(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
A61M16/06 A
(21)【出願番号】P 2021040786
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕也
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 敬之
(72)【発明者】
【氏名】松原 功
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-516411(JP,A)
【文献】特開2018-130181(JP,A)
【文献】特開2011-115543(JP,A)
【文献】特表2007-516749(JP,A)
【文献】特表2016-530920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の顔面を覆うように構成されたマスク本体部と、
前記マスク本体部に固定されると共に、前記被検者の顔面に接触するクッション部材と、
前記マスク本体部と前記クッション部材との間に配置されたインナー部と、を備え、
前記マスク本体部は、
少なくとも一部が前記被検者の顔面に対向する内側面と、
前記内側面とは反対側に位置する外側面と、
前記外側面に設けられた複数の突起部と、
を有し、
前記クッション部材は、各々が前記複数の突起部のうちの対応する一つに係合する複数の係合部を有
し、
前記インナー部は、
前記被検者の鼻及び口のうちの少なくとも一方に対向するカップと、
前記カップを前記マスク本体部に接続するように構成された取付アーム部と、
を有し、
前記マスク本体部は、前記取付アーム部と係合する係合取付部をさらに有し、
前記係合取付部は、前記複数の突起部のうちの互いに隣接する第1突起部と第2突起部との間に位置し、
前記第1突起部と前記第2突起部との間の間隔は、前記第1突起部と前記第1突起部に隣接する他の突起部との間の間隔よりも小さい、
マスク。
【請求項2】
被検者の顔面を覆うように構成されたマスク本体部と、
前記マスク本体部に固定されると共に、前記被検者の顔面に接触するクッション部材と、
前記マスク本体部と前記クッション部材との間に配置されたインナー部と、を備え、
前記マスク本体部は、
少なくとも一部が前記被検者の顔面に対向する内側面と、
前記内側面とは反対側に位置する外側面と、
前記外側面に設けられた複数の突起部と、
前記内側面と前記外側面との間に位置すると共に、前記内側面と前記外側面とに接続される縁部と、を有し、
前記複数の突起部は、前記マスク本体部の縁部に沿うように設けられ、
前記クッション部材は、各々が前記複数の突起部のうちの対応する一つに係合する複数の係合部を有し、
前記インナー部は、
前記被検者の鼻及び口のうちの少なくとも一方に対向するカップと、
前記カップを前記マスク本体部に接続するように構成された取付アーム部と、
を有し、
前記マスク本体部は、前記取付アーム部と係合する係合取付部をさらに有し、
前記複数の突起部のうちの第1突起部は、前記係合取付部と対向するように前記外側面に設けられ、
前記マスク本体部の縁部の周方向において、前記第1突起部の長さ寸法は、前記第1突起部に隣接する他の突起部の長さ寸法よりも大きい、
マスク。
【請求項3】
前記マスク本体部は、前記内側面と前記外側面との間に位置すると共に、前記内側面と前記外側面とに接続される縁部をさらに有し、
前記複数の突起部は、前記マスク本体部の縁部に沿うように前記外側面に設けられ、
前記複数の係合部は、前記クッション部材の縁部に沿って設けられている、
請求項1
または請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記複数の突起部の各々は、
前記外側面から突出する立壁部と、
前記立壁部に接続された頭部と、
を有し、
前記立壁部の一端は前記外側面に接続されると共に、前記立壁部の他端は前記頭部に接続され、
前記複数の突起部の各々の前記立壁部が前記複数の係合部のうちの対応する一つに挿入された状態で、前記クッション部材が前記頭部と前記外側面とによって挟まれている、
請求項1
