(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04H 6/02 20060101AFI20241001BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
E04H6/02 Z
E04B1/343 U
(21)【出願番号】P 2021043529
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤峯 弘城
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実公平07-035024(JP,Y2)
【文献】特開2016-061113(JP,A)
【文献】特開2001-173099(JP,A)
【文献】実公平03-039563(JP,Y2)
【文献】特開平09-228531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/02
E04B 1/343
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する左母屋を前後に並んだ第1左梁及び第2左梁で支持した左屋根と、前後方向に延在する右母屋を前後に並んだ第1右梁及び第2右梁で支持した右屋根と、を備え、
前記第1左梁及び前記第1右梁が互いに突き合わされて連結され、前記第2左梁及び前記第2右梁が互いに突き合わされて連結されることで、前記左屋根と前記右屋根とが合掌した屋根構造体であって、
前記第1左梁と前記第1右梁との間の第1突合せ部を連結する第1連結部材と、
前記第2左梁と前記第2右梁との間の第2突合せ部を連結する第2連結部材と、
前記左母屋及び前記右母屋のうち、一方の母屋が他方の母屋よりも前記第1左梁又は前記第1右梁から大きく張り出すことで形成された入隅部と、
を備え、
前記第1連結部材は、前記第1突合せ部を跨ぐように配置され、前記第1左梁及び第1右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のそれぞれに対向配置される4枚の第1連結板部を有し、
前記第2連結部材は、前記第2突合せ部を跨ぐように配置され、前記第2左梁及び第2右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のうちの対向位置にある2枚の板部のそれぞれに対向配置される2枚の第2連結板部を有し、
前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部のうちの少なくとも対向位置にある2枚の第1連結板部が前記第1左梁及び前記第1右梁と締結され、
前記第2連結部材は、前記2枚の第2連結板部が前記第2左梁及び前記第2右梁と締結されている
ことを特徴とする屋根構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造体であって、
前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部を一体に形成した角筒状部材であり、
前記角筒状部材は、前記第1突合せ部を通過して前記第1左梁に設けられた中空部から前記第1右梁に設けられた中空部まで挿入されている
ことを特徴とする屋根構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の屋根構造体であって、
前記第1左梁の前記第1突合せ部側とは反対側の端部に対して、第1左ジョイント部材を用いて連結される第1左支柱と、
前記第2左梁の前記第2突合せ部側とは反対側の端部に対して、第2左ジョイント部材を用いて連結される第2左支柱と、
前記第1右梁の前記第1突合せ部側とは反対側の端部に対して、第1右ジョイント部材を用いて連結される第1右支柱と、
前記第2右梁の前記第2突合せ部側とは反対側の端部に対して、第2右ジョイント部材を用いて連結される第2右支柱と、
を備え、
前記第1連結部材は、前記第1左ジョイント部材、前記第2左ジョイント部材、前記第1右ジョイント部材、及び前記第2右ジョイント部材のうち、少なくともいずれか1つのジョイント部材と同一の断面形状を有する
