拡散率を維持することができるため、高放熱化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-124324号公報
【文献】特開2012-201891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
次世代自動車においては、多くの車外表示(光)に高輝度LEDが多用される。車載LEDの使用数が飛躍的に増えるため高密度化が必要となり、また、昼間点灯のために高出力が必要になる。LED使用数の増加およびLEDの高出力化に伴い、LEDが搭載される配線基板のさらなる高放熱化が望まれている。
【0005】
そこで、高放熱性の配線基板として、アルマイト基板が検討されている。しかしながら、アルマイト被膜は耐熱性が低く、加温されるとアルマイト表面にクラックが生じやすいため、絶縁性の保証が難しいという課題があった。特許文献1では、配線電極が形成される部分のアルミニウム基板の厚みを厚くし、当該部分のアルマイト層を薄くすることにより、配線電極形成のプロセス時に発生する熱を、アルミニウム基板に放熱しやすくすることにより、配線電極形成のプロセス時のクラックの発生を抑制する技術が提案されている。特許文献2では、基材として用いるアルミニウム合金における化学成分組成および陽極酸化皮膜中に存在する金属間化合物の大きさや個数を適切に規定すること、陽極酸化皮膜の少なくとも一部を絶縁物で被覆または表面修飾した複合皮膜構造にすることにより、高温耐クラック性を実現する技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記従来技術によってもなお、クラックが発生する虞がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、アルミニウムを主成分とする金属材料から成る基材と、基材表面上に形成された酸化被膜層を有する配線基板において、酸化被膜層のクラックの発生を抑制する他の技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本発明の一形態によれば、配線基板が提供される。この配線基板は、第1主面を備え、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る基材と、前記金属材料の陽極酸化被膜であり、前記基材の前記第1主面上に形成された酸化被膜層と、導電性を有し、前記酸化被膜層の上に形成された配線部と、を備え、前記第1主面の平面視で、前記酸化被膜層は、前記第1主面の周縁から距離を空けて前記周縁の内側に形成されている。
【0010】
基材の縁、角等に酸化被膜層が形成されると、酸化被膜層の厚さが不均一になり、クラックが発生しやすい。これに対し、この形態の配線基板によれば、基材の第1主面の平面視で、酸化被膜層は、第1主面の周縁から距離を空けて周縁の内側に形成されているため、基材の縁、角に酸化被膜層が形成されない。そのため、酸化被膜層におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0011】
(2)上記形態の配線基板であって、前記第1主面の平面視で、前記酸化被膜層は角が面取りされた矩形でもよい。このようにすると、酸化被膜層に、応力が集中する角が形成されていないため、クラックの発生を抑制することができる。
【0012】
(3)上記形態の配線基板であって、前記基材は、板状をなし、前記第1主面の裏面である第2主面と、前記第1主面と前記第2主面とを繋ぐ側面と、を備え、前記側面は、前記酸化被膜層が形成されていなくてもよい。このようにすると、側面に酸化被膜層が形成されている場合と比較して、放熱性を向上させることができる。
【0013】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、配線基板を含む製品、配線基板の製造方法、配線基板を含む製品の製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】配線基板の平面構成を概略的に示す説明図である。
【
図2】配線基板の断面構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態の配線基板100の平面構成を概略的に示す説明図であり、
図2は、配線基板100の断面構成を概略的に示す説明図である。
図1(B)は基材10の第1主面11を示し、
図1(B)に示す平面図の紙面左側の側面13を
図1(A)、紙面右側の側面13を
図1(C)に、それぞれ示す。
図2では、
図1におけるA-A断面を示している。配線基板100は、平面形状が略正方形状の平板状の基材10と、基材10の第1主面11上に形成された酸化被膜層20と、酸化被膜層20の上に形成された配線部30と、を備える。
