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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】加工治具
(51)【国際特許分類】
   B23B 47/28 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
B23B47/28 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021042819
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142592
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸澗 達也
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0248675(US,A1)
【文献】特開平03-032540(JP,A)
【文献】特開昭62-054612(JP,A)
【文献】実開平03-001732(JP,U)
【文献】実開昭57-189708(JP,U)
【文献】実開昭57-100431(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103769912(CN,A)
【文献】実開昭63-166317(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0008648(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0345385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 35/00-49/06
B23Q 3/00-3/154
B23Q 16/00-16/12
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工テーブルに対して予め設定した加工経路に沿って工具を移動させることにより前記加工テーブルに配置した被加工物に加工を施す加工装置を適用対象とした加工治具であって、
前記工具に対して位置決めされた状態で前記加工テーブルに配置され、被加工物の第1基準面が当接される規定面を有した治具本体と、
前記規定面に当接した被加工物の第2基準面に対して選択的に当接可能となる状態で前記治具本体に設けられた複数のストッパ部材と、
前記治具本体に設けられた装着部に対して着脱可能に装着される位置決めブロックと
を備え、前記複数のストッパ部材は、前記治具本体が前記加工テーブルに位置決め配置され、かつ前記規定面に当接した被加工物の第2基準面が当接した場合に、被加工物に設定された複数の加工位置をそれぞれ前記工具に対向配置させる位置に設けられ
前記位置決めブロックには、被加工物が前記規定面に当接した状態で前記第2基準面が前記ストッパ部材に当接した場合に当該ストッパ部材によって規定される加工位置に対応する部分に前記工具が嵌合されるガイド孔が設けられていることを特徴とする加工治具。
【請求項2】
前記複数のストッパ部材は、前記規定面から出没する状態で前記治具本体に移動可能に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の加工治具。
【請求項3】
前記位置決めブロックは、前記治具本体の装着部に対して装着可能となる第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の端部を介して前記治具本体に装着された場合と、前記第2の端部を介して前記治具本体に装着された場合とで前記規定面から前記ガイド孔までの距離が互いに相違していることを特徴とする請求項1に記載の加工治具。
【請求項4】
前記治具本体には、前記装着部を挟んで両側となる部分にそれぞれ前記複数のストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の加工治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール盤等の加工装置を適用対象とした加工治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボール盤等の手動工作機械を用いて被加工物に加工を施す場合には、予め被加工物の表面にけがき線で加工位置を明示し、この加工位置に工具を配置して行うのが一般的である。しかしながら、被加工物に対してけがき線を施す作業は容易ではなく、特に多数の被加工物を対象とした場合の作業はきわめて煩雑となる。しかも、被加工物に施したけがき線はあくまでも目安であり、実際に加工を施す場合に作業が容易化されるものでもない。このため従来では、工具の移動をガイドするためのガイドパイプを有した加工治具を適用し、加工作業の容易化を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-78515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、2枚の押さえ板の間にガイドパイプが配設してあるため、押さえ板の間に被加工物を挟持させることで、被加工物の板厚方向に対してガイドパイプの位置を規定することが可能である。