ことを特徴とする屋根構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の屋根構造体であって、
前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部のうち、3枚の第1連結板部を一体に形成したコ字状部材と、残りの1枚の第1連結板部を構成する板状部材と、を有し、
前記コ字状部材は、前記第1左梁に設けられた中空部から前記第1右梁に設けられた中空部まで前記第1突合せ部を通過して挿入されることで、前記第1左梁及び前記第1右梁の前記上板部、下板部、前板部、及び後板部のうちの3枚の板部と対向し、
前記板状部材は、前記第1突合せ部を通過して前記第1左梁及び前記第1右梁の4枚の板部のうちの残りの1枚の板部と対向している
ことを特徴とする屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポートやテラス等の屋根構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、カーポートやテラス等に用いる屋根構造体が開示されている。この屋根構造体は、片持ち支持された左右の屋根同士を合掌させて連結している。具体的には、左右の屋根は、前後に並んだ互いの梁同士を突き合わせ、2枚の当て板を貫通ボルトで締結することで互いに連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような合掌構造の屋根構造体は、左右の屋根の前後の縁部の位置をずらして入隅部を設ける場合がある。このように入隅部を設け、左右の屋根の配置をアンバランスにした場合、大きく張り出した方の屋根の梁が設計時の想定を超えた過大な曲げモーメントを負担することになる。その結果、屋根構造体は、入隅部に近い梁同士の連結部の強度が不足し、屋根材や梁等の傾きや位置ずれ等を生じる懸念がある。他方、単に各梁同士の連結強度を高めただけでは、製品コストが増大する。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、入隅部を有したアンバランスな構造でありながらも十分な強度と低コストとを両立することができる屋根構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る屋根構造体は、前後方向に延在する左母屋を前後に並んだ第1左梁及び第2左梁で支持した左屋根と、前後方向に延在する右母屋を前後に並んだ第1右梁及び第2右梁で支持した右屋根と、を備え、前記第1左梁及び前記第1右梁が互いに突き合わされて連結され、前記第2左梁及び前記第2右梁が互いに突き合わされて連結されることで、前記左屋根と前記右屋根とが合掌した屋根構造体であって、前記第1左梁と前記第1右梁との間の第1突合せ部を連結する第1連結部材と、前記第2左梁と前記第2右梁との間の第2突合せ部を連結する第2連結部材と、前記左母屋及び前記右母屋のうち、一方の母屋が他方の母屋よりも前記第1左梁又は前記第1右梁から大きく張り出すことで形成された入隅部と、を備え、前記第1連結部材は、前記第1突合せ部を跨ぐように配置され、前記第1左梁及び第1右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のそれぞれに対向配置される4枚の第1連結板部を有し、前記第2連結部材は、前記第2突合せ部を跨ぐように配置され、前記第2左梁及び第2右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のうちの対向位置にある2枚の板部のそれぞれに対向配置される2枚の第2連結板部を有し、前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部のうちの少なくとも対向位置にある2枚の第1連結板部が前記第1左梁及び前記第1右梁と締結され、前記第2連結部材は、前記2枚の第2連結板部が前記第2左梁及び前記第2右梁と締結されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、入隅部を有したアンバランスな構造でありながらも十分な強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る屋外構造体を前方斜め上から見上げた斜視図である。