から3のうちいずれか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体部の縁部の周方向に垂直であり、かつ前記マスク本体部の縁部の法線方向に垂直な方向において、前記頭部の幅寸法が前記立壁部の幅寸法よりも大きい、又は
前記マスク本体部の縁部の周方向において、前記頭部の長さ寸法が前記立壁部の長さ寸法よりも大きい、
請求項
4に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体部は、前記内側面と前記外側面との間に位置すると共に、前記内側面と前記外側面とに接続される縁部をさらに有し、
前記係合取付部は、前記マスク本体部の縁部に設けられる、
請求項
1から5のうちいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記係合取付部は、前記
マスク本体部の縁部に形成された2つの溝によって構成され、
前記係合取付部の延出方向は、前記突起部の延出方向と
略直交する、
請求項6に記載のマスク。
【請求項8】
前記複数の突起部の幾つかは、前記内側面によって規定される前記マスク本体部の内部空間を介して互いに対向している、
請求項1から
7のうちいずれか一項に記載のマスク。
【請求項9】
前記マスク本体部は、前記内側面と前記外側面との間に位置すると共に、前記内側面と前記外側面とに接続される縁部をさらに有し、
前記マスク本体部の縁部の周方向において、前記第1突起部の長さ寸法と前記第2突起部の長さ寸法は、前記他の突起部の長さ寸法よりも大きい、
請求項
1に記載のマスク。
【請求項10】
前記取付アーム部は、
第1取付アーム部と、
前記第1取付アーム部に対向する第2取付アーム部と、
を有し、
前記係合取付部は、
前記第1取付アーム部と係合する第1係合取付部と、
前記第2取付アーム部と係合する第2係合取付部と、
を有し、
前記第1係合取付部は、前記複数の突起部のうちの互いに隣接する第1突起部と第2突起部との間に位置し、
前記第2係合取付部は、前記複数の突起部のうちの互いに隣接する第3突起部と第4突起部との間に位置し、
前記第1突起部と前記第3突起部は、前記内側面によって規定される前記マスク本体部の内部空間を介して互いに対向し、
前記第2突起部と前記第4突起部は、前記内部空間を介して互いに対向する、
請求項
1に記載のマスク。
【請求項11】
前記取付アーム部は、
第1取付アーム部と、
前記第1取付アーム部に対向する第2取付アーム部と、
を有し、
前記係合取付部は、
前記第1取付アーム部と係合する第1係合取付部と、
前記第2取付アーム部と係合する第2係合取付部と、
を有し、
前記第1係合取付部は、前記複数の突起部のうちの第1突起部に対向し、
前記第2係合取付部は、前記複数の突起部のうちの第2突起部に対向し、
前記第1突起部と前記第2突起部は、前記内側面によって規定される前記マスク本体部の内部空間を介して互いに対向し、
前記マスク本体部の縁部の周方向において、前記第1突起部の長さ寸法は、前記第1突起部に隣接する他の突起部の長さ寸法よりも大きく、
前記マスク本体部の縁部の周方向において、前記第2突起部の長さ寸法は、前記第2突起部に隣接する他の突起部の長さ寸法よりも大きい、
請求項
2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マスクに関する。特に、本開示は、被検者に装着される人工呼吸器用の医療マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
非侵襲的な人工呼吸等に用いられるマスクとして、特許文献1に開示されたマスクが例えば知られている。特許文献1に開示された人工呼吸用の呼吸マスクは、患者の顔面を覆うように構成されたマスク外殻と、使用者の顔面に装着されると共に、可撓性を有する弾性部材により形成された密封体とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、密封体とマスク外殻との間の隙間から空気が漏れる状況を防ぐために、密封体とマスク外殻とを確実に固定する必要がある。この点において、特許文献1に開示された呼吸マスクでは、クッション部材として機能する密封体とマスク本体部として機能するマスク外殻とを固定するために、リング部材が呼吸マスクに別途設けられている。しかしながら、特許文献1に開示された呼吸マスクでは、リング部材を別途設ける必要があるため、呼吸マスクの部品点数が多くなってしまうと共に、マスクの構造が複雑となってしまう点で課題が存在する。
