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特許7564039仮ボルト不要接合装置、及び仮ボルト不要接合装置の撤去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】仮ボルト不要接合装置、及び仮ボルト不要接合装置の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E04G21/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021053347
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150655
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 信也
(72)【発明者】
【氏名】山内 博史
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157526(JP,A)
【文献】実開昭55-141655(JP,U)
【文献】特開2003-090131(JP,A)
【文献】特開2017-057675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14 - 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨柱と梁鉄骨との連結に使用される仮ボルト不要接合装置であって、
ベースプレートと、該ベースプレートの下面側において所定長さで垂下する接合ピンと、該接合ピンの外れ止め機構と、を備え、
該ベースプレートは、該梁鉄骨に取り付けるための取付ボルトが装着できるボルト装着孔を備え、
該外れ止め機構は、該ベースプレートの上面に配設された支持突起と、該接合ピンの垂下方向に直交する方向を軸方向とし該支持突起に配設された軸部と、該軸部を軸にして該接合ピンの外側面に向かって付勢されて回動可能である鉤状部材と、を備え、
該鉤状部材は、該接合ピンの外側面に当接する鉤先部と、該軸部に回動可能にとりつけられたL字状部と、該L字状部の下端側と該鉤先部の上端側とを連結し該鉤状部材の中間部分となる連結ピン部とを備え、
該連結ピン部によって該鉤先部を該L字状部に向かって回動させて該鉤状部材を折り曲げ、該鉤状部材全体の回動半径を小さくすることが可能な仮ボルト不要接合装置。
【請求項2】
前記接合ピンが少なくとも前記鉄骨柱のボルト孔に挿通され垂直にセットされた状態で、前記鉤状部材が該接合ピンに接触している際に点灯するライトを備え、該ライトによって前記外れ止め機構が機能していることを目視で確認できることを特徴とする請求項1記載の仮ボルト不要接合装置。
【請求項3】
複数の棒状部材で形成される仮設吊り足場がかけられ、請求項1、又は請求項2に記載の仮ボルト不要接合装置を使用して連結されて固定された前記鉄骨柱と前記梁鉄骨とから、請求項1、又は請求項2に記載の仮ボルト不要接合装置を撤去する撤去方法であって、
該仮ボルト不要接合装置の前記鉤状部材を前記接合ピンから離れるように前記軸部を軸に回動させる鉤状部材回動工程と、
該鉤状部材回動工程において、前記連結ピン部によって前記鉤先部を前記L字状部に向かって回動させつつ該鉤状部材を折り曲げる鉤状部材折り曲げ工程と、
該鉤状部材が折り曲げられた該仮ボルト不要接合装置の該接合ピンを該鉄骨柱と該梁鉄骨とから離脱させる離脱工程と、を備える撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨工事において、鉄骨柱と梁鉄骨との連結時に仮止めボルトが不要である接合装置、及び該仮止めボルト不要接合装置を撤去する撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているような鉄骨柱と梁鉄骨との連結時には、仮ボルトを用いずに連結を可能にする仮止めボルト不要接合装置が用いられている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-121494号公報