【
図2】屋根構造体の上部を拡大した正面断面図である。
【
図3】第1連結部材及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図6】第2連結部材及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図7A】変形例に係る第1連結部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る屋根構造体についての好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の屋根構造体10は、例えばカーポートやテラス屋根等として屋外に設置される。屋根構造体10は、左屋根11Lと右屋根11Rと突き合わせて合掌した構造である。本実施形態の屋根構造体10は、屋根11L,11Rの長さを異ならせて形成した入隅部12を備える。入隅部12は、例えば屋根構造体10が道路に対して斜めに面しているために左右の屋根11L,11Rを階段状に配置する必要がある場合や、屋根構造体10が他の建築物等を避けるために屋根11L,11Rの一部を凹ませる必要がある場合等に対応するためのものである。左屋根11Lは、左支柱14L,15Lで支持されている。右屋根11Rは、右支柱14R,15Rで支持されている。
【0011】
以下では、左支柱14L及び右支柱14Rを正面に捉えて屋根構造体10を見る方向を基準とし、屋根構造体10の奥行方向で手前側を前、奥側を後、高さ方向を上下、幅方向を左右、と呼んで説明し、図中に矢印で示す。これらの各方向は説明の便宜上のものであり、実際の製品では屋根構造体10を見る方向や角度等によって当然に変化する。また以下では、正面から見て左側の部材について左屋根11L、左梁17L,18L、左母屋19L等と呼び、右側の部材について右屋根11R、右梁17R,18R、右母屋19R等と呼んでいるが、これらの呼び方も説明の便宜上、各部材の普通名称(屋根、梁、母屋等)に「左」又は「右」と付したものである。
【0012】
左屋根11Lは、前後に並んだ左支柱14L,15Lによって左端部が支持され、右上がりの片持ち構造で設置される。左屋根11Lは、屋根枠16Lと、左梁17L,18Lと、複数本(
図1では3本)の左母屋19Lと、複数枚(
図1では4枚)の屋根材20Lとを備える。
【0013】
屋根枠16Lは、アルミニウム等の金属で形成された押出形材で構成された四辺の枠材(前枠、後枠、左枠、右枠)を矩形に枠組みしたものである。屋根枠16Lは、左梁17L,18Lの上面や左支柱14L,15の上端で支持されている。
【0014】
左梁17L,18Lは、前後に並んで配置されている。左梁17L,18Lは、アルミニウム等の金属で形成された角筒状の押出形材である。前側の左梁(第1左梁)17Lは、前側の左支柱(第1左支柱)14Lの上部に連結され、左側から右上方に向かって延びている。後側の左梁18(第2左梁)Lは、左支柱(第2左支柱)15Lの上部に連結され、左側から右上方に向かって延びている。
【0015】
各左母屋19Lは、左梁17L,18Lと直交するように左右方向に等間隔に並んで配置されている。各左母屋19Lは、例えば左梁17L,18Lの上面にねじ止めされ、その前後両端が屋根枠16(前枠及び後枠)で支持されている。
【0016】
各屋根材20Lは、前後方向に長尺な長方形状の薄板であり、例えばポリカーボネート板や熱線遮断ポリカーボネート板で構成されている。各屋根材20Lは、例えば前後端部が屋根枠16Lの前後枠で支持され、左右端部が屋根枠16Lの左右枠や左母屋19Lで支持されている。屋根材20L及び母屋19Lの設置数は適宜変更可能である。
【0017】
各左支柱14L,15Lは、アルミニウム等の金属で形成された押出形材であり、下端部が地面等に打設される。各左支柱14L,15Lは、スチールやステンレス等の鋼管でもよい。左支柱14L,15Lは、それぞれ左ジョイント部材22L,23Lを用いて左梁17L,18Lと連結される。左ジョイント部材(第1左ジョイント部材)22Lは、左支柱14Lの中空部に挿入されて左支柱14Lに固定される第1固定部22aと、左梁17Lの中空部21に挿入されて左梁17Lに固定される第2固定部22bとを有し、略L字状部材を成している。左ジョイント部材(第2左ジョイント部材)23Lは、左ジョイント部材22Lと同一構造でよく、左ジョイント部材22Lと同じく固定部22a,22bを有する。