【0005】
本開示では、上記課題の観点より、新規の構造を備えたマスクを提供することを目的とする。特に、本開示は、部品点数が削減されると共に、構造が簡素化されたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るマスクは、被検者の顔面を覆うように構成されたマスク本体部と、前記マスク本体部に固定されると共に、前記被検者の顔面に接触するクッション部材と、を備える。前記マスク本体部は、少なくとも一部が前記被検者の顔面に対向する内側面と、前記内側面とは反対側に位置する外側面と、前記外側面に設けられた複数の突起部と、を有する。前記クッション部材は、各々が前記複数の突起部のうちの対応する一つに係合する複数の係合部を有する。
【0007】
上記構成によれば、マスク本体部の外側面に設けられた複数の突起部の各々が複数の係合部の一つに係合することで、クッション部材がマスク本体部に固定されている。このように、従来のマスクのようにクッション部材とマスク本体部とを固定するためのリング部材を別途マスクに設ける必要がないため、マスクの部品点数を削減することができると共に、マスクの構造を簡素化することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、部品点数が削減されると共に、構造が簡素化されたマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態(以下、本実施形態という。)に係るマスクの全体を示す斜視図である。
【
図3】マスク本体部の内側面とインナーカップを示す図である。
【
図6】複数の貫通孔を備えたクッション部材を示す斜視図である。
【
図7A】クッション部材がマスク本体部に固定される前の状態での係合取付部の付近に配置された2つの突起部を示す拡大図である。
【
図7B】係合取付部の付近に配置された2つの突起部がクッション部材に形成された貫通孔に挿入された状態を示す拡大図である。
【
図8】本実施形態の変形例に係るマスク本体部を示す図である。
【
図9】本実施形態の変形例に係るマスクを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係るマスク1ついて図面を参照しながら説明する。本実施形態の説明では、D1方向、D2方向、D3方向について適宜言及する場合がある。D1~D3方向は、
図1に示すマスク1に設定された相対的な方向となる。D1~D3方向のうちのいずれか一方は、D1~D3方向の残りの2方向に対して垂直となる。
【0011】
図1は、本実施形態に係るマスク1の全体を示す斜視図である。
図2は、マスク1の断面図である。
図1及び
図2に示すように、マスク1は、被検者Pの顔面を覆うように構成されたマスク本体部2と、マスク本体部2に固定されるクッション部材3と、インナーカップ5(インナー部の一例)とを備える。マスク1は、例えば、非侵襲的な人工呼吸に用いられる医療用マスクである。特に、マスク1は、CPAP(持続的気道陽圧法)又はNPPV(非侵襲的陽圧換気法)による人工呼吸に適用される医療用マスクであってもよい。
【0012】
マスク本体部2は、被検者Pの顔面の一部(特に、被検者Pの口Mと鼻N)を覆うように構成されている。マスク本体部2は、例えば、ポリカーボネート等の硬質性の樹脂からなる。クッション部材3は、マスク1が被検者Pに装着された状態で、被検者Pの顔面に接触するように構成される。クッション部材3は、例えば、シリコーン樹脂等の可撓性の樹脂材料からなる。インナーカップ5は、D1方向において、マスク本体部2とクッション部材3との間に配置されている。特に、インナーカップ5は、マスク本体部2の内側面21によって規定される内部空間27に配置されている。
【0013】
(インナーカップ5の構成)
図2に示すように、インナーカップ5は、被検者Pの口M及び鼻Nから排出された呼気ガスを呼気センサ(図示せず)に接続されるジョイント部材6に向けて導くように構成されている。この点において、インナーカップ5がマスク1に設けられている場合には、図示しない酸素供給管からジョイント部材6を介して被検者Pに供給される酸素ガスと被検者Pから排出される呼気ガスが混ざってしまう状況を好適に防止可能となる。このため、酸素供給管から被検者Pに酸素ガスを供給しつつ、呼気センサによって、被検者Pの呼気ガスに含まれる二酸化炭素の濃度を高い精度で測定することが可能となる。