【文献】特開2019-157526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工事現場において、梁せいが例えば600mmを超える大きい梁であって、複数の棒状部材が組み合わされ鉄骨造の梁の本締などをするときに使用されるトビックと呼ばれる仮設吊り足場を該梁に架ける必要がある際に、特許文献2に記載されているような仮ボルト不要接合治具、仮設吊り足場、及び鋼材の継手部分に使用するスプライスプレート等が干渉する場合があり、この場合には仮設吊り足場の梁材に対する取り外しや架け替えを行なった後に仮止めボルト不要接合装置を取り外す必要があり、作業者の手間がかかるという問題がある。
【0005】
よって、仮ボルトを用いずに鉄骨柱と梁鉄骨とを連結する接合装置においては、該連結を行う際に該仮ボルト不要接合装置と仮設吊り足場のバー等との接触干渉が発生しないようにすることで、仮設吊り足場の架け替え等を作業者が実施せずに済むようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、鉄骨柱と梁鉄骨との連結に使用される仮ボルト不要接合装置であって、ベースプレートと、該ベースプレートの下面側において所定長さで垂下する接合ピンと、該接合ピンの外れ止め機構と、を備え、該ベースプレートは、該梁鉄骨に取り付けるための取付ボルトが装着できるボルト装着孔を備え、該外れ止め機構は、該ベースプレートの上面に配設された支持突起と、該接合ピンの垂下方向に直交する方向を軸方向とし該支持突起に配設された軸部と、該軸部を軸にして該接合ピンの外側面に向かって付勢されて回動可能である鉤状部材と、を備え、該鉤状部材は、該接合ピンの外側面に当接する鉤先部と、該軸部に回動可能にとりつけられたL字状部と、該L字状部の下端側と該鉤先部の上端側とを連結し該鉤状部材の中間部分となる連結ピン部とを備え、該連結ピン部によって該鉤先部を該L字状部に向かって回動させて該鉤状部材を折り曲げ、該鉤状部材全体の回動半径を小さくすることが可能な仮ボルト不要接合装置である。
【0007】
本発明に係る仮ボルト不要接合装置は、前記接合ピンが少なくとも前記鉄骨柱のボルト孔に挿通され垂直にセットされた状態で、前記鉤状部材が該接合ピンに接触している際に点灯するライトを備え、該ライトによって前記外れ止め機構が機能していることを目視で確認できると好ましい。
【0008】
また、上記課題を解決するための本発明は、複数の棒状部材で形成される仮設吊り足場がかけられ、前記仮ボルト不要接合装置を使用して連結されて固定された前記鉄骨柱と前記梁鉄骨とから、該仮ボルト不要接合装置を撤去する撤去方法であって、該仮ボルト不要接合装置の前記鉤状部材を前記接合ピンから離れるように前記軸部を軸に回動させる鉤状部材回動工程と、該鉤状部材回動工程において、前記連結ピン部によって前記鉤先部を前記L字状部に向かって回動させつつ該鉤状部材を折り曲げる鉤状部材折り曲げ工程と、該鉤状部材が折り曲げられた該仮ボルト不要接合装置の該接合ピンを該鉄骨柱と該梁鉄骨とから離脱させる離脱工程と、を備える撤去方法である。
【発明の効果】
【0009】
鉄骨柱と梁鉄骨との連結に使用される本発明に係る仮ボルト不要接合装置は、ベースプレートと、ベースプレートの下面側において所定長さで垂下する接合ピンと、接合ピンの外れ止め機構と、を備え、ベースプレートは、梁鉄骨に取り付けるための取付ボルトが装着できるボルト装着孔を備え、外れ止め機構は、ベースプレートの上面に配設された支持突起と、接合ピンの垂下方向に直交する方向を軸方向とし支持突起に配設された軸部と、軸部を軸にして接合ピンの外側面に向かって付勢されて回動可能である鉤状部材と、を備え、鉤状部材は、接合ピンの外側面に当接する鉤先部と、軸部に回動可能にとりつけられたL字状部と、L字状部の下端側と鉤先部の上端側とを連結し鉤状部材の中間部分となる連結ピン部とを備えていることで、連結ピン部によって鉤先部をL字状部に向かって回動させて鉤状部材を折り曲げ、鉤状部材全体の回動半径を小さくすることができ、そのため、外れ止め機構を鉄骨柱や梁鉄骨から外すときに、例えばトビックと呼ばれる仮設吊り足場のバー等に外れ止め機構が干渉してしまうことを防ぐことが可能となる。
