(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-30
(45)【発行日】2024-10-08
(54)【発明の名称】釜場ピット及び合成スラブ形成方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20241001BHJP
【FI】
E04B5/40 Z
(21)【出願番号】P 2021055086
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舘山 英司
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 碩紀
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-26618(JP,A)
【文献】特開2000-27281(JP,A)
【文献】特開2000-336740(JP,A)
【文献】特開2019-199721(JP,A)
【文献】特開2016-65433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00- 5/48
E03F 5/22
E03F 11/00
E02D 19/00-19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面板及び底面板を有し、上面が開放した釜場ピット空間を画定する釜場ピット画定部と、
前記釜場ピット画定部から下方へ向けて延び、前記釜場ピット画定部を支持する脚部と、
前記脚部の下端に設けられ前記脚部を基礎スラブの上面に固定する固定部と、
前記側面板から外側へ向けて延び、デッキプレートに当接するデッキプレート当接部と、
前記側面板の上端に設けられ、前記釜場ピット空間の上面を覆う蓋を受ける蓋受け部と、
を備え、
前記側面板の前記デッキプレート当接部よりも上側の部分が、前記デッキプレートとともに、前記デッキプレートの上に打設されるコンクリートのための型枠となる、
釜場ピット。
【請求項2】
請求項1の釜場ピットを基礎スラブの上に載置して固定し、
前記釜場ピットの周囲にデッキプレートを設置し、
前記釜場ピットの側面板及び前記デッキプレートを型枠として、前記デッキプレートの上にコンクリートを打設する、
釜場ピット空間を有する合成スラブ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨鉄筋コンクリート造などの建築物において、釜場ピット空間を有する合成スラブを形成する方法、および、それに使用される釜場ピットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コンクリート打設後のポンプピットの型枠撤去や仕上げ工程を不要として工期の短縮を図ると共に、漏水を防止するポンプピット型枠を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基礎スラブの上に鉄骨で躯体を形成し、鉄骨梁の上にデッキプレートを配置し、デッキプレートの上に鉄筋を配筋し、デッキプレートを型枠の底部として利用してデッキプレートの上にコンクリートを打設することにより、合成スラブを形成する技術がある。このようにして形成された合成スラブと、基礎スラブとの間には、空間が存在する。
このような合成スラブに釜場ピットを設けるためには、従来、デッキプレートで形成された底面に釜場ピットを取り囲む凹部を設け、凹部の底に鉄筋を配筋し、釜場ピット底部のコンクリートを打設する。その後、底部コンクリートの上に、立ち上がり鉄筋を配筋し、立ち上がり型枠を設置して、合成スラブ本体のコンクリートと同時に、釜場ピット側部のコンクリートを打設する。このため、コンクリートを二回に分けて打設する必要がある。その後、凹部のなかの立ち上がり型枠を撤去する。このように、合成スラブに釜場ピットを設けるには、作業の手間がかかり、工期が長くなり、コストが高くなる。
特許文献1に開示された技術を応用すれば、型枠を撤去する必要はないが、凹部形成や配筋の手間などは、変わらない。
本発明は、例えば、このような課題を解決し、釜場ピットを有する合成スラブを容易に形成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
釜場ピットは、側面板及び底面板を有し、上面が開放した釜場ピット空間を画定する釜場ピット画定部と、前記釜場ピット画定部から下方へ向けて延び、前記釜場ピット画定部を支持する脚部と、前記脚部の下端に設けられ前記脚部を基礎スラブの上面に固定する固定部と、前記側面板から外側へ向けて延び、デッキプレートに当接するデッキプレート当接部と、前記側面板の上端に設けられ、前記釜場ピット空間の上面を覆う蓋を受ける蓋受け部とを備える。前記側面板の前記デッキプレート当接部よりも上側の部分が、前記デッキプレートとともに、前記デッキプレートの上に打設されるコンクリートのための型枠となる。
釜場ピット空間を有する合成スラブ形成方法において、前記釜場ピットを基礎スラブの上に載置して固定する。前記釜場ピットの周囲にデッキプレートを設置する。前記釜場ピットの側面板及び前記デッキプレートを型枠として、前記デッキプレートの上にコンクリートを打設する。
【発明の効果】
【0006】
前記側面板の前記デッキプレート当接部よりも上側の部分が、前記デッキプレートとともに、前記デッキプレートの上に打設されるコンクリートのための型枠となるので、コンクリートを二回に分けて打設する必要がない。また、前記側面板の前記デッキプレート当接部よりも下側の部分の周囲にコンクリートを打設する必要がないので、鉄筋を配筋する必要もない。これにより、作業の手間を減らし、工期を短縮し、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すとおり、釜場ピット10は、例えば、略直方体状の釜場ピット空間11を画定する釜場ピット画定部12と、釜場ピット画定部12を支持する支持部13と、支持部13を固定するための固定部14と、釜場ピット画定部12の上に設けられた蓋受け部15とを有する。