【0014】
インナーカップ5は、呼気収集カップ50(カップの一例)と、取付アーム部57,58(
図3参照)とを備える。呼気収集カップ50は、被検者Pの口M及び鼻Nに対向しており、口M及び鼻Nから排出される呼気ガスを呼気センサに導くように構成されている。呼気収集カップ50は、上側壁部52と、下側壁部53と、呼気ガイド部54と、呼気排出部56とを有する。
【0015】
上側壁部52は、被検者Pの鼻Nに対向しており、鼻Nから排出された呼気ガスを呼気排出部56に向けて導くように構成されている。下側壁部53は、被検者Pの口Mに対向しており、口Mから排出された呼気ガスを呼気排出部56に向けて導くように構成されている。
【0016】
呼気ガイド部54は、D1方向において呼気排出部56から被検者Pの顔面に向けて延出しており、鼻Nからの呼気ガス及び口Mからの呼気ガスを効率的に呼気排出部56に導くように構成されている。呼気排出部56は、上側壁部52及び下側壁部53に接続されている。呼気排出部56は、ジョイント部材6の呼気ガス導入管61に連通している。
【0017】
ジョイント部材6は、マスク本体部2の開口部28に挿入された状態でマスク本体部2に固定されている。酸素供給管から供給される酸素ガスは、ジョイント部材6の酸素ガス排出部64を通じてマスク本体部2の内部空間27に送出される。呼気ガスの二酸化炭素濃度を検出するように構成された呼気センサは、ジョイント部材6の呼気ガス排出口62に対向するように配置される。呼気センサは、呼気ガス排出口62から排出された呼気ガスの二酸化炭素濃度を検出するように構成されている。
【0018】
図3に示すように、取付アーム部57,58は、呼気収集カップ50をマスク本体部2に接続するように構成されている。取付アーム部57,58は、D2方向において呼気収集カップ50を介して互いに対向している。取付アーム部57(第1取付アーム部の一例)は、呼気収集カップ50に固定されると共に、呼気収集カップ50の一端側から-D2方向に延出している。取付アーム部57は、後述する係合取付部26(第1係合取付部の一例)に係合する係合孔部57aを有する。係合孔部57aは、貫通孔として形成されている。取付アーム部58(第2取付アーム部の一例)は、呼気収集カップ50に固定されると共に、呼気収集カップ50の他端側から+D2方向に延出している。取付アーム部58は、後述する係合取付部25(第2係合取付部の一例)に係合する係合孔部58aを有する。係合孔部58aは、貫通孔として形成されている。
【0019】
(マスク本体部2の構成)
次に、
図3~
図5を参照してマスク本体部2の構成について具体的に説明する。
図3は、マスク本体部2の内側面21とインナーカップ5を示す図である。
図4は、マスク本体部2の外側面22を示す正面図である。
図5は、マスク本体部2の外側面22を示す側面図である。
図3~
図5に示すように、マスク本体部2は、内側面21と、外側面22と、縁部23と、複数の突起部24a~24iと、係合取付部25,26とを有する。尚、以降の説明では、突起部24a~24iを総称して単に突起部24という場合がある。
【0020】
内側面21は、インナーカップ5が収容される内部空間27を規定している。マスク1が被検者の顔面に装着された状態で、内側面21の一部が被検者の顔面に対向する。外側面22は、内側面21とは反対側に位置しており、マスク1が被検者の顔面に装着された状態で外部に接する。外側面22の一部はクッション部材3に接触する(
図1参照)。
図4に示すように、図示しないベルトが装着されるベルト装着部29a~29dが外側面22に設けられている。ベルトは、マスク1を被検者の顔面に固定するために使用される。
【0021】