【0010】
本発明に係る仮ボルト不要接合装置は、接合ピンが少なくとも鉄骨柱のボルト孔に挿通され垂直にセットされた状態で、鉤状部材が接合ピンに接触している際に点灯するライトを備えていることで、ライトによって外れ止め機構が機能していることを目視で確認できるようになる。
【0011】
複数の棒状部材で形成される仮設吊り足場がかけられ、仮ボルト不要接合装置を使用して連結されて固定された鉄骨柱と梁鉄骨とから、前記仮ボルト不要接合装置を撤去する本発明に係る撤去方法は、仮ボルト不要接合装置の鉤状部材を接合ピンから離れるように軸部を軸に回動させる鉤状部材回動工程と、鉤状部材回動工程において、連結ピン部によって鉤先部をL字状部に向かって回動させつつ鉤状部材を折り曲げる鉤状部材折り曲げ工程と、鉤状部材が折り曲げられた仮ボルト不要接合装置の接合ピンを鉄骨柱と梁鉄骨とから離脱させる離脱工程と、を備えることで、鉤状部材を折り曲げ、鉤状部材全体の回動半径を小さくすることができ、そのため、仮設吊り足場のバー等に外れ止め機構が干渉してしまうことを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】仮ボルト不要接合装置の一例を示す斜視図である。
図2】仮ボルト不要接合装置を梁鉄骨に取り付けた一例を示す斜視図である。
図3】仮ボルト不要接合装置を取り付けた梁鉄骨と鉄骨柱のブラケットとの接合構造を説明するために下側から見た斜視図である。
図4】梁鉄骨の移送方向で鉄骨柱のブラケットとの位置合わせで、少し行き過ぎた状態をブラケット側から見た状態を示す側面図である。
図5】梁鉄骨の移送方向で梁鉄骨が鉄骨柱のブラケットの位置より少し行き過ぎた状態で、外れ止め機構による位置合わせ機能をブラケット側からみた状態を説明する側面図である。
図6】外れ止め機構の位置合わせにより梁鉄骨とブラケットとの端部が一致して接合ピンをブラケット側のボルト孔に装着した状態を示す側面図である。
図7】仮ボルト不要接合装置が取り付けられた梁鉄骨に仮設吊り足場がかけられた状態を説明する斜視図である。
図8】仮ボルト不要接合装置が取り付けられた梁鉄骨のスプライスプレートと鉄骨柱とにかけられた仮設吊り足場の天バーと、外れ止め機構との位置関係を説明する側面図である。
図9】鉤状部材回動工程において、鉤状部材を接合ピンから離れるように軸部を軸に回動させ始めた状態を説明する側面図である。
図10】鉤状部材回動工程において、連結ピン部によって鉤先部をL字状部に向かって回動させ鉤状部材を折り曲げつつ、鉤状部材全体の回動半径を小さくして、仮設吊り足場の天バーに鉤状部材が接触しないようにしている状態を説明する側面図である。
図11】仮設吊り足場の天バーに接触しないように鉤状部材を折り曲げつつ、鉤状部材全体が天バーを通過し終える状態を説明する側面図である。
図12】鉤状部材が折り曲げられた仮ボルト不要接合装置の接合ピンを鉄骨柱と梁鉄骨とから離脱させる状態を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す仮ボルト不要接合装置1は、図2図3に示す鉄骨柱9と梁鉄骨8との連結に使用される装置であって、ベースプレート10と、ベースプレート10の下面100側において所定長さで垂下する接合ピン12と、接合ピン12の外れ止め機構2と、を備えている。
【0014】
ベースプレート10は、例えば、鋼鉄等で構成され平面視長方形状の四隅が円弧状に丸められて上面101と下面100とが平坦面に形成された板である。なお、ベースプレート10の両端部が円弧状に丸められていてもよい。
【0015】