【0018】
右屋根11Rは、前後に配置された右支柱14R,15Rによって右端部が支持され、左上がりの片持ち構造で設置される。右屋根11Rは、屋根枠16Rと、右梁17R,18Rと、複数本(
図1では3本)の右母屋19Rと、複数枚(
図1では4枚)の屋根材20Rとを備える。
【0019】
右屋根11Rは、入隅部12を形成するために、左屋根11Lよりも前後方向の全長が長く構成されている以外、基本的な構成は左屋根11Lと左右対称構造でよい。すなわち右屋根11Rの屋根枠16R、右母屋19R、及び屋根材20Rは、それぞれ左屋根11Lの屋根枠16L、左母屋19L、及び屋根材20Lよりも前後方向の全長が長い。なお、右屋根11Rの各要素は、左屋根11Lの各要素のうち、参照符号の数字部分が共通する要素と同一又は同様な構造でよいため、詳細な説明は省略する。
【0020】
右支柱14R,15Rは、それぞれ左支柱14L,15Lと左右対称である以外は同一又は同様な構成でよい。前側の右支柱(第1右支柱)14Rは、その上端部が右ジョイント部材(第1右ジョイント部材)22Rを用いて右梁17Rと連結される。後側の右支柱(第2右支柱)15Rは、その上端部が右ジョイント部材(第2右ジョイント部材)23Rを用いて右梁18Rと連結される。右ジョイント部材22R,23Rは、それぞれ左ジョイント部材22L,23Lと左右対称である以外は同一又は同様な構成でよい。
【0021】
次に、屋根11L,11Rの連結構造を説明する。
【0022】
図1に示すように、左屋根11L及び右屋根11Rは、左梁17L及び右梁17Rが互いに突き合わせて連結され、左梁18L及び右梁18Rが互いに突き合わせて連結されることで合掌している。屋根構造体10は、前側の梁17L,17Rを連結する第1連結部材24と、後側の梁18L,18Rを連結する第2連結部材25とを備える。
【0023】
先ず、第1連結部材24の構成を説明する。
図3~
図5Bに示すように、第1連結部材24は、左梁17Lと右梁17Rとの間の第1突合せ部26を連結するものである。第1突合せ部26は、左梁17Lの右端面26Lと右梁17Rの左端面26Rとを突き合せて近接させた部分である。第1突合せ部26は、端面26L,26Rが当接していてもよい。
【0024】
第1連結部材24は、第1突合せ部26を跨ぐように配置される角筒状部材であり、矩形の断面形状を有する。第1連結部材24は、左右方向の中央部を頂点として左右両椀を下方に傾斜させた略ブーメラン形状を成している。これにより第1連結部材24は、左右の梁17L,17Rの傾斜姿勢に対応し、左梁17Lの中空部21から第1突合せ部26を通過して右梁17Rの中空部28まで挿入可能である。
【0025】
第1連結部材24は、例えばスチールやステンレス等の鋼管である。本実施形態の第1連結部材24は、左梁17Lに挿入される角筒部24Lと、右梁17Rに挿入される角筒部24Rとを突き合わせて接合(溶接部W1参照)したものである(
図4参照)。角筒部24L,24Rは、同一部材である。これにより第1連結部材24は、剛性の高い角型鋼管をブーメラン状の屈曲形状に精度よく且つ低コストで形成できる。また本実施形態の角筒部24L,24Rは、コの字形状の上部材及び下部材の開口側の縁同士をオーバーラップさせ、互いの前後側面を接合(溶接部W2参照)した構成となっている。角筒部24L,24Rは、矩形筒状に押出成形されたものや、1枚の金属板を筒状に折り曲げて接合したものでもよい。
【0026】
従って、第1連結部材24を輪切り状に切断した断面は、4枚の連結板部(第1連結板部)24a~24dによって矩形の枠状を成している(
図5A参照)。一方、左梁17L及び右梁17Rも角筒状部材であるため、これを輪切り状に切断した断面も4枚の板部17La~17Ld,17Ra~17Rdによって矩形の枠状を成している(
図5A参照)。
【0027】