縁部23は、内側面21と外側面22との間の境界に位置しており、内側面21と外側面22とに接続されている。複数の突起部24a~24iは外側面22上に設けられている。本実施形態では、9つの突起部24a~24iが縁部23に沿うように外側面22に設けられており、縁部23を断続的に囲んでいる。外側面22に設けられる突起部24の個数は特に限定されるものではない。突起部24aは、内部空間27を介して突起部24gに対向している。突起部24bは、内部空間27を介して突起部24fに対向している。突起部24cは、内部空間27を介して突起部24eに対向している。
【0022】
突起部24a~24i及びベルト装着部29a~29dは、樹脂成形によってマスク本体部2の外側面22と一体的に形成されている。
【0023】
係合取付部26は、取付アーム部57の係合孔部57aに係合するように構成されている。
図5に示すように、係合取付部26は、縁部23に形成されている。特に、係合取付部26は、縁部23に形成された2つの溝261により区画及び構成されている。係合取付部26は、D3方向において、互いに隣接する突起部24fと突起部24gとの間に位置している。
【0024】
係合取付部26の延出方向は、突起部24f,24gの延出方向とは異なる。具体的には、係合取付部26の延出方向は、突起部24f,24gの延出方向と略直交している。この点において、係合取付部26はD1方向に延出する一方で、突起部24f,24gはD2方向に延出している。
【0025】
縁部23の周方向において、突起部24fと突起部24gとの間の間隔は、突起部24fと突起部24fに隣接する突起部24eとの間の間隔よりも小さいと共に、突起部24gと突起部24gに隣接する突起部24hとの間の間隔よりも小さい。
【0026】
また、突起部24f,24gの長さ寸法は、突起部24e,24hの長さ寸法よりも大きい。ここで、本実施形態では、突起部24の長さ寸法は、縁部23の周方向における突起部24の寸法に相当する。また、突起部24の幅寸法は、縁部23の周方向に垂直な方向における突起部24の寸法に相当する。突起部24の高さ寸法は、突起部24の周辺の外側面22の法線方向における突起部24の寸法に相当する。
【0027】
係合取付部25は、取付アーム部58の係合孔部58aに係合するように構成されている。係合取付部25は、縁部23に形成されている。特に、係合取付部25は、縁部23に形成された2つの溝によって区画及び構成されている。係合取付部25は、D3方向において、互いに隣接する突起部24aと突起部24bとの間に位置している。
【0028】
係合取付部25の延出方向は、突起部24a,24bの延出方向とは異なる。具体的には、係合取付部25の延出方向は、突起部24a,24bの延出方向と略直交している。係合取付部25はD1方向に延出する一方で、突起部24a,24bはD2方向に延出している。
【0029】
縁部23の周方向において、突起部24aと突起部24bとの間の間隔は、突起部24aと突起部24aに隣接する突起部24iとの間の間隔よりも小さいと共に、突起部24bと突起部24bに隣接する突起部24cとの間の間隔よりも小さい。また、突起部24a,24bの長さ寸法は、突起部24c,24iの長さ寸法よりも大きい。
【0030】
取付アーム部57の係合孔部57aが係合取付部26に係合されると共に、取付アーム部58の係合孔部58aが係合取付部25に係合された状態で、インナーカップ5がマスク本体部2に固定される。また、
図1に示すように、クッション部材3がマスク本体部2に固定されることで、インナーカップ5のD1方向における移動が完全に規制される。
【0031】
(クッション部材3の構成)
次に、クッション部材3の構成について
図6を参照して以下に説明する。クッション部材3は、外部に接する外側面34と、外側面34と反対側に位置する内側面31と、複数の細長い貫通孔32a~32i(係合部の一例)とを有する。尚、以降では貫通孔32a~32iを総称して単に貫通孔32という場合がある。
【0032】
外側面34の一部は、マスク1が被検者に装着された状態で被検者の顔面に接触する。被検者の顔面に対向する外側面34の部分には、開口部33が形成されている。被検者の顔面の一部(口及び鼻)は、開口部33を介してインナーカップ5に対向する。貫通孔32a~32iは、外側面34から内側面31に延びるようにクッション部材3を貫通している。9つの貫通孔32a~32iがクッション部材3の縁部35に沿うように外側面34に設けられており、縁部35を断続的に囲んでいる。細長形状の貫通孔32の長手方向は、縁部35の周方向に一致している。貫通孔32の個数は突起部24の個数に対応している。