ベースプレート10の下面100には鉛直方向(-Z方向)に所定の長さで接合ピン12が一体的に垂下している。横断面が円状である接合ピン12は、例えば、その下端側が先端の周囲を所要範囲にわたって先細りにテーパードしており、該テーパード部分によって、接合ピン12が例えば図3に示す鉄骨柱9のブラケット91のボルト孔910に挿入しやすくなっている。例えば、接合ピン12のピン径(横断面直径)は、図3に示す鉄骨柱9のブラケット91のボルト孔910の直径、及び梁鉄骨8に取り付けられるスプライスプレート84のボルト孔843の直径よりも僅かに小さい程度に設定されているが、ボルト孔910及びボルト孔843に対して1mm~2mm程度のクリアランスが設けられる大きさとなっていてもよい。
【0016】
図1に示す外れ止め機構2は、本実施形態においては、ベースプレート10の長手方向(Y軸方向)の中間位置に配設されているが、これに限定されず、ベースプレート10の長手方向のいずれかの端部により近い位置に配設されていてもよい。
外れ止め機構2は、ベースプレート10の上面101に配設された支持突起20と、接合ピン12の垂下方向(Z軸方向)に水平面内(X軸Y軸平面内)において直交する方向(図1においてはY軸方向)を軸方向とし支持突起20に配設された軸部21と、軸部21を軸にして接合ピン12の外側面122に向かって付勢されて回動可能である鉤状部材24と、を備えている。
【0017】
支持突起20はベースプレート10の上面101の長手方向の中間位置に立設する一対の突起板202、突起板203であって、突起板202と突起板203との間に鉤状部材24を挿し入れる隙間が設けられている。突起板202及び突起板203には厚み方向(Y軸方向)に向かって図示しない軸部挿通孔が貫通形成されており、該軸部挿通孔に軸部21が挿通されている。
【0018】
本実施形態において、軸部21は図示しない軸部挿通孔に挿通される固定ボルトであり、軸部21がワッシャー212をかまして突起板202及び突起板203に挿通され、突起板203の外側で図示しない固定ナットが螺合することで、突起板202及び突起板203に固定されている。
【0019】
鉤状部材24は、接合ピン12の外側面122に当接する鉤先部241と、軸部21に回動可能にとりつけられたL字状部243と、L字状部243の下端側と鉤先部241の上端側とを連結し鉤状部材24の中間部分となる連結ピン部245とを備えている。
【0020】
鉤状部材24の上部側となり側面視が略L字状のL字状部243には、図示しない軸部挿通孔が厚み方向(Y軸方向)に貫通形成されており、L字状部243が突起板202と突起板203との隙間に入れられた状態で、該図示しない軸部挿通孔に軸部21が挿通されている。例えば、軸部21である固定ボルトとL字状部243との間には図示しないベアリング等が配設されていてもよい。
【0021】
L字状部243の下端側には連結ピン部245が配設されており、例えば、連結ピン部245は、お互いが側面視で時計回り方向又は反時計回り方向にY軸を軸方向として回転可能な第1ピン2451と第2ピン2452とで構成されている。本実施形態においては、例えば、L字状部243の下端側にはギア246が形成されているとともに、図示しない貫通孔が形成されており、また、鉤先部241の上端側にはギア247が形成されているとともに図示しない貫通孔が形成されており、ギア246とギア247とは噛合している。このような構成の連結ピン部245は、L字状部243に対して鉤先部241を例えば外開きで固定可能となっている。
【0022】
なお、L字状部243の下端にギア246が形成されなくてもよく、かつ、鉤先部241の上端にギア247が形成されていなくてもよく、L字状部243の下端及び鉤先部241の上端がそれぞれR状に丸められており、互いに回動可能に接触している構成となっていてもよい。この場合の連結ピン部245は、L字状部243に対して鉤先部241を固定せずにフリーな状態にすることができる。
【0023】