【0016】
基材10は、アルミニウム(Al)を主成分とする金属材料から成る。基材10はアルミニウムを主成分とする金属材料から成るため、熱伝導率および熱拡散率が高い。本実施形態において、主成分とは、質量%が最も高い成分である。
【0017】
基材10は、
図2に示すように、第1主面11と、第1主面11の裏面である第2主面12と、第1主面11と第2主面12とを繋ぐ側面13と、を備える平板状である。本実施形態では、基材10の第1主面11に、酸化被膜層20が形成されており、第2主面12と側面13には、酸化被膜層20が形成されていない。
図1において、
図1(B)に示す平面図の紙面上側の側面13と下側の側面13を図示していないが、
図1(A)、(C)に示す側面13と同様に、酸化被膜層20が形成されていない。基材10の第2主面12と側面13は、露出している。
【0018】
酸化被膜層20は、アルミニウムを主成分とする金属材料から成る平板(以下、「元板」とも呼ぶ)に陽極酸化処理をして表面を変質させて形成された酸化被膜(アルマイト)である。すなわち、本実施形態において、元板に陽極酸化処理をして形成された酸化被膜部分が酸化被膜層20であり、変質していない素地の部分が基材10である。酸化被膜層20は、絶縁性を有する。
【0019】
酸化被膜層20は、
図1(B)に示すように、平面形状が角丸正方形状、換言すると、角が丸面取りされた正方形状である。基材10の第1主面11の平面視で、酸化被膜層20は、第1主面11の周縁から距離を空けて周縁の内側に形成されている。すなわち、基材10の第1主面11の周縁部には、酸化被膜層20が形成されておらず、基材10が露出している。酸化被膜層20は、アルマイトであり、振動、加熱等によってクラックが生じやすい。本実施形態の配線基板100では、加熱や衝撃によってクラックの起点になる可能性が高い基材10の端部(縁、角)から離して酸化被膜層20が形成されているため、酸化被膜層20のクラックを、抑制することができる。
【0020】
酸化被膜層20の上には、導電性の配線部30が形成されており、酸化被膜層20は、電子部品が搭載される領域(以下、製品領域とも呼ぶ)である。
【0021】
配線部30は、主成分が互いに異なる3種の金属薄膜が積層されて構成されている。具体的には、チタン(Ti)を主成分とする金属薄膜と、白金(Pt)を主成分とする金属薄膜と、金(Au)を主成分とする金属薄膜と、が酸化被膜層20側から順に積層されている。チタンは、酸化被膜層20との密着性が良好であり、白金は金との密着性がチタンよりも良好であり、金は高導電性、抗腐食性でありボンディング性が良好であるため、この構成によれば、配線部30の剥離が抑制され、高導電性、抗腐食性でありボンディング性が良好な配線層を実現することができる。なお、
図2では、各薄膜を区別して図示していない。配線部30は、蒸着、スパッタリング等の公知の方法により形成することができる。
【0022】
本実施形態の配線基板100では、酸化被膜層20は、基材10の第1主面11の周縁から距離を空けて周縁の内側に形成されている。このように、基材10の表面に部分的に酸化被膜を形成する方法としては、例えば、元板の表面全面にアルマイトを形成した後に、不要部(基材10の表面を露出させる部分)を、湿式の化学処理、レーザー加工等により除去する方法(第1の方法)を用いることができる。また、例えば、元板の表面の不要部(基材10の表面を露出させる部分)に、フォトリソグラフィ、テープ等でマスキングを施した後にアルマイトを形成する方法(第2の方法)を用いることもできる。
【0023】
第1の方法にて酸化被膜層20を形成した場合、基材10の厚さは略一様であり、元板の厚さより薄い。一方、第2の方法にて酸化被膜層20を形成した場合、基材10の第1主面11が露出している部分(
図1において斜線ハッチングを付して表示している部分)の基材10の厚さは、元板の厚さと略同じであり、酸化被膜層20が形成されている部分の基材10の厚さは、基材10の第1主面11が露出している部分より薄くなっている。すなわち、第2の方法にて酸化被膜層20を形成した場合は、基材10の厚みが部分的に異なっている。
【0024】