【0033】
クッション部材3がマスク本体部2に固定されるとき、突起部24a~24iの各々は、貫通孔32a~32iのうちの対応する一つに係合する。例えば、突起部24aは貫通孔32aに係合すると共に、突起部24iは貫通孔32iに係合する。
【0034】
次に、
図7A及び
図7Bを参照して突起部24と貫通孔32について詳しく説明する。
図7Aは、クッション部材3がマスク本体部2に固定される前の状態での係合取付部26の付近に配置された2つの突起部24f,24gを示す拡大図である。
図7Bは、係合取付部26の付近に配置された2つの突起部24f,24gがクッション部材3に形成された貫通孔32f,32gに挿入された状態を示す拡大図である。
【0035】
図7Aに示すように、突起部24f,24gの各々は、マスク本体部2の外側面22から突出する立壁部242と、立壁部242に接続された頭部240とを有する。尚、9つの突起部24a~24iの各々が立壁部242と頭部240を有する。立壁部242の一端は外側面22に接続されている共に、立壁部242の他端は頭部240に接続されている。突起部24は、
図7Aに示すD4方向(縁部23の周方向に相当)から見たときに、T字状に形成されている。
【0036】
頭部240は、突起部24の周辺の外側面22の法線方向からみたときに、略平坦面に形成されている。D5方向における頭部240の寸法(幅寸法)は、立壁部242の幅寸法よりも大きい。一方、D4方向における頭部240の寸法(長さ寸法)は、立壁部242の長さ寸法と略同じとなる。
【0037】
図7Bに示すように、クッション部材3がマスク本体部2に固定されるときには、突起部24fがクッション部材3の貫通孔32fに係合すると共に、突起部24gがクッション部材3の貫通孔32gに係合する。この状態では、複数の突起部24の各々の立壁部242が複数の貫通孔32のうちの対応する一つに挿入された状態で、クッション部材3が複数の突起部24の頭部240と外側面22によって挟まれている。このように、複数の頭部240と立壁部242によって、クッション部材3がマスク本体部2に固定される。
【0038】
貫通孔32の幅寸法は、頭部240の幅寸法よりも小さい一方で、立壁部242の幅寸法よりも若干大きくなる。一方で、貫通孔32の長さ寸法は、頭部240及び立壁部242の長さ寸法よりも大きい。この構成によれば、頭部240の幅寸法が貫通孔32の幅寸法よりも大きいので、頭部240と外側面22とによってクッション部材3を確実に挟むことができる。また、貫通孔32の幅寸法が立壁部242の幅寸法よりも若干大きいため、立壁部242を貫通孔32に挿入し易くなり、クッション部材3をマスク本体部2に取り付けるための作業負荷を低減することが可能となる。
【0039】
(本実施形態に係るマスク1の作用効果)
本実施形態によれば、マスク本体部2の外側面22に設けられた複数の突起部24a~24iの各々がクッション部材3に設けられた複数の貫通孔32a~32iのうちの一つに係合することで、クッション部材3がマスク本体部2に固定されている。このように、従来のマスクのようにクッション部材3とマスク本体部2とを固定するためのリング部材を別途マスク1に設ける必要がないため、マスク1の部品点数を削減することができると共に、インナーカップ5を備えたマスク1の構造を簡素化することが可能となる。
【0040】
マスク本体部2とクッション部材3とを固定するための別の方法として、接着剤によりマスク本体部2とクッション部材3とを固定する方法やマスク本体部2とクッション部材3とを二色成形により一体的に形成する方法が考えられる。一方で、本実施形態に係るマスク本体部2とクッション部材3との間の固定方法は、これらの方法と比較してインナーカップ5を備えたマスク1の製造コストを抑えることが可能となる。
【0041】