図1に示すように、L字状部243の下端側と鉤先部241の上端側とは、板状の連結部材248及び連結部材249がそれぞれの側面に沿うように配設されており、該連結部材248とL字状部243の下端側の図示しない貫通孔と連結部材249とを貫通するように第1ピン2451が配設されており、また、連結部材248と鉤先部241の図示しない貫通孔と連結部材249とを貫通するように第2ピン2452が配設されている。例えば、第1ピン2451(第2ピン2452)の先端側にはネジが切られており、該ネジにナット2453(ナット2454)が螺合しており、ナット2453(ナット2454)の締め付けの度合いによって、鉤先部241のL字状部243に対する回動のしやすさを調整可能となっている。
【0024】
該鉤先部241は接合ピン12の外側面122に当接する面側が一部傾斜面になっていると共に、外側面122に正対している。軸部21を軸に回動可能である鉤状部材24は、常に接合ピン12の外側面122側に向かって付勢されており、つまり、閉まる方向に付勢されている。また、鉤先部214の接合ピン12の外側面122に当接する面の一部が傾斜面となっていることで、図3に示す鉄骨柱9のブラケット91に当接することによってブラケット91に押されて、鉤状部材24は自動的に外側(接合ピン12の外側面122から離れる方向側)に軸部21を軸にして回動可能となっている。
なお、鉤先部241の接合ピン12の外側面122に当接する面は略円弧状に丸められていてもよい。
【0025】
例えば、本実施形態においては、図1図2に示すベースプレート10の両端部側には、架設しようとする梁鉄骨8に仮ボルト不要接合装置1を取り付けるための取付ボルト32が装着できるボルト装着孔15がそれぞれ設けられており、図1図2に示す例においては、該ボルト装着孔15の一方に予め取付ボルト32が、好ましくは、下方から上方に向けて装着され、締め付けナット34が上方から螺着されることで、仮ボルト不要接合装置1に取り付けされている。
【0026】
以下に、図1に示す仮ボルト不要接合装置1を用いて、図3に示す鉄骨柱9と梁鉄骨8とを仮連結する場合の、仮ボルト不要接合装置1の動作について説明する。
この場合に、鉄骨柱9の水平に突き出たブラケット91(図3参照)と梁鉄骨8とを接合連結させるために、例えば図2に示す梁鉄骨8が地上にある状態において、作業者によって、梁鉄骨8の連結する端部に、予めスプライスプレート84が所要長さ突出させてボルト133をスプライスプレート84のボルト孔843と梁鉄骨8のボルト孔80とを挿通させた状態で取り付けてある。スプライスプレート84の図3に示すブラケット91に連結される側にも、ブラケット91に形成されたボルト孔910に対応する複数のボルト孔843が設けられている。
【0027】
さらに、図2に示す該スプライスプレート84の梁鉄骨8の端部から梁鉄骨8の延在方向(-Y方向)に突き出た突出部の両側の端部でも良いが、少なくとも一方側(図2においては、-X方向側)の側面に、1個の仮ボルト不要接合装置1の接合ピン12と外れ止め機構2とが位置するように取り付けられている。即ち、取付ボルト32がスプライスプレート84のボルト孔843に挿通され、締め付けナット34を例えば上側からしっかり締めることで、仮ボルト不要接合装置1が梁鉄骨8にスプライスプレート84を介して固定されている。
【0028】
このように例えば地上にある状態の梁鉄骨8にスプライスプレート84を介して取り付けられた仮ボルト不要接合装置1の接合ピン12は、スプライスプレート84のボルト孔843に挿通されている。また、外れ止め機構2の鉤状部材24は、連結ピン部245がZ軸方向(鉛直方向)に真っ直ぐになっており、接合ピン12の外側面122に向かって付勢されて鉤先部241が外側面122に接触している。
【0029】
このように、例えば地上において仮ボルト不要接合装置1が取り付けられた梁鉄骨8は、所要のクレーン(揚重装置)で吊り上げられて設置(架設)されるべき位置、つまり、図3に示す鉄骨柱9間中空に移送され、該鉄骨柱9間において方向を合わせてゆっくりと下降させるが、鉄骨柱9のブラケット91と方向性と位置とが完全に一致しないと連結させることができない。
【0030】