すなわち、押さえ板と被加工物との間にそれぞれ同じ寸法のスペーサを介在させることで、ガイドパイプを被加工物の板厚方向に沿った中心位置に配置することができる。しかしながら、被加工物の幅に直交する長手方向に対しては、ガイドパイプの位置を規定することが困難であり、特に、長手方向の複数箇所に加工を施す場合、作業が煩雑化するのは否めない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、加工作業を容易化することのできる加工治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る加工治具は、加工テーブルに対して予め設定した加工経路に沿って工具を移動させることにより前記加工テーブルに配置した被加工物に加工を施す加工装置を適用対象とした加工治具であって、前記工具に対して位置決めされた状態で前記加工テーブルに配置され、被加工物の第1基準面が当接される規定面を有した治具本体と、前記規定面に当接した被加工物の第2基準面に対して選択的に当接可能となる状態で前記治具本体に設けられた複数のストッパ部材と、前記治具本体に設けられた装着部に対して着脱可能に装着される位置決めブロックとを備え、前記複数のストッパ部材は、前記治具本体が前記加工テーブルに位置決め配置され、かつ前記規定面に当接した被加工物の第2基準面が当接した場合に、被加工物に設定された複数の加工位置をそれぞれ前記工具に対向配置させる位置に設けられ、前記位置決めブロックには、被加工物が前記規定面に当接した状態で前記第2基準面が前記ストッパ部材に当接した場合に当該ストッパ部材によって規定される加工位置に対応する部分に前記工具が嵌合されるガイド孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、被加工物の第1基準面を規定面に当接させ、かつ被加工物の第2基準面をストッパ部材に当接させることにより、工具に対して被加工物の加工位置が規定されることになる。従って、煩雑な作業を要することなく被加工物に対して正確な位置に加工を施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態である加工治具の第1例を示すもので、(a)は治具本体及び位置決めブロックの平面図、(b)は治具本体を規定面から見た図である。
図2】本発明の実施の形態である加工治具の第2例を示すもので、(a)は治具本体及び位置決めブロックの平面図、(b)は治具本体を規定面から見た図である。
図3図1及び図2に示した治具本体を示すもので、(a)はストッパ部材が突出した状態の断面図、(b)はストッパ部材が治具本体の内部に収容された状態の断面図である。
図4図1及び図2に示した加工治具を適用する加工装置の一例を示した斜視図である。
図5】加工対象となる被加工物の第1例である戸先框を示すもので、(a)は断面図、(b)は加工を施す面から見た図である。
図6】加工対象となる被加工物の第2例である召し合わせ框を示すもので、(a)は断面図、(b)は加工を施す面から見た図である。
図7】治具本体に位置決めブロックを装着した状態を示すもので、(a)は一方の端部を介して位置決めブロックを治具本体の装着部に装着した平面図、(b)は他方の端部を介して位置決めブロックを治具本体の装着部に装着した平面図である。
図8図4に示した加工装置の加工テーブルに対して治具本体を位置決め固定する状態の斜視図である。
図9図1に示した第1例の治具本体を適用した被加工物の加工方法を示すもので、(a)は被加工物の第1の加工位置に穿孔を施す状態の平面図、(b)は被加工物の第2の加工位置に穿孔を施す状態の平面図、(c)は被加工物の第3の加工位置に穿孔を施す状態の平面図である。
図10図2に示した第2例の治具本体を適用して被加工物の第1の加工位置に穿孔を施す状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る加工治具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1図3は、本発明の実施の形態である加工治具を示すものである。ここで例示する加工治具は、図4に示すような卓上ボール盤1によって被加工物に穿孔加工を施す場合に適用するものである。卓上ボール盤1は、上下に沿った装置本体2の中間部分に加工テーブル3を備えるとともに、加工テーブル3の上方となる部分に主軸4を備え、加工テーブル3の上面3aに配置された被加工物に対して主軸4に装着したドリル(工具)5によって穿孔加工を施すものである。加工テーブル3は、上面3aが水平方向に沿った平面状を成すものである。主軸4は、図示せぬ駆動源によって上下に沿った軸心回りに回転するもので、ハンドル6の操作により装置本体2に対して上下方向に沿った加工経路を往復移動することが可能である。主軸4の下端部には、ドリル5を着脱可能に装着することのできる工具チャック部7が設けてある。図には明示していないが、本実施の形態では、主軸4の工具チャック部7に、基端部が外径φ1で先端部が外径φ2(<φ1)のステップドリルと称されるドリル5が装着してある。