また、複数の突起部24がマスク本体部2の縁部23に沿うように外側面22に設けられている。さらに、複数の突起部24の各々の立壁部242が複数の貫通孔32のうちの対応する一つに挿入された状態で、クッション部材3の一部が複数の頭部240と外側面22によって挟まれている。このように、複数の突起部24によって、クッション部材3とマスク本体部2とを確実に固定することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、2つの係合取付部25,26がマスク本体部2の外側面22ではなく縁部23に設けられている。このため、係合取付部25の延出方向が突起部24a,24bの延出方向と略直交すると共に、係合取付部26の延出方向が突起部24f,24fの延出方向と略直交する。この結果、係合取付部25,26が設けられたマスク本体部2の周辺において、クッション部材3とマスク本体部2の外側面22との間から空気が漏れ出てしまう状況を確実に防止することが可能となる。このように、マスク本体部2の縁部23の全周に亘って、クッション部材3とマスク本体部2との間の高い密着性を確保することが可能となる。
【0043】
さらに、突起部24fと突起部24gとの間の間隔は、突起部24fと突起部24eとの間の間隔よりも小さいと共に、突起部24gと突起部24hとの間の間隔よりも小さい。突起部24f,24gの長さ寸法は、突起部24e,24hの長さ寸法よりも大きい。同様にして、突起部24aと突起部24bとの間の間隔は、突起部24aと突起部24aに隣接する突起部24iとの間の間隔よりも小さいと共に、突起部24bと突起部24bに隣接する突起部24cとの間の間隔よりも小さい。さらに、突起部24a,24bの長さ寸法は、突起部24c,24iの長さ寸法よりも大きい。
【0044】
上記構成によれば、2つの係合取付部25,26が設けられたマスク本体部2の周辺において、クッション部材3とマスク本体部2との間の固定を強化することができる。この結果として、インナーカップ5とマスク本体部2との間の固定を強化することができる。
【0045】
(本実施形態の変形例に係るマスク1a)
次に、
図8及び
図9を参照して本実施形態の変形例に係るマスク1aについて以下に説明する。
図8は、本実施形態の変形例に係るマスク本体部2aを示す図である。
図9は、本実施形態の変形例に係るマスク1aを示す側面図である。変形例に係るマスク1aは、マスク本体部2aの突起部の構成において本実施形態のマスク1と相違する。以下では、両者の相違点である突起部の構成について主に説明する。
【0046】
図8及び
図9に示すように、マスク本体部2aは、内側面21aと、内側面21aの反対側に位置する外側面22aと、内側面21aと外側面22aとの間の境界に位置する縁部23aと、突起部124a~124hとを有する。8つの突起部124a~124hは、縁部23aに沿うように外側面22a上に設けられており、縁部23aを断続的に囲っている。突起部124aは、内側面21aによって規定された内部空間27aを介して突起部124eに対向している。突起部124a~124hの各々は、外側面22aから突出する立壁部142と、立壁部142に接続された頭部140とを有する。
【0047】
縁部23aには、2つの係合取付部25a,26aが形成されている。係合取付部25aは、2つの溝125aによって区画及び構成されている。係合取付部26aは、2つの溝126aによって区画及び構成されている。係合取付部25aが
図3に示すインナーカップ5の取付アーム部57に係合すると共に、係合取付部26aが取付アーム部58に係合する。
【0048】
突起部124aは、係合取付部25aに対向するように外側面22a上に設けられている。縁部23aの周方向における突起部124aの寸法(長さ寸法)は、突起部124aに隣接する2つの突起部124b,124hの長さ寸法よりも大きい。突起部124eは、係合取付部26aに対向するように外側面22a上に設けられている。突起部124eの長さ寸法は、突起部124eに隣接する2つの突起部124d,124fの長さ寸法よりも大きい。特に、突起部124a,124eの長さ寸法は、突起部124a,124e以外の突起部124a~124hの長さ寸法の2倍以上であってもよい。
【0049】
このように、変形例に係るマスク本体部2aは、係合取付部の周辺に形成された突起部の形状の点で、本実施形態に係るマスク本体部2とは相違する。特に、マスク本体部2では、係合取付部の周辺に2つの突起部が外側面上に設けられている一方で、マスク本体部2aでは、係合取付部に対向するように一つの突起部が外側面上に設けられている。
【0050】