ここで仮ボルト不要接合装置1が機能する。仮ボルト不要接合装置1は、一例として少なくとも、図4に示す梁鉄骨8の移送方向(矢印A方向)に対して後方となるブラケット91の一方の側の水平方向(X軸Y軸方向)に張り出しボルト孔910が形成されたフランジ部分に取り付けられる。図4で示す位置は、梁鉄骨8が僅かに+X方向側に行き過ぎた状態を示すものであるが、これを人為的に位置を直すか、または、この状態で梁鉄骨8をゆっくりと降ろすと、図5に示すように、外れ止め機構2の鉤先部241の傾斜する当接面に鉄骨柱9側のブラケット91のフランジ部分が下方から当接することになり、当接の初期段階では外れ止め機構2の鉤状部材24が外側方向に少し開くが、傾斜した当接面の作用によって、僅かに行き過ぎた梁鉄骨8がゆっくりと戻す方向に作用されながら、鉤先部241が再び接合ピン12の外側面122に当接するように軸部21を軸に回動しつつ、梁鉄骨8が降ろされるので、接合ピン12のテーパードした先端部分がブラケット91側のボルト孔910に僅かに入り込みさえすれば、後はテーパード部分よって接合ピン12がボルト孔910に入って行くように梁鉄骨8がガイドされるので、梁鉄骨8を降ろすだけで、図6に示したように、ブラケット91と梁鉄骨8との端部同士が突合せ状態で、スプライスプレート84の下面に当接状態に直線状に設置される。
【0031】
このように設置されることにより、面倒な作業を必要とする仮ボルトを使用しなくても、接合ピン12がブラケット91のボルト孔910に装着され、外れ止め機構2の鉤状部材24の鉤先部241がブラケット91の上側のフランジ部分の下側に位置して、かつ、接合ピン12の外側面122に鉤先部241が接触した状態になる。そのため、仮に、この状態で巨大地震により、大きな上下動の振動を受けても、または強風に煽られても、鉤状部材24の存在、即ち、接合ピン12のせん断力で地震荷重、又は風荷重の水平力に対して抵抗するので、接合ピン12がボルト孔910から抜け出すことはないため、その後水平方向の大きな揺れを受けても、接合ピン12と外れ止め機構2とによって設置された梁鉄骨8は脱落することなく設置位置に留まることができる。さらに、水平力が接合ピン12に作用しても、外れ止め機構2の鉤状部材24が接合ピン12の外側面122に接触していることで、水平力に対して鉤状部材24が抵抗して、接合ピン12が抜け出てしまうことが防がれる。
【0032】
例えば、本発明に係る仮ボルト不要接合装置1は、図6に示すように接合ピン12が少なくとも鉄骨柱9の例えばブラケット91のフランジ部分のボルト孔910に挿通され垂直にセットされた状態で、鉤状部材24が接合ピン12に接触している際に点灯する図1図2に示すライト16を、例えば鉤先部241の側面等に備えていてもよい。そして、ライト16によって外れ止め機構2が機能していることを目視で確認できるようになる。
【0033】
その後、作業者が、スプライスプレート84の各ボルト孔843とブラケット91の対応する各ボルト孔910とに所要の図示しない連結ボルトを装着して連結後に、作業者が、仮ボルト不要接合装置1における取付ボルト32を取り外し、外れ止め機構2を詳しくは後述するように外側に回動させて開きながら全体を持ち上げることにより、接合ピン12をブラケット91のボルト孔910、及びスプライスプレート84のボルト孔843から抜き取り、仮ボルト不要接合装置1を完全に取り外すことができる。そして、取り外した後の各ボルト孔843、及びボルト孔910にそれぞれ前記同様に図示しない連結ボルトを挿着して締め付けると共に、従来から行っているように、人為的な手作業で、梁鉄骨8とブラケット91との繋ぎ部分のH鋼の下側のフランジ部分及び縦鋼の部分にも両側からスプライスプレート84を配設して、それぞれボルト孔843、ボルト孔80及びボルト孔910に連結ボルトを取り付けて、梁鉄骨8を鉄骨柱9間に安全且つ強固に取り付けることができる。
【0034】
前記仮ボルト不要接合装置1の鉄骨柱9のブラケット91及びスプライスプレート84からの取り外しの際に、作業者が仮ボルト不要接合装置1が設置されているある程度高い高さ位置まで登るために、図7に示すような複数の棒状部材(複数のバー)が組み合わされて折り畳み可能な仮設吊り足場7が梁鉄骨8とブラケット91(図7においては不図示)とにかけられる。