【0010】
加工治具10は、建具の枠や框を構成する建材に対して長手方向の複数箇所に穿孔加工を施す際に適用するものである。本実施の形態では、図5及び図6に示す2種類の縦框F1,F2に対して穿孔加工を施す際に適用する加工治具10を例示している。図5に示す縦框(以下、区別する場合に戸先框F1という)は、障子の戸先に配置されるもので、障子の外周側となる表面にネジ挿通孔f1及び部品取付孔f2を有したものである。図6に示す縦框(以下、区別する場合に召し合わせ框F2という)は、障子の召し合わせとなる位置に配置されるもので、障子の外周側となる表面にネジ挿通孔f1及び部品取付孔f2を有したものである。戸先框F1のネジ挿通孔f1及び部品取付孔f2は、戸先框F1において基準となる一方の表面(第1基準面)f0から距離d1の距離に設定した穿孔線L1を中心として戸先框F1の長手に沿って並設してある。召し合わせ框F2のネジ挿通孔f1及び部品取付孔f2は、召し合わせ框F2において基準となる一方の表面(第1基準面)f0から距離d2(>d1)の距離に設定した穿孔線L2を中心として召し合わせ框F2の長手に沿って並設してある。戸先框F1のネジ挿通孔f1と召し合わせ框F2のネジ挿通孔f1とは互いに同一の内径φ1を有し、戸先框F1の部品取付孔f2と召し合わせ框F2の部品取付孔f2とは互いに同一、かつネジ挿通孔f1よりも小さい内径φ2を有したものである。戸先框F1においてネジ挿通孔f1を設ける位置は、一方の端面(第2基準面)f3から距離c1,c2及び他方の端面(第2基準面)f4から距離c1,c2の合計4カ所であり、部品取付孔f2を設ける位置は、一方の端面f3から距離c4及び他方の端面から距離c3,c4の合計3カ所である。召し合わせ框F2においてネジ挿通孔f1を設ける位置は、一方の端面(第1基準面)f3から距離c1,c5と他方の端面f4から距離c1,c2の合計4カ所であり、部品取付孔f2を設ける位置は、他方の端面(第2基準面)f4から距離c3の1カ所である。
【0011】
上述の穿孔加工を行うための加工治具10は、図1図2に示すように、ネジ挿通孔用及び部品取付孔用の2種類の治具本体11A,11Bと、これら治具本体11A,11Bで共通となる位置決めブロック11Cとを備えて構成してある。治具本体11A,11Bは、それぞれ直方体状を成すもので、長手に沿った基準となる側面(以下、単に規定面12という)のほぼ中央となる部分に装着部13を有するとともに、規定面12において装着部13を挟んで両側となる部分にそれぞれ複数の位置決めピン(ストッパ部材)20を有したものである。
【0012】
装着部13は、治具本体11A,11Bの規定面12、上面14及び下面15に開口する直方体状の凹部である。規定面12から装着部13の内表面までの寸法は、それぞれ距離d0に設定してある。
【0013】
位置決めピン20は、図1図3に示すように、それぞれが円柱状を成すピン本体21の中間部にフランジ22を有したものである。これらの位置決めピン20は、ピン本体21の先端部が規定面12に開口する摺動孔16から出没する状態で治具本体11A,11Bの内部に配設してある。摺動孔16は、位置決めピン20のピン本体21を摺動可能に嵌合する内径を有した円形の断面を有するものであり、治具本体11A,11Bの下面15から同一の高さとなる位置に形成してある。摺動孔16の軸心は、いずれも規定面12に対して直交するように設けてある。摺動孔16の位置は、ネジ挿通孔用の治具本体11Aと部品取付孔用の治具本体11Bとで互いに異なっている。すなわち、ネジ挿通孔用の治具本体11Aには、装着部13の中心線から摺動孔16に嵌合したピン本体21の外周面までの最短距離が距離c1,c2,c5となるように摺動孔16が形成してある。部品取付孔用の治具本体11Bには、装着部13の中心線から摺動孔16に嵌合したピン本体21の外周面までの最短距離が距離c3,c4及び距離c6となるように摺動孔16が形成してある。
【0014】
それぞれの摺動孔16は、治具本体11A,11Bの内部に形成した収容孔17に連通している。収容孔17は、位置決めピン20のフランジ22を移動可能に収容することのできる内径を有した空所であり、開口端部がプラグ18によって閉塞してある。フランジ22とプラグ18との間には、フランジ22を摺動孔16と収容孔17との間の段部に当接させることにより、ピン本体21の先端部を規定面12から突出させる押圧スプリング19が配設してある。押圧スプリング19の押圧力に抗して位置決めピン20を押圧した場合には、図3(b)に示すように、規定面12からのピン本体21の突出寸法をゼロとすることが可能である。押圧スプリング19としては、戸先框F1や召し合わせ框F2を規定面12に当接させた場合に位置決めピン20を容易に没入させることのできる程度のバネ力を有したものを適用すれば良い。例えば、治具本体11Aの規定面12に戸先框F1の一方の表面f0を当接させた状態でこれら治具本体11A及び戸先框F1を加工テーブル3の上面3aに配置して手を離した場合にも、治具本体11Aの規定面12から戸先框F1が離隔しない程度のバネ力を有した押圧スプリング19を適用すれば良い。