勿論、中空部21,28に挿入される第1連結部材24の外形は、梁17L,17Rの内形よりも一回り小さい。これにより上側の連結板部24aは、左梁17Lの上板部17Laと、右梁17Rの上板部17Raとに対向配置される。下側の連結板部24bは、左梁17Lの下板部17Lbと、右梁17Rの下板部17Rbとに対向配置される。前側の連結板部24cは、左梁17Lの前板部17Lcと、右梁17Rの前板部17Rcとに対向配置される。後側の連結板部24dは、左梁17Lの後板部17Ldと、右梁17Rの後板部17Rdとに対向配置される。
【0028】
図5Bに示す構成例では、上側の連結板部24aが上板部17La,17Raの内面に当接し、下側の連結板部24bは下板部17Lb,17Rbの内面に当接又は近接する(
図5B参照)。前側の連結板部24cは前板部17Lc,17Rcの内面に多少の隙間を介して対向し、後側の連結板部24dも後板部17Ld,17Rdの内面に多少の隙間を介して対向する。
【0029】
図5Aに示すように、前後の連結板部24c,24dの内面にはそれぞれ溶接ナット30が接合されている。溶接ナット30は、連結板部24c,24dの角筒部24L側及び角筒部24R側に左右一対ずつそれぞれ設けられている(
図4及び
図5A参照)。各溶接ナット30には、第1連結部材24を梁17L,17Rに締結するためのボルト31が螺合される。
【0030】
なお、本実施形態の角筒部24L,24Rは、ジョイント部材22L,22R(23L,23R)の第1固定部22aと同一の部品を転用している。すなわち、ジョイント部材22L,22Rの第1固定部22aも、梁17L,17Rの中空部21,28に挿入され固定される点では、第1連結部材24と相違がない。そこで、本実施形態の第1連結部材24は、ジョイント部材22L,22Rを転用し、その製造コストを低減している。なお、本実施形態のジョイント部材22L,22R,23L,23Rはいずれも同一断面を有するため、いずれの部材を第1連結部材24に利用してもよい。
【0031】
図3に示すように、本実施形態の第1連結部材24は、第1突合せ部26に露出した部分がカバー部材34によって覆われる。カバー部材34は、例えば上面が開口したコ字状部材の金属板である。カバー部材34は、第1突合せ部26を跨いだ状態で梁17L,17Rの上板部17La,17Raを除く3辺の外面の端面26L,26R及びこれに近い部分を覆う。これにより屋根構造体10は、屋根11L,11Rを下から見上げた際、第1突合せ部26及びここに露出した第1連結部材24が外観上に露出せず、高い外観品質が得られる。
【0032】
第1連結部材24の施工方法としては、例えば右端面26Lの小口から左梁17Lの中空部21に角筒部24Lを挿入し、4本のボルト31を各溶接ナット30に仮締めする。続いて、右端面26Lから右方に突出した角筒部24Rを右梁17Rの左端面26Rの小口で飲み込むようにして中空部28に挿入し、ここでも4本のボルト31を各溶接ナット30に仮締めする。そして、8本のボルト31を全て均等に締結することで、第1連結部材24を用いて左右の梁17L,17Rが強固に連結される。そこで、必要に応じてカバー部材34を第1突合せ部26を覆うように下から嵌合することで第1連結部材24の施工が完了する。
【0033】
次に、第2連結部材25の構成を説明する。
図6に示すように、第2連結部材25は、左梁18Lと右梁18Rとの間の第2突合せ部36を連結するものである。第2突合せ部36は、左梁18Lの右端面36Lと右梁18Rの左端面36Rとが互いに突き合うように対向し、近接した部分である。第2突合せ部36は、端面36L,26R同士が当接していてもよい。
図6に示す構成例では、各端面36L,36Rには樹脂キャップが装着されている。なお、左梁18L,18Rからの母屋19L,19Rの後方への張り出し距離は同一に設定されているため、屋根11L,11Rの後縁部は左右で揃っている。
【0034】
第2連結部材25は、第1突合せ部36を跨ぐように配置される2枚の連結板部(第2連結板部)25a,25bを有する。各連結板部25a,25bは、例えばスチールやステンレス等の金属板である。一方の連結板部25aは、左梁18Lの前板部18Lcの外面と、右梁18Rの前板部18Rcの外面とに当接する。他方の連結板部25bは、左梁18Lの後板部18Ldの外面と、右梁17Rの後板部18Rdの外面とに当接する。