【0035】
例えばジュラルミン製の仮設吊り足場7は、日綜産業株式会社製の商品名トビック等であり、図7においてその一部を図示している。仮設吊り足場7は、作業者が乗ることができる図示しないプレート上に複数の折り畳み可能な棒状部材で構成されており、中空で作業者が中に入ることができる作業室を形成することができる。図7においては、仮設吊り足場7のZ軸方向に延びる棒状の縦骨材70と、縦骨材70の上端側にボルト701を用いて接続された天バー72と、縦骨材70にボルト701を用いて接続され仮設吊り足場7全体を畳んだ状態と図7に示すように使用する状態とに折り畳み可能にする可動バー73と、可動バー73と図示しないプレートとを接続する下部バー74とを示している。
【0036】
仮設吊り足場7が作業者が乗ることが可能な状態に広げられ、かつ、図7に示すように梁鉄骨8にかけられた状態において、例えば天バー72が梁鉄骨8及びスプライスプレート84の上方に位置付けられた状態になる。そして、従来の仮ボルト不要接合装置(例えば、特許文献2参照)においては、仮ボルト不要接合装置をスプライスプレート84等から取り外す際に、天バー72と接合ピンに接触する鉤状部材とが接触干渉してしまうことがあり、そのために、仮設吊り足場7の架け替え作業等が発生していた。対して、本発明に係る仮ボルト不要接合装置1においては、取り外し撤去作業において下記に説明するように上記接触干渉が発生しない。
【0037】
以下に、複数の棒状部材を形成される仮設吊り足場7がかけられ、図7に示す仮ボルト不要接合装置1を使用して連結されて固定された鉄骨柱9(図7においては不図示)と梁鉄骨8とから、仮ボルト不要接合装置1を撤去する撤去方法について説明する。
【0038】
(1)鉤状部材回動工程
本発明に係る撤去方法においては、まず、仮ボルト不要接合装置1が取り付けられた梁鉄骨8のスプライスプレート84と鉄骨柱9のブラケット91(図7には不図示)とにかけられた仮設吊り足場7に乗った作業者が、図8に示す状態の外れ止め機構2に近づく。
【0039】
作業者が、例えば、ナット2453(ナット2454)の締め付けの具合を緩め、鉤先部241のL字状部243に対する回動を行いやすいようにする。そして、図9に示すように、作業者が鉤先部241を把持して、鉤状部材24を接合ピン12の外側面122から離れるように軸部21を軸に矢印R方向に向かって回動させ始める。そして、図9に示すように、鉤状部材24のL字状部243が、仮設吊り足場7の天バー72の下方を接触しないように通過し始める。
(2)鉤状部材折り曲げ工程
【0040】
次いで、図10に示すように、作業者が鉤状部材24の中間部分となる連結ピン部245に力を加えることで、連結ピン部245によって鉤先部241をL字状部243に向かって回動させて鉤状部材24全体の回動半径を天バー72に鉤状部材24の主に鉤先部241が接触しないように小さくしつつ、さらに、鉤状部材24の軸部21を軸とした矢印R方向への回動を実行し続ける。
【0041】
従来の例えば特許文献2に開示されているような仮ボルト不要接合装置においては、鉤状部材が折り曲げることができず、鉤状部材の回動半径を小さくすることができなかった。したがって、仮設吊り足場7の天バー72に鉤状部材が接触してしまい、仮設吊り足場7の付け替え等をしないと、梁鉄骨8のスプライスプレート84と鉄骨柱9とから仮ボルト不要接合装置を撤去することができなかった。これに対して、本発明に係る仮ボルト不要接合装置1は、図10に示すように、鉤状部材24を天バー72に接触させないようにすることが可能となり、上記付け替え作業等は行わなくてもすむ。
【0042】
図11に示すように、さらに、作業者が、連結ピン部245によって鉤先部241をL字状部243に向かって回動させて鉤状部材24全体の回動半径を天バー72に鉤状部材24が接触しないように小さくしつつ、鉤状部材24の軸部21を軸とした矢印R方向への回動を実行していくことで、従来は天バー72に接触してしまっていた鉤先部241を天バー72の下方を通過し終えるようにすることができる。