図9に示すように、マスク本体部2aと、クッション部材3aと、図示しないインナーカップとによってマスク1aが構成される。突起部124a~124hの各々がクッション部材3aに形成された複数の貫通孔のうちの対応する一つに係合することで、クッション部材3aがマスク本体部2aに固定される。この点において、
図9に示すマスク1aの側面図では、クッション部材3aがマスク本体部2aに固定された状態で、突起部124c~124fがそれぞれ貫通孔132c~132fに係合している。
【0051】
本変形例によれば、係合取付部25aが設けられたマスク本体部2aの周辺および係合取付部26aが設けられたマスク本体部2aの周辺において、クッション部材3aとマスク本体部2aとの間の固定を強化することができる。この結果として、インナーカップとマスク本体部2aとの間の固定を強化することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではない。本実施形態は一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0053】
本実施形態では、マスク本体部2の突起部24に係合する貫通孔32がクッション部材3の縁部に沿って形成されているが、貫通孔に代わって複数の有底溝がクッション部材3の縁部に沿って形成されていてもよい。かかる場合であっても、クッション部材3の複数の有底溝の各々が複数の突起部24のうちの対応する一つと係合することで、クッション部材3とマスク本体部2とを固定することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、取付アーム部57,58に設けられた係合孔部57a,58aは、貫通孔として形成されているが、貫通孔に代わって有底溝として形成されていてもよい。
【0055】
さらに、縁部23に形成された係合取付部25,26は、2つの溝によってD1方向に延びるように形成されているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、係合取付部25,26は、マスク本体部2の内側面21からD2方向に突出する突起部として形成されてもよい。この場合でも同様に、貫通孔又は有底溝として形成された係合孔部57a,58aが、突起部として形成された係合取付部25,26に係合することで、インナーカップ5がマスク本体部2に固定される。
【0056】
また、本実施形態では、
図7Aに示すように、頭部240の幅寸法が立壁部242の幅寸法よりも大きい一方で、頭部240の長さ寸法が立壁部242の長さ寸法と略同じとなっているが、本実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、頭部240の長さ寸法が立壁部242の長さ寸法よりも大きい一方で、頭部240の幅寸法が立壁部242の幅寸法と略同じであってもよい。さらに、頭部240の長さ寸法が立壁部242の長さ寸法よりも大きいと共に、頭部240の幅寸法が立壁部242の幅寸法よりも大きくてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、マスク本体部2の内部空間27内にインナーカップ5が収容されているが、マスク1はインナーカップ5を備えていなくてもよい。また、インナーカップ5の代わりの別のインナー部材が内部空間27内に収容されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1,1a:マスク
2,2a:マスク本体部
3,3a:クッション部材
5:インナーカップ
6:ジョイント部材
21,21a:内側面
22,22a:外側面
23,23a:縁部
24a~24i:突起部
25,25a:係合取付部
26,26a:係合取付部
27,27a:内部空間
28:開口部
29a~29d:ベルト装着部
31:内側面
32a~32i:貫通孔
33:開口部
34:外側面
35:縁部
50:呼気収集カップ
52:上側壁部
53:下側壁部
54:呼気ガイド部
56:呼気排出部
57:取付アーム部
57a:係合孔部
58:取付アーム部
58a:係合孔部
61:呼気ガス導入管
62:呼気ガス排出口
64:酸素ガス排出部
124a~124h:突起部
125a,126a:溝
132c~132e:貫通孔
140:頭部
142:立壁部
240:頭部
242:立壁部
261:溝