【0035】
このように連結板部24a,24bは、梁18L,18Rを前後で挟むように配置され、例えば4本の貫通ボルト37を用いて梁18L,18Rと締結される。貫通ボルト37は、例えば前から後に向かう方向で順に、連結板部25a,前板部18Lc,18Rc、後板部18Ld,18Rd、連結板部25bを貫通し、連結板部25bの外面に当てたナット38に螺合される。なお、第2連結部材25は、梁18L,18Rの上板部18La,18Ra及び下板部18Lb,18Rbに対しては設置されない。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る屋根構造体10は、入隅部12に面した位置にあるために入隅部12の重みを直接的に受ける梁17L,17R同士を連結する第1連結部材24と、入隅部12に面していない位置にあるために入隅部12の重みを直接的に受けない梁18L,18R同士を連結する第2連結部材25とを備える。
【0037】
すなわち屋根構造体10は、右屋根11Rの右梁17Rからの前方への張り出し距離が、左屋根11Lの左梁17Lからの前方への張り出し距離に比べて大きく構成されることで、入隅部12を形成している。このため入隅部12に近い前側の梁17L,17Rは、入隅部12から遠い後側の梁18L,18Rよりも大きな曲げモーメントを受ける。その結果、梁17L,17Rの連結部は、梁18L,18Rの連結部よりも大きな荷重を受け、左右の梁17L,17Rがそれぞれ第1突合せ部26を下方へと谷状に移動させる方向に大きな回動力を受ける。換言すれは、屋根構造体10を正面(前側)から見た場合に、左梁17Lが時計方向に回動し、右梁17Rが反時計方向に回動する方向に大きな力を受ける。
【0038】
そこで、当該屋根構造体10は、大きな力を受ける梁17L,17Rを第1連結部材24によって連結している。第1連結部材24は、4面の連結板部24a~24dが左右の梁17L,17Rの4面の板部17La~17Ld,17Ra~17Rdに対面配置され、2面の連結板部24c,24dが梁17L,17Rとボルト31を用いて締結される。これにより第1連結部材24は、4面の連結板部24a~24dが左右の梁17L,17Rの回動を抑制するストッパとしても機能する。このため第1連結部材24は、左右の梁17L,17Rを高い剛性で連結することができ、入隅部12で大きく張り出した右屋根11Rの荷重を第1連結部材24を介して左右の梁17L,17Rで負担することができる。その結果、右屋根11Rのみが張り出したアンバランスな構造によるモーメントを左右の梁17L,17Rで均等に受けることでき、梁17L,17R及び支柱14L,14Rの応力を分散することができ、高い連結強度が得られる。なお、ボルト31による締結は、上下2面に行ってもよいし、3面以上に行ってもよい。
【0039】
一方、左右の屋根11L,11Rのバランスが取れており、荷重も前側より小さい後側の梁18L,18Rは、第2連結部材25によって連結している。第2連結部材25は、2枚の連結板部25a,25bを左右の梁18L,18Rの2面に対面配置し、貫通するボルト37で締結するだけの簡素な構成である。すなわち第2連結部材25は、第1連結部材24のように左右の梁18L,18Rに係る曲げモーメントを受け止める必要がないため、簡素な構造としてコストの低減を図っている。また、第1連結部材24は梁17L,17Rの中空部21,28に挿入する手間が必要であるが、第2連結部材25は梁18L,18Rの外面に当て板をして締結するだけでよいため、施工効率も良い。
【0040】
なお、第1連結部材24で梁17L,17Rを連結した構成と、第2連結部材25で梁18L,18Rを連結した構成とについて、各部材が負担する曲げモーメントの大きさをシミュレーション実験により測定し、片持ち構造の左屋根11L(又は右屋根11R)と比較した。その結果、第2連結部材25で連結された梁18L,18Rが負担するモーメントの大きさは、いずれも約469(N・m)で変化がなかった。一方、第1連結部材24で連結された梁17L,17Rは、互いの第1突合せ部26同士が第1連結部材24で剛接されたことにより、負担するモーメントの大きさは約260(N・m)と大幅に低下した。このように、第1連結部材24は、屋根11L,11Rの強度向上に寄与することが明らかになった。