【0043】
(3)離脱工程
さらに、図12に示すように、鉤状部材24全体が天バー72の下方を通過した後に、作業者によって鉤状部材24が連結ピン部245に力を加えて鉤先部241をL字状部243に向かって回動させて、鉤先部241をL字状部243に向かって折り畳んだ状態する。そして、作業者が、仮ボルト不要接合装置1における取付ボルト32を取り外し、外れ止め機構2全体を+Z方向に持ち上げることにより、接合ピン12をブラケット91のボルト孔910、及びスプライスプレート84のボルト孔843から抜き取り、仮ボルト不要接合装置1を仮設吊り足場7に接触させずに完全に取り外すことができる。
【0044】
上記のように、鉄骨柱9と梁鉄骨8との連結に使用される本発明に係る仮ボルト不要接合装置1は、ベースプレート10と、ベースプレート10の下面側において所定長さで垂下する接合ピン12と、接合ピン12の外れ止め機構2と、を備え、ベースプレート10は、梁鉄骨8に取り付けるための取付ボルト32が装着できるボルト装着孔15を備え、外れ止め機構2は、ベースプレート10の上面101に配設された支持突起20と、接合ピン12の垂下方向(例えば、鉛直方向)に直交する方向を軸方向とし支持突起20に配設された軸部21と、軸部21を軸にして接合ピン12の外側面122に向かって付勢されて回動可能である鉤状部材24と、を備え、鉤状部材24は、接合ピン12の外側面122に当接する鉤先部241と、軸部21に回動可能にとりつけられたL字状部243と、L字状部243の下端側と鉤先部241の上端側とを連結し鉤状部材24の中間部分となる連結ピン部245とを備えていることで、連結ピン部245によって鉤先部241をL字状部243に向かって回動させて鉤状部材24を折り曲げ、鉤状部材24全体の回動半径を小さくすることができ、そのため、外れ止め機構2を鉄骨柱9や梁鉄骨8から外すときに、例えばトビックと呼ばれる仮設吊り足場7の天バー72等に外れ止め機構2が干渉してしまうことを防ぐことが可能となる。そのため、仮設吊り足場7の付け替え作業の回数を減らすことができ、作業者の高所作業が減り、安全性が向上するとともに、作業効率が向上する。
【0045】
複数の棒状部材で形成される仮設吊り足場7がかけられ、仮ボルト不要接合装置1を使用して連結されて固定された鉄骨柱9と梁鉄骨8とから、仮ボルト不要接合装置1を撤去する本発明に係る撤去方法は、仮ボルト不要接合装置1の鉤状部材24を接合ピン12から離れるように軸部21を軸に回動させる鉤状部材回動工程と、鉤状部材回動工程において、連結ピン部245によって鉤先部241をL字状部243に向かって回動させつつ鉤状部材24を折り曲げる鉤状部材折り曲げ工程と、鉤状部材24が折り曲げられた仮ボルト不要接合装置1の接合ピン12を鉄骨柱9と梁鉄骨8とから離脱させる離脱工程と、を備えることで、鉤状部材24を折り曲げ、鉤状部材24全体の回動半径を小さくすることができ、そのため、仮設吊り足場7のバー等に外れ止め機構2が干渉してしまうことを防ぐことが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
1:仮ボルト不要接合装置
10:ベースプレート 100:ベースプレートの下面 101:ベースプレートの上面
15:ボルト装着孔 32:取付ボルト 34:締め付けナット
12:接合ピン 122:接合ピンの外側面
2:外れ止め機構
20:支持突起 202、203:突起板
21:軸部 211:固定ボルト 212:ワッシャー 213:固定ナット
24:鉤状部材
241:鉤先部 247:ギア 243:L字状部 246:ギア
245:連結ピン部 2451:第1ピン 2452:第2ピン 16:ライト
248、249:連結部材
9:鉄骨柱 90:ボルト孔
8:梁鉄骨 80:ボルト孔
84:スプライスプレート 843:ボルト孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12