一般に、アルマイトは、基材10の角、縁など突出する部分に形成されている場合、酸化被膜層20の厚さが不均一になりやすい。また、基材10の角、縁などは、バリがある場合がある。そのため、アルマイトが、基材10の角、縁などに形成されていると、振動や加熱によって容易にクラックを生じやすい。これに対し、本実施形態の配線基板100によれば、基材10の第1主面11の周縁部には酸化被膜層20が形成されていないため(換言すると、酸化被膜層20は、基材10の縁から離して形成されているため)、酸化被膜層20におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態の配線基板100では、基材10の第1主面11の周縁部と、側面13と、第2主面12には酸化被膜層20を形成しないため、酸化被膜層20を上述の第2の方法で形成する場合、酸化被膜層20を形成しない部分にレジストによりマスキングを施す。マスキング後にアルマイト処理(陽極酸化被膜処理)を施す際、元板の縁や角にレジストの端が配置されると、レジストの剥離が生じる虞がある。これに対し、本実施形態の配線基板100では、レジストの端が元板の縁や角に配置されないため、レジストの剥離がより抑制され、酸化被膜層20の端部の厚さの不均一を抑制することができ、欠陥を抑制することができる。その結果、酸化被膜層20のクラックの発生を抑制することができる。
【0026】
また、配線基板100では、基材10の側面13と、第2主面12には酸化被膜層20を形成しないため、第2主面12および側面13に酸化被膜層20が形成されている場合と比較して、放熱性を向上させることができる。
【0027】
さらに、酸化被膜層20の平面形状は、角丸正方形状であり、応力が集中する角が形成されていないため、クラックの発生を抑制することができる。
【0028】
本実施形態の配線基板100によれば、製品領域のクラックを抑制することができるため、酸化被膜層20により絶縁性を担保しつつ、熱伝導率が高いアルミニウムを主成分とする基材10により高放熱性を得ることができる。そのため、例えば、発熱量が大きい高輝度LEDを高密度化して搭載する配線基板として用いることができる。その他、CPU(Central Processing Unit)、パワーデバイス、太陽電池等の半導体や液晶等に適用することもできる。
【0029】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0030】
・配線部30の主成分、および構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、Al、Au、Pt、Ti、Cu、Pd、Rh、Ni、W、Mo、Cr、Ag等の金属又はこれらの合金の単層又は複数層の積層構造で形成することができる。また、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)等の導電性材料を用いてもよい。
【0031】
・上記実施形態において、1つの酸化被膜層20が形成された配線基板100を例示したが、酸化被膜層20が2つ以上形成されてもよい。いわゆる、多数個取りの配線基板として、配線基板を形成してもよい。配線基板が、2つ以上の酸化被膜層20を備える場合にも、基材10の第1主面11の平面視で、酸化被膜層20は、第1主面11の周縁から距離を空けて周縁の内側に形成されていればよい。
【0032】
・上記実施形態において、基材10の第2主面12には酸化被膜層20が形成されていない例を示したが、第2主面12にも酸化被膜層20が形成されていてもよい。このようにすると、基材10の第2主面12側にも電子部品を搭載することができる。
【0033】
・酸化被膜層20の平面形状は、上記実施形態に限定されず、角が面取りされていない矩形状であってもよい。また、酸化被膜層20の平面形状は、例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、円形状、楕円形状等の多角形以外の形状であってもよい。多角形状の場合には、角が面取りされていてもされていなくてもよい。なお、面取りは、丸面取り(R面取りとも呼ぶ)でも、45°面取り(C面取りとも呼ぶ)でもよい。
【0034】
・基材10の平面形状も上記実施形態に限定されない。例えば、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形状であってもよいし、円形状、楕円形状等の多角形以外の形状であってもよい。多角形状の場合には、角が面取りされていてもされていなくてもよい。なお、面取りは、丸面取り(R面取りとも呼ぶ)でも、45°面取り(C面取りとも呼ぶ)でもよい。
【0035】
・上記実施形態において、酸化被膜層20が形成されていない部分は、基材10の表面が露出している例を示したが、基材10の表面が露出していなくてもよい。例えば、酸化被膜層20が形成されていない部分に、何らかの被覆を施してもよい。但し、基材10の表面が露出する構成にすると、放熱性を良好にすることができるため、好ましい。
【0036】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0037】
10…基材
11…第1主面
12…第2主面
13…側面
20…酸化被膜層
30…配線部
100…配線基板