【0009】
図2に示すとおり、釜場ピット画定部12は、例えば、上面が開口した直方体箱状であり、長方形板状の側面板21~24と、長方形板状の底面板25とを有する。釜場ピット画定部12は、例えば、鋼板を折り曲げて溶接することにより形成される。
【0010】
蓋受け部15は、釜場ピット空間11の上面を覆う蓋106(
図3参照)を受容する。蓋受け部15は、例えば、上面及び下面が開口した薄い略直方体状であり、長方形板状の側面部51~54と、中央に大きな開口56を有する底面部55とを有する。
【0011】
支持部13は、例えば、四本の脚部31~34と、脚部31~34の上端部分の間を接続するデッキプレート当接部36と、脚部31~34の中間部分の間を接続する中梁部37と、脚部31~34の下端部分の間を接続する下梁部38とを有する。
【0012】
脚部31~34は、例えば、山型鋼(アングル)であり、釜場ピット画定部12の側面板21~24の間の辺に沿って上下方向に延び、更に下方向へ向けて延びることにより、釜場ピット画定部12を所定の高さの位置に支持する。脚部31~34は、例えば、溶接により、釜場ピット画定部12に固定されている。
【0013】
デッキプレート当接部36は、例えば、四本の梁部材61~64を有する。梁部材61~64は、例えば、山型鋼(アングル)であり、釜場ピット画定部12の側面板21~24に沿って略水平方向に延び、端部分が脚部31~34の上端部分に連結されている。梁部材61~64は、例えば、溶接により、釜場ピット画定部12及び脚部31~34に固定されている。
【0014】
中梁部37は、例えば、四本の梁部材71~74を有する。梁部材71~74は、例えば、山型鋼(アングル)であり、釜場ピット画定部12の側面板21~24と底面板25との間の辺に沿って略水平方向に延び、端部分が脚部31~34の中間部分に連結されている。梁部材71~74は、例えば、溶接により、釜場ピット画定部12及び脚部31~34に固定されている。
【0015】
下梁部38は、例えば、略長方形環状であり、四本の梁部材81~84を有する。梁部材81~84は、例えば、山型鋼(アングル)であり、略水平方向に延び、端部分が互いに連結されている。脚部31~34の下端部分は、梁部材81~84の間の角の内側に連結されている。梁部材81~84は、例えば、溶接により、互いに固定され、また、脚部31~34に固定されている。
【0016】
固定部14は、例えば、八つの固定片41~48を有する。固定片41~48は、例えば、短い山型鋼(アングル)であり、例えば、溶接により、支持部13の梁部材81~84に固定されている。固定片41~48は、例えば、アンカーボルト91~98を挿通するための貫通穴を有する。
【0017】
次に、釜場ピット10の使用方法を説明する。
【0018】
図3に示すとおり、例えば、現場打ちコンクリートなどによって形成された基礎スラブ101の上に、釜場ピット10を載置し、アンカーボルト91~98を使用して、釜場ピット10を基礎スラブ101に固定する。
【0019】
次に、釜場ピット10の周りを取り囲んで、基礎スラブ101から所定の高さの位置にデッキプレート102,103を設置する。このとき、デッキプレート102,103を釜場ピット10のデッキプレート当接部36に当接させて、隙間ができないようにする。例えば、デッキプレート102,103の端部をデッキプレート当接部36の上に載置し、あるいは、
図3に示したように、デッキプレート102,103の端部をデッキプレート当接部36の端部に突合させる。
【0020】
そして、デッキプレート102,103の上方に、鉄筋104を配筋する。
【0021】
その後、デッキプレート102,103や釜場ピット画定部12の外面を型枠として、
コンクリート105を打設し、これにより、デッキプレートと鉄筋コンクリートとからなる合成スラブ100を形成する。
【0022】
最後に、鋼製グレーチングなどの蓋106を、蓋受け部15に設置する。
【0023】
このようにして、釜場ピット空間11を有する合成スラブ100を形成する。
【0024】
釜場ピット画定部12の底部や側面下部の外側にコンクリートを打設する必要がないので、デッキプレートで形成された面に凹部を設ける必要がなく、また、凹部のなかに鉄筋を配筋する必要もない。これにより、作業の手間を減らし、工期を短縮し、コストを抑えることができる。
また、釜場ピット10が蓋受け部15を有するので、蓋受け部を設置する手間を減らし、工期を短縮し、コストを抑えることができる。
【0025】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【0026】
以上のように、釜場ピットを建物の基礎躯体に設置する施工方法において、コンクリートの打設前に鋼製の釜場を設置する。鋼製釜場は、スラブ型枠を受けるとともに、本設グレーチング蓋の枠を兼用する。これにより、複雑なピットの施工の工期及びコストを大幅に削減することができる。
鋼製(スチール亜鉛メッキ等)の釜場を設置した後にコンクリートを打設する。鋼製釜場は、下部ピットの受け台座と、スラブ型枠の受け材と一体化している。また、蓋の下枠材も兼用している。これにより、コンクリートの打設が一回で済むので、工期の短縮になる。釜場の周りに土を埋め戻す必要がない。法面のコンクリートが不要となる。蓋の枠を先行で施工できる。斜め筋などの複雑な配筋が不要になる。
【符号の説明】
【0027】
10 釜場ピット、11 釜場ピット空間、12 釜場ピット画定部、13 支持部、14 固定部、15 蓋受け部、21~24 側面板、25 底面板、31~34 脚部、36 デッキプレート当接部、37 中梁部、38 下梁部、41~48 固定片、51~54 側面部、55 底面部、56 開口、61~64,71~74,81~84 梁部材、91~98 アンカーボルト、100 合成スラブ、101 基礎スラブ、102,103 デッキプレート、104 鉄筋、105 コンクリート、106 蓋。