【0015】
位置決めブロック11Cは、図1図2に示すように、平面視が長方形状を成し、一方の端部11a及び他方の端部11bを介してそれぞれ治具本体11A,11Bの装着部13に嵌合可能となるものである。この位置決めブロック11Cには、上下方向に沿ってガイド孔11cが貫通している。ガイド孔11cは、ドリル5の太径部に嵌合する内径を有したものである。ガイド孔11cの中心は、両側面からの距離11dは等しいが、両端部11a,11bからの距離が互いに異なっている。すなわち、位置決めブロック11Cの一方の端部11aから距離a1(=d0+d1)、かつ他方の端部11bから距離a2(=d0+d2)の位置にガイド孔11cが形成してある。従って、図4(a)に示すように、治具本体11A(11B)の装着部13に対して一方の端部11aを嵌合させた場合には、規定面12からガイド孔11cの軸心までの距離がd1となり、図4(b)に示すように、治具本体11A(11B)の装着部13に対して他方の端部11bを嵌合させた場合には、規定面12からガイド孔11cの軸心までの距離がd2となる。
【0016】
上述の治具本体11A,11B及び位置決めブロック11Cを適用して戸先框F1にネジ挿通孔f1を設ける場合には、まず、図4(a)に示すように、一方の端部11aが嵌合する状態で位置決めブロック11Cを治具本体11Aの装着部13に装着し、これら治具本体11A及び位置決めブロック11Cを加工テーブル3の上面3aに配置する。
【0017】
次いで、ハンドル6を操作してドリル5を装着した主軸4を下方に移動させ、図8に示すように、ドリル5が位置決めブロック11Cのガイド孔11cに嵌合した状態で治具本体11Aを加工テーブル3に固定する。治具本体11Aを加工テーブル3に固定する場合には、例えばC型のクランプ30により治具本体11Aの両端部を加工テーブル3とともに挟持させれば良い。治具本体11Aを加工テーブル3に固定した後においては、主軸4を上昇させ、位置決めブロック11Cを治具本体11Aの装着部13から取り外せば、加工待機状態となる。
【0018】
すなわち、図9(a)に示すように、戸先框F1の一方の表面f0を治具本体11Aの規定面12に当接させるとともに、装着部13にもっとも近接した位置決めピン20の外周面に戸先框F1の一方の端面f3に当接させれば、ドリル5の軸心が戸先框F1の一方の表面f0から距離d1、かつ一方の端面f3から距離c1に配置されることになる。従って、この状態を維持したままハンドル6を操作して主軸4を下方に移動させれば、上述した位置にネジ挿通孔f1を正確に形成することができる。このとき、戸先框F1の表面f0に対向する位置決めピン20については、治具本体11Aの内部に収容された状態となり、戸先框F1の表面f0を治具本体11Aの規定面12に当接させる際の妨げとなることはない。
【0019】
次いで、図9(b)に示すように、戸先框F1の一方の表面f0を治具本体11Aの規定面12に当接させるとともに、装着部13から2番目の位置決めピン20の外周面に戸先框F1の一方の端面f3に当接させれば、ドリル5の軸心が戸先框F1の一方の表面f0から距離d1、かつ一方の端面f3から距離c2に配置されることになる。従って、この状態を維持したままハンドル6を操作して主軸4を下方に移動させれば、上述した位置にネジ挿通孔f1を正確に形成することができる。
【0020】
以下同様に、一方の端面f3に対して複数の位置決めピン20を選択的に当接させることで、戸先框F1に対して所望の位置にネジ挿通孔f1を形成することができる。戸先框F1のもう一方の端部にネジ挿通孔f1を形成する場合には、図9(c)に示すように、装着部13に対して反対側に位置する位置決めピン20を利用すれば、上述と同様に実施することが可能である。
【0021】
一方、召し合わせ框F2にネジ挿通孔f1を形成する場合には、一旦、加工テーブル3に対する治具本体11Bの固定状態を解除する。この状態から、図4(b)に示すように、治具本体11Aの装着部13に対して位置決めブロック11Cの他方の端部11bを装着し、この状態のままガイド孔11cにドリル5を嵌合させた状態で治具本体11Aを加工テーブル3に固定する。さらに、図10に示すように、召し合わせ框F2の一方の表面f0を治具本体11Aの規定面12に当接させるとともに、装着部13にもっとも近接した位置決めピン20の外周面に召し合わせ框F2の他方の端面f4に当接させれば、ドリル5の軸心が召し合わせ框F2の一方の表面f0から距離d2、かつ他方の端面f4から距離c1に配置されることになり、この状態を維持したままハンドル6を操作して主軸4を下方に移動させれば、上述した位置にネジ挿通孔f1を正確に形成することができる。
【0022】
同様に、戸先框F1や召し合わせ框F2に部品取付孔f2を設ける場合には、加工テーブル3に治具本体11Bを固定して上述と同様の加工作業を行えば良い。上述のステップドリルをそのまま用いる場合には、ドリル5の先端部のみが戸先框F1や召し合わせ框F2に接触するように主軸4の下方への移動を制限する必要がある。
【0023】