【0041】
図7A及び
図7Bに示すように、屋根構造体10は、第1連結部材24を構成の異なる第1連結部材40に置き換えてもよい。
図7A及び
図7Bに示す第1連結部材40及びその周辺部材において、
図5A及び
図5Bに示す第1連結部材24及びその周辺部材と同一又は同様な機能及び効果を奏する要素には同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0042】
第1連結部材40は、4枚の連結板部24a~24dのうち、3枚の連結板部24b~24dを一体に形成したコ字状部材40aと、残りの1枚の連結板部24aを構成する板状部材40bと、を有する。
【0043】
コ字状部材40aは、
図5Aに示す角筒部24L,24Rの上側の連結板部24aを切断して分離させたような構成である。コ字状部材40aは、1枚のスチールやステンレス等の金属板をコ字状に折り曲げて構成してもよい。コ字状部材40aは、上記した第1連結部材24と同様、第1突合せ部26を跨いで中空部21,28に挿入される。コ字状部材40aは、3面の板部17Lb~17Ld,17Rb~17Rdと対向し、ボルト31を用いて梁17L,17Rに締結される。
【0044】
板状部材40aは、スチールやステンレス等の金属板である。板状部材40aは、梁17L,17Rの第1突合せ部26を跨いだ状態で上板部17La,17Raの外面に当接配置され、複数のボルト42で梁17L,17Rと締結される。板状部材40aは、上板部17La,17Raの内面に当接配置されてもよい。
【0045】
このような第1連結部材40においても、上記した第1連結部材24と同様、4面の連結板部24a~24dによって左右の梁17L,17Rの回動を抑制することができ、高い連結強度が得られる。第1連結部材40は、板状部材40bを下板部17Lb,17Rb、前板部17Lc,17Rc、又は後板部17Ld,17Rdに対向させ、残りの3面の板部にコ字状部材40aを対向させた配置としてもよい。なお、上記した第1連結部材24は、
図7Aに示す第1連結部材40に比べて部品点数もボルト締結部も少ないため、コストや施工性の点で有利である。しかしながら、
図7Aに示す第1連結部材40は、角筒状の部品を角筒状の梁17L,17Rの中空部21,28に僅かな隙間で挿入する第1連結部材24に比べて公差に余裕を持たせることができ、高精度な加工技術を要しない点で有利である。
【0046】
上記では、入隅部12は、左屋根11Lよりも右屋根11Rを前方に突出させることで形成した構成を例示した。しかしながら入隅部12は、左屋根11Lを右屋根11Rよりも前方に突出させることで形成してもよい。また入隅部12は、屋根11L,11Rを後方で位置ずれさせて形成したものでもよい。
【0047】
上記では、前後2本の左梁17L,18L及び右梁17R,18Rを備えた構成を例示した。しかしながら左梁及び右梁はそれぞれ3本以上を前後に並べて配置してもよい。この場合、入隅部12に面した梁17L,17Rの連結に第1連結部材24(40)を用い、他の2本以上の梁の連結には第2連結部材25を用いるとよい。このような構成では、例えば左右の屋根11L,11Rの前後方向の全長を同一に形成しつつ、左右の屋根11L,11Rを前後方向に位置ずれさせることで、前後両縁のそれぞれに入隅部12を設けた構成等としてもよい。この場合は、前後の梁17L,17R間と、後側の梁18L,18R間のいずれについても第1連結部24で連結し、入隅部12による負荷を受け止め可能な構成とするとよい。他方、梁17L,17Rと梁18L,18Rとの間に追加した入隅部12に面しない1本以上の梁同士は第2連結部材25で連結するとよい。
【0048】
本発明の一態様に係る屋根構造体は、前後方向に延在する左母屋を前後に並んだ第1左梁及び第2左梁で支持した左屋根と、前後方向に延在する右母屋を前後に並んだ第1右梁及び第2右梁で支持した右屋根と、を備え、前記第1左梁及び前記第1右梁が互いに突き合わされて連結され、前記第2左梁及び前記第2右梁が互いに突き合わされて連結されることで、前記左屋根と前記右屋根とが合掌した屋根構造体であって、前記第1左梁と前記第1右梁との間の第1突合せ部を連結する第1連結部材と、前記第2左梁と前記第2右梁との間の第2突合せ部を連結する第2連結部材と、前記左母屋及び前記右母屋のうち、一方の母屋が他方の母屋よりも前記第1左梁又は前記第1右梁から大きく張り出すことで形成された入隅部と、を備え、前記第1連結部材は、前記第1突合せ部を跨ぐように配置され、前記第1左梁及び第1右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のそれぞれに対向配置される4枚の第1連結板部を有し、前記第2連結部材は、前記第2突合せ部を跨ぐように配置され、前記第2左梁及び第2右梁の上板部、下板部、前板部、及び後板部のうちの対向位置にある2枚の板部のそれぞれに対向配置される2枚の第2連結板部を有し、前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部のうちの少なくとも対向位置にある2枚の第1連結板部が前記第1左梁及び前記第1右梁と締結され、前記第2連結部材は、前記2枚の第2連結板部が前記第2左梁及び前記第2右梁と締結されている。
【0049】
このような構成によれば、入隅部によって左右の屋根がアンバランスに構成された合掌構造の屋根構造体であっても、十分な強度で左右の屋根の梁同士を連結することができる。すなわち当該屋根構造体は、入隅部に近い梁同士の連結に各梁の4面に対向する4枚の連結板部を有する第1連結部材を用いている。このため入隅部による大きな荷重が第1連結部材を介して各梁で分担され、十分な強度で入隅部を支えることができる。一方、入隅部から遠い梁同士は簡素な第2連結部材で連結することで、コストの低減を図ることができる。
【0050】
前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部を一体に形成した角筒状部材であり、前記角筒状部材は、前記第1突合せ部を通過して前記第1左梁に設けられた中空部から前記第1右梁に設けられた中空部まで挿入された構成としてもよい。そうすると、第1連結部材の構成を簡素化でき、さらに第1連結部材による連結強度も一層向上する。
【0051】
前記第1左梁の前記第1突合せ部側とは反対側の端部に対して、第1左ジョイント部材を用いて連結される第1左支柱と、前記第2左梁の前記第2突合せ部側とは反対側の端部に対して、第2左ジョイント部材を用いて連結される第2左支柱と、前記第1右梁の前記第1突合せ部側とは反対側の端部に対して、第1右ジョイント部材を用いて連結される第1右支柱と、前記第2右梁の前記第2突合せ部側とは反対側の端部に対して、第2右ジョイント部材を用いて連結される第2右支柱と、を備え、前記第1連結部材は、前記第1左ジョイント部材、前記第2左ジョイント部材、前記第1右ジョイント部材、及び前記第2右ジョイント部材のうち、少なくともいずれか1つのジョイント部材と同一の断面形状を有する構成としてもよい。そうすると、ジョイント部材と同一の部品で第1連結部材を構成でき、コストを一層低減することができる。
【0052】
前記第1連結部材は、前記4枚の第1連結板部のうち、3枚の第1連結板部を一体に形成したコ字状部材と、残りの1枚の第1連結板部を構成する板状部材と、を有し、前記コ字状部材は、前記第1左梁に設けられた中空部から前記第1右梁に設けられた中空部まで前記第1突合せ部を通過して挿入されることで、前記第1左梁及び前記第1右梁の前記上板部、下板部、前板部、及び後板部のうちの3枚の板部と対向し、前記板状部材は、前記第1突合せ部を通過して前記第1左梁及び前記第1右梁の4枚の板部のうちの残りの1枚の板部と対向している構成としてもよい。そうすると、第1連結部材の製造交差に余裕を確保でき、製造効率が向上する。
【0053】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 屋根構造体、11L 左屋根、11R 右屋根、12 入隅部、14L,15L 左支柱、14R,15R 右支柱、17L,18L 左梁、17R,18R 右梁、19L 左母屋、19R 右母屋、21,28 中空部、22L,23L 左ジョイント部材、22R,23R 右ジョイント部材、24,40 第1連結部材、25 第2連結部材