以上説明したように、加工治具を用いて加工を施す場合には、縦框F1,F2に予めけがき線を施す必要がなく、しかも縦框F1,F2の表面f0を治具本体の規定面12に当接させた状態で端面f3,f4を位置決めピン20に当接させれば良い。従って、煩雑な作業を要することなく縦框F1,F2に対して正確な位置に加工を施すことが可能となる。
【0024】
なお、上述した実施の形態では、卓上ボール盤による穿孔加工を施す際に適用する加工治具を例示しているが、加工テーブルに対して予め設定した加工経路に沿って工具を移動させることにより被加工物に加工を施すものであれば、その他の加工装置にも適用することが可能である。
【0025】
また、上述した実施の形態では、治具本体に対して位置決めブロックが別体に構成され、かつ治具本体の装着部に対して位置決めブロックを異なる端部で装着可能に構成した加工治具を例示しているため、被加工物の第1基準面から加工位置までの距離が2種類の加工を施すことが可能である。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば治具本体と位置決めブロックとが一体に構成されていても良い。
【0026】
さらに、上述した実施の形態では、ストッパ部材として位置決めピンを例示しているが、必ずしもピン状を成している必要はなく、ブロック状を成すストッパ部材を適用しても良い。また、規定面に対してストッパ部材を出没可能に配設しているが、必ずしもストッパ部材が出没する必要はなく、例えば、治具本体に対してストッパ部材を着脱させるようにしても同様の作用効果を奏することが可能である。
【0027】
以上のように、本発明に係る加工治具は、加工テーブルに対して予め設定した加工経路に沿って工具を移動させることにより前記加工テーブルに配置した被加工物に加工を施す加工装置を適用対象とした加工治具であって、前記工具に対して位置決めされた状態で前記加工テーブルに配置され、被加工物の第1基準面が当接される規定面を有した治具本体と、前記規定面に当接した被加工物の第2基準面に対して選択的に当接可能となる状態で前記治具本体に設けられた複数のストッパ部材とを備え、前記複数のストッパ部材は、前記治具本体が前記加工テーブルに位置決め配置され、かつ前記規定面に当接した被加工物の第2基準面が当接した場合に、被加工物に設定された複数の加工位置をそれぞれ前記工具に対向配置させる位置に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、被加工物の第1基準面を規定面に当接させ、かつ被加工物の第2基準面をストッパ部材に当接させることにより、工具に対して被加工物の加工位置が規定されることになる。従って、煩雑な作業を要することなく被加工物に対して正確な位置に加工を施すことが可能となる。
【0028】
また本発明は、上述した加工治具において、前記複数のストッパ部材は、前記規定面から出没する状態で前記治具本体に移動可能に配設されていることを特徴としている。
この発明によれば、治具本体に対してストッパ部材を着脱することなく被加工物の第2基準面が当接するストッパ部材を変更することが可能となる。
【0029】
また本発明は、上述した加工治具において、前記治具本体に設けられた装着部に対して着脱可能に装着される位置決めブロックを備え、前記位置決めブロックには、被加工物が前記規定面に当接した状態で前記第2基準面が前記ストッパ部材に当接した場合に当該ストッパ部材によって規定される加工位置に対応する部分に前記工具が嵌合されるガイド孔が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、位置決めブロックのガイド孔に工具と嵌合させることにより、加工装置に対する治具本体の位置を規定することができるようになる。
【0030】
また本発明は、上述した加工治具において、前記位置決めブロックは、前記治具本体の装着部に対して装着可能となる第1の端部及び第2の端部を有し、前記第1の端部を介して前記治具本体に装着された場合と、前記第2の端部を介して前記治具本体に装着された場合とで前記規定面から前記ガイド孔までの距離が互いに相違していることを特徴としている。
この発明によれば、位置決めブロックの装着部を選択することにより、共通の治具本体を適用して規定面からの距離が異なる2種類の加工を行うことが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した加工治具において、前記治具本体には、前記装着部を挟んで両側となる部分にそれぞれ前記複数のストッパ部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、多数の加工位置に対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
1 卓上ボール盤、3 加工テーブル、5 ドリル、10 加工治具、11A,11B 治具本体、11C 位置決めブロック、11a 端部、11b 端部、11c ガイド孔、12 規定面、13 装着部、20 位置決めピン、30 クランプ、F1 戸先框、F2 召し合わせ框、f0 表面、f1 ネジ挿通孔、f2 部品取付孔、f3 端面、f4 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10